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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 25/12 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B01D25/12 101Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021062876
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158162
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】511237449
【氏名又は名称】有限会社ハイテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】浦田 隆司
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-090806(JP,A)
【文献】特開2012-066251(JP,A)
【文献】特開平03-146102(JP,A)
【文献】特開平03-038209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 25/12-38
B01D 33/00-82
B01D 35/00-34
C02F 11/12-16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持固定されている固定濾板と、
引き棒に支持された可動板と、
前記可動板に支持された可動濾板と、
少なくとも下方に開放部を備え、前記固定濾板と可動濾板の間に挟み込まれる濾布と、
前記濾布の前記開放部が閉鎖されるように濾布面を挟み込んで前記開放部を閉鎖し、前記濾布内部に密封された濾過空間を形成する濾枠体と、
前記濾過空間内へ原液を供給する原液供給装置と、
前記可動濾板と前記固定濾板の間に前記濾過空間が形成された前記濾布を挟み込みつつ、前記引き棒を引いて前記可動板を前記固定濾板方向に引き締め、前記濾布を圧搾する締付け部を備えた可動式の濾過装置において、
前記可動濾板が前記引き棒上に吊下できる可動濾板吊下アーム部を備え、前記可動濾板を前記可動板から取り外せば、前記可動濾板吊下アーム部を介して前記引き棒上にスライド自在に吊下支持できる構造としたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記可動濾板の前記可動板への取り付け状態において、前記可動濾板吊下アーム部の高さが前記引き棒上に当接している高さであることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置
【請求項3】
前記固定濾板が前記引き棒上に吊下できる固定濾板アーム部を備え、
前記固定濾板を固定状態から取り外せば、前記固定濾板アーム部を介して前記引き棒上にスライド自在に吊下支持できる構造としたことを特徴とする請求項1または2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記固定濾板の前記固定状態において、前記固定濾板アーム部の高さが前記引き棒上に当接している高さではなく、前記固定濾板アーム部が前記引き棒とは異なる固定フック部材に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の濾過装置
【請求項5】
前記固定濾板の前記固定状態において、前記固定濾板アーム部の高さが前記引き棒上に当接している高さであることを特徴とする請求項3に記載の濾過装置
【請求項6】
前記可動濾板、前記濾布、前記濾枠体のセットが、前記固定濾板と対向する方向に複数個設けられたものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定濾板と可動濾板の間に配置された濾布により形成された濾過空間内に原液を供給して濾過を行う可動式の濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な可動式の濾過装置の構造を図11に示す。
図12に示すように、従来の可動式の濾過装置は、濾布1、固定板2、可動濾板3、可動板4、サイドバー(締付け装置)21を備えた構成となっている。濾布1により囲まれる濾室が形成されており、濾室に対して原液を供給することにより、流体供給管から流体状の原液が供給されて濾室内に流体が入り、一定圧に保持する。その後、固定板2と可動板4および可動濾板3の間で濾布1が圧接されることにより、濾室の容積が小さくなるとともに、濾室内の水分が濾布1を通して各濾過液出口から排出され、濾液が濾過されてゆく仕組みとなっている。
【0003】
ここで、従来の一般的な可動式の濾過装置では、サイドバー(締付け装置)21により、固定板2、可動板4、可動濾板3、濾布1に対して大きな圧力を加えて圧搾するため、各部材に大きな構造強度が求められる。そのため、固定板2が強固にフレームに固定され、また、可動板4、可動濾板3はプレス時に引き締め移動が可能なものの、これらも相互に強固に固定されていた。
【0004】
