(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】ゆで卵移送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 17/12 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B65G17/12 K
(21)【出願番号】P 2020202650
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390010319
【氏名又は名称】株式会社石野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】関口 かおる
(72)【発明者】
【氏名】石野 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義晴
(72)【発明者】
【氏名】新村 武史
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208403141(CN,U)
【文献】実公昭31-002537(JP,Y1)
【文献】実開平01-155758(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106942640(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/00-17/48
A23L 15/00-15/10
A47J 29/00-29/06
A01K 1/00- 3/00
A01K 31/00-31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゆで卵を上方向に移送可能なゆで卵移送装置であって、
ゆで卵を移送する移送路の長手方向に向けて複数設けられ、駆動手段により上方向に移動可能な移送部材と、
前記移送路の外面側の少なくとも一部に設けられる開口部と、
ゆで卵を投入可能な投入部と、
前記投入部に投入されたゆで卵を前記開口部に向けて誘導する誘導部と、
前記誘導部による前記開口部へのゆで卵の誘導量を制限可能な制限部材と、
を備え、
前記誘導部により前記開口部へ誘導されたゆで卵は上方に移動する前記移送部材に供給され、
前記制限部材は、
前記移送部材の移動方向に沿って平行に延び、複数の前記移送部材のうち第1移送部材と該第1移送部材より上方の第2移送部材との離間寸法よりも長寸の上下寸法を少なくとも有しており、前記誘導部の上方において前記開口部に対向するように前記移送部材から外側に離れた位置に配置され、
前記移送部材の外面側の端部と前記制限部材との間に、ゆで卵が少なくとも上下方向に移動可能な空間部が設けられている
ことを特徴とするゆで卵移送装置。
【請求項2】
前記移送部材の外面側の端部と前記
制限部材との離間寸法は、少なくともゆで卵の横方向の長さ寸法よりも長寸である
ことを特徴とする請求項
1に記載のゆで卵移送装置。
【請求項3】
前記移送部材は、外面側の端部が下方に向けて折曲げて形成されている
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のゆで卵移送装置。
【請求項4】
前記移送部材は、幅方向に向けて延設され、複数個のゆで卵を載置可能な板状部材からなり、外面側の端部から内面側に向けて形成された切欠凹溝が、幅方向に向けて複数形成されている
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載のゆで卵移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゆで卵を上方向に移送可能なゆで卵移送装置に関する。
【0002】
従来、卵を扱う食品加工工場等において、茹で上がった大量のゆで卵の殻割りから殻剥きまでを一貫して行うことが可能なゆで卵加工装置等が使用されている。この種のゆで卵加工装置は、殻割り装置にて殻割り処理を経た後、ゆで卵を落下させて殻剥き装置にて殻割り処理が行われるため、殻剥き装置が上方位置に配設されることで、殻剥き装置にゆで卵を供給するためにゆで卵を一度上方向に移送する必要があった。
【0003】
ここで、ゆで卵を移送する移送装置として、例えば、
