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特許7551109濃度推定方法、濃度推定プログラム及び濃度推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】濃度推定方法、濃度推定プログラム及び濃度推定装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/12 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
C25D21/12 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020205996
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092969
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】田熊 保彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 恵理
(72)【発明者】
【氏名】森久保 諭
(72)【発明者】
【氏名】榎本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】西田 葵
(72)【発明者】
【氏名】小坂 幸夫
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060962(JP,A)
【文献】特開平09-324297(JP,A)
【文献】特開昭59-041488(JP,A)
【文献】特開昭51-143532(JP,A)
【文献】特開2006-322069(JP,A)
【文献】特開2000-355800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/12
G01N 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理と、前記前処理の後の水洗処理と、めっき処理と、前記めっき処理の後の水洗処理とをそれぞれ行う複数の処理槽内の溶液に製品を順番に浸漬させる工程において、1つの前記処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度caを推定する方法であって、
前記濃度caを推定する処理槽に対して上流の処理槽において、溶液に浸漬された製品を取り出すことに伴う溶液の汲出量を下記式(I)から求め、
前記濃度caを推定する処理槽において、下記式(II)から求められる濃度caft_carに基づいて、製品を浸漬させた後における前記濃度caを求めることを特徴とする濃度推定方法。
【数1】
上記式(I)において、fout(t)は前記汲出量、tは前記上流の処理槽から取り出された製品を前記上流の処理槽の上方の位置で保持し続ける時間である水切り時間、Aは前記水切り時間tに依存しない前記汲出量の収束量、α,βは予め定められた係数であり、
上記式(II)において、caft_carは前記濃度caを推定する処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、cbefは前記上流の処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、Vdraginは前記上流の処理槽から前記濃度caを推定する処理槽に製品を移動させることに伴う前記溶液の移動量としてみなされる前記汲出量[L]、ccurは製品の移動前における前記濃度caを推定する処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、Vtankは製品の移動前における前記濃度caを推定する処理槽内の前記溶液の体積[L]である。
【請求項2】
製品を前記溶液に浸漬したときの化学反応に伴う化学物質の濃度変化量を下記式(III)又は(IV)から求め、この濃度変化量を前記濃度caの算出に用いることを特徴とする請求項1に記載の濃度推定方法。
【数2】
dcは前記化学反応に伴う化学物質の濃度変化量[g/L]、kは反応速度定数、dtは単位時間[sec]、cは前記化学反応前の化学物質の濃度[g/L]である。
【請求項3】
下記式(V)から求められる濃度caft_vapを前記濃度caの算出に用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の濃度推定方法。
【数3】
aft_vapは前記溶液が蒸発した後の化学物質の濃度[g/L]、ccurは前記溶液が蒸発する前の化学物質の濃度[g/L]、Vtankは前記濃度caを推定する処理槽における蒸発前の前記溶液の体積[L]、Vvapоrは単位時間あたりの前記溶液の蒸発量[L/sec]、dtは単位時間[sec]である。
【請求項4】
前記濃度caを推定する処理槽は水洗処理を行う処理槽であり、
前記水洗処理を行う処理槽に対する水洗水の流入及び流出に伴う化学物質の濃度変化量を下記式(VI)から求め、この濃度変化量を前記水洗処理の処理槽における前記濃度caの算出に用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の濃度推定方法。
【数4】
dcは水洗水の流入及び流出に伴う濃度変化量[g/L]、vは水洗水の流速[L/sec]、Vtankは前記水洗処理の処理槽内の水洗水の予め決められた体積[L]、ccurは水洗水が流入する前の前記処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、cwashは前記処理槽に流入する水洗水の濃度[g/L]、dtは単位時間[sec]である。
【請求項5】
前記水洗処理の処理槽は、製品に対する水洗処理を順に行う複数の処理槽を含んでおり、
下流の前記水洗処理の処理槽から排出された水洗水が上流の前記水洗処理の処理槽に供給されることを特徴とする請求項4に記載の濃度推定方法。
【請求項6】
前記水洗処理の処理槽は、製品に対する水洗処理を順に行う複数の処理槽を含んでおり、
前記水洗処理の各処理槽に対して水洗水が供給され、前記水洗処理の各処理槽から溢れた水洗水が排水として処理されることを特徴とする請求項4に記載の濃度推定方法。
【請求項7】
前記前処理は、浸漬脱脂処理、酸洗浄処理、電解脱脂処理及び活性化処理のうちの少なくとも1つを含み、
酸洗浄処理、電解脱脂処理又は活性化処理を行う処理槽について、前記濃度caを推定することを特徴とする請求項1からのいずれか1つに記載の濃度推定方法。
【請求項8】
前処理と、前記前処理の後の水洗処理と、めっき処理と、前記めっき処理の後の水洗処理とをそれぞれ行う複数の処理槽内の溶液に製品を順番に浸漬させる工程において、1つの前記処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度caを推定するプログラムであって、
前記濃度caを推定する処理槽に対して上流の処理槽において、溶液に浸漬された製品を取り出すことに伴う溶液の汲出量を下記式(I)から求める工程と、