【文献】特開2003-33607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に述べたように、従来の一般的な可動式の濾過装置では、機械的に大きな構造強度を確保するため、固定板2とフレームが強固に固定されており、また、可動板4、可動濾板3などが強固に連結されている。これらは大きなボルトナット類で強固に連結されており、それらの分解・分離は容易ではなく、日々のメンテナンスは行わず、長期間隔を空けた特別なメンテナンス時期にのみ工場の操業を一時停止した上で、それらの分解・分離を伴うメンテナンスを行っていた。
そのため、装置が通常の稼働状態にある場合、簡単にはメンテナンスができない状態であり、外部から固定板2や可動板4へのメンテナンス時のアクセスがしなくい状態にあった。
【0006】
一般に工場の操業は連続操業の方が効率良いとされ、従来の一般的な可動式の濾過装置を導入・設置している工場では、3交代勤務などで24時間稼働することが基本とされている。そのため、工場の操業を一時停止した上でのメンテナンスは1週間、1ヶ月など相当長期間のインターバルで行わざるを得なかった。
【0007】
また、従来の一般的な可動式の濾過装置では、大きな構造強度を確保するため、固定板2、可動板4、可動濾板3の各部材の重量が相当大きく、固定板2、可動板4、可動濾板3を取り外し、分解したうえで、運搬して洗浄、清掃などを行っており、メンテナンス作業自体も相当大変なものであった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み案出されたものであって、装置の構造を簡便なものとしつつ、重量が相当大きい部材である固定板、固定濾板、可動板、可動濾板などの各部材のメンテナンスを簡便とし、メンテナンス時間も短く、メンテナンス作業員の負荷を低減することができる濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の濾過装置は、支持固定されている固定濾板と、引き棒に支持された可動板と、前記可動板に支持された可動濾板と、少なくとも下方に開放部を備え、前記固定濾板と可動濾板の間に挟み込まれる濾布と、前記濾布の前記開放が閉鎖されるように濾布面を挟み込んで前記開放を閉鎖し、前記濾布内部に密封された濾過空間を形成する濾枠体と、前記濾過空間内へ原液を供給する原液供給装置と、前記可動濾板と前記固定濾板の間に前記濾過空間が形成された前記濾布を挟み込みつつ、前記引き棒を引いて前記可動板を前記固定濾板方向に引き締め、前記濾布を圧搾する締付け部を備えた可動式の濾過装置において、前記可動濾板が前記引き棒上に吊下できる可動濾板吊下アーム部を備え、前記可動濾板を前記可動板から取り外せば、前記可動濾板吊下アーム部を介して前記引き棒上にスライド自在に吊下支持できる構造としたことを特徴とする濾過装置である。
【0010】
ここで、可動濾板吊下アーム部を支持する部材として、前記可動濾板の側方に位置する引き棒を兼用することができる。つまり、可動濾板の可動濾板吊下アーム部の高さを締付け部の引き棒の上面の高さと略同一にすれば、重い可動濾板を昇降する必要がなくメンテナンス作業が容易となる。
これは一例であり、可動濾板吊下アーム部の高さについてバリエーションがある。上記は、第1のバリエーションであり、可動濾板の可動濾板吊下アーム部の高さを締付け部の引き棒の上面の高さと略同一とするパターンである。つまり、可動濾板の可動濾板吊下アーム部を吊下する部材として、必須の構造物である締付け部の引き棒を兼用した例である。
第2のバリエーションは、締付け部の引き棒とは別体として、可動濾板のスライドレールなるものを可動濾板の側方に設けておき、可動濾板の可動濾板吊下アーム部の高さをその可動濾板のスライドレールの高さに合わせておけば、やはり、可動濾板を可動板から取り外せば、可動濾板が可動濾板吊下アーム部を介して、当該可動濾板のスライドレールに載せ置いて吊下支持できる。可動濾板のスライドレールに沿って可動濾板がスライド移動できれば、可動濾板を可動濾板のスライドレールに吊下支持したままで簡単に可動板から分離することができる。
上記のいずれのバリエーションであっても、可動濾板を可動板から分離した状態となった後も、可動板が締付け部の引き棒に取り付けられた状態で支持される一方、可動濾板が可動濾板吊下アーム部を介して締付け部の引き棒で吊下支持されることにより、可動濾板を可動板から分離した状態にてスライド移動できる。つまり、可動板と可動濾板の間の空間を拡げることができ、可動板の両面や、可動濾板の両面のメンテナンス作業などを吊下状態のまま行うことができる。
【0011】
なお、従来であれば、可動板と可動濾板が一体になった状態のまま、相当大きい重量を支えつつ、濾過装置から取り外して外部に取り出さなければならなかったが、本発明の濾過装置では、可動板は締付け部の引き棒に取り付けられたまま、かつ、可動濾板は引き棒の上に吊下させた状態のままで分離することができ、可動濾板を吊下させた状態のままスライド移動させ、可動板との間の間隙を拡げれば、可動板の表面、可動濾板の裏面(可動板に当接していた面)を剥き出しにすることができ、簡単に外部からアクセスできる。そのため、吊下させた状態のまま洗浄や清掃などのメンテナンス作業を行うことができる。