図9(a)に示すように、ゆで卵を上方向に移送する移送路030の長手方向に向けて複数設けられ、図示しない駆動手段により上方向に移動可能な移送部材05と、ゆで卵を投入可能な投入部02と、投入部02に投入されたゆで卵を誘導する誘導部022と、移送路030の外面を閉塞する板部材021と、を備えて、移送部材05に乗り移ったゆで卵が上方向に移送される移送装置01がある。これによれば、投入部02に投入された大量のゆで卵は、誘導部022に誘導され、板部材021により絞り込まれて形成された開口部Tにより誘導量が制限され、一斉に移送路030に入り込むことが防止されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような移送装置01では、
図9(a)に示されるように、ゆで卵が開口部Tから移送部材05に乗り移る際に、後続のゆで卵からの圧力を受けて移送部材05側に押し込まれるため、ゆで卵E5のように一部が開口部T側に突出した状態で上昇してしまうことがあり、このような場合、
図9(b)に示されるように、板部材021における開口部Tの上辺にゆで卵が接触し、さらには、上昇する移送部材05と開口部Tの上辺との間にゆで卵が挟まって殻にひびが入ったり、押し潰されて破損してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、大量のゆで卵を破損させることなくスムーズに上方向に移送させることができるゆで卵移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のゆで卵移送装置は、
ゆで卵を上方向に移送可能なゆで卵移送装置であって、
ゆで卵を移送する移送路の長手方向に向けて複数設けられ、駆動手段により上方向に移動可能な移送部材と、
前記移送路の外面側の少なくとも一部に設けられる開口部と、
ゆで卵を投入可能な投入部と、
前記投入部に投入されたゆで卵を前記開口部に向けて誘導する誘導部と、
前記誘導部による前記開口部へのゆで卵の誘導量を制限可能な制限部材と、
を備え、
前記誘導部により前記開口部へ誘導されたゆで卵は上方に移動する前記移送部材に供給され、
前記制限部材は、前記移送部材の移動方向に沿って平行に延び、複数の前記移送部材のうち第1移送部材と該第1移送部材より上方の第2移送部材との離間寸法よりも長寸の上下寸法を少なくとも有しており、前記誘導部の上方において前記開口部に対向するように前記移送部材から外側に離れた位置に配置され、
前記移送部材の外面側の端部と前記制限部材との間に、ゆで卵が少なくとも上下方向に移動可能な空間部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、投入部に大量のゆで卵が投入されても、制限部材による開口部へのゆで卵の誘導量が制限されることで、移送部材にゆで卵を適量ずつ供給できるとともに、移送部材の外面側の端部と制限部材との間にゆで卵が上下方向に移動可能な空間が設けられていることで、移送部材の外面側の端部から一部がはみ出したゆで卵や、開口部付近で滞留する移送待ちのゆで卵が移送部材により上方に押し上げられたときに、移送部材と制限部材との間に挟まれてひび割れたり押し潰されたりすることがないため、大量のゆで卵を破損することなく上方にスムーズに移送することができる。
【0008】
前記移送部材の外面側の端部と前記制限部材との離間寸法は、少なくともゆで卵の横方向の長さ寸法よりも長寸であることを特徴としている。
この特徴によれば、空間を最小限に抑えることができるため、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0009】
前記移送部材は、外面側の端部が下方に向けて折曲げて形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、誘導部により誘導されてきたゆで卵が移送部材の先端に衝突してひび割れたりすることを防止できる。
【0010】
前記移送部材は、幅方向に向けて延設され、複数個のゆで卵を載置可能な板状部材からなり、外面側の端部から内面側に向けて形成された切欠凹溝が、幅方向に向けて複数形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ゆで卵の一部が切欠凹溝に入り込むように載置されるため、ゆで卵を安定して移送できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係るゆで卵の移送装置、殻割り装置及び殻剥き装置からなるゆで卵加工装置を示す左側面図である。
【
