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  • 特許-化学療法後の樹状細胞ワクチン接種 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】化学療法後の樹状細胞ワクチン接種
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20240909BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240909BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240909BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00
A61K35/15
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020560587
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019051840
(87)【国際公開番号】W WO2019145469
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】18153412.4
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】312004329
【氏名又は名称】エクスコソ エイ. エス.
【氏名又は名称原語表記】EXCOSO A. S.
【住所又は居所原語表記】Ceskomoravska 2532/19b 190 00 Prague 9 Czech Republic
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】シュピシェック,ラデック
(72)【発明者】
【氏名】バルトゥンコヴァ,イジナ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520780(JP,A)
【文献】Anti-Cancer Agents in Medicinal Chemistry,2016年,Vol. 16,p. 558-567,DOI: 10.2174/1871520615666150907094139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61P 35/00
A61K 35/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新たに診断された卵巣がんの治療に使用するための樹状細胞ワクチンであって、
前記樹状細胞ワクチンが、少なくとも1種の化学療法剤を使用した化学療法の完了後に、患者に投与され、
前記樹状細胞が、化学療法の実施前に白血球除去法によって得られた単球に由来するものであり、エクスビボで抗原材料を搭載したものであり、
前記抗原材料が、高静水圧で殺傷された腫瘍細胞全体であり、
前記化学療法剤が、カルボプラチンおよびパクリタキセルを含むことを特徴とする
状細胞ワクチン。
【請求項2】
前記化学療法剤がシクロホスファミドを含まない、請求項1に記載の樹状細胞ワクチン。
【請求項3】
前記樹状細胞ワクチンの初回投与が、前記化学療法の最終サイクルの完了後2ヶ月以内に行われ、好ましくは前記化学療法の最終サイクルの完了後1ヶ月以内に行われ、より好ましくは前記化学療法の最終サイクルの完了後2週間以内に行われ、最も好ましくは前記化学療法の最終サイクルの完了直後に行われる、請求項1または2に記載の樹状細胞ワクチン。
【請求項4】
前記樹状細胞ワクチンの初回投与が、前記化学療法の最終投与の実施後2ヶ月以内に行われ、好ましくは前記化学療法の最終投与の実施後1ヶ月以内に行われ、より好ましくは前記化学療法の最終投与の実施後2週間以内に行われる、請求項1または2に記載の樹状細胞ワクチン。
【請求項5】
前記化学療法が一次化学療法である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
【請求項6】
前記患者のがんが、過去の化学療法治療によって治癒していない、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
【請求項7】
維持療法と併用して投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
【請求項8】
i)前記樹状細胞ワクチンを5~30回投与し、特に、前記樹状細胞ワクチンを8~15回投与すること;
ii)前記樹状細胞ワクチンを1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、5週間ごともしくは6週間ごとに投与すること;および/または
iii)投薬スケジュールが、初めの5回は3週間ごとに投与し、その後、3週間ごともしくは6週間ごとに5回投与することを含むこと
を特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
【請求項9】
前記少なくとも1種の化学療法剤が、シスプラチン、ドセタキセル、ゲムシタビン、ペグ化リポソームドキソルビシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、トラベクテジン、ミトキサントロン、カバジタキセル、ビノレルビン、ペメトレキセド、メトトレキサート、ビンブラスチンおよびアルブミン結合パクリタキセルから選択される、化学療法剤をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
免疫系は、良好に利用できれば、細胞傷害薬の有効性を高め、がん患者のアウトカムを改善することが可能な強力なツールとなる。ワクチン接種は、免疫系を利用することによりがん細胞を排除する有効な方法となることが期待されている。ワクチンの活性の大部分は、抗原特異的CD8+T細胞に依存しており、抗原特異的CD8+T細胞から細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が発生し、がんの拒絶が起こる(PaluckaおよびBanchereau 2013)。細胞傷害性CD8+T細胞の誘導に必要な免疫系因子として、適切な抗原提示細胞(APC)による抗原提示がある。樹状細胞(DC)は最も有能なAPCであり、抗原を捕捉して処理し、T細胞に提示するという能力があることから、ワクチンの極めて重要な成分となる(BanchereauおよびSteinman 1998)。DCを使用した様々ながんに対するワクチン接種戦略がこれまでに開発されている(Galluzziら、2012)。そのうちの1つでは、特定のサイトカインの組み合わせの存在下で患者由来(自家)単球を培養し、エクスビボにおいて腫瘍関連抗原(TAA)を単球に搭載し、アジュバントの存在下でDCへの成熟を促して、得られたDCを患者に再投与する。別の戦略として、インビボにおけるDCへの腫瘍関連抗原の送達や、DCから得たエクソソームを使用したアプローチがある(Galluzziら、2012)。これらの戦略は、複数の臨床試験において様々ながんに対する効果が検討されている(Galluzziら、2012;Vacchelliら、2013;Bloyら、2014;Gargら、2017)。しかし、臨床試験で評価されたこれらのDCワクチンは、治療効果が比較的低いことが示されている。治療効果が低いことには様々な理由が関連しており、たとえば、DCワクチンの調製に使用される成熟化因子が原因であること、DCに搭載される腫瘍関連抗原の免疫原性が不十分であること、投与されたDCの生体内における局在が準最適にとどまること、および/またはDCワクチンの処方が原因であることが挙げられる(Galluzziら、2012)。さらに、治療効果が低かった別の理由として、通常、化学療法を使用した標準治療を併用して治療が行われるという臨床試験の設計も関連している。化学療法を行った後の免疫系の回復は、これまでに考えられていたよりも遅い可能性があることが示されており(Vermaら、2016)、化学療法を併用した場合のDCワクチンの有効性を損なっている可能性がある。このことから、化学療法を使用した標準治療を含むがん治療が行われる場合に、DCワクチンの投与のタイミングおよびスケジューリングが重要となる可能性が強調されている。
【0002】