【0012】
さらに、本発明の濾過装置において、可動濾板のみならず、固定濾板についても同じ構造を持たせることができる。つまり、固定濾板が引き棒上に吊下できる固定濾板アーム部を備えた構造であり、固定濾板を固定状態から取り外し、固定濾板アーム部を介して引き棒上にスライド自在に吊下支持できる構造とすることができる。
【0013】
なお、ここで、固定濾板アーム部の高さについてもバリエーションがある。
第1のバリエーションは、固定濾板の固定状態において、固定濾板アーム部の高さが引き棒上に当接している高さではないものである。この場合、固定濾板アーム部が別途、何らかの固定フック部材に取り付けられている。例えば、引き棒よりも高い位置に設けられたフックのような部材があり、固定濾板の固定位置において、当該フックに係止されて固定しておく。このバリエーションであれば、締付け部による毎回の引き棒の引っ張り動作に、固定濾板および固定濾板アーム部が干渉せず、装置の稼働が安定しやすい。
【0014】
第2のバリエーションは、固定濾板の固定状態において、固定濾板アーム部の高さが引き棒上に当接している高さである。この場合、締付け部による毎回の引き棒の引っ張り動作に、固定濾板および固定濾板アーム部が干渉するが、引き棒よりも高い位置に設けられたフックのような部材が不要となる。
【0015】
次に、本発明の濾過装置では、可動濾板、濾布、濾枠体のセットを固定濾板と対向する方向に複数個設けた構造とすることができる。つまり、複数の濾布を用いた濾過処理が同時並行に行うことができる。
このように、複数の可動板、可動濾板がある濾過装置であっても、上記同様に、複数の可動板、可動濾板とも吊下させた状態のままでそれぞれ分離することができ、各々を吊下させた状態のまま、可動板の両面、可動濾板の両面(可動板に当接していた面も含む)を剥き出しにすることができ、簡単に外部からアクセスでき、吊下させた状態のまま洗浄や清掃などのメンテナンス作業を行うことができる。
【0016】
なお、上記構成において、固定濾板が濾板を貫通する供給路を備えており、原液注入装置から供給される原液を、供給路を介して固定濾板を貫通させて濾布まで供給する構成とすることが好ましい。
【0017】
また、上記構成において、原液注入装置が、原液注入工程および濃縮濾過工程において、供給路を介した原液の注入において印加圧力を制御する圧力制御機構を備えた構成とすることが好ましい。
【0018】
また、上記構成において、内筐体の内部に弾性体により開閉が制御される逆止弁が取り付けられ、原液供給ホース側から濾布内への濾液の流入方向には導通できるが、濾布内から原液供給ホース側への逆流はできないように制御される構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の濾過装置によれば、可動板、可動濾板とも吊下させた状態のまま分離することができ、吊下させた状態のまま、可動板の両面、可動濾板の両面(可動板に当接していた面も含む)を剥き出しにすることができ、簡単に外部からアクセスできる。そのため、吊下させた状態のまま洗浄や清掃などのメンテナンス作業を行うことができる。
また、本発明の濾過装置によれば、固定板、固定濾板とも吊下させた状態のまま分離することができ、吊下させた状態のまま、固定濾板の裏面(固定されていた面)を剥き出しにすることができ、簡単に外部からアクセスできる。そのため、吊下させた状態のまま洗浄や清掃などのメンテナンス作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の濾過装置100の構成例を簡単に示す図である。
図2】可動濾板40の支持状態を分かりやすく示した図である。
図3】可動濾板40が、可動濾板吊下アーム部41と第2の可動濾板吊下アーム部42を備えた構成を示す図である。
図4】固定濾板20の固定状態において、固定濾板アーム部21の高さが引き棒71上に当接している高さである例を示す図である。
図5】固定濾板20の固定状態において、固定濾板アーム部21の高さが引き棒71上に当接している高さではない例を示す図である。
図6】「濾過空間形成工程」を簡単に示す図である。
図7】「原液注入工程」を簡単に示す図である。
図8】「脱水濾過工程」および「取り出し工程」を簡単に示す図である。
図9】本発明の濾過装置100において実行されるメンテナンスの諸工程を模式的に簡単に示した図(その1)である。
図10】本発明の濾過装置100において実行されるメンテナンスの諸工程を模式的に簡単に示した図(その2)である。
図11】実施例2にかかる濾過装置100aの構成を簡単に示す図である。
図12】従来の一般的な可動式の濾過装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の濾過装置の実施形態を説明する。ただし、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に示した具体的な用途や形状・寸法などには限定されない。
実施例1として、可動濾板、濾布、濾枠のセットが1つの単一構成の構成例、実施例2として、可動濾板濾布、濾枠のセットが複数セットある複数構成の構成例を以下に説明する。
【実施例1】
【0022】
実施例1として本発明の濾過装置100の構成例を示す。