図7】(a)は移送部材に載置された複数のゆで卵の配置態様の一例を示す一部拡大縦断面図であり、(b)は移送部材に載置された複数のゆで卵の配置態様の一例を示す一部拡大正面図であり、(c)はゆで卵を示す図である。
【
図8】(a)~(d)は、ゆで卵が移送される態様を示す移送装置の一部拡大概略縦断面である。
【
図9】(a)、(b)は、従来の移送装置によりゆで卵が移送される態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るゆで卵の移送装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例に係るゆで卵移送装置について、
図1~
図8を参照して説明する。なお、以下においては、
図1における紙面の右側をゆで卵移送装置を含むゆで卵加工装置の正面、紙面の左側をゆで卵加工装置の背面、紙面の正面側をゆで卵加工装置の左側面とし、紙面の上下をゆで卵加工装置の上下方向として説明する。
【0014】
図1に示されるように、ゆで卵加工装置10は、ゆで卵を上方向に移送するためのゆで卵移送装置1(以下、移送装置1と略称する)と、移送装置1により上方に移送されたゆで卵の殻割りを行うためのゆで卵殻割り装置11(以下、殻割り装置11と略称する)と、殻割り装置11により殻割りされたゆで卵の殻剥きを行うためのゆで卵殻剥き装置12(以下、殻剥き装置12と略称する)と、を有し、移送装置1は殻割り装置11に接続され、殻割り装置11は殻剥き装置12に接続されている。殻割り装置11は、殻剥き装置12より上方位置に配置されている。尚、
図1に示す実線矢印はゆで卵の移送経路、点線矢印は殻割りや殻剥き処理において供給される水の流水経路を示している。
【0015】
まず、ゆで卵加工装置10によるゆで卵の殻剥き処理工程の概要を、
図1に基づいて説明する。ゆで卵(殻付きのゆで卵)は、移送装置1の正面下部に設けられた投入部2に投入される。尚、ゆで卵は、作業者が手で投入部2に投入してもよいし、図示しない移送装置などにより投入されてもよい。投入部2に投入されたゆで卵は、移送装置1により上方に移送された後、背面上部に設けられた排出部15から排出され、殻割り装置11の正面上部に設けられた進入部16に誘導される。進入部16から殻割り装置11内部に進入したゆで卵は、背面側に向けて移送されながら殻割り処理が施された後、背面下部に設けられた排出部17から排出され、殻剥き装置12の正面側上部に設けられた進入部18に誘導される。進入部18から殻剥き装置12の内部に進入したゆで卵は、背面側に向けて移送されながら殻剥き処理が施された後、背面下部に設けられた排出部19から排出されて殻剥き処理が終了する。尚、殻剥き処理が終了して殻剥き装置12から排出されたゆで卵(殻無しゆで卵)は、殻剥き装置12に接続された移送装置12Aにて別個所まで移送され所定の処理(例えば、浸水、浸漬処理などなど)が行われる。
【0016】
図2及び
図3に示されるように、移送装置1は、縦長長方形状に形成された左側板3L、右側板3R、底板3Bにより、正面、背面及び上面が開放する箱状に形成された筐体3を備えており、筐体3の正面上部には、後述する移送部材5を縦方向に回転可能させるための駆動手段としてのモータ4が配置されている。モータ4は、左右方向を向く回転軸43と、該回転軸43の左端に固着された駆動スプロケット40と、を備えている。
【0017】
筐体3の内部上方位置には、左右方向を向く回転軸32が回転可能に配置されている。回転軸32の左端部は左側板3Lより外方に突出しており、該回転軸32の左端には従動スプロケット36が固着されているとともに、筐体3内部には、スプロケット36L、36Rが左右側に固着されている。また、筐体3の内部下方位置には、回転軸32に平行な回転軸33が回転可能に配置されており、その左右端部にはスプロケット31L,31Rが固着されている。上下のスプロケット36L,31Lと、スプロケット36R,31Rとには、環状に形成された無端チェーン34L,34Rがそれぞれ掛け渡されている。
【0018】
モータ4の駆動スプロケット40と従動スプロケット36とには、環状に形成された無端チェーン41が掛け渡されており、スプロケット42により張力を調整可能とされている。通電によってモータ4の回転軸43が回転すると、その回転力が駆動スプロケット40と無端チェーン41によって従動スプロケット36に伝達されて上部の回転軸32が回転し、これにより、回転軸32のスプロケット36L,36Rに接続された無端チェーン34L,34Rを介して下方のスプロケット31L,31R及び回転軸33が回転する。
