IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コスモエンジニアリング株式会社の特許一覧 ▶ 菱田技研工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社電子技術工房の特許一覧

特許7551067風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法
<>
  • 特許-風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法 図1
  • 特許-風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法 図2
  • 特許-風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法 図3
  • 特許-風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法 図4
  • 特許-風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法 図5
  • 特許-風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20240909BHJP
   F03D 80/30 20160101ALI20240909BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20240909BHJP
【FI】
F03D17/00
F03D80/30
G01R31/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020040848
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021143600
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591027237
【氏名又は名称】コスモエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519078835
【氏名又は名称】菱田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514080187
【氏名又は名称】株式会社電子技術工房
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 聖
(72)【発明者】
【氏名】金森 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】菱田 聡
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀次
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-029351(JP,A)
【文献】特開2004-294197(JP,A)
【文献】特開2017-151018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 17/00
F03D 80/30
G01R 31/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法であって、
前記風力発電装置が、風を受けて回転するブレードおよび当該ブレードを支持するハブを有するロータと、当該ロータを回転可能に支持する支持物を収納するナセルと、当該ナセルを回転可能に支持するタワーとを有するとともに、前記ブレードにレセプタが設けられ、前記ブレードの長さ方向に前記レセプタと電気的に接続する引き下げ導線が設けられてなるものであり、
前記ブレードとハブとの接続部に取り付けた送信器から前記引き下げ導線に対し信号電流を流し、前記信号電流は、前記引き下げ導線またはレセプタを介して変調された電磁波を前記ブレードの外部に送出するように変調されたものであり、前記電磁波は、前記信号電流を流すことによって発せられ、前記ブレードに対し、前記電磁波の磁界信号を受信する受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させ、前記レセプタと前記遠隔操縦式無人飛行体とが離間した状態で前記電磁波の磁界信号の受信の有無を確認する
ことを特徴とする風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法。
【請求項2】
前記変調された電磁波がFSK変調またはPSK変調された電磁波である請求項1に記載の風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法。
【請求項3】
前記受信器が前記磁界信号を測定する磁気抵抗素子を備える請求項1または請求項2に記載の風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法。
【請求項4】
前記遠隔操縦式無人飛行体が、前記レセプタを認識するための撮像装置と、地上からの距離を測定する高さ測定装置と、測定対象となる風力発電装置との距離を測定する距離測定装置と、の少なくとも1つをさらに備えたものである請求項1~請求項3のいずれかに記載の風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法。
【請求項5】
前記遠隔操縦式無人飛行体がドローンである請求項1~請求項4のいずれかに記載の風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法。
【請求項6】
前記レセプタは、前記風力発電装置の前記ブレードの長さ方向に間隔を空けて複数設けられており、