図1は、本発明の濾過装置100の構成例を簡単に示す図である。
図1(a)は、本発明の濾過装置100の構成例を簡単に示す側面図である。
図1(b)は、本発明の濾過装置100の構成例を簡単に示す平面図である。
なお、本体内部の機械的構造については詳しい図示を省略している。
また、図1(b)では、さらに濾枠体60の図示は省略している。
図1に示すように、濾過装置100は、固定板10、固定濾板20、可動板30、可動濾板40、濾布50、濾枠体60、締付け部70、引き棒71、原液注入装置80、本体筐体90を備えた構造となっている。
なお、実施例1は可動板および可動濾板40が1つで濾布50や濾枠60も1セットの構成例となっている。
【0023】
まず、締付け部70を説明する。
締付け部70は、本体装置90に搭載され、引き棒71を摺動させる機構である。引き棒71を摺動させる機構は限定されない。図1では締付け部70の存在のみを簡単に図示している。
引き棒71は、本体90内に搭載された締付け部70から可動板30にわたって取り付けられている部材である。締付け部70が引き棒71を摺動することにより、引き棒71の先端の可動板30をスライドさせることができる構造となっている。
この構成例では、引き棒71は上段側と下段側の上下2段の構造となっている。このように、引き棒71が上下2段の構造となっておれば、締付け部70の引き締めにより濾布50を圧搾濾過する処理において、上下バランスを取りつつ均衡して引き棒71を介して引き締める上では、引き棒71が中央の1本しかない構造よりも、上下2段の構造である方が、上下バランスを取りやすくなる。この構成例では、引き棒71は上段側と下段側の上下2段の構造として説明をする。
締付け部70および引き棒71の形状などは限定されず、可動板30をスライド可能に把持する構造であれば良い。
なお、引き棒71の長さは限定されないが、濾過装置100の稼働時にスライド移動できる距離よりも、メンテナンス用に向け、より長い距離が確保されていても良い。例えば、メンテナンス時に保守員が入り込めるぐらいの距離、例えば1m~2m程度の距離を確保する必要があれば、引き棒71の長さを1m~2m程度長い距離とすることが好ましい。
【0024】
次に、可動板30を説明する。
可動板30は、引き棒71の先端で把持されており、引き棒71の摺動によってスライド移動する。なお、圧搾濾過時に大きな機械的圧力がかかるため、金属や硬質樹脂などの機械的構造強度が大きな素材が好ましい。
可動板30の形状は限定されないが、可動濾板40を介して濾布50を圧搾濾過するため、濾布50に対向する側は、濾布50と同等またはそれ以上の大きな平面を持つことが好ましい。また、厚みとしては、引き棒71と強固に連結するため引き棒の把持部と連結できる程度の厚みは必要である。
【0025】
可動板30は可動濾板40を支持する部材でもある。可動濾板40は可動板30に取り付けられているので、可動板30と可動濾板40が併せてスライドすることとなる。なお、可動濾板40は濾布50に当接しているので、濾布50が圧搾されて濾布50内の濾過物が濾過されることとなる。
可動濾板40を取り付ける構造は限定されないが、後述するように可動濾板40は可動濾板吊下アーム部41を介して引き棒71に吊下支持されるので、可動板30と可動濾板40はねじ止め等で連結しておいても良く、また、ねじ止め等の連結はせず、締付け部70の引き締め時に可動板30が可動濾板40を押圧することで両者が物理的に一体化する構造でも良い。
【0026】
次に、可動濾板40を説明する。
可動濾板40は可動板30と一体化して従動するようにスライドする部材である。可動濾板40の表面(濾布50の当接面側)は濾布50に当接する。可動濾板40は、引き棒71が可動板30をスライド移動させると、可動板30と一体に従動するものであり、濾布50を圧搾濾過するものである。
【0027】
可動濾板40は、引き棒71および可動板30により支持されている。
図2は、可動濾板40の支持状態を分かりやすく示した図である。
図2に示すように、可動濾板40は、可動板30に当接しており支持されている。なお、上記したように、可動板30と可動濾板40はねじ止め等で連結しておいても良く、また、ねじ止め等の連結はせず、締付け部70の引き締め時に可動板30が可動濾板40を押圧することで両者が物理的に一体化する構造でも良い。
可動濾板40は、大きな平板状のものであり素材は限定されないが、例えば、金属素材でも良く、また、適度な硬度を持った樹脂素材でも良い。
可動濾板40は、図2に示すように、側方に可動濾板吊下アーム部41を備えた構造となっており、当該可動濾板吊下アーム部は引き棒71の上に当接している。
可動濾板吊下アーム部41は、可動濾板40を引き棒71に吊下させる部材である。可動濾板吊下アーム部41は、引き棒71の上面に引っ掛かるように可動濾板40の側面から外方へ突設された棒状の部材となっている。つまり、可動濾板吊下アーム部41を介して引き棒71上をスライド自在に吊下支持されており、固定濾板20方向へスライド自在になっている。
つまり、可動板30による支持がなく遊離している状態であっても、可動濾板40の全重量は可動濾板吊下アーム部41を介して引き棒71により支持され得る構造となっている。
