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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】変位センサ
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
G01B11/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021002272
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107367
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 潤
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-102067(JP,A)
【文献】特開2012-208102(JP,A)
【文献】特開2018-146279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光を出力する光源と、
少なくとも1つの光ファイバを含む導光部と、
前記導光部を介して入射した前記白色光に対して、光軸方向に沿って色収差を生じさせる回折レンズを収容し、色収差を生じさせた光を計測対象物に照射するセンサヘッドと、
前記計測対象物で反射されて前記センサヘッドにより集光された反射光を、前記導光部を介して取得し、前記反射光のスペクトルを計測する分光器と、を備え、
前記センサヘッドに接続される光ファイバは、前記分光器に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有する、
変位センサ。
【請求項2】
前記センサヘッドと前記分光器との間に配置される光ファイバは、コア径が連続的に変化するテーパ部を含む、
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記導光部は、
前記光源と接続される第1光ファイバと、
前記センサヘッドと接続される第2光ファイバと、
前記分光器と接続される第3光ファイバと、
前記第1光ファイバ、前記第2光ファイバ及び前記第3光ファイバが接続される光カプラと、を含む、
請求項1又は2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記第2光ファイバは、コア径が連続的に変化するテーパ部を含む、
請求項3に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記第3光ファイバは、コア径が連続的に変化するテーパ部を含む、
請求項3に記載の変位センサ。
【請求項6】
前記第2光ファイバは、前記第3光ファイバよりも大きいコア径を有する、
請求項3に記載の変位センサ。
【請求項7】
前記センサヘッドに接続される光ファイバは、前記回折レンズと同一の開口数を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の変位センサ。
【請求項8】
前記センサヘッドに接続される光ファイバは、前記回折レンズよりも大きい開口数を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の変位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触で計測対象物の変位を計測する装置として、共焦点光学系を利用した共焦点計測装置が用いられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の共焦点計測装置は、光源と計測対象物の間に、回折レンズを用いた共焦点光学系を有する。この共焦点計測装置では、光源からの出射光は、共焦点光学系によって、その波長に応じた焦点距離で計測対象物に照射される。そして、反射光の波長のピークを検出することで、計測対象物の変位を計測することができる。
【0004】
また、下記特許文献2では、計測対象物の位置の検出精度が高められた共焦点計測装置に関する技術が開示されており、当該共焦点計測装置は、分光器に接続される第2光ファイバ及びセンサヘッドに接続される第3光ファイバのコア径が5μmから25μmである。さらに、第2光ファイバと第3光ファイバとでコア径が異なっていてもよいことが記載されている。
【0005】
ところで、上述のような共焦点計測装置の計測精度の指標として、例えば、リニアリティ、静止分解能及び移動分解能等があるが、変位計測をする場合、これらが加算され、最終的な計測誤差となる。点計測の変位センサでは、一般的に、これらの計測精度の指標の中で、移動分解能による計測誤差が最も大きいため、これを向上させることが重要な課題の1つとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5785651号明細書