前記ブレードの最も先端側のレセプタから発信されるべき磁界信号を受信できなかった場合、前記ブレードの長さ方向に沿って前記遠隔操縦式無人飛行体を移動させつつ磁界信号の受信の有無を確認し、磁界信号を受信できる位置とかかる位置に隣接する磁界信号を受信できない位置とを特定する、請求項1~請求項5のいずれかに記載の風力発電装置のブレード引き下げ導線導通検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護意識の向上に伴って、温室効果ガス等を発生することなく発電可能な大型風力発電装置の設置が急速に増加しつつある。
大型風力発電設備を構成する風車は、障害物のない平坦地や海上に設置されるため、落雷を受ける可能性を考慮して落雷対策を施す必要がある。
例えば、大型風力発電設備においては、風車のハブの高さが80m、風車ブレード半径が56mを超えるものも開発されており、上記落雷対策を十分に施す必要がある。
【0003】
風力発電設備全体が金属等の導電性の高い素材により構成されている場合には、受雷した場合においても雷電流を速やかに大地または海中へ流すことができるが、通常、特に風車のブレードは軽量で腐食等を生じ難い繊維強化プラスチック(FRP)等によって構成され、導電性が低いために、係るブレードに受雷した場合には、破損を避け難くなる。
【0004】
このため、上記風車のブレードにレセプタや引き下げ導線(ダウンコンダクタ)などを取付けて、レセプタで受雷し、引き下げ導線等を通じて風車タワー内の接地線等へ雷電流を導く方法が開発されるようになっている。
【0005】
図1は、風力発電装置10の全体構造の一例を示す断面図である。図1に示す風力発電装置10は、風を受けて回転するブレード14aおよび当該ブレード14aを支持するハブ14bを有するロータ13と、ロータ13を回転可能に支持する支持物を収納したナセル12と、ナセル12を回転可能に支持するタワー11とを有し、ナセル12内に設置された発電機15にロータ軸13の回転が伝達されて発電が行われる。さらに、ナセル12内には発電機制御装置16等の電力設備や電子機器が設置されている。発電機15により発電された電力は、タワー11の内部を通る電力線20により外部へ供給される。
【0006】
通常、ブレード14aは繊維強化プラスチック(FRP)等によって構成されており、当該風車ブレードにはレセプタ17として金属チップが設けられている。
ブレード14a内には、レセプタに電気的に接続する引き下げ導線がブレード14aの長さ方向全体にわたって設けられ、当該引き下げ導線はナセル12とタワー11を介してタワー下部の接地線19に電気的に接続し、係る接地線19の端部は、大地に接地されている。
【0007】
ブレード14aに受雷した場合、雷電流は、レセプタ17からブレード14a内に設けられた引き下げ導線およびタワー11の壁等を流れた後、接地線19の端部等から大地等へ流れる。
【0008】
ところで、上述した風力発電装置の引き下げ導線が断線している場合には、上記レセプタで受雷しても、接地線19を通じて大地等へ流れることが難しくなり、ブレード14aの破損や発火等を生じ得ることから、近年、経済産業省令によりブレード14a内部の引き下げ導線の導通を定期的に検査することが求められるようになっている。
【0009】
この場合、検査対象となるブレード14aを真下に向けた状態で、ナセル12から真下に垂らしたロープを伝って作業者がロープワークでブレード14aの長さ方向に沿って下降し、レセプタ17に通電して導電を確認する作業を行っており、作業者は高所においてブレード毎に下降作業を行う必要がある。
【0010】
上記検査は高所作業車で行うことも可能であるが、風力発電装置の大型化に伴って使用し得る高所作業車が限定されたり、検査者が熟練した技能を有する者に限定されてしまい、検査費用の高騰を招いたり、検査スケジュールの柔軟な設定が行い難くなっている。
【0011】
特に、上記ロープワークによる検査は、高所での作業になることからロープ等の検査用具の設置や撤去に時間がかかり、風雨や雷等による天候の急変や回復に対応した迅速な対応を行い難いばかりか、作業者の作業負担及び落下等の労災リスクも大きく作業時間が長時間に及んでしまうため、簡便な検査業務を行い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2013-092072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況下、本発明者等は、風力発電装置のブレード内に設けられた引き下げ導線に対し、上記ブレードと当該ブレードを支持するハブとの接続部に取り付けた送信器から信号電流を流しつつ、上記ブレードに対し、上記信号電流の電磁波を受信する受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させ、上記ブレードの長さ方向に移動させつつ上記信号電流により発生する電磁波の受信の有無を確認することにより、風力発電装置のブレード内引き下げ導線の導通検査を、簡便に検査する方法を着想するに至った。
【0014】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、上記方法においてはブレード内引き下げ導線の導通検査を必ずしも高い精度で行い難いことが判明した。
【0015】
本点について本発明者等がさらに検討したところ、以下の検討結果が得られるに至った。
すなわち、通常、導通検査は静電式で行われる場合が多く、上記引き下げ導線の導通検査を静電式で行う場合、上記ブレード内に設けた引き下げ導線と上記受信器に設けた受信電極との間の静電容量Cによって当該受信電極に発生する電圧Vを検出し、引き下げ導線の断線の有無を検査するが、このとき、上記受信器と地上部の各種導電物との間にも静電結合によって静電容量Cを生じて電圧Vが誘起される。
ここで、静電容量Cは電極間距離dに反比例すること(C∝1/d)が知られている。上記のようにブレード内に設けた引き下げ導線に受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させて導通検査を行う場合、上記引き下げ導線および受信器間の距離dに比較して上記受信器および地上との距離dが非常に大きくなる(d<<dになる)ことから、上記引き下げ導線および受信器に設けた受信電極間の静電容量Cは、上記受信器に設けた受信電極および地上部間の静電容量Cに比較して非常に大きくなる(C>>Cになる)。