図2(c)は、可動板30から可動濾板40が分離した状態を示しており、可動濾板40の全重量が可動濾板吊下アーム部41を介して引き棒71により支持されていることが分かる。
引き棒71は、可動濾板吊下アーム部41が載置された状態で滑るようにスライド移動できるレールのように平滑化された構造となっている。
なお、可動濾板吊下アーム部41が引き棒71の上をスムーズにスライドできるよう、ローラーなど摩擦を少なくする部材を搭載する工夫なども可能である。
【0028】
次に、オプションとして、可動濾板40のスライド移動をより安定させる工夫について述べる。
可動濾板40のスライド移動において、垂直に垂下された状態を保ちながら水平方向に固定濾板20の方へ移動することが好ましい。ここで、濾過装置100の稼働中は締付け部70により機械的に安定してスライド移動(圧搾工程)することができるが、特に、メンテナンス時には、可動濾板40が可動板30から分離され、可動濾板40は可動濾板吊下アーム部41により引き棒71に載せ置いて吊下されただけの状態となっている。ここで、可動濾板40がメンテナンス時にスライド移動する際にも安定的に垂直に垂下された状態を保ちながら水平方向にスライド移動するには、下方部分にもガイドとなる機構があれば、上方、下方とも平行を保ちながらスライド移動しやすくなる。
そこで、オプションとして、締付け部70が可動濾板40の側方(下方付近)に第2の可動濾板吊下アーム部42を備えた構造とし、引き棒71の下段側に当接させる工夫をする。
【0029】
図3は、可動濾板40が、可動濾板吊下アーム部41と第2の可動濾板吊下アーム部42を備えた構成を示す図である。
可動濾板吊下アーム部41は上段にある引き棒71と当接しており、第2の可動濾板吊下アーム部42は下段にある引き棒71と当接している。
可動濾板40が、可動濾板吊下アーム部41と第2の可動濾板吊下アーム部42を備えた構成であれば、図3(c)のように、可動濾板40が可動板30から分離して吊下状態となった場合、スライド移動が安定するという効果が得られる。
第1には、吊下支持する重量が分散するのでスライド移動が楽になる。
第2には、可動濾板吊下アーム部41と上段の引き棒71のみで吊下支持する場合、急いでスライド移動すると、可動濾板吊下アーム部41を揺動の支点としてスライド方向にスイングしてしまう可能性があり得るが、第2の可動濾板吊下アーム部42と下段の引き棒71でも吊下支持していれば、このようなスイングの発生を抑制できる。第2の可動濾板吊下アーム部42が下段の引き棒71によりガイドされ、安定したスライド移動が可能となる。
なお、第2の可動濾板吊下アーム部42が引き棒71をスムーズにスライドできるよう、ローラーなど摩擦を少なくする工夫なども可能である。
【0030】
次に、濾過装置100の稼働時における可動板30および可動濾板40の動きを説明する。
濾過装置100の稼働時においては、可動板30および可動濾板40が一体となったまま、図1に示す締付け部70の稼働により引き棒71を介して、可動板30および可動濾板40が油圧等の強い力で固定濾板20に対して接近(圧搾)したり、離隔(開放)したりする構造となっている。
可動板30と可動濾板40は固定濾板20に並行して対向するように配置されている。締付け部70の制御のもと可動板30と可動濾板40は一体に前後にスライド移動し、固定濾板20との間の相対的距離が可変となっている。可動濾板40の形状は少なくとも濾枠体60の枠内に嵌り込む部分を備えている。ここでは後述するように、可動濾板40の外形が濾枠体60の枠内に嵌り込む形状と大きさになっているものとして説明する。つまり可動濾板40は締付け部70の制動により固定濾板20に近づいて濾枠体60の枠内に嵌り込んで濾布50内に形成されている濾過空間を押圧したり、固定濾板20から遠ざかって濾枠体60の枠内から外れて濾布50内に形成されている濾過空間の押圧を解除したりする。
【0031】
引き棒71は締付け部70により装置本体90から前後(固定濾板20の濾面に対して垂直方向)に出し入れするように伸縮するものとなっている。つまり、締付け部70により引き棒71が垂直方向に出し入れされる動きに合わせて、可動板30が可動濾板40とともに、固定濾板20に対向して移動する仕組みとなっている。
【0032】
次に、固定板10,固定濾板20を説明する。
固定板10は、大きな平板状のものであり、締付け部70の取り付け部材71を介して装置本体90に対して取り付けられた状態となっている。なお、装置本体90の一部をなすものでも良い。素材としてはステンレス、アルミニウム材などで良い。樹脂素材であっても良い。
固定板10の表面に密着するように固定濾板20を着脱可能に取り付けることができる構造となっている。この固定板10における固定濾板20の取り付け構造は特に限定されないが、例えば、固定板10が固定濾板20を載置、吊下または係止する構造を備えている。
この例では、図1図4に示すように、固定板10は装置の装置本体90の壁面に取り付けられ、装置本体90の内部に埋設されている例となっている。装置本体90の壁面そのものが固定板10を兼用している構成でも良い。つまり、固定板10として独立した構成ではなく、装置本体90の壁面で良く、事実上省略されていても良い。
【0033】
次に、固定濾板20は、本発明の濾過装置の稼働中には固定支持された板状体であり、濾布50に当接する面を供する。
