(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】生理痛記録体験方法、生理痛記録装置、制御サーバ、生理痛体験装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20240909BHJP
G06F 3/0484 20220101ALI20240909BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240909BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20240909BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G06F3/0484
A61B5/00 D
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2023213339
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2024-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521036447
【氏名又は名称】大阪ヒートクール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(72)【発明者】
【氏名】伊庭野 健造
(72)【発明者】
【氏名】菅原 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克成
(72)【発明者】
【氏名】和泉 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉國 聖乃
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0280791(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101939049(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109498254(CN,A)
【文献】Chihiro Asada, 外6名,Electrical Muscle Stimulation to Develop and Implement Menstrual Simulator System,Journal of Robotics and Mechatronics,2021年10月20日,Vol. 33, No. 5,p. 1051 - 1062
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00
G06F 3/0484
A61B 5/00
G16H 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ人体に貼付される複数の電極パッドに接続されるコンピュータによって実行される生理痛記録体験方法であって、
タッチ面上で検出される第1のジェスチャーにより第1の波形を記録するステップと、
記録した前記第1の波形に基づいて前記複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御しつつ、タッチ面上で検出される第2のジェスチャーにより第2の波形を記録するステップと、
前記第2の波形から前記第1の波形を減ずることによって得られる差分を前記第1の波形から減じてなる調整後波形に基づいて前記複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御するステップと、
を含む生理痛記録体験方法。
【請求項2】
前記第1の波形、前記第2の波形、前記調整後波形はそれぞれ、前記電気信号の波形を示す一連の数値により記録される、
請求項1に記載の生理痛記録体験方法。
【請求項3】
前記一連の数値はそれぞれ、前記電気信号の波形を示すパラメータである、
請求項1に記載の生理痛記録体験方法。
【請求項4】
それぞれ人体に貼付される複数の第1の電極パッドに接続される生理痛記録装置であって、
タッチ面上で検出される第1のジェスチャーにより第1の波形を記録し、
記録した前記第1の波形に基づいて前記複数の第1の電極パッドに与えられる電気信号を制御しつつ、タッチ面上で検出される第2のジェスチャーにより第2の波形を記録する、
