(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】金ナノ粒子担持粉体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/14 20220101AFI20240909BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20240909BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240909BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240909BHJP
C09C 1/00 20060101ALI20240909BHJP
C09C 1/02 20060101ALI20240909BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
B22F1/14 400
B01J19/08 K
A61K8/19
A61Q1/02
C09C1/00
C09C1/02
C09C3/06
(21)【出願番号】P 2020077857
(22)【出願日】2020-04-25
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591270556
【氏名又は名称】名古屋市
(73)【特許権者】
【識別番号】510223874
【氏名又は名称】公益財団法人名古屋産業振興公社
(72)【発明者】
【氏名】浅野 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岡寺 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】波多野 諒
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 信行
(72)【発明者】
【氏名】浅野 成宏
(72)【発明者】
【氏名】高島 成剛
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037537(JP,A)
【文献】特開2014-152391(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108115148(CN,A)
【文献】特開2017-203179(JP,A)
【文献】国際公開第2004/083124(WO,A1)
【文献】特開2008-071656(JP,A)
【文献】特開2018-193266(JP,A)
【文献】特開2014-097476(JP,A)
【文献】特開2016-027184(JP,A)
【文献】特開2014-009228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00-9/30
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C09C 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化金酸水溶液(3価の金)に多価アルコール又は糖アルコールを添加した混合水溶液に、金属酸化物、硫酸バリウムから選ばれる母粉体を加え、少なくとも二本の電極を混合水溶液の液面上部の気中に配置して、空気又は希ガス雰囲気下で電極間に電圧を印加して電極-液面間でプラズマを発生させることにより得られる金ナノ粒子担持粉体の製造方法。
【請求項2】
多価アルコール又は糖アルコールがグリセリンである請求項1記載の金ナノ粒子担持粉体の製造方法。
【請求項3】
母粉体が硫酸バリウムである請求項1又は2いずれか1項記載の金ナノ粒子担持粉体の製造方法。
【請求項4】
貯留槽内部の雰囲気が空気である請求項1~3いずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液面プラズマによる金ナノ粒子担持粉体の製造方法に関するものであり、色材として化粧品分野や塗料分野、さらには抗体反応性から医療分野での診断等に適用される。
【背景技術】
【0002】
抗菌性材料として用いられる銀ナノ粒子や銀イオンは、ナノ粒子の皮膚浸透や肺への曝露、銀イオンの溶出等により、生体への安全性が懸念され、欧州等ではその使用に制限が設けられている場合が多い。そのため、そのナノ粒子の懸念を払拭する材料形態やイオン化による溶出を抑制した材料の開発が重要である。
【0003】
