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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】レゾルバステータ巻線構造及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 24/00 20060101AFI20240909BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20240909BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H02K24/00
H02K3/52 E
H02K3/46 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020195764
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084117
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 綾一
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-162316(JP,A)
【文献】国際公開第2014/095880(WO,A2)
【文献】特開2017-034870(JP,A)
【文献】特開2020-162318(JP,A)
【文献】特開2018-068026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 24/00
H02K 3/52
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪状ステータ(1)の多数の突出磁極(2)に対し、輪状絶縁キャップ(3)及び前記輪状絶縁キャップ(3)に一体成形された渡り壁(5)を介して、ステータ巻線(6)を前記各突出磁極(2)の外周に巻回するようにしたレゾルバステータ巻線構造において、
前記渡り壁(5)の上部には、前記渡り壁(5)と一体に成形されたひさし部(10)が設けられ、前記ひさし部(10)は、前記ステータ巻線(6)の渡り線(6a)の前記渡り壁(5)からの離脱を防止し、前記ひさし部(10)の両側には、耳部(10b)が形成され、前記各耳部(10b)は、軸方向(P)に沿って前記渡り壁(5)の軸方向長さ分延び、前記輪状ステータ(1)の軸方向(P)に沿って見た時、前記各突出磁極(2)の前記ステータ巻線(6)の少なくとも一部に対して重合しており、径方向(R)に沿って見た時、前記各突出磁極(2)の前記ステータ巻線(6)の少なくとも一部に対して重合している構成したことを特徴とするレゾルバステータ巻線構造。
【請求項2】
輪状ステータ(1)の多数の突出磁極(2)に対し、輪状絶縁キャップ(3)及び前記輪状絶縁キャップ(3)に一体成形された渡り壁(5)を介して、ステータ巻線(6)を前記各突出磁極(2)の外周に巻回するようにしたレゾルバステータ巻線構造を用い、
前記渡り壁(5)の上部には、前記渡り壁(5)と一体に成形されたひさし部(10)が設けられ、前記ひさし部(10)は、前記ステータ巻線(6)の渡り線(6a)の前記渡り壁(5)からの離脱を防止し、前記ひさし部(10)の両側には、耳部(10b)が形成され、前記各耳部(10b)は、軸方向(P)に沿って前記渡り壁(5)の軸方向長さ分延び、前記輪状ステータ(1)の軸方向(P)に沿って見た時、前記各突出磁極(2)の前記ステータ巻線(6)の少なくとも一部に対して重合しており、径方向(R)に沿って見た時、前記各突出磁極(2)の前記ステータ巻線(6)の少なくとも一部に対して重合していることを特徴とするレゾルバステータ巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバステータ巻線構造及び方法に関し、特に、渡り壁の上部にひさし部を設けることにより、ステータ巻線の渡り線が渡り壁の上部から離脱することを防止することである。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバステータ巻線構造としては、本出願人が社内で製作した構成を図7及び図8で示し、特許文献1の図2で示される構成を図9として示している。
まず、図7及び図8で示される従来構成の場合、真円の内径を有する輪状ステータ1の内周には、所定角度毎に突出磁極2が内方でかつラジアル方向に向けて突出して形成されている。
【0003】
前記輪状ステータ1の内周縁及び前記突出磁極2を覆うために輪状絶縁キャップ3が設けられ、前記輪状絶縁キャップ3に一体に形成された渡り壁5は前記輪状ステータ1の軸方向Pと同一方向に延設されている。