一方、化学療法後の再発のリスクを克服するために、がんの一次治療を最適化し、最適な治療アプローチを創出しようとする多大な努力にもかかわらず、未だ尚、高度な医療を必要とするがん疾患が数多く存在し、疾患が再発した場合に患者が利用可能な治療オプションはわずかしか存在しない。再発を起こした患者の大部分は最終的に死に至る。DCワクチンは、このようながん患者に対する新規治療オプションとなる可能性があり、DCワクチンの副作用プロファイルは、たとえば標準的な化学療法剤と比較して、非常に穏やかであると予想されることから、患者の平均余命および生活の質を改善できる可能性がある。しかし、これまでに承認された唯一のDCワクチンSipuleucel Tは、ある程度の付加的なベネフィットを示すことができたものの、German Institute for Quality and Efficiency in Health Care(IQWIQ)によれば、その効果を評価することはできないとされており(プレスリリース“Sipuleucel-T in prostate cancer: indication of added benefit” of the IQWIQ、2015年3月19日付;https://www.iqwig.de/en/press/press-releases/press-releases/sipuleucel-t-in-prostate-cancer-indication-of-added-benefit.6618.html;2017年12月12日引用)、大幅な改善というDCワクチンに託された希望を患者に届けることはできていない。
【0003】
DCワクチンの製造プロトコルの最適化を目指すということ以外にも、標準的な化学療法を併用した最適な治療スケジュールを検討することは、次の再発や次の段階の治療までの無病期間を延長し、かつ患者の生存率を改善することを目的とした別の有効な治療オプションとしてDCワクチンを確立するための解決策となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、驚くべきことに、化学療法を使用した標準治療と比べた場合、化学療法に続いて、すなわち、化学療法の完了後に投与したDCワクチンは、化学療法と並行して投与したDCワクチンよりも、がん患者の全生存期間の延長に有益であったことを特定した。
【発明を実施するための形態】
【0005】
用語の定義:
「樹状細胞ワクチン」または「DCワクチン」は、抗原材料を使用せずに、あるいは抗原材料を使用して調製された、治療用途で投与してもよいヒト樹状細胞を指す。この樹状細胞は、腫瘍関連ペプチド、DNAもしくはRNAに由来する抗原全体、抗原タンパク質全体、イディオタイプタンパク質、腫瘍溶解物、腫瘍細胞全体、またはウイルスベクターにより送達される抗原全体を抗原として樹状細胞に搭載することによって調製した後、任意でToll様受容体アゴニストで成熟化した樹状細胞であることが好ましい。この樹状細胞は、たとえばFucikovaら(2014)に記載されているような、免疫原性細胞死(immunogenic cell death)を起こした腫瘍細胞全体を搭載した樹状細胞であることがより好ましい。さらに、このような抗原材料を搭載した樹状細胞をさらに成熟化してもよい。樹状細胞の成熟化は、たとえば抗原材料を搭載した樹状細胞を、Toll様受容体(TLR)アゴニスト(たとえば、後述するポリ[I:C]またはLPS)などの成熟因子の存在下において培養することによって行う。
【0006】
「Toll様受容体アゴニスト」は、Toll様受容体(TLR)に結合する分子を指し、たとえば、TLR4に結合するリポ多糖類(LPS)や、TLR3に結合する二本鎖RNAまたはポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリ[I:C])が挙げられる。
【0007】
「化学療法」は、がん細胞の殺傷(細胞傷害剤)またはがん細胞の分裂の停止(細胞増殖抑制剤)によって、がん細胞の増殖を止める薬物または薬剤を使用した治療である。化学療法剤としては、カルボプラチンやシスプラチンなどのアルキル化剤またはアルキル化剤様薬剤;ゲムシタビン、ペメトレキセド、メトトレキサートなどの代謝拮抗薬;ドキソルビシンなどの抗腫瘍抗生物質;トポテカン、イリノテカンまたはエトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害薬;ドセタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチンまたはビノレルビンなどの分裂阻害薬を挙げることができる。化学療法剤のさらなる例は、アメリカがん協会によって提示されており、https://www.cancer.org/treatment/treatments-and-side-effects/treatment-types/chemotherapy/how-chemotherapy-drugs-work.html(「アメリカがん協会-How Chemotherapy Drugs Work」2016)に掲載されている。このような化学療法剤は、通常、低分子薬剤(低分子量(たとえば900ダルトン未満)の有機化合物)であってもよい。本発明の目的の達成に関して、「化学療法」は、本明細書で定義する維持療法において使用される薬剤は含まない。化学療法は、治療が施されるがんの種類および病期に応じて、経口投与、注射投与、点滴投与、皮膚投与のいずれで投与してもよい。化学療法は、単独で投与してもよく、あるいは別の種類の治療を併用して投与してもよく、別の種類の治療としては、外科手術、放射線療法、生物学的製剤療法、他の種類の細胞よりもがん細胞において高発現される標的分子との相互作用などを利用して化学療法剤よりも特異的にがん細胞をターゲティングすることができる低分子薬剤などが挙げられる。
【0008】
本発明の文脈において、好ましい一実施形態では、「化学療法」は、制御性T細胞の応答を抑制するがん療法において使用されるあらゆる薬剤を除外する。したがって、本発明の一実施形態において、化学療法剤はシクロホスファミドではない(BerdおよびMastrangelo 1987;Fucikovaら、2017)。
【0009】
「術後補助化学療法」は、初回治療(たとえば外科手術または放射線療法、すなわち化学療法以外のがん治療)の後に、残存腫瘍の治療および/または転移の予防もしくは治療を目的として投与される化学療法治療である。本発明の文脈において、樹状細胞ワクチンは、術後補助化学療法としては考慮されていない。
【0010】
化学療法は、通常、複数のサイクルで投与され、治療期間の後に回復期間が続き、その後にさらに治療期間などが続く。したがって、「サイクル」は、1つの回復期間が後続する1つの治療期間を指す。
【0011】
同じ疾患を治療するために、複数の種類の薬剤を「併用化学療法」として投与することができる。
【0012】
最終サイクルにおいて化学療法剤の最後の投与が完了した際に、化学療法が「完了」する。疑義を避けるために付言すると、最終サイクルとは、予定された最終サイクルであってもよく、あるいは、化学療法が「中止」された場合(たとえば、望ましくない副作用または治療に対する奏効が認められないことにより完了前に中止された場合)、最終の投与サイクルであってもよい。
【0013】
「維持療法」または「維持治療」は、初回化学療法後に実施される治療、または完全寛解または部分奏効が見られた後に初回化学療法の実施中に開始される治療である(Sakarya 2016;Ellis 2016)。「維持療法」は、がんが消失または退縮した後に、がんの再発を予防するために実施される。たとえば術後補助化学療法では化学療法剤が使用されるが、維持治療では化学療法剤は使用しない。維持療法は、穏やかな副作用を有する選択された薬剤を使用した治療を含んでいてもよく、このような薬剤としては、たとえば、ホルモンおよびホルモン類似体(たとえば、エンザルタミド、アビラテロン、タモキシフェン、LHRHアゴニストおよびLHRHアンタゴニスト)、キナーゼ阻害薬(たとえば、エルロチニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブおよびオシメルチニブ)、PARP阻害薬(たとえば、オラパリブ、ニラパリブ)、DCワクチンを含むワクチン、または生物学的薬剤(たとえば、ベバシズマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブなどの抗体)が挙げられる。したがって、維持治療は、患者の完全寛解状態または部分寛解状態を維持することを目的とする。維持治療は、典型的には疾患を進行させ治療を中止せざるを得ないような有害事象を起こすことなく、長期間にわたって実施することが好ましい。インターフェロン/ヒドロキシクロロキン(IFN/HCQ)による治療は、維持療法から除外される。初回化学療法は術後補助化学療法であることが好ましい。
【0014】
DCワクチンは、原則として、化学療法の完了後に、すなわち化学療法に「続いて」患者に投与することができ、あるいは、化学療法の実施中にDCワクチンの投与を開始し、化学療法と「並行して」投与してもよい。本発明の目的を達成するため、DCワクチン療法は、化学療法の後に続けて投与され、すなわち、化学療法が完了した後、これに続いて投与される。
【0015】
化学療法が有効な場合、患者は該化学療法に対して「奏効を示す」。すなわち、腫瘍はそれ以上成長せず、かつ/または転移することもなく、あるいは腫瘍の大きさが縮小する。
【0016】
患者が最初からあるいは治療中に化学療法に対して奏効を示さない場合、該患者は該化学療法に対して「難治性」であり、これは、がんが化学療法薬に抵抗性であるか、または化学療法薬に対して抵抗性を獲得したことを意味する。