これらのニーズから、ナノ粒子の材料形態については、サブミクロンやミクロンサイズの母粉体への固着化、又は他の粉体等との凝集体の形成が重要であり、そのイオン化による溶出に対しては、よりイオン化し難い金属、すなわち白金や金等への代替が考えられる。
【0004】
このような状況下、イオン化し難い金のナノサイズ粒子は、バルク体の金には見られないような化学的な活性を示し、触媒やバイオセンサー等の分野で利用されていることが知られている。また、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴による発色は、赤から紫色の鮮やかな色調を呈することが知られており、色材分野における利用も行われている。このため、良好な金ナノ粒子を生成して、安全性に対応した母粉体への固着化技術の確立が重要である。
【0005】
この金ナノ粒子を生成する方法としては、還元剤と分散剤を用いて金イオンの還元と生成した金粒子の保護を行う手法や、金イオンを含む水溶液中へのプラズマ放電による方法等が知られている。
【0006】
金イオンの還元による方法としては、水素化ホウ素アルカリ金属塩を還元剤として用いる手法がある(非特許文献1)。しかし、凝集しやすい微粒子である金ナノ粒子を安定的に分散させるためには、金と相互作用が強く、金表面に単分子膜を形成するチオールやポリビニルピロリドン等を保護剤として用いる必要がある。また、エタノール・水の混合溶媒中で加熱することで金イオンの還元を起こす方法もあるが、反応に長時間を要する(非特許文献2)。
【0007】
一方、純水中に一対の金属電極を配置し、プラズマ放電を行うことによって金ナノ粒子を生成する手法も報告されている(特許文献1)。しかし、この手法も生成した金ナノ粒子を分散安定化させるために、保護剤を使用するほか、電極が消耗するために製造効率が劣るという懸念がある。
【0008】
金ナノ粒子を幅広い分野で応用するためには、微細な金ナノ粒子を効率よく生成する必要がある。しかし、工業的にヒトに対して安全性が懸念されたり、金ナノ粒子の性能を低下させたりするような還元剤や分散剤、保護剤などを用いれば、最終的に金ナノ粒子を取り出すときに洗浄工程などの添加剤を取り除く工程を必要とする。また、表面プラズモン発色による鮮やかな赤色の色材として化粧品分野等への応用を考えれば、ヒトの皮膚等に刺激のある分散剤等の添加物を使用しないこと、ナノ粒子の飛散を抑えた担持物等であること、粒子径の制御により良好な発色が得られることが必要である。
【0009】
このうち、還元剤などの添加物のない条件で金属イオン水溶液に電子線を照射して金属ナノ粒子を得る電子線照射還元法も開発されているが、電子線照射装置は大掛かりであり、電子線を遮蔽する施設が必要で作業上、安全ではなく製造においても実用的とは言えない(特許文献2)。
【0010】
そこで、塩化金酸水溶液とアンモニア水溶液の混合水溶液に、金ナノ粒子を担持させる母粉体を加え、少なくとも二本の電極を混合水溶液の液面上部の気中に配置して、希ガスの雰囲気下で電極間に電圧を印加して電極-液面間でプラズマを発生させる簡便な装置により金ナノ粒子担持粉体を得る製造方法が開発されたが、化粧品原料として、さらに鮮やかな赤色の発色が望まれていた(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2016-27184
【文献】特許4069193
【文献】特願2018-165869
【非特許文献】
【0012】
【文献】M.Brust, M.Walker, D.Bethell, D.J.Schiffrin, R.Whyman, J.Chem.Soc.,Chem.Commun,p801~802(1994)
【文献】N.Toshima, K.Kushihashi,T.Yonezawa,H.Hirai, Chem.Lett.,18(10),p1769-1772(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のような背景から、本願発明が解決しようとする課題は、簡便な装置で、不純物が無く、より良い健康的な血色を表現できる鮮やかな赤色の色調の金ナノ粒子担持粉体を、効率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、塩化金酸水溶液(3価の金)に多価アルコール又は糖アルコールを添加した混合水溶液に、金属酸化物、硫酸バリウムから選ばれる母粉体を加え、少なくとも二本の電極を混合水溶液の液面上部の気中に配置して、空気又は希ガス雰囲気下で電極間に電圧を印加して電極-液面間でプラズマを発生させ、金ナノ粒子担持粉体を得る方法である。