前記濃度caを推定する処理槽において、下記式(II)から求められる濃度caft_carに基づいて、製品を浸漬させた後における前記濃度caを求める工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする濃度推定プログラム。
【数5】
上記式(I)において、fout(t)は前記汲出量、tは前記上流の処理槽から取り出された製品を前記上流の処理槽の上方の位置で保持し続ける時間である水切り時間、Aは前記水切り時間tに依存しない前記汲出量の収束量、α,βは予め定められた係数であり、
上記式(II)において、caft_carは前記濃度caを推定する処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、cbefは前記上流の処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、Vdraginは前記上流の処理槽から前記濃度caを推定する処理槽に製品を移動させることに伴う前記溶液の移動量としてみなされる前記汲出量[L]、ccurは製品の移動前における前記濃度caを推定する処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、Vtankは製品の移動前における前記濃度caを推定する処理槽内の前記溶液の体積[L]である。
【請求項9】
前処理と、前記前処理の後の水洗処理と、めっき処理と、前記めっき処理の後の水洗処理とをそれぞれ行う複数の処理槽内の溶液に製品を順番に浸漬させる工程において、1つの前記処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度caを推定する装置であって、
この推定装置の演算部は、
前記濃度caを推定する処理槽に対して上流の処理槽において、溶液に浸漬された製品を取り出すことに伴う溶液の汲出量を下記式(I)から求め、
前記濃度caを推定する処理槽において、下記式(II)から求められる濃度caft_carに基づいて、製品を浸漬させた後における前記濃度caを求めることを特徴とする濃度推定装置。
【数6】
上記式(I)において、fout(t)は前記汲出量、tは前記上流の処理槽から取り出された製品を前記上流の処理槽の上方の位置で保持し続ける時間である水切り時間、Aは前記水切り時間tに依存しない前記汲出量の収束量、α,βは予め定められた係数であり、
上記式(II)において、caft_carは前記濃度caを推定する処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、cbefは前記上流の処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、Vdraginは前記上流の処理槽から前記濃度caを推定する処理槽に製品を移動させることに伴う前記溶液の移動量としてみなされる前記汲出量[L]、ccurは製品の移動前における前記濃度caを推定する処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、Vtankは製品の移動前における前記濃度caを推定する処理槽内の前記溶液の体積[L]である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき工程に含まれる複数の処理のそれぞれにおいて、処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度を推定する方法、プログラム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品にめっきを行うめっき工程は、複数種類の前処理と、これらの前処理の後に行われるめっき処理とを有する。各前処理やめっき処理は、これらの処理毎に設けられた処理槽内の溶液に製品を浸漬することによって行われる。溶液に浸漬された製品は、処理槽から取り出された後に、次の処理を行う処理槽内の溶液に浸漬される。ここで、各処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度を把握することが求められている。
【0003】
特許文献1では、連続電気めっき設備を複数の設備ブロックに分割し、濃度推定モデルを用いて、各設備ブロックのめっき液濃度を推定している。濃度推定モデルは、設備ブロック毎にめっきによるめっき液成分の支出と、成分材料の供給によるめっき液成分の収入の影響を考慮した物質収支モデルを基本としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3627081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度は、化学分析によって測定することができるが、化学分析を行う場合、分析結果(化学物質の濃度)が出るまでに時間を要してしまう。特許文献1は、めっき液濃度を推定する技術であるが、搬送されるストリップを連続的にめっきする連続電気めっき設備を前提としており、複数種類の前処理及びめっき処理のそれぞれを独立した処理槽を用いて段階的に行うめっき工程とは異なる。
【0006】
本発明の目的は、複数種類の前処理及びめっき処理のそれぞれを独立した処理槽を用いて段階的に行うめっき工程において、化学分析を行うことなく、処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度を推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明は、前処理及びめっき処理をそれぞれ行う複数の処理槽のうち、少なくとも1つの処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度を推定する方法である。ここで、処理槽において、溶液に浸漬された製品を取り出すことに伴う溶液の汲出量を下記式(I)から求める。そして、少なくとも、汲出量と、製品を取り出す前の溶液中の化学物質の濃度caとに基づいて、製品を取り出した後の溶液中の化学物質の濃度caを求める。
【0008】
【数1】
【0009】
上記式(I)において、fout(t)は汲出量、tは取り出された製品を溶液の上方の位置で保持し続ける時間である水切り時間、Aは水切り時間tに応じた汲出量の収束量、α,βは予め定められた係数である。
【0010】
上流の処理槽から下流の処理槽に製品を移動させたときの下流の処理槽に関しては、下記式(II)から求められる濃度caft_carに基づいて、濃度caを特定することができる。
【0011】
【数2】
【0012】
上記式(II)において、caft_carは製品の移動後における下流の処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、cbefは上流の処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、Vdraginは上流の処理槽から下流の処理槽に製品を移動させることに伴う溶液の移動量[L]、ccurは製品の移動前における下流の処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、Vtankは処理槽内の溶液の体積[L]である。
【0013】