【0019】
左右の無端チェーン34L,34Rには、ゆで卵を左右方向に複数載置させることができる移送部材5の左右端が接続金具50(
図6参照)を介して接続されており、移送部材5は、無端チェーン34L,34Rの回転方向、つまり、ゆで卵の移送方向(後述する移送路30の長手方向)に向けて所定間隔おきに配置されている。また、各移送部材5,5の間には、接続金具50を介して無端チェーン34L,34Rに左右端が接続された円柱状の棒部材51が2本ずつ左右方向に向けて配置されている(
図6参照)。
【0020】
図6に示されるように、移送部材5は、接続金具50が取付けられる板状の金属板からなり、無端チェーン34L,34Rに対し略平行をなす壁部5aと、該壁部5aの一端から外側(
図6においては正面側)に向けてゆで卵の移送方向(
図6においては上方)に傾斜するように延設される載置部5bと、該載置部5bの先端(外側の端部)からゆで卵の移送方向と逆方向(
図6においては下方)に向けて折曲げられた折曲部5cと、から構成されている。
【0021】
また、
図5に示されるように、移送部材5の載置部5bには、該載置部5bの先端(外側の端部)から内側(壁部5a側)に向けて延びる帯状の切欠凹溝55が、幅方向(左右方向)に向けて一定間隔おきに複数形成されており、載置部5bは平面視略櫛歯状に形成されている。
【0022】
これら複数の移送部材5及び複数の棒部材51は、それぞれ接続金具50を介して無端チェーン34L,34Rを構成する各リンク部材に接続され、移送部材5は、載置部5bは無端チェーン34L,34Rの外側に配置されている。よって、モータ4により無端チェーン34L,34Rが回転することで、複数の移送部材5は無端チェーン34L,34Rの外周を縦方向に周回する。そして、無端チェーン34L,34Rの外周のうち、移送部材5が上方向に移動する領域、つまり、
図2において回転軸32,33より右側(正面側)及び上部の領域が、ゆで卵を移送可能な移送路30となっており、特に移送路30における回転軸32,33より右側(正面側)の領域は、ゆで卵が上方に移送される上昇路となる。
【0023】
図3に示されるように、筐体3は、正面が開放されていることで移送路30の外面側には正面開口部が設けられており、この正面開口部の上部位置は、モータ4の取付板4aにより閉塞されているとともに、回転軸33よりやや上方の下部位置は、凹部20aが切欠形成された正面視凹状をなす取付板20により閉塞されている。つまり、取付板4aと取付板20との間及び取付板20の下方は開放されている。
【0024】
取付板20の外側には、上方が開放され複数のゆで卵を上方から投入可能な投入部2と、投入部2に投入されたゆで卵を、筐体3の正面開口部に向けて誘導する誘導部22と、誘導部22による正面開口部へのゆで卵の誘導量を制限可能な平板状の制限板21と、が配置される。
【0025】
詳しくは、
図2~
図6に示されるように、取付板20の正面には、凹部20aの左右側辺から外側に延設された左側板24L及び右側板24Rと、凹部20aの下辺から外側に向けて上方に傾斜するように延設された底板24Fとが取付けられており、これら取付板20、左側板24L、右側板24R及び底板24Fと、底板24Fの正面側の端辺に立設された立壁板24Hとにより、上方に開口するホッパーが筐体3から外側に突出するように形成されている。
【0026】
また、取付板20の外側近傍であって凹部20aの上部に対応する位置には、移送路30に対向するように、取付板20に対し略平行に制限板21が配置されている。詳しくは、制限板21は、左右端が左側板24Lと右側板24Rとに取付けられ、下端と底板24Fとの間にゆで卵が通過可能な通過口が形成されるとともに、背面と移送路30の各移送部材5の先端(折曲部5cの下端)との間にゆで卵が上下方向に移動可能な空間部X(
図6において網点で示す領域参照)が形成されるように配置されている。
【0027】
この制限板21と、該制限板21より外側の左側板24L、右側板24Rと、底板24F及び立壁板24Hとにより上方に開口する箱状の投入部2が形成される。この投入部2は、大量のゆで卵を投入可能な大きさとされている。また、底板24Fは、外側に向けて上方に傾斜するように配置されていることで、投入部2に投入されたゆで卵を自然流下により移送路30に向けて誘導する誘導部22を構成している。
【0028】
