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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】アナログデジタル変換回路
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/46 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
H03M1/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021576414
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042169
(87)【国際公開番号】W WO2022102035
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-116258(JP,A)
【文献】特開平5-122076(JP,A)
【文献】国際公開第2010/010661(WO,A1)
【文献】特開2011-199443(JP,A)
【文献】特開昭61-98022(JP,A)
【文献】特開2010-245927(JP,A)
【文献】特開2001-267925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換データ生成器による変換データ生成動作と、容量DACによる電位生成動作と、比較器による比較動作とを分解能bit分繰り返すことで、アナログ入力をデジタル変換値に変換する逐次比較型のアナログデジタル変換回路であって、
前記容量DACで用いている容量と特性が等しい容量素子への充放電時間に基づいて、前記容量DACが生成する電位が静定する時刻を予測し、前記比較器に前記比較動作を開始させる比較器動作信号を生成する比較器動作信号生成回路を具備することを特徴とするアナログデジタル変換回路。
【請求項2】
前記比較器動作信号生成回路は、複数の注入電位でそれぞれ充電した前記容量素子のそれぞれ放電時間に基づいて、切り替えるbit毎に異なる前記容量DACの静定時間をそれぞれ予測することを特徴とする請求項1に記載のアナログデジタル変換回路。
【請求項3】
前記比較器動作信号生成回路は、注入電位で充電された前記容量素子の放電時間の繰り返しによって、切り替えるbit毎に異なる前記容量DACの静定時間をそれぞれ予測することを特徴とする請求項1に記載のアナログデジタル変換回路。
【請求項4】
前記容量素子は、放電スイッチを介して放電され、
前記放電スイッチは、前記容量DACで用いている容量と基準電位(Hight)もしくは基準電位(Low)とを接続するスイッチのオン抵抗と、同等のオン抵抗を有することを特徴とする請求項2又は3記載のアナログデジタル変換回路。
【請求項5】
前記比較器動作信号生成回路は、注入電位で前記容量素子を充電する充電時間と、前記注入電位で充電された前記容量素子の放電時間との繰り返しによって、切り替えるbit毎に異なる前記容量DACの静定時間をそれぞれ予測することを特徴とする請求項1に記載のアナログデジタル変換回路。
【請求項6】
前記容量素子は、充電スイッチ及び放電スイッチを介してそれぞれ充電及び放電され、
前記充電スイッチ及び前記放電スイッチは、前記容量DACで用いている容量と基準電位(Hight)もしくは基準電位(Low)とを接続するスイッチのオン抵抗と、同等のオン抵抗を有することを特徴とする請求項5記載のアナログデジタル変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逐次比較型のアナログデジタル変換回路(以下、A/D変換回路と称す)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
A/D変換回路は、入力したアナログ「電圧」を、デジタル処理を行う目的で「数値化」する装置であり、高速性、面積、消費電力のバランスが良い逐次比較型がよく使用される。
【0003】
逐次比較型のA/D変換回路1は、図7を参照すると、アナログ入力した電位を基に容量DAC2で生成した電位を比較器3で比較し、その結果を変換データ生成器4へフィードバックし、近似データ候補を容量DAC2に伝える。この繰り返しを分解能bit分(nビット:n回)繰り返し、デジタル変換値を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-133821号公報
