(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】血液悪性腫瘍の治療のための二重特異性CD123×CD3ダイアボディ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240909BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240909BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240909BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240909BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240909BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240909BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/02
A61K9/08
G01N33/574 Z
C12Q1/68
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
(21)【出願番号】P 2021548536
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 US2019058616
(87)【国際公開番号】W WO2020092404
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-18
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518027885
【氏名又は名称】ナノストリング テクノロジーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NanoString Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】530 Fairview Avenue North, Seattle, Washington 98109 U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】521187196
【氏名又は名称】ノッティンガム トレント ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】デビッドソン ジャン ケニス
(72)【発明者】
【氏名】チャーチ サラ
(72)【発明者】
【氏名】ルテラ セルジオ
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/015340(WO,A1)
【文献】特表2017-504577(JP,A)
【文献】特開2005-333987(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069288(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/214092(WO,A1)
【文献】Comeau et al.,APVO436, a bispecific anti-CD123 x anti-CD3 ADAPTIR molecule for redirected T-cell cytotoxicity, induces potent T-cell activation, proliferation and cytotoxicity with limited cytokine release,AACR Annual Meeting,Abstract No. 1786,2018年04月,Retrieved from the Internet, <URL: http://aptevo.mhwebstaging.com/wp-content/uploads/2018/06/AACR_2018_-_APVO436__Poster_FINAL_APPROVED_VERSION_040318.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを生体外で判定する方法であって、
前記方法は:
(
A)1つ以上の標的
遺伝子及び/又は
1つ以上の基準遺伝子の発現に対して、前記患者から得られた細胞試料中での1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップ
であって、
I 前記標的遺伝子のセットは、
(a)IFNガンマシグナリングシグネチャ遺伝子:CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びSTAT1;
(b)IFN下流シグナリングシグネチャ遺伝子:APOL6、DTX3L、GBP1、IFI16、IFI27、IFI35、IFI6、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM1、IFITM2、IRF1、IRF9、ISG15、MX1、OAS1、OAS2、PARP9、PSMB9、STAT2、TMEM140、及びTRIM21;
(c)炎症性ケモカインシグネチャ遺伝子:CCL2、CCL3/L1、CCL4、CCL7、及びCCL8;
(d)骨髄炎症シグネチャ遺伝子:AREG、CSF3、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CCL20、FOSL1、IER3、IL6、及びPTGS2;
(e)MAGEシグネチャ遺伝子:MAGEA3/A6、MAGEA1、MAGEA12、MAGEA4、MAGEB2、MAGEC1、及びMAGEC2;
(f)免疫プロテアソームシグネチャ遺伝子:PSMB8、PSMB9、及びPSMB10; 並びに/又は
(g)腫瘍炎症シグネチャ遺伝子:CCL5、CD27、CD274、CD276、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA‐DQA1、HLA‐DRB1、HLA‐E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、及びTIGIT;
を含み、
II 前記1つ以上の基準遺伝子は、ABCF1、G6PD、NRDE2、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、及びUBBの中から選択された遺伝子であり;並びに
(
B)前記1つ以上の標的遺伝子の発現が、前記1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の前記発現に対して増大していることが分かった場合に、前記患者を、CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好適な応答者として識別するステップ
を含み、
前記CD123×CD3二重特異性分子は、二重特異性抗体、二重特異性scFv分子、又は2つ以上の共有結合したポリペプチド鎖を含む二重特異性ダイアボディであり、
前記CD123×CD3二重特異性分子は、
(i)CD3に結合できる抗体の軽鎖可変ドメイン(VLドメイン);
(ii)CD3に結合できる抗体の重鎖可変ドメイン(VHドメイン);
(iii)CD123に結合できる抗体のVLドメイン;及び
(iv) CD123に結合できる抗体のVHドメイン
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は:
(i)前記1つ以上の標的遺伝子の発現;及び
(ii)その発現が血液悪性腫瘍と特徴的に関連していない1つ以上の基準遺伝子の発現
を評価するステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記患者の前記1つ以上の基準遺伝子のベースライン発現に対して前記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は:
(a)前記血液悪性腫瘍に罹患している個体、又は複数の前記個体の集団;あるいは
(b)前記血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対して良好な応答性を有していなかった個体、又は複数の前記個体の集団;あるいは
(c)前記血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対して良好な応答性を有していた個体、又は複数の前記個体の集団
から得られた細胞試料中での、前記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、前記患者の前記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記個体の集団における前記1つ以上の標的遺伝子の相対発現レベルは、前記個体の集団から得られた細胞試料における遺伝子発現レベルを平均することによって確立される、請求項
4に記載
の方法。
【請求項6】
前記患者は、前記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルであって:
(a)前記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における前記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における前記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における前記標的遺伝子の発現レベルに対して少なくとも約0.4のlog
2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における前記標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第1四分位数以内である、
発現レベルを示す、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞試料は骨髄試料である、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記発現の評価、又は前記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの前記判定は:
(a)遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での前記1つ以上の標的遺伝子それぞれの発現レベルを判定するステップ;及び
(b)前記1つ以上の標的遺伝子それぞれの前記発現レベルを、前記1つ以上の基準遺伝子の発現レベルと比較するステップ
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記発現の評価、又は前記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの前記判定は:
(a)ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での前記1つ以上の標的遺伝子それぞれの生RNAレベルを判定するステップ;及び
(b)内部基準遺伝子の測定されたRNAレベルを用いて、前記1つ以上の標的遺伝子それぞれに関する測定された前記生RNAレベルそれぞれに、相対発現値を割り当てるステップ
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の標的遺伝子に関して遺伝子シグネチャスコアを決定する、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子シグネチャスコアは:
(a)ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での、前記1つ以上の標的遺伝子それぞれに関する生RNAレベルを測定するステップ、
(b)測定された前記生RNAレベルそれぞれを、前記ハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して正規化し、また任意に各RNA値を標準に対して更に正規化するステップ;
(c)各正規化済みRNA値を対数変換するステップ;
(d)各対数変換済みRNA値と、対応する重み係数とを乗算して、重み付きRNA値を生成するステップ;及び
(e)前記重み付きRNA値を足し合わせ、任意に調整係数定数を加えて、前記遺伝子シグネチャスコアを生成するステップ
を含むプロセスによって決定される、請求項
10に記載
の方法。
【請求項12】
前記遺伝子シグネチャスコアは、1つ以上の前記標的遺伝子、スコアリングの重み、及び任意に表6及び12A~12Gで提供される調整計数を用いて決定される、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
患者遺伝子シグネチャスコアであって:
(a)前記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における前記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した前記遺伝子シグネチャスコアに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における前記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した前記遺伝子シグネチャスコアに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における前記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した前記遺伝子シグネチャスコアに関するスコアに対して少なくとも約0.4のlog
2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた前記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における前記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した前記遺伝子シグネチャスコアに関するスコアの、少なくとも第1四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、前記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好ましい患者の応答の指標である、請求項
10に記載
の方法。
【請求項14】
(a)前記遺伝子シグネチャスコアがIFNガンマシグナリングシグネチャに関して決定され、少なくとも約2.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、前記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好ましい患者の応答の指標であり;及び/又は
(b)前記遺伝子シグネチャスコアが腫瘍炎症シグネチャに関して決定され、少なくとも約5.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、前記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好ましい患者の応答の指標であり;及び/又は
(c)前記遺伝子シグネチャスコアがIFN下流シグナリングシグネチャに関して決定され、少なくとも約4.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、前記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好ましい患者の応答の指標である、
請求項
12に記載
の方法。
【請求項15】
前記遺伝子シグネチャスコアは、IFNガンマシグナリングシグネチャ、腫瘍炎症シグネチャ、又はIFN下流シグナリングシグネチャである、請求項
12に記載
の方法。
【請求項16】
免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の特徴である遺伝子発現シグネチャを示す患者が、前記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好ましい患者の応答の指標である、請求項
12に記載
の方法。
【請求項17】
前記CD123×CD3二重特異性分子は、scFvを含む二重特異性抗体又は二重特異性分子である、請求項
1に記載の方法。
【請求項18】
前記CD123×CD3二重特異性分子は、JNJ‐63709178、XmAb14045、又はAPVO436である、請求項
17に記載
の方法。
【請求項19】
前記CD123×CD3二重特異性分子は:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖;及び
(b)配列番号23のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖
を含む共有結合二重特異性ダイアボディであり、
前記第1のポリペプチド鎖及び前記第2のポリペプチド鎖はジスルフィド結合によって互いに共有結合している、請求項
1に記載の方法。
【請求項20】
前記患者の前記血液悪性腫瘍は:急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML);CMLの急性転化;CMLに関連するAbelson癌遺伝子(Bcr‐ABL転座);骨髄異形成症候群(MDS);急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);リヒター症候群;CLLにおけるリヒター症候群の転化;有毛細胞白血病(HCL);芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN);マントル細胞リンパ腫(MCL);小リンパ球性リンパ腫(SLL);非ホジキンリンパ腫(NHL);ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症;並びにバーキットリンパ腫からなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項21】
前記患者の前記血液悪性腫瘍はAMLである、請求項
20に記載
の方法。
【請求項22】
前記患者の前記血液悪性腫瘍は化学療法に対して不応性である、請求項
20に記載
の方法。
【請求項23】
前記CD123×CD3二重特異性分子は、30ng/患者の体重kg/日、100ng/患者の体重kg/日、300ng/患者の体重kg/日、又は500ng/患者の体重kg/日の投薬量で投与するためのものである、請求項
1に記載の方法。
【請求項24】
前記CD123×CD3二重特異性分子は連続点滴によって投与するためのものである、請求項
1に記載の方法。
【請求項25】
前記患者はヒト患者である、請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許出願第62/878,368号(2019年7月25日出願;係属中)、62/769,078号(2018年11月19日出願;係属中)、及び62/752,659号(2018年10月30日出願;係属中)に対する優先権を主張するものであり、各上記出願は参照によりその全体が本出願に援用される。
【0002】
配列表の参照
本出願は、連邦規則法典第37巻第1.821節以下による1つ以上の配列表を含み、これらの配列表は、コンピュータ可読媒体(ファイル名:1301_0161PCT_ST25.txt、2019年9月26日作成、サイズ:31,244バイト)において開示されており、上記ファイルは、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0003】
本発明は、化学療法及び/又は低メチル化剤に対して不応性である血液悪性腫瘍を含む、急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)等の血液悪性腫瘍を治療する方法を対象とする。上記方法は、CD123×CD3二重特異性結合分子を、患者に、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激するために有効な量で投与することに関する。本発明は更に、上記患者由来の細胞試料が、1つ以上の標的遺伝子の、上記遺伝子の発現のベースラインレベル、例えば上記血液悪性腫瘍に罹患している複数の個体の基準集団における上記遺伝子の発現のベースラインレベルよりも高い、又は基準遺伝子の発現のレベルに対して高い発現を示す、上記方法の実施形態を対象とする。
【背景技術】
【0004】
I.CD123
CD123(インターロイキン3受容体α、IL‐3Ra)は、40kDa分子であり、インターロイキン3受容体複合体の一部である(非特許文献1)。インターロイキン3(IL‐3)は、多能性幹細胞の赤血球、骨髄及びリンパ系前駆細胞への早期分化を促進する。CD123は、CD34+コミット前駆細胞上で発現される(非特許文献2)が、CD34+/CD38-正常造血幹細胞によっては発現されない。CD123は、好塩基球、肥満細胞、形質細胞様樹状細胞によって発現され、単球、マクロファージ、及び好酸球によって多少発現され、好中球及び巨核球によってはわずかしか又は全く発現されない。一部の非造血組織(胎盤、精巣のライディッヒ細胞、特定の脳細胞要素、及び一部の内皮細胞)はCD123を発現するが、発現は大半が細胞質性である。
【0005】
CD123は、白血病性芽球及び白血病幹細胞(LSC)によって発現されることが報告されている(非特許文献3、4)。ヒトの正常前駆体集団では、CD123は造血前駆細胞(HPC)のサブセットによって発現されるものの、正常な造血幹細胞(HSC)によっては発現されない。CD123はまた、形質細胞様樹状細胞(pDC)及び好塩基球によって、並びに程度はより低いものの単球及び好酸球によって発現される(非特許文献5~9)
【0006】
CD123は、急性骨髄性白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(MDS)を含む広範な血液悪性腫瘍において、悪性細胞で過剰発現されることが報告されている(非特許文献7)。CD123の過剰発現は、AMLの予後不良に関連している(非特許文献10)。
【0007】
II.CD3
CD3は4つの別個の鎖で構成されたT細胞共受容体である(非特許文献11)。哺乳類では、この複合体は、1つのCD3γ鎖、1つのCD3δ鎖、及び2つのCD3ε鎖を含有する。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として知られる分子と会合して、Tリンパ球中で活性化シグナルを生成する。CD3が存在しない場合、TCRは適切に会合せず、崩壊する(非特許文献12)。CD3は、全ての成熟T細胞の膜に結合し、実質的に他の全ての細胞タイプの膜に結合しないことが分かっている(非特許文献13~15を参照)。
【0008】
III.AML及びMDS
急性骨髄性白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(MDS)は、一般に休眠している(即ち急速に分裂しない細胞である)ため細胞死(アポトーシス)及び従来の化学療法剤に対する耐性を有する、白血病性幹細胞(LSC)の小さな集団で発生し、それによって永続化すると考えられる。LSCは、高レベルのCD123発現を特徴とし、これは、正常なヒト骨髄中の、対応する正常な造血幹細胞には存在しない(非特許文献4、3)。CD123は、AMLの45%~95%、有毛細胞白血病(HCL)の85%、及び急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL)の40%で発現される。CD123発現は、以下の他の複数の悪性腫瘍/前悪性腫瘍にも関連する:慢性骨髄性白血病(CML)前駆細胞(急性転化CMLを含む);ホジキン/リード・シュテルンベルグ(RS)細胞;形質転換された非ホジキンリンパ腫(NHL);一部の慢性リンパ性白血病(CLL)(CD11c+);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL)のサブセット(16%、最も未成熟、大半が成人)、形質細胞様樹状細胞(pDC)DC2悪性腫瘍、及びCD34+/CD38-骨髄異形成症候群(MDS)骨髄細胞悪性腫瘍
【0009】
AMLは、形質転換された骨髄前駆細胞の、骨髄中での増殖及び蓄積を特徴とするクローン性疾患であり、これは最終的に造血不全につながる。AMLの発生率は年齢と共に上昇し、高齢の患者ほど、若年の患者に比べて治療成績が悪くなるのが典型的ある(非特許文献16)。残念ながら現在、AMLに罹患したほとんどの成人は、この疾患によって死亡している。
【0010】
AMLの治療はまず、寛解の導入(導入療法)に焦点を合わせる。寛解が達成されると、治療は、このような寛解の確保(寛解後療法又は地固め療法)、及び場合によっては維持療法に焦点を合わせるようにシフトされる。AMLのための標準的な寛解導入パラダイムは、アントラサイクリン/シタラビンの併用による化学療法であり、またこれに続いて、集中治療に耐える患者の能力、及び化学療法単独での治癒の可能性に応じて、(通常は導入期間中に使用されたものと同一の薬剤をより多い用量で使用した)地固め化学療法、又はヒト幹細胞移植が行われる(例えば非特許文献17を参照)。
【0011】
導入療法に頻繁に使用される作用剤としては、シタラビン及びアントラサイクリンが挙げられる。シタラビン(AraCとしても公知)は、DNA合成に干渉することによって、がん細胞(及び他の急速に分裂する正常な細胞)を殺滅する。AraC治療に関連する副作用としては:白血球産生の減少の結果としての、感染症に対する耐性の低下;血小板産生の減少の結果としての出血;及び赤血球細胞の潜在的減少による貧血が挙げられる。他の副作用としては、悪心及び嘔吐が挙げられる。アントラサイクリン(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、及びイダルビシン)は、DNA及びRNA合成の阻害、DNAの高次構造の破壊、並びに細胞損傷性遊離酸素ラジカルの産生を含む、複数の作用機序を有する。アントラサイクリンの最も重要な副作用は心毒性であり、これにより、投与される生涯用量がかなり制限され、その有用性もある程度制限される。
【0012】
幹細胞移植は、初回又はその後の寛解における、AMLに罹患した患者の抗白血病療法の最も有効な形態として確立されている(非特許文献17)。しかしながら残念なことに、新たに診断されたAMLの治療における大幅な進歩にもかかわらず、患者の20%~40%は、標準的な導入化学療法で寛解を達成せず、第1完全寛解に達した患者の50%~70%は、3年以内の再発が予測される。再発時の、又は抵抗性疾患を有する患者のための最適な戦略は、依然として不確実である(非特許文献18~23を参照)。よって新規の治療戦略が必要とされている。
【0013】
IV.二重特異性分子
非単一特異性分子(例えば二重特異性抗体、二重特異性ダイアボディ、BiTE(登録商標)抗体等)の提供は、異なる複数のエピトープを発現する細胞を共連結及び共局在化する能力という、天然抗体等の単一特異性分子を上回る有意な利点を提供する。従って二重特異性分子は、療法及び免疫診断を含む広範な用途を有する。二重特異性により、様々な用途におけるダイアボディの設計及び操作に高い柔軟性がもたらされ、これにより、多量体抗原への結合活性の強化、異なる抗原の架橋、及び両方の標的抗原の存在に依存する特定の細胞タイプへの指向性標的化が提供される。特に重要なのは、異なる複数の細胞の共連結、例えば細胞傷害性T細胞等のエフェクタ細胞の、腫瘍細胞に対する架橋である(非特許文献24、25)。
【0014】
天然抗体よりも高い能力を有する分子を提供するために、広範な組み換え二重特異性抗体フォーマットが開発されており(例えば特許文献1~7)、これらの大半は、リンカーペプチドを用いて、更なる結合タンパク質(例えばscFv、VL、VH等)を、抗体コア(IgA、IgD、IgE、IgG若しくはIgM)に、若しくはこれらの中に融合させるか、複数の抗体結合部分(例えば2つのFab断片若しくはscFv)を互いに融合させる。別のフォーマットは、リンカーペプチドを用いて、結合タンパク質(例えばscFv、VL、VH等)を、CH2‐CH3ドメイン等の二量体化ドメインに、又は別のポリペプチドに融合させ(特許文献8~11)、また他のフォーマットでは、CL及びCH1ドメインがそれぞれの自然な位置から交換される、並びに/又はVL及びVHドメインが、2つ以上の抗原に結合できるように多様化される(特許文献12、13)。
【0015】
当該技術分野は更に、2つ以上の異なるエピトープ種に結合できるダイアボディを産生できることに言及している(例えば非特許文献26を参照)。安定した共有結合型ヘテロ二量体非単一特異性ダイアボディが記載されている(例えば特許文献14~18、非特許文献27~29を参照)。このようなダイアボディは、1つ以上のシステイン残基を、採用されたポリペプチド種それぞれに組み込む。例えば、システイン残基をこのような構造のC末端に付加すると、ポリペプチド鎖間のジスルフィド結合が可能となり、2価分子の結合特性に干渉することなく、結果として得られるヘテロ二量体を安定させることができることが示されている。更に、ダイアボディ様ドメインを含む3価分子が記載されている(例えば特許文献19、20を参照)。ダイアボディエピトープ結合ドメインはまた、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、又は他の単核細胞で発現される、CD3、CD16、CD32、又はCD64といったいずれの免疫エフェクタ細胞の表面決定因子を指向することもできる。多くの研究において、エフェクタ細胞決定因子、例えばFcγ受容体(FcγR)に結合するダイアボディは、該エフェクタ細胞を活性化することも分かった(非特許文献25、30、特許文献14~18)。通常、エフェクタ細胞の活性化は、Fc‐FcγR相互作用による、エフェクタ細胞への抗原結合抗体の結合によってトリガされ、従ってこの点に関して、ダイアボディ分子は、Fcドメインを含むかどうかにかかわらず、(例えば当該技術分野において公知の、又は本明細書で例示されている、いずれのエフェクタ機能アッセイ(例えばADCCアッセイ)においてアッセイされるような)Ig様の機能を示し得る。腫瘍細胞とエフェクタ細胞とを架橋することにより、ダイアボディは、エフェクタ細胞を腫瘍細胞の付近に運ぶだけでなく、効果的な細胞殺滅をもたらす(例えば非特許文献31を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2008/003116号