固定濾板20は、濾布50に対向しており、後述するように可動板30と可動濾板40が一体となって締付け部70により稼働することによって濾布50を押圧して原液を圧搾する際に、固定濾板20は可動濾板40との間で濾布50を圧搾濾過する面となる。
固定濾板20本体は、大きな平板状のものであり素材は限定されないが、例えば、適度な硬度を持った樹脂素材とする。
この例では、固定濾板20は、固定濾板吊下アーム部21を備えた構成となっている。このように、固定濾板20は、装置本体90に対して固定支持されており、固定濾板吊下アーム部21を介して、引き棒71により支持されている。
【0034】
図4および図5は、固定濾板20の支持状態を分かりやすく示した図である。
図4は、固定濾板20の固定状態において、固定濾板アーム部21の高さが引き棒71上に当接している高さである例を示す図である。
図5は、固定濾板20の固定状態において、固定濾板アーム部21の高さが引き棒71上に当接している高さではなく、固定濾板アーム部21が引き棒71とは異なる固定フック部材22に取り付けられている例を示す図である。
【0035】
まず、図4の例を説明する。
図4に示すように、固定濾板20は、この構成例では固定板10に当接しており支持されている。なお、上記したように、固定板10と固定濾板20はねじ止め等で連結しておいても良く、また、ねじ止め等の連結はせず、締付け部70の引き締め時に濾布50を介して押圧された固定濾板20が固定板10や装置本体90に押圧されることで両者が物理的に一体化する構造でも良い。
また、固定濾板20は、図4に示すように、側方に固定濾板吊下アーム部21を備えた構造となっており、当該固定濾板吊下アーム部21は引き棒71の上に当接している。つまり、固定板10による支持がなく遊離している状態であっても、固定濾板20の全重量は固定濾板吊下アーム部21を介して引き棒71により支持され得る構造となっている。
図4(c)は、固定板10や装置本体90から固定濾板20が分離した状態を示しており、固定濾板20の全重量が固定濾板吊下アーム部21を介して引き棒71により支持されていることが分かる。
つまり、図4(c)に示したように、固定板10や装置本体90から固定濾板20が分離した状態では固定板10による支持はなくなるものの、引き続き、固定濾板吊下アーム部21を介した引き棒71によって吊下支持され続ける。ここで、固定濾板吊下アーム部21を介して引き棒71の上に載せ置かれて吊下されている状態であるので、スライド移動できるものとなっている。
引き棒71は、固定濾板吊下アーム部21が載置された状態で滑るようにスライド移動できるレールのように平滑化された構造となっていることが好ましい。
なお、固定濾板吊下アーム部21が引き棒71の上をスムーズにスライドできるよう、ローラーなど摩擦を少なくする部材を搭載する工夫なども可能である。
【0036】
次に、図5の例を説明する。
図5の例では、濾過装置100が稼働中である場合において、固定濾板20は固定状態にあり、固定濾板アーム部21が引き棒71とは異なる固定フック部材22に取り付けられている。つまり、固定フック部材22から取り外さない限り、固定濾板20はスライド移動できない状態にある。
この図5の構成例のメリットの1つは、図4の構成のデメリットがないことである。つまり、図4の構成であれば、濾過装置100が稼働中である場合において引き棒71が前方に繰り出したり後方に引き締められたりして摺動する一方、固定濾板20および固定濾板アーム部21は固定状態にあるため、引き棒71の上に固定濾板アーム部21が当接していると、両者が常に接触しながら摺動してしまう。この状態では、両者には摩擦力が発生して機械音が発生したり熱が生じたり機械的なテンションが掛かり続けたりする。しかし、図5の構成であれば、濾過装置100が稼働中は、固定濾板アーム部21は引き棒71には影響を受けない異なる高さの固定フック部材22に取り付けられている。そのため、図4で生じ得るデメリットがない。ただし、図5の構成の場合、図5(c)のように、メンテナンス時には、固定フック部材22から引き棒71上に固定濾板20を降ろさなければならない。
なお、固定濾板20には他の役割がある。例えば、「原液注入工程」では上記したように濾布50内に形成された濾過空間内に原液注入するための供給路を提供する役割を果たし、「濾過空間形成工程」では固定濾板20と後述する濾枠体60とで濾布50を挟み込んで濾布50の開口を塞ぐ役割を果たし、「脱水濾過工程」では固定濾板20と可動濾板40により濾布50を左右から押圧して脱水濾過を行う役割を果たす。
【0037】
次に、濾布50について説明する。
濾布50は、固定濾板20と可動濾板40との間に配置され、固定濾板20の原液注入口に連通した経路を備えるとともに少なくとも下方に開放部を備えたものである。ここでは、濾布50は上方の開放部51と下方の開放部52が設けられた筒状の構成のものとして説明する。
濾布50は、例えばポリプロピレン繊維などより構成した布よりなり、固定濾板20側の濾布片の中央には原液供給のために原液供給経路の開閉を行う開閉バルブ53が設けられており、固定濾板20内の原液供給口に連通している。
なお、この構成例では、固定板10および固定濾板20の壁面には原液を濾布50内に供給するための供給路が形成されているものとする。