図1は本願発明のプラズマ処理装置の基本構成を示す。
【0015】
本願発明では、
図1に示されるように塩化金酸水溶液を含む混合水溶液に電極が接触することがないため、放電による電極の劣化に伴う電極由来のコンタミネーションが少ない。さらに、複数の電極-液面間においてプラズマが発生するため、電極の一方を気中とし他方を水溶液中とするプラズマ発生方式や、水溶液中で一対の電極間でプラズマを発生させる方式と比較してより効率的なプラズマ処理が可能となる。
【0016】
本願発明では、
図2のように電源と一対の電極を複数に増やすことにより、また、
図1や
図2のバッチ処理の装置個数を増やすことで、効率よく金ナノ粒子担持粉体を得ることが可能になる。
【0017】
従って、本願発明のプラズマ処理装置では、電子線照射方式と比べて、安価で簡便であり、電子線を遮蔽する必要もないため安全に作業することができる。液中でプラズマを発生させる方法などに対して処理効率を上げることが容易である。
【0018】
本願発明で用いる電極については、その形状は特に規定しないが、針状、中空針状、線状、平板状等を用いることができ、その中でも、不平等電界が発生することで絶縁破壊電圧が低くなりプラズマを低電圧でも発生させやすくする針状のものが好ましい。また、電極の材質についても、安定した放電状態を維持できるものであれば良く、特に限定されない。白金、タングステン、銅、銅タングステン、銀、チタン、ステンレス、モリブデン、アルミ、鉄等の金属や合金、グラファイト等を用いることができ、また、電極の性能を向上させる目的でこれらの表面を異種材料によって被覆しても良い。
【0019】
本願発明において、プラズマの発生に使用する電源には、直流電源、パルス電源、低周波・高周波交流電源、マイクロ波電源等様々な方式を用いることができ、電源に応じて整流回路を組み合わせても良い。その中でも金ナノ粒子の生成効率を考慮すると、巻線式ネオン変圧器、整流回路を組み合わせたパルス電源、整流回路を組み合わせたインバータ式ネオン変圧器が良く、安価であることや利用しやすさから巻線式ネオン変圧器が最も良い。
【0020】
さらに、生成された金ナノ粒子が母粉体に担持する時間を考慮すると、電源をON/OFFする間欠方式でも良い。電源ON時に金ナノ粒子が生成され、電源OFF時に金ナノ粒子は成長せず、母粉体に担持する。また、間欠時間は任意で良いが、効率よく粒子生成と担持を行うために好ましくは0.01~1秒間隔が良い。パルス電源の場合は、パルス発生周波数よりの低い周波数でON/OFFすることで間欠方式とすることができる。
【0021】
本願発明のプラズマ発生方式において、液面上部の気中に配置した電極と液面との距離、気中に配置した電極の電極-電極間距離及び印加電圧については、電極-液面間で放電が起こる条件であれば良く、特に限定しない。気中の電極-電極間で放電が起こらない条件で行う。電極―液面間で放電を発生させうる電極-電極間距離Lと電極―液面間距離Dの関係については、好ましくはL>3Dが良い(電極の数が3つ以上である場合には、最短の異極性電極間の距離をLとし、最長の電極-液面間距離をDとする。)。気中に配置した電極と液面との距離は、通常は該電極が液面から僅かでも離れた状態であれば良く、0mmよりも大きく50mm以下の距離で行う。安定した放電状態が維持される範囲として、特にD=1~30mmが良い。また、気中に配置した各々の電極と液面の距離は、安定な放電を得るためにすべての電極のDが等しいことが好ましい。プラズマ発生に要する印加電圧は、電極の配置や電極の材質等により影響されるが、電源の経済性と安全性、電極の消耗等を考慮しながら10kV以下で行うのが好ましい。さらには電圧の印加のし易さから1~5kVが最も好ましい。
【0022】
本願発明では、プラズマを発生させる容器内部の雰囲気は、空気又は希ガスである。経済的な観点からすれば、貯留槽内部の雰囲気としては、空気又はアルゴンが好ましく、生成する金ナノ粒子担持粉体の鮮やかな赤色と経済性を考慮すると空気雰囲気が最も良い。
【0023】
本願発明では塩化金酸水溶液に多価アルコール又は糖アルコールを添加した混合水溶液に対してプラズマを照射するが、混合水溶液中の塩化金酸濃度(金イオン濃度)としては0.01~100mM(M=mol/L)が好ましく、電源の処理能力をもとにした収量の効率や金の価格を考慮したコストを考えると0.1~10mMがさらに良く、色調を考慮すると0.1~1.0mMが最も良い。
【0024】