また、
図6に示すように、凹部20aにより形成される開口部の上下寸法R1に対し、制限板21の下端と底板24Fとの間に形成される通過口の上下寸法R2が短寸であることで(R1>R2)、投入部2に投入されたゆで卵が誘導部22により誘導される誘導量が制限されるようになっている。つまり、投入部2にゆで卵が大量に投入された場合、制限板21の下端より下方にあるゆで卵は、制限板21の下方の連通口から移送路30に向けて流出可能であるが、制限板21の下端より上方のゆで卵は連通口からの流出が規制されて制限板21近傍に滞留することで、投入部2からのゆで卵の流出量(流出数量)が制限されるため、大量のゆで卵が、筐体3の正面開口部のうち凹部20aに対応する開口部Sから複数段の移送部材5に一斉に進入することを防止できる。
【0029】
次に、
図7(c)を用いて、ゆで卵の寸法について説明する。本実施例において対象となるゆで卵Eのサイズは、所謂SS、S、MS、M、L、LLのうちMSやMとされ、長手方向(縦方向)の寸法L1が約5.0cm~6.0cm、短手方向(横方向)の寸法L2が約3.0cm~4.0cmの範囲の鶏の卵を基準として、移送部材5及び制限板21の配置関係を説明する。尚、上記M、L以外のサイズの卵や鶏以外の卵等のサイズの異なる卵の移送を目的とする場合は、卵のサイズに応じて各部材の配置関係を変更してもよい。また、本実施例のゆで卵は、固ゆで卵でも半熟ゆで卵でも良いこととする。
【0030】
図6及び
図7を用いて、移送部材5の寸法及び配置についてゆで卵Eの寸法と比較して説明する。移送部材5の壁部5aから折曲部5cの下端までの寸法P1は、ゆで卵Eの短手方向の寸法L2の約1.5倍となっている(P1>L2)。また、載置部5bに載置されたゆで卵Eは、
図7(a)に示されるように、背面側(内側)に向けて下方に向けて傾斜する載置部5bにより背面側に誘導され、左右方向に延びる棒部材51に当接することとなる。
【0031】
また、
図6に示されるように、折曲部5cの下端と、凹部20aにより形成される開口部Sまでの間には、折曲部5cの下端が取付板20に接触しないよう間隙D1が形成されている。すなわち、移送部材5の壁部5aから折曲部5cの下端までの寸法P1から、棒部材51の前後幅D2と、間隙D1との寸法を差し引いた寸法P2が実際にゆで卵Eを載置可能な寸法となっている。寸法P2は、ゆで卵Eの短手方向の寸法L2と略同寸もしくは僅かに幅広(P2≧L2)に形成されている。間隙D1は、ゆで卵の短手寸法L2よりも短寸とされ、取付板20と折曲部5cとの間にゆで卵が落下しないようになっている(D1<L2)。
【0032】
ここで、投入部2に投入されたゆで卵は、誘導部22により自然流下により誘導されるため、開口部Sを介して上方向に移動する移送部材5に供給されるときに、倒伏横向き姿勢、倒伏縦向き姿勢、起立姿勢などの様々な姿勢で乗り移ることになる。また、開口部S付近で移送部材5に乗り移れず滞留しているときに、上方に移動してくる移送部材5により上方に押し上げられたり、後続のゆで卵からの圧力により押し上げられて姿勢が変更することもある(
図8参照)。
【0033】
よって、
図7(a),(b)に示されるように、載置部5bに対して倒伏し、かつ、横向き姿勢(載置部5bの前後方向とゆで卵の横方向寸法L2とが略平行な姿勢)で載置されたゆで卵E1は、載置部5bの傾斜により背面側が棒部材51に支持された状態において、正面側が折曲部5cから外側に突出しないので、ゆで卵E1の重心位置が載置部5b上に位置する。
【0034】
また、
図7(b)に示されるように、移送部材5は、切欠凹溝55が幅方向(左右方向)に向けて複数形成されていることから、横向き姿勢に載置されたゆで卵E1の下面の一部が切欠凹溝55に入り込み、切欠凹溝55の左右側の縁辺の2点で支持されるため、安定して載置される。
【0035】
また、
図6に示されるように、寸法P2に間隙D1を加えた寸法は、ゆで卵の長手方向の寸法L1とほぼ同寸または寸法L1よりも僅かに幅広(P2+D1≧L1)に形成されている。よって、
図7(a),(b)に示されるように、載置部5bに対して倒伏し、かつ、縦向き姿勢(載置部5bの前後方向とゆで卵の縦方向の長手寸法L1とが略平行の姿勢)で載置されたゆで卵E4は、載置部5bの傾斜により背面側を棒部材51に支持された状態において、正面側が開口部Sよりも外側に突出しないので、ゆで卵E4の重心位置が載置部5b上に位置する。
【0036】
尚、