【文献】特開昭51-015363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容量DAC2の容量C~C(n-1)は、切り替えるbit(n-1)に対して2(n-1)のように重み付けされている。ここで、容量DAC2が目標のレベルに達するまでのbit毎の静定時間は、出力電位の変化量に比例し、出力電位の変化量は、容量C~C(n-1)に充放電される電荷量に比例し、容量C~C(n-1)に充放電される電荷量は、切り替えるbitの容量に比例する。従って、容量DAC2の静定時間は、切り替えるbitに対して一様ではない。
【0006】
逐次比較型のA/D変換回路1の分解能を(n)bitとした場合、1つのアナログ値からデジタル値を得るために、変換データ生成器4による変換データ生成動作[変換データ生成時間]と、容量DAC2による電位生成動作[容量DAC静定時間]と、比較器3による比較動作[比較動作時間]}とをn回繰り返し、最後に変換データ生成器4による変換データ生成動作[変換データ生成時間]を実行する。
【0007】
従って、変換時間は、
{[変換データ生成時間]+[容量DAC静定時間]+[比較動作時間]}×n(回)+[変換データ生成時間]
となる。
【0008】
この動作を等間隔の変換クロックを使って制御する場合、図8(a)に示すように、容量DAC2による電位生成動作に割り当てる[容量DAC静定時間]は、bit毎の静定時間のうち、最大になるケースを想定し、上位bitから下位bitにかけて同じ時間Tに設定される。図8には、分解能12bitの例が示されている。
【0009】
しかし、実際には、容量DAC2での静定時間は切り替えるbitに対して一様ではなく、下位bitになるほど短くなる傾向があるため、図8(b)に斜線で示す無駄な時間が[容量DAC静定時間]として割り当てられ、A/D変換回路1の高速化を妨げている。
【0010】
なお、下位ビットの決定時の変換クロックを上位ビット決定時の変換クロックに比べて早くする技術は、すでに提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0011】
しかかしながら、特許文献1、2では、変換クロックをシフトレジスタやカウンタを用いて変更させており、プロセス要因で容量値が変化することで容量DAC2の静定時間が変わることは考慮されていない。従って、想定される容量値の変化量をカバーする十分なマージンとって変換クロックの周期を設定する必要があり、このマージンが過剰な[容量DAC静定時間]の割り当てになってしまう。
【0012】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、過剰な[容量DAC静定時間]の割り当てをなくして、高速化を実現できるA/D変換回路を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るA/D変換回路は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
本発明に係るアA/D変換回路は、変換データ生成器による変換データ生成動作と、容量DACによる電位生成動作と、比較器による比較動作とを分解能bit分繰り返すことで、アナログ入力をデジタル変換値に変換する逐次比較型のアナログデジタル変換回路であって、前記容量DACで用いている容量と特性が等しい容量素子への充放電時間に基づいて、前記容量DACが生成する電位が静定する時刻を予測し、前記比較器に前記比較動作を開始させる比較器動作信号を生成する比較器動作信号生成回路を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のA/D変換回路は、容量DAC2で用いる容量と同じ特性の容量素子51を用いることで、真に必要な[容量DAC静定時間]を予測することができ、過剰な[容量DAC静定時間]の割り当てをなくして、高速化を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るA/D変換回路の第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