【文献】特開2019-66343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、共焦点計測装置において、移動分解能を向上させるためには、光ファイバのコア径を小さくすることが考えられるが、コア径を小さくすれば受光量が低下し、その結果、計測速度が低下してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、移動分解能及び受光量の低下を抑止しつつ、適切な計測精度及び計測速度を実現可能な変位センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る変位センサは、白色光を出力する光源と、少なくとも1つの光ファイバを含む導光部と、導光部を介して入射した白色光に対して、光軸方向に沿って色収差を生じさせる回折レンズを収容し、色収差を生じさせた光を計測対象物に照射するセンサヘッドと、計測対象物で反射されてセンサヘッドにより集光された反射光を、導光部を介して取得し、反射光のスペクトルを計測する分光器と、を備え、センサヘッドに接続される光ファイバは、分光器に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有する。
【0010】
この態様によれば、本発明の一態様に係る変位センサは、センサヘッドに接続される光ファイバが分光器に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有するように構成されるため、移動分解能及び受光量の低下を抑止しつつ、適切な計測精度及び計測速度を実現することができる。
【0011】
上記態様において、センサヘッドと分光器との間に配置される光ファイバは、コア径が連続的に変化するテーパ部を含んでもよい。
【0012】
この態様によれば、センサヘッドと分光器との間に配置される光ファイバがテーパ部を含むため、センサヘッドに接続される光ファイバが分光器に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有するように構成することができる。
【0013】
上記態様において、導光部は、光源と接続される第1光ファイバと、センサヘッドと接続される第2光ファイバと、分光器と接続される第3光ファイバと、第1光ファイバ、第2光ファイバ及び第3光ファイバが接続される光カプラと、を含んでもよい。
【0014】
この態様によれば、導光部が第1光ファイバと第2光ファイバと第3光ファイバと光カプラとを含むため、センサヘッドに接続される光ファイバが分光器に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有するように構成することができる。
【0015】
上記態様において、第2光ファイバは、コア径が連続的に変化するテーパ部を含んでもよい。
【0016】
この態様によれば、第2光ファイバがテーパ部を含むため、センサヘッドに接続される光ファイバが分光器に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有するように構成することができる。
【0017】
上記態様において、第3光ファイバは、コア径が連続的に変化するテーパ部を含んでもよい。
【0018】
この態様によれば、第3光ファイバがテーパ部を含むため、センサヘッドに接続される光ファイバが分光器に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有するように構成することができる。
【0019】
上記態様において、第2光ファイバは、第3光ファイバよりも大きいコア径を有してもよい。
【0020】
この態様によれば、第2光ファイバ及び第3光ファイバを用いて、センサヘッドに接続される光ファイバが分光器に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有するように構成することができる。
【0021】
上記態様において、センサヘッドに接続される光ファイバは、回折レンズと同一の開口数を有してもよい。
【0022】
この態様によれば、センサヘッドに接続される光ファイバは、回折レンズと同一の開口数を有するため、移動分解能の低下を抑止しつつ、受光量を向上させることができる。その結果、本発明の一態様に係る変位センサは、計測精度の低下を抑止しつつ、計測速度を向上させることができる。
【0023】
上記態様において、センサヘッドに接続される光ファイバは、回折レンズよりも大きい開口数を有してもよい。
【0024】
この態様によれば、センサヘッドに接続される光ファイバは、回折レンズよりも大きい開口数を有するため、受光量の低下を抑止しつつ、移動分解能を向上させることができる。その結果、本発明の一態様に係る変位センサは、計測速度の低下を抑止しつつ、計測精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、移動分解能及び受光量の低下を抑止しつつ、適切な計測精度及び計測速度を実現可能な変位センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の各実施形態に係る変位センサ10の概略構成の一例を示す構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る変位センサ11の構成を模式的に示す図である。
