(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】車両搬送装置
(51)【国際特許分類】
B60P 3/075 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B60P3/075
(21)【出願番号】P 2020061916
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】518316114
【氏名又は名称】株式会社アーミス
(73)【特許権者】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】朝間 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達之
(72)【発明者】
【氏名】泉 立哉
(72)【発明者】
【氏名】桑原 唯
(72)【発明者】
【氏名】田中 孔明
(72)【発明者】
【氏名】東 竜也
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特許第3388036(JP,B2)
【文献】特開2011-203797(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017209791(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第109339535(CN,A)
【文献】特開2019-111983(JP,A)
【文献】特開2000-072026(JP,A)
【文献】特開平11-334403(JP,A)
【文献】特開2009-083660(JP,A)
【文献】特開2016-049921(JP,A)
【文献】特開平07-172340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/06、3/07、3/075
B60K 7/00
B62D 11/00-11/24
B60S 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪が搭載される本体と、転舵軸を中心に回転可能な状態で前記本体に取り付けられた
左右の駆動輪と、前記駆動輪を軸心周りに回転駆動する駆動手段とを備えた車両搬送装置において、
前記
左右の駆動輪が、
それぞれ、同軸上に並べて配され、前記転舵軸を中心に一体に回転可能な一対の車輪からなり、
前記駆動手段が、前記一対の車輪を異なるトルクで回転駆動可能であり、
前記駆動輪を転舵するための専用の駆動手段が設けられておらず、
前記駆動手段により、前記一対の車輪を同方向に回転駆動しながら、各車輪のトルクを異ならせることにより、前記転舵軸を転舵する車両搬送装置。
【請求項2】
前記駆動手段が、各車輪の内周に設けたインホイールモータである請求項1に記載の車両搬送装置。
【請求項3】
前記本体に車両の左右の前輪のみ、あるいは、左右の後輪のみを搭載し、当該車両の他の車輪を接地させた状態で当該車両を搬送する請求項1又は2に記載の車両搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を自動で搬送する車両搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場で車両が完成したら、例えば大型の運搬車両に複数の完成車両が搭載され、車両待機場まで搬送される。この場合、運搬車両を運転する作業者が必要になるため、コストアップを招く。
【0003】
そこで、下記の特許文献1には、車両を自動で搬送する自走式の車両搬送装置が示されている。このような車両搬送装置を用いれば、工場と車両待機場との間で運搬車両を運転する作業者が不要となるため、低コスト化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような自走式の車両搬送装置には、通常、
図10に示すように、駆動輪101をその軸心周りに回転駆動する走行モータ102と、駆動輪101を操舵する操舵モータ103とが設けられる。このような走行モータ102及び操舵モータ103を設けることで、車両搬送装置の大型化及び高コスト化を招く。特に、車両搬送装置は、車両が搭載された状態で操舵する必要があるため、操舵モータ103の負担が大きく、出力が大きい操舵モータ103が必要となり、車両搬送装置のさらなる大型化及び高コスト化を招く。
【0006】