このために、上記引き下げ導線および受信器に設けた受信電極間の電圧Vに比較して、上記受信器に設けた受信電極および地上間の電圧Vが非常に大きくなる(V<<Vになる)。
この場合、引き下げ導線および受信器に設けた受信電極間に生じる電圧Vによって引き下げ導線の断線の有無を検査しようとすると、上記受信電極および地上間に生じる電圧Vの影響が非常に大きくなって、上記電圧Vを測定することが非常に困難になってしまう。
【0016】
上記受信器に設けた受信電極および地上間に生じる電圧Vの影響を抑制するために、上記受信電極に接地線(アース線)を設ける方法も考えられるが、この場合、遠隔操縦式無人飛行体が接地線を牽引しながら高所を飛行することになってしまい、遠隔操縦式無人飛行体の操作性ないしは検査者の作業性が制限される結果、簡便で迅速な検査を行い難くなる。
【0017】
また、引き下げ導線および受信器に設けた受信電極間の電圧Vは、遠隔操縦式無人飛行体の飛行時における各種の周波数ノイズによって、正確に検知されない場合がある。
【0018】
このような状況下、本発明は、風力発電装置のブレード内引き下げ導線の導通を、簡便、安全、迅速かつ低コストに高い精度で検査する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記技術課題を解決するために本発明者等が鋭意検討したところ、風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法であって、前記風力発電装置が、風を受けて回転するブレードおよび当該ブレードを支持するハブを有するロータと、当該ロータを回転可能に支持する支持物を収納するナセルと、当該ナセルを回転可能に支持するタワーとを有するとともに、前記ブレードにレセプタが設けられ、前記ブレードの長さ方向に前記レセプタと電気的に接続する引き下げ導線が設けられてなるものであり、前記ブレードとハブとの接続部に取り付けた送信器から前記引き下げ導線またはレセプタを介して変調された電磁波を前記ブレードの外部に送出し、前記ブレードに対し、前記電磁波の磁界信号を受信する受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させ、前記電磁波の磁界信号の受信の有無を確認することにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、
(1)風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法であって、
前記風力発電装置が、風を受けて回転するブレードおよび当該ブレードを支持するハブを有するロータと、当該ロータを回転可能に支持する支持物を収納するナセルと、当該ナセルを回転可能に支持するタワーとを有するとともに、前記ブレードにレセプタが設けられ、前記ブレードの長さ方向に前記レセプタと電気的に接続する引き下げ導線が設けられてなるものであり、
前記ブレードとハブとの接続部に取り付けた送信器から前記引き下げ導線に対し信号電流を流し、前記信号電流は、前記引き下げ導線またはレセプタを介して変調された電磁波を前記ブレードの外部に送出するように変調されたものであり、前記電磁波は、前記信号電流を流すことによって発せられ、前記ブレードに対し、前記電磁波の磁界信号を受信する受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させ、前記レセプタと前記遠隔操縦式無人飛行体とが離間した状態で前記電磁波の磁界信号の受信の有無を確認すること
を特徴とする風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法、
(2)前記変調された電磁波がFSK変調またはPSK変調された電磁波である上記(1)に記載の風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法、
(3)前記受信器が前記磁界信号を測定する磁気抵抗素子を備える上記(1)または(2)に記載の風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法、
(4)前記遠隔操縦式無人飛行体が、前記レセプタを認識するための撮像装置と、地上からの距離を測定する高さ測定装置と、測定対象となる風力発電装置との距離を測定する距離測定装置と、の少なくとも1つをさらに備えたものである上記(1)~(3)のいずれかに記載の風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法、
(5)前記遠隔操縦式無人飛行体がドローンである上記(1)~(4)のいずれかに記載の風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法、
(6)前記レセプタは、前記風力発電装置の前記ブレードの長さ方向に間隔を空けて複数設けられており、前記ブレードの最も先端側のレセプタから発信されるべき磁界信号を受信できなかった場合、前記ブレードの長さ方向に沿って前記遠隔操縦式無人飛行体を移動させつつ磁界信号の受信の有無を確認し、磁界信号を受信できる位置とかかる位置に隣接する磁界信号を受信できない位置とを特定する、(1)~(5)のいずれかに記載の風力発電装置のブレード引き下げ導線導通検査方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、風力発電装置のブレード内引き下げ導線の導通を、簡便、安全、迅速かつ低コストに高い精度で検査する方法を提供することができ、例えば、点検員の高所作業に伴う落下等の労災リスクを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】検査対象となる風力発電装置の全体構造の一例を示す断面図である。
図2】レセプタを備えたブレードの一例を示す図である。