【0017】
改善期の後にがんまたはがんの徴候および症状が再度認められた場合に、治療したがんが「再発した」または「再発している」と考えられる。
【0018】
「生物学的薬剤」は、組換え技術による発現がよく利用される物質であり、がんやその他の疾患の予防、診断または治療に使用される。生物学的薬剤としては、抗体、核酸ベースの薬剤、融合タンパク質、ホルモン、ホルモン類似体またはサイトカインが挙げられる。構造が明らかにされており化学的に合成されることが多い低分子化学療法剤の大部分とは異なり、生物学的薬剤は、同定が容易ではなく特性評価も困難な複合混合物および/または翻訳後修飾された物質であることが多い。生物学的製剤は、生物工学的方法によって製造されたものも含むが、これらは熱に感受性を示す傾向があり、微生物汚染に弱い。本発明の好ましい一実施形態において、生物学的製剤はウイルスではない。
【0019】
「一次療法」は、疾患に対して行われる最初の治療である。一次療法は、標準治療の一環として実施されることが多く、たとえば、外科手術の後に化学療法および放射線療法が行われる。一次療法を単独で行う場合、通常、その疾患に対して最良であると認められている治療が行われる。一次療法で疾患が治癒しない場合、または一次療法によって重度の副作用が起こった場合、別の治療オプションを追加してもよく、あるいは一次療法の代わりに別の治療オプションを使用してもよい。一次療法は、導入療法、初回療法または初回治療とも呼ばれる。
【0020】
「一次化学療法」は、一次療法の一環として実施される、少なくとも1種の化学療法剤を使用した治療法である。「一次化学療法」は、樹状細胞ワクチン療法の並行使用を除外すると理解される。
【0021】
「二次化学療法」は、初回治療(一次療法)に対して患者が奏効を示さない場合、または一次療法の有効性が認められなくなった場合に行われる化学療法である。「三次化学療法」は、初回治療(一次療法)も、その後の治療(二次治療)も有効でない場合、またはどちらも有効性が認められなくなった場合に行われる化学療法である。
【0022】
「全生存期間(OS)」は、疾患(がんなど)の診断日、ランダム化日または疾患の治療開始日から、その疾患と診断された患者が生存した期間である。臨床試験において全生存期間の測定は、新規治療の有効性の測定方法の1つである。
【0023】
臨床試験における「ランダム化」とは、様々な治療法またはその他の治療的介入を比較するために、被験者を別々の群に無作為に割り付ける方法である。ランダム化では、各参加者を等しい確率でいずれかの群に割り付ける。
【0024】
「全生存率」は、研究群または治療群において、疾患(がんなど)の診断、ランダム化または疾患の治療の開始後から一定期間生存している人のパーセンテージである。全生存率は、5年生存率として表されることが多く、5年生存率とは、研究群または治療群において、診断または治療開始の5年後に生存している人のパーセンテージである。
【0025】
「無増悪生存期間(PFS)」は、疾患(がんなど)治療中または治療後に疾患が悪化せずに患者が生存している期間である。臨床試験において無増悪生存期間の測定は、新しい治療がどの程度良好に奏効しているのかを確認するための1つの方法である。
【0026】
患者が完全寛解に入っており、がんの徴候および症状がすべて消失した場合、患者のがんは「治癒している」。好ましい一実施形態において、完全寛解状態が5年以上続いていれば、患者の疾患が「治癒した」と見なされる。したがって、たとえば、患者が完全寛解に至らない場合、患者の疾患が再発した場合、あるいはがんが難治性の場合、患者の疾患は治療法により「治癒していない」。
【0027】
「標準治療」は、特定の種類の疾患に対する適切な治療として医療関係者に受け入れられており、医療従事者に広く使用されている治療である。標準治療は、ベスト・プラクティス、標準的医療または標準療法とも呼ばれる。
【0028】
「重篤な有害事象(SEA)」は、患者における医薬品の使用に伴う重篤な望ましくないあらゆる体験を指す。患者におけるアウトカムが、生命への危険、死亡、入院/入院の延長、先天異常、永続的な障害/損傷に対する予防的介入が必要な持続的または重大な身体障害/身体不能、または重大な医療事象(たとえば呼吸、血液疾患、痙攣/発作または薬物依存に関する重大問題)である場合、重篤な有害事象が発生したと言える。
【0029】
「化学療法の最終サイクルの完了直後」といった説明において使用される「直ちに」という用語は、約1週間、好ましくは3日間、より好ましくは1日を指す。
【0030】
「投与量」は、所定の時間に投与される測定された所定量の薬物またはDCワクチンを意味し、たとえば、x細胞の1日投与量を指す。
【0031】
「腫瘍関連ペプチド」は、腫瘍に関連している可能性のあるペプチドを意味する。腫瘍関連ペプチドの存在は、特定の腫瘍細胞の存在との相関性が高い場合がある。腫瘍関連ペプチドは、特定の腫瘍に特異性が高い場合があるが、別の種類の腫瘍にも関連している場合がある。さらに、腫瘍関連ペプチドは、腫瘍細胞だけでなく正常細胞にも見られる場合があるが、腫瘍関連ペプチドは腫瘍細胞における発現量が高い。腫瘍関連ペプチドは、大きな腫瘍関連タンパク質すなわち腫瘍関連タンパク質の「全体」の部分配列のみを含んでいてもよい。腫瘍関連ペプチドは、対応する腫瘍細胞から単離してもよく、組換えペプチドとして作製してもよい。
【0032】
「DNAまたはRNAに由来する抗原全体」は、抗原全体の配列をコードするDNAまたはRNAが樹状細胞に搭載されることを指す。
【0033】
「抗原タンパク質全体」は、抗原が、完全長タンパク質に由来するペプチドエピトープだけでなく、目的タンパク質の完全長配列を抗原として含むことを意味する。
【0034】
「イディオタイプタンパク質」は、たとえば、腫瘍細胞により発現された免疫グロブリン(Ig)クローンなどの可変領域に固有の抗原決定基で構成されたイディオタイプの標的タンパク質を指す。
【0035】
「腫瘍溶解物」は、腫瘍細胞と溶解緩衝液を含む組成物を指し、この溶解緩衝液は、腫瘍細胞を溶解する薬剤を含む。したがって、腫瘍の細胞内成分、膜貫通成分および/または細胞外成分が腫瘍溶解物中に含まれ、本発明による抗原として機能する。
【0036】
「腫瘍細胞全体」は、溶解緩衝液で溶解していない完全な腫瘍細胞を使用することを指す。
【0037】
「ウイルスベクターにより送達される抗原全体」は、ウイルスベクターを使用して樹状細胞に抗原を送達することを意味する。たとえば、抗原全体はタンパク質全体であってもよく、ウイルスベクターがこのタンパク質をコードし、このウイルスベクターが樹状細胞にトランスフェクトすると、樹状細胞においてこのタンパク質が発現される。
【0038】
「タキサン類」は、タキサジエンをコア構造とするジテルペンからなる化合物類を指す。タキサン類の例としては、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカバジタキセルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「白金錯体」は、金属部分が白金である金属錯体化合物を指す。白金は、たとえば、1種以上の有機化合物または無機化合物の酸素原子または窒素原子と複合体化し、白金錯体を形成する。白金錯体の例として、カルボプラチンおよびシスプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の詳細な説明および請求項において、「含む」という用語が使用されている場合、その他の要素を除外しない。本発明を達成する目的において、「からなる」という用語を使用して述べた態様は、「含む」という用語を使用して述べた態様よりも好ましい実施形態であると見なされる。以下において、特定の群が、少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義されている場合、これらの実施形態のみからなることが好ましい群も開示されていると理解される。
【0041】
単数名詞を指して「a」、「an」または「the」などの不定冠詞または定冠詞が使用されている場合、特段の記載がない限り、該当する名詞の複数形も含む。
【0042】
技術用語は、通常の意味で使用される。特定の用語が特定の意味を表す場合、この用語が使用されている以下の文脈においてこの用語の定義を記載する。
【0043】
発明の詳細な説明