本発明は、自走式の車両搬送装置の小型化及び低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、車両の車輪が搭載される本体と、転舵軸を中心に回転可能な状態で前記本体に取り付けられた駆動輪と、前記駆動輪を軸心周りに回転駆動する駆動手段とを備えた車両搬送装置において、前記駆動輪が、同軸上に並べて配され、前記転舵軸を中心に一体に回転可能な一対の車輪からなり、前記駆動手段が、前記一対の車輪を異なるトルクで回転駆動可能である車両搬送装置を提供する。
【0008】
この車両搬送装置では、駆動輪を構成する一対の車輪を異なるトルクで回転駆動することで、駆動輪を転舵することができる。これにより、転舵専用の駆動手段(モータ等)が不要になるため、車両搬送装置の小型化及び低コスト化が図られる。
【0009】
駆動手段は、例えば、各車輪の内周に設けたインホイールモータで構成することができる。このように、車輪の内周のスペースに駆動手段(インホイールモータ)を配置することで、車両搬送装置のさらなる小型化が図られる。
【0010】
上記の車両搬送装置が、本体に車両の前輪又は後輪のみを搭載するものである場合、本体の前後方向寸法は車体のホイールベースよりも短くて済むため、車両搬送装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、自走式の車両搬送装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】工場からコンテナヤードまで車両を自動で搬送する自動搬送システムを示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る車両搬送装置の側面図である。
【
図5】上記車両搬送装置の駆動輪ユニットの断面図である。
【
図6】(A)は、上記車両搬送装置の補助輪付近の断面図であり、(B)は同平面図である。
【
図7】上記車両搬送装置がカーブしながら走行する様子を示す平面図である。
【
図8】コンテナヤードに配された車両及び上記車両搬送装置の平面図である。
【
図9】他の実施形態に係る車両搬送装置の駆動輪ユニットの模式図である。
【
図10】車両搬送装置の駆動輪、走行モータ、及び操舵モータを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の一実施形態に係る車両搬送装置1は、
図1に示すように、工場Fで完成した車両Cを、車両待機場であるコンテナヤードYに搬送するものである。車両搬送装置1は、システム制御部Sからの無線指令(点線矢印)に従って、工場FとコンテナヤードYとの間を往復する。本実施形態では、車両Cが前輪駆動車であり、車両Cの前輪のみを車両搬送装置1に搭載して搬送する場合を示す。
【0015】
車両搬送装置1は、
図2~4に示すように、車両Cの左右の前輪W1が搭載される本体2と、本体2の幅方向両側に設けられた駆動輪ユニット3と、システム制御部Sからの無線指令を受信する受信器4とを有する。尚、以下では、車両搬送装置1の各部を説明するにあたり、車両搬送装置1に搭載された車両Cの車幅方向(
図3及び
図4の左右方向)を「幅方向」と言い、車両Cの前方(
図2の左側、
図4の下側)及び後方(
図2の右側、
図4の上側)をそれぞれ「前方」及び「後方」と言う。
【0016】
図示例の本体2は、矩形の板状を成し、その上面には、車両Cの前輪W1の転がりを防止する車輪止め5が設けられる。また、本体2には、駆動輪ユニット3に電力を供給するバッテリー6と、駆動輪ユニット3を制御する制御部7とが搭載される。
【0017】
駆動輪ユニット3は、
図5に示すように、駆動輪9と、駆動輪9を軸心周りに回転駆動する駆動手段と、本体2に固定され、駆動輪9及び駆動手段を収容するケーシング13とを備える。
【0018】
駆動輪9は、同軸上に並べて配された一対の車輪10で構成される。一対の車輪10の外径は等しく、図示例では、同一の車輪10を軸心方向に対向させて使用している。
【0019】
駆動手段は、例えば、車輪10ごとに設けられたモータで構成され、本実施形態では、各車輪10の内周に配されたインホイールモータ11で構成される。インホイールモータ11の回転軸11aは、車輪10の軸心に固定される。各インホイールモータ11は、バッテリー6及び制御部7(