【文献】国際公開第2009/132876号
【文献】国際公開第2008/003103号
【文献】国際公開第2007/146968号
【文献】国際公開第2009/018386号
【文献】国際公開第2012/009544号
【文献】国際公開第2013/070565号
【文献】国際公開第2005/070966号
【文献】国際公開第2006/107786号
【文献】国際公開第2006/107617号
【文献】国際公開第2007/046893号
【文献】国際公開第2008/027236号
【文献】国際公開第2010/108127号
【文献】国際公開第2006/113665号
【文献】国際公開第2008/157379号
【文献】国際公開第2010/080538号
【文献】国際公開第2012/018687号
【文献】国際公開第2012/162068号
【文献】国際公開第2015/184203号
【文献】国際公開第2015/184207号
【非特許文献】
【0017】
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【文献】Cao et al. (2003) “Bispecific Antibody Conjugates In Therapeutics,” Adv. Drug. Deliv. Rev. 55:171-197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
CD123発現性悪性細胞のT細胞標的転換細胞殺滅を仲介できる、CD123及びCD3を標的とするいくつかの二重特異性分子が開発中である(例えばVey, N., et al. (2017) “Interim Results From A Phase 1 First-In-Human Study Of Flotetuzumab, a CD123 x CD3 Bispecific DART Molecule In AML/MDS,” Annals of Oncology, 28(S5)5, mdx373.001; Godwin, C.D., et al. (2017) “Bispecific Anti-CD123 x Anti-CD3 Adaptir(商標) Molecules APVO436 and APVO437 Have Broad Activity Against Primary Human AML Cells In Vitro” Blood. 130(S1): 2639; Forslund, A., et al. (2016) “Ex Vivo Activity Profile of the CD123xCD3 Duobody(登録商標) Antibody JNJ-63709178 Against Primary Acute Myeloid Leukemia Bone Marrow Samples” Blood 128(22):2875を参照)。しかしながら、T細胞を血液悪性腫瘍の位置へと標的化できる二重特異性結合分子を採用するための努力は、十分に成功しているとは言えない。従って、CD123×CD3二重特異性結合分子を用いた血液悪性腫瘍の治療のための新規の戦略を開発することについて、満たされていない需要が存在し続けている。本発明はこの需要、及び以下に記載される他の需要に直接対処する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、化学療法及び/又は低メチル化剤に対して不応性である血液悪性腫瘍を含む、急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)等の血液悪性腫瘍を治療する方法を対象とする。上記方法は、CD123×CD3二重特異性結合分子を、患者に、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激するために有効な量で投与することに関する。本発明は更に、上記患者由来の細胞試料が、1つ以上の標的遺伝子の、上記遺伝子の発現のベースラインレベル、例えば上記血液悪性腫瘍に罹患している複数の個体の基準集団における上記遺伝子の発現のベースラインレベルよりも高い、又は基準遺伝子の発現のレベルに対して高い発現を示す、上記方法の実施形態を対象とする。
【0020】
詳細には、本発明は、患者の化学療法不応性血液悪性腫瘍を治療する方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療投薬量のCD123×CD3二重特異性分子を投与するステップを含み、上記投薬量は、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激することによって上記悪性腫瘍を治療するために有効なものである。
【0021】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与前及び/又は後に、上記患者由来の細胞試料中での1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の発現を評価するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記方法が、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与前に、上記1つ以上の標的遺伝子及び/又は上記1つ以上の基準遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明はまた、上記方法が、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与後に、上記1つ以上の標的遺伝子及び/又は上記1つ以上の基準遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0022】
本発明は更に、患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを判定する方法を提供し、上記方法は:
(a)上記1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の発現に対して、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与前に、上記患者由来の細胞試料中での1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップ;並びに
(b)上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、上記1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の上記発現に対して増大していることが分かった場合に、上記患者を、CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好適な応答者として識別するステップ
を含む。
【0023】
本発明は更に、上記方法が:(i)上記1つ以上の標的遺伝子の発現;及び(ii)その発現が血液悪性腫瘍と特徴的に関連していない1つ以上の基準遺伝子を評価する、上記方法の実施形態を提供する。
【0024】
本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の基準遺伝子のベースライン発現に対して上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0025】
本発明は更に、血液悪性腫瘍に罹患している個体の、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、ある患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、血液悪性腫瘍に罹患している上記個体の、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、又は第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記方法の実施形態を提供する。
【0026】
本発明は更に、本発明の方法及び組成物を用いて過去に血液悪性腫瘍が良好に治療されなかった個体(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体)、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、ある患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、良好に治療されなかった上記個体又は上記個体の集団の1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、又は第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、良好に治療されなかった上記個体又は上記個体の集団の上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの、少なくとも約0.4、少なくとも約0.5、少なくとも約0.6、又はそれより高いlog2倍率変化を有する、上記方法の実施形態を提供する。
【0027】
本発明は更に、本発明の方法及び組成物を用いて過去に血液悪性腫瘍が良好に治療された個体(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体)、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、ある患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、良好に治療された上記個体又は上記個体の集団の上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの、第1四分位数以内(即ち下25%以内)、第2四分位数以内(即ち下25%~50%)、又は第3四分位数以内(即ち下50~75%)である、上記方法の実施形態を提供する。
【0028】
本発明は更に、上記集団における上記1つ以上の標的遺伝子の相対発現レベルが、上記個体の集団から得られた細胞試料における遺伝子発現レベルを平均することによって確立される、上記方法の実施形態を提供する。
【0029】
本発明は更に、上記患者が、上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルであって:
(a)血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルに対して少なくとも約0.4のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第1四分位数以内である、
発現レベルを示す、上記方法の実施形態を提供する。
【0030】
本発明は更に、上記患者が、上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルであって:
(a)血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルに対して少なくとも約0.4のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第2四分位数以内である、
発現レベルを示す、上記方法の実施形態を提供する。
【0031】
本発明は更に、上記患者が、上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルであって:
(a)血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルに対して少なくとも約0.6のlog2倍率変化を有する、
発現レベルを示す、上記方法の実施形態を提供する。
【0032】
本発明は更に、血液悪性腫瘍を治療する方法を提供し、上記方法は:
(a)上述の実施形態のうちのいずれか1つの方法を採用して、患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを判定するステップ;
(b)上記患者がこのような治療に対する好適な応答者であると判定された場合に、治療投薬量の上記CD123×CD3二重特異性分子を上記患者に投与するステップ
を含み、
上記CD123×CD3二重特異性分子の投与は、上記患者の体内での血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激する。
【0033】
本発明は更に、上記治療の開始後に、上記患者から得られた細胞試料中での上記1つ以上の標的遺伝子の発現を、1回以上評価するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0034】
本発明は更に、上記細胞試料が骨髄又は血液試料である、上記方法の実施形態を提供する。特に本発明は、上記細胞試料が骨髄試料である、上記方法の実施形態を提供する。
【0035】
本発明は更に、上記患者の骨髄の試料中での、上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルを検出するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、1つ以上の基準遺伝子の発現レベルを検出するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0036】
本発明は更に、特にCD123×CD3二重特異性分子の投与前に、上記患者の骨髄の試料中での、上記1つ以上の標的遺伝子及び/又は上記1つ以上の基準遺伝子の発現レベルを検出するステップを含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0037】
本発明は更に、発現の評価、又は上記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの判定が:
(a)遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での各標的遺伝子の遺伝子発現レベルを判定するステップ;及び
(b)標的遺伝子発現レベルを、1つ以上の基準遺伝子の発現レベルと比較するステップ
によって実施される、上記方法の実施形態を提供する。
【0038】
本発明は更に、発現の評価、又は上記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの判定が:
(a)遺伝子発現プラットフォームで、1つ以上の細胞試料中での各標的遺伝子の生RNAレベルを判定するステップであって、上記遺伝子発現プラットフォームは、ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む、ステップ;及び
(b)内部基準遺伝子の測定されたRNAレベルを用いて、上記標的遺伝子に関する測定された上記生RNAレベルそれぞれに、相対発現値を割り当てるステップ
によって実施される、上記方法の実施形態を提供する。
【0039】
本発明は更に、上記1つ以上の標的遺伝子が:
(a)CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びSTAT1のうちの1つ以上;並びに/又は
(b)CCL5、CD27、CD274、CD276、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA‐DQA1、HLA‐DRB1、HLA‐E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、及びTIGITのうちの1つ以上;並びに/又は
(c)AREG、CSF3、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CCL20、FOSL1、IER3(NM_003897.4)、IL6、及びPTGS2のうちの1つ以上;並びに/又は
(d)CCL2、CCL3/L1、CCL4、CCL7、及びCCL8のうちの1つ以上;並びに/又は
(e)MAGEA3/A6、MAGEA1、MAGEA12、MAGEA4、MAGEB2、MAGEC1、及びMAGEC2のうちの1つ以上;並びに/又は
(f)APOL6、DTX3L、GBP1、IFI16、IFI27、IFI35、IFI6、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM1、IFITM2、IRF1、IRF9、ISG15、MX1、OAS1、OAS2、PARP9、PSMB9、STAT2、TMEM140、及びTRIM21のうちの1つ以上;並びに/又は
(g)PSMB8、PSMB9、及びPSMB10のうちの1つ以上;並びに/又は
(h)IL‐10;並びに/又は
(i)CD274;並びに/又は
(j)PDCD1LG2
を含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0040】
本発明は更に、上記1つ以上の標的遺伝子が更にIFNG(NM_000619.2)を含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0041】
本発明は更に、上記1つ以上の基準遺伝子が、ABCF1、G6PD、NRDE2、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、及びUBBのうちの1つ以上を含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0042】
本発明は更に、上記1つ以上の標的遺伝子に関して遺伝子シグネチャスコアを決定する、上記方法の実施形態を提供する。本発明の特定の実施形態では、上記遺伝子シグネチャスコアは、各上記標的遺伝子の上記生RNAレベルから:
(a)ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での、各上記標的遺伝子に関する上記生RNAレベルを測定するステップ、
(b)測定された上記生RNAレベルそれぞれを、上記ハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して正規化し、また任意に各RNA値を標準に対して更に正規化するステップ;
(c)各正規化済みRNA値を対数変換するステップ;
(d)各対数変換済みRNA値と、対応する重み係数とを乗算して、重み付きRNA値を生成するステップ;及び
(e)上記重み付きRNA値を足し合わせ、任意に調整係数定数を加えて、単一の遺伝子シグネチャスコアを生成するステップ
を含むプロセスによって決定される。
【0043】
好ましくは、遺伝子シグネチャは、表6及び12A~12Gで提供される標的遺伝子を用いて決定される。本発明の特定の実施形態では、上記重み係数は、表6及び12A~12Gで提供されるものである。本発明の特定の実施形態では、調整係数を各スコアに加える。特定の実施形態では、上記調整係数は、表6及び12B~12Gで提供されるものである。
【0044】
本発明は特に、遺伝子シグネチャスコアが:
(a)IFNガンマシグナリングシグネチャ;
(b)腫瘍炎症シグネチャ;
(c)骨髄炎症シグネチャ;
(d)炎症性ケモカインシグネチャ;
(e)MAGEシグネチャ;
(f)IFN下流シグナリングシグネチャ;
(g)免疫プロテアソームシグネチャ;
(h)IL‐10シグネチャ;
(i)PD‐L1シグネチャ;及び/又は
(j)PD‐L2シグネチャ
のうちの1つ以上に関して決定される、上記方法の実施形態を提供する。
【0045】
本発明は更に:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.4のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第1四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0046】
本発明は更に:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第2四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第2四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.5のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第2四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0047】
本発明は更に:
(a)血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第3四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第3四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.6のlog2倍率変化を有する、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0048】
本発明は更に:
(a)上記遺伝子シグネチャがIFNガンマシグナリングシグネチャであり、少なくとも約2.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標であり;及び/又は
(b)上記遺伝子シグネチャが腫瘍炎症シグネチャであり、少なくとも約5.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標であり;及び/又は
(c)上記遺伝子シグネチャがIFN下流シグナリングシグネチャであり、少なくとも約4.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、
上記方法の実施形態を提供する。
【0049】
本発明は更に、上記遺伝子シグネチャが、IFNガンマシグナリングシグネチャ、腫瘍炎症シグネチャ、又はIFN下流シグナリングシグネチャであり、また:
(a)血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.4のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第1四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0050】
本発明は更に、上記遺伝子シグネチャが、IFNガンマシグナリングシグネチャ、腫瘍炎症シグネチャ、又はIFN下流シグナリングシグネチャであり、また:
(a)血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャのスコアの第2四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアの第2四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.5のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した遺伝子シグネチャのスコアの、少なくとも第2四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0051】
本発明はまた、免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の特徴である遺伝子発現シグネチャを示す患者が、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、上記方法の実施形態を提供する。
【0052】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が、scFvを含む二重特異性抗体又は二重特異性分子である、上記方法の実施形態を提供する。
【0053】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が、JNJ‐63709178、XmAb14045、又はAPVO436である、上記方法の実施形態を提供する。
【0054】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が、2つ、3つ、又は4つのポリペプチド鎖を有する共有結合型二重特異性ダイアボディである、上記方法の実施形態を提供する。
【0055】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子が:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖;及び
(b)配列番号23のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖
を含むダイアボディであり、上記第1のポリペプチド鎖及び上記第2のポリペプチド鎖はジスルフィド結合によって互いに共有結合している、上記方法の実施形態を提供する。
【0056】
本発明は更に、上記患者の血液悪性腫瘍が:急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML);CMLの急性転化;CMLに関連するAbelson癌遺伝子(Bcr‐ABL転座);骨髄異形成症候群(MDS);急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);リヒター症候群;CLLにおけるリヒター症候群の転化;有毛細胞白血病(HCL);芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN);マントル細胞リンパ腫(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む非ホジキンリンパ腫(NHL);ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症;並びにバーキットリンパ腫からなる群から選択される、上記方法の実施形態を提供する。
【0057】
本発明は更に、上記患者の血液悪性腫瘍がAML、MDS、BPDCN、又はT‐ALLである、上記方法の実施形態を提供する。
【0058】
本発明は更に、上記患者の血液悪性腫瘍が、化学療法(CTX)に対して不応性である、例えばシタラビン/アントラサイクリン系細胞傷害性化学療法に対して不応性である、又は低メチル化剤(HMA)化学療法に対して不応性である、上記方法の実施形態を提供する。
【0059】
本発明は更に、芽球細胞(癌細胞)のCD123の発現のレベルを、正常な末梢血単核細胞(PBMC)によって発現される対応するベースラインレベルCD123と比較して決定するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0060】
本発明は更に、上記発現のレベルが、CD123の細胞表面発現を測定することによって決定される、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、CD123の細胞表面発現が、発現のベースラインレベルに対して少なくとも約20%増大する、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、CD123発現の増大が、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する上記患者の応答性を高める、上記方法の実施形態を提供する。
【0061】
本発明は更に、上記CD123×CD3二重特異性分子の有効投薬量が、30、100、300、及び500ng/患者の体重kg/日からなる群から選択される、上記方法の実施形態を提供する。
【0062】
本発明は更に、上記治療投薬量が連続点滴として投与される、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、30ng/kg/日の治療投薬量を3日間にわたって連続点滴で投与した後、100ng/kg/日の治療投薬量を4日間にわたって連続点滴で投与する、上記方法の実施形態を提供する。本発明は更に、上記治療投薬量が、連続点滴によって投与される500ng/kg/日の投与を更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0063】
本発明は更に、上記患者がヒト患者である、上述の全ての方法の実施形態を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1A-1C】
図1A~1Cは、例示的なダイアボディ分子の全体的構造を示す。
図1Aは、2つのエピトープ結合ドメイン、ヘテロ二量体促進ドメイン、及びシステイン含有リンカーを有する2鎖CD123×CD3二重特異性ダイアボディ(フロテツズマブとしても知られる「DART‐A」)の、第1及び第2のポリペプチド鎖の構造を提供する。
図1B~1Cは、3つのポリペプチド鎖で構成される、2つのエピトープ結合ドメインを有するCD123×CD3二重特異性ダイアボディの全体的構造を提供する。上記ポリペプチド鎖のうちの2つは、CH2及びCH3ドメインを有し、従って会合した鎖はFcドメインの全体又は一部を形成する。VL及びVHドメインを含むポリペプチド鎖は更に、ヘテロ二量体促進ドメイン及びリンカーを含む。システイン残基は、リンカーに(
図1A及び1B)、並びに/又はヘテロ二量体促進ドメインに(
図1C)、存在してよい。同一のエピトープを認識するVL及びVHドメインは、同一の濃淡又は塗りつぶしパターンを用いて示されている。
【
図2】