製品を溶液に浸漬したときの化学反応に伴う化学物質の濃度変化量を下記式(III)又は(IV)から求め、この濃度変化量を濃度caの算出に用いることができる。
【0014】
【数3】
【0015】
上記式(III),(IV)において、dcは化学反応に伴う化学物質の濃度変化量[g/L]、kは反応速度定数、dtは単位時間[sec]、cは化学反応前の化学物質の濃度[g/L]である。
【0016】
下記式(VI)から求められる濃度caft_vapに基づいて、濃度caを特定することができる。
【0017】
【数4】
【0018】
上記式(V)において、caft_vapは溶液が蒸発した後の化学物質の濃度[g/L]、ccurは溶液が蒸発する前の化学物質の濃度[g/L]、Vtankは処理槽内の溶液の体積[L]、Vvapоrは単位時間あたりの溶液の蒸発量[L/sec]、dtは単位時間[sec]である。
【0019】
前処理又はめっき処理の後の製品に対しては水洗処理を行うことができる。ここで、水洗処理を行う処理槽に対する水洗水の流入及び流出に伴う化学物質の濃度変化量を下記式(VI)から求める。そして、この濃度変化量に基づいて、水洗処理の処理槽内における化学物質の濃度を求めることができる。
【0020】
【数5】
【0021】
上記式(VI)において、dcは水洗水の流入及び流出に伴う濃度変化量[g/L]、vは水洗水の流速[L/sec]、Vtankは水洗処理の処理槽内の水洗水の体積[L]、ccurは水洗水が流入する前の処理槽内の化学物質の濃度[g/L]、cwashは処理槽に流入する水洗水の濃度[g/L]、dtは単位時間[sec]である。
【0022】
水洗処理の処理槽には、製品に対する水洗処理を順に行う複数の処理槽を含めることができる。ここで、下流の処理槽から排出された水洗水を上流の処理槽に供給することができる(後述する直列向流水洗)。また、水洗処理の各処理槽に対して水洗水を供給し、この各処理槽から溢れた水洗水を排水として処理することができる(後述する並列水洗)。前処理としては、例えば、浸漬脱脂処理、酸洗浄処理、電解脱脂処理及び活性化処理のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0023】
本願第2の発明は、前処理及びめっき処理をそれぞれ行う複数の処理槽のうち、少なくとも1つの処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度を推定するプログラムであり、以下に説明する工程をコンピュータに実行させる。第1の工程では、処理槽において、溶液に浸漬された製品を取り出すことに伴う溶液の汲出量を上記式(I)から求める。第2の工程では、少なくとも、汲出量と、製品を取り出す前の溶液中の化学物質の濃度caとに基づいて、製品を取り出した後の溶液中の化学物質の濃度caを求める。
【0024】
本願第3の発明は、前処理及びめっき処理をそれぞれ行う複数の処理槽のうち、少なくとも1つの処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度を推定する装置である。ここで、演算部は、処理槽において、溶液に浸漬された製品を取り出すことに伴う溶液の汲出量を上記式(I)から求める。また、演算部は、少なくとも、汲出量と、製品を取り出す前の溶液中の化学物質の濃度caとに基づいて、製品を取り出した後の溶液中の化学物質の濃度caを求める。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、めっき工程に含まれる複数の処理(各種の前処理やめっき処理)のそれぞれにおいて、処理槽内の溶液に含まれる化学物質の濃度を推定することができる。化学物質の濃度を推定すれば、化学分析を行うことなく濃度を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】めっき工程の手順を示す概略図である。
図2】直列向流水洗を説明する図である。
図3】並列水洗を説明する図である。
図4】汲出量及び水切り時間の関係を示す図である。
図5】浸漬脱脂処理における物質濃度を推定する処理を示すフローチャートである。
図6】酸洗浄処理における物質濃度を推定する処理を示すフローチャートである。
図7】電解脱脂処理における物質濃度を推定する処理を示すフローチャートである。
図8】活性化処理における物質濃度を推定する処理を示すフローチャートである。
図9】めっき処理における物質濃度を推定する処理を示すフローチャートである。
図10】水洗処理における物質濃度を推定する処理を示すフローチャートである。
図11】めっき処理における濃度の推定値及び実測値の経時変化を示す図である。
図12】水洗処理(1回目)における濃度の推定値及び実測値の経時変化を示す図である。
図13】水洗処理(2回目)における濃度の推定値及び実測値の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(めっき工程)
図1は、本実施形態のめっき工程の手順を示す概略図である。めっき工程は、複数種類の前処理及びめっき処理からなり、前処理には、浸漬脱脂処理、酸洗浄処理、電解脱脂処理及び活性化処理が含まれる。各処理(前処理やめっき処理)を行った後には、水洗処理が行われ、本実施形態では、2回の水洗処理を行っている。なお、めっき工程の手順は、図1に示す手順に限るものではなく、各種の前処理を行う順序が異なっていてもよい。また、前処理は、浸漬脱脂処理、酸洗浄処理、電解脱脂処理及び活性化処理に限られるものではない。
【0028】
上述した各処理(前処理やめっき処理)は、この処理を行うための溶液が収容された処理槽で行われる。すなわち、各処理は、各処理槽内の溶液に製品を浸漬することによって行われ、製品は、浸漬した溶液から取り出され、次の処理の処理槽まで移動した後、この処理槽内の溶液に浸漬される。以下、各処理について説明する。
【0029】
(浸漬脱脂処理)
浸漬脱脂処理は、脱脂剤を含む水溶液が収容された処理槽に製品を所定時間だけ浸漬することにより、製品に付着した油脂を除去する処理である。脱脂剤としては、例えば、アルカリ脱脂剤を用いることができる。
【0030】
浸漬脱脂処理が行われた後、製品は、浸漬脱脂処理の処理槽から取り出され、2回の水洗処理が行われる。具体的には、1回目の水洗処理を行う処理槽に製品を所定時間だけ浸漬した後、この処理槽から製品を取り出す。そして、2回目の水洗処理を行う処理槽に製品を所定時間だけ浸漬する。ここで、水洗処理を行う処理槽では、水洗水の体積(言い換えれば、量)が略一定に維持される。上述した2回の水洗処理が行われた後、以下に説明する酸洗浄処理が行われる。
【0031】
(酸洗浄処理)
酸洗浄処理は、処理槽に収容された酸性溶液に製品を所定時間だけ浸漬することにより、製品に付着した無機系の汚れ(加工変質層など)を除去する処理である。酸性溶液としては、例えば、硫酸や塩酸を用いることができる。
【0032】
酸洗浄処理が行われた後、製品は、酸洗浄処理の処理槽から取り出され、2回の水洗処理が行われる。ここでの水洗処理は、浸漬脱脂処理が行われた後の水洗処理と同じである。すなわち、酸洗浄処理の処理槽から取り出された製品は、1回目の水洗処理を行う処理槽に所定時間だけ浸漬された後、2回目の水洗処理を行う処理槽に所定時間だけ浸漬される。ここで、水洗処理を行う処理槽では、水洗水の体積(言い換えれば、量)が略一定に維持される。上述した2回の水洗処理が行われた後、以下に説明する電解脱脂処理が行われる。