図4参照)と接続され、制御部7からの指令に基づいて回転駆動される。各インホイールモータ11の本体11bは、鉛直方向に延びる転舵軸12に固定される。転舵軸12は、ケーシング13に固定されたフレーム14に軸受15を介して回転自在に取り付けられる。転舵軸12を支持する軸受15は、ラジアル方向及びスラスト方向の荷重を支持するものであることが好ましく、例えば円すいころ軸受が使用される。以上により、一対の車輪10からなる駆動輪9が、本体2に対して転舵軸12を中心に一体に回転可能とされる。本実施形態では、駆動輪9が、転舵軸12を中心に360°回転可能とされる。
【0020】
受信器4は、システム制御部S(
図1参照)からの電波を受信可能な位置に設けられる。本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、ケーシング13の上面に受信器4が設けられる。受信器4は、例えば、各駆動輪ユニット3の上方に一個ずつ設けられる。受信器4は、制御部7と接続され、システム制御部Sからの指令を制御部7に伝達する。尚、受信機4を設ける場所は上記に限らず、例えば、支柱等を介して、本体2に搭載された車両Cの上面と略同じ高さに配してもよい。
【0021】
車両搬送装置1には、補助輪8が設けられる。補助輪8は、駆動輪9の軸心よりも前方あるいは後方に設けられ、図示例では、駆動輪9の軸心よりも前方に設けられる。補助輪8の数は特に限定されず、図示例では幅方向に離隔した2箇所に設けられる。補助輪8は、駆動輪9の車輪10よりも外径が小さい車輪で構成される。
【0022】
補助輪8は、軸心周りに回転自在で、且つ、鉛直方向の回転軸周りに回転自在な状態で、本体2に取り付けられる。具体的には、
図6(A)(B)に示すように、補助輪8の軸心に固定された回転軸31の両端が、ラジアル軸受32を介して回転板33に取り付けられる。回転板33は、スラスト軸受34を介して本体2に取り付けられる。これにより、補助輪8は、ラジアル軸受32により軸心周りに回転自在とされ、スラスト軸受34により鉛直方向の回転軸周りに回転自在とされる。
【0023】
本実施形態では、
図6(B)に示す平面視において、補助輪8の軸心L1及び軸心方向中央線L2が、スラスト軸受34の回転中心Oに対して、それぞれδ1、δ2だけオフセットしている。これにより、車両搬送装置1が走行したときに、補助輪8が、地面との摩擦により鉛直方向の回転軸(スラスト軸受34の回転中心O)周りに回転し、補助輪8の走行方向が車両搬送装置1の走行方向(すなわち、駆動輪9の走行方向)と略一致する。
【0024】
以下、上記の車両搬送装置1により車両Cを搬送する手順を説明する。
【0025】
まず、工場F(
図1参照)で、車両Cの前部を図示しないリフト手段で上昇させ、この状態で、車両Cの前部の下方に車両搬送装置1の本体2を潜り込ませる。そして、リフト手段で車両Cの前部を降下させ、左右の前輪W1を車両搬送装置1の本体2の上に搭載する。このとき、前輪W1を、車輪止め5の間に嵌まり込ませることで、前輪W1の前後移動が規制される(
図2参照)。尚、リフト手段は、工場Fに設けられたものであってもよいし、車両搬送装置1に搭載されたものであってもよい。
【0026】
車両搬送装置1の本体2に車両Cの前輪W1を搭載したときに、前輪W1の軸心が駆動輪9の軸心よりも後方に配されると、本体2が後側に傾く恐れがある。従って、前輪W1の軸心が駆動輪9の軸心よりも前方(補助輪8側)に配されるように、車輪止め5の位置を設定することが好ましい。一方、前輪W1の軸心が補助輪8に近すぎると、小径な補助輪8に過大な荷重が加わるため、前輪W1の軸心は駆動輪9の軸心寄りの位置に設けることが好ましい。具体的には、前輪W1の軸心を、駆動輪9と補助輪8の前後方向中央よりも後方に配することが好ましく、駆動輪9の前端よりも後方に配することがより好ましい。
【0027】
こうして、車両Cの前輪W1(駆動輪)を車両搬送装置1に搭載し、後輪W2(従動輪)を接地した状態で、車両搬送装置1を駆動して車両Cを搬送する(
図1の矢印P1参照)。具体的には、システム制御部Sからの指令を車両搬送装置1の受信器4(
図2及び
図3参照)が受信し、この指令が制御部7に伝達され、この指令に従って制御部7が各駆動輪9の駆動手段(インホイールモータ11)を駆動する。
【0028】
ここで、車両搬送装置1を走行させる際の駆動輪9の制御を、
図7を用いて説明する。尚、
図7では、車両搬送装置1を簡略化して示しており、左側の駆動輪を「9L」、右側の駆動輪を「9R」と表し、各駆動輪9L、9Rの左側の車輪を「10L」、右側の車輪を「10R」と表している。また、