図3】本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体の使用形態例を説明するための図である。
図4】本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、検査形態例を模式的に表す図である。
図5】本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体の使用形態例を説明するための図である。
図6】本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体の使用形態例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法は、風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法であって、前記風力発電装置が、風を受けて回転するブレードおよび当該ブレードを支持するハブを有するロータと、当該ロータを回転可能に支持する支持物を収納するナセルと、当該ナセルを回転可能に支持するタワーとを有するとともに、前記ブレードにレセプタが設けられ、前記ブレードの長さ方向に前記レセプタと電気的に接続する引き下げ導線が設けられてなるものであり、前記ブレードとハブとの接続部に取り付けた送信器から前記引き下げ導線またはレセプタを介して変調された電磁波を前記ブレードの外部に送出し、前記ブレードに対し、前記電磁波の磁界信号を受信する受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させ、前記電磁波の磁界信号の受信の有無を確認することを特徴とするものである。
【0024】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、検査対象となる風力発電装置としては、風を受けて回転するブレードおよび当該ブレードを支持するハブを有するロータと、当該ロータを回転可能に支持する支持物を収納するナセルと、当該ナセルを回転可能に支持するタワーとを有するとともに、前記ブレードにレセプタが設けられ、前記ブレードの長さ方向に前記レセプタと電気的に接続する引き下げ導線が設けられてなるものであれば特に制限されない。
【0025】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、検査対象となる風力発電装置としては、例えば、図1に例示する風力発電装置10を挙げることができる。
図1は、風力発電装置10の全体構造の一例を示す断面図である。図1に示す風力発電装置10は、風を受けて回転するブレード14a、当該ブレード14aを支持するハブ14bおよびロータ軸13を有するロータと、ロータ軸13を介してロータを回転可能に支持する支持物を収納するナセル12と、当該ナセル12を回転可能に支持するタワー11とを有するとともに、ナセル12内に設置された発電機15にロータ軸13の回転が伝達されて発電が行われる。
さらに、ナセル12内には発電機制御装置16等の電力設備や電子機器が設置されている。発電機15により発電された電力は、タワー11の内部を通る電力線20により外部へ供給される。
【0026】
ナセル12は、ブレード14a、当該ブレード14aを支持するハブ14bおよびロータ軸13により構成されるロータを回転可能に支持する軸受等の支持物を有するともに、ナセル12もタワー11に回転可能に支持されており、風向きの変化に応じて風が吹き付ける方角に向かって自在に回転することができるように設計されている。
【0027】
図1に示す風力発電装置10においては、ブレード14aにレセプタ17が設けられ、ブレードの長さ方向に上記レセプタ17と電気的に接続する引き下げ導線が設けられている。
【0028】
上記レセプタ17は、少なくともその一部がブレード14aの外部に露出するものであってもよいし、その全体がブレード14a内に収納されているものであってもよい。
【0029】
レセプタ17は、通常導電性を有する金属により構成されており、例えば、銅、アルミニウム等の金属により構成されていることが好ましい。
【0030】
ブレード14aは、通常、繊維強化プラスチック(FRP)等によって構成されている。
【0031】
図2は、風力発電装置10において採用し得るレセプタ17を備えたブレード14aの一例を示すものである。
【0032】
レセプタ17は、ブレード14aの複数箇所に設けられていてもよく、レセプタ17がブレード14aの複数箇所に設けられていることにより、ブレードへ落雷した際の破損リスクを低減することができる。
【0033】
図2に例示するように、ブレード14aには、レセプタ17とともに、ブレードの長さ方向に上記レセプタ17と電気的に接続する引き下げ導線18が設けられている。
引き下げ導線18としては、通常使用される導電線で雷電流で断線しないものであれば特に制限されず、例えば、銅線等を挙げることができる。
【0034】
上記引き下げ導線18はナセル12とタワー11を介してタワー下部の接地線19に電気的に接続し、係る接地線19の端部から大地等へ接地されている。
上記接地線19としても、通常使用される避雷用接地導線であれば特に制限されず、例えば、銅線等を挙げることができる。
【0035】
ブレード14aに受雷した場合、雷電流は、レセプタ17からブレード14a内に設けられた引き下げ導線18およびタワー11の壁面等を流れた後、接地線19の端部等から大地へ流れる。
【0036】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法においては、前記ブレードとハブとの接続部(ブレードとハブとの連結部)に取り付けた送信器から引き下げ導線に対し、ブレードの外部に変調された電磁波を送出するための信号電流を流す。
本出願書類において、ブレードとハブとの接続部とは、ブレードとハブとが連結する部位において、上記ブレード内引き下げ導線と電気的に接続可能な任意の位置を意味する。
【0037】