【0038】
図6は「濾過空間形成工程」を簡単に示す図である。
図6は濾過装置100のうち濾布50を取り出して分かりやすく示している。濾布50の上部には濾布吊り下げ棒54を挿入し、濾布吊り下げ棒54を介して濾布50が吊り下げられている。また、濾布50の下部には濾布下垂棒55を取り付け、濾布50が真っ直ぐ張られるように重みを与えている。
濾布50は、図6(b)に示すように、上方の開口と下方の開口が濾枠体60によってそれぞれ閉鎖されることにより袋状の密閉空間を形成する。この密閉空間が濾過空間となる。
【0039】
次に、濾枠体60を説明する。
濾枠体60は、濾布50の開放部が閉鎖されるように濾布面を挟み込んで濾布50内部に密封された濾過空間を形成するものである。ゴムまたはプラスチックなどのある程度弾力性のある素材で形成され、中空のフレーム状の枠体である。枠の大きさは可動濾板40が嵌り込む大きさとなっている。
ここでは、濾枠体60も固定濾板20に対して相対的に移動するが、その移動は、例えば、可動濾板40に連動して移動する仕組みでも良く、また、例えば、締付け部70により可動濾板40とは独立に制動されて移動する仕組みでも良い。濾枠体60が移動して濾布50を挟み込んで固定濾板20と密着することにより、固定濾板20と濾枠体60可動濾板40とで囲まれた空間が濾布50内に形成される濾過空間となる。後述する「濾過空間形成工程」において、固定濾板20に対して濾枠体60が濾布50を挟み込んだまま圧着されることにより濾布50の上方の開口51と下方の開口52が密封される。
【0040】
次に、原液注入装置80を説明する。
原液注入装置80は、濾過空間内に濾過すべき原液を所定圧力で加圧供給する「原液注入工程」を制御するものであり、供給路を介して外部から供給される原液を濾過空間内に所定圧力で注入するポンプ機構を備えた装置である。この構成例では供給路が装置本体90および固定濾板20を介して濾布50にまで連通しており、この供給路に対して所定圧力で原液を注入する。なお、後述するようにここでは「原液注入工程」で濃縮濾過も行うため原液注入装置80には原液供給の圧力制御機構が必要である。
【0041】
図7は、「原液注入工程」を簡単に示す図である。原液を濾布50内に供給するために設けられている固定板10および固定濾板20の壁面の供給路を示している。この例では開閉バルブ53が取り付けられている。
なお、原液注入装置80が固定濾板20を介さずに濾布50内の濾過空間に原液を供給する構成も可能であり、その場合は固定濾板20内に原液供給路を形成しておく必要はない。図6では原液供給路は装置本体90内から固定濾板20を介して濾布50まで貫通している様子が模式的に示されている。
【0042】
図7(a)は開閉を行う開閉バルブ53の一例の外観を簡単に示す図である。また、図7(b)は、開閉バルブ53の構成例の一例を示す図である。なお、本発明の濾過装置100の開閉バルブは以下の構成例に限定されない。
図7(a)に示すように、濾布50の略中央部分に原液供給のために布製の原液供給ホースが縫い合わされ、固定板10および固定濾板20内の原液供給口に連通しており、この原液供給ホースを取り囲むように開閉バルブ53が設けられている。ここで、開閉バルブ53は、濾布50に設けられた原液供給ホース部分の周縁を挟み込むようにしっかりと挟持している。
【0043】
次に、本発明の濾過装置100の稼働時とメンテナンス時の流れを簡単に追って説明する。
本発明の濾過装置100の稼働は、「濾過空間形成工程」-「原液注入工程」-「脱水濾過工程」-「取り出し工程」を1ストロークとし、このストロークの繰り返しにより稼働する。
【0044】
つまり、本発明の濾過装置100の稼働時は、図6に示す「濾過空間形成工程」において、濾布50と濾枠体60により、濾過密閉空間が形成されたのち、図7に示す「原液注入工程」において、濾液の原液が注入される。
図8(a)に示す「脱水濾過工程」においては、締付け部70は可動濾板40を所定圧力で固定濾板20方向へ移動させて濾過空間を加圧して、濾布50内の濾過空間(濾室)の体積を小さく圧縮するにつれ、濾布50の内部の圧力が向上し、原液が濾布を滲み出して濾過が行われる。
脱水濾過工程の終了後、図8(b)に示す「取り出し工程」においては、可動濾板40を固定濾板20から離し、濾布50を濾枠体60から離して下方が開放された吊り下げ状態とする役割を果たす。
このように、本発明の濾過装置100の稼働時は、図6から図8の工程が繰り返される。
【0045】
次に、上記構成を備えた本発明の濾過装置100において実行されるメンテナンスの諸工程を簡単に説明する。
濾過装置100は、濾過工程の終了時において、固定濾板20は固定板10に取り付けられており、可動濾板40は可動板30に取り付けられている状態となっている。なお、濾布50の中にあった原液は圧搾されて濾液は抜かれ、濾布50の中に残っていた残渣は下方の開口52から抜き出されて空になっている。
濾過工程は、濾過工程1ストロークごとに図6から図8の動作を繰り返すが、メンテナンス工程に移行するのは、所定回数の濾過工程が実行された後、または所定期間が経過した後、メンテナンス工程に移行する。
メンテナンス工程に移行する際、すべての部材の動きは一旦停止する。メンテナンス要員は、濾過装置100の稼働状態を停止し、メンテナンスモードに移行する。