図7中、四角で囲んだ数字は、各車輪10L、10Rのトルクの大きさを表している。
【0029】
車両搬送装置1を直進させるときは、
図7(A)に示すように、左右の駆動輪9L、9Rの各車輪10L、10Rが同じトルクで駆動されるように、各インホイールモータ11が制御される。図示例では、全ての車輪10L、10Rのトルクが「8」に設定される。
【0030】
そして、
図7(B)に示すように、車両搬送装置1がカーブの入口に差し掛かったら、各駆動輪9L、9Rの右側の車輪10Rのトルクが左側の車輪10Lのトルクよりも大きくなるように、各インホイールモータ11が制御される。図示例では、各駆動輪9L、9Rの右側の車輪10Rのトルクが「8」、左側の車輪10Lのトルクが「7」に設定される。これにより、
図7(B)に矢印で示すように、各駆動輪9が本体2に対して転舵軸12(
図5参照)を中心に回転し、直進方向から左側に操舵される(点線参照)。
【0031】
そして、カーブの途中では、
図7(C)に示すように、右側の駆動輪9Rのトルクを左側の駆動輪9Lのトルクよりも大きくすることで、車両搬送装置1が左側にカーブしながらスムーズに走行する。このとき、各駆動輪9L、9Rの両車輪10L、10Rのトルクを略等しくすることで、各駆動輪9L、9Rの操舵角が固定される。図示例では、左側の駆動輪9Lの両車輪10L、10Rのトルクが「7」、右側の駆動輪9Rの両車輪10L、10Rのトルクが「8」に設定される。尚、車両搬送装置1がカーブすると、従動輪8が地面との摩擦により鉛直方向の回転軸周りに回転して、車両搬送装置1の走行方向に追従する。
【0032】
そして、カーブの出口に差し掛かったら、
図7(D)に示すように、各駆動輪9L、9Rの左側の車輪10Lのトルクが右側の車輪10Rのトルクよりも大きくなるように、各インホイールモータ11のトルクが制御される。図示例では、各駆動輪9L、9Rの左側の車輪10Lのトルクが「8」、右側の車輪10Rのトルクが「7」に設定される。これにより、
図7(D)に矢印で示すように、各駆動輪9L、9Rが右側に操舵されて、直進方向に戻る(点線参照)。
【0033】
その後、
図7(E)に示すように、全ての車輪10L、10Rのトルクを等しくすることで、車両搬送装置1が直進する。図示例では、全ての車輪10L、10Rのトルクが「8」に設定される。
【0034】
以上のように、各駆動輪9を一対の車輪10で構成し、各車輪10のトルクを駆動手段(インホイールモータ11)で独立に制御することで、駆動輪9を操舵するための専用の駆動手段を設ける必要が無くなるため、車両搬送装置1の小型化及び低コスト化が図られる。また、駆動輪9は車両Cの重量により地面に強く押し付けられているため、駆動輪9を操舵するためには大きな駆動力が必要となるが、上記のように、駆動手段(インホイールモータ11)により一対の車輪10のトルクを異ならせて駆動輪9を操舵することで、例えば転舵軸12をモータ等の駆動手段で直接回転駆動する場合と比べて駆動手段の負荷が軽減される。
【0035】
こうして、車両搬送装置1が、システム制御部Sからの指令に従って所定の経路を走行し、コンテナヤードY内の所定位置まで車両Cを搬送する(
図8の矢印Q1参照)。そして、リフト手段で車両Cの前部を上昇させ、この状態で車両搬送装置1を前方に走行させて車両Cの下方から退避させる(
図8の矢印Q2参照)。その後、リフト手段で車両Cの前部を降下させ、前輪W1を接地させる。尚、リフト手段は、コンテナヤードYに設けられたものであってもよいし、車両搬送装置1に搭載されたものであってもよい。
【0036】
こうして車両Cから分離された車両搬送装置1は、コンテナヤードY内に配置された多数の車両Cの前後方向間に配置される。コンテナヤードY内では、車両Cはできる限り密に配置することが好ましいが、車両Cの前後方向間隔L2は車両搬送装置1の前後方向寸法L1に依存するため、車両搬送装置1の前後方向寸法L1はなるべく小さいことが好ましい。本実施形態では、車両搬送装置1が、車両Cの前輪W1のみを搭載するものであるため、車両搬送装置1の前後方向寸法L1は車両Cのホイールベースよりも短くて済み、例えば車両Cのホイールベースの1/2以下とすることができる。このため、車両Cの前後方向間隔L2を小さくすることができ、コンテナヤードY内に車両Cを密に配置することが可能となる。
【0037】
その後、車両搬送装置1をその場に停止させた状態で、インホイールモータ11により各駆動輪9の一対の車輪10を互いに逆向きに同トルクで回転駆動することにより、各駆動輪9をその場で90°転舵させる(