図2は、従来の化学療法に対して不応性応答を示した患者(例えば、ダウノルビシンと組み合わせて投与されるシタラビンを用いた治療のレジメンに対して不応性応答を示した患者(7+3導入療法(Ref CTX))、又は低メチル化剤デシタビン及びアザシチジンを用いた治療のレジメンに対して不応性応答を示した患者(Ref HMA、二次AMLの患者を含む))、及び全てフロテツズマブ治療の前に再発した患者(Relapse)から得られたベースライン骨髄生検から生成された、46のIO360シグネチャ又は細胞タイプの教師なし階層的クラスタリングを示す。また、フロテツズマブを用いたCD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する患者の応答も示されている。このような応答に、抗白血病応答(Anti‐leuk(A):これは、完全応答(CR)、不完全な血液学的改善を伴う完全応答(CRi)、形態学的無白血病状態(MLF)、他の抗白血病効果(OB)、若しくは部分応答(PR)を示す患者を含んでいた)であるものとして、又は無応答(NR:これは、進行性疾患/治療失敗(PD)、及び安定性疾患(SD)を含んでいた)として、注釈を付けた。シグネチャ間の比較を容易にするために、各IO360シグネチャスコアを、このコホートに関するスコア内で-3~+3のスケールに再スケーリングした。免疫疲弊及び免疫強化遺伝子シグネチャは、それぞれクラスタ2及びクラスタ3のカラム内で太線で囲まれている。
【
図3A-3O】
図3A~3Oは、化学療法不応性及びHMA不応性の患者が、複数の遺伝子シグネチャの異なる発現を有することを示す。特に、再発患者の遺伝子発現プロファイルは免疫枯渇の特徴を示し、その一方でHMA不応性(HMA不応性及び二次AMLを含む)患者のプロファイルは、CTX不応性患者と比較して、疲弊したCD8T細胞に関連する遺伝子シグネチャが増大する傾向と共に、TIGIT、PD‐L1及びTreg遺伝子シグネチャの上方制御を含む、免疫疲弊及び適応免疫抵抗性の特徴を示す。
図3Aは、全ての不応性(CTX及びHMA)からの再発患者の変化の間の倍率変化の違いのフォレストプロットである。
図3Bは、再発からのHMA不応性患者の変化の間の倍率変化の違いのフォレストプロットであり、
図3Cは、CTX不応性患者からHMA不応性患者の変化の間の倍率変化の違いのフォレストプロットである。クラスタ2免疫疲弊(C2)及びクラスタ3免疫強化(C3)遺伝子シグネチャは、
図3A及び3Cに示されている。骨髄(
図3D)、マクロファージ(
図3E)、好中球(
図3F)、B細胞(
図3G)、IFNガンマ(IFN‐γ、
図3H)、PD‐L1(
図3I)、TIGIT(
図3J)、CTLA‐4(
図3K)、Th1(
図3L)、CTL(
図3M)、CD8 T細胞(
図3N)、及び細胞傷害性(
図3O)遺伝子シグネチャスコアが、免疫枯渇(Depl.)、免疫強化(Enriched)、及び免疫疲弊(Exh.)プロファイルに関してプロットされている。
【
図4】
図4は、CD123×CD3二重特異性結合分子療法の後の、25人の患者(再発(RL)患者、CTX不応性であった患者(CTx)、及びHMA不応性であった患者(HMA))由来の骨髄芽球における(ベースラインに対する)パーセント変化、並びに上記療法に対する上記患者の応答(CR、完全応答;mCR、分子CR;CRi、不完全な血液学的改善を伴う完全応答;MLF、形態学的無白血病状態;PR、部分応答;SD、安定性疾患;PD、進行性疾患/治療失敗)を示す。
【
図5A-5C】
図5A~5Cは、IFNガンマシグナリングシグネチャがフロテツズマブに対する応答者においてベースラインで増大すること、従ってIFNガンマシグナリングシグネチャCD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する正の応答の予測因子となることを示す。
図5Aは、OR患者とNR患者との間のベースライン倍率変化の違いのフォレストプロットであり、IFNガンマシグナリングシグネチャがOR患者のベースライン試料において増大したことを示す(免疫疲弊(C2)及び免疫強化(C3)遺伝子シグネチャが示されている)。腫瘍炎症シグネチャ及びIFN下流シグネチャも増大することが確認された。
図5Bは、患者のNR及びOR集団におけるIFNガンマシグナリングシグネチャスコアの分布を示す(二次AML;Ref CTX:CTXに対して不応性;Ref HMA:HMAに対して不応性、再発:一次再発)。
図5Cは、ベースラインIFNガンマシグナリングシグネチャスコアの予測性能を示すROC曲線(AUC=0.819)を示す。
【
図6】
図6は、治療前(「Base」)の骨髄試料由来の、又はフロテツズマブを用いた治療の第1のサイクルの後(「Cycle 1」)の骨髄試料由来のRNAにおいて検査した、細胞傷害性細胞に、又はCD8+ T細胞に関連する遺伝子シグネチャの発現を示す
【
図7】
図7は、化学療法に対して不応性の患者集団、再発患者集団、HMAに対して不応性の患者集団、又はHMAが失敗した患者集団における、CD123の発現を示す。
【
図8】
図8は、ベースライン(BL)における患者のAML芽球のPD‐L1の発現のレベルと、CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する早期進行者であったか又は応答者であったかとの間の相関を示す。データは平均+分布として表される。
【
図9】
図9は、従来の化学療法に対して不応性応答を示した患者(P)、及び全てフロテツズマブ治療の前に再発した患者(R)から得られたベースライン骨髄生検から生成された、48のIO360シグネチャ又は細胞タイプの教師なし階層的クラスタリングを示す。また、フロテツズマブを用いたCD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する患者の応答も示されている。このような応答に、抗白血病応答(A:これは、完全応答(CR)、不完全な血液学的改善を伴う完全応答(CRi)、形態学的無白血病状態(MLF)、他の抗白血病効果(OB)、若しくは部分応答(PR)を示す患者を含んでいた)であるものとして、又は無応答(N:これは、進行性疾患/治療失敗(PD)、及び安定性疾患(SD)を含んでいた)として、注釈を付けた。シグネチャ間の比較を容易にするために、各IO360シグネチャスコアを、このコホートに関するスコア内で-3~+3のスケールに再スケーリングした。免疫浸潤クラスタ及び免疫枯渇クラスタへの層別化が示されている。
【
図10】
図10は、再発した不応性の患者の、フロテツズマブを用いたCD123×CD3二重特異性結合分子療法に対して抗白血病応答(OR)を示す患者と非応答者(NR)との間の、ベースライン倍率変化の違いのフォレストプロットであり、以下を含む多数のシグネチャが、応答者由来のベースライン試料において増大した:IFNガンマシグナリングシグネチャ、IFN下流シグネチャ、及び腫瘍炎症シグネチャ(それぞれ太線で囲まれている)。IFN優性モジュールを構成する遺伝子シグネチャにアスタリスクが付けられており、これらも応答者由来のベースライン試料において増大している。
【
図11A-11D】
図11A~11Dは、複数の遺伝子シグネチャのスコア分布を示し、不応性(Refr.)及び再発(Rel.)患者、OR患者のIFNモジュールは、大きな白い丸で示されており、NR患者は、小さな黒い点で示されている。対になったデータに関して、マン=ホイットニーのU検定を用いて比較を行った。**P<0.01である。
図11Aは、IFNガンマシグナリングシグネチャスコアの分布を示す。
図11Bは、IFN下流シグナリングシグネチャスコアの分布を示す。
図11Cは、腫瘍炎症シグネチャ(TIS)スコアの分布を示す。
図11Dはは、IFN優性モジュール(IFNモジュール)スコアの分布を示す。
【
図12A-12J】
図12A~12Jは、非応答者(NR)及び応答する患者(抗白血病応答を示す患者)(OR)における、IFN優性モジュールを構成する9個の遺伝子シグネチャ、及び腫瘍炎症シグネチャ(TIS)のスコアの分布を示す。
図12AはIFNガンマシグナリングシグネチャスコアを示し;
図12BはIFN下流シグネチャスコアを示し;
図12Cは骨髄炎症シグネチャスコアを示し;
図12Dは免疫プロテアソームシグネチャスコアを示し;
図12Eは炎症性ケモカインシグネチャスコアを示し;
図12FはMAGEシグネチャスコアを示し;
図12GはPD‐L1シグネチャスコアを示し;
図12HはPD‐L2シグネチャスコアを示し;
図12IはIL10シグネチャスコアを示し;
図12Jは腫瘍炎症シグネチャ(TIS)スコアを示す。
【
図13A-13K】
図13A~13Kは、IFN優性モジュールを構成する9個の遺伝子シグネチャ、腫瘍炎症シグネチャ(TIS)、及び30人の不応性/再発患者の群に関するIFN優性モジュールに関する、ベースラインスコアの予測性能を示すROC曲線を示す。
図13Aは、IFNガンマシグナリングシグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.750である。
図13Bは、IFNガンマ下流シグナリングシグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.755である。
図13Cは、骨髄炎症シグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.69である。
図13Dは、免疫プロテアソームシグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.505である。
図13Eは、炎症性ケモカインシグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.764である。
図13Fは、MAGEシグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.736である。
図13Gは、PD‐L1シグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.699である。
図13Hは、PD‐L2シグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.727である。
図13Iは、IL10シグネチャスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.745である。
図13Jは、TISスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.852である。
図13Kは、IFN優性モジュールスコアに関するROC曲線を示し、AUC=0.806である。
【
図14A-14D】
図14A~14Dは、治療前(「Pre」)の骨髄試料由来の、又はフロテツズマブを用いた治療の第1のサイクルの後(「Post‐C1」)の骨髄試料由来のRNAにおいて検査した、腫瘍炎症(TIS、
図14A)、IFNガンマシグナリング(
図14B)、抗原プロセシング機械(APM、
図14C)、及びPD‐L1(
図14D)遺伝子シグネチャのスコア分布を示し、OR患者は大きな白い丸で示されており、NR患者は小さな黒い点で示されている。対になったデータに関して、マン=ホイットニーのU検定を用いて比較を行った。Pre=ベースラインである。C1=サイクル1である。**P<0.01である。***P<0.001である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、化学療法及び/又は低メチル化剤に対して不応性である血液悪性腫瘍を含む、急性骨髄性白血病(AML)又は骨髄異形成症候群(MDS)等の血液悪性腫瘍を治療する方法を対象とする。上記方法は、CD123×CD3二重特異性結合分子を、患者に、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激するために有効な量で投与することに関する。本発明は更に、上記患者由来の細胞試料が、1つ以上の標的遺伝子の、上記遺伝子の発現のベースラインレベル、例えば上記血液悪性腫瘍に罹患している複数の個体の基準集団における上記遺伝子の発現のベースラインレベルよりも高い、又は基準遺伝子の発現のレベルに対して高い発現を示す、上記方法の実施形態を対象とする。
【0066】
上述のように、化学療法耐性及び再発は、急性骨髄性白血病(AML)に罹患した小児及び成人の死亡の重大な原因であり続けている。従来の化学療法を受けても、患者のうちの26.9%しか、5年を超えて生存しないと予想される。
【0067】
急性骨髄性白血病(AML)に罹患した患者における治療アプローチは、30年以上にわたってあまり変化していない。標準的な最前線の療法は、ダウノルビシンと組み合わせて投与されるシタラビンの、2薬剤レジメン(いわゆる7+3導入療法、本明細書中では「CTX」と略される)である。低メチル化剤(本明細書中では「HMA」と略される)デシタビン及びアザシチジンは一般に、比較的高齢の患者に、又はCTXレジメンが適合しないと考えられる患者に投与される。しかしながら、文献による推定では、患者のうちの最高45%が、標準的な最前線の化学療法に対して不応性であることが示されている。従来の細胞傷害性化学療法の更なる強化は、これらの薬剤によって一般に誘発される正常細胞に対する急性かつ長期の副作用の重篤度を理由として、実行不可能とみなされてきた(Tasian, S.K. (2018 “Acute Myeloid Leukemia Chimeric Antigen Receptor T-Cell Immunotherapy: How Far Up The Road Have We Traveled?,” Ther. Adv. Hematol. 9(6):135-148; Przespolewski, A. et al. (2018) “Advances In Immunotherapy For Acute Myeloid Leukemia” Future Oncol. 14(10):963-978; Shimabukuro-Vornhagen, A. et al. (2018) “Cytokine Release Syndrome,” J. Immunother. Cancer. 6(1):56 pp. 1-14; Milone, M.C. et al. (2018) “The Pharmacology of T Cell Therapies,” Mol. Ther. Methods Clin. Dev. 8:210-221; Dhodapkar, M.V. et al. (2017) “Hematologic Malignancies: Plasma Cell Disorders,” Am. Soc. Clin. Oncol. Educ. Book. 37:561-568; Kroschinsky, F. et al. (2017) “New Drugs, New Toxicities: Severe Side Effects Of Modern Targeted And Immunotherapy Of Cancer And Their Management,” Crit. Care 14;21(1):89)。
【0068】
T細胞と結合する二重特異性抗体は、炎症誘発性サイトカインの放出を刺激する。このようなサイトカインは、直接的な細胞傷害性によって、並びに免疫細胞を活性化させて腫瘍部位に動員することにより、抗白血病的効能を増大させることができる(Hoseini, S.S. et al. (2107) “Acute Myeloid Leukemia Targets For Bispecific Antibodies,” Blood Cancer Journal 7:e522, doi:10.1038/bcj.2017.2; pp. 1-12)。特に、フロテツズマブというCD123×CD3二重特異性結合分子を用いた治療は、再発/不応性(「R/R」)AMLのフェーズ1/2試験で試験されている。血液悪性腫瘍を引き起こす癌細胞を選択的に標的とする、免疫療法の優れた能力にもかかわらず(例えばKoch, J. et al. (2017) “Recombinant Antibodies to Arm Cytotoxic Lymphocytes in Cancer Immunotherapy,” Transfus. Med. Hemother. 44:337-350; Lichtenegger, F.S. et al. (2017) “Recent Developments In Immunotherapy Of Acute Myeloid Leukemia,” J. Hematol. Oncol. 10:142, pp. 1-20を参照)、T細胞を血液悪性腫瘍の位置に標的化できる二重特異性結合分子を採用するための努力は十分に成功していない。
【0069】
従って、免疫療法を含む新規の治療戦略の発見は、依然として優先事項である。免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境(「TME」)を有するAML患者は、無再発生存期間が有意に短いことが過去に報告されており、これは標準的な導入化学療法に対する不応性を示唆している(Vadakekolathu, J. et al. (2017) “Immune Gene Expression Profiling in Children and Adults with Acute Myeloid Leukemia Identifies Distinct Phenotypic Patterns,” Blood 130:3942A)。
【0070】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子発現シグネチャ(gene expression signature)」は、特定の細胞タイプ及び/又は生物学的プロセスに特徴的な遺伝子のグループの遺伝子発現のパターンを指すことを意図したものである(例えばStenner, F. et al. (2018) “Cancer Immunotherapy and the Immune Response in Follicular Lymphoma,” Front. Oncol. 8:219 doi: 10.3389/fonc.2018.00219, pages 1-7; Cesano, A. et al. (2018) “Bringing The Next Generation Of Immuno-Oncology Biomarkers To The Clinic,” Biomedicines 6(14) doi: 10.3390/biomedicines6010014, pages 1-11; Shrestha, G. et al. (2016) “The Value Of Genomics In Dissecting The RAS-Network And In Guiding Therapeutics For RAS-Driven Cancers,” Semin. Cell Dev. Biol. 58:108-117; Gingras, I. et al. (2015) “CCR 20th Anniversary Commentary: Gene-Expression Signature in Breast Cancer--Where Did It Start and Where Are We Now?,” Clin. Cancer Res. 21(21):4743-4746; Eberhart, C.G. (2011) “Molecular Diagnostics In Embryonal Brain Tumors,” Brain Pathol. 21(1):96-104; Baylin, S.B. (2009) “Stem Cells, Cancer, And Epigenetics,” StemBook, ed. The Stem Cell Research Community, StemBook, doi/10.3824/stembook.1.50.1, pages 1-14; Asakura, M. et al. (2009) “Global Gene Expression Profiling In The Failing Myocardium,” Circ. J. 73(9):1568-1576; Shaffer, A.L. et al. (2001) “Signatures Of The Immune Response,” Immunity 15(3):375-385; Staudt, L.M. et al. (2005) “The Biology Of Human Lymphoid Malignancies Revealed By Gene Expression Profiling,” Adv. Immunol. 87:163-208を参照)。観察された遺伝子発現シグネチャ、及び/又は変更された(若しくは変更されていない)1つ以上の生物学的プロセスに起因する該シグネチャの変化を用いて、病原性の医学的状態の存在、性質、及び/又は重篤度を評価できる。
【0071】
本発明の中心的な態様は、IFNガンマ優性AML腫瘍微小環境(「TME」)の存在の認識が、標準的な化学療法に対する抵抗性の予測とは対照的に、CD123×CD3二重特異性結合分子を採用した療法(CD123×CD3二重特異性結合分子フロテツズマブを採用した療法を含む)に対する好ましい応答を予測するという認識に関する。本発明は部分的に、不応性血液悪性腫瘍(例えば急性骨髄性白血病)に罹患した患者の特定の亜集団が、CD123×CD3二重特異性結合分子(例えばフロテツズマブ)を用いた治療に特に適しているという認識に由来する。この亜集団のメンバーは、上記メンバーの、免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の存在の特徴である遺伝子発現シグネチャを示す能力によって、容易に同定できる。
【0072】
I.本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子を用いた治療に特に好適な患者集団の同定
A.「遺伝子発現シグネチャ」の決定方法
ある患者が、免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の存在の特徴である遺伝子発現シグネチャを示すかどうかを判断することによって、本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に特に適しているかどうかを識別するために、患者から得られた細胞試料に由来するRNA試料を評価して、これが、上記シグネチャと相関して発現する1つ以上の「標的(target)」遺伝子の発現の増大のエビデンスとなるかどうかを判断する。このような評価は、遺伝子発現の既存の検出及び/若しくは測定を利用してよく、又はこのような遺伝子発現を検出及び/若しくは測定する1つ以上のステップを組み込んだものであってもよい。本明細書中で使用される場合、用語「細胞試料(cellular sample)」は、細胞又は細胞の抽出物を含有する試料を指す。
【0073】
ある患者が免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の存在の特徴である遺伝子発現シグネチャを示すかどうかの判断において使用するためのRNA又はタンパク質のソースとして、いずれの細胞試料を採用してよい。しかしながら好ましくは、このような遺伝子発現の比較は、患者又はドナーの集団の骨髄(BM)試料から、又は血液試料から、又は芽球細胞(癌細胞)から得られたRNAを使用して実施される。ドナーの集団の上述のような細胞からRNAを得て、ベースライン発現レベルを提供する場合、採用された発現レベルの平均を使用してよい(例えば幾何平均を採用してよい)。多数の異なる基準集団を、このような遺伝子発現の比較に使用してよい。特定の実施形態では、患者が示す少なくとも1つの標的遺伝子の発現レベルを:血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団;上記基準発現レベルの決定時に上記血液悪性腫瘍に罹患していて、血液悪性腫瘍の治療に対する良好な応答性を有していなかった個体の集団(即ちCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団);及び/又は上記基準発現レベルの決定時に上記血液悪性腫瘍に罹患していて、その後、血液悪性腫瘍が、本発明の方法及び組成物を用いて良好に治療された個体の集団(即ちCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団)において示される、上記標的遺伝子の発現レベルと比較する。比較対象集団が、血液悪性腫瘍に罹患している集団である場合、このような集団は好ましくは、同一の血液悪性腫瘍に罹患している個体を患者として含む。このような集団は、化学療法剤を用いた過去の治療後に再発した、及び/又は化学療法剤を用いた治療に対して不応性であった(即ち一次不応性の)個体を含んでよい。比較対象集団が、CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた、又は有していなかった個体の集団である場合、上記集団は好ましくは、同一の血液悪性腫瘍に罹患している個体を患者として含む。
【0074】
本明細書中で使用される場合、遺伝子の発現は、ベースライン又は他の比較対象(例えばある集団におけるこのような遺伝子の発現)に対して、その発現が少なくとも約10%多い、少なくとも約20%多い、少なくとも約30%多い、少なくとも約40%多い、少なくとも約50%多い、少なくとも約60%多い、少なくとも約70%多い、少なくとも約80%多い、少なくとも約90%多い、少なくとも約1.5倍多い、少なくとも約2倍多い、少なくとも約2.5倍多い、少なくとも約3倍多い、少なくとも約3.5倍多い、少なくとも約4倍多い、少なくとも約4.5倍多い、少なくとも約5倍多い、少なくとも約5.5倍多い、少なくとも約6倍多い、少なくとも約6.5倍多い、少なくとも約7倍多い、少なくとも約7.5倍多い、少なくとも約8倍多い、少なくとも約8.5倍多い、少なくとも約9倍多い、少なくとも約10倍多い場合に、「増大している(increased)」と表現される。あるいはこのような増大を、「log2倍率変化(log2‐fold change)」に関して記述できる。発現の増大に関して、例えば0.4のlog2倍率変化は約30%多い発現に相当し;0.5のlog2倍率変化は約40%多い発現に相当し;0.6のlog2倍率変化は約50%多い発現に相当し;0.7のlog2倍率変化は約60%多い発現に相当し;0.8のlog2倍率変化は約70%多い発現に相当し;0.9のlog2倍率変化は約90%多い発現に相当し;1のlog2倍率変化は2倍の増大に相当し;1.5のlog2倍率変化は2.8倍の増大に相当し;2のlog2倍率変化は4倍の増大に相当し;2.5のlog2倍率変化は5.7倍の増大に相当し;3のlog2倍率変化は8倍の増大に相当し;3.5のlog2倍率変化は11.3倍の増大に相当し;4のlog2倍率変化は16倍の増大に相当する。log2倍率変化は一般に、計数をアレイデータと比較する際に使用され、t検定にも適当である。
【0075】
あるいは上記増大は、「遺伝子シグネチャスコア(gene signature score)」に関して記述され、ここでは、標的遺伝子の各クラスタの発現を測定し、1つ以上のハウスキーピング遺伝子及び/又は内部標準に対して正規化し、対数変換し、重み付けして合計することにより、単一の遺伝子シグネチャスコアが生成される。上記スコアを算出するための方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書では特定の方法を提供する(後述の実施例1を参照)。
【0076】
本明細書中で使用される場合、遺伝子シグネチャ(例えばIFNガンマシグナリングシグネチャ)の発現は、遺伝子シグネチャスコアが、少なくとも約2、又は少なくとも約2.5、又は少なくとも約3.0、又は少なくとも約3.5、又は少なくとも約4、又は少なくとも約4.5、又は少なくとも約5、又は少なくとも約5.5、又は少なくとも約6、又は約6.5超である場合に、「増大している」と表現される。
【0077】
また、患者の遺伝子シグネチャスコアは、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出された遺伝子シグネチャスコアの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0078】
また、患者の遺伝子シグネチャスコアは、血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団)におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出された遺伝子シグネチャスコアの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記遺伝子シグネチャスコアの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0079】
また、患者の遺伝子シグネチャスコアは、血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団)におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出された遺伝子シグネチャスコアに対して、少なくとも約0.4、又は少なくとも約0.5、又は少なくとも約0.6、又は更に高いlog2倍率変化を有する場合に、「増大している」と表現される。
【0080】
また、患者の遺伝子シグネチャスコアは、本発明の方法及び組成物を用いて過去に血液悪性腫瘍が良好に治療された個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団)におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出された遺伝子シグネチャスコアの、少なくとも第1四分位数以内(即ち下25%以内)である、より好ましくは上記遺伝子シグネチャスコアの少なくとも第2四分位数以内(即ち下25%~50%)である、少なくとも第3四分位数以内(即ち下50%~75%)である、85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0081】
遺伝子シグネチャスコアの増大の発見は、本発明のCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である。
【0082】