信号電流を流す位置は、上記ブレードとハブとの接続部のうち、ナセル内に露出する部位であることが好ましい。後述するように、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、検査者は、通常、ナセル内で送信器を取り付けて信号電流を流すことから、上記部位であれば検査者が送信器の取り付けおよび信号電流の送出を容易に行うことができる。
具体的には、ブレードの根本部に設けられた、上記ブレード内に設けられた引き下げ導線と電気的に接続する接地線に対して送信器を配設し、係る送信器から信号電流を流す態様が挙げられる。
また、例えば、ブレードとハブとの接続部において、ブレード内引き下げ導線とナセルとを電気的に接続する部材または部位に対して送信器を配設し、係る送信器から信号電流を流す態様が挙げられる。
【0038】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、送信器をブレードとハブとの接続部に取り付けることによってブレード先端部付近まで信号電流を送出し検出することができる。
【0039】
また、風力発電装置を構成する複数のブレードのうち、一枚のブレードとハブとの接続部に送信器を取り付け、ブレード毎に送信器を付け替えつつ順次後述する受信の有無を確認することで、ブレード毎に引き下げ導線の導通の有無を容易に検出することができる。
さらに、風力発電装置の機種によっては、接地システムの構成によりナセル若しくはハブ内の一箇所に送信機を取り付けることで、同時に複数のブレードで受信の有無を確認することができ、送信機の移設を伴わずに複数のブレードの引き下げ導線の導通の有無を容易に検出することもできる。
【0040】
通常、風力発電装置においては、タワー内にエレベーターやはしごが設けられ、ナセル内まで検査者が容易に移動し得ることから、検査者は、天候等に左右されることなく、ブレードとハブとの接続部に送信器を取り付けることにより引き下げ導線に対して送信器から信号電流を流すことができる。
【0041】
本出願書類において電気的に接続とは、物理的に接触または接続され導通状態にある場合のほか、空間を電子が飛び交うこと等による電気的な接続等も含まれる。
このため、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、送信器から引き下げ導線に信号電流を送出する方法は、送信器と引き下げ導線または引き下げ導線と電気的に接続する部材または部位とが接触している形態および接触していない非接触の形態いずれの形態も採ることができる。例えば、送信器に設けたクランプ等によって引き下げ導線または引き下げ導線に電気的に接続する部材または部位を把持すること等によって電気的に接続し信号電流を送出してもよい。
信号電流の出力の程度は、当該信号電流より発せられる変調された電磁波を、電波法に規定された出力以下で後述する遠隔操縦式無人飛行体によって検出し得る程度であれば、特に制限されない。
【0042】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、送信器から上記引き下げ導線に送出される信号電流は、上記ブレード内に設けられた引き下げ導線またはレセプタを介して変調された電磁波をブレードの外部に送出し得るように変調されている。
【0043】
上記信号電流によりブレードの外部に送出される変調された電磁波としては、OOK(On Off Keying)変調、FSK(Frequency Shift Keying)変調またはPSK(Phase Shift Keying)変調された電磁波を挙げることができ、FSK変調またはPSK変調された電磁波であることが好ましい。
【0044】
OOK変調とは、デジタル変調方式の一種であって、送信データとしてのバイナリデータのビット列に対応して搬送波の有無を変化させることで送信データを送る方式である。
OOK変調においては、通常、伝送信号の「1」に対応して搬送波を送出し、伝送信号の「0」に対応して搬送波を送出しないことにより、ビット列を伝送することができる。
【0045】
FSK変調とは、デジタル変調方式の一種であって、送信データとしてのバイナリデータのビット列に対応して搬送波の周波数を変化させることで送信データを送る方式であり、周波数偏移変調とも称される。
最も単純な2値FSK変調の場合には、ある帯域の二つの周波数を使用し、通常、相対的に高い周波数による信号を1、低い周波数による信号を0に対応付け、これを組み合わせて連続して送信することによりビット列を伝送することができる。
【0046】
PSK変調とは、デジタル変調方式の一種であって、送信データとしてのバイナリデータのビット列に対応して搬送波の位相を変化させることで送信データを送る方式であり、位相偏移変調とも称される。
最も単純な2値PSK変調の場合には、伝送信号の「0」、「1」に応じて位相をずらし、例えば180度の位相変調の場合、「0」、「1」に応じて波形の山と谷が入れ換わりつつ連続して送信することによりビット列を伝送することができる。
【0047】
FSK変調またはPSK変調された電磁波を用いることにより、他の変調方式で変調された電磁波に比較して、ノイズの影響を一層削減し、復調時のノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0048】
上記変調された電磁波は、公知の方法ないし送信部材を用いることにより容易に送出することができる。
【0049】
本出願に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法においては、上記ブレードに対し、上記信号電流の電磁波を受信する受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させ、上記変調された電磁波の磁界信号を受信する。