生理痛記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の生理痛記録装置と通信可能に構成される制御サーバであって、
前記第1の波形を示す一連の数値及び前記第2の波形を示す一連の数値を前記生理痛記録装置から受信し、
前記第2の波形から前記第1の波形を減ずることによって得られる差分を前記第1の波形から減じてなる調整後波形を導出し、第1のユーザに対応付けて記憶する、
制御サーバ。
【請求項6】
それぞれ人体に貼付される複数の第2の電極パッドに接続されるとともに、請求項5に記載の制御サーバと通信可能に構成される生理痛体験装置であって、
ユーザによる前記第1のユーザの指定を受け付け、
指定された前記第1のユーザの前記調整後波形を前記制御サーバから取得し、
取得した前記調整後波形に基づき、前記複数の第2の電極パッドに与えられる電気信号を制御する、
生理痛体験装置。
【請求項7】
それぞれ人体に貼付される複数の電極パッドに接続されるコンピュータに、
タッチ面上で検出される第1のジェスチャーにより第1の波形を記録するステップと、
記録した前記第1の波形に基づいて前記複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御しつつ、タッチ面上で検出される第2のジェスチャーにより第2の波形を記録するステップと、
前記第2の波形から前記第1の波形を減ずることによって得られる差分を第1の波形から減じてなる調整後波形に基づいて前記複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理痛記録体験方法、生理痛記録装置、制御サーバ、生理痛体験装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
痛覚を再現することにより、実際には体験していない痛みを体験可能とする装置が知られている。特許文献1には、そのような装置の例が開示されている。同文献の技術によれば、被験者は、交通事故、グラインダー事故、仮設分電盤撤去中の感電事故、暗闇での開口部転落事故などの様々な事故において発生する痛覚を疑似体験することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人間が感じる痛みの1つに「生理痛」がある。この女性のみが感じる痛みである「生理痛」を男性に体験させることができれば、男女の相互理解を促進することができると考えられる。
【0005】
しかしながら、生理痛の具体的な痛み方は人によって様々であるため、一律な痛みを与えるだけでは、男女の相互理解どころかすれ違いを促進するおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の目的の一つは、男女の相互理解を促進することのできる生理痛記録体験方法、生理痛記録装置、制御サーバ、生理痛体験装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による生理痛記録体験方法は、それぞれ人体に貼付される複数の電極パッドに接続されるコンピュータによって実行される生理痛記録体験方法であって、タッチ面上で検出される第1のジェスチャーにより第1の波形を記録するステップと、記録した前記第1の波形に基づいて前記複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御しつつ、タッチ面上で検出される第2のジェスチャーにより第2の波形を記録するステップと、前記第2の波形から前記第1の波形を減ずることによって得られる差分を前記第1の波形から減じてなる調整後波形に基づいて前記複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御するステップと、を含む生理痛記録体験方法である。
【0008】
本発明による生理痛記録装置は、それぞれ人体に貼付される複数の第1の電極パッドに接続される生理痛記録装置であって、タッチ面上で検出される第1のジェスチャーにより第1の波形を記録し、記録した前記第1の波形に基づいて前記複数の第1の電極パッドに与えられる電気信号を制御しつつ、タッチ面上で検出される第2のジェスチャーにより第2の波形を記録する、生理痛記録装置である。
【0009】
本発明による制御サーバは、上記生理痛記録装置と通信可能に構成される制御サーバであって、前記第1の波形を示す一連の数値及び前記第2の波形を示す一連の数値を前記生理痛記録装置から受信し、前記第2の波形から前記第1の波形を減ずることによって得られる差分を前記第1の波形から減じてなる調整後波形を導出し、第1のユーザに対応付けて記憶する、制御サーバである。