一実施形態では、患者は、標的遺伝子の発現が、評価対象の患者における、該患者が健康だったときの若しくは該患者が血液悪性腫瘍の診断を受ける前の上記遺伝子の発現のベースラインレベルに対して、又は該患者の化学療法治療レジメンの経過中の、若しくは該患者のCD123×CD3二重特異性結合分子を伴う治療レジメンの経過中のある時点における該遺伝子の発現に対して、「増大している」かどうかを判断することによって、免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の存在の特徴である遺伝子発現シグネチャを示すものとして同定され、従って本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して特に適しているものとして同定される。
【0083】
第2の実施形態では、患者は、1つ以上の標的遺伝子の発現のレベルを、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における1つ以上のこのような標的遺伝子発現の平均又は重み付きベースラインレベルと比較することによって、免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の存在の特徴である遺伝子発現シグネチャを示すものとして同定され、従って本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して特に適しているものとして同定される。上記平均又は重み付きベースラインレベルよりも多く発現する標的遺伝子は、「増大した」発現のレベルを示すと表現され、本発明の方法及び組成物は、このような患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。例えば本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。
【0084】
第3の実施形態では、患者は、1つ以上の標的遺伝子の発現のレベルを、過去に本発明の方法及び組成物を用いて血液悪性腫瘍が良好に治療されなかった個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団)における1つ以上のこのような標的遺伝子発現の平均又は重み付きベースラインレベルと比較することによって、免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の存在の特徴である遺伝子発現シグネチャを示すものとして同定され、従って本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して特に適しているものとして同定される。上記平均又は重み付きベースラインレベル以上に発現する標的遺伝子は、「増大した」発現のレベルを示すと表現され、本発明の方法及び組成物は、このような患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。例えば本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療されなかった個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療されなかった個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療されなかった個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療されなかった個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。
【0085】
第4の実施形態では、患者は、1つ以上の標的遺伝子の発現のレベルを、過去に本発明の方法及び組成物を用いて血液悪性腫瘍が良好に治療された個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団)における1つ以上のこのような標的遺伝子発現の平均又は重み付きベースラインレベルと比較することによって、免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の存在の特徴である遺伝子発現シグネチャを示すものとして同定され、従って本発明の方法及び組成物を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して特に適しているものとして同定される。上記平均又は重み付きベースラインレベル以上に発現する標的遺伝子は、「増大した」発現のレベルを示すと表現され、本発明の方法及び組成物は、このような患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。例えば本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療された個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第1四分位数以内(即ち下25%以内)の、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療された個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第2四分位数以内(即ち下25~50%)の、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療された個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第3四分位数以内(即ち下50%~75%)の、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本発明の方法及び組成物は、1つ以上の標的遺伝子の発現の、上述のような良好に治療された個体の集団における上記1つ以上の標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第4四分位数以内の(即ち下75%より高い)、「増大した」レベルを示す患者の血液悪性腫瘍の治療における使用に、更に好適である。
【0086】
しかしながら、標的遺伝子の発現が「増大している」かどうかは、該標的遺伝子の発現レベルを、疾患に関連しない又は疾患状態の結果として発現の増大を示さない1つ以上の遺伝子(「基準(reference)」遺伝子)の発現レベルと比較することによって判断することが好ましい。基準遺伝子は異なる複数のレベルで発現することが多いため、基準遺伝子の発現の幾何平均を利用して、スケーリング計数を算出できる。幾何平均は、データセット内のサンプル値毎に各遺伝子を乗算し、得られた積のn乗根(nは上記セット内の数の個数である)を求めることによって得られる。幾何平均は、一連の数値の中央傾向を示すという点で算術平均と類似している。しかしながら、算術平均とは異なり、幾何平均は、プローブ間の計数レベルの大きさの変動に対する感度が低い。試料のコホートにわたって生物学的シグネチャを比較する際、1つ以上の「基準遺伝子」のセットからの幾何平均を用いて、データセットにわたる個々の試料を正規化することにより、生物学的遺伝子間の比較を、試料の質量入力及び試料の品質等の技術的変動による差異から独立させることができる。
【0087】
好ましい「基準遺伝子」は、正常な細胞及び悪性細胞において同一のレベルで恒常的に発現される。基本的な細胞機能の維持に必要な遺伝子等のハウスキーピング遺伝子(Eisenberg, E. et al. (2003) “Human Housekeeping Genes Are Compact,” Trends in Genetics. 19(7):362-365; kon Butte, A.J. et al. (2001) “Further Defining Housekeeping, Or "Maintenance," Genes Focus On 'A Compendium Of Gene Expression In Normal Human Tissues’,” Physiol. Genomics. 7(2):95-96; Zhu, J. et al. (2008) “On The Nature Of Human Housekeeping Genes,” Trends in Genetics 24(10):481-484; Eisenberg, E. et al. (2013) “Human Housekeeping Genes, Revisited,” Trends in Genetics. 29(10):569-574)が、基準遺伝子の好ましいクラスである。
【0088】
更なる実施形態では、ある患者がCD123×CD3結合分子療法を用いた治療に特に好適であるかどうかの判断は、以下を更に含む:
(a)患者の芽球細胞(癌細胞)におけるCD123の発現のレベルを評価するステップ。上記レベルを、上記患者の化学療法治療レジメンの前若しくは経過中のある時点での、上記患者の芽球細胞におけるCD123の発現に関連する、又は再発した個体若しくはHMA療法に対して不応性である個体の集団の芽球細胞におけるCD123の発現に関連する、対応するベースラインレベルCD123と比較してよい。CD123の発現の増大の発見は、血液悪性腫瘍のためにCD123×CD3結合分子療法を受けることに対する患者の好適性の更なる指標である。CD123発現の決定は、CD123をコードするmRNAの存在を評価することによって、又は細胞溶解物若しくは抽出物中のCD123の存在を評価することによって達成できる。あるいはCD123発現の決定は、CD123発現細胞(例えば芽球細胞)の細胞表面に配列されたCD123分子の存在を評価することによって達成してよい。このようにして決定されたCD123の増大した発現(例えば発現の少なくとも10%の増大、発現の少なくとも15%の増大、発現の少なくとも20%の増大、発現の少なくとも25%の増大、発現の少なくとも30%の増大、又は発現の少なくとも40%の増大)は、血液悪性腫瘍のためにCD123×CD3結合分子療法を受けることに対する患者の好適性の指標である;
並びに/あるいは
(b)患者の芽球細胞(癌細胞)におけるPD‐L1の発現のレベルを評価するステップ。特定の実施形態では、PD‐L1発現のレベルを、患者の芽球細胞のある試料にわたって評価することにより、PD‐L1を発現する芽球細胞の百分率を評価する。他の実施形態では、患者の芽球細胞におけるPD‐L1発現のレベルを、上記患者の化学療法治療レジメンの経過中のある時点での、上記患者の芽球細胞におけるPD‐L1の発現と比較する。このように、患者の細胞におけるPD‐L1の発現のレベルを、CD123×CD3結合分子のいずれの投与前、及び/又は上記投与後に評価できる。PD‐L1の低い発現の発見は、血液悪性腫瘍のためにCD123×CD3結合分子療法を受けることに対する患者の好適性の指標である。PD‐L1の高い発現の発見は、血液悪性腫瘍のために、CD123×CD3結合分子療法と、PD‐1/PD‐L1軸のアンタゴニストとの組み合わせを受けることに対する患者の好適性の指標である。PD‐L1発現の決定は、CDPD‐L1をコードするmRNAの存在を評価することによって、又は細胞溶解物若しくは抽出物中のPD‐L1の存在を評価することによって達成できる。あるいはPD‐L1発現の決定は、PD‐L1発現細胞(例えばPBMC)の細胞表面に配列されたPD‐L1分子の存在を評価することによって達成してよい。このようにして決定されたPD‐L1の増大した発現(例えば芽球細胞の少なくとも10%が発現する、芽球細胞の少なくとも15%が発現する、芽球細胞の少なくとも20%が発現する、芽球細胞の少なくとも25%が発現する、芽球細胞の少なくとも30%が発現する、又は芽球細胞の少なくとも40%が発現する)は、血液悪性腫瘍のために、CD123×CD3結合分子療法と、PD‐1/PD‐L1軸のアンタゴニストとの組み合わせを受けることに対する患者の好適性の指標である(例えば国際公開第2017/214092号を参照)。
【0089】
更なる実施形態では、CD8+Tリンパ球を、CD123×CD3二重特異性分子の投与中及び/又は投与後の腫瘍微小環境中のCD8+Tリンパ球の割合の増大に関して監視する。
【0090】
更なる実施形態では、本発明のCD123×CD3結合分子療法は更に、抗ヒトPD‐L1抗体等の抗ヒトPD‐L1結合分子、又はヒトPD‐L1結合ドメインを有するダイアボディの投与を含んでよい。この実施形態に従って使用してよい抗ヒトPD‐L1結合分子としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブが挙げられる(例えば米国特許第9,873,740号;米国特許第8,779,108号を参照)。アテゾリズマブ(WHO Drug Information, 2015, Recommended INN: List 74, 29(3):387)、デュルバルマブ(WHO Drug Information, 2015, Recommended INN: List 74, 29(3):393-394)、及びアベルマブ(WHO Drug Information, 2015, Recommended INN: List 74, 30(1):100-101)の完全重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、当該技術分野において公知である。
【0091】
更なる代替実施形態では、本発明のCD123×CD3結合分子療法は更に、抗ヒトPD‐1抗体等の抗ヒトPD‐1結合分子、又はヒトPD‐1結合ドメインを有するダイアボディの投与を含んでよい。この実施形態に従って使用してよい抗ヒトPD‐1結合分子としては:ニボルマブ(5C4、BMS‐936558、ONO‐4538、MDX‐1106としても公知、Bristol‐Myers SquibbがOPDIVO(登録商標)として市販)、ペンブロリズマブ(旧称ランブロリズマブ、MK‐3475、SCH‐900475としても公知、MerckがKEYTRUDA(登録商標)として市販)、EH12.2H7(BioLegendが市販)、ピジリズマブ(CAS登録番号1036730‐42‐3、CT‐011としても公知、CureTech)、hPD‐1 mAb 7(1.2)IgG4(P)、及びDART‐I(国際公開第2017/019846号で開示)が挙げられる(例えば米国特許第5,952,136号;米国特許第7,488,802号;米国特許第7,521,051号;米国特許第8,008,449号;米国特許第8,088,905号;米国特許第8,354,509号;米国特許第8,552,154号;米国特許第8,779,105号;米国特許第8,900,587号;米国特許第9,084,776号;米国特許第国際公開第2004/056875号;国際公開第2006/121168号;国際公開第2008/156712号;国際公開第2012/135408号;国際公開第2012/145493号;国際公開第2013/014668号;国際公開第2014/179664号;国際公開第2014/194302号;国際公開第2015/112800号;国際公開第2017/019846号;及び国際公開第2017/214092号も参照)。
【0092】
1.例示的な「標的」遺伝子
IFNガンマは、IRF等の一次応答遺伝子、Fcガンマ受容体(FCGR)、GBP(グアニル酸結合タンパク質)、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI及びクラスII分子、抗原提示に関与するタンパク質、PKR等の抗ウイルスタンパク質、並びにOASタンパク質等を含む、200を超える遺伝子の遺伝子発現を刺激する(Boehm, U. et al. (1997) “Cellular Responses To Interferon-γ,” Annu. Rev. Immunol. 15:749-795; Schroder, K. et al. (2003) “Interferon-Gamma: An Overview Of Signals, Mechanisms And Functions,” J. Leukoc. Biol. 75(2):163-189)。
【0093】
表1は、例示的な標的遺伝子と、各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なGenBank(登録商標)登録番号とを開示する(Der, S.D. et al. (1988) “Identification Of Genes Differentially Regulated By Interferon α, β, or γ Using Oligonucleotide Arrays,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 95:15623-15628; Schneider, W.M. et al. (2014) “Interferon-Stimulated Genes: A Complex Web of Host Defenses,” Annu. Rev. Immunol. 32:513-545), and those disclosed in Schroder, K. et al. (2003) (“Interferon-Gamma: An Overview Of Signals, Mechanisms And Functions,” J. Leukoc. Biol. 75(2):163-189を参照;これらの文献は参照により本出願に援用される)。
【0094】
【0095】
本明細書中で提供される場合、患者が免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境を有していたかどうかを判断するために極めて好ましい遺伝子発現シグネチャを、「インターフェロン(IFN)ガンマシグナリングシグネチャ」と呼ぶ。IFNガンマシグナリングシグネチャの遺伝子は:CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びSTAT1である(表6)。IFNガンマシグナリングシグネチャは更に、IFNGを含んでよい(例えば代表的なNCBI配列登録番号:NM_000619.2を参照)。IFNガンマシグナリングシグネチャの増大した発現は、CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する患者の好適性に特に相関する。
【0096】
更なる好適な標的遺伝子を追加できる。このような更なる標的遺伝子は、INTERFEROMEデータベースを用いて、IFNガンマの下流調節遺伝子として容易に同定できる(Samarajiwa1, S.A. et al. (2009) “INTERFEROME: The Database Of Interferon Regulated Genes,” Nucleic Acids Research 37: D852-D857)。特に、好ましい更なる遺伝子は、PDCD1(本明細書中では一般名PDL1でも呼称される)、PDCD1LG2(本明細書中では一般名PDL2でも呼称される)、IL10、CTLA4(表13)、並びに/又は後述の実施例で提供される以下の遺伝子シグネチャ中に存在する遺伝子のうちの1つ以上である:「インターフェロン(IFN)下流シグネチャ」(その遺伝子は表12Bに列挙されている);「骨髄炎症シグネチャ」(その遺伝子は表12Cに列挙されている);「炎症性ケモカインシグネチャ」(その遺伝子は表12Dに列挙されている);「MAGESシグネチャ」(その遺伝子は表12Eに列挙されている);及び/又は「免疫プロテアソームシグネチャ」(その遺伝子は表12Fに列挙されている)。
【0097】
特に、複数の遺伝子及びシグネチャの発現を、「モジュール(module)」として集合体で評価することによって、CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する患者の好適性を評価できる。患者が免疫浸潤(免疫強化)IFN優性腫瘍微小環境を示すかどうかを判断するために使用できる、1つの特に好ましいモジュールは、本明細書中では「IFN優性モジュール(IFN Dominant Module)」と呼ばれる。IFN優性モジュールに関連する標的遺伝子としては:PDL1、PDL2、IL10、CTLA4、並びに以下の各遺伝子発現シグネチャ中に存在する遺伝子が挙げられる:IFNガンマシグナリングシグネチャ、インターフェロン下流シグネチャ、骨髄炎症シグネチャ、炎症性ケモカインシグネチャ、MAGESシグネチャ、及び免疫プロテアソームシグネチャ(表10)。
【0098】
IFN優性モジュールは、モジュールスコアが少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約26、少なくとも約27、少なくとも約28、少なくとも約29、少なくとも約30、少なくとも約31、少なくとも約32、少なくとも約33、又は少なくとも約35である場合に、「増大している」と表現される。
【0099】
また、患者のIFN優性モジュールスコアは、血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出されたIFN優性モジュールスコアの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、上記IFN優性モジュールスコアの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、上記IFN優性モジュールスコアの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記IFN優性モジュールスコアの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0100】
また、患者のIFN優性モジュールスコアは、血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団)におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出されたIFN優性モジュールスコアの、第1四分位数より高い(即ち下25%を超える)、上記IFN優性モジュールスコアの第2四分位数より高い(即ち下50%を超える)、上記IFN優性モジュールスコアの第3四分位数より高い(即ち下75%を超える)、上記IFN優性モジュールスコアの85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0101】
また、患者のIFN優性モジュールスコアは、本発明の方法及び組成物を用いて過去に血液悪性腫瘍が良好に治療された個体の集団(例えばCD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団)におけるこのような標的遺伝子の発現レベルから算出されたIFN優性モジュールスコアの、少なくとも第1四分位数以内(即ち下25%以内)である、より好ましくは上記IFN優性モジュールスコアの少なくとも第2四分位数以内(即ち下25%~50%)である、少なくとも第3四分位数以内(即ち下50%~75%)である、85%を超える、90%を超える、又は95%を超える場合に、「増大している」と表現される。
【0102】
IFN優性モジュールに関連する遺伝子シグネチャ(CD274、PDCD1LG2、IL10、CTLA4、IFNガンマシグナリングシグネチャ、インターフェロン下流シグネチャ、骨髄炎症シグネチャ、炎症性ケモカインシグネチャ、MAGESシグネチャ、及び免疫プロテアソームシグネチャ)を別個に評価することによって、CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する患者の好適性を評価できる。
【0103】
本明細書中で更に提供されるように、患者が腫瘍内の抑制された適応免疫応答に関連する遺伝子発現シグネチャ(本明細書中では「腫瘍炎症シグネチャ(Tumor Inflammation Signature)」、又は簡単に「TIS」とも呼ばれる)を示すかどうかを判断するために使用できる、極めて好ましい標的遺伝子の別のセットとしては、以下の遺伝子が挙げられる:CCL5、CD27、CD274、CD276、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA‐DQA1、HLA‐DRB1、HLA‐E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、及び/又はTIGIT(表12A)。腫瘍炎症シグネチャの増大した発現は、CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する患者の好適性に特に相関する。
【0104】
2.例示的な「基準」遺伝子
正常な細胞及び悪性細胞において同一のレベルで恒常的に発現されるハウスキーピング遺伝子は、基準遺伝子の1つの好ましいクラスを構成する。ハウスキーピング遺伝子としては、一般的な遺伝子発現に関与する遺伝子(例えば転写因子、リプレッサ、RNAスプライシング因子、翻訳因子、tRNA合成酵素、RNA結合タンパク質、リボソームタンパク質、ミトコンドリアリボソームタンパク質、RNAポリメラーゼ、タンパク質プロセシング因子、熱ショックタンパク質、ヒストン、細胞周期調節因子、アポトーシス、癌遺伝子、DNA修復/複製等をコードする遺伝子)、代謝に関与する遺伝子(例えば:炭水化物代謝、クエン酸サイクル、脂質代謝、アミノ酸代謝、NADHデヒドロゲナーゼ、シトクロムCオキシダーゼ、ATPases、リソソーム酵素、プロテアソームタンパク質、リボヌクレアーゼ、チオレダクターゼ等の酵素をコードする遺伝子)、細胞構造の完全性に関与する遺伝子(例えば細胞骨格タンパク質、オルガネラ合成に関与するタンパク質、ミトコンドリアタンパク質等をコードする遺伝子)、並びに細胞表面タンパク質(例えば細胞接着タンパク質、イオンチャネル及びトランスポータ、受容体、HLA/免疫グロブリン/細胞認識タンパク質等をコードする遺伝子)、及びキナーゼ/シグナリングタンパク質(例えば成長因子、組織壊死因子、カゼインキナーゼ等)に関与する遺伝子が挙げられる。この目的に好適な基準遺伝子は、以下をコードする遺伝子を含む:
・ステロール調節要素結合タンパク質(例えばATF1、ATF2、ATF4、ATF6、ATF7、ATF7、BTF3、E2F4、ERH、HMGB1、ILF2、IER2、JUND、TCEB2等);
・リプレッサ(例えばPUF60等);
・RNAスプライシングタンパク質(例えばBAT1、HNRPD、HNRPK、PABPN1、SRSF3等);
・翻訳因子(例えばEIF1、EIF1AD、EIF1B、EIF2A、EIF2AK1、EIF2AK3、EIF2AK4、EIF2AK1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、EIF2S2、EIF3A、EIF3B、EIF3D、EIF3G、EIF3I、EIF3H、EIF3J、EIF3K、EIF3L、EIF3M、EIF3S5、EIF3S8、EIF4A1、EIF4A2、EIF4A3、EIF4E2、EIF4G1、EIF4G2、EIF4G3、EIF4H、EIF5、EIF5、EIF5A、EIF5AL1、EIF5B、EIF6、TUFM等);
・tRNA合成酵素(例えばAARS、AARS2、AARSD1434、CARS、CARS2、DARS、DARS2、EARS2614、FARS2、FARSA、FARSB、GARS、HARS、HARS2、IARS、IARS2、KARS、LARS2、MARS、MARS2、NARS、NARS2、QARS、RARS、RARS2、SARS、TARS、VARS2、WARS2、YARS、YARS2436等);
・RNA結合タンパク質(例えばELAVL1等);
・リボソームタンパク質(例えばRPL5、RPL8、RPL9、RPL10A、RPL11、RPL14、RPL25、RPL26L1、RPL27、RPL30、RPL32、RPL34、RPL35、RPL35A、RPL36AL、RPS5、RPS6、RPS6KA3、RPS6KB1、RPS6KB2、RPS13、RPS19BP1、RPS20、RPS23、RPS24、RPS27、RPN1等);
・ミトコンドリアリボソームタンパク質(例えばMRPL9、MRPL1、MRPL10、MRPL11、MRPL12、MRPL13、MRPL14、MRPL15、MRPL16、MRPL17、MRPL18、MRPL19、MRPL2、MRPL20、MRPL21、MRPL22、MRPL23、MRPL24、MRPL27、MRPL28、MRPL3、MRPL30、MRPL32、MRPL33、MRPL35、MRPL36、MRPL37、MRPL38、MRPL4、MRPL40、MRPL41、MRPL42、MRPL43、MRPL44、MRPL45、MRPL46、MRPL47、MRPL48、MRPL49、MRPL50、MRPL51、MRPL52、MRPL53、MRPL54、MRPL55、MRPL9、MRPS10、MRPS11、MRPS12、MRPS14、MRPS15、MRPS16、MRPS17、MRPS18A、MRPS18B、MRPS18C、MRPS2、MRPS21、MRPS22、MRPS23、MRPS24、MRPS25、MRPS26、MRPS27、MRPS28、MRPS30、MRPS31、MRPS33、MRPS34、MRPS35、MRPS5、MRPS6、MRPS7、MRPS9等);
・RNAポリメラーゼ(例えばPOLR1C、POLR1D、POLR1E、POLR2A、POLR2B、POLR2C、POLR2D、POLR2E、POLR2F、POLR2G、POLR2H、POLR2I、POLR2J、POLR2K、POLR2L、POLR3C、POLR3E、POLR3GL、POLR3K等);
・タンパク質プロセシングタンパク質(例えばPPID、PPIE、PPIF、PPIG、PPIH、CANX、CAPN1、CAPN7、CAPNS1、NACA、NACA2、PFDN2、PFDN4、PFDN5、PFDN6、SNX2、SNX3、SNX4、SNX5、SNX6、SNX9、SNX12、SNX13、SNX17、SNX18、SNX19、SNX25、SSR1、SSR2、SSR3、SUMO1、SUMO3等);
・熱ショックタンパク質(例えばHSPA4、HSPA5、HSPA8、HSPA9、HSPA14、HSBP1等);
・ヒストン(例えばHIST1H2BC、H1FX、H2AFV、H2AFX、H2AFY、H2AFZ等);