図8の点線参照)。その後、各駆動輪9の各車輪10を同方向に同トルクで回転させることにより、車両搬送装置1を幅方向(
図8の左右方向)に走行させる。車両搬送装置1が幅方向に走行し始めると、補助輪8が地面との摩擦により鉛直方向の回転軸周りに90°回転し、走行方向が幅方向となる(
図8の点線参照)。このとき、車両Cを搭載していない車両搬送装置1の重心が駆動輪9の軸心と補助輪8の軸心との前後方向間に配されるように、バッテリー6や制御部7等を配置することで、車両搬送装置1の走行を安定させることができる。以上により、車両搬送装置1が車両Cの前後方向間から退避される(
図1及び
図8の矢印P2参照)。
【0038】
車両搬送装置1が車両Cの間から抜け出したら、左右の駆動輪9を前後方向に転舵した後、それぞれ逆向きに回転駆動して、車両搬送装置1をその場で90°回転させる(
図1の点線参照)。そして、左右の駆動輪9を幅方向に転舵した後、両駆動輪9を同方向に駆動して、車両搬送装置1を工場Fまで走行させる(
図1の矢印P3参照)。そして、工場Fに戻ってきた車両搬送装置1に新たな車両Cを搭載して、コンテナヤードYまで搬送する。以上を繰り返すことにより、工場FからコンテナヤードYまで車両Cを自動で搬送することができる。
【0039】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
【0040】
図9に示す実施形態では、駆動輪9を駆動する駆動手段が、モータ21と、モータ21の回転駆動力を各車輪10に伝達する動力伝達機構とで構成される。具体的には、モータ21の回転駆動力が、回転軸23及び傘歯車24を介して車軸25に伝達される。車軸25のうち、傘歯車24と各車輪10との間にはそれぞれクラッチ22が設けられる。車軸25は、車軸ケース26に軸受27を介して回転自在に支持される。車軸ケース26は、上方に延びる筒部26aを有し、筒部26aの内周に軸受28を介して回転軸23が回転自在に取り付けられると共に、筒部26aが軸受29を介してケーシング13に回転自在に取り付けられる。車軸ケース26と車軸25との間には、ブレーキ30が設けられる。
【0041】
図9に示す駆動輪ユニット3では、モータ21を駆動すると、回転軸23、傘歯車24、及び車軸25を介して、一対の車輪10が回転駆動される。このとき、両クラッチ22をつなげていれば、一対の車輪10が同じトルクで回転駆動されるため、駆動輪9は転舵しない。一方、何れかのクラッチ22を切断すると、切断したクラッチ22側の車輪10のトルクが低下し、これにより両車輪10、車軸25及び車軸ケース26等がケーシング13に対して一体に回転し、駆動輪9が転舵される。また、一方のブレーキ30をかけて一方の車輪10のトルクを強制的に低下させることで、駆動輪9をより積極的に転舵することができる。
【0042】
また、上記の実施形態では、前輪駆動車の前輪のみを車両搬送装置1に搭載して搬送する場合を示したが、これに限られない。例えば、後輪駆動車を搬送する場合は、車両の後輪のみを車両搬送装置1に搭載し、前輪を接地させた状態で、車両を搬送してもよい。また、四輪駆動車を搬送する場合は、2台の車両搬送装置1を用いて、一方の車両搬送装置1に前輪を搭載し、他方の車両搬送装置1に後輪を搭載してもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、2個の駆動輪9と2個の補助輪8を設けた車両搬送装置1を示したが、これに限られない。例えば、本体2の幅方向中央に補助輪8を1個だけ設けたり、駆動輪9の前方及び後方に補助輪8を設けたりしてもよい。あるいは、2個の駆動輪9と、それよりも前方又は後方にさらに駆動輪9を設け、3輪駆動、あるいは4輪駆動としてもよい。あるいは、駆動輪9を1個としてもよく、例えば、本体2の幅方向中央に1個の駆動輪9を設け、その後方の幅方向両端付近に一対の補助輪8を設けてもよい。
【0044】
また、上記の車両搬送装置で搬送する車両は、完成車両に限らず、例えば、荷台を搭載する前のトラック等(いわゆる、架装前車両)を含む。
【符号の説明】
【0045】
1 車両搬送装置
2 本体
3 駆動輪ユニット
4 受信器
5 車輪止め
6 バッテリー
7 制御部
8 補助輪
9 駆動輪
10 車輪
11 インホイールモータ(駆動手段)
12 転舵軸
13 ケーシング
C 車両
W1 前輪
W2 後輪
F 工場
S システム制御部
Y コンテナヤード(車両待機場)