図2図1に示すA/D変換回路の動作説明図である。
図3図1に示す比較器動作信号生成回路の第1変形例を示す図である。
図4図1に示す比較器動作信号生成回路の第2変形例を示す図である。
図5図1に示す比較器動作信号生成回路の第3変形例を示す図である。
図6図1に示す比較器動作信号生成回路の第4変形例を示す図である。
図7】従来のA/D変換回路の構成を示す図である。
図8】従来のA/D変換回路の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0017】
本実施の形態のA/D変換回路10は、逐次比較型であり、図1を参照すると、容量DAC2と、比較器3と、変換データ生成器40と、比較器動作信号生成回路5とを備えている。
【0018】
A/D変換回路10は、アナログ入力した電位を基に容量DAC2で生成した電位を比較器3で比較し、その結果を変換データ生成器40へフィードバックし、近似データ候補を容量DAC2に伝える。この繰り返しを分解能bit分(nビット:n回)繰り返し、デジタル変換値を得る。
【0019】
容量DAC2において、切り替えるbit(n-1)に対して2(n-1)のように重み付けされている容量C~C(n-1)のそれぞれの一方端は、共通の比較配線21に接続され、比較配線21の電位が比較器3によって基準電位Vrefと比較される。容量C~C(n-1)のそれぞれの他方端は、それぞれスイッチ22~22(n-1)を介してアナログ入力(電位)と、基準電位(Hight)と、基準電位(Low)と、のいずれか1つが選択して接続される。なお、容量Cは、容量C容量値を有するダミーコンデンサであり、容量Cの一方端は、比較配線21に接続され、他方端は、スイッチ22を介してアナログ入力(電位)と、基準電位(Low)と、のいずれか1つが選択して接続される。
【0020】
容量DAC2では、切り替えるbitに応じて容量C~C(n-1)のいずれかをそれぞれスイッチ22~22(n-1)を介して基準電位(Hight)もしくは基準電位(Low)と接続することで、目標のレベルに到達させる。従って、スイッチ22~22(n-1)を介して容量C~C(n-1)を基準電位(Hight)に充電させる時間もしくは基準電位(Low)まで放電させる時間が静定時間となる。
【0021】
比較器動作信号生成回路5は、変換データ生成器40が生成した変換データに基づいて容量DAC2が生成する電位が静定する時刻を予測し、比較器3に比較動作を開始させる比較器動作信号を生成する。
【0022】
比較器動作信号生成回路5は、容量DAC2で用いている容量C~C(n-1)と特性が等しい容量素子51と、容量素子51への充放電スイッチ52と、容量素子51に充電する電位を切り換える電位切換スイッチ53と、容量素子51の電位が閾電位を下回ると比較開始信号を出力するインバータ回路54とを備えている。
【0023】
容量素子51は、一方端が接地端子に接続され、他方端がインバータ回路54の入力端子と充放電スイッチ52の一方端とに接続されている。充放電スイッチ52は、容量素子51の他方端を電位切換スイッチ53の一方端と接続する充電スイッチ521と、容量素子51の他方端を接地端子に接続する放電スイッチ522とを備え、変換データ生成器40からの充放電指示信号によって充電スイッチ521及び放電スイッチ522のオンオフが制御される。例えば、充放電指示信号がLowで充電スイッチ521がオン及び放電スイッチ522がオフに制御され、充放電指示信号がHighで充電スイッチ521がオフ及び放電スイッチ522がオンに制御される。
【0024】
放電スイッチ522は、容量C~C(n-1)と基準電位(Hight)もしくは基準電位(Low)との接続時におけるスイッチ22~22(n-1)のオン抵抗と、同等のオン抵抗を有するもの用いられる。そして、充電スイッチ521は、オン抵抗が放電スイッチ522よりも低くものが用いられ、急速充電に対応している。
【0025】
電位切換スイッチ53は、容量素子51の他方端と分解能bit分のn個の注入電位(n-1)~注入電位(0)とをそれぞれ接続する分解能bit分のn個の接続スイッチ531(n-1)~531(0)を備え、変換データ生成器40からの電位切換指示信号によって容量素子51に電荷を注入(充電)する注入電位を注入電位(n-1)~注入電位(0)の中から選択して切り換える。
【0026】