前記渡り壁5は、前記各突出磁極2間に位置して設けられている。
【0004】
また、図9の突出磁極2の構成は、前述の特許文献1の図2に示されたものであり、図7及び図8で示す構成と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
前記突出磁極2の外周の外側に鍔部4が設けられ、前記突出磁極2の外周には、前記輪状絶縁キャップ3及び渡り壁5を介して、ステータ巻線6が巻回されている。
前記ステータ巻線6は、突出磁極2の外周に巻回された後、前記渡り壁5を介して、隣接する他の突出磁極2に巻回されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-068026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレゾルバステータ巻線構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図7及び図8で示される前述の渡り壁5の上部には、ステータ巻線6用のストッパーが形成されていないため、渡り線の数が増加してくると、上部に位置している渡り線が渡り壁5からこぼれて落下し、不良品となることもあった。
【0007】
また、レゾルバを装着した相手方の共振による断線、軸方向Pからの接触によるステータ巻線6の劣化、あるいは、渡り壁5に対する渡り線の数が多くなると、渡り線の渡り壁5からの離脱が発生し、突出磁極2の外周に所定数の巻き数を確保することが困難であった。
また、図9で示す従来構成においても、前述の図7及び図8で示される従来構成と同様の課題が存在していた。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、渡り壁の上部にひさし部を設けることにより、ステータ巻線の渡り線が渡り壁の上部から離脱することを防止するためのレゾルバステータ巻線構造及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるレゾルバステータ巻線構造は、輪状ステータの多数の突出磁極に対し、輪状絶縁キャップ及び前記輪状絶縁キャップに一体成形された渡り壁を介して、ステータ巻線を前記各突出磁極の外周に巻回するようにしたレゾルバステータ巻線構造において、前記渡り壁の上部には、前記渡り壁と一体に成形されたひさし部が設けられ、前記ひさし部は、前記ステータ巻線の渡り線の前記渡り壁からの離脱を防止するようにした構成であり、前記ひさし部の両側には、耳部が形成され、前記各耳部は、軸方向に沿って前記渡り壁の軸方向長さ分延び、前記輪状ステータの軸方向に沿って見た時、前記各突出磁極の前記ステータ巻線の少なくとも一部に対して重合しており、径方向に沿って見た時、前記各突出磁極の前記ステータ巻線の少なくとも一部に対して重合している構成であり、また、本発明によるレゾルバステータ巻線方法は、輪状ステータの多数の突出磁極に対し、輪状絶縁キャップ及び前記輪状絶縁キャップに一体成形された渡り壁を介して、ステータ巻線を前記各突出磁極の外周に巻回するようにしたレゾルバステータ巻線構造を用い、前記渡り壁の上部には、前記渡り壁と一体に成形されたひさし部が設けられ、前記ひさし部は、前記ステータ巻線の渡り線の前記渡り壁からの離脱を防止する方法であり、また、前記ひさし部の両側には、耳部が形成され、前記各耳部は、軸方向に沿って前記渡り壁の軸方向長さ分延び、前記輪状ステータの軸方向に沿って見た時、前記各突出磁極の前記ステータ巻線の少なくとも一部に対して重合しており、径方向に沿って見た時、前記各突出磁極の前記ステータ巻線の少なくとも一部に対して重合している方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるレゾルバステータ巻線構造及び方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、輪状ステータの多数の突出磁極に対し、輪状絶縁キャップ及び前記輪状絶縁キャップに一体成形された渡り壁を介して、ステータ巻線を前記各突出磁極の外周に巻回するようにしたレゾルバステータ巻線構造及び方法において、前記渡り壁の上部には、前記渡り壁と一体に成形されたひさし部が設けられ、前記ひさし部は、前記ステータ巻線の渡り線の前記渡り壁からの離脱を防止するようにした構造及び方法であるため、多数本の渡り線を渡り壁に案内しても、渡り線が従来のように離脱することはなく、ひさし部によって全て渡り部に保持され、高い歩留りを保持できる。