【0010】
本発明による生理痛体験装置は、それぞれ人体に貼付される複数の第2の電極パッドに接続されるとともに、上記制御サーバと通信可能に構成される生理痛体験装置であって、ユーザによる前記第1のユーザの指定を受け付け、指定された前記第1のユーザの前記調整後波形を前記制御サーバから取得し、取得した前記調整後波形に基づき、前記複数の第2の電極パッドに与えられる電気信号を制御する、生理痛体験装置である。
【0011】
本発明によるプログラムは、それぞれ人体に貼付される複数の電極パッドに接続されるコンピュータに、タッチ面上で検出される第1のジェスチャーにより第1の波形を記録するステップと、記録した前記第1の波形に基づいて前記複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御しつつ、タッチ面上で検出される第2のジェスチャーにより第2の波形を記録するステップと、前記第2の波形から前記第1の波形を減ずることによって得られる差分を第1の波形から減じてなる調整後波形に基づいて前記複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生理痛の痛みを女性ごとに記録し、それを男性に体験させることができるので、男女の相互理解を促進することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態による生理痛記録体験システム1の全体構成を示す図である。
【
図2】
図1に示したユーザ端末2、制御サーバ3、制御装置4のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】女性ユーザが使用する場合における生理痛記録体験システム1の処理フローを示す図である。
【
図4】女性ユーザが使用する場合における生理痛記録体験システム1の処理フローを示す図である。
【
図5】男性ユーザが使用する場合における生理痛記録体験システム1の処理フローを示す図である。
【
図6】
図1に示した制御サーバ3の記憶装置102によって取得又は記憶されるデータを示す図である。
【
図7】
図6に示す一連の数値により示される波形を波形として描画してなる図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態による生理痛記録体験システム1の全体構成を示す図である。同図に示すように、生理痛記録体験システム1は、ユーザ端末2、制御サーバ3、制御装置4、配線5、及び電極パッド6a,6bを有して構成される。
【0015】
生理痛記録体験システム1は、女性ユーザと男性ユーザの両方によって使用されるシステムである。ただし、女性ユーザと男性ユーザとでは、生理痛記録体験システム1の利用目的が異なる。女性ユーザは、自身の生理痛の痛みを波形として制御サーバ3内に記録するために、生理痛記録体験システム1を使用する。一方、男性ユーザは、女性ユーザが記録した波形によって示される痛みを体験するために、生理痛記録体験システム1を使用する。詳細については、後述する。
【0016】
ユーザ端末2は、生理痛記録体験システム1による生理痛体験を実現するために必要な各種の処理を行うためのアプリケーションソフトウェア(以下「端末アプリ」と称する)を実行するコンピュータであり、典型的にはスマートフォンによって構成される。ただし、ユーザ端末2がパーソナルコンピュータやタブレット端末など、他の種類のコンピュータであってもよいことは勿論である。
【0017】
端末アプリが行う上記各種の処理には、ユーザインターフェイスの表示、制御サーバ3との通信、制御装置4の制御などが含まれ、そのためにユーザ端末2は、制御サーバ3及び制御装置4と通信可能に構成される。ユーザ端末2と制御サーバ3の間の通信は、例えばインターネットであるネットワーク10を通じて実行され得る。ユーザ端末2とネットワーク10の間は、無線LANやモバイル通信ネットワークなどの無線通信ネットワークを通じて接続すればよい。ユーザ端末2と制御装置4の間の通信は、ブルートゥース(登録商標)や無線LANなどの近距離無線通信を用いて実行され得る。
【0018】
図1においてユーザ端末2の画面内に示している波形記録画面20は端末アプリによって表示されるユーザインターフェイスの一種であり、女性ユーザが自身の生理痛の痛みを波形として制御サーバ3内に記録する際に使用する画面である。この例による波形記録画面20は、「痛い」と「平常時」を結ぶ両方向矢印を有して構成される。女性ユーザは、この矢印に沿って所定のジェスチャー(例えば、スワイプ又はドラッグ。以下「記録用ジェスチャー」という)を行うことにより、生理痛の痛みを示す一連の数値(波形)を制御サーバ3内に記録する。詳細については、後述する。