第1の態様において、本発明は、少なくとも1種の化学療法剤を使用した化学療法の完了後に、樹状細胞ワクチンを患者に投与することを特徴とする、がんの治療に使用するための樹状細胞ワクチン(DCワクチン)に関する。使用する1種または複数種の化学療法剤は、適任の医師によって決定されてもよく、治療の対象となるがんに推奨されている標準治療の一部であってもよい。標準治療に応じて、1種または複数種の化学療法剤を1サイクルまたは複数サイクルで投与してもよい。化学療法の各サイクルの持続期間、サイクルの頻度およびサイクル数は、治療の対象となるがんおよび使用する1種または複数種の化学療法剤によって決まる。1種または複数種の化学療法剤は、外来患者または入院患者に対して、全量を1日で投与してもよく、数日間連続して投与してもよく、持続投与してもよい。治療は、具体的なプロトコルに応じて、数分間、数時間または数日間にわたって継続される場合がある。化学療法は、毎週、2週に1回または毎月繰り返してもよい。通常、サイクルは、月ごとに定義される。たとえば、2週に1回の化学療法セッションを2回実施した後に回復期間が続く周期を1サイクルとしてもよい。ほとんどの場合、総サイクル数すなわち化学療法の開始から終了までの期間は、臨床研究および臨床試験により決定される。がんの徴候が検出可能である限り、化学療法治療の期間は、化学療法に対するがんの反応に応じて決定される。がんが完全に消失した場合(完全奏効)、この消失が観察されてから化学療法をさらに1~2サイクル継続してもよく、これによって、顕微鏡的腫瘍すなわち検出不能な腫瘍をすべて根絶できる見込みを最大限まで高めることができる。がんが退縮したが消失しない場合(部分奏効)、化学療法が忍容可能で、がんが成長(進行)しない限り、化学療法を継続してもよい。
【0044】
がんが成長し続けた場合、化学療法を中止し、患者がこの化学療法に対して難治性を示したと見なし、化学療法は完了したものとする。最終サイクルにおいて化学療法剤の最終投与が完了した場合も、化学療法が完了したものとする。
【0045】
驚くべきことに、化学療法の完了後に(続けて)DCワクチンを単独で投与した一次治療を行ったがん患者は、コントロール群(化学療法のみ)および化学療法とDCワクチンを並行して投与した患者群と比べて、全生存期間が統計学的に有意に延長したことが分かった(図2および図3参照)。また、極めて異例にも、本臨床研究の参加者を選択してから3.5年以上経過した後でも、化学療法の完了後にDCワクチンを投与した治療群の患者は現在まで1人も死亡していない(per-protocol集団)。一方、標準治療(本臨床研究ではカルボプラチンとパクリタキセルの併用)を投与した患者の約40%が死亡しており、化学療法とDCワクチンを並行して投与した治療群では、患者の約30%が死亡している(図3参照)。したがって、本発明では、化学療法が完了した後でのみDCワクチンを投与することが極めて重要であると見られる。「化学療法の完了」は、化学療法による治療に奏効を示した患者に対してのみ使用される用語であると理解される。
【0046】
DCワクチンは、静脈内投与用、皮内投与用または皮下投与用に製剤化してもよく、皮下投与用に製剤化することが好ましい。DCワクチンは、たとえば点滴用またはボーラス注射用に製剤化することができ、アジュバントとともに投与してもよい(Elster、KrishnadasおよびLucas 2016)。投与は、全身投与、局所領域投与、局所投与のいずれであってもよい。1回投与量を注射する場合、1回の注射または複数回の注射で投与することができるが、2回の注射に分けて投与することが好ましい。患者へのDCワクチンの投与は、好ましくは、治療の対象となるがんが発生している領域の近傍にあるリンパ節領域への皮下投与により行ってもよい。様々な送達システムが知られており、これらをDCワクチンの送達に使用することができる。投与方法は医師の判断に任せてもよい。
【0047】
本発明の文脈において、「化学療法」(腫瘍細胞を殺傷する薬剤または腫瘍細胞の分裂を停止させる薬剤)は、たとえば腫瘍細胞の成長を止めたり、腫瘍細胞を殺傷したりする目的で腫瘍細胞に作用させるために患者に処方される薬剤のみを含むと理解される。したがって、「化学療法」は、化学療法剤として使用される細胞増殖抑制剤または細胞傷害剤に分類される化合物に関すると理解される。好ましい一実施形態において、前記少なくとも1種の化学療法剤は、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ペグ化リポソームドキソルビシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、トラベクテジン、ミトキサントロン、カバジタキセル、ビノレルビン、ペメトレキセド、ビンブラスチンおよびアルブミン結合パクリタキセルから選択される。化学療法の具体的なレジメンは、治療の対象となる特定のがんに対して確立された標準治療に従ってもよく、医師の判断に従ってもよい。好ましい一実施形態において、化学療法剤はシクロホスファミドではない。特に好ましい一実施形態において、化学療法剤は、BerdらおよびFucikovaら(BerdおよびMastrangelo 1987;Fucikovaら、2017)により報告されているような、制御性T細胞の機能の抑制を目的として使用されるシクロホスファミドの低用量レジメンではなく、樹状細胞ワクチンの接種前にシクロホスファミドを使用しないことがより好ましい(Dongら、2016)。疑義を避けるために付言すると、本発明の趣旨における化学療法は、共存症の治療のために処方される薬剤、副作用の回避もしくは副作用の治療のために処方される薬剤、副作用からの患者の回復の補助のために処方される薬剤(たとえばエリスロポエチン)、維持療法として処方される薬剤をいずれも含まない。
【0048】
患者へのDCワクチンの初回投与は、化学療法の最終サイクルの完了後2ヶ月以内に行うことが好ましく、化学療法の最終サイクルの完了後1ヶ月以内に行うことが好ましく、化学療法の最終サイクルの完了後2週間以内に行うことがより好ましく、化学療法の最終サイクルの完了直後に行うことが最も好ましい。化学療法の最終サイクルの完了とDCワクチンの投与のタイミングは、使用する1種または複数種の化学療法剤、治療の対象となるがん、および前記1種または複数種の化学療法剤の毒性に対する患者の反応に応じて決めてもよい。好ましい一実施形態において、少なくとも3サイクルの化学療法を患者に投与し、少なくとも6サイクルの化学療法を投与することが好ましい。
【0049】
あるいは、患者へのDCワクチンの初回投与は、化学療法の最終投与の実施後2ヶ月以内に行い、化学療法の最終投与の実施後1ヶ月以内に行うことが好ましく、化学療法の最終投与の実施後2週間以内に行うことがより好ましい。この最終投与は、化学療法の最終サイクル中に行ってもよく、すなわち、化学療法の最終サイクルが完了する前に行ってもよい。
【0050】
好ましい一実施形態において、前記化学療法は一次化学療法である。一次化学療法の種類は、治療の対象となるがんおよびその病期(たとえば、TNM病期分類システム-腫瘍/リンパ節/転移(「米国国立がん研究所-診断および病期分類」2015年)または卵巣がんのFIGO病期分類(「卵巣がんFIGO病期分類」2014年))によって決まる。たとえば、卵巣がんの一次治療の場合、タキサン類と白金錯体の併用化学療法、特にパクリタキセルとカルボプラチンの併用化学療法またはドセタキセルとカルボプラチンの併用化学療法の完了後に、樹状細胞ワクチンを投与してもよい。カルボプラチンは、ゲムシタビンと併用投与してもよい。あるいは、化学療法剤の組み合わせは、ペグ化リポソームドキソルビシンとカルボプラチンの組み合わせであってもよい。より一般的には、様々な病期のがん(卵巣がん、前立腺がん、肺がんなど)に使用され、完了後に樹状細胞ワクチンを投与してもよい一次化学療法治療は、http://www.cancertherapyadvisor.com(CancerTherapyAdvisor 2017b、2017c、2017a)に掲載されている。
【0051】
さらに、本発明は、過去の化学療法治療によって治癒していないがんを有する患者に対して、化学療法の完了後に投与されるDCワクチン治療に関する。患者のがんが過去の化学療法によって治癒しなかった理由としては、過去の化学療法の完了後または中止後に患者のがんが再発したこと、または患者のがんが過去の化学療法に対して難治性を示したことが挙げられる。たとえば、このような患者が二次化学療法を受ける場合、この二次化学療法の完了後に樹状細胞ワクチンを投与することができる。
【0052】
別の一態様において、がんの治療に使用される本発明のDCワクチンは、維持療法と併用して投与してもよい。卵巣がんの維持療法の例としては、ベバシズマブを使用した治療(カルボプラチンとパクリタキセルを併用した一次治療後の継続維持療法)、オラパリブを使用した治療(白金感受性がんに対する二次治療後および三次治療後)またはニラパリブを使用した治療(三次治療後)が挙げられる。非小細胞肺腺癌の維持療法の例としては、一次治療後にベバシズマブを使用した治療が挙げられる。好ましい一実施形態において、維持療法には、ベバシズマブ、オラパリブおよび/またはニラパリブを使用した治療法が含まれる。
【0053】