・細胞周期タンパク質(例えばARHGAP35、ARHGAP5、ARHGDIA、ARHGEF10L、ARHGEF11、ARHGEF40、ARHGEF7、RAB10、RAB11A、RAB11B、RAB14、RAB18、RAB1A、RAB1B、RAB21、RAB22A、RAB2A、RAB2B380、RAB3GAP1、RAB3GAP2、RAB40C、RAB4A、RAB5A、RAB5B、RAB5C、RAB6A、RAB7A、RAB9A、RABEP1、RABEPK、RABGEF1、RABGGTA、RABGGTB、CENPB、CTBP1、CCNB1IP1、CCNDBP1、CCNG1、CCNH、CCNK402、CCNL1、CCNL2、CCNY、PPP1CA、PPP1CC、PPP1R10、PPP1R11、PPP1R15B、PPP1R37、PPP1R7、PPP1R8、PPP2CA、PPP2CB552、PPP2R1A、PPP2R2A、PPP2R2D、PPP2R3C、PPP2R4、PPP2R5A、PPP2R5B、PPP2R5C、PPP2R5D、PPP2R5E、PPP4C、PPP4R1、PPP4R2、PPP5C、PPP6C、PPP6R2、PPP6R3、RAD1、RAD17、RAD23B、RAD50、RAD51C、IST1等);
・アポトーシスタンパク質(例えばDAD1、DAP3、DAXX等);
・癌遺伝子タンパク質(例えばARAF、MAZ、MYC等);
・DNA修復/複製タンパク質(例えばMCM3AP、XRCC5、XRCC6等);
・代謝タンパク質(例えばPRKAG1、PRKAA1、PRKAB1、PRKACA、PRKAG1、PRKAR1A、PRKRIP1等);
・炭水化物代謝タンパク質(例えばALDOA、B3GALT6、B4GALT3、B4GALT5、B4GALT7、GSK3A、GSK3B、TPI1、PGK1、PGAM5、ENOPH1、LDHA、TALDO1、TSTA3);
・クエン酸サイクルタンパク質(例えばSDHA、SDHAF2、SDHB、SDHC、SDHD等);
・脂質代謝タンパク質(例えばHADHA等);
・アミノ酸代謝タンパク質(例えばCOMT等);
・NADHデヒドロゲナーゼ(例えばNDUFA2、NDUFA3、NDUFA4、NDUFA5、NDUFA6、NDUFA7、NDUFA8、NDUFA9、NDUFA10、NDUFA11、NDUFA12、NDUFA13、NDUFAF2、NDUFAF3、NDUFAF4、NDUFB2、NDUFB3、NDUFB4、NDUFB5、NDUFB6、NDUFB7、NDUFB10、NDUFB11、NDUFB8、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFC2、NDUFS5、NDUFV2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFS7、NDUFS8、NDUFV1、NDUFV2等);
・シトクロムCオキシダーゼ(例えばCOX4I1、COX5B、COX6B1、COX6C、COX7A2、COX7A2L、COX7C、COX8、COX8A、COX11、COX14、COX15、COX16、COX19617、COX20、CYC1、UQCC、UQCR10、UQCR11、UQCRB、UQCRC1、UQCRC2、UQCRHL591、UQCRQ、ATPase、ATP2C1、ATP5A1、ATP5B、ATP5C1、ATP5D、ATP5F1、ATP5G2、ATP5G3、ATP5H、ATP5J、ATP5J2、ATP5J2、ATP5L、ATP5O、ATP5S、ATP5SL、ATP6AP1、ATP6V0A2、ATP6V0B、ATP6V0C、ATP6V0D1、ATP6V0E1、ATP6V1C1、ATP6V1D、ATP6V1E1、ATP6V1F、ATP6V1G1、ATP6V1H、ATPAF2、ATPIF1等);
・リソソームタンパク質(例えばCTSD、CSTB、LAMP1、LAMP2、M6PR等);
・プロテアソームタンパク質(例えばPSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4、PSMA5、PSMA6、PSMA7、PSMB1、PSMB2、PSMB3、PSMB4、PSMB5、PSMB6、PSMB7、PSMC2、PSMC3、PSMC4、PSMC5、PSMC6、PSMD1、PSMD10、PSMD11、PSMD12、PSMD13、PSMD14、PSMD2、PSMD3、PSMD4、PSMD5、PSMD6、PSMD7、PSMD8、PSMD9、PSME2、PSME3、PSMF1、PSMG2、PSMG3、PSMG4591、UBA1、UBA2、UBA3、UBA5、UBA52、UBAC2、UBALD1、UBAP1、UBAP2L、UBB、UBC、UBE2A、UBE2B、UBE2D2、UBE2D3、UBE2D4、UBE2E1、UBE2E2、UBE2E3、UBE2F、UBE2G2、UBE2H、UBE2I、UBE2J1、UBE2J2、UBE2K、UBE2L3、UBE2M、UBE2N、UBE2NL989、UBE2Q1、UBE2R2、UBE2V1、UBE2V2、UBE2W、UBE2Z、UBE3A、UBE3B、UBE3C、UBE4A、UBE4B、USP10、USP14、USP16、USP19、USP22、USP25、USP27X073、USP33、USP38、USP39、USP4、USP47、USP5、USP7、USP8、USP9X590等);
・リボヌクレアーゼ(例えばRNH等);
・チオレダクターゼ(例えばTXN2、TXNDC11、TXNDC12、TXNDC15、TXNDC17、TXNDC9、TXNL1、TXNL4A、TXNL4B、TXNRD1、細胞骨格、ANXA6、ANXA7、ARPC1A、ARPC2、ARPC5L、CAPZA2、CAPZB、RHOB、RHOT1、RHOT2、TUBB、WDR1等);
・オルガネラ合成に関与するタンパク質(例えばBLOC1S1、BLOC1S2、BLOC1S3、BLOC1S4、BLOC1S6、AP1G1、AP1M1、AP2A1、AP2A2、AP2M1、AP2S1、AP3B1、AP3D1、AP3M1、AP3S1、AP3S2、AP4B1、AP5M1、ANXA6、ANXA7、AP1B1、CLTA、CLTB、CLTC等);
・ミトコンドリアタンパク質(例えばMTX2等);
・細胞表面タンパク質(例えばAP2S1、CD81、GPAA1、LGALS9、MGAT2、MGAT4B、VAMP3等);
・細胞接着タンパク質(例えばCTNNA1、CTNNB1、CTNNBIP1、CTNNBL1、CTNND1458等);
・イオンチャネル及びトランスポータタンパク質(例えばABCB10、ABCB7、ABCD3、ABCE1、ABCF1、ABCF2、ABCF3、CALM1、MFSD11、MFSD12、MFSD3、MFSD5、SLC15A4、SLC20A1、SLC25A11、SLC25A26、SLC25A28、SLC25A3、SLC25A32、SLC25A38、SLC25A39、SLC25A44、SLC25A46、SLC25A5、SLC27A4、SLC30A1、SLC30A5、SLC30A9、SLC35A2、SLC35A4、SLC35B1、SLC35B2、SLC35C2、SLC35E1、SLC35E3、SLC35F5、SLC38A2、SLC39A1、SLC39A3、SLC39A7、SLC41A3、SLC46A3、SLC48A1、受容体、ACVR1、ACVR1B、CD23等);
・HLA/免疫グロブリン/細胞認識タンパク質(例えばBAT1、BSG、MIF、TAPBP等);
・キナーゼ/シグナリングタンパク質(例えばADRBK1、AGPAT1、ARF1、ARF3、ARF4、ARF5、ARL2、CSF1、CSK、DCT、EFNA3、FKBP1A、GDI1、GNAS1、GNAI2、HAX1、ILK、MAPKAPK2、MAP2K2、MAP3K11、PITPNM、RAC1、RAP1B、RAGA、STK19、STK24、STK25、YWHAB、YWHAH、YWHAQ、YWHAZ等);
・成長因子(例えばAIF1、HDGF、HGS、LTBP4、VEGFB、ZFP36L1、組織壊死因子、CD40、カゼインキナーゼ、CSNK1E、CSNK2B等);及び
・雑多なタンパク質(例えばALAS1、ARHGEF2、ARMET、AES、BECN1、BUD31、CKB、CPNE1、ENSA、FTH1、GDI2、GUK1、HPRT、IFITM1、JTB、MMPL2、NME2、NONO、P4HB、PRDX1、PTMA、RPA2、SULT1A3、SYNGR2、TTC1、C11Orf13、C14orf2、C21orf33、SPAG7、SRM、TEGT、DAZAP2、MEA1等)。
【0105】
好ましいハウスキーピング遺伝子としては、表2に列挙されているものが挙げられる。表2はまた、各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を提供する。これらの遺伝子(及び/又はそのスプライス多様体)のいずれの組み合わせ又は部分的組み合わせを採用してもよい。
【0106】
【0107】
以下の基準遺伝子が特に好ましい:ABCF1、G6PD、NRDE2、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、及びUBB。
【0108】
3.標的及び基準遺伝子の発現を評価するための例示的方法
ベースライン又は1つ以上の基準遺伝子に対する1つ以上の標的遺伝子の発現のレベルを明らかにするために、評価される各標的遺伝子に対応する細胞試料中のmRNAの量を決定し、ベースライン又は1つ以上の基準遺伝子に対応するmRNAの発現に対して正規化する。このような分析を達成するために、いずれの好適な方法を採用してよい。好ましい方法は、nCOUNTER(登録商標)分析システム(NanoString Technologies, Inc.)を採用する。nCOUNTER(登録商標)分析システムでは、試料のRNAを、遺伝子特異的レポータプローブ及びキャプチャプローブのセットの存在下で、上記試料RNAが上記プローブにハイブリダイズできるようにするために十分な条件でインキュベートする。各レポータプローブは蛍光バーコードを担持し、各キャプチャプローブは、データ収集のためにハイブリダイズされた複合体を剛性支持体に固定化できるビオチン部分を含有する。ハイブリダイズ後、余剰のプローブを除去し、上記支持体を自動蛍光顕微鏡で走査する。標的分子毎にバーコードを計数する。データ分析は好ましくは、nSolver(登録商標)4.0分析ソフトウェア(NanoString Technologies, Inc.)を用いて実施される。実施例1で提示されているデータは、PanCancer IO360(商標)遺伝子発現パネルキット(NanoString Technologies、Inc.)を用いて得られたものであり、上記キットは、770の異なる遺伝子(腫瘍、腫瘍微小環境、及び免疫応答の境界における主要な経路をカバーする750の遺伝子と、データの正規化に使用できる20の内部基準遺伝子(表5))のためのプローブのセットを内包する。遺伝子シグネチャスコアは、以下のように算出される:
・各遺伝子に関する生データ数を、各サンプルに対して選択されたハウスキーピング(HK)遺伝子(例えばABCF1、NRDE2、G6PD、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、UBB)の幾何平均に対して正規化する。
・次に、HK正規化データを、IO360パネル標準、好ましくは試験試料と同一のカートリッジで実行した標準に対して正規化する。
・次に、正規化された各遺伝子数を対数変換する。
・正規化及び対数変換後、各遺伝子に重み値を乗算する。
・これらの各重み付き数を合計して単一のスコアを生成する。最終的に算出されたスコアに、定数である調整係数を加算する(例えば+7)。調整係数は、スコアの範囲が0を超えるように、(TCGA及び/又は細胞株分析からの)観察された最低スコアから導出できる。
【0109】
表3では、遺伝子を以下のように分類する:列1:遺伝子名;列2:内部基準遺伝子;列3:細胞タイプ(B:B細胞;CD8:CD8T細胞;Cyto:細胞傷害性細胞;CD45:CD45発現性細胞;CD56d:NK CD56dim細胞;DC:樹状細胞;eCD8:疲弊したCD8細胞;M:マクロファージ;MC:肥満細胞;N:好中球;NK:NK細胞;T:T細胞;Th1:Th1細胞;Treg:Treg細胞);列4:癌抗原の放出;列5:癌抗原提示;列6:T細胞のプライミング及び活性化;列7:腫瘍に対する免疫細胞の局在化;列8:間質因子;列9:T細胞による癌細胞の認識;列10:癌細胞の殺滅;列11:骨髄細胞活性;列12:NK細胞活性;列13:細胞周期及び増殖;列14:腫瘍の内因性因子;列15:免疫代謝;列16:共通のシグナリング経路。特定の遺伝子発現シグネチャを構成する追加の経路及び細胞タイプに関連する遺伝子、並びに遺伝子発現シグネチャスコアを算出するための方法が、以下の実施例で提供される。
【0110】
【0111】
B.「遺伝子発現シグネチャ」の分析
ベースラインにおける骨髄(BM)細胞試料の遺伝子発現分析により、化学療法不応性、HMA不応性(二次AMLを含む)、及び再発患者を、免疫学的連続体内の3つのクラスタグループ:免疫枯渇遺伝子発現シグネチャを示す患者、免疫疲弊遺伝子発現シグネチャを示す患者、及び免疫強化遺伝子発現シグネチャを示す患者に層別化する。
【0112】
以下で更に詳細に説明されるように、一次不応性疾患を有する患者(2回以上の導入試行に対して不応性、最初のCRが6ヶ月未満、又は4サイクル以上の低メチル化剤HMAの後に失敗)は、免疫浸潤腫瘍微小環境の遺伝子発現シグネチャを示し、これは、(再発患者で観察されるレベルに対して)およそ33%高い炎症性ケモカインレベル(3.27±0.22 vs 2.46±0.07、p=0.026)によって確認される。
【0113】
このグループの中で、化学療法不応性患者及びHMA不応性患者を、免疫疲弊腫瘍微小環境の遺伝子シグネチャを示す第1の亜集団(
図2、クラスタ2に関して示された、太線で囲まれたシグネチャを参照)と、インターフェロンガンマ(本明細書中では「IFNガンマ」とも呼ばれる)シグナリングシグネチャを含む免疫強化腫瘍微小環境の遺伝子シグネチャを示す第2の亜集団(
図2、クラスタ3に関して示された、太線で囲まれたシグネチャを参照)とに、更に層別化する。HMA不応性患者は、免疫疲弊及び適応免疫抵抗性の特徴を示し、これは、化学療法不応性患者に対しておよそ44%のTIGIT発現の増大(5.55±0.34 vs 3.85±0.24、p=0.006)、およそ48%のPD‐L1発現PD‐L1の増大(3.55±0.18 vs 2.4±0.29、p=0.009)、及びおよそ32%のTreg細胞特異的発現の増大(4.87±0.23 vs 3.69±0.19、p=0.0009)を含む。HMA不応性患者もまた、化学療法不応性患者と比較して、(CD244、EOMES、LAG3、及びPTGER4の発現によって測定される)CD8T細胞がますます疲弊する傾向を示す。
【0114】
化学療法不応性(即ち2回以上の導入試行に対して不応性、最初のCRが6ヶ月未満)であり、かつ再発したAML患者だけに注目して(即ちHMA不応性患者を含まずに)、(以下で説明されるように3つのシグネチャモジュールのスコアを集計することによって実施される)より広範な遺伝子のセットの更なる分析により、再発及び不応性のAML患者のBM試料をベースラインにおいて、本明細書中で「免疫浸潤(immune‐infiltrated)」及び「免疫枯渇(immune‐depleted)」サブタイプと呼ばれる2つの免疫サブタイプに層別化した。
【0115】
II.例示的なCD123×CD3二重特異性結合分子
A.JNJ‐63709178
JNJ‐63709178は、サイレンシングされたFc機能を有するヒト化IgG4二重特異性抗体である。この抗体は、Genmab DuoBody(登録商標)技術を用いて生成されたものであり、腫瘍細胞上のCD123、及びT細胞上のCD3の両方に結合できる。JNJ‐63709178は、T細胞をCD123発現性腫瘍細胞に動員して、これらの腫瘍細胞の試験管内での殺滅を誘発できる(MOLM‐13、OCI‐AML5、及びKG‐1;EC50=0.51‐0.91nM)。JNJ‐63709178は、国際公開第2016/036937号、Gaudet, F. et al. (2016) “Development of a CD123 x CD3 Bispecific Antibody (JNJ-63709178) for the Treatment of Acute Myeloid Leukemia (AML),” Blood 128:2824;及びForslund, A. et al. (2016) “Ex Vivo Activity Profile of the CD123 x CD3 Duobody(登録商標) Antibody JNJ-63709178 Against Primary Acute Myeloid Leukemia Bone Marrow Samples,” Blood 128:2875において開示されており、これらの文献は参照により本出願に援用される。JNJ‐63709178並びに/又は関連抗体:13RB179、13RB180、13RB181、13RB182、13RB183、13RB186、13RB187、13RB188、13RB189、CD3B19、7959、3978、7955、9958、8747、8876、4435及び5466の、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、国際公開第2016/036937号において開示されている。
【0116】
B.XmAb14045
XmAb14045(ビベコタマブとしても公知)は、CD123結合ドメイン及び細胞傷害性T細胞結合ドメイン(CD3)の両方を含む腫瘍指向性抗体である。XmAb二重特異性Fcドメインは、これら2つの抗原結合ドメインの足場として機能し、XmAb14045に対して、長い循環半減期、安定性、及び製造の容易さを付与する。XmAb14045によるCD3の結合は、CD123発現性腫瘍細胞の、極めて強力で標的化された殺滅のために、T細胞を活性化する(米国公開特許第2017/0349660号;Chu, S.Y. et al. (2014) “Immunotherapy with Long-Lived Anti-CD123 x CD3 Bispecific Antibodies Stimulates Potent T Cell-Mediated Killing of Human AML Cell Lines and of CD123+ Cells in Monkeys: A Potential Therapy for Acute Myelogenous Leukemia,” Blood 124(21):2316、これらの文献は参照により本出願に援用される)。XmAb14045及び類似のCD123×CD3二重特異性結合分子の、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、米国公開特許第2017/0349660号、及びWHO Drug Information, Proposed INN: List 120, 2018, 32(4):658-660において開示されている。
【0117】
C.APVO436
APVO436は、抗CD123 scFv部分及び抗CD3 scFv部分を有するADAPTIR(商標)CD123×CD3二重特異性結合分子である。上記scFv部分はそれぞれ、ADCC/CDCエフェクタ機能を無効化するように修飾されたFcドメインに結合する。APVO436は、低nM範囲内のEC50値でヒトCD123及びCD3発現性細胞に結合すること、及び低いエフェクタ:標的比において、CD123発現性腫瘍細胞株に対する強力な標的特異的活性を示すことが開示されている。APVO436は、一次AML被験者試料及び正常ドナー試料を用いた実験において、CD123発現性細胞の枯渇を伴う内因性T細胞活性化及び増殖を強力に誘発できることが開示されている。APVO436(Comeau, M.R. et al. (2018) “APVO436, a Bispecific anti-CD123 x anti-CD3 ADAPTIR(商標)Molecule for Redirected T-cell Cytotoxicity, Induces Potent T-cell Activation, Proliferation and Cytotoxicity with Limited Cytokine Release,” AACR Annual Meeting April 2018, Abstract 1786; Godwin, C.D. et al. (2017) “Bispecific Anti-CD123 x Anti-CD3 ADAPTIR(商標) Molecules APVO436 and APVO437 Have Broad Activity Against Primary Human AML Cells In Vitro,” American Society of Hematology Annual Meeting, December 2017, Blood 130:2639; Comeau, M.R. et al. (2017) “Bispecific anti-CD123 x anti-CD3 ADAPTIR(商標) Molecules for Redirected T-cell Cytotoxicity in Hematological Malignancies,” AACR Annual Meeting April 2017, Abstract 597参照)。APVO436 CD123×CD3二重特異性結合分子の、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、国際公開第2018/057802A1号において開示されている。
【0118】
D.DART‐A
DART‐A(フロテツズマブとしても公知、CAS番号:1664355‐28‐5)は、本発明の好ましいCD123×CD3二重特異性結合分子である。DART‐Aは、CD123のエピトープ及びCD3のエピトープに同時に特異的に結合できる、配列最適化二重特異性ダイアボディCD3(「CD123×CD3」二重特異性ダイアボディ)である(米国公開特許第2016‐0200827号、国際公開第2015/026892号、Al-Hussaini, M. et al. (2016) “Targeting CD123 In Acute Myeloid Leukemia Using A T-Cell-Directed Dual-Affinity Retargeting Platform,” Blood 127:122-131, in Vey, N. et al. (2017) “A Phase 1, First-in-Human Study of MGD006/S80880 (CD123 x CD3) in AML/MDS,” 2017 ASCO Annual Meeting, June 2-6, 2017, Chicago, IL: Abstract TPS7070、これらの各文献は参照によりその全体が本出願に援用される)。DART‐Aは、同様の組成の他の非配列最適化CD123×CD3二重特異性ダイアボディに比べて強化された機能的活性を示すことが分かっているため、「配列最適化(sequence‐optimized)」CD123×CD3二重特異性ダイアボディと呼ばれる。国際出願番号PCT/US2017/050471は、患者にDART‐Aを投与するための好ましい投薬レジメンを記載しており、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0119】
DART‐Aは、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含む(
図1)。この二重特異性ダイアボディの第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に、N末端、CD3に結合できるモノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)(VL
CD3)、介在リンカーペプチド(リンカー1)、CD123に結合できるモノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VHドメイン)(VH
CD123)、及びC末端を含むことになる。
【0120】
このようなVLCD3ドメインに関する好ましい配列は、配列番号1:
QAVVTQEPSL TVSPGGTVTL TCRSSTGAVT TSNYANWVQQ KPGQAPRGLI
GGTNKRAPWT PARFSGSLLG GKAALTITGA QAEDEADYYC ALWYSNLWVF
GGGTKLTVLG
である。
【0121】
VLCD3の抗原結合ドメインは:
CDRL1(配列番号2):RSSTGAVTTSNYAN
CDRL2(配列番号3):GTNKRAP
CDRL3(配列番号4):ALWYSNLWV
を含む。
【0122】
このようなリンカー1に関する好ましい配列は、配列番号5:GGGSGGGGである。このようなVHCD123ドメインに関する好ましい配列は、配列番号6:
EVQLVQSGAE LKKPGASVKV SCKASGYTFT DYYMKWVRQA PGQGLEWIGD
IIPSNGATFY NQKFKGRVTI TVDKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARSH
LLRASWFAYW GQGTLVTVSS
である。
【0123】
VHCD123の抗原結合ドメインは:
CDRH1(配列番号7):DYYMK
CDRH2(配列番号8):DIIPSNGATFYNQKFKG
CDRH3(配列番号9):SHLLRASWFAY
を含む。
【0124】
第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に、N末端、CD123に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD123)、介在リンカーペプチド(例えばリンカー1)、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)、及びC末端を含むことになる。このようなVLCD123ドメインに関する好ましい配列は、配列番号10:
DFVMTQSPDS LAVSLGERVT MSCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYQQKPGQPP
KLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQNDYSY
PYTFGQGTKL EIK
である。
【0125】
VLCD123の抗原結合ドメインは:
CDRL1(配列番号11):KSSQSLLNSGNQKNYLT
CDRL2(配列番号12):WASTRES
CDRL3(配列番号13):QNDYSYPYT
である。
【0126】
このようなVHCD3ドメインに関する好ましい配列は、配列番号14:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS TYAMNWVRQA PGKGLEWVGR
IRSKYNNYAT YYADSVKDRF TISRDDSKNS LYLQMNSLKT EDTAVYYCVR
HGNFGNSYVS WFAYWGQGTL VTVSS
である。
【0127】
VHCD3の抗原結合ドメインは:
CDRH1(配列番号15):TYAMN
CDRH2(配列番号16):RIRSKYNNYATYYADSVKD
CDRH3(配列番号17):HGNFGNSYVSWFAY
である。
【0128】
本発明の配列最適化CD123×CD3二重特異性ダイアボディを、上記第1及び第2のポリペプチドがその長さに沿ってシステイン残基を介して互いに共有結合するように、操作する。このようなシステイン残基は、上記ポリペプチドのVLドメインとVHドメインとを隔てる介在リンカー(例えばリンカー1)に導入してよい。あるいは、そしてより好ましくは、第2のペプチド(リンカー2)を、例えば上記ポリペプチド鎖のN末端からVLドメインまで、又はC末端からVHドメインまでの位置において、各ポリペプチド鎖に導入する。このようなリンカー2に関する好ましい配列は、配列番号18:GGCGGGである。
【0129】
上記ポリペプチド鎖を、反対の電荷のポリペプチドコイルを含有するように更に操作することによって、ヘテロ二量体の形成を促進できる。従ってある好ましい実施形態では、ポリペプチド鎖のうちの一方を、その残基がpH7において負の電荷を形成する「Eコイル(E‐coil)」ドメイン(配列番号19:EVAALEKEVAALEKEVAALEKEVAALEK)を含有するように操作し、2つのポリペプチド鎖のうちのもう一方を、その残基がpH7において正の電荷を形成する「Kコイル(K‐coil)」ドメイン(配列番号20:KVAALKEKVAALKEKVAALKEKVAALKE)を含有するように操作することになる。このような荷電ドメインの存在は、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖との間の会合を促進し、従ってヘテロ二量体化を助長する。
【0130】
どのコイルを第1のポリペプチド鎖又は第2のポリペプチド鎖に提供するかは重要ではない。しかしながら、本発明のある好ましい配列最適化CD123×CD3二重特異性ダイアボディ(「DART‐A」)は、以下の配列(配列番号21):
QAVVTQEPSL TVSPGGTVTL TCRSSTGAVT TSNYANWVQQ KPGQAPRGLI
GGTNKRAPWT PARFSGSLLG GKAALTITGA QAEDEADYYC ALWYSNLWVF
GGGTKLTVLG GGGSGGGGEV QLVQSGAELK KPGASVKVSC KASGYTFTDY
YMKWVRQAPG QGLEWIGDII PSNGATFYNQ KFKGRVTITV DKSTSTAYME
LSSLRSEDTA VYYCARSHLL RASWFAYWGQ GTLVTVSSGG CGGGEVAALE
KEVAALEKEV AALEKEVAAL EK
を有する第1のポリペプチド鎖を有する。
【0131】
DART‐Aの鎖1は:配列番号1‐配列番号5‐配列番号6‐配列番号18‐配列番号19で構成される。DART‐Aの第1のポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号22:
caggctgtgg tgactcagga gccttcactg accgtgtccc caggcggaac
tgtgaccctg acatgcagat ccagcacagg cgcagtgacc acatctaact
acgccaattg ggtgcagcag aagccaggac aggcaccaag gggcctgatc
gggggtacaa acaaaagggc tccctggacc cctgcacggt tttctggaag