図3A】テーパ部を備える光ファイバの一具体例を示す図である。
図3B】テーパ部を備える光ファイバの内部構造を示す図である。
図4図2に示された変位センサ11の評価を示す図である。
図5】センサヘッド波形及び分光器波形と、受光波形との関係を示す図である。
図6】センサヘッド波形の半値幅及び分光器波形の半値幅と、受光量との関係を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る変位センサ12の構成を模式的に示す図である。
図8図7に示された変位センサ12の評価を示す図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る変位センサ13の構成を模式的に示す図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る変位センサ14の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0028】
先ず、本発明の各実施形態に係る変位センサの基本的な構成について説明する。
【0029】
[変位センサの基本構成]
図1は、本発明の各実施形態に係る変位センサ10の概略構成の一例を示す構成図である。図1に示されるように、変位センサ10は、コントローラ100と、導光部200と、センサヘッド300とを備え、共焦点光学系を利用することによって計測対象物TAまでの距離を計測する。
【0030】
コントローラ100は、光源110と、分光器120と、処理部130とを備え、さらに、当該分光器120は、コリメータレンズ121と、回折格子122と、調整レンズ123と、受光素子124とを有する。
【0031】
導光部200は、コントローラ100とセンサヘッド300との間に配置され、例えば、第1光ファイバ210と、第2光ファイバ220と、第3光ファイバ230と、光カプラ240とを有し、光を伝搬する。なお、導光部200の一部は、コントローラ100に収容されても構わない。
【0032】
センサヘッド300は、導光部200を介してコントローラ100に脱着自在に構成されており、例えば、回折レンズ310と、対物レンズ320とを有する。
【0033】
光源110は、例えば、白色光を第1光ファイバ210に出力する。光源110は、処理部130の指令に基づいて、白色光の光量を調整してもよい。なお、光源110が発する光は、複数の波長成分を含む光であって、変位センサ10に要求される測定距離範囲をカバーする波長範囲を含む光であれば、白色光に限定されるものではない。
【0034】
第1光ファイバ210は、その一端が光源110と光学的に接続されており、第2光ファイバ220は、その一端がセンサヘッド300と光学的に接続しされており、第3光ファイバ230は、その一端が分光器120と光学的に接続されている。そして、第1光ファイバ210の他端及び第3光ファイバ230の他端と、第2光ファイバ220の他端とは、光カプラ240を介して光学的に結合されている。
【0035】
光カプラ240は、第1光ファイバ210から入射された光(照射光)を第2光ファイバ220に伝送するとともに、第2光ファイバ220から入射された光(反射光)を分割して第1光ファイバ210及び第3光ファイバ230にそれぞれ伝送する。なお、光カプラ240によって第2光ファイバ220から第1光ファイバ210に伝送された光は、光源110において終端される。
【0036】
センサヘッド300には、第1光ファイバ210、光カプラ240及び第2光ファイバ220を介して、光源110から出力された白色光が入射される。センサヘッド300は、第2光ファイバ220の端面から出射された白色光を、光軸方向に沿って色収差を生じさせる回折レンズ310と、色収差を生じさせた光を計測対象物TAに集める対物レンズ320とを収容し、当該色収差を生じさせた光を計測対象物TAに照射する。
【0037】
図1に示される例では、焦点距離が相対的に短い順に、第1波長の光410、第2波長の光420及び第3波長の光430としている。第2波長の光420は計測対象物TAの表面で焦点が合う(第2焦点位置)が、第1波長の光410は計測対象物TAの手前側で焦点が合い(第1焦点位置)、第3波長の光430は計測対象物TAの奥側で焦点が合う(第3焦点位置)。
【0038】