様々な種類のDCワクチンが当技術分野でよく知られており、DCに腫瘍抗原を搭載する方法およびDCに腫瘍抗原をパルスする方法によって様々な種類に分類することができる(TurnisおよびRooney 2010;Elster、KrishnadasおよびLucas 2016)(これらの文献は参照により本明細書に援用される)。したがって、化学療法の完了後に患者に投与することによってがんの治療に使用される本発明のDCワクチンは、腫瘍関連ペプチド、DNAまたはRNAに由来する抗原全体、抗原タンパク質全体、イディオタイプタンパク質、腫瘍溶解物、腫瘍細胞全体、およびウイルスベクターにより送達される抗原全体から選択される抗原材料がエクスビボにおいて搭載されたDCワクチンである。本発明のDCワクチンは、任意で、Toll様受容体アゴニスト(たとえば、ポリ[I:C]またはLPS)で成熟化してもよい。特に、本発明のDCワクチンは、TLR3アゴニストであるポリ[I:C]で成熟化される。腫瘍溶解物は、自家腫瘍の溶解物であってもよく、同種腫瘍の溶解物または異種腫瘍の溶解物であってもよい。同様に、腫瘍細胞全体は、自家腫瘍細胞の全体であってもよく、同種腫瘍細胞の全体または異種腫瘍細胞の全体であってもよい。腫瘍細胞全体および腫瘍溶解物は、1種または複数種の腫瘍細胞株に由来するものであってもよく、治療の対象となる患者の腫瘍と一致する特定の抗原の存在に基づいて選択してもよい。抗原材料は、当業者に公知の技術によって選択し、DCに搭載してもよい(TurnisおよびRooney 2010;Elster、KrishnadasおよびLucas 2016)。
【0054】
本発明の好ましい一実施形態において、抗原材料は腫瘍細胞全体であり、該腫瘍細胞は、WO2013/004708およびWO2015/097037(これらの文献は参照により本明細書に援用される)の記載に従って高静水圧(HHP)により殺傷されたものであることが好ましい(WO2013/004708の実施例1~4ならびにWO2015/097037の実施例2および実施例3を参照されたい)。簡潔に述べると、細胞株または患者から得られた腫瘍細胞の全体に対して、200~300MPaの高静水圧を10分間~2時間加えることによって処理する。このような処理によって、免疫原性細胞死(immunogenic cell death(ICD))と呼ばれるアポトーシスが腫瘍細胞に誘導される。ICDは、細胞表面上のHSP70、HSP90、カルレティキュリンなどの免疫原性分子の発現、および後期アポトーシスのマーカーであるHMGB1とATPの遊離を特徴とする。したがって、ICDの誘導により、樹状細胞による腫瘍細胞の取り込みが増加して、様々な種類の腫瘍抗原が搭載され、これらを提示する樹状細胞が得られる。アポトーシスが誘導された腫瘍細胞は、樹状細胞に搭載する前に凍結保存してもよい。
【0055】
好ましい一実施形態において、DCワクチンに搭載される腫瘍細胞全体は、患者と同種である。自家腫瘍細胞は、患者の腫瘍抗原とより良好にマッチングするとされているが、実際は、自家腫瘍生検試料からDCワクチンを製造するには非常に煩雑な工程が必要とされる。したがって、たとえば、治療の対象となる腫瘍疾患に通常発現される腫瘍抗原と重複する腫瘍抗原を発現する同種の腫瘍細胞(たとえば腫瘍細胞株)を使用することが好ましい。
【0056】
このような理由から、樹状細胞は、治療の対象となる患者の自家単球に由来するものであってもよい。本明細書で述べる「単球」は、豆の形をした核と顆粒が存在しないことを特徴とする血中循環白血球を指す。単球から樹状細胞を分化させることができる。当業者に公知の技術を使用して、患者の血液中から単球を単離することができ、この際、白血球除去法を使用することが好ましい。白血球除去法を使用することによって、治療の対象となる患者から自家単球を採取することができ、採取した自家単球をDCワクチンの調製に使用することができる。白血球除去法は、当業者に公知の技術により実施してもよい。
【0057】
通常、樹状細胞は、化学療法を実施する前に白血球除去法により採取された単球に由来するものであり、化学療法の実施後に樹状細胞ワクチンが接種される。化学療法の多くでは好中球減少症が誘発されるため、化学療法の開始後に白血球除去法を行うと、採取される生細胞の数が少なくなる恐れがあり、したがって、DCワクチンの量および/または質が低下する。
【0058】
本発明の別の一態様において、樹状細胞ワクチンを患者に5~30回投与し、特に、樹状細胞ワクチンを患者に8~15回投与する。別の好ましい一実施形態では、樹状細胞ワクチンを患者に少なくとも8回投与する。樹状細胞(DC)ワクチンの製造工程において、DCワクチンを複数の投与量に分割してもよく、この際、同じ数の樹状細胞が各投与量に含まれるようにする。DCワクチンの各投与量は、使用まで凍結保存することができる。DCワクチンの投与回数は、治療を行う医師の判断に任せてもよい。DCワクチンは、好ましくは投与間隔を1~6週間ごととして、化学療法の完了後に患者に投与してもよい。好ましい一実施形態において、DCワクチンは、各投与の間隔を1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、5週間ごとまたは6週間ごととして投与してもよく、3週間ごとに投与することが好ましい。投与間隔および投与回数は、治療の対象となるがん、該がんの病期、または治療の一部である化学療法の種類に応じて決定してもよく、医師の判断に任せてもよい。また、投与間隔は、治療中に変更してもよく、初めの投与は短い間隔(たとえば3週間ごと)で開始し、その後の投与では間隔をより長くして(たとえば6週間ごとに)行ってもよい。好ましい一実施形態において、初めの5回は3週間ごとに投与し、その後は6週間ごとに投与する投薬レジメンが好ましい。この投薬レジメンは、卵巣がんの治療に特に好ましい。
【0059】
別の一実施形態において、本発明は、化学療法の完了後に患者に投与されるDCワクチンによるがんの治療であって、該がんが、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、脳腫瘍および悪性黒色腫からなる群から選択される治療に関する。一実施形態において、治療の対象となるがんは、白血病やリンパ腫などの液性腫瘍がんではない。したがって、前記がんは、固形腫瘍がんであることが好ましい。卵巣がんとしては、上皮性卵巣がん、卵管がんおよび原発性腹膜がんが挙げられ、国際産婦人科連合[FIGO]分類によるI~IV期のいずれであってもよい。前立腺がんとしては、腺房腺癌、導管腺癌、移行細胞がん、扁平上皮細胞がんおよび小細胞がんが挙げられ、グリーソンスコアシステムを使用して分類してもよい。肺がんは特に非小細胞肺がんであり、肺腺癌、扁平上皮細胞肺癌および大細胞肺癌が挙げられる。好ましい一実施形態において、治療の対象となるがんは、卵巣がん、前立腺がん、脳腫瘍および悪性黒色腫からなる群から選択される。
【0060】
別の好ましい一実施形態において、治療の対象となるがんは、卵巣がんまたは肺がんであり、新たに診断された上皮性卵巣癌(すなわち過去に卵巣がんと診断されていない患者)、再発した白金感受性上皮性卵巣癌またはIV期の非小細胞肺がんであることがより好ましい。
【0061】
別の好ましい一実施形態において、前記がんは肺がんではない。別の一実施形態において、前記がんは、III期の非小細胞肺がんではない。
【0062】
さらに別の好ましい一実施形態において、前記がんは卵巣がんであり、新たに診断された卵巣癌であることがより好ましい。
【0063】
特に好ましい別の一実施形態において、前記がんは、再発性進行性卵巣がんまたは再発性白金感受性卵巣癌である。
【0064】
好ましい一実施形態において、前記化学療法治療は、少なくとも2種の化学療法剤の併用療法をさらに含む。該併用療法は、パクリタキセルとカルボプラチンの組み合わせ、パクリタキセルとシスプラチンの組み合わせ、ドセタキセルとカルボプラチンの組み合わせ、シスプラチンとビノレルビンの組み合わせ、シスプラチンとエトポシドの組み合わせ、シスプラチンとゲムシタビンの組み合わせ、シスプラチンとペメトレキセドの組み合わせ、シスプラチンとイリノテカンの組み合わせ、ゲムシタビンとドセタキセルの組み合わせ、カルボプラチンとエトポシドの組み合わせ、カルボプラチンとゲムシタビンの組み合わせ、カルボプラチンとペメトレキセドの組み合わせ、およびゲムシタビンとドセタキセルの組み合わせから選択することが特に好ましい。併用療法は、治療の対象となる特定のがんに対して確立された標準治療または学会のガイドラインに従ってもよく、医師の判断に従ってもよい。好ましくは卵巣がんの治療のための、一次治療の好ましいセッティングにおいて、タキサン類と白金錯体、特にパクリタキセルとカルボプラチンを併用した化学療法の完了後にDCワクチンを投与してもよい。特に再発性進行性卵巣がんの治療のための、別の好ましいセッティングでは、白金錯体とゲムシタビンを併用した化学療法の完了後にDCワクチンを投与してもよい。
【0065】
別の好ましい一実施形態において、新たに診断された上皮性卵巣癌の化学療法治療は、タキサン類を併用した白金化合物である。
【0066】
別の特に好ましい一実施形態において、新たに診断された上皮性卵巣癌の化学療法治療は、パクリタキセルを併用したカルボプラチンである。
【0067】