前記ひさし部の両側には、耳部が形成され、前記各耳部は、前記輪状ステータの径方向及び軸方向に沿って見た時、前記各突出磁極の前記ステータ巻線の少なくとも一部に対して重合している巻線構造及び方法であるため、巻線後のステータ巻線は、ひさし部及び耳部によって一部が覆われているため、外部からの人手や工具等がステータ巻線に接触することが殆んど防止され、レゾルバの組立後の歩留りを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態によるレゾルバステータ巻線構造の輪状絶縁キャップを示す斜視図である。
図2図1の輪状絶縁キャップを示す平面図である。
図3図2の要部の拡大平面図である。
図4図3のA-A断面図である。
図5図1及び図2で示す輪状絶縁キャップを輪状ステータの内側に装着した要部の斜視図である。
図6図5の要部の拡大斜視図である。
図7】従来のレゾルバステータ巻線構造の要部の斜視図である。
図8図7の全体構成を示す斜視図である。
図9】特許文献1の突出磁極の巻線構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるレゾルバステータ巻線構造及び方法は、渡り壁の上部にひさし部を設けることにより、ステータ巻線の渡り線が渡り壁の上部から離脱することを防止することである。
【実施例
【0013】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバステータ巻線構造及び方法の好適な実施の形態他について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において符号3で示されるものは、全体が射出成形機(図示せず)によって射出成形され、多数のキャップ片3aを輪状に接続したような形状からなる輪状絶縁キャップである。
【0014】
図1で示される輪状絶縁キャップ3は、輪状ステータ1に対して設けられるものであるが、ここでは輪状ステータ1のみを射出成形したものとして説明する。
図1の斜視図では、本発明の特徴である輪状絶縁キャップ3の各キャップ片3aの渡り壁5が全て確認できるわけでもないため、より分かりやすくするために、図2図3及び図4の図を開示している。
【0015】
図2では、前記各鍔部4間に前記渡り壁5が形成され、図3及び図4に示されるように、渡り壁5の上部に輪状ステータ1の外径に向けて突出するようにひさし部10が形成されている。
特に、図3では、前記輪状ステータ1に対して前記輪状絶縁キャップ3を装着又は一体モールド成形した状態を示し、前記鍔部4から突出磁極2の一部が内方へ突出し、渡り壁5の外側に前記輪状ステータ1の一部が周知のように露出している構成が開示されている。
【0016】
次に、図5及び図6は、前述の図3で示されるように、輪状ステータ1に輪状絶縁キャップ3が設けられたレゾルバステータ巻線構造20の一部を示している。
前記輪状ステータ1の各突出磁極2には、前記輪状絶縁キャップ3の鍔部4を介してステータ巻線6が巻回されており、このステータ巻線6が隣の突出磁極2に渡る時に、各突出磁極2間に位置する渡り壁5を通過する時のステータ巻線6が渡り線6aである。
【0017】
前記渡り線6aは、ステータ巻線6の他の形態、例えば、多相構成又は冗長構成のように、図4に示されている渡り壁5に沿って序々に上方へ行った場合でも、ひさし部10の内面10aを超えることはなく、安定して渡り線6aの保持を維持することができる。
【0018】
さらに、前記渡り壁5のひさし部10の両側に形成された耳部10bは、図3図5及び図6に示されるように、輪状ステータ1の径方向R及び軸方向Pに沿って見た時、各突出磁極2のステータ巻線6の少なくとも一部に対して重合している。
そのため、レゾルバを製作する時、搬送する時等において、外部からの人手あるいは工具等がステータ巻線6及び渡り線6aに対して接触しにくく、結果として、レゾルバ製作の歩留り向上、他部材への取付けの安全性の向上等を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるレゾルバステータ巻線構造及び方法は、渡り壁の上部にひさし部が形成されているため、ステータ巻線の巻回時の渡り線の離脱を防止することができ、レゾルバ製作の歩留りを従来よりも大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 輪状ステータ
2 突出磁極
3 輪状絶縁キャップ
3a キャップ片
4 鍔部
5 渡り壁
6 ステータ巻線
6a 渡り線
10 ひさし部
10a 内面
10b 耳部
20 レゾルバステータ巻線構造
P 軸方向
R 径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9