図7(b)に示されるように、ゆで卵が載置部5bに対して起立姿勢で載置された場合も、載置部5bの前後方向とゆで卵の横方向寸法L2とが略平行となるので、横向き姿勢と同じように折曲部5cから突出しないで載置される。また、載置部5bの左右側には、上下方向を向くガイド部材45L,45Rが配置されていることで、ゆで卵が倒伏し、かつ、縦向き姿勢(載置部5bの前後方向とゆで卵の縦方向の長手寸法L1とが略平行の姿勢)で載置されるときには、左右方向に一列状に載置できる数は最大で4個となる。また、ゆで卵が倒伏し、かつ、横向き姿勢(載置部5bの前後方向とゆで卵の横方向寸法L2とが略平行な姿勢)で載置されるときには、左右方向に一列状に載置できる数は3個以下となる。つまり、ゆで卵の載置部5bに対する姿勢に関わらず、載置部5bの左右方向に一列状に載置できる数は最大で4個となる。
【0037】
また、
図6に示すように、複数の移送部材5のうち一の移送部材5の折曲部5cの下端と該一の移送部材5より下方の移送部材5の載置部5bの先端との離間寸法C1は、ゆで卵の長手方向の寸法L1よりも長寸で、ゆで卵の長手方向の寸法L1と短手寸法L2とを加算した寸法より短寸とされていることで(L1<C1<L1+L2)、上下の移送部材5,5の間にゆで卵が上下2段状に載置されないようになっている。
【0038】
次に、移送部材5と制限板21との配置関係について説明する。
図7(b)に示されるように、本実施例では、所定数(例えば、1~4個)のゆで卵が載置部5b上に載置された後であっても、誘導部22に滞留しているゆで卵は後続のゆで卵からの圧力を受けることで、載置部5bに乗り移ってくる可能性がある。このような場合、ゆで卵E2,E3のように、折曲部5cの下端より外側に一部が突出するなど、不安定な態様で載置されることがある。
【0039】
そこで、
図6に示されるように、移送部材5の折曲部5cの下端から制限板21までの離間寸法P3は、少なくともゆで卵の横方向の寸法L2よりも大きく(具体的には約5.0cm)形成されている(P3>L2)。また、制限板21の上下寸法C2は、複数の移送部材5のうち一の移送部材5と該一の移送部材5より上方の移送部材5との離間寸法C1よりも、長寸の上下寸法を少なくとも有している(C1<C2)。
【0040】
このように、制限板21は、移送部材5の折曲部5cの下端から外側に寸法P3の間隙をあけて配置され、また、制限板21の上下寸法C2は、移送部材5,5間の離間寸法C1よりも長寸の上下寸法を少なくとも有していることから、移送部材5Aの折曲部5cの下端と制限板21の背面との間に、ゆで卵が上下方向に移動可能な空間部Xが上下方向に延設されている。よって、ゆで卵E2,E3のように、移送部材5の折曲部5cの下端から開口部Sよりも外側に一部が突出した状態で載置部5bに載置されたまま移送部材5により上昇された場合でも、ゆで卵E2,E3が制限板21の下端に接触し、さらに上昇する移送部材5と制限板21の下端との間に挟まれてしまい、殻どころか白身や黄身が割れたり潰されたりすることを回避できる。
【0041】
次に、
図8(a)~(c)を用いて、移送部材5に載置されたゆで卵の移送態様を説明する。
図8(a)に示されるように、投入部2に投入された大量のゆで卵群Uは、上方に積み重なった状態で滞留する。
【0042】
投入部2に投入されたゆで卵群Uのうち、制限板21側の下部に位置するゆで卵は、制限板21の下端と誘導部22との間の連通口を通過して移送路30側へ誘導され、制限板21の下端より上方にあるゆで卵については、ゆで卵同士が重なり合い密になっているため、制限板21によって移送路30側への移動が規制される。
【0043】
図8(a)に示すように、誘導部22により移送路30まで誘導されたゆで卵(例えば、ゆで卵E11やゆで卵E12)は、誘導部22の終端近傍の位置へ上昇してきた移送部材5A(上下の移送部材との区別のために
図8においては移送部材5Aと付す)の載置部5bに案内され乗り移る。尚、例えば、ゆで卵E11は、先に進入した所定個のゆで卵のうちの1つであり、重心位置が載置部5b上に位置し安定して載置されているのに対し、ゆで卵E12は、載置部5bに所定個のゆで卵が先に載置された後に、後続のゆで卵に押されて入り込んだゆで卵の1つであり、重心位置が載置部5bの外側に位置し、一部が折曲部5cより外側(正面側)に突出するなど不安定な状態で載置されたものとする。
【0044】