本願発明では、混合水溶液に多価アルコール又は糖アルコールを添加するが、鮮やかな赤色の色調を得るためには、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、エリスリトールが好ましく、経済性を考慮すると最も好ましいのはグリセリンである。
【0025】
混合水溶液中の多価アルコール又は糖アルコール濃度は、仕込んだ塩化金酸濃度にも依存するが0.1~2Mが良く、好ましくは0.1~1Mが良い。
【0026】
塩化金酸水溶液と、多価アルコール又は糖アルコールを混合することで金ナノ粒子生成を効率良く行うことができるが、塩化金酸と、多価アルコール又は糖アルコールの仕込みの濃度比を限定すれば、塩化金酸と、多価アルコール又は糖アルコールの仕込みのモル比で、1:250~1:5000の範囲で行うのが良く、好ましくは1:500~1:3500が良い。
【0027】
本願発明では、プラズマを発生させる前に、多価アルコール又は糖アルコールを添加した混合水溶液に金ナノ粒子を担持させる母粉体を加える。プラズマ処理の前にこの混合水溶液に母粉体を加えることで、母粉体が金ナノ粒子生成の足場となり、金ナノ粒子の生成を促進させるとともに、金粒子同士の凝集を抑えて金ナノ粒子を母粉体に担持させることができる。
【0028】
本願発明での金ナノ粒子を担持させる母粉体には、金属酸化物、硫酸バリウムを用いることができる。中でも赤みの色調の鮮やかさから硫酸バリウムが最も好ましい。また、これら粉体の形状は、板状がより金ナノ粒子を担持しやすい。
【0029】
金ナノ粒子を担持させる母粉体の仕込み濃度としては、塩化金酸水溶液と多価アルコール又は糖アルコールの混合水溶液の重量に対して、0.5~20重量%であり、良好な分散状態で金ナノ粒子を担持させ鮮やかな赤色の色調を得るためには1~10重量%が好ましく、さらには1~5重量%が最も良い。
【0030】
以上の塩化金酸と母粉体の仕込み濃度から、最終的に得られる金ナノ粒子担持粉体の金ナノ粒子の被覆率は、鮮やかな赤色の色調と金ナノ粒子生成に掛かるコストを考慮すると、0.1~1.0重量%が好ましい。
【0031】
さらには、本願発明では、鮮やかな赤色の色調の金ナノ粒子担持粉体を得ることを目的としているが、人の健康的な血色の良さを表現できる、すなわち、酸素が多く結合したヘモグロビン(酸素化ヘモグロビン)のように赤みが高く黄みを若干含む色調の金ナノ粒子担持粉体を得るためには、混合水溶液の添加物としてグリセリン、母粉体として硫酸バリウムが最も好ましい。
【0032】
また、生成する金ナノ粒子の凝集抑制や母粉体の混合水溶液中での分散を行うために、機械的撹拌力を併用するのが好ましい。例えば、超音波分散機、マグネチックスターラー、プロペラ撹拌機、ディスパーミキサー、ホモミキサー等が利用できる。
【発明の効果】
【0033】
本願発明により製造される金ナノ粒子担持粉体は、電極等の装置由来の不純物が無く、また、添加物も化粧品原料として安全性の高いものが使用されて、その除去も容易である。このため、安全で低価格の化粧品原料や診断用材料の開発に貢献できる。さらに、母粉体を同時に添加して金ナノ粒子生成と母粉体への金ナノ粒子の担持をプラズマ処理によりワンステップで行うことができるため、工程が少なく製造コストの点でメリットがあり、さらには製造設備の簡便さや安全管理においても有利な製造方法といえる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、プラズマ処理装置の基本構成の概略図である。
【
図2】
図2は、電極を4対に増設したときのプラズマ処理装置の基本構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本願発明の金ナノ粒子担持粉体を得る方法、及び金ナノ粒子担持粉体について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
グリセリンを用いた混合水溶液でのプラズマ処理効果を検証するため、
図2を基本構成とするプラズマ処理装置で金ナノ粒子担持粉体を調製した。処理条件は表1に示した条件で行った。なお、他の処理条件として、電極は白金線(直径1.0mm)、貯留槽外側の恒温水槽の浴温は恒温水循環装置により制御、電源の巻線は巻線式ネオン変圧器(60Hz、レシップエルエスピー製)、電極-液面間の距離は約5mm、電源ごとの一対の電極を水槽の対角線上に約5cmに離して気中に配置、各電源の印加電圧は2.0kVで処理を行った。
<表1>
【実施例2】
【0037】
ソルビトールを用いた混合水溶液でのプラズマ処理効果を検証するため、表1に示した条件で実施例1と同様に行った。