さらに別の一実施形態において、新たに診断された卵巣がん患者に化学療法の第1サイクルを投与する前に、白血球除去法を行う。白血球除去法により採取した自家単球をサイトカインの存在下で培養し、未熟な樹状細胞を得る。このサイトカインとしては、GM-SCFおよびIL-4が好ましい。次に、免疫原性細胞死(immunogenic cell death)を起こした腫瘍細胞、好ましくは治療の対象となる腫瘍と同じ種類の腫瘍に由来する同種腫瘍細胞株を高静水圧で処理したものを、未熟な樹状細胞に搭載する。次に、TLRアゴニスト、好ましくはポリ[I:C]で樹状細胞をさらに成熟化させて、樹状細胞(DC)ワクチンを得る。得られたDCワクチンは、1回の投与量あたり約1×107個の樹状細胞を含む単位投与量に分割し、保存してもよい。
【0068】
一実施形態において、患者の治療は一次化学療法(たとえば販売承認指令書に従った、たとえばカルボプラチンとパクリタキセルの併用治療)から開始する。好ましい一実施形態において、患者の治療は、3週間の一次化学療法を6サイクル実施することから開始する。DCワクチンの初回投与は、化学療法の最終サイクルの完了時に行ってもよい。好ましい一実施形態において、DCワクチンの初回投与は、一次化学療法の最終投与の2週間前または2週間後に行う。DCワクチンを約10回投与する場合、初めの5回は3週間ごとに投与し、その後は6週間ごとに投与してもよい。ベバシズマブなどを使用した維持治療は、一次化学療法および/またはDCワクチンと併用して投与してもよい。
【0069】
さらに、以下の項において本発明を説明する。
1.少なくとも1種の化学療法剤を使用した化学療法の完了後に、樹状細胞ワクチンを患者に投与することを特徴とする、がんの治療に使用するための樹状細胞ワクチン。
2.前記樹状細胞ワクチンの初回投与が、前記化学療法の最終サイクルの完了後2ヶ月以内に行われ、好ましくは前記化学療法の最終サイクルの完了後1ヶ月以内に行われ、より好ましくは前記化学療法の最終サイクルの完了後2週間以内に行われ、最も好ましくは前記化学療法の最終サイクルの完了直後に行われる、項1に記載の樹状細胞ワクチン。
3.前記樹状細胞ワクチンの初回投与が、前記化学療法の最終投与の実施後2ヶ月以内に行われ、好ましくは前記化学療法の最終投与の実施後1ヶ月以内に行われ、より好ましくは前記化学療法の最終投与の実施後2週間以内に行われる、項1に記載の樹状細胞ワクチン。
4.前記化学療法が一次化学療法である、項1~3のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
5.前記患者のがんが、過去の化学療法治療によって治癒していない、項1~4のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
6.維持療法と併用して投与される、項1~5のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
7.前記樹状細胞が、腫瘍関連ペプチド、DNAまたはRNAに由来する抗原全体、抗原タンパク質全体、イディオタイプタンパク質、腫瘍溶解物、腫瘍細胞全体、およびウイルスベクターにより送達される抗原全体から選択される抗原材料をエクスビボで搭載したものである、項1~6のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
8.前記抗原材料が、腫瘍細胞全体であり、好ましくは高静水圧で殺傷された腫瘍細胞である、項7に記載の樹状細胞ワクチン。
9.前記腫瘍細胞全体が前記患者と同種である、項7または8に記載の樹状細胞ワクチン。
10.前記樹状細胞が、化学療法の実施前に白血球除去法によって得られた単球に由来するものである、項1~9のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
11.i)前記樹状細胞ワクチンを5~30回投与し、特に、前記樹状細胞ワクチンを8~15回投与すること;
ii)前記樹状細胞ワクチンを1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、5週間ごともしくは6週間ごとに投与すること;および/または
iii)投薬スケジュールが、初めの5回は3週間ごとに投与し、その後、3週間ごともしくは6週間ごとに5回投与することを含むこと
を特徴とする、項1~10のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
12.前記がんが、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、脳腫瘍および悪性黒色腫からなる群から選択され;好ましくは、卵巣がんであり;より好ましくは、新たに診断された卵巣がんである、項1~11のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
13.前記少なくとも1種の化学療法剤が、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ペグ化リポソームドキソルビシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、トラベクテジン、ミトキサントロン、カバジタキセル、ビノレルビン、ペメトレキセド、メトトレキサート、ビンブラスチンおよびアルブミン結合パクリタキセルから選択される、項1~12のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
14.前記化学療法が、タキサン類と白金錯体の組み合わせ、ゲムシタビンと白金錯体の組み合わせ、シスプラチンとビノレルビンの組み合わせ、シスプラチンとエトポシドの組み合わせ、シスプラチンとペメトレキセドの組み合わせ、シスプラチンとイリノテカンの組み合わせ、ゲムシタビンとドセタキセルの組み合わせ、カルボプラチンとエトポシドの組み合わせ、カルボプラチンとペメトレキセドの組み合わせ、およびゲムシタビンとドセタキセルの組み合わせから選択される併用療法を含み、
好ましくは、
i)前記化学療法が、タキサン類と白金錯体の組み合わせを使用した化学療法を含み、好ましくは、パクリタキセルとカルボプラチンの組み合わせ、パクリタキセルとシスプラチンの組み合わせ、およびドセタキセルとカルボプラチンの組み合わせから選択されるタキサン類と白金錯体の組み合わせを使用した化学療法を含み、より好ましくは、前記組み合わせが、パクリタキセルとカルボプラチンであるか、または
ii)前記組み合わせが、ゲムシタビンと白金錯体であり、好ましくは、シスプラチンとゲムシタビン、もしくはカルボプラチンとゲムシタビンである、
項1~13のいずれか1項に記載の樹状細胞ワクチン。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】卵巣がんに対する臨床研究の概略図である。化学療法と並行して投与したDCワクチン治療または化学療法の後に続けて投与したDCワクチン治療と、化学療法を使用した標準治療との比較を行った。「DCVAC OvCa」は、実施例1に記載するように、免疫原性細胞死(immunogenic cell death)を起こした卵巣癌細胞を搭載し、Toll様受容体3(TLR-3)リガンドで成熟化した樹状細胞で構成された樹状細胞(DC)ワクチンを示す。
図2】臨床研究におけるIntention-to-Treat(ITT)集団の全生存期間(OS)の中間解析を示す。
図3】臨床研究におけるPer-Protocol(PP)集団の全生存期間(OS)の中間解析を示す。図2および図3の「打ち切り」とは、報告時点までに臨床研究に含まれていた患者であることを意味する。打ち切られた被験者は、カプランマイヤー曲線上のヒゲで示し、これらの被験者は、観察区間中に追跡が中止されている。
【実施例
【0071】
実施例1.樹状細胞(DC)ワクチン
DCワクチンは、殺傷した卵巣癌細胞をエクスビボで搭載し、Toll様受容体3(TLR-3)リガンドで成熟化した自家樹状細胞で構成した。この樹状細胞は、白血球除去法により採取した自家単球から誘導した。白血球除去製剤から単離した単球を、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子およびインターロイキン4の存在下で培養し、未熟な樹状細胞を得た。未熟な樹状細胞に、卵巣癌細胞株OV-90およびSK-OV-3の各細胞を(2:1の比率で)搭載した。OV-90細胞およびSK-OV-3細胞は、樹状細胞培養物に添加する前に、(WO2013/004708の実施例1~4に記載の方法で)高静水圧(HHP)で処理することによって、免疫原性細胞死(immunogenic cell death)を誘導した(Fucikovaら、2014)。腫瘍細胞を搭載した樹状細胞は、TLR-3リガンドであるポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリ[I:C])で活性化した。
【0072】
最終的に得られた製剤を、10%ジメチルスルホキシドを添加したCryoStor CS10凍結保存培地1mL中に、1バイアルあたり約1×107個の樹状細胞が含まれるように分割して凍結保存した。