【0019】
ここで、本実施の形態においては、生理痛の痛みを示す数値として、後述する電気信号(電極パッド6a,6bを通じてユーザに与えられる信号)の波形を示すパラメータを利用する。このパラメータは、電気信号の特性を変化させることによって程度又は種類の異なる痛みをユーザに与えられるものであればよく、例えば電気信号が正弦波信号である場合であれば、正弦波信号の周期、周波数、振幅、又は、これらの組み合わせなどであり得る。以下では、説明の簡単のため、電気信号が正弦波信号であり、生理痛の痛みを示す数値として該正弦波信号の周期を用いる場合を例に取って説明を続ける。この場合、数値が小さいほど、その数値により示される波形を有する電気信号を与えられたユーザの感じる痛みの程度が大きくなる。そこで端末アプリは、上記両方向矢印に沿って、指の位置が「痛い」に近い位置ほど小さい数値を、「平常時」に近い位置ほど大きい数値を対応付ける。そして、ユーザが記録用ジェスチャーを実行している間、ユーザの指の位置に対応する数値を逐次記録していくことにより、生理痛の痛みを示す一連の数値を記録するよう構成される。
【0020】
制御サーバ3は、ユーザ端末2への端末アプリの配信、ユーザごとの波形の記録、制御装置4の制御などを行うコンピュータであり、サーバ装置として機能する高性能コンピュータによって構成される。制御サーバ3による制御装置4の制御には、所定の利用時間外における各制御装置4の電源オフ、各制御装置4の動作時間の遠隔監視など、複数の制御装置4を同時に制御するための制御が含まれ、そのために制御サーバ3は、上記したようにユーザ端末2とネットワーク10を通じて通信可能に構成される他、制御装置4とも通信可能に構成される。制御装置4と制御サーバ3の間の通信は、ネットワーク10を通じて実行され得る。制御装置4とネットワーク10の間は、無線LANやモバイル通信ネットワークなどの無線通信ネットワークを通じて接続すればよい。端末アプリの配信は、制御サーバ3に代え、デジタルプラットフォームプロバイダーにより運営されているアプリケーション配信プラットフォームから行うこととしてもよい。
【0021】
制御装置4は、端末アプリの制御に従って電気信号(電流信号又は電圧信号)を生成し、配線5を介して電極パッド6a,6bに供給するコンピュータである。制御装置4を構成するコンピュータは、例えばラズベリーパイ(登録商標)などの簡易なコンピュータであってよい。
【0022】
電極パッド6a,6bは2枚一組で使用される電極セットであり、人体の胴体に貼付して用いられる。一例では、電極パッド6aが腹部、電極パッド6bが背中にそれぞれ貼付される。この場合、電極パッド6aと電極パッド6bの間に電気信号を流すことにより、電極パッド6a,6bの装着者に対し、腹痛及び腰痛を感じさせることが可能になるとともに、電極パッド6aと電極パッド6bの中間地点において、ファントムセンセーションとしての刺激を感じさせることも可能になる。他の一例では、
図1に示した例のように、電極パッド6a,6bが横方向に並んだ状態で腹部に貼付される。この場合、電極パッド6aと電極パッド6bの間に電気信号を流すことにより、電極パッド6a,6bの装着者に対し、上下方向に押し出されるような刺激、外側から内側に押し込まれるような刺激、腹部が左右に揺さぶられるような刺激を与えることが可能になる。
【0023】
電極パッド6a,6bの具体的な形状は、例えば5mm×9mmの長方形が好ましいが、他の形状、例えば丸、ひょうたん形、正方形などであってもよい。また、本実施の形態では一組の電極パッド6a,6bを用いる例を説明するが、二組以上の電極パッドを用いることとしてもよい。この場合、各組の電極パッドに異なる電気信号を与えられるように端末アプリ及び制御装置4を構成することとしてもよい。
【0024】
制御装置4、配線5、及び電極パッド6a,6bは、ユーザにより、1つのキットとして携帯可能に構成されることが好ましい。一例を挙げると、首から下げる、ボタンを用いて衣服に止める、ポケットやカバンに入れる、などの方法により携帯可能に構成されることが好ましい。また、制御装置4は、一次電池や二次電池などのバッテリにより駆動可能なものとし、このバッテリからの電力を用いて、ユーザ端末2(端末アプリ)との通信、電極パッド6a,6bへの電気信号の供給を行うことが好ましい。
【0025】