tctgctgggc ggaaaggccg ctctgactat taccggggca caggccgagg
acgaagccga ttactattgt gctctgtggt atagcaatct gtgggtgttc
gggggtggca caaaactgac tgtgctggga gggggtggat ccggcggcgg
aggcgaggtg cagctggtgc agtccggggc tgagctgaag aaacccggag
cttccgtgaa ggtgtcttgc aaagccagtg gctacacctt cacagactac
tatatgaagt gggtcaggca ggctccagga cagggactgg aatggatcgg
cgatatcatt ccttccaacg gggccacttt ctacaatcag aagtttaaag
gcagggtgac tattaccgtg gacaaatcaa caagcactgc ttatatggag
ctgagctccc tgcgctctga agatacagcc gtgtactatt gtgctcggtc
acacctgctg agagccagct ggtttgctta ttggggacag ggcaccctgg
tgacagtgtc ttccggagga tgtggcggtg gagaagtggc cgcactggag
aaagaggttg ctgctttgga gaaggaggtc gctgcacttg aaaaggaggt
cgcagccctg gagaaa
である。
【0132】
DART‐Aの第2のポリペプチド鎖は、以下の配列(配列番号23):
DFVMTQSPDS LAVSLGERVT MSCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYQQKPGQPP
KLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQNDYSY
PYTFGQGTKL EIKGGGSGGG GEVQLVESGG GLVQPGGSLR LSCAASGFTF
STYAMNWVRQ APGKGLEWVG RIRSKYNNYA TYYADSVKDR FTISRDDSKN
SLYLQMNSLK TEDTAVYYCV RHGNFGNSYV SWFAYWGQGT LVTVSSGGCG
GGKVAALKEK VAALKEKVAA LKEKVAALKE
を有する。
【0133】
DART‐Aの鎖2は配列番号10‐配列番号5‐配列番号14‐配列番号18‐配列番号20で構成される。DART‐Aの第2のポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号24:
gacttcgtga tgacacagtc tcctgatagt ctggccgtga gtctggggga
gcgggtgact atgtcttgca agagctccca gtcactgctg aacagcggaa
atcagaaaaa ctatctgacc tggtaccagc agaagccagg ccagccccct
aaactgctga tctattgggc ttccaccagg gaatctggcg tgcccgacag
attcagcggc agcggcagcg gcacagattt taccctgaca atttctagtc
tgcaggccga ggacgtggct gtgtactatt gtcagaatga ttacagctat
ccctacactt tcggccaggg gaccaagctg gaaattaaag gaggcggatc
cggcggcgga ggcgaggtgc agctggtgga gtctggggga ggcttggtcc
agcctggagg gtccctgaga ctctcctgtg cagcctctgg attcaccttc
agcacatacg ctatgaattg ggtccgccag gctccaggga aggggctgga
gtgggttgga aggatcaggt ccaagtacaa caattatgca acctactatg
ccgactctgt gaaggataga ttcaccatct caagagatga ttcaaagaac
tcactgtatc tgcaaatgaa cagcctgaaa accgaggaca cggccgtgta
ttactgtgtg agacacggta acttcggcaa ttcttacgtg tcttggtttg
cttattgggg acaggggaca ctggtgactg tgtcttccgg aggatgtggc
ggtggaaaag tggccgcact gaaggagaaa gttgctgctt tgaaagagaa
ggtcgccgca cttaaggaaa aggtcgcagc cctgaaagag
である。
【0134】
DART‐Aは、ヒト及びカニクイザル細胞によって配列されるようなCD123及びCD3に同時に結合できる能力を有する。DART‐Aの提供はT細胞の活性化を引き起こし、芽球の減少を仲介し、T細胞膨張を促進し、T細胞活性化を誘発し、標的癌細胞の標的転換殺滅を引き起こすことが分かった(表4)。
【0135】
【0136】
より詳細には、DART‐Aは、最高活性の50%(EC50)を達成するために必要な濃度がng/mL未満の範囲で、強力な標的転換殺滅能力を示し、これは、CD123発現の程度が高い標的細胞株(Kasumi‐3(EC50=0.01ng/mL))、CD123発現の程度が中程度の標的細胞株(Molm13(EC50=0.18ng/mL)及びTHP‐1(EC50=0.24ng/mL))、並びにCD123発現の程度が中程度のうちの低い方であるか又は低い標的細胞株(TF‐1(EC50=0.46ng/mL)及びRS4‐11(EC50=0.5ng/mL))におけるCD3エピトープ結合特異性とは無関係である。同様に、DART‐A標的転換殺滅は、異なるドナーに由来するT細胞を含む複数の標的細胞株でも観察され、またCD123を発現しない細胞株では標的転換殺滅は観察されなかった。結果を表5にまとめる。
【0137】
【0138】
更に、ヒトT細胞及び腫瘍細胞(Molm13又はRS4‐11)を組み合わせて、NOD/SCIDガンマ(NSG)ノックアウトマウスに皮下注射した場合、MOLM13腫瘍は、0.16、0.5、0.2、0.1、0.02、及び0.004mg/kgの用量レベルにおいて有意に阻害された。0.004mg/kg以上の用量が、MOLM13モデルにおいて活性であった。RS4‐11モデルと比較した場合にMOLM13モデルにおいて腫瘍成長の阻害に関連するDART‐Aの用量がより少ないことは、MOLM13細胞がRS4‐11細胞よりも高いCD123発現レベルを有することを実証する試験管内データと一致しており、これは、MOLM13細胞における試験管内でのDART‐A仲介細胞傷害性に対する感度の上昇と相関していた。
【0139】
DART‐Aは、AML患者由来の一次AML試験片(骨髄単核球(BMNC)及び末梢血単核球(PBMC))に対して活性を有する。一次AML骨髄試料をDART‐Aと共にインキュベートすると、これに付随する残留T細胞(CD4及びCD8の両方)の膨張と、T細胞活性化マーカー(CD25及びKi‐67)の誘発とを伴う、経時的な白血病細胞集団の枯渇がもたらされた。CD8及びCD4 T細胞の両方における、グランザイムB及びパーフォリンレベルの上方制御が観察された。一次AML骨髄試料をDART‐Aと共にインキュベートすると、未処理の対照、即ち対照DARTに比べて、経時的な白血病細胞集団の枯渇がもたらされた。T細胞を計数し(CD8及びCD4染色)、活性化(CD25染色)をアッセイすると、未処理の、即ち対照DART試料に比べて、DART‐AではT細胞が膨張して活性化された。またDART‐Aは、ヒトPBMC及びカニクイザルPBMCの両方において、pDC細胞の枯渇を仲介できることが分かり、カニクイザルpDCは、わずか10ng/kgのDART‐Aの点滴のわずか4日後に枯渇した。サイトカインであるインターフェロンガンマ、TNFアルファ、IL6、IL5、IL4、及びIL2のレベルの上昇は、DART‐Aで処置した動物では観察されなかった。これらのデータは、DART‐A仲介標的細胞殺滅が、グランザイムB及びパーフォリン経路を介して仲介されたことを示している。
【0140】
CD123陰性標的(U937細胞)又は対照DARTでは活性が観察されず、これは、観察されたT細胞の活性化が、標的細胞結合に強く依存していたこと、及びDART‐AによるCD3の1価結合は、T細胞の活性化をトリガするには不十分であったことを示している。
【0141】
要約すると、DART‐Aは、TCRのCD3εサブユニットに結合して、いくつかの血液悪性腫瘍において上方制御される抗原であるCD123を発現する細胞に対してTリンパ球を標的転換する、抗体ベースの分子である。DART‐Aは、ヒト及びカニクイザルの抗原に同様の親和性で結合し、両方の種からのT細胞を標的転換してCD123+細胞を殺滅する。週毎にDART‐Aの用量を増加させながら1週間に4又は7日の点滴を受けたサルは、処置の開始の72時間後に、循環CD123+T細胞の枯渇を示し、これは、投薬スケジュールに関係なく、4週間の処置全体を通して持続した。循環T細胞の減少も発生したが、4日の投薬スケジュールでは、サルにおける後の点滴の前のベースラインに回復し、これはDART‐A仲介型の固定化と一致していた。DART‐Aの投与は、循環PD1+T細胞を増大させたが、TIM‐3+T細胞を増大させず;更に、処置後のサル由来のT細胞の生体外分析により、標的転換された標的細胞の溶解が変化していないことが示され、これは疲弊が発生していないことを示している。細胞傷害性は、DART‐Aの最初の点滴後、最小限の一過性のサイトカイン放出に制限されたが、後続の投与の後では、用量を増加させ、CD123+骨髄前駆細胞の減少を伴う赤血球量の最小限の可逆的減少が発生した場合であっても制限されなかった。
【0142】
E.更なる二重特異性ダイアボディ分子
Fc領域を含み、かつ
図1Bに示されている一般構造を有する、DART‐Aの別のバージョンは、米国公開特許第2016‐0200827号に記載されている。FcドメインのCH2及びCH3ドメインを含有する好ましいポリペプチドは、配列(配列番号25)(「ノブ担持」Fcドメイン):
APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLWCLVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNHYTQKS LSLSPGX
(ここでXはKであるか、又は不在である);
及び配列(配列番号26)(「ホール担持」Fcドメイン):
APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLSCAVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLVSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNRYTQKS LSLSPGX
(ここでXはKであるか、又は不在である)
を有する。
【0143】
例示的なDART‐A w/Fc構築物の第1のポリペプチドは、N末端からC末端への方向に、N末端、CD123に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD123)、介在リンカーペプチド(リンカー1)、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)、リンカー2、Eコイルドメイン、リンカー5、ペプチド1、FcドメインのCH2及びCH3ドメインを含有するポリペプチド、並びにC末端を含むことになる。好ましいリンカー5は、配列:GGGを有する。好ましいペプチド1は、配列:DKTHTCPPCP(配列番号29)を有する。従って、このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第1のポリペプチドは:配列番号10‐配列番号5‐配列番号14‐配列番号18‐配列番号19‐GGG‐配列番号29‐配列番号25(ここでXはKである)で構成される。
【0144】
このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第1のポリペプチドの好ましい配列は、配列(配列番号27):
DFVMTQSPDS LAVSLGERVT MSCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYQQKPGQPP
KLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQNDYSY
PYTFGQGTKL EIKGGGSGGG GEVQLVESGG GLVQPGGSLR LSCAASGFTF
STYAMNWVRQ APGKGLEWVG RIRSKYNNYA TYYADSVKDR FTISRDDSKN
SLYLQMNSLK TEDTAVYYCV RHGNFGNSYV SWFAYWGQGT LVTVSSGGCG
GGEVAALEKE VAALEKEVAA LEKEVAALEK GGGDKTHTCP PCPAPEAAGG
PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA
KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS
KAKGQPREPQ VYTLPPSREE MTKNQVSLWC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP
ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT
QKSLSLSPGK
である。
【0145】
このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第2の鎖は、N末端からC末端への方向に、N末端、CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)、介在リンカーペプチド(リンカー1)、CD123に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD123)、リンカー2、Kコイルドメイン、並びにC末端を含むことになる。よって、このようなDART‐Aw/Fcバージョン1構築物の第2のポリペプチドは:配列番号1‐配列番号5‐配列番号6‐配列番号18‐配列番号20で構成される。このようなポリペプチドは、配列(配列番号28):
QAVVTQEPSL TVSPGGTVTL TCRSSTGAVT TSNYANWVQQ KPGQAPRGLI
GGTNKRAPWT PARFSGSLLG GKAALTITGA QAEDEADYYC ALWYSNLWVF
GGGTKLTVLG GGGSGGGGEV QLVQSGAELK KPGASVKVSC KASGYTFTDY
YMKWVRQAPG QGLEWIGDII PSNGATFYNQ KFKGRVTITV DKSTSTAYME
LSSLRSEDTA VYYCARSHLL RASWFAYWGQ GTLVTVSSGG CGGGKVAALK
EKVAALKEKV AALKEKVAAL KE
を有する。
【0146】
このようなDART‐A w/Fcバージョン1構築物の第3のポリペプチド鎖は、IgG FcドメインのCH2及びCH3ドメインを含むことになる。好ましいポリペプチドは、ペプチド1(DKTHTCPPCP;配列番号29)と、FcドメインのCH2及びCH3ドメイン(配列番号26、ここでXはKである)とで構成され、配列番号30:
DKTHTCPPCP APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED
PEVKFNWYVD GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK
CKVSNKALPA PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLSCAVK
GFYPSDIAVE WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLVSKL TVDKSRWQQG
NVFSCSVMHE ALHNRYTQKS LSLSPGK
の配列を有する。
【0147】
別の最適化された抗CD3結合ドメインを含む追加のCD123×CD3二重特異性ダイアボディは、米国特許出願第62/631,043号(2018年2月15日出願)、及び米国特許出願第62/738,632号(2018年9月28日出願)(これらは全て参照により本出願に援用される)において提供されている。
【0148】
III.医薬製剤
本発明の組成物は、医薬組成物の製造において有用なバルク薬剤組成物(例えば単位剤形の調製に使用できる不純又は非滅菌組成物)(即ち被験者又は患者への投与に好適な組成物)を含む。このような組成物は、予防又は治療的有効量のCD123×CD3二重特異性結合分子と、薬学的に許容可能な担体とを含む。
【0149】
好ましい医薬製剤は、CD123×CD3二重特異性結合分子及び水性安定剤、並びに任意に薬学的に許容可能な担体を含む。
【0150】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)」は、動物、より詳細にはヒトの体内への送達に好適なものとして、規制当局に承認されている、又は米国薬局方若しくは別の一般に認識されている薬局方に記載されている、希釈剤、アジュバント(例えばフロイントアジュバント(完全及び不完全)、賦形剤、又はビヒクルを指すことを意図したものである。このような薬学的担体は、無菌液体、例えば水及び油であってよく、油は、石油由来、動物由来、植物由来、又は合成によるもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含む。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に好ましい担体である。生理食塩水、並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、特に駐車用溶液のための液体担体として採用できる。好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。必要に応じて、上記組成物は少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含有してよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸剤、カプセル、粉体、徐放性製剤等の形態を取ることができる。
【0151】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば活性作用剤の量を示すバイアル、アンプル又はサシェ等の気密性コンテナ中の液体製剤、凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別個に、又は単位剤形にまとめて混合された状態で供給される。組成物を点滴によって投与する場合、組成物は、滅菌された薬学的グレードの水又は食塩水を内包する点滴ボトルを用いて吐出できる。組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合できるように、注射用無菌水又は食塩水のアンプルを提供できる。
【0152】
本発明はまた、CD123×CD3二重特異性結合分子を単独で又は安定剤若しくは薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせて内包する1つ以上のコンテナを含む、医薬パック又はキットも提供する。更に、疾患の治療に有用な1つ以上の他の予防剤又は治療剤も、上記医薬パック又はキットに含めることができる。本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分のうちの1つ又は複数で充填された1つ以上のコンテナを含む、医薬パック又はキットも提供する。任意に、このような1つ以上のコンテナは、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知と関連するものとすることができ、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売の機関による承認を反映したものである。
【0153】
IV.キット
本発明は、CD123×CD3二重特異性結合分子、(例えば保管、投薬量、適応症、副作用、対抗適応症等に関連する)説明資料、並びに任意に上述の方法で使用できる安定剤及び/又は担体を含む、キットを提供する。このようなキットでは、CD123×CD3二重特異性結合分子は好ましくは、アンプル、バイアル、サシェ等の気密性コンテナ内にパッケージされ、上記気密性コンテナは好ましくは、内包されている上記分子の量を示す。上記コンテナは、ガラス、樹脂、プラスチック等のいずれの薬学的に許容可能な材料で形成してよい。このようなキットのCD123×CD3二重特異性結合分子は好ましくは、気密性コンテナ内の液体溶液、滅菌凍結乾燥粉体、又は無水濃縮物として供給され、例えば水又は生理食塩水を用いて、被験者への投与に適当な濃度に再構築できる。このような液体又は凍結乾燥材料は、その元のコンテナ内で2~8℃で保管する必要があり、また上記材料は、再構築後12時間以内、好ましくは6時間以内、5時間以内、3時間以内、又は1時間以内に投与する必要がある。上記キットは、1つ以上のコンテナ内に、癌の治療に有用な1つ以上の他の予防及び/若しくは治療剤を更に含むことができ、並びに/又は癌に関連する1つ以上の癌抗原に結合する1つ以上の細胞傷害性抗体を更に含むことができる。特定の実施形態では、上記他の予防又は治療剤は化学療法剤である。他の実施形態では、上記予防又は治療剤は生物学的治療剤又はホルモン療法剤である。上記キットは、使用のための説明書、又は他の印刷された情報を更に含むことができる。
【0154】
更に、疾患の治療に有用な1つ以上の他の予防剤又は治療剤も、上記医薬パック又はキットに含めることができる。本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分のうちの1つ又は複数で充填された1つ以上のコンテナを含む、医薬パック又はキットも提供する。任意に、このような1つ以上のコンテナは、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知と関連するものとすることができ、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売の機関による承認を反映したものである。
【0155】
V.投与方法
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子医薬製剤は、有効量の本発明の分子、又は本発明の融合タンパク質若しくはコンジュゲート分子を含む医薬組成物を、被験者に投与することによる、疾患、障害又は感染症に関連する1つ以上の症状の治療、予防及び改善のために提供できる。ある好ましい態様では、上記組成物は実質的に精製される(即ち上記組成物の効果を制限する、又は望ましくない副作用を生成する物質を実質的に含まない)。ある具体的実施形態では、被験者は動物、好ましくは非霊長類(例えばウシ属、ウマ科、ネコ科、イヌ科、げっ歯類等)又は霊長類(例えばカニクイザル等のサル、ヒト等)といった哺乳類である。ある好ましい実施形態では、被験者又は患者はヒトである。
【0156】
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子医薬製剤を投与する方法としては、非経口投与(例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)が挙げられるがこれらに限定されない。ある具体的実施形態では、上記CD123×CD3二重特異性結合分子は、静脈内投与される。組成物は、いずれの便利な経路によって、例えば点滴によって投与してよく、他の生物学的活性作用剤と共に投与してよい。
【0157】
点滴による投与は好ましくは、注入ポンプを用いて達成される。「注入ポンプ(infusion pump)」は、患者の体内に流体を制御下で、特に所定の速度で長期間にわたって送達する、医療デバイスである。注入ポンプは物理的に動力供給されてよいが、より好ましくは電気によって動力供給される。一部の注入ポンプは「据置型(stationary)」注入ポンプであり、患者のベッドサイドで使用するために設計されている。「移動式(ambulatory)」注入ポンプと呼ばれる他の注入ポンプは、携帯式又はウェアラブルなものとして設計される。「シリンジ(syringe)」ポンプは、送達対象の流体がチャンバのリザーバ(例えばシリンジ)内に保持されている注入ポンプであり、可動ピストンを用いて、上記チャンバの容積、従って流体の送達を制御する。「エラストマ(elastomeric)」注入ポンプでは、流体が伸縮性のバルーンリザーバ内に保持され、バルーンの伸縮自在の壁による圧力によって流体の送達が実施される。「蠕動(peristaltic)」注入ポンプでは、複数のローラのセットが可撓性配管を挟んで、その長さに沿って下がり、流体を押し出す。「マルチチャネル(multi‐channel)」注入ポンプでは、流体を複数のリザーバから複数の速度で送達できる。「スマートポンプ(smart pump)」は、コンピュータ制御流体送達システムを備えた注入ポンプであり、有害な薬物相互作用のリスクに応じて、又はポンプのパラメータが指定された限界を超えて設定されている場合に、警告を発することができる。注入ポンプの例は公知であり、例えば[著者不明]2002 “General-Purpose Infusion Pumps,” Health Devices 31(10):353-387;及び米国特許第10,029,051号、米国特許第10,029,047号、米国特許第10,029,045号、米国特許第10,022,495号、米国特許第10,022,494号、米国特許第10,016,559号、米国特許第10,006,454号、米国特許第10,004,846号、米国特許第9,993,600号、米国特許第9,981,082号、米国特許第9,974,901号、米国特許第9,968,729号、米国特許第9,931,463号、米国特許第9,927,943号等において提供されている。
【0158】
患者が治療レジメン中に移動できるように、本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子医薬製剤は、1つ以上の移動式ポンプによって促進される点滴によって、投与することが好ましい。本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子医薬製剤は、連続点滴で投与することが好ましい。ある好ましい実施形態では、7日連続点滴レジメンは、3日間にわたる約30ng/患者の体重kg/日の治療投薬量と、これに続く4日間にわたる約100ng/kg/日の治療投薬量(例えば3日間にわたる30ng/患者の体重kg/日の治療投薬量と、これに続く4日間にわたる100ng/kg/日の治療投薬量)を含む。特に好ましい実施形態では、このような7日連続点滴レジメンの後に21日連続点滴レジメンが続き、ここでは、500ng/kg/日の治療投薬量が、上記21日レジメンの各週の1~4日目に投与され、各週の5~7日目には一切の治療投薬量が投与されない。あるいは、7日連続点滴レジメンの後に21日連続点滴レジメンが続き、ここでは、500ng/kg/日の治療投薬量が、21日にわたって毎日投与される。
【0159】
上述の治療経過のいずれにおいて、腫瘍微小環境内のCD8+Tリンパ球の割合を更に監視してよい。このような監視は、CD123×CD3二重特異性結合分子の投与前、CD123×CD3結合分子療法の経過中、及び/又はCD123×CD3結合分子療法の1回のサイクルの完了後に実施してよい。
【0160】
VI.本発明の組成物の使用
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は、CD123の発現に関連する、又はこれを特徴とする、いずれの疾患又は状態を治療するために使用できる。特に本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は、血液悪性腫瘍を治療するために使用できる。本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は、化学療法不応性血液悪性腫瘍を含む血液悪性腫瘍の治療における使用に特に好適である。本明細書中で使用される場合、化学療法不応性血液悪性腫瘍は、2回以上の導入試行に対して不応性である、最初のCRが6ヶ月未満である、又は2サイクル以上の低メチル化剤を用いた治療の後に失敗する、血液悪性腫瘍である。
【0161】
よって、限定するものではないが、このような分子は:急性骨髄性白血病(AML)(一次化学療法不応性AMLを含む);CMLの急性転化、及びCMLに関連するAbelson癌遺伝子(Bcr‐ABL転座)を含む、慢性骨髄性白血病(CML);骨髄異形成症候群(MDS);急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL);リヒター症候群、又はCLLにおけるリヒター症候群の転化を含む、慢性リンパ性白血病(CLL);有毛細胞白血病(HCL);芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN);マントル細胞リンパ腫(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む非ホジキンリンパ腫(NHL);ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症;並びにバーキットリンパ腫の診断又は治療に採用できる。本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は更に、上述の状態の治療のための医薬品の製造に使用できる。
【0162】