【0033】
(電解脱脂処理)
電解脱脂処理は、電気分解によって発生する気泡(水素ガスや酸素ガス)による機械作用、水素ガスによる還元力、酸素ガスによる酸化力を利用することにより、製品に付着した汚れ(スマット)を除去する処理である。電解脱脂処理を行う処理槽にはアルカリ溶液が収容されており、製品はアルカリ溶液に所定時間だけ浸漬される。
【0034】
電解脱脂処理が行われた後、製品は、電解脱脂処理の処理槽から取り出され、2回の水洗処理が行われる。ここでの水洗処理は、浸漬脱脂処理が行われた後の水洗処理と同じである。すなわち、電解脱脂処理の処理槽から取り出された製品は、1回目の水洗処理を行う処理槽に所定時間だけ浸漬された後、2回目の水洗処理を行う処理槽に所定時間だけ浸漬される。ここで、水洗処理を行う処理槽では、水洗水の体積(言い換えれば、量)が略一定に維持される。上述した2回の水洗処理が行われた後、以下に説明する活性化処理が行われる。
【0035】
(活性化処理)
活性化処理は、製品の表面に存在する薄い酸化膜等と共に製品の表面を薄く溶解させる処理である。活性化処理を行う処理槽には活性化液が収容されており、製品は活性化液に所定時間だけ浸漬される。活性化液としては、例えば、塩酸や硫酸などの希薄酸を用いることができる。
【0036】
活性化処理が行われた後、製品は、活性化処理の処理槽から取り出され、2回の水洗処理が行われる。ここでの水洗処理は、浸漬脱脂処理が行われた後の水洗処理と同じである。すなわち、活性化処理の処理槽から取り出された製品は、1回目の水洗処理を行う処理槽に所定時間だけ浸漬された後、2回目の水洗処理を行う処理槽に所定時間だけ浸漬される。ここで、水洗処理を行う処理槽では、水洗水の体積(言い換えれば、量)が略一定に維持される。上述した2回の水洗処理が行われた後、以下に説明するめっき処理が行われる。
【0037】
(めっき処理)
めっき処理は、製品の表面に金属の薄膜を形成する処理である。めっき処理としては、電解めっき処理、無電解めっき処理、溶融めっき処理が挙げられる。
【0038】
めっき処理が行われた後、製品は、めっき処理の処理槽から取り出され、2回の水洗処理が行われる。ここでの水洗処理は、浸漬脱脂処理が行われた後の水洗処理と同じである。すなわち、めっき処理の処理槽から取り出された製品は、1回目の水洗処理を行う処理槽に所定時間だけ浸漬された後、2回目の水洗処理を行う処理槽に所定時間だけ浸漬される。ここで、水洗処理を行う処理槽では、水洗水の体積(言い換えれば、量)が略一定に維持される。
【0039】
上述した説明では、2回の水洗処理を行っているが、これに限るものではない。具体的には、1回の水洗処理を行うだけでもよいし、3回以上の水洗処理を行ってもよい。また、複数回の水洗処理を行う場合には、めっき工程の下流に位置する処理槽(例えば、2回目の水洗処理を行う処理槽)から上流に位置する処理槽(例えば、1回目の水洗処理を行う処理槽)に水洗水を移動させる方法(以下、「直列向流水洗」という)や、各水洗処理の処理槽に個別に水洗水を供給する方法(以下、「並列水洗」という)を行うことができる。
【0040】
直列向流水洗について、図2を用いて説明する。図2では、一例として、3回の水洗処理を行っている。水洗水は、3つの処理槽のうち、めっき工程の最も下流に位置する処理槽(3回目の水洗処理を行う処理槽)に供給される。この処理槽から溢れた水洗水は、この処理槽よりもめっき工程の上流で隣り合う処理槽(2回目の水洗処理を行う処理槽)に供給される。この処理槽から溢れた水洗水は、この処理槽よりもめっき工程の上流で隣り合う処理槽(1回目の水洗処理を行う処理槽)に供給され、この処理槽から溢れた水洗水は排水となる。なお、製品は、矢印D1,D2,D3,D4の順に移動して、水洗処理を行う3つの処理槽にそれぞれ浸漬される。
【0041】
並列水洗について、図3を用いて説明する。図3では、一例として、3回の水洗処理を行っている。水洗水は各処理槽に供給され、各処理槽から溢れた水洗水は排水となる。ここで、3つ処理槽に供給される水洗水は同一の水洗水である。なお、製品は、矢印D1,D2,D3,D4の順に移動して、水洗処理を行う3つの処理槽にそれぞれ浸漬される。
【0042】
本実施形態は、上述しためっき工程の各処理が行われる処理槽内の溶液に含まれる各種の化学物質の濃度(以下、「物質濃度」という)を推定するものである。以下、物質濃度の推定方法について説明する。
【0043】
(物質収支による物質濃度の変化)
各処理槽における物質濃度は物質収支に依存するため、物質収支を考慮した物質濃度の変化量を求めることができる。ここで、物質収支には、溶液(化学物質を含む)の移動と、水洗水の流入・流出と、溶液の蒸発とが含まれる。以下、具体的に説明する。
【0044】
(溶液の移動)
溶液の移動とは、めっき工程で隣り合う2つの処理槽において、めっき工程の上流に位置する処理槽から下流に位置する処理槽に製品が移動するときに、製品に付着した溶液などが上流の処理槽から下流の処理槽に移動することである。ここで、上流の処理槽に着目したとき、この処理槽からは、溶液が製品に付着した状態等で取り出されることになり、この溶液の移動を「汲出」という。一方、下流の処理槽に着目したとき、この処理槽には、溶液が製品に付着した状態等で取り込まれることになり、この溶液の移動を「持込」という。
【0045】
まず、溶液の汲出量は、下記式(1)から求められる。
【0046】
【数6】
【0047】
上記式(1)において、fout(t)は溶液の汲出量[L]、tは水切り時間[sec]、Aは汲出量の収束量[L]、α,βは係数である。水切り時間tとは、処理槽から製品を取り出した後、この処理槽(溶液)の上方の位置で製品を保持し続ける時間である。処理槽の上方の位置で製品を保持し続けることにより、製品に付着した溶液は、落下して処理槽に戻る。収束量A及び係数α,βは、以下に説明するように事前に特定されるため、水切り時間tを計測すれば、汲出量fout(t)を求めることができる。
【0048】
図4には、水切り時間t及び汲出量fout(t)の関係を示す。図4に示すプロットは、特定の製品を上流の処理槽から下流の処理槽に移動させたときにおいて、上流の処理槽から汲出される溶液の量(実測値)である。図4に示すプロットの近似曲線は、上記式(1)で表される。
【0049】
図4に示すように、水切り時間tが所定時間t_thに到達するまでは、水切り時間tに応じて汲出量fout(t)が変化する。すなわち、水切り時間tが短いほど、汲出量fout(t)が多くなり、水切り時間tが長いほど、汲出量fout(t)が少なくなる。一方、水切り時間tが所定時間t_thを経過した以降では、汲出量fout(t)が変化しにくくなり、所定量(収束量A)に収束する。
【0050】
めっき工程を行う予定の製品を用い、各処理槽について、図4に示す実測値(複数のプロット)を予め測定しておけば、上記式(1)に示す収束量A及び係数α,βを特定することができる。収束量A及び係数α,βは、製品の形状(例えば、ワッシャー、ピン、ネジ、球)や数量、溶液中から製品を引き上げるときの引き上げ速度などに依存する。なお、製品の引き上げ速度については、すべての処理槽で同一としておけば、引き上げ速度を考慮する必要は無くなる。