【実施例3】
【0038】
エリスリトールを用いた混合水溶液でのプラズマ処理効果を検証するため、表1に示した条件で実施例1と同様に行った。
【実施例4】
【0039】
プロピレングリコールを用いた混合水溶液でのプラズマ処理効果を検証するため、表1に示した条件で実施例1と同様に行った。
【0040】
<比較例1~3>
多価アルコールや糖アルコールを用いた混合水溶液と、アンモニアや他のアルコールの混合水溶液でのプラズマ処理効果の違いを比較するため、表1に示した条件で比較例の実験を実施例1と同様に行った。比較例1はアンモニア、比較例2はエタノール、比較例3は2-プロパノールを用いた混合水溶液の例である。
【0041】
<金ナノ粒子の担持率の評価>
プラズマ処理により調製した金ナノ粒子担持粉体を含む水溶液を、シリンジフィルター(孔径0.2μm)を用いてろ過し、そのろ液を1M希塩酸で希釈してICP測定(誘導結合プラズマ発光分光分析)を行い、液中の金濃度[Au]Tを決定した。担持率は母粉体加える前の金の初濃度[Au]Oとして次式により求めた。
Au担持率(%)=100×(1-[Au]T/[Au]O)
【0042】
<金ナノ粒子担持粉体の色調評価>
プラズマ処理により調製した金ナノ粒子担持粉体を含む水溶液をメンブランフィルターでろ過し、水洗後乾燥して金ナノ粒子担持粉体を得た。その後、金ナノ粒子担持粉体をアイカラー化粧料用の中皿にプレスし、表面色を分光測色計SE7700(日本電色製)にて測定した。
【0043】
金ナノ粒子の色は20nm程度の小さな単分散の金ナノ粒子の場合、表面プラズモン共鳴現象によって、青から緑の領域の光が吸収されて赤色が反射されるため、やや黄みがかった赤色の発色が得られる。粒径が大きくなると、吸収に関する表面プラズモン共鳴の波長は、長波長の赤色側にシフトするので、赤色が吸収されて青色が反射されるため、徐々に青みが増して紫色に近づいていく。
【0044】
また、化粧品原料の色材として健康的な血色の良さを表現できるよう、酸素の結合が少ないヘモグロビン(脱酸素化ヘモグロビン)のように暗い赤色ではなく、酸素が多く結合した酸素化ヘモグロビンのような赤みが高く黄みを若干含む鮮紅色の金ナノ粒子担持粉体を本願発明では目指した。
【0045】
このため、本願発明では金ナノ粒子担持粉体の色調評価では、分光測色で得られるデータのうち、L*a*b*表色系のa*とb*に着目して評価した。すなわち、a*がプラスの方向になるほど赤みが強くなり、マイナスの方向になるほど緑みが強くなり、またb*がプラスの方向になるほど黄みが強くなり、マイナスの方向になるほど青みが強くなることから、金ナノ粒子の色調の特性と血色に拘った色調をめざし、評価の基準を設定した。
【0046】
すなわち、
1)a*はプラスで高い数値のものが良い。
2)b*は青みが増して暗い赤色になることを考慮してマイナスの方向は好ましくない。
3)目視の色調判断から色調の判定は、数値の絶対値の変動が大きく赤みの指標であるa*を重視する。
として評価の基準を設定した。
【0047】
このため、評価では分光測色計のa*値とb*値に着目して評価した。表1の下段には各実施例及び比較例の粉体のa*値とb*値を示した。
【0048】
本願発明の検討では、先行の特許文献3の技術であるアンモニアを用いた比較例1の色調を、判定の基準として設定した。比較例1はa*値は5.04で赤みであるがb*値が-1.05とマイナス値になり青みが入った暗い紫色に近づいた色調であった。
【0049】
これに対し、グリセリンを用いた実施例1は、a*値が8.75と赤みの指標が1.7倍にも増加し、しかもb*値がプラスの1.59で暗さの解消された鮮やかな赤色を示した。
【0050】
同様に、ソルビトールを用いた実施例2、エリスリトールを用いた実施例3、プロピレングリコールを用いた実施例4のいずれも、2倍近くの赤みの増加と青みのない鮮やかな赤色を示した。
【0051】
一方、エタノールを用いた比較例2と2-プロパノールを用いた比較例3では、比較例1よりも赤みは増すものの、b*値がマイナスになり青みは解消されず暗い赤色の色調であった。従って、ヒドロキシ基を有する化合物であっても1価のアルコールは、青みが入った暗い色調になり、健康的な酸素化ヘモグロビン様の色調は得られにくいことが判った。
【実施例5】
【0052】
次に、母粉体の種類を変更して検討した。実施例5では、グリセリンを用いて行った実施例1の母粉体を板状アルミナから板状硫酸バリウムに変更して行った。
【実施例6】
【0053】