【0050】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体としては、少なくとも、プロペラと、プロペラに接続された駆動用モーターと、無線通信ユニットとを有するものであれば特に制限されず、ジャイロセンサを有し機体制御を自在に行い得るコントローラを備えたものが好ましく、例えば、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)を挙げることができ、具体的にはドローン等を挙げることができる。
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法においては、遠隔操縦式無人飛行体を遠隔操作することにより、受信器を所望位置に容易に運搬し、接近させることができる。
【0051】
図3は、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、ブレード内引き下げ導線導通検査時における遠隔操縦式無人飛行体1の使用形態例を説明するための図である。
【0052】
図3に示す形態例において、遠隔操縦式無人飛行体1は、遠隔操縦式無人飛行体1に取り付けられたガイドフレームGに受信器3を固定してなるものである。
図3に示す形態例において、ガイドフレームGの下部に設けた支持棒Lの先端部にアンテナAが設けられ、当該アンテナAと受信器3とがアンテナ線で電気的に接続されている。
【0053】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、受信器としては、上記変調された電磁波の磁界信号を受信し得るものであれば特に制限されない。
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法においては、上記電磁波の磁界信号を受信することにより、静電式等による電磁波の電界情報を受信する場合に比較して、高い感度で信頼性の高い情報を得ることができる。
【0054】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、受信器としては、上記磁界信号を測定する磁気抵抗素子を備えたものであることが好ましい。
磁気抵抗素子は、磁界の強弱を電気抵抗の変化として取り出すように構成された固体電子部品であり、磁気抵抗素子を用いることにより、物理的な接触を介さずに正確で信頼性の高い磁界信号を受信することができる。
【0055】
上記変調された電磁波は、公知の方法ないし受信部材を採用することにより容易に受信することができる。
【0056】
図4は、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、検査形態例を模式的に表す図である。
図4に示す検査形態例に示すように、検査対象となる風力発電装置を構成するブレード14aは、レセプタ17とともに、その内部においてブレードの長さ方向全体にわたって上記レセプタ17と電気的に接続する引き下げ導線18を有しており、上記ブレード14aとハブとの接続部において、引き下げ導線18に送信器2が電気的に接続され、信号電流が送出される。
【0057】
図4に例示するように、アンテナAを有する受信器3を備えた遠隔操縦式無人飛行体1を、地上部の検査者が遠隔操作することにより、上記ブレード14aに接近させる。
【0058】
その上で、送信器2から引き下げ導線18に送出されレセプタ17または引き下げ導線18から発信される変調された電磁波を、上記アンテナAにより検知する。
【0059】
遠隔操縦無人飛行体をブレード14aに接近させる場合、接近距離(ブレードと遠隔操縦無人飛行体との距離)は、変調された電磁波の磁界信号の有無を検知し得る距離であれば特に制限されない。
【0060】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法においては、遠隔操縦式無人飛行体をブレードの長さ方向に移動させて、ブレードの長さ方向、すなわちブレード内引き下げ導線の長さ方向における導通の有無(引き下げ導線の断線の有無)を確認することが好ましい。
図4に示すように、ブレード14aが複数のレセプタ17を有するものである場合は、例えば遠隔操縦式無人飛行体1をブレード14aの長さ方向に移動させ、各レセプタ17における信号電流の電磁波の受信の有無を確認することが好ましい。
【0061】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、変調された電磁波は、レセプタから発信されたものであってもよいし引き下げ導線から発信されたものであってもよく、ブレードの長さ方向に沿った任意の位置における電磁波の磁界信号の有無を検知することにより、相対するブレード位置における引き下げ導線の断線の有無を確認することができる。
【0062】
ブレード14aの最も先端側のレセプタ17から発信される変調された電磁波の磁界信号を受信できた場合には、係るブレード14aにおいて引き下げ導線18の断線は生じていないと判断することができる。
ブレード14aの最も先端側のレセプタ17から発信されるべき変調された電磁波の磁界信号を受信できなかった場合には、係るブレード14aにおいて引き下げ導線18の断線が生じていると判断することができる。この場合、さらにブレード14aの長さ方向(ブレード内引き下げ導線の長さ方向)に沿って遠隔操縦式無人飛行体を移動させつつ変調された電磁波の磁界信号の受信の有無を確認し、磁界信号を受信できる位置とかかる位置に隣接する磁界信号を受信できない位置とを特定することにより、両者間に断線が生じていると判断することができる。
【0063】
受信器で検出された変調された電磁波の磁界信号に係る情報は、復調された上で、地上部の検査者に対し公知の方法で送信することができ、例えば、受信器の受信信号を別の周波数の電磁波に変換する変換器を搭載した送信器により地上の受信器へ送信する方法等を挙げることができる。
【0064】
図3および図5に例示するように、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体1は、撮像装置4をさらに備えたものであることが好ましい。
【0065】
撮像装置としては、赤外線カメラ、可視光線カメラ、ビデオカメラ等の動画像若しくは静止画像を連続的または断続的に撮像可能な装置であれば特に制限されず、赤外線カメラであることが好ましい。