【0073】
分割して保存していたDCワクチンを、-50℃よりも低い温度のドライアイスに乗せて研究室に運んだ。次に、DCワクチンの各分割量(1回投与量)を解凍し、生理食塩水で希釈して最終量を5mLとした。希釈したDCワクチンを、患者の鼠径部とその対側部の2箇所に皮下投与した(各投与部位に対して2.5mLずつ)。
【0074】
実施例2.新たに診断された卵巣がん患者における系統的標準療法
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)によって、新たに診断された卵巣がん患者に対する治療オプションのガイドラインが確立されている(Ledermannら、2013)。
【0075】
外科手術の実施後に、白金系化学療法剤を使用した一次化学療法を行う治療は、患者の大部分において標準治療として行われており、患者の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が改善される。しかしながら、最初の奏効が確認されるにもかかわらず、患者の約70%では進行性がんが再発し、5年以内に死に至る(Ledermannら、2013)。
【0076】
実施例3.初回再発時の白金感受性卵巣がんの標準治療
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)によって、初回再発時の白金感受性卵巣がんの治療のための治療オプションのガイドラインが確立されている(Ledermannら、2013)。これには、最近認可された維持療法も含まれている。
・二次治療:白金化合物(プラチナダブレット)を併用したタキサン類は、有益であると考えられ、トラベクテジンとペグ化リポソームドキソルビシンの組み合わせなどの、その他の薬剤の組み合わせも臨床試験で評価されている。毒性プロファイルと投与の利便性に基づいて薬剤を選択すべきである。
・標的療法:カルボプラチンおよびゲムシタビンを併用したベバシズマブが承認されており、過去にベバシズマブで治療していない患者の白金感受性再発疾患に推奨されている。
・二次化学療法後の維持療法:PARP阻害薬であるオラパリブは、BRCA変異(生殖細胞変異および/または体細胞変異)を有する白金感受性の再発高悪性度漿液性上皮性卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がんを有し、白金系化学療法に奏効(完全奏効または部分奏効)を示した成人患者の維持療法のための単剤治療薬として適用されている。また、別のPARP阻害薬であるニラパリブは、再発した上皮性卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がんを有し、白金系化学療法に完全奏効または部分奏効を示した成人患者の維持療法に適用されている。
【0077】
化学療法後の再発の克服を目的とした最適な治療アプローチの開発に多大な努力が注がれているにもかかわらず、再発疾患を有する患者にとって利用可能な治療オプションは依然として限られたままであり、このような患者の大部分は最終的に死に至る。疾患が再発した患者は、平均余命および生活の質を改善しうる新たな治療オプション(DCワクチンなど)を非常に必要としている。
【0078】
実施例4.進行性卵巣がんと新たに診断された患者の臨床データ
新たに上皮性卵巣癌と診断され、腫瘍減量手術を受けた女性において、非盲検多施設共同3群第II相臨床試験による評価を行った。この臨床研究は、DCワクチンの有効性および安全性を評価することを目的として実施し、具体的には、カルボプラチンとパクリタキセルを併用した化学療法による標準治療と並行してアドオン療法としてDCワクチンを投与した場合、またはカルボプラチンとパクリタキセルを併用した化学療法による標準治療の後に続けてDCワクチン投与した場合を、化学療法を単独投与した場合と比較した。
【0079】
中央ランダム化により、合計99人の患者を1:1:1の比率で各治療群に割り付けた。
・A(34人の患者)化学療法による標準治療と並行してDCワクチンを投与する。
・B(34人の患者)化学療法による標準治療の後に続けてDCワクチンを投与する。
・C(31人の患者)化学療法による標準治療を単独で投与する。
DCワクチンは、治療群Aおよび治療群Bの患者に対して最大で10回皮下投与(SC)した。いずれの治療群においても、化学療法は6サイクルを予定していた(図1)。
【0080】
intent-to-treat(ITT)集団は、治療を受けたか否かに関係なくランダム化された患者全員を含んでいた。一方、治療群Aおよび治療群Bにランダム化された患者は、ITT集団に含まれるように、DCワクチンを少なくとも1回投与する必要があった(ITT:31人の患者からなる治療群A[DCワクチンの並行投与]、30人の患者からなる治療群B[DCワクチンの後続投与]、および31人の患者からなる治療群C[標準治療])。
【0081】
per-protocol(PP)集団は、化学療法による標準治療を少なくとも3サイクル行ったランダム化患者全員を含んでおり、治療群Aおよび治療群Bに対しては、DCワクチンを少なくとも8回投与し、選択基準を遵守し、試験実施計画書から大きく逸脱することはなかった(PP:29人の患者からなる治療群A[DCワクチンの並行投与]、28人の患者からなる治療群B[DCワクチンの後続投与]、および30人の患者からなる治療群C[標準治療])。
【0082】
3つの治療群は、患者背景および疾患の特性に関して均等になるようにした(表1)。化学療法およびDCワクチンへの暴露は表2にまとめた。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
初回の治療を行った時点またはランダム化を行った時点を臨床試験期間の開始時点として結果を算出した。当初の計画に従い、per protocol集団において、ランダム化を行った日からの無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の中間解析を2回行った。最後に登録された患者に化学療法による標準治療を最終投与した6ヶ月後に1回目を実施し、12ヶ月後に2回目を実施した。DCワクチンの製造に失敗した患者と試験実施計画書を遵守できなかった患者は、per protocol集団から除外した。2回の解析で得た結果は一致していた。2回目の中間解析では、40件の病勢進行が報告され(PFSデータ成熟度:43.47%)、14人の患者が死亡した(OSデータ成熟度:15.22%)。2回目の中間解析で得た結果を以下に示す。2回目の中間解析を実施した時点での患者の追跡期間の中央値は、治療開始時点から22.9ヶ月(686日)であり、ランダム化時点から22.8ヶ月(694日)であった。
【0086】
ログランク検定を使用して、2つの治療群の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の分布を比較した。
H01:A群PFS/OS=C群PFS/OSとH11:C群PFS/OS≠A群PFS/OSの比較
H02:B群PFS/OS=C群PFS/OSとH12:C群PFS/OS≠B群PFS/OSの比較
ハザード比(HR)はCox比例ハザード回帰分析を使用して算出した。ハザード比(HR)の推定値は、比例ハザード回帰モデルにフィッティングした。
λ(t)=λ0(t)×exp(βz)
(式中、λ0(t)はC群のハザード関数のベースラインであり、λ(t)はA群/B群のハザード関数であり、zはバイナリ共変量であり(A群/B群では1、C群では0)、exp(β)はハザード比(HR)である)。
【0087】
ITT集団における有効性
治療群B(DCワクチンの後続投与)と治療群C(標準治療)の間では、全生存期間(OS)に統計学的有意差が認められ、治療群Bにおいて全生存期間(OS)が有意に延長した(HR=0.13、治療開始時点からp=0.0259、ランダム化時点からp=0.0251;表3および図2)。これは、死亡リスクが標準治療と比べて87%低下していることを意味している。驚くべきことに、後続治療群Bでは、中間報告時に報告された死者は1人のみであり、さらに、この死亡は、臨床試験の化学療法期間中に起こったものであり、DCワクチン(DCVAC)を使用した治療を行う前であった(図2を参照されたい)。治療群A(DCワクチンの並行投与)と治療群C(標準治療)の全生存期間(OS)では、統計学的有意差は認められなかったが、治療群Aでは、治療群Cと比べて全生存期間(OS)の改善傾向が見られた(HR=0.64、治療開始時点からp=0.4513、ランダム化時点からp=0.4460;表3および図2)。本臨床研究の規模が比較的小さかったことから、有意性に至らなかったと見られる。並行治療群Aでは、標準治療を使用した治療群Cよりも死亡者数が明らかに少なかった(図2参照)。
【0088】