注入電位(n-1)~注入電位(0)は、容量DAC2に注入又は排出する電荷量を模擬するための電位であり、容量素子51からの放電に際し、インバータ回路54の閾電位に到達するまでの時間が最上位~最下位bit毎の静定時間(充電によって基準電位)の最大値になるようにそれぞれ設定されている。
【0027】
次に、A/D変換回路10の動作について図2を参照して詳細に説明する。
変換データ生成器40は、電位切換指示信号によって比較器動作信号生成回路5の電位切換スイッチ53に最上位bitに対応する注入電位(n-1)への接続を指示すると共に、充放電指示信号をLowにして容量素子51を注入電位(n-1)に充電させておき、変換開始信号が入力されると、変換データ生成動作を開始する。
【0028】
次に、変換データ生成器40は、変換開始信号から所定時間後(変換データ生成動作終了後)に生成される動作開始信号のタイミングで最上位bitの容量DAC入力値を容量DAC2に出力すると同時に、比較器動作信号生成回路5に充放電指示信号をHighに遷移させて容量素子51からの放電を指示する。
【0029】
容量DAC2は、電位生成動作によって最上位bitを判断するための電位を生成し、比較器動作信号生成回路5は、放電によって容量素子51に充電された注入電位(n-1)がインバータ回路の閾電位を下回ると比較開始信号を比較器3と変換データ生成器40とに出力する。すなわち、比較器動作信号生成回路5は、容量DAC2で用いている容量と特性が等しい容量素子51と、注入電位(0)~注入電位(n-1)とを用いて、切り替えるbit毎に異なる容量DAC2の静定時間を予測し、静定時間が終了するタイミングで比較開始信号を出力する。
【0030】
比較開始信号に入力によって比較器3は、容量DAC2の電位生成動作によって生成された電位と基準電位とを比較し、比較結果を変換データ生成器40に出力する。また、比較開始信号に入力によって変換データ生成器40は、切換指示信号によって比較器動作信号生成回路5の電位切換スイッチ53に次のbitに対応する注入電位(n-2)への接続を指示し、充放電指示信号をLowにして容量素子51に充電させる。また、変換データ生成器40は、比較開始信号から所定時間後(変換比較動作終了後)に生成される変換信号のタイミングで比較器3の比較結果に基づいて最上位bitの変換データD(n-1)を生成する変換データ生成動作を開始する。
【0031】
次に、変換データ生成器40は、変換開始信号から所定時間後(変換データ生成動作終了後)に生成される動作開始信号のタイミングで、最上位bitの変換データ(比較器3の比較結果)に基づいて次のbitの容量DAC入力値を容量DAC2に出力すると同時に、比較器動作信号生成回路5に充放電指示信号をHighに遷移させて容量素子51からの放電を指示する。
【0032】
容量DAC2は、電位生成動作によって次のbitを判断するための電位を生成し、比較器動作信号生成回路5は、放電によって容量素子51の電位がインバータ回路54の閾電位を下回ると比較開始信号を比較器3と変換データ生成器40とに出力する。
【0033】
比較開始信号に入力によって比較器3は、容量DAC2の電位生成動作によって生成された電位と基準電位とを比較し、比較結果を変換データ生成器40に出力する。また、比較開始信号に入力によって変換データ生成器40は、切換指示信号によって比較器動作信号生成回路5の電位切換スイッチ53に次のbitに対応する注入電位(n-3)への接続を指示し、充放電指示信号をLowにして容量素子51に充電させる。また、変換データ生成器40は、比較開始信号から所定時間後(変換比較動作終了後)に生成される変換信号のタイミングで比較器3の比較結果に基づいて次のbitの変換データD(n-2)を生成する変換データ生成動作を開始する。
【0034】
以下、分解能bit分(12bit分)の比較を繰り返して最上位bitの変換データを生成されるまで上述の動作を繰り返し、変換データ生成器40は、変換データD(n-1)~D(0)を変換値として出力する。
【0035】
これにより、容量DAC2による電位生成動作に割り当てる[容量DAC静定時間] T~T12は、bit毎の静定時間に応じて、上位bitから下位bitにかけて短くなるように設定され、高速化を実現できる。なお、下位bitになるほど静定時間に短くなるが、減少幅も小さくなる。従って、予め設定された複数の下位bitは、同一の注入電位で対応するようにしても良い。