【0066】
検査対象となる風力発電装置によっては、高所での作業となるために、遠隔操縦式無人飛行体を操縦する地上の操作者からはブレードに対する遠隔操縦式無人飛行体の位置が十分に視認できない場合がある。
また、レセプタとブレードとが同一色で塗装されている場合等もあり、遠隔操縦式無人飛行体を操縦する地上の操作者からは、レセプタが明確に視認できない場合がある。
このような場合であっても、遠隔操縦式無人飛行体が撮像装置をさらに備え、係る撮像装置からブレードの近接画像情報を送信することにより、地上部の操作者は遠隔操縦式無人飛行体とブレードとの位置関係やレセプタの配設位置を明確に特定することができる。
【0067】
撮像装置で得られたブレード表面の画像情報は、地上部の検査者に対し、公知の方法で送信することができ、例えば、総務省により平成28年8月に制度化された一般業務用(ホビー用途を除く。)無人移動体画像伝送システム(高画質で長距離な映像伝送を可能とするメイン回線用として、2.4GHz帯等の周波数を新たに確保したもの。)により送信することができる。
【0068】
図3に例示するように、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体1は、地上からの高さを測定する高さ測定装置5をさらに備えたものであることが好ましい。
【0069】
高さ測定装置5としては、地上との距離を測定し得るものであれば特に制限されず、各種高さ測定装置として市販されているものを使用することができ、例えば、レーザ光測定装置、光電センサ(可視光線、赤外線)測定装置、超音波測定装置、気圧計式測定装置等から選ばれる一種以上の測定装置を挙げることができる。
【0070】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、検査対象となる風力発電装置のブレードは、通常、高所に位置することから、遠隔操縦式無人飛行体を操縦する地上部の操作者からは、ブレードとの位置関係を明確に視認できない場合がある。
このような場合であっても、遠隔操縦式無人飛行体が地上との距離を測定する高さ測定装置5をさらに備え、係る高さ測定装置5から地上からの距離(高さ)情報と後述する位置情報とを送信することにより、地上部の操作者は、風力発電装置の建設時のブレードの高さと後述する位置情報と照らし合わせつつ、ブレードとの位置関係を明確に把握することができる。
【0071】
高さ測定装置5から得られた地上からの距離情報は、地上部の検査者に対し、公知の方法で送信することができ、例えば、総務省により平成28年8月に制度化された一般業務用(ホビー用途を除く。)無人移動体画像伝送システム(高画質で長距離な映像伝送を可能とするメイン回線用として、2.4GHz帯等の周波数を新たに確保したもの)により送信することができる。
【0072】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体は、衛星測位システムの受信装置を備えたものであることが好ましい。
【0073】
遠隔操縦式無人飛行体が衛星測位システムの受信装置を有するものであることによって、(図3に符号7で示す(図示しない)衛星測位アンテナで得られた)位置情報を送信することにより、地上部の操作者は、風力発電装置の建設時の設置位置情報と照らし合わせつつ、ブレードとの位置関係を明確に把握することができる。
【0074】
衛星測位システムにより得られた位置情報は、地上部の検査者に対し、公知の方法で送信することができ、例えば、総務省により平成28年8月に制度化された一般業務用(ホビー用途を除く。)無人移動体画像伝送システム(高画質で長距離な映像伝送を可能とするメイン回線用として、2.4GHz帯等の周波数を新たに確保したもの)により送信することができる。
【0075】
上記地上からの距離(高さ)情報および位置情報の少なくとも一方を受信する受信装置としては、GPS(全地球測位システム)を利用した受信装置を挙げることができ、具体的には、RTK-GPS(Real Time Kinematic-Global Positioning System)方式による測量方法を用いた位置測定システムを挙げることができる。
RTK-GPS方式による測量方法を用いた位置測定システムを使用することにより、気圧変化や障害物による誤差も容易に回避することができる。
【0076】
図6は、図3に示す遠隔操縦式無人飛行体の変形使用形態例であって、RTK-GPS方式を利用した遠隔操縦式無人飛行体の使用形態例を説明するための図である。
図6に示す形態例において、遠隔操縦式無人飛行体1は、RTK-GPSシステムアンテナ5’を備え、係るRTK-GPSシステムアンテナ5’によって、地上に設置したRTKアンテナ8から送信される位置および高さ情報と、衛星9から送信される位置および高さ情報を得て、係る位置情報および高さ情報を地上部の検査者に対し、公知の方法で送信することができる。
なお、図6に示すように、上記位置情報については、通常、複数の衛星9から送信される情報を各々受信し補正した上で、位置補正情報として地上部の検査者に送信される。
【0077】
図3図6に例示するように、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体1は、測定対象となる風力発電装置との距離を測定する距離測定装置6をさらに備えたものであることが好ましい。
【0078】
距離測定装置6としては、風力発電装置との距離を測定し得るものであれば特に制限されず、各種超音波測定装置として市販されているものを使用することができ、例えば、レーザ光測定装置、光電センサ(可視光線、赤外線)測定装置、超音波測定装置、気圧計式測定装置等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0079】
本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導検査方法において、検査対象となる風力発電装置のブレードは、通常、高所に位置することから、遠隔操縦式無人飛行体を操縦する地上部の操作者からは、ブレードとの位置関係を明確に視認できない場合がある。