計測対象物TAの表面で反射した光は、対物レンズ320によって集められ、回折レンズ310を通って集光されて、第2光ファイバ220のコアに返送される。反射光のうち第2波長の光420は、第2光ファイバ220の端面で焦点が合うため、そのほとんどが第2光ファイバ220に入射するが、その他の波長の光は、第2光ファイバ220の端面で焦点が合わず、そのほとんどが第2光ファイバ220に入射しない。第2光ファイバ220に入射した反射光は、光カプラ240を経由して第3光ファイバ230に伝送され、分光器120に入力される。なお、第2光ファイバ220に入射した反射光は、光カプラ240を経由して第1光ファイバ210にも伝送されるが、光源110にて終端される。
【0039】
分光器120は、計測対象物TAで反射されてセンサヘッド300により集光された反射光を、第2光ファイバ220、光カプラ240及び第3光ファイバ230を介して取得し、反射光のスペクトルを計測する。分光器120は、第3光ファイバ230から出射された反射光を集めるコリメータレンズ121と、反射光を分光する回折格子122と、分光された反射光を集める調整レンズ123と、分光された反射光を受光する受光素子124とを含む。
【0040】
処理部130は、受光素子124によって受光された光の波長及び光量を示す受光量分布信号に基づいて、計測対象物TAの位置を検出する。具体的には、分光器120によって受光波形における波長のピークを検出することで計測対象物TAの位置を計測することができるが、本例の場合、計測対象物TAで反射された光のうち、光ファイバで焦点が合う第2波長の光420が分光器120においてピークとして表われ、計測対象物TAの位置を検出することができる。
【0041】
[移動分解能と受光量]
ここで、変位センサ10の計測精度に関して、計測誤差に与える影響が大きい移動分解能について、説明する。移動分解能は、被写界深度及び平均化効果に影響されることから、光ファイバのコア径や回折レンズ310の開口数(以下、「NA(numerical aperture)」と称する場合もある。)を小さく設定すれば、改善すると考えられる。
【0042】
一方、変位センサ10の計測速度に影響を与える受光量は、センサヘッド300の結合効率に影響されることから、回折レンズ310の開口数(NA)を大きく設定すれば、改善すると考えられ、上記移動分解能の改善策とは相反するものである。また、センサヘッド300によって集光された光の波形(以下、「センサヘッド波形」等と称する場合もある。)に、分光器120等のデバイスに起因するデバイス特性波形(以下、「分光器波形」等と称する場合もある。)が合成される畳み込み演算によって受光波形(受光量分布信号)が求められる際に、受光量が低下する場合もある。
【0043】
そこで、本発明の発明者らは、センサヘッド300に接続される第2光ファイバ220は、分光器120に接続される第3光ファイバ230よりも大きいコア径を有すること見出した。
【0044】
以下、導光部200を構成する光ファイバ等の具体的な実施形態について、詳細に説明する。
【0045】
<第1実施形態>
図2は、本発明の第1実施形態に係る変位センサ11の構成を模式的に示す図である。図2において、変位センサ11は、光源110と分光器120とセンサヘッド300とを備え、それぞれ導光部201を介して光が伝搬される。導光部201は、第1光ファイバ211と、第2光ファイバ221と、第3光ファイバ231と、光カプラ241とを有し、各光ファイバは、以下のコア径及び開口数(NA)を有する。
【0046】
第1光ファイバ211:コア径=50μm、NA=0.2
第2光ファイバ221:コア径=50μm、NA=0.2(光カプラ241側)
:コア径=100μm、NA=0.1(センサヘッド300側)
第3光ファイバ231:コア径=50μm、NA=0.2
【0047】
ここで、第2光ファイバ221は、光カプラ241側では、コア径=50μmであり、センサヘッド300側では、コア径=100μmであり、光カプラ241とセンサヘッド300との間のうち、一部、コア径が連続的に変化するテーパ部を備える。
【0048】
図3Aは、テーパ部を備える光ファイバの一具体例を示す図であり、図3Bは、テーパ部を備える光ファイバの内部構造を示す図である。図3Aに示されるように、3mの光ファイバのうち1mの範囲に亘って光ファイバの径が連続的に徐々に変化することによってテーパ部が形成されている。
【0049】
なお、図3Aに示される一具体例では、光ファイバの端部にテーパ部が形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、中央部等にテーパ部を形成し、両端部は、それぞれ50μm及び100μmの円柱形状であっても構わない。
【0050】
また、テーパ部を形成する範囲について、光ファイバの長さの1/3程度又は1mに限定されるものではなく、両端のコア径等に応じて適宜設定されるようにしても構わない。
【0051】
また、図2に示されたように、第2光ファイバ221は、光カプラ241側では、コア径=50μmであり、センサヘッド300側では、コア径=100μmであることから、光カプラ241側では、NA=0.2であり、センサヘッド300側ではNA=0.1となる(ラグランジュの不変量)。
【0052】