また、移送部材5Aに進入できなかった後続のゆで卵E13の上方にあるゆで卵E13は、後続のゆで卵に押されて移送部材5Bの上方の移送部材5に近接(または接触)した状態で滞留されている。
【0045】
ゆで卵群Uが誘導部22によって移送路30側へ誘導されたとき、移送部材5の先端には下方に向けて折曲された折曲部5cが形成されているので、ゆで卵が移送部材5の先端に勢いよく衝突して殻がひび割れたり、移送部材5の先端に突き刺さることが防止される。
【0046】
次いで、
図8(b)に示されるように、移送部材5Aが上昇すると、移送部材5Aの下方の移送部材5Bが誘導部22の終端近傍の位置へ上昇してくることで、移送部材5Bに乗り移れずに滞留している後続のゆで卵(例えば、ゆで卵E13など)が、移送部材5Bの載置部5bへ案内される。
【0047】
移送部材5Aに載置されているゆで卵E11,E12は、制限板21の下端よりも下方側に位置している状態では、上昇時にゆで卵群Uによって背面側からの押圧力を受け棒部材51側へ押圧されることがある。また、ゆで卵E12は、折曲部5cよりも外側に一部が突出した状態で上昇することで、滞留しているゆで卵(例えば、ゆで卵E14など)を下方から押し上げる。
【0048】
ここで、制限板21の下端より下方で滞留しているゆで卵E14などは、後続のゆで卵から移送路30側に向けて圧力が付与されているので、誘導方向と逆方向(正面側)に戻ることができないが、制限板21の背面と移送部材5の折曲部5cの下端との間に空間部Xが設けられていることで、上昇するゆで卵E12により押し上げられたり、倒伏姿勢から起立姿勢に変更されたりしても、後続のゆで卵からの圧力を受けることがない上方の空間部X内に入り込む(進入する)ことができるため、制限板21とゆで卵E12との間に挟まれてゆで卵E14がひび割れたり押し潰されることが回避される。
【0049】
次いで、
図8(c)に示されるように、移送部材5Aが制限板21の下端よりも上方側へ移動されると、制限板21によりゆで卵群Uの移送路30側への移動が規制されており、制限板21が移送部材5の折曲部5cの下端から外側に寸法P3分離間して配置され、制限板21の上下寸法C2が移送部材5,5間の離間寸法C1よりも長寸の上下寸法を少なくとも有していることから、不安定な状態のまま移送部材5Aにて上昇したゆで卵E12は、空間部Xにおいて後続のゆで卵からの圧力が開放されたときに空間部Xに落下しやすくなり、落下した場合には誘導部22上で密になっているゆで卵群U上へ戻される。このように、ゆで卵が上下方向に移動可能な空間部Xが誘導部22の上方位置に設けられていることで、移送部材5の外面側の端部から一部が突出したゆで卵E12や、開口部S付近で滞留する移送待ちのゆで卵E14が移送部材5により上方に押し上げられた場合でも、移送部材5と制限板21との間に挟まれてひび割れたり押し潰されたりすることがない。
【0050】
空間部Xへ落下したゆで卵E12は、誘導部22における制限板21よりも移送路30側にて滞留しているゆで卵群Uに戻されることで、
図8(d)に示されるように、再び移送部材5に誘導されて上方向に移送されることになる。このように、移送部材5に乗り移ったが不安定な姿勢のまま上昇したり、上昇途中で滞留しているゆで卵と接触することにより空間部Xに落下することがあっても、再び誘導部22に戻されることで何度でも移送部材5に誘導されるため、空間部Xに落下したゆで卵を再び投入部2に戻す必要がない。また、空間部Xは少なくとも上下の移送部材5,5の離間寸法C1よりも長寸の上下寸法を有していることで、不安定な状態で載置されているゆで卵は制限板21の上端より上方へ移動するまでに落下することが多く、安定して載置されているゆで卵のみが空間部Xを通過して制限板21の上端よりも上方まで上昇していく。これにより、殻割り装置11にて殻割り処理が行われる前の移送路30における制限板21より上方の正面開口部にて、ゆで卵を外気に触れさせて乾燥させることができ、このときにひび割れしているゆで卵が少なくなるので、雑菌の侵入を抑制できる。
【0051】
以上説明したように、本発明の実施例としてのゆで卵を上方向に移送可能な移送装置1は、ゆで卵を移送する移送路30の長手方向に向けて複数設けられ、駆動手段としてのモータ4により上方向に移動可能な移送部材5,5,…と、移送路30の外面側の少なくとも一部に設けられる開口部Sと、ゆで卵を投入可能な投入部2と、投入部2に投入されたゆで卵を開口部Sに向けて誘導する誘導部22と、誘導部22による開口部Sへのゆで卵の誘導量を制限可能な制限板21と、を備えている。これによれば、誘導部22により開口部Sへ誘導されたゆで卵は上方に移動する移送部材5に順に供給され、制限板21は、誘導部22の上方において開口部Sに対向するように移送部材5から外側に離れた位置に配置されていることから、投入部2に大量のゆで卵が投入されても、制限板21による開口部Sへのゆで卵の誘導量が制限されることで、移送部材5にゆで卵を適量ずつ供給できる。