【0051】
複数個の製品を1つのバレル(容器)に収容してめっき工程を行う場合には、製品の数量を考慮する必要がある。収束量A及び係数α,βが特定された製品と同一の製品についてめっき工程を行う場合には、収束量A及び係数α,βが特定された上記式(1)を用いることにより、汲出量fout(t)を求めることができる。
【0052】
なお、上記式(1)では、汲出量fout(t)及び収束量Aの単位が[L]であるが、これに限るものではなく、例えば、汲出量fout(t)及び収束量Aの単位を[g]とすることもできる。溶液の密度[g/L]を予め求めておけば、単位[L]及び単位[g]を相互に変換することができる。
【0053】
次に、製品の移動先(下流)の処理槽における持込後の物質濃度は、下記式(2)から求められる。持込後の物質濃度は、製品を移動先(下流)の処理槽に浸漬したタイミングで求められる。
【0054】
【数7】
【0055】
上記式(2)において、caft_carは、製品の移動先(下流)の処理槽における持込後の物質濃度[g/L]、cbefは、製品の移動元(上流)の処理槽内の物質濃度[g/L]である。Vdraginは、製品を上流の処理槽から下流の処理槽に移動させることに伴う溶液の移動量[L]である。ccurは、製品の移動先(下流)の処理槽における持込前の物質濃度[g/L]、Vtankは、上流及び下流の処理槽に収容される溶液の体積[L]である。上流の処理槽から汲出された溶液は下流の処理槽に持ち込まれるため、移動量Vdraginは、上記式(1)に示す汲出量fout(t)と同じとみなすことができる。物質濃度cbef及び物質濃度ccurの初期値(めっき工程を行う前の濃度)は、予め決めておくことができる。
【0056】
(水洗水の流入・流出)
水洗水の流入とは、水洗処理を行う処理槽に水洗水が流れ込むことであり、水洗水の流出とは、水洗処理を行う処理槽から水洗水が流れ出ることである。水洗水の流入・流出によって、処理槽内の物質濃度が変化する。水洗水の流入・流出に伴う物質濃度の変化量は、下記式(3)から求められる。
【0057】
【数8】
【0058】
上記式(3)において、dcは水洗水の流入・流出に伴う物質濃度の変化量[g/L]、vは水洗水の流速[L/sec]、Vtankは処理槽に収容される水洗水の体積[L]、ccurは水洗水が処理槽に流入する前の処理槽内の物質濃度[g/L]、cwashは処理槽に流入する水洗水の濃度[g/L]、dtは単位時間[sec](例えば、1秒)である。物質濃度ccurの初期値、流速v及び体積Vtankは、予め決めておくことができる。濃度cwashは、上述した直列向流水洗では、水洗水が供給される元の処理槽内の濃度となり、上述した並列水洗では、各処理槽に供給される水洗水の濃度となる。
【0059】
上記式(3)から分かるとおり、物質濃度の変化量dcは、単位時間dtが経過するたびに求められる。そして、単位時間dtが経過する前の処理槽内の物質濃度から変化量dcを減算することにより、単位時間dtが経過した後の処理槽内の物質濃度を求めることができる。例えば、初期の物質濃度を予め求めておけば、1回目の単位時間dtが経過したときの物質濃度は、初期の物質濃度と、上記式(3)から求められた変化量dcとから求めることができる。そして、n回目の単位時間dtが経過したときの物質濃度は、n-1回目の単位時間dtが経過したときの物質濃度と、上記式(3)から求められた変化量dcとから求めることができる。
【0060】
(溶液の蒸発)
溶液の蒸発とは、前処理又はめっき処理の各処理槽に収容された溶液の蒸発であり、溶液の蒸発によって、処理槽内の物質濃度が変化する。溶液が蒸発した後の物質濃度は、下記式(4)から求められる。
【0061】
【数9】
【0062】
上記式(4)において、caft_vapは蒸発後の物質濃度[g/L]、ccurは蒸発前の物質濃度[g/L]、Vtankは処理槽に収容される溶液の体積[L]、Vvapоrは単位時間あたりの溶液の蒸発量[L/sec]、dtは単位時間[sec](例えば、1秒)である。上記式(4)によれば、単位時間dtが経過したときの蒸発後の物質濃度を求めることができる。ここで、各処理槽に収容される溶液を特定すれば、蒸発量Vvapоrを予め特定しておくことができる。また、物質濃度ccurの初期値及び体積Vtankは、予め決めておくことができる。
【0063】
上記式(4)によれば、単位時間dtが経過するたびに、蒸発後の物質濃度caft_vapが求められる。ここで、蒸発前の物質濃度ccurは、単位時間dtが経過する直前の物質濃度である。例えば、n回目の単位時間dtが経過したときの物質濃度caft_vapを求める場合には、n-1回目の単位時間dtが経過したときに求められた物質濃度caft_vapが物質濃度ccurとして用いられる。
【0064】
(化学反応による物質濃度の変化)
次に、処理槽の溶液中における化学反応による物質濃度の変化について説明する。この化学反応は、各処理槽で行われる処理(前処理やめっき処理)の内容に応じて異なる。
【0065】
化学反応による物質濃度の変化量は、下記式(5)~(7)から求めることができる。なお、化学反応による物質濃度の変化量を求める式は、下記式(5)~(7)に限るものではなく、溶液中の化学反応を考慮した式であればよい。
【0066】
【数10】
【0067】
上記式(5)において、dcは物質濃度の変化量[g/L]、kは反応速度定数、dtは単位時間[sec](例えば、1秒)である。ここで、物質濃度が減少する化学反応では、反応速度定数kが負の値となり、物質濃度が増加する化学反応では、反応速度定数kが正の値となる。上記式(5)は、溶液中の化学反応が零次反応であるときに適用される。
【0068】
上記式(6)において、dcは物質濃度の変化量[g/L]、kは反応速度定数、cは化学反応が行われる前の物質濃度[g/L]、dtは単位時間[sec](例えば、1秒)である。ここで、物質濃度が減少する化学反応では、反応速度定数kが負の値となり、物質濃度が増加する化学反応では、反応速度定数kが正の値となる。上記式(6)は、溶液中の化学反応が一次反応(化学物質A→化学物質B)であるときに適用される。
【0069】
上記式(7)において、dcは溶液中の化学物質Aの濃度変化量[g/L]、kは反応速度定数、cは化学反応が行われる前における溶液中の化学物質Aの濃度[g/L]、cは化学反応が行われる前における溶液中の化学物質Bの濃度[g/L]、dtは単位時間[sec](例えば、1秒)である。ここで、物質濃度が減少する化学反応では、反応速度定数kが負の値となり、物質濃度が増加する化学反応では、反応速度定数kが正の値となる。上記式(7)は、溶液中の化学反応が二次反応(化学物質A+化学物質B→化学物質C)であるときに適用され、上記式(6)を変形した式である。すなわち、上記式(7)では、上記式(6)に示す濃度cとして、化学物質A,Bの両方の濃度c,cを考慮している。
【0070】