さらに、本実施形態では、センサヘッド300に収容される回折レンズ310について、NA=0.1であり、当該センサヘッド300に接続される第2光ファイバ221のNAと同一に設定されている。
【0053】
[変位センサ11の評価]
図4は、図2に示された変位センサ11の評価を示す図である。図4に示されるように、変位センサ11では、比較例(全てコア径=50μm及びNA=0.2の光ファイバ)と比べて、移動分解能の低下を抑止しつつ、受光量を大幅に増加させている(5.5倍)。
【0054】
より詳細には、センサヘッド300の半値幅は、センサヘッド300側の光ファイバのコア径と回折レンズ310のNAにより影響され、移動分解能は、センサヘッド300の半値幅及びスポット径により影響されるところ、変位センサ11では、比較例と比べて、回折レンズ310のNA=0.1で同一である。また、変位センサ11は、センサヘッド300側の光ファイバのコア径=100μmであり、比較例に比べて2倍であるが、それに伴い、スポット径も2倍になる。これにより、変位センサ11は、比較例と比べて、移動分解能の低下を抑止することができている。
【0055】
ここで、受光波形(受光量分布信号)、センサヘッド300によって集光された光の波形(センサヘッド波形)、及び分光器120等のデバイスに起因するデバイス特性波形(分光器波形)の半値幅について説明する。
【0056】
図5は、センサヘッド波形及び分光器波形と、受光波形との関係を示す図である。図5において、各波形は、縦軸に光量を示し、横軸に波長を示している。そして、図5に示されるように、受光波形は、センサヘッド波形に分光器波形が合成される畳み込み演算によって求められ、受光波形の半値幅は、概ねセンサヘッド波形の半値幅と分光器波形の半値幅とに基づいて算出される。
【0057】
半値幅とは、受光量のピーク(最大値)の50%の受光量の線と受光量分布信号との2つの交点の長さ(幅)であり、ガウス分布の広がりの程度を表す指標である。受光波形は、計測対象物TAで焦点が合った光の波長がピークとなって表われるため、当該ピークがより鮮明に表われることにより、計測対象物TAの位置を適切に計測することができる。すなわち、半値幅が小さければ、計測精度は高いと言える。
【0058】
一方、センサヘッド波形の半値幅と分光器波形の半値幅との関係において、受光量が低下する場合がある。
【0059】
図6は、センサヘッド波形の半値幅及び分光器波形の半値幅と、受光量との関係を示す図である。図6に示されるように、センサヘッド波形の半値幅/分光器波形の半値幅が小さくなるに従って、受光量が低下している。例えば、図5(B)に示されるように、センサヘッド波形の半値幅を小さくなると、受光波形の半値幅が小さくなるとともに、センサヘッド波形の半値幅/分光器波形の半値幅も小さくなる。これにより、受光量が著しく低下することになる。
【0060】
なお、図4において、変位センサ11を評価する際に、全て、コア径=50μm、NA=0.2の光ファイバを用いた比較例を示したが、全て、コア径=100μm、NA=0.1の光ファイバを用いることも考えられる。しかし、この場合、センサヘッド波形の半値幅及び分光器波形の半値幅の両方が大きくなるため、受光波形の半値幅は、図4に示した比較例と比べて概ね2倍になる。これにより、リニアリティ及び静止分解能が悪化し、計測精度が著しく低下することになる。
【0061】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る変位センサ11によれば、導光部201がテーパ部を備える第2光ファイバ221を含むため、センサヘッド300に接続される光ファイバは、分光器120に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有する。これにより、移動分解能の低下を抑止しつつ、受光量を大幅に増加させることができる。その結果、変位センサ11は、計測精度の低下を抑止しつつ、計測速度を向上させることができる。
【0062】
なお、本実施形態で用いられる光ファイバは、単一のコアを有するシングルコアであっても、複数のコアを有するマルチコアであっても構わないが、シングルコアを適用した場合であっても上述した効果が得られるため、マルチコアを適用することによるコスト負担を軽減することにも繋がる。
【0063】
以降、第2~第4実施形態について説明するが、各実施形態では、主に、本発明の第1実施形態と異なる構成について詳しく説明し、第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略又は簡略化する。
【0064】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る変位センサ12の構成を模式的に示す図である。図7において、変位センサ12は、第1実施形態に係る変位センサ11と比べて、センサヘッド300における回折レンズ310のNAが異なる。本実施形態では、回折レンズ310のNA=0.05である。
【0065】