【0036】
次に、比較器動作信号生成回路5の第1変形例について図3を参照して詳細に説明する。
第1変形例である比較器動作信号生成回路5aは、図3を参照すると、切り替えるbit毎に異なる容量DAC2の静定時間をそれぞれ予測し、静定時間が終了するタイミングで比較開始信号をそれぞれ出力する生成回路50(n-1)~生成回路50(0)と、生成回路50(n-1)~生成回路50(0)のいずれの比較開始信号を出力するかを選択する出力切換スイッチ55とを備えている。
【0037】
生成回路50(n-1)~生成回路50(0)は、容量素子51と、充放電スイッチ52と、インバータ回路54とをそれぞれ備え、それぞれの容量素子51は、一方端が接地端子に接続され、他方端がインバータ回路54の入力端子と充放電スイッチ52の一方端とに接続されている。
【0038】
生成回路50(n-1)~生成回路50(0)の充放電スイッチ52は、容量素子51の他方端を注入電位(n-1)~注入電位(0)とそれぞれ接続する充電スイッチ521と、容量素子51の他方端を接地端子に接続する放電スイッチ522とを備え、変換データ生成器40からの充放電指示信号によって充電スイッチ521及び放電スイッチ522のオンオフが制御される。
【0039】
出力切換スイッチ55は、分解能bit分のn個の接続スイッチ551(n-1)~551(0)を備え、変換データ生成器40からの出力切換指示信号によって生成回路50(n-1)~生成回路50(0)の中から比較開始信号を出力するものを選択して切り換える。
【0040】
なお、比較器動作信号生成回路5aにおいて、生成回路50(n-1)~生成回路50(0)の充放電スイッチ52を個別に放電に切り換え可能に構成した場合には、出力切換スイッチ55を省略することができる。
【0041】
次に、比較器動作信号生成回路5の第2変形例について図4を参照して詳細に説明する。
第2変形例である比較器動作信号生成回路5bは、図4を参照すると、容量DAC2で用いている容量と特性が等しい容量素子51を用いて比較開始信号を出力するタイミングを生成する生成回路50がN段に直列(シリーズ)に接続され、いずれの比較開始信号を比較器3に出力するかを選択する出力切換スイッチ55を備えている。N個の生成回路50は、容量素子51と、充放電スイッチ52と、インバータ回路54とをそれぞれ備え、インバータ回路54から出力される比較開始信号が次段の充放電スイッチ52に放電指示信号として入力されるように接続されている。
【0042】
生成回路50において、容量素子51は、一方端が接地端子に接続され、他方端がインバータ回路54の入力端子と充放電スイッチ52の一方端とに接続されている。そして、充放電スイッチ52は、容量素子51の他方端を注入電位とそれぞれ接続する充電スイッチ521と、容量素子51の他方端を接地端子に接続する放電スイッチ522とを備え、変換データ生成器40からの充電指示信号によって充電スイッチ521をオン、放電スイッチ522をオフして容量素子51に対して電荷を注入する。
【0043】
全ての段の容量素子51に電荷が注入された状態で、1段目の生成回路50に変換データ生成器40から充電指示信号が入力されると、1段目の生成回路50において、充電スイッチ521がオフ、放電スイッチ522がオンされて容量素子51からの放電が開始される。放電によって容量素子51の電位がインバータ回路54の閾電位を下回ると比較開始信号が出力され、次段の充放電スイッチ52に放電指示信号として入力される。
【0044】
これにより、出力切換スイッチ55(接続スイッチ(N-1)~551(0))を制御して放電指示信号する段を選択することで、切り替えるbit毎に異なる容量DAC2の静定時間をそれぞれ予測し、静定時間が終了するタイミングで比較開始信号を比較器3に出力することができる。
【0045】
次に、比較器動作信号生成回路5の第3変形例について図5を参照して詳細に説明する。
第3変形例である比較器動作信号生成回路5cは、図5を参照すると、容量DAC2で用いている容量と特性が等しい容量素子51を用いて比較開始信号を出力するタイミングを生成する生成回路50が2段に接続され、いずれの比較開始信号を比較器3に出力するかを選択する出力切換スイッチ55を備えている。2段の生成回路50は、容量素子51と、充放電スイッチ52と、インバータ回路54とをそれぞれ備え、インバータ回路54から出力される比較開始信号が他段の充放電スイッチ52に放電指示信号として入力されるように接続されている。