上記式(5)~(7)から物質濃度の変化量dcを求めれば、この変化量dcと、物質濃度が変化する前の物質濃度とに基づいて、物質濃度が変化した後の物質濃度を求めることができる。例えば、初期の物質濃度を予め求めておけば、1回目の単位時間dtが経過したときの物質濃度は、初期の物質濃度と、上記式(5)~(7)から求められた変化量dcとから求めることができる。そして、n回目の単位時間dtが経過したときの物質濃度は、n-1回目の単位時間dtが経過したときの物質濃度と、上記式(5)~(7)から求められた変化量dcとから求めることができる。ここで、物質濃度が増加する化学反応であれば、物質濃度が変化する前の物質濃度に変化量dcを加算すればよく、物質濃度が減少する化学反応であれば、物質濃度が変化する前の物質濃度から変化量dcを減算すればよい。
【0071】
化学反応による物質濃度の変化量dcは、化学反応が発生している期間内で求めればよい。各処理槽において、化学反応が発生する期間を予め特定しておけば、この期間内において変化量dcを求めればよい。変化量dcを求める期間としては、以下に説明する3つの例が挙げられる。
【0072】
第1の例としては、製品を処理槽に浸漬し続けている間、化学反応が発生する場合には、製品を処理槽に浸漬し続けている期間が変化量dcを求める期間となる。第2の例としては、所定条件を満たす場合にのみ、化学反応が発生する場合には、所定条件を満たしている期間が変化量dcを求める期間となる。所定条件としては、例えば、電解めっき処理を行うときの通電が挙げられ、通電期間が変化量dcを求める期間となる。第3の例としては、常に化学反応が発生している場合には、常に変化量dcを求めることになる。
【0073】
(浸漬脱脂処理での物質濃度の推定)
本実施形態では、図1から分かるとおり、浸漬脱脂処理の処理槽に製品が最初に浸漬されるため、この処理槽に対する溶液の持込はない。また、浸漬脱脂処理の処理槽内の物質濃度は、溶液の汲出によっても変化しない。したがって、処理槽内の初期の物質濃度を予め決めておけば、この物質濃度を浸漬脱脂処理の処理槽内の物質濃度とすることができる(S101)。そして、上記式(1)に基づいて汲出量fout(t)を求める(S102)。
【0074】
ステップS102の処理で求められた汲出量fout(t)は、後述する酸洗浄処理の処理槽に対する持込量となる。また、汲出量fout(t)が発生することにより、汲出量fout(t)の分だけ、処理槽内における溶液の体積Vtankが減少することになる。この体積Vtankは、上記式(2)~(4)で用いられる。
【0075】
なお、浸漬脱脂処理では、上述した溶液の移動(汲出)に加えて、上述した化学反応及び蒸発の少なくとも一方を考慮することにより、処理槽内の物質濃度を推定することができる。
【0076】
化学反応を考慮する場合には、上記式(5)~(7)のいずれかを用い、化学反応が発生している期間に基づいて、変化量dcを求める。そして、浸漬脱脂処理を行う前の物質濃度に対して変化量dcを加算(物質濃度が増加する場合)又は減算(物質濃度が減少する場合)することにより、化学反応後の物質濃度を求める。
【0077】
蒸発を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求める。
【0078】
蒸発及び化学反応の両方を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求めるとともに、上記式(5)~(7)のいずれかを用いて変化量dcを求める。上述したように、物質濃度caft_vap及び変化量dcは、単位時間dtが経過するたびに更新されるため、直近に更新された物質濃度caft_vap及び変化量dcに基づいて、処理槽内の物質濃度を求めることができる。
【0079】
(酸洗浄処理での物質濃度の推定)
酸洗浄処理では、上述した溶液の持込(本実施形態では、浸漬脱脂処理の処理槽からの溶液の持込)を考慮して処理槽内の物質濃度を推定することができる。具体的には、図6に示すように、持込量を特定し(S201)、上記式(2)に基づいて持込後の物質濃度caft_carを求める(S202)。ここで、上記式(2)に示す溶液の移動量Vdraginは、図5に示すステップS102の処理で求められた汲出量となる。次に、上記式(1)に基づいて汲出量fout(t)を求める(S203)。
【0080】
ステップS202の処理において、処理槽内の初期の物質濃度を予め決めておけば、持込後の物質濃度caft_carを求めることができる。そして、溶液の移動(持込)を行うたびに、直前に求められた物質濃度を用いることにより、持込後の処理槽内の物質濃度caft_carを求めることができる。
【0081】
なお、酸洗浄処理では、上述した溶液の持込に加えて、上述した化学反応及び蒸発の少なくとも一方を考慮することにより、処理槽内の物質濃度を推定することができる。
【0082】
化学反応を考慮する場合には、上記式(5)~(7)のいずれかを用い、化学反応が発生している期間に基づいて、変化量dcを求める。そして、酸洗浄処理を行う前の物質濃度に対して変化量dcを加算(物質濃度が増加する場合)又は減算(物質濃度が減少する場合)することにより、化学反応後の物質濃度を求める。
【0083】
蒸発を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求める。
【0084】
蒸発及び化学反応の両方を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求めるとともに、上記式(5)~(7)のいずれかを用いて変化量dcを求める。上述したように、物質濃度caft_vap及び変化量dcは、単位時間dtが経過するたびに更新されるため、直近に更新された物質濃度caft_vap及び変化量dcに基づいて、処理槽内の物質濃度を求めることができる。
【0085】
(電解脱脂処理での物質濃度の推定)
電解脱脂処理では、上述した溶液の持込(本実施形態では、酸洗浄処理の処理槽からの溶液の持込)を考慮して処理槽内の物質濃度を推定することができる。具体的には、図7に示すように、持込量を特定し(S301)、上記式(2)に基づいて持込後の物質濃度caft_carを求める(S302)。ここで、上記式(2)に示す溶液の移動量Vdraginは、図6に示すステップS203の処理で求められた汲出量となる。次に、上記式(1)に基づいて汲出量fout(t)を求める(S303)。
【0086】
ステップS302の処理において、処理槽内の初期の物質濃度を予め決めておけば、持込後の物質濃度caft_carを求めることができる。そして、溶液の移動(持込)を行うたびに、直前に求められた物質濃度を用いることにより、持込後の処理槽内の物質濃度caft_carを求めることができる。
【0087】
なお、電解脱脂処理では、上述した溶液の持込に加えて、上述した化学反応及び蒸発の少なくとも一方を考慮することにより、処理槽内の物質濃度を推定することができる。
【0088】
化学反応を考慮する場合には、上記式(5)~(7)のいずれかを用い、化学反応が発生している期間に基づいて、変化量dcを求める。そして、電解脱脂処理を行う前の物質濃度に対して変化量dcを加算(物質濃度が増加する場合)又は減算(物質濃度が減少する場合)することにより、化学反応後の物質濃度を求める。
【0089】
蒸発を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求める。