図8は、図7に示された変位センサ12の評価を示す図である。図8に示されるように、変位センサ12では、比較例(全てコア径=50μm及びNA=0.2の光ファイバ)と比べて、受光量の低下を抑止しつつ、移動分解能を大幅に改善させている(2倍)。
【0066】
より詳細には、変位センサ12では、センサヘッド300側の光ファイバのNAに対する回折レンズ310のNAは1/2であって、比較例と同一である。このため、変位センサ12と比較例とは、センサヘッドの結合効率(比)も同一であり、受光量の低下を抑止している。一方、変位センサ12では、センサヘッド300側の光ファイバのコア径が100μmで、比較例と比べて2倍であり、回折レンズ310のNA=0.05で、比較例と比べて1/2であるため、センサヘッド300の半値幅は、比較例と比べて同一となる。また、センサヘッド300側の光ファイバのコア径が2倍であり、比較例と比べてスポット径が2倍になるため、スポット内での平均化により、移動分解能は大幅に改善している。
【0067】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る変位センサ12によれば、第1実施形態に係る変位センサ11における導光部201と同一の構成を備えつつ、センサヘッド300の回折レンズのNAを、センサヘッド300側の光ファイバのNAよりも小さく設定する。これにより、受光量の低下を抑止しつつ、移動分解能を大幅に改善させることができる。その結果、変位センサ12は、計測速度の低下を抑止しつつ、計測精度を向上させることができる。
【0068】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る変位センサ13の構成を模式的に示す図である。図9において、変位センサ13は、光源110と分光器120とセンサヘッド300とを備え、それぞれ導光部203を介して光が伝搬される。導光部203は、第1光ファイバ213と、第2光ファイバ223と、第3光ファイバ233と、光カプラ243とを有し、各光ファイバは、以下のコア径及び開口数(NA)を有する。
【0069】
第1光ファイバ213:コア径=100μm、NA=0.1
第2光ファイバ223:コア径=100μm、NA=0.1
第3光ファイバ233:コア径=100μm、NA=0.1(光カプラ243側)
:コア径=50μm、NA=0.2(分光器120側)
【0070】
図9に示されるように、変位センサ13における導光部203に含まれる光ファイバのうちテーパ部を備える光ファイバが第3光ファイバ233である点で、図2に示された第1実施形態に係る変位センサ11(第2光ファイバ221にテーパ部を備える)と異なる。
【0071】
より詳細には、第3光ファイバ233は、光カプラ243側では、コア径=100μmであり、分光器120側では、コア径=50μmであり、光カプラ243と分光器120との間のうち、一部、コア径が連続的に変化するテーパ部を備える。また、第3光ファイバ233は、光カプラ243側では、NA=0.1であり、分光器120側ではNA=0.2となる(ラグランジュの不変量)。
【0072】
また、第1光ファイバ213は、図2に示された第1実施形態に係る変位センサ11における第1光ファイバ211と比べて、コア径が2倍であることにより、断面積は4倍になるが、NAは1/2である。これにより、光源110が出力されて第1光ファイバ213によって伝搬される光量は、第1実施形態に係る変位センサ11と同一である。
【0073】
なお、光カプラ243は、コア径100μmの2本の光ファイバを結合するカプラである。
【0074】
上述のように、第3光ファイバ233がテーパ部を備えることにより、センサヘッド300に接続される光ファイバは、分光器120に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有するように構成される。
【0075】
[変位センサ13の評価]
センサヘッド300に収容される回折レンズ310について、NA=0.1であり、当該センサヘッド300に接続される第2光ファイバ223のNAと同一に設定される場合には、変位センサ13は、図4で示されたように第1実施形態に係る変位センサ11と同様の効果を奏する。
【0076】
すなわち、変位センサ13は、移動分解能の低下を抑止しつつ、受光量を大幅に増加させることができる(5.5倍)。その結果、変位センサ13は、計測精度の低下を抑止しつつ、計測速度を向上させることができる。
【0077】
また、センサヘッド300に収容される回折レンズ310について、NA=0.05であり、センサヘッド300側の光ファイバのNAに対する回折レンズ310のNAが1/2に設定される場合には、変位センサ13は、図8で示されたように第2実施形態に係る変位センサ12と同様の効果を奏する。
【0078】
すなわち、変位センサ13は、受光量の低下を抑止しつつ、移動分解能を大幅に改善させることができる(2倍)。その結果、計測速度の低下を抑止しつつ、計測精度を向上させることができる。
【0079】
<第4実施形態>