制御装置4は、生理痛を体験することについての同意を確認する機能を有し、この機能によってユーザの同意が確認されない限り、電極パッド6a,6bに対して電気信号を供給しないこととしてもよい。生理痛記録体験システム1はユーザに痛みを与えるものであることから、法律面、倫理面、安全面から、ユーザの同意が必要である。制御装置4に同意確認機能を設けることで、ユーザに現に痛みを与える前に、ユーザの同意を確認することが可能になる。この機能を端末アプリ側に設け、端末アプリによってユーザの同意が確認されない限り、端末アプリから制御装置4に対し、電極パッド6a,6bに電気信号を供給するよう指示しないこととしてもよい。同意確認機能の具体的な実装は特に限定されないが、制御装置4に同意確認用のハードボタンを設け、そのハードボタンの押下を確認することとしてもよいし、波形記録画面20内に同意確認用のコマンドボタンを設け、そのコマンドボタンの押下を確認することとしてもよいし、波形記録画面20内に同意確認用の署名欄を設け、その署名欄に何らかの署名がされたこと(端末アプリにログインしているユーザの署名を検証する機能を実装できる場合には、記入された署名とログインしているユーザの署名との一致が検出されたこと)を確認することとしてもよい。
【0026】
図2は、ユーザ端末2、制御サーバ3、制御装置4のハードウェア構成の一例を示す図である。ユーザ端末2、制御サーバ3、制御装置4はそれぞれ、図示した構成を有するコンピュータ100によって構成され得る。なお、制御サーバ3を構成するコンピュータ100は、複数のコンピュータの結合によって構成されるコンピュータであってもよい。
【0027】
図2に示すように、コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101、記憶装置102、入力装置103、出力装置104、及び通信装置105がバス106を介して相互に接続された構成を有している。
【0028】
CPU101は、コンピュータ100の各部を制御するとともに、記憶装置102に記憶される各種のプログラムを読み出して実行する装置である。また、記憶装置102は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの主記憶装置と、ハードディスクなどの補助記憶装置とを含み、コンピュータ100のオペレーティングシステムや各種のアプリケーションを実行するための各種のプログラム、及び、これらのプログラムによって利用されるデータを記憶する役割を果たす装置である。後述する各種フロー図に示す処理は、ユーザ端末2、制御サーバ3、及び制御装置4それぞれのCPU101が、それぞれの記憶装置102の中に記憶されているプログラムを実行することによって実現される。
【0029】
入力装置103は、外部からの入力を受け付けてCPU101に供給する装置であり、例えばキーボード、マウス、タッチパネルを含んで構成される。出力装置104は、CPU101の処理結果を外部に出力する装置であり、例えばディスプレイ、スピーカーを含んで構成される。制御装置4の出力装置104には、電極パッド6a,6bと接続するためのインターフェイスが含まれる。また、ユーザ端末2に実装される出力装置104の1つであるディスプレイは、同じくユーザ端末2に実装される入力装置103の1つであるタッチパネルと重ねて配置される。これによりユーザ端末2は、ユーザによるタッチ操作、及び、一連のタッチ操作により示されるジェスチャーを検出するためのタッチ面と、画像を表示するための表示面とを兼ねるパネル面を有している。
【0030】
通信装置105は、外部の装置と通信するための装置であり、CPU101の指示にしたがってデータの送受信を行う。ユーザ端末2、制御サーバ3、及び制御装置4はそれぞれ、この通信装置105を用いて、
図1に示したネットワーク10を含む他の装置との間で通信を行うよう構成される。
【0031】
図3及び
図4は、女性ユーザが使用する場合における生理痛記録体験システム1の処理フローを示す図である。一方、
図5は、男性ユーザが使用する場合における生理痛記録体験システム1の処理フローを示す図である。以下、これらの図を参照しながら、生理痛記録体験システム1が実行する処理について、詳しく説明する。
【0032】
初めに
図3を参照すると、同図に示す処理は女性ユーザのユーザ端末2(生理痛記録装置)で動作する端末アプリによって実行される処理であり、女性である第1のユーザが現に生理痛の痛みを感じているときに実行される。なお、
図3に示した各処理のうち破線で示した処理は、端末アプリ以外の主体によって実行される処理である。この点は、後述する
図4及び