驚くべきことに、標準的な化学療法と並行してDCワクチンを投与した場合および標準的な化学療法を単独で投与した場合よりも、一次化学療法の完了後に続けてDCワクチンを投与した場合の方が有意に良好であったことがデータから認められる(図2の全生存期間を参照されたい)。治療群Bは、治療群Aおよび治療群Cよりも有意に延長した全生存期間を示した。より具体的には、3.5年後以降では、治療群Cの全生存期間が最も短かった。
【0089】
【表3】
【0090】
PP集団における有効性
治療群B(DCワクチンの後続投与)と治療群C(標準治療)の間では、統計学的有意差が認められ、治療群Bにおいて全生存期間(OS)が有意に延長した(HR=0.00、治療開始時点からp=0.0071、ランダム化時点からp=0.0068;表4および図3)。これは、後続治療群Bにおいて3.5年後以降は死亡が発生しなかったことを意味している。治療群A(DCワクチンの並行投与)と治療群C(標準治療)の全生存期間(OS)では、統計学的有意差は認められなかったが(HR=0.51、治療開始時点からp=0.2777、ランダム化時点からp=0.2735;表4および図3)、治療群Aでは、治療群Cと比べて全生存期間(OS)の改善傾向が見られた。本臨床研究の規模が比較的小さかったことから、有意性に至らなかったと見られる。並行治療群Aでは、標準治療を使用した治療群Cよりも死亡者数が明らかに少なかった(図2参照)。
【0091】
したがって、標準的な化学療法と並行してDCワクチンを投与した場合および標準的な化学療法を単独で投与した場合よりも、一次化学療法の完了後に続けてDCワクチンを投与した場合の方が良好であるという前記ITT集団で認められた結果は、PP集団のデータにおいてさらに顕著であった。
【0092】
【表4】
【0093】
全体として、これらの臨床データでは、驚くべきことに、標準治療(C群)と比較した場合、一次化学療法の完了後に続けてDCワクチンを投与する群(B群)にランダム化された患者の全生存期間に対して有意かつ顕著なベネフィットが示された。さらに驚くべきことに、DCワクチンの後続投与(B群)は、標準的な化学療法と並行して投与したDCワクチン(A群)よりも有意かつ顕著に優れていた。
【0094】
さらに、DCワクチンを患者に複数回(特に少なくとも8回)送達すると、患者に対して有益であることも分かった。これは、ハザード比(HR)がITT集団よりもPP集団において低かったことから推定することができる(PP集団の選択条件は、DCワクチンを少なくとも8回投与し、かつ化学療法による標準治療を3サイクル投与することであった)。
【0095】
患者の特性は、治療群B(一次化学療法の完了後に後続投与)と治療群C(後続投与を行わずに標準治療として化学療法単独)の間で均等になるようにした(表1および表2を参照されたい)。したがって、治療群Cとの比較により治療群Bにおいて観察された有意に優れた有効性は、これらの群間における患者背景の差異や標準的な化学療法の奏功の差異による影響を受けていない。DCワクチンは、一次化学療法を完了した治療群Bのすべての患者に投与した。
【0096】
一次化学療法の完了後に続けてDCワクチンを投与した場合の全生存期間に対する利点が大きかったことから、白金系化学療法剤を使用した一次化学療法の完了後の後続治療/維持治療に対するアンメットメディカルニーズを充足できるDCワクチンを提供できる可能性が強く示されており、このようなDCワクチンによって、疾患の進行までの時間を延長することができ、新たに診断された進行性卵巣がんの患者の生存に有意な影響を及ぼすことができると見られる。さらに、進行性卵巣がんの一次療法の完了後に開始することが承認されている治療法(維持治療または後続治療)が現在に至るまで存在しないという事実によっても、卵巣がんの治療に対するこのようなDCワクチンの重要性が強調されている。
【0097】
DCワクチンの安全性データ
治療群Aでは、DCワクチンによる臨床試験治療の開始前に8人の患者において14件の重篤な有害事象が報告され、DCワクチンによる臨床試験治療の開始後に9人の患者において14件の重篤な有害事象が報告された。治療群Bでは、DCワクチンによる臨床試験治療の開始前に7人の患者において20件の重篤な有害事象が報告され、DCワクチンによる臨床試験治療の開始後に5人の患者において9件の重篤な有害事象が報告された。治療群Cでは、報告期間が他の群と比べて短かったものの、9人の患者において14件の重篤な有害事象が報告された。
【0098】
最も頻繁に報告された重篤な有害事象は以下のものであった。
・好中球減少症:7人の患者において8件の重篤な有害事象
・貧血:6人の患者において7件の重篤な有害事象
・血小板減少症:2人の患者において4件の重篤な有害事象
・腹水:2人の患者において5件の重篤な有害事象
・感染性リンパ嚢腫:5人の患者において5件の重篤な有害事象
【0099】
これらの安全性データから、DCワクチン(白血球除去法を含む)は忍容性が良好であり、DCワクチンを化学療法と並行して投与するのか、あるいは化学療法の後に続けて投与するのかに関係なく、DCワクチンの投与に付随する安全性の問題はなかったことが示された。本臨床試験において潜在的リスクは検知されず、確認もされていない。
【0100】
実施例5.既存の維持療法に対するDCワクチンの利点
現在、カルボプラチンとパクリタキセルを使用した一次化学療法を受けている卵巣がん患者の一定数は、カルボプラチンおよびパクリタキセルに併用したアドオン療法としてベバシズマブによる治療が行われた後、単剤療法としてのベバシズマブにより維持療法が行われ、がんの進行または許容できない毒性が認められるか、あるいは投与期間が最大で15ヶ月間に達するまでこの維持療法が継続される。
【0101】
前述の臨床試験に基づき、過去の報告に従って(ベバシズマブの製品概要(SmPC)「アバスチン製品概要」)、卵巣癌の一次治療患者において、ベバシズマブによる維持療法の効果とDCワクチン投与をどのように比較できるかを検討した。
【0102】
患者の生存期間の有意な延長
DCワクチンで治療しなかった患者と比較した場合の、一次化学療法後のDCワクチンの投与による患者への延命効果(PP:HR=0.00、治療開始時点からp=0.0071、ランダム化時点からp=0.0068;ITT:HR=0.13、治療開始時点からp=0.0259、ランダム化時点からp=0.0251)は、ベバシズマブで治療しなかった患者と比較した場合のベバシズマブの持続投与による延命効果よりも高い(ベバシズマブ15mg/kg:HR=0.88、p=0.0641;ベバシズマブ7.5mg/kg:HR=0.99、p=0.8910;表6)。より顕著には、DCワクチンで治療した患者とDCワクチンを投与しなかった患者の間において、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)に統計学的有意差が認められた(ITT:治療開始時点からp=0.02519、ランダム化時点からp=0.0251;表6)。
【0103】
【表5】
【0104】
したがって、カルボプラチンとパクリタキセルを併用した一次療法の完了後のDCワクチンの投与は、ベバシズマブによる維持療法よりも優れていると見られ、既存の治療にさらに毒性を加えることなく、生存期間を延長できる治療を実現するという、新たに診断された卵巣がん患者のアンメットメディカルニーズを充足できる可能性が示された。
【0105】
DCワクチン投与の容易性およびDCワクチン治療に対する患者の高いコンプライアンス
DCワクチンは患者に皮下投与した。1回投与量を2回分の注射(各2.5mL)に分割した(表6)。投与量も投与経路も、患者が不快感を覚えるものではなかった。この投与は、入院および広範な患者のモニターを必要とせず、また、患者の忍容性が良好であることから、治療に対する患者のコンプライアンスも高かった。
【0106】
自家製剤を用いた治療に対する患者の認識は非常に前向きであり、標準的な化学療法レジメン以上の不快感を与えるものではなかった。さらに、同じ投与量のDCワクチン、すなわち約1×107個の樹状細胞をすべての患者に投与したため、用量ミスのリスクは最小限に抑えられていた。
【0107】
患者が定期的に通院したり、治療を原因として発生しうる副作用のモニタリングのために検査を予定したりするような明らかな必要性もなく、発生しうる副作用に対する併用薬の処方の必要もないことから、患者の管理全体に大きな利点があると考えられる。
【0108】
DCワクチンは、毒性がないという安全性プロファイルを備えていることから、その他の治療を必要とする患者に対して特別な使用上の注意が必要とされず、患者が同時に発症している基礎疾患に対する併用薬の投与量の調節を考慮する必要もない。これは、患者の日常生活にとって有益であり、通院および検査の回数を減らすことができる。
【0109】
白血球除去法(DCワクチンの製造のためにPBMCを採取する操作)は、治療的介入であると考えることができ、患者に対して不快感を与える可能性がある。しかし、白血球除去法は、患者の忍容性が良好であり、本臨床試験でも懸念が生じることはなく、治療に対する制限要因にはならない。
【0110】
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図1
図2
図3