【0046】
生成回路50において、容量素子51は、一方端が接地端子に接続され、他方端がインバータ回路54の入力端子と充放電スイッチ52の一方端とに接続されている。そして、充放電スイッチ52は、容量素子51の他方端を注入電位とそれぞれ接続する充電スイッチ521と、容量素子51の他方端を接地端子に接続する放電スイッチ522とを備え、変換データ生成器40からの充電指示信号によって充電スイッチ521をオン、放電スイッチ522をオフして容量素子51に対して電荷を注入する。
【0047】
全ての段の容量素子51に電荷が注入された状態で、1段目の生成回路50に変換データ生成器40から放電指示信号が入力されると1段目の生成回路50において、充電スイッチ521がオフ、放電スイッチ522がオンされて容量素子51からの放電が開始され、放電によって容量素子51の電位がインバータ回路54の閾電位を下回ると比較開始信号が出力される。1段目の生成回路50から出力された比較開始信号は、2段目の充放電スイッチ52に放電指示信号として入力されると共に、変換データ生成器40に完了信号として入力される。
【0048】
これにより、2段目の生成回路50において、充電スイッチ521がオフ、放電スイッチ522がオンされて容量素子51からの放電が開始されると共に、変換データ生成器40は、1段目の生成回路50に充電指示信号を出力して容量素子51への充電を開始させる。そして、放電によって1段目の生成回路50における容量素子51の電位がインバータ回路54の閾電位を下回ると比較開始信号が出力され、1段目の充放電スイッチ52に放電指示信号として入力されると共に、変換データ生成器40に完了信号として入力される。
【0049】
以下、繰り返しによって量子化された時刻で比較開始信号が出力され、変換データ生成器40は、入力される完了信号をカウントすることで所望のタイミングで出力切換スイッチ55に出力切換指示信号を出力し、出力切換スイッチ55の接続スイッチ551、551のいずれかをオンにして比較開始信号を比較器3に出力する。
【0050】
これにより、2段の生成回路50によって、切り替えるbit毎に異なる容量DAC2の静定時間をそれぞれ予測し、静定時間が終了するタイミングで比較開始信号を比較器3に出力することができる。
【0051】
次に、比較器動作信号生成回路5の第4変形例について図6を参照して詳細に説明する。
第4変形例である比較器動作信号生成回路5dは、図6を参照すると、容量素子51と、充放電スイッチ52aと、インバータ回路54と、容量素子51の電位が閾電位を上回ると比較開始信号を出力するバッファ回路56とを備えた生成回路50と、インバータ回路54とバッファ回路56とのいずれの比較開始信号を比較器3に出力するかを選択する出力切換スイッチ55aとを備えている。
【0052】
生成回路50において、容量素子51は、一方端が接地端子に接続され、他方端がインバータ回路54の入力端子とバッファ回路56の入力端子と充放電スイッチ52aの一方端とに接続されている。そして、充放電スイッチ52aは、容量素子51の他方端を注入電位とそれぞれ接続する充電スイッチ521aと、容量素子51の他方端を接地端子に接続する放電スイッチ522とを備え、容量DAC2への動作指示信号と同時に変換データ生成器40から出力される充電指示信号によって充電スイッチ521aをオン、放電スイッチ522をオフして容量素子51に対して電荷を注入する。
【0053】
充電スイッチ521a及び放電スイッチ522は、容量C~C(n-1)と基準電位(Hight)もしくは基準電位(Low)との接続時におけるスイッチ22~22(n-1)のオン抵抗と、同等のオン抵抗を有するもの用いられる。
【0054】
容量素子51の電位がバッファ回路56の閾電位を上回るとバッファ回路56から比較開始信号が出力される。バッファ回路56から出力された比較開始信号は、充放電スイッチ52aに放電指示信号として入力されると共に、変換データ生成器40に完了信号として入力される。
【0055】