【0090】
蒸発及び化学反応の両方を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求めるとともに、上記式(5)~(7)のいずれかを用いて変化量dcを求める。上述したように、物質濃度caft_vap及び変化量dcは、単位時間dtが経過するたびに更新されるため、直近に更新された物質濃度caft_vap及び変化量dcに基づいて、処理槽内の物質濃度を求めることができる。
【0091】
(活性化処理での物質濃度の推定)
活性化処理では、上述した溶液の持込(本実施形態では、電解脱脂処理の処理槽からの溶液の持込)を考慮して処理槽内の物質濃度を推定することができる。具体的には、図8に示すように、持込量を特定し(S401)、上記式(2)に基づいて持込後の物質濃度caft_carを求める(S402)。ここで、上記式(2)に示す溶液の移動量Vdraginは、図7に示すステップS303の処理で求められた汲出量となる。次に、上記式(1)に基づいて汲出量fout(t)を求める(S403)。
【0092】
ステップS402の処理において、処理槽内の初期の物質濃度を予め決めておけば、持込後の物質濃度caft_carを求めることができる。そして、溶液の移動(持込)を行うたびに、直前に求められた物質濃度を用いることにより、持込後の処理槽内の物質濃度caft_carを求めることができる。
【0093】
なお、活性化処理では、上述した溶液の持込に加えて、上述した化学反応及び蒸発の少なくとも一方を考慮することにより、処理槽内の物質濃度を推定することができる。
【0094】
化学反応を考慮する場合には、上記式(5)~(7)のいずれかを用い、化学反応が発生している期間に基づいて、変化量dcを求める。そして、活性化処理を行う前の物質濃度に対して変化量dcを加算(物質濃度が増加する場合)又は減算(物質濃度が減少する場合)することにより、化学反応後の物質濃度を求める。
【0095】
蒸発を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求める。
【0096】
蒸発及び化学反応の両方を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求めるとともに、上記式(5)~(7)のいずれかを用いて変化量dcを求める。上述したように、物質濃度caft_vap及び変化量dcは、単位時間dtが経過するたびに更新されるため、直近に更新された物質濃度caft_vap及び変化量dcに基づいて、処理槽内の物質濃度を求めることができる。
【0097】
(めっき処理での物質濃度の推定)
めっき処理では、上述した溶液の持込(本実施形態では、活性化処理の処理槽からの溶液の持込)、化学反応及び蒸発を考慮することにより、処理槽内の物質濃度を推定することができる。
【0098】
具体的には、図9に示すように、ステップS501において、持込量を特定する。この持込量は、図8に示すステップS403の処理で求められた汲出量となる。
【0099】
ステップS502において、処理槽内の物質濃度を求める。ここでは、上記式(2)を用いて持込後の物質濃度caft_carを求め、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求め、上記式(5)~(7)のいずれかを用い、化学反応が発生している期間に基づいて変化量dcを求める。そして、物質濃度caft_car、物質濃度caft_vap及び変化量dcに基づいて、最終的な物質濃度を求める。ここで、物質濃度caft_car、物質濃度caft_vap及び変化量dcを求める順番を適宜決めることにより、最終的な物質濃度を求めることができる。
【0100】
なお、ステップS502の処理では、物質濃度caft_carだけを求めてもよいし、物質濃度caft_carに加えて、物質濃度caft_vap及び変化量dcの一方を求めてもよい。この場合には、求めた物質濃度(物質濃度caft_car,物質濃度caft_vap)や変化量dcを用いて、最終的な物質濃度を求めることになる。
【0101】
ステップS503において、上記式(1)に基づいて汲出量fout(t)を求める。
【0102】
(水洗処理での物質濃度の推定)
水洗処理では、上述した溶液の持込と、水洗水の流入・流出を考慮することにより、処理槽内の物質濃度を推定することができる。具体的には、図10に示すように、持込量を特定し(S601)、処理槽内の物質濃度を求める(S602)。ここで、ステップS601の処理で特定される持込量は、この処理槽よりも上流(直前)の処理槽からの汲出量となる。次に、上記式(1)に基づいて汲出量fout(t)を求める(S603)。
【0103】
ステップS602の処理では、上記式(2)に基づいて持込後の物質濃度caft_carを求めるとともに、上記式(3)に基づいて変化量dcを求める。そして、求めた物質濃度caft_car及び変化量dcから処理槽内の物質濃度を求めることができる。ここで、ステップS602の処理において、処理槽内の初期の物質濃度を予め決めておけば、持込後の物質濃度caft_carを求めることができる。そして、溶液の移動(持込)を行うたびに、直前に求められた物質濃度を用いることにより、持込後の処理槽内の物質濃度caft_carを求めることができる。
【0104】
なお、水洗処理では、上述した溶液の持込及び水洗水の流入・流出に加えて、上述した化学反応及び蒸発の少なくとも一方を考慮することにより、処理槽内の物質濃度を推定することができる。
【0105】
化学反応を考慮する場合には、上記式(5)~(7)のいずれかを用い、化学反応が発生している期間に基づいて、変化量dcを求める。そして、水洗処理を行う前の物質濃度に対して変化量dcを加算(物質濃度が増加する場合)又は減算(物質濃度が減少する場合)することにより、化学反応後の物質濃度を求める。
【0106】
蒸発を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求める。
【0107】
蒸発及び化学反応の両方を考慮する場合には、上記式(4)を用いて物質濃度caft_vapを求めるとともに、上記式(5)~(7)のいずれかを用いて変化量dcを求める。上述したように、物質濃度caft_vap及び変化量dcは、単位時間dtが経過するたびに更新されるため、直近に更新された物質濃度caft_vap及び変化量dcに基づいて、処理槽内の物質濃度を求めることができる。
【0108】
本実施形態によれば、めっき工程に含まれる複数の処理(各種の前処理やめっき処理)のそれぞれにおいて、処理槽内の溶液中における物質濃度を推定することができる。各処理槽内の物質濃度を推定すれば、化学分析を行うことなく物質濃度を把握することができ、化学分析に要する時間を省略することができる。
【0109】
また、処理槽毎に物質濃度を推定することにより、処理槽毎に物質濃度を管理することができる。例えば、物質濃度が基準値よりも低下している場合には、該当する化学物質を追加することにより、物質濃度を基準値以上とすることができる。ここで、本実施形態の推定によって物質濃度を把握しているため、適切な量の化学物質を追加することができる。
【0110】