図5においても同様である。
【0033】
図3の処理においては、まず初めに、端末アプリにより、女性である第1のユーザによるログインが受け付けられる(ステップS1)。ログインを受け付けた端末アプリは、ユーザ端末2における第1のユーザの指示に応じて、ユーザ端末2のタッチ面に波形記録画面20(
図1を参照)を表示する(ステップS2)。
【0034】
次に端末アプリは、所定の開始指示操作を検出したか否かを判定する(ステップS3)。開始指示操作は第1のユーザがユーザ端末2において行う操作であり、例えば、上述した記録用ジェスチャーの開始操作(すなわち、タッチ面への指先の接触)であってもよいし、波形記録画面20内に表示される開始ボタン(図示せず)のタップ操作であってもよい。端末アプリは、ステップS2において開始指示操作を検出していないと判定した場合にはステップS3を引き続き実行し(すなわち、開始指示操作の検出を待機し)、開始指示操作を検出したと判定した場合には、ステップS4に処理を移す。
【0035】
ここで、開始指示操作を行った第1のユーザは、その後、自身が現に感じている痛みの大きさ(ここでは、実際の生理痛の痛み)に従って、波形記録画面20上で記録用ジェスチャーを実行する。具体的には、痛みが大きくなってきた場合には、指先を「痛い」の方に移動させ、痛みが小さくなってきた場合には、指先を「平常時」の方に移動させる。
【0036】
ステップS4において端末アプリは、こうしてユーザが実行している記録用ジェスチャー(第1のジェスチャー)を検出し、検出した記録用ジェスチャーにより示される数値を記録することにより(すなわち、ユーザの指の位置に対応付けている数値を逐次記録していくことにより)、第1の波形を記録する。これにより、ステップS4において記録される第1の波形は、第1のユーザが感じている生理痛の痛みを表す波形となる。
【0037】
端末アプリは、ステップS4を実行しつつ、所定の終了指示操作を検出したか否かの判定も行う(ステップS5)。終了指示操作も第1のユーザがユーザ端末2において行う操作であり、例えば、記録用のジェスチャーの終了(すなわち、タッチ面からの指先の接触)であってもよいし、波形記録画面20内に表示される終了ボタン(図示せず)のタップ操作であってもよい。端末アプリは、ステップS5において終了指示操作を検出していないと判定した場合にはステップS4を引き続き実行し、終了指示操作を検出したと判定した場合には、ステップS6に処理を移す。
【0038】
ステップS6において端末アプリは、記録した第1の波形を第1のユーザの情報とともに制御サーバ3に送信する。制御サーバ3は、こうして受信した第1の波形を第1のユーザに対応付けて記憶する(ステップS7)。
【0039】
図6は、制御サーバ3の記憶装置102によって記憶されるデータを示す図である。制御サーバ3は、
図6に示すようなデータを女性ユーザごとに取得し、記憶するよう構成される。
【0040】
図3のステップS5において端末アプリが送信した第1の波形は、
図6の「第1の波形」欄に示されている。
図6から理解されるように、第1の波形は、時系列に並ぶ一連の数値によって表される。
【0041】
図7は、
図6に示す一連の数値により示される波形を波形として描画してなる図である。本実施の形態においては、上述したように各数値が正弦波信号の周期を表すものとなっていることから、
図6に記載した一連の数値に従うと、
図7に示すように、途中で周期が変化する正弦波信号の波形が描かれることになる。具体的には、時刻t0~t1では周期12200の正弦波信号が描かれ、時刻t1~t2では周期12100の正弦波信号が描かれ、時刻t0~t1では周期12321の正弦波信号が描かれ、時刻t0~t1では周期13000の正弦波信号が描かれることになる。
【0042】
次に
図4を参照すると、同図に示す処理も女性ユーザのユーザ端末2(生理痛記録装置)で動作する端末アプリによって実行される処理であり、
図3の処理を実行して制御サーバ3に保存された第1の波形を第1のユーザが検証するために実行される。
【0043】
図4の処理においても、まず初めに、端末アプリにより、女性である第1のユーザによるログインが受け付けられる(ステップS10)。ログインを受け付けた端末アプリは、制御サーバ3から第1のユーザの第1の波形を取得する(ステップS11)。ここで取得される第1の波形は、
図3のステップS6において端末アプリが制御サーバ3に送信したものであり、具体的には、
図6に例示した時系列に並ぶ一連の数値である。
【0044】