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子は、急性骨髄性白血病(AML、一次化学療法不応性急性骨髄性白血病を含む)、血液骨髄異形成症候群(MDS)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、又は急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL)の治療における使用に特に好適である。
【0163】
VII.本発明の特定の実施形態
ここまで本発明を概説してきたが、以下の番号付与された実施形態(「E1」~「E60」)を参照することによって、本発明は更に容易に理解されるだろう。これらの実施形態は単なる例示として提供されており、特段の記載がない限り、本発明の限定となることを意図したものではない。
【0164】
E1.患者の化学療法不応性血液悪性腫瘍を治療する方法であって、上記方法は、上記患者に、治療投薬量のCD123×CD3二重特異性分子を投与するステップを含み、上記投薬量は、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激することによって上記悪性腫瘍を治療するために有効なものである、方法。
【0165】
E2.上記方法は、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与前及び/又は後に、上記患者由来の細胞試料中での1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の発現を評価するステップを更に含む、E1に記載の方法。
【0166】
E3.上記方法は、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与前に、上記1つ以上の標的遺伝子及び/又は上記1つ以上の基準遺伝子の発現を評価するステップを含む、E2に記載の方法。
【0167】
E4.上記方法は、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与後に、上記1つ以上の標的遺伝子及び/又は上記1つ以上の基準遺伝子の発現を評価するステップを含む、E2に記載の方法。
【0168】
E5.患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを判定する方法であって、上記方法は:
(a)上記1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の発現に対して、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与前に、上記患者由来の細胞試料中での1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップ;並びに
(b)上記1つ以上の標的遺伝子の発現が、上記1つ以上の標的及び/又は基準遺伝子の上記発現に対して増大していることが分かった場合に、上記患者を、CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好適な応答者として識別するステップ
を含む、方法。
【0169】
E6.上記方法は:
(i)上記1つ以上の標的遺伝子の発現;及び
(ii)その発現が血液悪性腫瘍と特徴的に関連していない1つ以上の基準遺伝子
を評価する、E2~E6のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
E7.上記方法は、上記患者の上記1つ以上の基準遺伝子のベースライン発現に対して上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、E2~E6のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
E8.上記方法は、上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、E2~E7のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
E9.上記方法は、上記血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対して良好な応答性を有していなかった個体、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、E2~E7のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
E10.上記方法は、上記血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対して良好な応答性を有していた個体、又は複数の上記個体の集団の、上記1つ以上の標的遺伝子の発現に対して、上記患者の上記1つ以上の標的遺伝子の発現を評価するステップを含む、E2~E7のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
E11.上記集団における上記1つ以上の標的遺伝子の相対発現レベルは、上記個体の集団から得られた細胞試料における遺伝子発現レベルを平均することによって確立される、E7~E10のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
E12.上記患者は、上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第1四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルに対して少なくとも約0.4のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第1四分位数以内である、
発現レベルを示す、E2~E11のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
E13.上記患者は、上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第2四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルに対して少なくとも約0.5のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの少なくとも第2四分位数以内である、
発現レベルを示す、E2~E11のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
E14.上記患者は、上記標的遺伝子のうちの少なくとも1つの発現レベルであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルの第3四分位数より高い;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子の発現レベルに対して少なくとも約0.6のlog2倍率変化を有する、
CD123×CD3発現レベルを示す、E2~E11のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
E15.血液悪性腫瘍を治療する方法であって、上記方法は:
(a)E6~E14のうちのいずれか1つに記載の方法を採用して、患者が、上記血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかを判定するステップ;
(b)上記患者が上記治療に対する好適な応答者であると判定された場合に、治療投薬量の上記CD123×CD3二重特異性分子を上記患者に投与するステップ
を含み、
上記CD123×CD3二重特異性分子の上記投与は、上記患者の体内での上記血液悪性腫瘍の細胞の殺滅を刺激する、方法。
【0179】
E16.上記方法は、上記治療の開始後に、上記患者から得られた上記1つ以上の標的遺伝子の発現を1回以上評価するステップを更に含む、E15に記載の方法。
【0180】
E17.血液悪性腫瘍を治療する方法であって:
(a)有効治療投薬量のCD123×CD3二重特異性分子を投与するステップ;
(b)上記CD123×CD3二重特異性分子の投与後の1つ以上の時点において患者から得られた細胞試料における、1つ以上の標的遺伝子の発現を、上記CD123×CD3二重特異性分子の投与前に得られた対応する発現ベースラインレベルに対して、決定するステップ;
(c)上記1つ以上の標的遺伝子の上記発現が、上記対応する発現ベースラインレベルに対して増大しているかどうかを決定するステップであって、上記遺伝子発現の増大の決定によって、上記患者を、CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する好適な応答者として同定する、ステップ;及び
(d)調整された又は追加の有効治療投薬量の上記CD123×CD3二重特異性分子を、いずれの上記好適な応答者である上記患者に投与するステップ
を含む、方法。
【0181】
E18.上記細胞試料は血液試料である、E2~E17のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
E19.上記細胞試料は骨髄試料である、E2~E17のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
E20.上記患者の骨髄の試料中での、上記1つ以上の標的遺伝子及び/又は上記1つ以上の基準遺伝子の発現レベルを検出するステップを更に含む、E2~E17のいずれか1つに記載の方法。本発明は更に、1つ以上の基準遺伝子の発現レベルを検出するステップを更に含む、上記方法の実施形態を提供する。
【0184】
E21.上記発現の評価、又は上記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの上記判定は:
(a)遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での各標的遺伝子の遺伝子発現レベルを判定するステップ;及び
(b)上記標的遺伝子発現レベルを、1つ以上の基準遺伝子の発現レベルと比較するステップ
によって実施される、E2~E20のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
E22.上記発現の評価、又は上記患者が、血液悪性腫瘍を治療するためのCD123×CD3二重特異性分子の使用に対する好適な応答者であるかどうかの上記判定は:
(a)遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での各標的遺伝子の生RNAレベルを判定するステップであって、上記遺伝子発現プラットフォームは、ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む、ステップ;及び
(b)内部基準遺伝子の測定されたRNAレベルを用いて、上記標的遺伝子に関する測定された上記生RNAレベルそれぞれに、相対発現値を割り当てるステップ
によって実施される、E2~E21のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
E23.上記1つ以上の標的遺伝子は:
(a)CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びSTAT1のうちの1つ以上;並びに/又は
(b)CCL5、CD27、CD274、CD276、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA‐DQA1、HLA‐DRB1、HLA‐E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、及びTIGITのうちの1つ以上;並びに/又は
(c)AREG、CSF3、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CCL20、FOSL1、IER3(NM_003897.4)、IL6、及びPTGS2のうちの1つ以上;並びに/又は
(d)CCL2、CCL3/L1、CCL4、CCL7、及びCCL8のうちの1つ以上;並びに/又は
(e)MAGEA3/A6、MAGEA1、MAGEA12、MAGEA4、MAGEB2、MAGEC1、及びMAGEC2のうちの1つ以上;並びに/又は
(f)APOL6、DTX3L、GBP1、IFI16、IFI27、IFI35、IFI6、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM1、IFITM2、IRF1、IRF9、ISG15、MX1、OAS1、OAS2、PARP9、PSMB9、STAT2、TMEM140、及びTRIM21のうちの1つ以上;並びに/又は
(g)PSMB8、PSMB9、及びPSMB10のうちの1つ以上;並びに/又は
(h)IL‐10;並びに/又は
(i)CD274;並びに/又は
(j)PDCD1LG2
を含む、E2~E22のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
E24.上記1つ以上の標的遺伝子は更にIFNGを含む、E23に記載の方法
【0188】
E25.上記1つ以上の基準遺伝子は、ABCF1、G6PD、NRDE2、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、及びUBBのうちの1つ以上を含む、E2~E24のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
E26.上記1つ以上の標的遺伝子に関して遺伝子シグネチャスコアを決定する、E2~E25のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
E27.上記遺伝子シグネチャスコアは:
(a)ハウスキーピング遺伝子の基準遺伝子セットを含む遺伝子発現プラットフォームを用いて、1つ以上の細胞試料中での、各上記標的遺伝子に関する上記生RNAレベルを測定するステップ、
(b)測定された上記生RNAレベルそれぞれを、上記ハウスキーピング遺伝子の幾何平均に対して正規化し、また任意に各RNA値を標準に対して更に正規化するステップ;
(c)各正規化済みRNA値を対数変換するステップ;
(d)各対数変換済みRNA値と、対応する重み係数とを乗算して、重み付きRNA値を生成するステップ;及び
(e)上記重み付きRNA値を足し合わせ、任意に調整係数定数を加えて、単一の遺伝子シグネチャスコアを生成するステップ
を含むプロセスによって決定される、E26に記載の方法。
【0191】
E28.上記遺伝子シグネチャスコアは、1つ以上の上記標的遺伝子、スコアリングの重み、及び任意に表6及び12A~12Gで提供される調整計数を用いて決定される、E26又はE27に記載の方法。
【0192】
E29.上記遺伝子シグネチャスコアは:
(a)IFNガンマシグナリングシグネチャ;
(b)腫瘍炎症シグネチャ;
(c)骨髄炎症シグネチャ;
(d)炎症性ケモカインシグネチャ;
(e)MAGEシグネチャ;
(f)IFN下流シグナリングシグネチャ;
(g)免疫プロテアソームシグネチャ;
(h)IL‐10シグネチャ;
(i)CD274シグネチャ;及び/又は
(j)PDCD1LG2シグネチャ
のうちの1つ以上に関して決定される遺伝子シグネチャスコアである、E26~E28のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
E30.患者遺伝子シグネチャスコアであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第1四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.4のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第1四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E26~E29のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
E31.患者遺伝子シグネチャスコアであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第2四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第2四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.5のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第2四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E26~E29のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
E32.患者遺伝子シグネチャスコアであって:
(a)血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第3四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第3四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.6のlog2倍率変化を有する、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E26~E29のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
E33.
(a)上記遺伝子シグネチャがIFNガンマシグナリングシグネチャであり、少なくとも約2.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標であり;及び/又は
(b)上記遺伝子シグネチャが腫瘍炎症シグネチャであり、少なくとも約5.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標であり;及び/又は
(c)上記遺伝子シグネチャがIFN下流シグナリングシグネチャであり、少なくとも約4.5の患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、
E28又はE29に記載の方法。
【0197】
E34.上記遺伝子シグネチャは、IFNガンマシグナリングシグネチャ、腫瘍炎症シグネチャ、又はIFN下流シグナリングシグネチャであり、
患者遺伝子シグネチャスコアであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャのスコアの第1四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャのスコアの第1四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.4のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第1四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E28又はE29に記載の方法。
【0198】
E35.上記遺伝子シグネチャは、IFNガンマシグナリングシグネチャ、腫瘍炎症シグネチャ、又はIFN下流シグナリングシグネチャであり、
患者遺伝子シグネチャスコアであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャのスコアの第2四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第2四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.5のlog2倍率変化を有する;又は
(d)CD123×CD3二重特異性分子を用いた上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの、少なくとも第2四分位数以内である、
患者遺伝子シグネチャスコアが、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E28又はE29に記載の方法。
【0199】
E36.上記遺伝子シグネチャは、IFNガンマシグナリングシグネチャ、腫瘍炎症シグネチャ、又はIFN下流シグナリングシグネチャであり、
患者の遺伝子シグネチャスコアであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第3四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を使用する上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアの第3四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を使用する上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記遺伝子シグネチャに関するスコアに対して少なくとも約0.6のlog2倍率変化を有する、
患者の遺伝子シグネチャスコアは、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E28又はE29に記載の方法。
【0200】
E37.IFN優性モジュールスコアが決定され、少なくとも約25の患者のIFN優性モジュールスコアは、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E29に記載の方法。
【0201】
E38.IFN優性モジュールスコアが決定され、
患者のIFN優性モジュールスコアであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記IFN優性モジュールのスコアの第1四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を使用する上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記IFN優性モジュールのスコアの第1四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を使用する上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記IFN優性モジュールのスコアの、少なくとも第1四分位数以内である、
患者のIFN優性モジュールスコアは、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E29に記載の方法。
【0202】
E39.IFN優性モジュールスコアが決定され
患者のIFN優性モジュールスコアであって:
(a)上記血液悪性腫瘍に罹患している個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記IFN優性モジュールのスコアの第2四分位数より大きい;又は
(b)CD123×CD3二重特異性分子を使用する上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していなかった個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出した上記IFN優性モジュールのスコアの第2四分位数より大きい;又は
(c)CD123×CD3二重特異性分子を使用する上記血液悪性腫瘍の治療に対して良好な応答性を有していた個体の集団における上記標的遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルから算出したIFN優性モジュールのスコアの、少なくともの第2四分位数以内である、
患者のIFN優性モジュールスコアは、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E29に記載の方法。
【0203】
E40.免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境の特徴である遺伝子発現シグネチャを示す患者が、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する比較的好ましい患者の応答の指標である、E26~E39のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
E41.上記CD123×CD3二重特異性分子は、scFvを含む二重特異性抗体又は二重特異性分子である、E1~E40のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
E42.上記CD123×CD3二重特異性分子は、JNJ‐63709178、XmAb14045、又はAPVO436である、E41に記載の方法。
【0206】
E43.上記CD123×CD3二重特異性分子は、2つ、3つ、又は4つのポリペプチド鎖を有する共有結合型二重特異性ダイアボディである、E1~E40のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
E44.上記CD123×CD3二重特異性分子は:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチド鎖;及び
(b)配列番号23のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチド鎖
を含むダイアボディであり、
上記第1のポリペプチド鎖及び上記第2のポリペプチド鎖はジスルフィド結合によって互いに共有結合している、E43に記載の方法。
【0208】
E45.上記患者の上記血液悪性腫瘍は:急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML);CMLの急性転化;CMLに関連するAbelson癌遺伝子(Bcr‐ABL転座);骨髄異形成症候群(MDS);急性Bリンパ芽球性白血病(B‐ALL);急性Tリンパ芽球性白血病(T‐ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);リヒター症候群;CLLにおけるリヒター症候群の転化;有毛細胞白血病(HCL);芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN);マントル細胞リンパ腫(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む非ホジキンリンパ腫(NHL);ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症;並びにバーキットリンパ腫からなる群から選択される、E1~E44のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
E46.上記患者の上記血液悪性腫瘍はAMLである、E45に記載の方法。
【0210】
E47.上記患者の上記血液悪性腫瘍はMDSである、E45に記載の方法。
【0211】
E48.上記患者の上記血液悪性腫瘍はBPDCNである、E45に記載の方法。
【0212】
E49.上記患者の上記血液悪性腫瘍はT‐ALLである、E45に記載の方法。
【0213】
E50.上記患者の上記血液悪性腫瘍は化学療法に対して不応性である、E2~E49のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
E51.上記患者の上記血液悪性腫瘍はシタラビン/アントラサイクリン系細胞傷害性化学療法に対して不応性である、E1又はE50に記載の方法。
【0215】
E52.上記患者の上記血液悪性腫瘍は低メチル化剤化学療法に対して不応性である、E1又はE50に記載の方法。
【0216】
E53.芽球細胞(癌細胞)のCD123の発現のレベルを、正常なPBMCによって発現される対応するベースラインレベルCD123と比較して決定するステップを更に含む、E2~E52のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
E54.上記発現のレベルは、CD123の細胞表面発現を測定することによって決定される、E56に記載の方法。
【0218】
E55.CD123の上記細胞表面発現は、発現のベースラインレベルに対して少なくとも約20%増大する、E54に記載の方法。
【0219】
E56.CD123発現の上記増大は、上記CD123×CD3二重特異性分子を用いた治療に対する上記患者の応答性を高める、E55に記載の方法。
【0220】
E57.上記CD123×CD3二重特異性分子の上記治療投薬量は、30、100、300、及び500ng/患者の体重kg/日からなる群から選択される少なくとも1つの用量を含む、E1~E4及びE6~E56のいずれか1つに記載の方法。
【0221】
E58.上記治療投薬量は30ng/kg/日の用量を含む、E57に記載の方法。
【0222】
E59.上記治療投薬量は100ng/kg/日の用量を含む、E57に記載の方法。
【0223】
E60.上記治療投薬量は300ng/kg/日の用量を含む、E57に記載の方法。
【0224】
E61.上記治療投薬量は500ng/kg/日の用量を含む、E57に記載の方法。
【0225】
E62.上記治療投薬量は連続点滴によって投与される、E1~E4及びE6~E61のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
E63.上記患者はヒト患者である、E1~E62のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0227】
ここまで本発明を概説してきたが、以下の実施例を参照することによって、本発明は更に容易に理解されるだろう。これらの実施形態は例示として提供されており、特段の記載がない限り、本発明の限定となることを意図したものではない。
【0228】
実施例1
本発明のCD123×CD3二重特異性結合分子を用いた治療に特に好適な患者集団の遺伝子発現シグネチャ