さらに、水洗処理を行う処理槽から溢れた水洗水は排水になるが、この処理槽の物質濃度を推定することにより、排水に含まれる物質濃度を把握することができる。これにより、排水に含まれる物質濃度を考慮して、排水の処理を行うことができる。また、水洗処理の処理槽の物質濃度に基づいて、処理槽内の水洗水を交換するか否かを判断することができる。例えば、物質濃度が基準値よりも高い場合には、処理槽内の水洗水(不純物が混合したもの)を交換することができる。
【0111】
図1に示すめっき工程では、各処理槽において、溶液の汲出や持込が繰り返されることにより、溶液の量が許容量よりも少なくなったり、物質濃度が許容濃度よりも低くなったりすることがある。この場合には、薬品や水などを処理槽に加えることにより、溶液量や物質濃度を調整することができる。このような調整を行った場合には、調整後の溶液量や物質濃度を求めておき、この溶液量や物質濃度を基準として、上述した物質濃度の推定を行うことができる。
【0112】
(変形例)
本実施形態では、上記式(1)に基づいて汲出量fout(t)を求めているが、この汲出量fout(t)に加えて、以下に説明する汲出量fout’(t)を求めることができる。そして、汲出量fout(t)及び汲出量fout’(t)に基づいて、処理槽の汲出量を特定することができる。この場合には、処理槽の汲出量として、例えば、汲出量fout(t)及び汲出量fout’(t)の平均値(加算平均値、二乗平均値、加重平均値)を用いることができる。加重平均値を求める場合には、汲出量fout(t)及び汲出量fout’(t)のそれぞれに対して重み付けを行うことになるが、この重み付けは、汲出量fout(t)及び汲出量fout’(t)に対する信頼性を考慮して決めることができる。
【0113】
汲出量fout’(t)は、処理槽内の溶液の電気伝導度から推定できる。電気伝導度は、JIS K0130の規定に準じて公知の測定方法によって測定することができる。溶液中の物質濃度が変化すると、溶液の電気伝導度が変化するため、物質濃度が互いに異なる複数種類の溶液を用意しておき、これらの溶液について電気伝導度を測定しておけば、物質濃度及び電気伝導度の相関関係を特定することができる。したがって、前処理やめっき処理の各処理槽において電気伝導度を測定すれば、上述した相関関係に基づいて、測定した電気伝導度に対応する物質濃度を特定することができる。
【0114】
上流の処理槽から汲出された溶液は下流の処理槽に持ち込まれるため、下流の処理槽の物質濃度を推定するとき、上流の処理槽における汲出量fout’(t)を、下流の処理槽に溶液が持ち込まれたときの持込量finとみなすことができる。ここで、持込量finは、下記式(8)に基づいて求めることができる。
【0115】
【数11】
【0116】
上記式(8)において、finは持込量[L]、ce_curは下流の処理槽における持込前の物質濃度[%]、ce_aftは下流の処理槽における持込後の物質濃度[%]、ce_befは上流の処理槽の物質濃度[%]、Vtankは処理槽内の溶液の重量[L]である。物質濃度ce_cur,ce_aft,ce_befは、上述した物質濃度及び電気伝導度の相関関係を用いることにより、処理槽内の溶液の電気伝導度(測定値)から特定することができる。
【0117】
なお、溶液の持込だけが行われる処理槽については、溶液が下流の処理槽に汲出されないため、上記式(8)を適用することができない。この場合には、溶液の持込だけが行われる処理槽における持込量を、上流(直前)の処理槽における持込量と同じとみなすことができる。
【0118】
なお、図5図10で説明した処理(いわゆる機能)は、プログラムによって実現可能である。具体的には、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムを補助記憶装置に格納しておき、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出されたプログラムを制御部が実行することにより、各機能を動作させることができる。各機能は、1つの制御装置で動作させることもできるし、互いに接続された複数の制御装置によって動作させることもできる。
【0119】
上記プログラムは、コンピュータで読取可能な記録媒体に記録された状態において、コンピュータに提供することも可能である。記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【実施例
【0120】
図1に示すめっき工程において、めっき処理を行う処理槽内の物質濃度と、めっき処理の直後に行われる1回目の水洗処理を行う処理槽内の物質濃度と、1回目の水洗処理の直後に行われる2回目の水洗処理を行う処理槽内の物質濃度について、それぞれ推定した。
【0121】
浸漬脱脂処理で用いられる溶液としては、NaCO、NaPO、Na10、NaSiO及びBrij35(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)を含む溶液を用いた。酸洗浄処理で用いられる溶液としては、HSOを含む溶液を用いた。電解脱脂処理で用いられる溶液としては、NaCO、NaPO及びBrij35を含む溶液を用いた。活性化処理で用いられる溶液としては、HSOを含む溶液を用いた。めっき処理で用いられる溶液としては、NiSO、NiCl及びHBOを含む溶液を用いた。
【0122】
めっき工程の対象となる製品はバレルに収容し、バレルを各処理槽に浸漬させた。製品としてはネジやワッシャを用い、バレルに収容した製品の数量としては、1000~3000個とした。各前処理やめっき処理の直後に行われる水洗処理では、2つの処理槽を用意し、直列向流水洗(図2)を行った。
【0123】
めっき処理の直後に行われる水洗処理(1回目及び2回目)の処理槽には、製品に付着しためっき処理の溶液が移動するため、この処理槽の水洗水には、めっき処理の溶液(NiSO、NiCl及びHBO)が混合されることになる。そこで、めっき処理の物質濃度、水洗処理(1回目)の物質濃度及び水洗処理(2回目)の物質濃度の推定においては、Ni、B、Cl、SO 2-の濃度をそれぞれ推定した。
【0124】
一方、Ni及びBの濃度については、ICP発光分光分析によって測定するとともに、Cl及びSO 2-の濃度については、イオンクロマトグラフィーによって測定した。
【0125】
Ni、B、Cl、SO 2-の濃度を推定した結果(推定値)と、Ni、B、Cl、SO 2-の濃度を測定した結果(実測値)を図11図13に示す。図11は、めっき処理における物質濃度(Ni、B、Cl、SO 2-)の推定値及び実測値の経時変化を示し、図12は、水洗処理(1回目)における物質濃度(Ni、B、Cl、SO 2-)の推定値及び実測値の経時変化を示し、図13は、水洗処理(2回目)における物質濃度(Ni、B、Cl、SO 2-)の推定値及び実測値の経時変化を示す。
【0126】
図11図13に示すように、Ni、B、Cl、SO 2-の濃度のいずれについても、推定値は、実測値に沿った値を示した。したがって、本実施例のように物質濃度を推定することにより、物質濃度を化学分析等によって測定することなく、物質濃度を把握することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13