次に、第1のユーザが電極パッド6a,6b(第1の電極パッド)を自身の身体に装着し(ステップS12)、端末アプリは、ユーザ端末2における第1のユーザの指示に応じて、第1のユーザが装着した電極パッド6a,6bに接続されている制御装置4との通信を確立する(ステップS13)。この確立を行うため、端末アプリは、予め第1のユーザと対応付けて制御装置4のアドレス情報を記憶しておくこととしてもよい。
【0045】
続いて端末アプリは、ユーザ端末2における第1のユーザの指示に応じてユーザ端末2のタッチ面に波形記録画面20(
図1を参照)を表示し(ステップS14)、所定の開始指示操作を検出したか否かを判定する(ステップS15)。この開始指示操作の具体的な内容は、
図3のステップS3で検出の対象とした開始指示操作と同様でよい。端末アプリは、ステップS15において開始指示操作を検出していないと判定した場合にはステップS15を引き続き実行し(すなわち、開始指示操作の検出を待機し)、開始指示操作を検出したと判定した場合には、ステップS16に処理を移す。
【0046】
ステップS16において端末アプリは、ステップS12で取得した第1の波形に基づいて制御装置4を制御することによって、制御装置4から電極パッド6a,6bに与えられる電気信号を制御しつつ、タッチ面で検出される記録用ジェスチャー(第2のジェスチャー)により示される数値を記録することにより、第2の波形を記録する。ステップS16における制御の結果として、制御装置4から電極パッド6a,6bに対し、第1の波形で振動する正弦波信号である電気信号が供給されることになる。第2の波形の記録の具体的な方法は、
図3のステップS4における第1の波形の記録と同じ方法でよい。
【0047】
ここで、開始指示操作を行った第1のユーザは、その後、自身が現に感じている痛み(ここでは、電気信号により与えられる痛み)の大きさに従って、波形記録画面20上で記録用ジェスチャーを実行する。記録用ジェスチャーの具体的な実行方法も
図3の場合と同様であり、第1のユーザは、痛みが大きくなってきた場合には、指先を「痛い」の方に移動させ、痛みが小さくなってきた場合には、指先を「平常時」の方に移動させることになる。これにより、ステップS16において記録される第2の波形は、第1のユーザが感じている電気信号の痛みを表す波形となる。
【0048】
端末アプリは、ステップS16を実行しつつ、第1の波形を構成するすべての数値について、制御装置4の制御が完了したか否かを判定する(ステップS17)。端末アプリは、ステップS17において制御が完了していないと判定した場合にはステップS16を引き続き実行し、完了したと判定した場合には、ステップS18に処理を移す。
【0049】
ステップS18において端末アプリは、記録した第2の波形を第1のユーザの情報とともに制御サーバ3に送信する。制御サーバ3は、こうして受信した第2の波形を第1のユーザに対応付けて記憶するとともに、第2の波形から第1の波形を減ずることによって得られる差分を第1の波形から減じてなる調整後波形を導出し、第1のユーザに対応付けて記録する(ステップS19)。
【0050】
図6には、第2の波形、差分、及び調整後波形も示している。同図に示すように、これらの波形も、第1の波形と同様の時系列に並ぶ一連の数値によって表される。
図7には、第2の波形と調整後波形のそれぞれに対応する一連の数値により示される波形を波形として描画した結果も記載している。
【0051】
図6及び
図7に示した例では、時刻t2から時刻t3までの間で、第2の波形の数値が第1の波形の数値よりも11だけ大きくなっている。したがって、この例では、時刻t2から時刻t3までの間、第1の波形に従って作られた電気信号を与えられた第1のユーザは、第1の波形が実際の生理痛の痛みに基づいて記録されたものであるにも関わらず、実際の生理痛の痛みよりも小さな痛みしか感じなかったことになる。差分の数値は、そのような痛みの感じ方の差を表す数値となる。また、調整後波形は、女性ユーザが実際に感じる痛みをより忠実に再現できるよう、第1の波形を調整したものとなる。
【0052】
次に
図5を参照すると、同図に示す処理は男性ユーザのユーザ端末2(生理痛体験装置)で動作する端末アプリによって実行される処理であり、
図3及び
図4の処理を実行した結果として制御サーバ3に記録された調整後波形によって示される痛みを、男性ユーザに体験させるために実行される。
【0053】