【0052】
加えて、移送部材5の先端(折曲部5cの正面側下端)と制限板21との間にゆで卵が少なくとも上下方向に移動可能な空間部Xが設けられていることで、移送部材5の外面側の端部から一部がはみ出したゆで卵や、開口部付近で滞留する移送待ちのゆで卵が、移送部材5により上方に押し上げられたときに移送部材5と制限板21との間に挟まれてひび割れたり押し潰されたりすることがないため、大量のゆで卵を破損させることなく上方にスムーズに移送することができる。また、空間部Xが設けられていることで、ゆで卵が移送部材5と制限板21との間に挟まれてひび割れたり押し潰されたりすることがないため、固ゆで卵の移送はもちろん、固ゆで卵よりも繊細な半熟卵の移送おいても、破損が生じにくい。
【0053】
また、制限板21は、複数の移送部材5,5,…のうち、移送部材5Bと移送部材5Bより上方の移送部材5Aとの離間寸法よりも長寸の上下寸法を少なくとも有することから、投入部2により多くのゆで卵を投入できるとともに、不安定な状態のまま移送部材5にて上昇したゆで卵が空間に落下して誘導部22に再度供給されるようになるため、ゆで卵を安定して上方向に移送させることができる。
【0054】
また、移送部材5の外面側の端部と制限板21との離間寸法は、少なくともゆで卵の横方向の長さL2寸法よりも長寸であることから、空間を最小限に抑えることができるため、移送装置1のコンパクト化を図ることができる。
【0055】
また、移送部材5は、外面側の端部が下方に向けて折曲げて折曲部5cが形成されていることから、誘導部22により誘導されてきたゆで卵が移送部材5の先端に衝突してひび割れたりすることを防止できる。
【0056】
また、移送部材5は、幅方向に向けて延設され、複数個のゆで卵を載置可能な板状部材からなり、外面側の端部から内面側の端部に向けて形成された切欠凹溝55が、幅方向に向けて複数形成されていることから、ゆで卵の一部が切欠凹溝55に入り込むように載置されるため、安定して移送できる。
【0057】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0058】
例えば、前記実施例においては、移送装置1は、ゆで卵を鉛直上方向に移送する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ゆで卵を斜め上方向に移送するものであってもよい。
【0059】
また、前記実施例においては、移送部材5は、左右方向に一列状に最大で4個のゆで卵を載置可能とされていたが、少なくとも1個のゆで卵を上方向に移送可能であればよく、また、5個以上のゆで卵を一度に移送可能であってもよい。また、寸法P2は、前後方向に1個のゆで卵を載置可能な寸法とされていたが、2個以上のゆで卵を載置可能な寸法とされてもよい。さらに、移送部材5は板状でなく、カップ形状など種々の形状に変更可能である。
【0060】
また、前記実施例においては、誘導部22は投入部2に投入されたゆで卵を自然流下により誘導する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、投入部2に投入されたゆで卵がコンベア等により開口部Sに向けて誘導されるようにしてもよい。
【0061】
また、前記実施例においては、移送部材5の折曲部5cの下端から制限板21までの離間寸法P3は、少なくともゆで卵の横方向の寸法L2より僅かに長寸とした形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、離間寸法P3は、少なくともゆで卵の横方向の寸法L2より長寸であれば、ゆで卵の縦方向の寸法L1と同寸としてもよいし、寸法L1や寸法L2より長寸であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 移送装置
2 投入部
3 筐体
4 モータ(駆動手段)
5 移送部材
5a 壁部
5b 載置部
5c 折曲部
21 制限板(制限部材)
22 誘導部
30 移送路
51 スペーサ
S 開口部
X 空間部