また、同様に実施例6もソルビトールを用いて行った実施例2の母粉体を板状アルミナから板状硫酸バリウムに変更して行った。表2には、プラズマ処理条件と色調の結果を示した。
<表2>
【0054】
実施例5と実施例6は母粉体を板状硫酸バリウムに置き換えて金ナノ粒子担持粉体を調製したが、グリセリン混合水溶液系でもソルビトール混合水溶液系でも板状アルミナの時よりもa*値が増加して赤みが増し、さらには基準としていた比較例1のa*値よりも2倍以上の数値が得られ鮮やかな赤色を示した。また、母粉体を板状硫酸バリウムにした場合、b*値もプラス方向に増加して、黄みの増した酸素化ヘモグロビンの鮮紅色に近づいていることを目視で確認した。従って、母粉体として、板状硫酸バリウムが好ましことが確認でき、a*値から板状硫酸バリウムが母粉体の時はソルビトールよりもグリセリンの方が高い値を示し好ましいことが判る。
【実施例7】
【0055】
実施例7では、製造コストを考慮して、実施例5のアルゴン雰囲気下での実験から空気雰囲気に変更して行った。
【実施例8】
【0056】
また、実施例8では、実施例7の連続的にプラズマを発生させる方法から、0.1秒の間欠放電に、さらに変更して電源の依存性を実施例8では検討した。表3には、この実施例7及び8のプラズマ処理条件と結果を示した。なお、色調は赤みの変化であるa
*値の変化量に着目した。
<表3>
【0057】
実施例7の空気雰囲気下のプラズマ処理では、比較例1のa*値よりも3倍近い数値が得られ、極めて赤みの高い鮮やかな色調を示した。また、空気雰囲気下で間欠放電とした実施例8も同様に2.7倍もの高い赤みを示すことが判った。従って、コストを考慮し赤みを高める方法として、空気雰囲気下での放電や間欠放電が好ましい。
【実施例9】
【0058】
実施例9は、調製できる金ナノ粒子担持粉体の量を増やすために、実施例5の条件から塩化金酸と母粉体の板状硫酸バリウムの両方の濃度を2倍の濃度に増加させて実験を行った。
【実施例10】
【0059】
実施例10は、調製できる金ナノ粒子担持粉体の量を増やすために、実施例5の条件から塩化金酸と母粉体の板状硫酸バリウムの両方の濃度を4倍の濃度に増加させて実験を行った。
【実施例11】
【0060】
実施例11は、実施例5から母粉体の板状硫酸バリウムの量のみを2倍に増やして調製し、色調の変化を確認した。
【0061】
実施例12は、実施例7から塩化金酸の濃度を2倍にして調製し、色調の変化を確認した。表4には、これら実施例9~12までのプラズマ処理条件と結果を示した。
なお、色調は赤みの変化であるa
*値の変化量に着目した。
<表4>
【0062】
実施例9及び10の結果から、a*値が比較例1のa*値の値よりも2倍以上の赤みを示し良好な色調であった。実施例10では実施例9よりもa*値の値が若干下がり、仕込みの塩化金酸の濃度は適切な濃度で抑えることが好ましく、試験した実施例の実績から、0.1~1.0mMが最も好ましいことが示唆された。
【0063】
実施例11では、a*値が比較例1のa*値よりも約2倍の赤みを示し良好な色調であったが、母粉体が増えたことで赤みの低下傾向が認められた。
【0064】
実施例12では、仕込みの塩化金酸の濃度の実施例7から増やしたことによりa*値の増強が認められ、a*値の値が基準とした比較例1のa*値よりも3倍以上の極めて赤みの高い金ナノ粒子担持粉体が得られた。
【0065】
従って、実施例11及び12の結果から、仕込みの塩化金酸濃度と母粉体の濃度を調整して、最終的に得られる金ナノ粒子担持粉体の金ナノ粒子の被覆率を0.1~1.0重量%にすれば、色調的にもコスト的にも好ましいものが得られると判断した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本願発明を用いることにより、簡便な装置で、不純物が無くより一層鮮やかな赤みの色調の金ナノ粒子担持粉体を効率良く生成することができる。また、金ナノ粒子の生成と母粉体への担持をワンステップで行うため、製造工程が少なくなり、コスト面でもメリットがある。本願発明の技術は金属酸化物や硫酸バリウム等の粉体に対する金ナノ粒子の担持のほか、セラミックス成形品に対する金属ナノ粒子の担持処理による触媒性能の付与や抗体反応の指示薬などとしての使用が想定され、化粧品だけでなく幅広い分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 被処理液体を入れる貯留槽
2 被処理液体
3 電源
4 液面上部の気中に設置した電極
5 絶縁管
6 プラズマ
7 空気又は希ガス
8 恒温水
9 水槽
10 撹拌機