図10は、本発明の第4実施形態に係る変位センサ14の構成を模式的に示す図である。図10において、変位センサ14は、光源110と分光器120とセンサヘッド300とを備え、それぞれ導光部204を介して光が伝搬される。導光部204は、第1光ファイバ214と、第2光ファイバ223と、第3光ファイバ233と、光カプラ244とを有し、各光ファイバは、以下のコア径及び開口数(NA)を有する。
【0080】
第1光ファイバ214:コア径=50μm、NA=0.2
第2光ファイバ223:コア径=100μm、NA=0.1
第3光ファイバ233:コア径=100μm、NA=0.1(光カプラ244側)
:コア径=50μm、NA=0.2(分光器120側)
【0081】
図10に示されるように、変位センサ14における導光部204に含まれる光ファイバのうちテーパ部を備える光ファイバが第3光ファイバ233である点で、図2に示された第1実施形態に係る変位センサ11(第2光ファイバ221にテーパ部を備える)と異なる。この点においては、第4実施形態に係る変位センサ14は、第3実施形態に係る変位センサ13と同様である。
【0082】
一方、第1光ファイバ214は、図9に示された第3実施形態に係る変位センサ13の第1光ファイバ213とは異なり、図2に示された第1実施形態に係る変位センサ11における第1光ファイバ211と同様である。
【0083】
なお、光カプラ244は、コア径50μmの光ファイバ及びコア径100μmの光ファイバを結合するカプラである。
【0084】
上述のように、第3光ファイバ233がテーパ部を備えることにより、センサヘッド300に接続される光ファイバは、分光器120に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有し、この点においては、第3実施形態の変位センサ13と同様であり、当該変位センサ13と同様の効果を奏する。
【0085】
具体的には、センサヘッド300に収容される回折レンズ310について、NA=0.1の場合には、変位センサ14は、図4で示されたように第1実施形態に係る変位センサ11と同様の効果を奏し、移動分解能の低下を抑止しつつ、受光量を大幅に増加させることができる(5.5倍)。その結果、変位センサ14は、計測精度の低下を抑止しつつ、計測速度を向上させることができる。
【0086】
また、センサヘッド300に収容される回折レンズ310について、NA=0.05の場合には、変位センサ14は、図8で示されたように第2実施形態に係る変位センサ12と同様の効果を奏し、受光量の低下を抑止しつつ、移動分解能を大幅に改善させることができる(2倍)。その結果、変位センサ14は、計測速度の低下を抑止しつつ、計測精度を向上させることができる。
【0087】
さらに、本発明の第1~第4実施形態では、導光部に含まれる光ファイバのうち、いずれかにテーパ部を備えることにより、センサヘッド300に接続される光ファイバは、分光器120に接続される光ファイバよりも大きいコア径を有するようにしたが、これ以外に光カプラで実現するようにしても構わない。例えば、光カプラとセンサヘッド300とを接続する第2光ファイバのコア径を100μmとし、当該光カプラと分光器120とを接続する第2光ファイバのコア径を50μmとし、当該光カプラによりコア径の差異を吸収するような構造としても構わない。
【0088】
以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。各実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0089】
[附記]
白色光を出力する光源(110)と、
少なくとも1つの光ファイバを含む導光部(200,201,202,203,204)と、
前記導光部を介して入射した前記白色光に対して、光軸方向に沿って色収差を生じさせる回折レンズ(310)を収容し、色収差を生じさせた光を計測対象物(TA)に照射するセンサヘッド(300)と、
前記計測対象物で反射されて前記センサヘッドにより集光された反射光を、前記導光部を介して取得し、前記反射光のスペクトルを計測する分光器(120)と、を備え、
前記センサヘッドに接続される光ファイバ(220,221,223)は、前記分光器に接続される光ファイバ(230,231,233)よりも大きいコア径を有する、
変位センサ(10,11,12,13,14)。
【符号の説明】
【0090】
10,11,12,13,14…変位センサ、110…光源、120…分光器、200,201,202,203,204…導光部、210,211,213,214…第1光ファイバ、220,221,223…第2光ファイバ、230,231,233…第3光ファイバ、240,241,243,244…光カプラ、300…センサヘッド、310…回折レンズ、410…第1波長の光、420…第2波長の光、430…第3波長の光、TA…計測対象物
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10