このような場合であっても、遠隔操縦式無人飛行体が測定対象となる風力発電装置との距離を測定する距離測定装置等をさらに備え、係る距離測定装置からブレードとの距離情報を送信することにより、地上部の操作者は、ブレードとの位置関係を明確に把握することができる。
【0080】
距離測定装置から得られたブレードとの距離情報は、地上部の検査者に対し、公知の方法で送信することができ、例えば、総務省により平成28年8月に制度化された一般業務用(ホビー用途を除く。)無人移動体画像伝送システム(高画質で長距離な映像伝送を可能とするメイン回線用として、2.4GHz帯等の周波数を新たに確保したもの)により送信することができる。
【0081】
図3図6に示すように、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体1がガイドフレームGを有するものである場合、ガイドフレームGの構成材料としては、特に制限されないが、軽量かつ軟質なものが好ましく、ポリカーボネート等の各種プラスチック等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0082】
また、図3図6に示すように、本発明に係る風力発電装置のブレード内引き下げ導線導検査方法において、遠隔操縦式無人飛行体1がガイドフレームGを有するものである場合、ガイドフレームGは、さらに保護ネットNを有するものであってもよい。
保護ネットNの構成材料としては、特に制限されないが、軟質な繊維材料からなるものであることが好ましい。
【0083】
本発明によれば、風力発電装置のブレード内引き下げ導線の導通を、簡便、安全、迅速かつ低コストに高い精度で検査する方法を提供することができる。
【実施例
【0084】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれ等の例により何ら限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
地上に横向きに仮設置した長さ70mのFRP製ブレードに対し、遠隔操縦式無人飛行体1に対応する実験装置を用いて図3に示す形態を有する検査装置を接近させることにより、ブレード内引き下げ導線導通検査を行った。
上記ブレード内には、先端部に設けられたレセプタと電気的に接続するようにその長さ方向全体に亘って引き下げ導線が設けられている。
上記引き下げ導線のブレード根本側の端部は、接地線に電気的に接続させ、係る接地線の端部から大地への接地を行った。
係る状態で、ブレードの根元側の位置において、送信器に設けたクランプで引き下げ導線を把持することによって両者を電気的に接続し、上記送信器から信号電流を送出した。上記信号電流は、引き下げ導線またはレセプタを介してOOK変調された電磁波をブレード外部に送出し得るように変調されたものである。
その上で、図3に示す形態を有するドローンをブレードに近接させ、ブレードの長さ方向に移動させつつ、ブレードの根本から5mの位置、ブレード根本から10mの位置、ブレード根本から20mの位置、ブレード根元から30mの位置、ブレード根本から40mの位置、ブレード根本から50mの位置、ブレード根本から60mの位置およびブレード根本から70mの位置(先端部)において、ドローンに設置した磁気抵抗素子を備えた受信器3により電磁波の磁界信号を検知し、各測定位置において電磁波の磁界信号の受信の有無を確認し得る最大距離を測定した。
結果を表1に示す。
【0086】
(比較例1)
実施例1において、送信器および受信器として大電(株)製ケーブル判別器DCS02として市販されているものを用い、送信器から(変調されていない)信号電流を送出して引き下げ導線またはレセプタを介してブレードの外部に電磁波を送出し、受信器の受信電極に発生する電圧Vを検出することにより(静電式により)、各測定位置において電磁波の電界信号の受信の有無を確認し得る最大距離を測定した以外は、実施例1と同様に測定した。
結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1より、実施例1においては、引き下げ導線にブレードの根本側に設けた送信器から変調された信号電流を流し、引き下げ導線またはレセプタを介して変調された電磁波をブレード外部に送出しつつ、上記ブレードに対し、変調された電磁波の磁界信号を受信する受信器を備えた遠隔操縦式無人飛行体を接近させ、電磁波の磁界信号の受信の有無を確認することにより、風力発電装置のブレード内引き下げ導線導通検査を簡便、安全、迅速かつ低コストに高い精度で検査し得ることが分かる。
【0089】
一方、表1より、比較例1においては、磁界信号ではなく電界信号により電磁波の受信の有無を確認していることから、実施例1に比較して電磁波を検出可能なブレードおよび受信器の最大距離が短く、精度の高い検査を簡便、迅速に行い難いものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、風力発電装置のブレード内引き下げ導線の導通を、簡便、安全、迅速かつ低コストに高い精度で検査する方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 遠隔操縦式無人飛行体
2 送信器
3 受信器
4 撮像装置
5 高さ測定装置
5’ 移動局アンテナ(遠隔操縦式無人飛行体に設置したRTK-GPSシステムアンテナ)
6 距離測定装置
7 衛星測位アンテナで得られた位置情報
8 固定局アンテナ(地上に設置したRTKアンテナ)
9 衛星
10 風力発電装置
11 タワー
12 ナセル
13 ロータ軸
14a ブレード
14b ハブ
15 発電機
16 発電機制御装置
17 レセプタ
18 引き下げ導線
19 接地線
20 電力線
A アンテナ
L 支持棒
G ガイドフレーム
N 保護ネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6