血液悪性腫瘍、特にAMLに罹患した患者の遺伝子の発現パターンと、CD123×CD3二重特異性結合分子療法の好ましい結果との間の相関を実証するために、フロテツズマブ(NCT#02152956、例示的なCD123×CD3二重特異性結合分子)のフェーズ1/2臨床試験に登録した40人の再発又は不応性AML患者から、個々の患者に同意を得て得られた78の骨髄(「BM」)試料(ベースラインにおいて36、第1の処置サイクル後に27、及び第2の処置サイクル後に15)から、RNAを単離した。1回の反応の少量の転写産物の直接多重mRNA定量を、高い感度かつ高い線形性で実施できる、nCounter(商標)システム(NanoString Technologies, Inc)を用いて、遺伝子発現を評価した(Vadakekolathu, J., et al. (2017) “Immune gene Expression Profiling In Children And Adults With Acute Myeloid Leukemia Identifies Distinct Phenotypic Patterns,” Blood 130:3942-3942; Payton, J.E., et al. (2009). “High throughput digital quantification of mRNA abundance in primary human acute myeloid leukemia samples,” J Clin Invest 119:1714-1726)。36人の患者からのベースライン骨髄試料を分析に含めたが、そのうち35人の患者は500ng/kg/日以上の用量で処置された。NanoString PanCancer IO360(商標)アッセイ(NanoString Technologies, Inc.)によって、14の免疫細胞タイプ及び32の免疫腫瘍学的シグネチャのレベルを含む、腫瘍、腫瘍微小環境、及び免疫応答の境界における主要な経路をカバーする750の遺伝子を比較した。また、NanoString PanCancer IO360(商標)アッセイによって、以下で提供されるようなデータ正規化のために、対照及び内部基準遺伝子の発現プロファイルを比較した。
【0229】
発現プロファイルは、以下の経路又は細胞の遺伝子シグネチャを含んでいた:増殖、JAKSTAT損失、内皮細胞、B7‐H3、APM損失、解糖活性、肥満細胞、細胞傷害性、細胞傷害性細胞、CD8 T細胞、リンパ細胞、T細胞、Treg細胞、CTLA4、TIS、Th1細胞、TIGIT、NK CD56dim細胞、NK細胞、アポトーシス、低酸素症、ARG1、IL‐10、IFNガンマ、マクロファージ、骨髄細胞、好中球、PD‐L2、間質、樹状細胞(DC)、MAGE、IDO1、B細胞、PD‐1、NOS2、炎症性ケモカイン、PD‐L1、CD45、疲弊したCD8 T細胞、免疫プロテアソーム、APM、IFN下流調節遺伝子、骨髄炎症遺伝子、MHC2遺伝子、TGFベータ、MMR損失。
【0230】
全てのIO360遺伝子シグネチャ分析は、基本的に以下に記載されているように、IO360レポートモジュールを備えたnCounter(商標)システム(NanoString Technologies, Inc.)を用いて実施された。
【0231】
(各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を含む)インターフェロン(IFN)ガンマシグナリングシグネチャ遺伝子、及び重み係数を、以下の表6に示す。
【0232】
【0233】
IFNガンマシグナリングシグネチャスコアを算出するために、以下のステップを実施する:
・各遺伝子に関する生データ数を、各サンプルに対しての10個ハウスキーピング(HK)遺伝子(ABCF1、NRDE2、G6PD、OAZ1、POLR2A、SDHA、STK11IP、TBC1D10B、TBP、UBB)の幾何平均に対して正規化する。
・次に、HK正規化データを、IO360パネル標準、この場合はコホート試料と同一のカートリッジで実行した標準に対して正規化する。
・次に、正規化された各遺伝子数を対数変換する。
・正規化及び対数変換後、各遺伝子に表6の重み値を乗算する。
・これらの各重み付き数を合計して単一のスコアを生成する。最終的に算出されたスコアに、定数である調整係数を加算する。IFNガンマシグナリングシグネチャに関しては、上記調整係数は6.457026である。調整係数は、スコアの範囲が0を超えるように、(TCGA及び細胞株分析からの)観察された最低スコアから導出できる。
【0234】
一般に、IFNガンマシグナリングシグネチャスコアの可能な範囲は0~10である。この第1のコホートに関して、上記範囲は1~5である。スコアを、各ベースライン(スクリーニング日-14)試料に関して算出する。
【0235】
検査される追加のシグネチャに関する遺伝子及び重み係数を、以下で提供する。
【0236】
以下で詳述するように、このコホートに関して、IFNガンマシグナリングシグネチャスコア(及び全てのIO360シグネチャスコア)を比較するいくつかの分析を実施した。異なる患者グループ間での倍数変化の差は、フォレストプロットとして提供され、ここでは囲みのサイズが有意性を表し、各線が信頼区間を表す(例えば
図3A~3C、及び
図5Aを参照)。患者グループ間のIFNガンマシグナリングシグネチャスコアの分布は、箱ひげ図として提供される(例えば
図5Bを参照)。
【0237】
プロファイリングされた遺伝子のベースライン発現は、患者が従来の化学療法に対して不応性応答を示すかどうか(即ち、ダウノルビシンと組み合わせて投与されるシタラビンを用いた治療のレジメン(7+3導入療法)に対して不応性応答を示した患者(Ref CTX若しくはCTX不応性と略される)であるか、又は低メチル化剤(例えばデシタビン及びアザシチジン)を用いた治療のレジメンに対して不応性応答を示した患者(Ref HMA若しくはHMA不応性と略される)であるか、又は再発患者(Relapse)であるか)に相関していた。二次AML(即ち骨髄異形成から発生した、又は過去の化学療法の産物としてのAML)に罹患した患者は、これらの分析についてHMA不応性グループに含まれる。データは、フロテツズマブを用いたCD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する患者の応答にも相関していた。
図4は、標的用量で処置した25人の評価可能な患者のウォーターフォールプロットを提供する。これらの応答は、客観的応答(OR)又は無応答(NR)としてスコアリングされた。完全応答(CR)を示す患者に加えて、ORは、分子完全応答(mCR)、不完全な血液学的改善を伴う完全応答(CRi)、形態学的無白血病状態(MLF)、及び部分応答(PR)を示す全ての患者を含んでいた。無応答患者に加えて、NRは、進行性疾患/治療失敗(PD)、及び安定性疾患(SD)を示す全ての患者を含んでいた。
【0238】
図2は、上記結果から生成された46のIO360シグネチャ又は細胞タイプの教師なし階層的クラスタリングを提供する。この結果は、(それぞれ別個の列の)36の骨髄試料の発現のベースラインレベルを、(それぞれ別個の行の)評価された遺伝子シグネチャに対して示す。シグネチャ間の比較を容易にするために、各IO360シグネチャスコアを、このコホートに関するスコア内で-3~+3のスケールに再スケーリングした。
【0239】
ベースラインにおけるBM試料の遺伝子発現分析により、AML患者を、免疫学的連続体内の3つのクラスタ:免疫枯渇、免疫疲弊、及び免疫強化に層別化し(
図2)、一次不応性疾患を有する患者(再発;2回以上の導入試行に対して不応性、最初のCRが6ヶ月未満、又は4サイクル以上の低メチル化剤HMAの後に失敗)は、主に免疫浸潤腫瘍微小環境(TME)表現型を示し、これは、再発患者と比較して高い炎症性ケモカインスコアを含んでいた(3.27±0.22 vs 2.46±0.07、p=0.026)。このグループの中で、化学療法不応性及びHMA不応性患者を、それぞれ免疫強化及び免疫疲弊表現型に更に層別化する。免疫疲弊及び免疫強化表現型に関連する遺伝子シグネチャを、以下の表7に列挙し、また
図3A、3B、及び4Aに示されているフォレストプロット上に示す。
【0240】
【0241】
全ての不応性患者と再発患者(
図3A)、HMA不応性患者と再発患者(
図3B)、HMA不応性患者とCTX不応性患者(
図3C)の間の、多数の遺伝子シグネチャのベースライン倍数変化の差のフォレストプロットは、HMA不応性患者が、より老化した表現型を示すことを示している。具体的には、HMA不応性患者は、免疫疲弊及び適応免疫抵抗性の特徴を示し、CTX不応性患者と比較して、CD8T細胞(CD244、EOMES、LAG3、及びPTGER4)がますます疲弊する傾向と共に、TIGIT(5.55±0.34 vs 3.85±0.24、p=0.006)、PD‐L1(3.55±0.18 vs 2.4±0.29、p=0.009)及びTreg細胞(4.87±0.23 vs 3.69±0.19、p=0.0009)の上方制御を含む、免疫疲弊及び適応免疫抵抗性の特徴を示した(
図3A~3C)。
図3D~3Oにプロットされているのは、免疫強化(クラスタ2、
図3D~3I)又は免疫疲弊(クラスタ3、
図3J~3O)プロファイルに関連するいくつかの遺伝子シグネチャスコアである。骨髄(
図3D)、マクロファージ(
図3E)、好中球(
図3F)、B細胞(
図3G)、IFNガンマ(
図3H)、PD‐L1(
図3I)、TIGIT(
図3J)、CTLA‐4(
図3K)、Th1(
図3L)、CTL(
図3M)、CD8T細胞(
図3N)、及び細胞傷害性(
図3O)において、遺伝子シグネチャスコアを各クラスタについてプロットし(免疫枯渇(Depl.)、免疫強化(Enriched)、及び免疫疲弊(Exh.))、p値(クラスカル・ウォリス)を報告する。
【0242】
IFNガンマシグナリングシグネチャスコアの比較分析を、OR患者(CR、完全な応答;mCR、分子CR;CRi、不完全な血液学的改善を伴う完全な応答;MLF、形態学的無白血病状態;又はPR、部分応答を示した全ての患者を含む)とNR患者(SD、安定性疾患;又はPD、進行性疾患/治療失敗を示す全ての患者を含む)との間で実施した。
図4は、500ng/kg/dayの標的用量のCD123×CD3二重特異性結合分子フロテツズマブに対する応答の尺度として、(再発(RL)患者、又は化学療法不応性(CTX)若しくはHMA不応性(HMA)の患者に分類される)25人の患者由来の骨髄試料中に存在する芽球細胞における(ベースラインに対する)変化を示す。一次不応性患者についての、上記療法に対する客観的応答(OR)率は、50%(7/14)であった。一次不応性患者についての完全な応答(CR)は、35.7%(5/14)であった。
【0243】
図5Aは、OR患者とNR患者(PD、SD、TF、NEを含む)との間のベースライン倍数変換の差のフォレストプロットを提示しており、これは、IFNガンマシグナリングシグネチャの発現がOR患者のベースライン試料において増大したことを示す(
図5A中の囲み、NRからの変化を示す)。更に、TIS及びIFN下流シグネチャがOR患者において有意に増大した。
図5Bは、IFNガンマシグナリングシグネチャスコアの分布がOR患者において増大していることを示している。特に、フロテツズマブに対する応答者は、非応答者と比較して、ベースラインにおいて有意に高いIFNガンマシグナリングシグネチャスコアを示した(3.31±0.32 vs 2.27±0.11、p=0.0005)。IFNガンマシグナリングシグネチャスコアの感度及び特異度を測定して、応答の診断能力を予測した。このコホートのデータの範囲に対して異なる閾値カットオフを用いて、全ての試料に対するブートストラップを実行する。閾値又は感度及び特異度値の信頼区間(CI)は、ブートストラップリサンプリング及び平均化法を用いて計算した。全てのブートストラップCIにおいて、患者をリサンプリングし、修正された曲線を構築した後、関心対象の統計を計算する。ブートストラップ比較試験と同様、リサンプリングは既定では層別化された様式で実施される。曲線下面積(AUC)=0.819のIFNガンマシグナリングシグネチャスコアの予測性能を示す、レシーバ動作特性(本明細書中ではROCと略される)曲線下の面積が、
図5Cにプロットされている。このプロットは、IFNガンマシグナリングシグネチャスコアが高い又は低い試料を求めるために、このコホートの最適なスコアカットオフを用いて達成される、真陽性率(TPR)及び偽陽性率(FPR)を示す。予測力のないシグネチャは、対角線に沿ったROC曲線を有することになり、完璧な予測力を有するシグネチャは、左上の隅に達する曲線を有することになる。線を取り囲む影になった領域は、信頼区間を示す。これらのデータは、一次不応性患者中の応答者の頻度が高いこととも一致しており、上記応答者は一般に、再発患者と比較して高いINFガンマシグナリングシグネチャを示した。従って、ベースラインIFNガンマシグナリングシグネチャスコアは、CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する患者の応答との強い相関を示す(フロテツズマブで治療された患者に関するAUC=0.919;
図5C)。ベースラインにおける免疫シグネチャ及び応答率の、クラスタ間での比較を、表8(クラスタ免疫枯渇(クラスタ1)及び免疫浸潤(クラスタ2~3))、並びに表9(免疫疲弊(クラスタ2)及び免疫強化(クラスタ3))にまとめる。
【0244】
【0245】
【0246】
細胞傷害性細胞の刺激に関連する、又はCD8+T細胞に関連する、遺伝子のパネルの遺伝子発現シグネチャを、治療前の骨髄試料(「ベース」)由来の、及びフロテツズマブを用いた治療の第1のサイクルの後の骨髄試料(「サイクル1」)由来のRNAにおいて検査した。この調査の結果を
図6に示す。この結果は、フロテツズマブを用いた治療が、腫瘍微小環境において免疫細胞を刺激できたことを実証している。更に、サイクル1後のBM試料とベースライン試料との比較により、フロテツズマブを用いた治療が、免疫細胞浸潤及び免疫活性化スコアの上昇(これはより高い腫瘍炎症シグネチャとして表れる)(6.49±0.20 vs 5.93±0.12、p=0.015)と、強化免疫プロテアソームスコア(5.72±0.07 vs 5.23±0.10、p=0.0002)及びIFNガンマシグナリングシグネチャスコア(3.38±0.23 vs 2.53±0.14、p=0.0015)の増進とにつながることが示された。従って、フロテツズマブによって誘発される腫瘍微小環境(TME)遺伝子活性化は、免疫疲弊シグネチャではなく免疫強化シグネチャの指標であった。
【0247】
図7に示されているように、フロテツズマブ応答性集団、及び特に化学療法に対して過去に不応性であった患者は、CD123のより高い発現を示した。
【0248】
スクリーニング中に収集したAML芽球試料を、フローサイトメトリーによってPD‐L1発現に関して分析した。
図8に示されているように、フロテツズマブ治療において早期に(15日未満で)進行した患者は、他の患者に比べて、AML細胞上のPD‐L1のベースラインレベルが高く、応答(SD、OB、PR、CR)のエビデンスを有していた。この調査の結果は、PD‐L1発現が生体内での活性低下と関連していることを示しており、PD‐1/PD‐L1アンタゴニストとCD123×CD3二重特異性結合分子療法との併用を支持する(例えば国際公開第2017/214092号を参照)。
【0249】
これらのデータは全体として、ベースラインにおけるIFNガンマシグナリングシグネチャが、CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する応答と相関することを示している。CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対して抗白血病活性のエビデンスを示すほとんどの患者(6/7;86%)は、骨髄における高い免疫浸潤を有しており、最も感度が高い集団は免疫強化集団である。更に、過去にHMAを用いて治療された患者は、免疫強化されているが疲弊した腫瘍微小環境(例えば骨髄)を示し、チェックポイント発現が増大しており、これは、免疫チェックポイント阻害と組み合わせたCD123×CD3二重特異性結合分子療法の潜在的な利益を示唆している。いずれの特定の理論によって束縛されるものではないが、CD123×CD3二重特異性結合分子療法は、この集団における25%の抗白血病活性によって示されるように、免疫疲弊腫瘍微小環境を活性化できる。特に、CD123×CD3二重特異性結合分子であるDART‐Aを用いた治療は、免疫活性化、抗原処理/提示、及びIFNガンマシグナリングシグネチャスコアを増強することが観察された。
【0250】
実施例2
再発した化学療法不応性患者集団の遺伝子発現シグネチャ
免疫浸潤AMLの場合における、IFNガンマシグナリングシグネチャ、TIS、及びインターフェロン下流シグネチャを含むがこれらに限定されない遺伝子のより高い発現と、CD123×CD3を標的とする二重特異性免疫療法剤、例えばフロテツズマブを用いた治療による利益との間の相関を更に探求するために、更なる分析を実施した。この分析は、CP‐MGD006‐01臨床試験(NCT#02152956)に登録した30人の化学療法不応性(2回以上の導入試行に対して不応性、最初の完全な応答が6ヶ月未満)又は再発AML患者からの、(基本的に以下に記載されているようなNanoString PanCancer IO360(商標)アッセイを用いて得られた)遺伝子シグネチャ及びシグネチャの組み合わせに焦点を当てた。この分析は、HMA不応性患者由来の試料を排除し、過去に分析されていない再発及び化学療法不応性患者由来の更なる試料を含んでいた。
【0251】
この分析は、3つのシグネチャモジュール、即ち:IFN優性、適応、及び骨髄のスコアを集計することによって、ベースラインにおける再発及び不応性AML患者のBM試料を、本明細書中で免疫浸潤及び免疫枯渇と呼ばれる2つの免疫サブタイプに層別化した(
図9)。これら3つのシグネチャモジュールに関連する遺伝子シグネチャを、以下の表10に列挙する。モジュールスコアは、各試料の個々の遺伝子シグネチャスコアの合計である(各遺伝子シグネチャスコアは上述のように算出した)。
【0252】
【0253】
図9は、CP‐MGD006‐01臨床試験(NCT#02152956)のフロテツズマブ免疫療法を受ける前の、再発/不応性AMLに罹患した患者の骨髄(BM)微小環境における免疫及び生物学的活性シグネチャの、教師なし階層的クラスタリング(ユークリッド距離、完全連結)を提供する。応答者は、完全寛解(CR)、不完全な血液学的回復を伴うCR(CRi)、部分的な血液学的回復を伴うCR(CRh)、部分寛解(PR)、又は「他の利益(other benefit)(OB;BM芽球の30%超の減少)として定義される抗白血病応答を示す個体であった。非応答者は、治療失敗(TF)、安定性疾患(SD)、又は進行性疾患(PD)を伴う個体であった。化学療法不応性は、2回以上の導入試行、又は6ヶ月未満の初期CR期間を有する最初のCRとして定義された。シグネチャ間の比較を容易にするために、各IO360シグネチャスコアを、このコホートに関するスコア内で-3~+3のスケールに再スケーリングした。
【0254】
フロテツズマブを用いたCD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する抗白血病応答のエビデンスを有する患者の92%(12人中11人)に由来するBM試料は、非応答者に比べて、免疫浸潤TMEを有していた(
図9)。
【0255】
図10は、30人の化学療法不応性又は再発AML患者からの、応答者(CR、CRi、CRh、PR、及びOB)と非応答者(PD、SD、TF)との間のベースライン倍数変化の差のフォレストプロットを提示する。上述の実施例1で提供された分析と一致するように、(
図10において太線で囲まれている)IFNガンマシグナリングシグネチャ、IFN下流シグネチャ、及び腫瘍炎症シグネチャの発現は、非応答者に比べて応答者のベースライン試料で増大した。更に、IFN優性モジュールを構成する遺伝子シグネチャの大半は、非応答者に比べて応答者のベースライン試料で増大した(
図10においてアスタリスクが付けられている)。
【0256】
不応性患者と再発患者との間の、IFNガンマシグナリングシグネチャ(
図11A)、IFN下流シグネチャ(
図11B)、腫瘍炎症シグネチャ(TIS、
図11C)、及びIFN優性モジュール(
図11D)スコアの分布が、
図11A~11Dにプロットされている。スコアの分布は、不応性患者において増大している。非応答者(NR)及び応答者(OR)における、IFN優性モジュールを構成する9個の遺伝子シグネチャ及び腫瘍炎症シグネチャのスコアの分布が、
図12A~12Jにプロットされている:IFNガンマシグナリングシグネチャ(
図12A);IFN下流シグネチャ(
図12B);骨髄炎症シグネチャ(
図12C);免疫プロテアソームシグネチャ(
図12D);炎症性ケモカインシグネチャ(
図12E);MAGEシグネチャ(
図12F);PD‐L1シグネチャ(
図12G);PD‐L2シグネチャ(
図12H);IL10シグネチャ(
図12I);腫瘍炎症シグネチャ(TIS、
図12J)。これらの遺伝子シグネチャに関するスコアの分布は、応答性の患者において増大している。特に表11に示されているように、応答者は、非応答者と比較して、ベースラインにおいて有意に高いIFNガンマシグナリングシグネチャ、IFN下流シグネチャ、TIS、及びIFN優性モジュールスコアを示した。対応していない決定に関して、マン=ホイットニーのU検定を用いて比較を行った。
【0257】
【0258】
基本的に上述のようにして、IFN優性モジュールを構成する9個の遺伝子シグネチャ、TIS、及びこのグループの患者のIFN優性モジュールに関するスコアの感度(真陽性率)及び特異度(偽陽性率)を測定することにより、応答診断能力(ROC AUC)を予測した。予測性能を示すROC曲線が
図13A~13Kに提示されている:IFNガンマシグナリングシグネチャ(
図13A、AUC=0.750);IFN下流シグネチャ(
図13B、AUC=0.755);骨髄炎症シグネチャ(
図13C、AUC=0.69);免疫プロテアソームシグネチャ(
図13D、AUC=0.505);炎症性ケモカインシグネチャ(
図13E、AUC=0.764);MAGEシグネチャ(
図13F、AUC=0.736);PD‐L1シグネチャ(
図13G、AUC=0.699);PD‐L2シグネチャ(
図13H、AUC=0.727);IL10シグネチャ(
図13I、AUC=0.745);TIS(
図13J、AUC=0.852);及びIFN優性モジュール(
図13K、AUC=0.806)。
【0259】
(サイクル1の終了時に19人の患者から得られた)治療中のBM試料は、ベースライン試料に対して増大した抗原提示及び免疫活性化を示し(対応していない決定に関して、マン=ホイットニーのU検定を用いて比較を行った)、これは、より高いTISスコア(6.47±0.22 vs 5.93±0.15、p=0.0006、
図14A)、抗原プロセシング機械(APM)シグネチャスコア(5.67±0.16 vs 5.31±0.12、p=0.002、
図14C)、IFN‐ガンマシグナリングシグネチャスコア(3.58±0.27 vs 2.81±0.24、p=0.0004、
図14B)、及びPD‐L1シグネチャスコア(3.43±0.28 vs 2.73±0.21、p=0.0062;
図14D)に反映されている。この結果は、免疫浸潤TMEを有するAML患者の臨床的利益を実証し、CD123×CD3二重特異性結合分子療法の局所免疫調節効果を支持する。
【0260】
上述のように、免疫強化及びIFNガンマ優性腫瘍微小環境(「TME」)を有するAML患者は、無再発生存期間が有意に短いことが報告されており、これは標準的な導入化学療法に対する不応性を示唆している(Vadakekolathu, J. et al. (2017) “T Immune Gene Expression Profiling in Children and Adults with Acute Myeloid Leukemia Identifies Distinct Phenotypic Patterns,” Blood 130:3942A)。これらのデータは、ベースラインにおけるIFNガンマシグナリングシグネチャ、IFN下流シグネチャ、及びIFN優性モジュールスコアが、標準的な化学療法に対する不応性、及びCD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する応答と強く相関していることを示す。更に、ここで評価した、高度な予備治療を受けた個体(平均4件の予備療法)において、IFN優性モジュールを構成する遺伝子シグネチャの大半、及び腫瘍炎症シグネチャ(TIS)は、CD123×CD3二重特異性結合分子療法に対する応答と相関することが示された。これらの各スコアは、治療時において、再発AMLと比較して、化学療法不応性AMLに罹患した患者において有意に高く、また非応答者と比較して、抗白血病活性のエビデンスを有する個体において有意に高かった。上記強い相関は、ROC曲線及びAUC値に反映されている。
【0261】
遺伝子シグネチャ
IO360遺伝子数は、基本的に以下のようにして、nCounter(登録商標)system (NanoString Technologies,Inc.)を用いて生成された:RNA(~100ng/試料)を骨髄穿刺液から精製し、ハイブリダイゼーションのために、レポータ及びキャプチャプローブ混合物と共にインキュベートした。高解像度セッティングを用いて、nCounter FLEX分析システム上で転写物数を分析した。本明細書中で詳述されているように、レポータコード数(reporter code count:RCC)出力ファイルを使用し、基本的に上述されているような生物学的に関連する遺伝子セットの事前に定義された線形結合(重み付き平均)を用いて、遺伝子シグネチャスコアを算出する。
【0262】
IFNガンマシグナリングシグネチャについては、既に詳述されている。免疫細胞タイプの豊富なシグネチャは、Danaher, P., et al., 2017, “Gene Expression Markers of Tumor Infiltrating Leukocytes,” J Immunother Cancer 5, 18において定義されており、腫瘍炎症シグネチャはDanaher, P., et al., 2018 (“Pan-cancer Adaptive Immune Resistance as Defined by the Tumor Inflammation Signature (TIS): Results From The Cancer Genome Atlas (TCGA),” J Immunother Cancer. 6(1):63)に記載されているものであり(Ayers. M., et al. 2017, “IFN-γ-Related mRNA Profile Predicts Clinical Response to PD-1 blockade” J Clin Invest. 127(8):2930-2940に記載されているT細胞炎症性、及び国際公開第2016/094377号も参照);他のシグネチャは、Danaher, P., et al., (2018, “Development of Gene Expression Signatures Characterizing The Tumor-Immune Interaction,” J Clin Oncol 36, 205-205 において定義されている。参照を容易にするために、これらの研究で使用されている選択された遺伝子シグネチャに関する遺伝子及び重み係数を以下に提供する。
【0263】
腫瘍炎症シグネチャ(TIS)遺伝子(各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を含む)、及び重み係数(例えば国際公開第2016/094377号を参照)を、以下の表12Aに示す。
【0264】
【0265】
インターフェロン(IFN)下流シグネチャ遺伝子(各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を含む)、及び重み係数を、以下の表12Bに示す。このシグネチャに関する調整係数は、5.342598である。
【0266】
【0267】
炎症性ケモカイン(Inflam chemokines)シグネチャ遺伝子(各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を含む)、及び重み係数を、以下の表12Cに示す。このシグネチャに関する調整係数は、6.0968である。
【0268】
【0269】
MAGEシグネチャ遺伝子(各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を含む)、及び重み係数を、以下の表12Dに示す。このシグネチャに関する調整係数は、3.965625である。
【0270】
【0271】
骨髄炎症(Myeloid Inflam)シグネチャ遺伝子(各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を含む)、及び重み係数を、以下の表12Eに示す。このシグネチャに関する調整係数は、5.41931である。
【0272】
【0273】
免疫プロテアソームシグネチャ遺伝子(各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を含む)、及び重み係数を、以下の表12Fに示す。このシグネチャに関する調整係数は、6.096812である。
【0274】
【0275】
単一遺伝子シグネチャ遺伝子(各遺伝子に関する代表的かつ非制限的なNCBI登録番号を含む)、及び調整係数を、以下の表12Gに示す。
【0276】
【0277】
シグネチャスコアは、正規化及び対数変換後、各遺伝子に表12A~12Fで提供されている重みを乗算し、指示されている調整係数を加算することを除いて、基本的に上述されているように算出される。単一遺伝子シグネチャ(例えばPDL1)に関しては重みが使用されず、log2正規化遺伝子発現値を、表12Gで提供されている調整係数に加算する。
【0278】
本明細書において言及されている全ての公刊物及び特許は、個々の公刊物又は特許出願それぞれの全体が参照により本明細書に援用されていることが具体的かつ独立に指示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用されている。本発明をその具体的実施形態に関して説明したが、更なる修正形態が可能であり、本出願は、本発明が属する分野の公知の方法又は慣例の範囲内であるような、及びこれまでに挙げた必須の特徴に適用できるような、本開示からの逸脱を含む、本発明の原理に概ね従う本発明のいずれの変形、使用又は改変を包含することを意図していることを理解されたい。
【配列表】