図4の処理においては、まず初めに、端末アプリにより、男性である第2のユーザによるログインが受け付けられる(ステップS20)。ログインを受け付けた端末アプリは、生理痛を再現する女性ユーザの第2のユーザによる指定を受け付ける(ステップS21)。ここで指定の対象となる女性ユーザは、制御サーバ3に調整後波形が記録されているユーザである。端末アプリは、生理痛記録体験システム1における女性ユーザの識別番号(例えば、制御サーバ3が各女性ユーザに予め割り当てるもの)を第2のユーザに入力させることにより、生理痛を再現する女性ユーザを第2のユーザに指定させることが好ましい。
【0054】
ステップS21において女性ユーザの指定を受け付けた端末アプリは、指定された女性ユーザの調整後波形を制御サーバ3から取得する(ステップS12)。ここで取得される調整後波形は、
図4のステップS19において制御サーバ3が記録したものであり、具体的には、
図6に例示した時系列に並ぶ一連の数値である。
【0055】
次に、第2のユーザが電極パッド6a,6b(第2の電極パッド)を自身の身体に装着し(ステップS23)、端末アプリは、ユーザ端末2における第2のユーザの指示に応じて、第2のユーザが装着した電極パッド6a,6bに接続されている制御装置4との通信を確立する(ステップS24)。この確立を行うため、端末アプリは、予め第2のユーザと対応付けて制御装置4のアドレス情報を記憶しておくこととしてもよい。
【0056】
続いて端末アプリは、ステップS22で取得した調整後波形に基づいて制御装置4を制御することによって、制御装置4から電極パッド6a,6bに与えられる電気信号を制御する(ステップS25)。これにより、制御装置4から電極パッド6a,6bに対し、調整後波形で振動する正弦波信号である電気信号が与えられ、この電気信号が電極パッド6a,6bを通じて第2のユーザに与えられるので、第2のユーザは、調整後波形により示される生理痛の痛み(ステップS21で指定した女性ユーザが実際に感じる痛みを忠実に再現した痛み)を体験することになる。
【0057】
以上説明したように、本発明による生理痛記録体験システム1によれば、生理痛の痛みを女性ごとに記録し、それを男性に体験させることができるので、男女の相互理解を促進することが可能になる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0059】
例えば、上記実施の形態では、生理痛の痛みを記録する女性ユーザ自身が端末アプリにログインし、生理痛の痛みを体験する男性ユーザ自身が端末アプリにログインする例を説明したが、ログインするユーザと、生理痛の痛みを記録又は体験するユーザとが異なっていてもよい。こうすることで生理痛の痛みを記録又は体験するユーザをユーザ登録する手間が省けるので、例えば多数のユーザに順次記録又は体験を行ってもらう場合に、効率よく記録又は体験を進めることが可能になる。
【0060】
また、上記実施の形態では、女性ユーザによって記録される波形を制御サーバ3内に蓄積することとしたが、ユーザ端末2内に蓄積することとしてもよい。この場合、ユーザ端末2内に記録された調整後波形を体験するためにはそのユーザ端末2が必要になる一方で、制御サーバ3を用いない簡易な構成により生理痛記録体験システム1を構築することが可能になる。
【0061】
また、上記実施の形態では、生理痛を体験するユーザは男性ユーザであるとして説明したが、女性ユーザが体験してもよい。こうすることで、女性ユーザは、他の女性が経験する生理痛の痛みを体験し、それによって、他の女性との症状の違いを知ったり、自身の症状の度合いを判断(診断)することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
1 生理痛記録体験システム
2 ユーザ端末
3 制御サーバ
4 制御装置
5 配線
6a,6b 電極パッド
10 ネットワーク
20 波形記録画面
100 コンピュータ
101 CPU
102 記憶装置
103 入力装置
104 出力装置
105 通信装置
106 バス
【要約】
【課題】男女の相互理解を促進する。
【解決手段】それぞれ人体に貼付される複数の電極パッドに接続されるコンピュータによって実行される生理痛記録体験方法であって、タッチ面上で検出される第1のジェスチャーにより第1の波形を記録するステップと、記録した第1の波形に基づいて複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御しつつ、タッチ面上で検出される第2のジェスチャーにより第2の波形を記録するステップと、第2の波形から第1の波形を減ずることによって得られる差分を第1の波形から減じてなる調整後波形に基づいて複数の電極パッドに与えられる電気信号を制御するステップと、を含む。
【選択図】
図1