バッファ回路56から放電指示信号が入力されると、充電スイッチ521aがオフ、放電スイッチ522がオンされて容量素子51からの放電が開始され、放電によって容量素子51の電位がインバータ回路54の閾電位を下回るとインバータ回路54から比較開始信号が出力される。インバータ回路54から出力された比較開始信号は、充放電スイッチ52aに充電指示信号として入力されると共に、変換データ生成器40に完了信号として入力される。
【0056】
以下、繰り返しによって量子化された時刻で比較開始信号が出力され、変換データ生成器40は、入力される完了信号をカウントすることで所望のタイミングで出力切換スイッチ55aに出力切換指示信号を出力し、出力切換スイッチ55の接続スイッチ551、551のいずれかをオンにして比較開始信号を比較器3に出力する。
【0057】
これにより、1個の生成回路50によって、切り替えるbit毎に異なる容量DAC2の静定時間をそれぞれ予測し、静定時間が終了するタイミングで比較開始信号を比較器3に出力することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態は、変換データ生成器40による変換データ生成動作と、容量DAC2による電位生成動作と、比較器3による比較動作とを分解能bit分繰り返すことで、アナログ入力をデジタル変換値に変換する逐次比較型のA/D変換回路10であって、容量DAC2で用いている容量C~C(n-1)と特性が等しい容量素子51への充放電時間に基づいて、容量DAC2が生成する電位が静定する時刻を予測し、比較器3に比較動作を開始させる比較器動作信号を生成する比較器動作信号生成回路5を備えている。
この構成により、容量DAC2で用いる容量と同じ特性の容量素子51を用いることで、真に必要な[容量DAC静定時間]を予測することができ、過剰な[容量DAC静定時間]の割り当てをなくして、高速化を実現できる。
【0059】
さらに、本実施形態において、比較器動作信号生成回路5、5aは、複数の注入電位(n-1)~注入電位(0)でそれぞれ充電した容量素子51のそれぞれ放電時間に基づいて、切り替えるbit毎に異なる容量DAC2の静定時間をそれぞれ予測する。
【0060】
さらに、本実施形態において、比較器動作信号生成回路5b、5cは、注入電位で充電された容量素子51の放電時間の繰り返しによって、切り替えるbit毎に異なる容量DAC2の静定時間をそれぞれ予測する。
この構成により、複数の注入電位を用意することなく、[容量DAC静定時間]を予測できる。
【0061】
さらに、本実施形態において、容量素子51は、放電スイッチ522を介して放電され、放電スイッチ522は、容量C~C(n-1)と基準電位(Hight)もしくは基準電位(Low)との接続時におけるスイッチ22~22(n-1)のオン抵抗と、同等のオン抵抗を有する。
この構成により、より正確に静定時間を予測することができる。
【0062】
さらに、本実施形態において、比較器動作信号生成回路5dは、注入電位で容量素子51を充電する充電時間と、注入電位で充電された容量素子51の放電時間との繰り返しによって、切り替えるbit毎に異なる容量DAC2の静定時間をそれぞれ予測する。
この構成により、1つの容量素子51を用いるだけで、[容量DAC静定時間]を予測できる。
【0063】
さらに、本実施形態において、容量素子51は、充電スイッチ521a及び放電スイッチ522を介してそれぞれ充電及び放電され、充電スイッチ521a及び放電スイッチ522は、容量C~C(n-1)と基準電位(Hight)もしくは基準電位(Low)との接続時におけるスイッチ22~22(n-1)のオン抵抗と、同等のオン抵抗を有する。
この構成により、より正確に静定時間を予測することができる。
【0064】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、同一構成要素には、各図において、同一符号を付している。
【符号の説明】
【0065】
1、10 アナログデジタル変換回路(A/D変換回路)
2 容量DAC
3 比較器
4、40 変換データ生成器
5、5a、5b、5c、5d 比較器動作信号生成回路
21 比較配線
22 スイッチ
50 生成回路
51 容量素子
52、52a 充放電スイッチ
53 電位切換スイッチ
54 インバータ回路
55、55a 出力切換スイッチ
56 バッファ回路
521、521a 充電スイッチ
522 放電スイッチ
531、551 接続スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8