【0046】
図9から図10は、本発明の濾過装置100において実行されるメンテナンスの諸工程を模式的に簡単に示した図である。各図とも側断面において模式的に示したものであり、説明に関する要素以外の図示は省略した。
図9から図10は、本発明の濾過装置100のメンテナンス時の動きを説明する図である。なお、これら図9図10では、固定濾板20、可動濾板40のメンテナンス時の吊下に直接関係のない部材の図示は省略している。なお、この例では、可動濾板は図2のタイプの例とし、固定濾板20は図4のタイプの例として説明する。
【0047】
濾過装置100のメンテナンス工程1として、メンテナンス要員は、図9(a)に示すように、可動濾板40を可動板30から取り外して分離する。可動濾板吊下アーム部41により、引き棒71上に吊下支持された状態となる。つまり、可動濾板40の全重量が可動濾板吊下アーム部41を介して引き棒71により吊下支持された状態となる。
【0048】
次に、濾過装置100のメンテナンス工程2として、メンテナンス要員は、図9(b)に示すように、可動板30から分離して可動濾板40が可動濾板吊下アーム部41を介して引き棒71に吊下支持されているので、スライド自在になっている。可動濾板40の重量は引き棒71に吊下支持されているので、メンテナンス作業員は、比較的楽に可動濾板40を押すだけでスライド移動できる。
従来であれば、日々のメンテナンスは、濾布50に当接していた面、つまり可動濾板40の表面のみがアクセス可能であり、可動濾板40の表面のみをメンテナンスすることが中心であったが、本発明の濾過装置100であれば、図9(b)のように、可動濾板40をスライド移動させれば、可動濾板40の表面のみならず裏面にも簡単にアクセスすることができ、可動濾板40の両面をメンテナンスできる。つまり、可動濾板40の表面(濾布50を圧搾する面)のみならず、稼働中にはアクセスできなかった可動板30の表面(可動濾板40を取り付けていた面)、可動濾板40の裏面(可動板30に取り付けていた面)、が露出して、メンテナンス要員によりアクセス可能となる。
【0049】
メンテナンス要員は、図9(b)に示すように、メンテナンス工程2で露出した可動板30の表面(可動濾板40を取り付けていた面)、可動濾板40の裏面(可動板30に取り付けていた面)、可動濾板40の表面(濾布50を圧搾する面)に対して洗浄、清掃を行う。
なお、その間も、可動板30は引き棒に支持された状態であり、可動濾板40は引き棒71に吊下された状態であり、メンテナンスが容易である。
【0050】
次に、メンテナンス工程3として、メンテナンス要員は、図10(a)に示すように、固定濾板20を固定板10から分離する。分離した状態において、固定濾板20は固定板10や装置本体90による支持がなくなるが、図9(a)に示すように、固定濾板20が固定濾板吊下アーム部21を介して引き棒71に吊下されている。
メンテナンス要員は、固定濾板20を押してスライド移動させ、固定濾板20を固定板10や装置本体90からから離隔する。ここで、稼働中にはアクセスできなかった、固定板10や装置本体90の表面(固定濾板20を取り付けていた面)、固定濾板10の裏面(固定板10に取り付けていた面)が露出して、メンテナンス要員によりアクセス可能となる。
【0051】
次に、メンテナンス工程4として、メンテナンス要員は、図10(b)に示すように、メンテナンス工程3で露出した固定板10の表面(固定濾板20を取り付けていた面)、固定濾板20の表面(濾布50を圧搾する面)、固定濾板20の裏面(固定板10に取り付けていた面)、固定板10の表面(固定濾板20を取り付けていた面)に対して洗浄、清掃を行う。
なお、その間も、固定濾板20は固定濾板吊下アーム部21を介して引き棒71に吊下された状態である。
【0052】
メンテナンス工程5として、メンテナンス要員は、メンテナンス工程4、メンテナンス工程3、メンテナンス工程2、メンテナンス工程1と逆に辿って濾過装置100を組み立てて、メンテナンス工程前のデフォルト状態に戻し、メンテナンス工程を終了する。
【0053】
以上、実施例1にかかる本発明の濾過装置100によれば、所定のタイミングでメンテナンス作業を実行でき、可動濾板40の表面のみならず裏面、固定濾板の表面のみならず裏面、さらに、可動板30の表面のみならず裏面、固定板10の表面も洗浄、清掃を簡単に可能となっている。
【実施例2】
【0054】
実施例2にかかる本発明の濾過装置100aの構成について説明する。
実施例2にかかる本発明の濾過装置100aは、実施例1で説明した可動濾板40、濾布50、濾枠体60のセットが、固定濾板20と対向する方向に複数個設けられて並列化された構成となっており、いわゆる並列処理により、濾過処理能力を向上せしめたものである。
【0055】
図11は実施例2にかかる濾過装置100aの構成を模式的に示した図である。
図11の例は、可動濾板40、濾布50、濾枠体60のセットが1つ増えた例(2つの並列処理構成)であるが、セット数が増えても同様に考えれば良い。
図11に示すように、実施例2にかかる濾過装置100aは、右から、固定板10、固定濾板20、濾布50-1、可動濾板40-1、濾枠体60-1、濾布50-2、可動濾板40-2、濾枠体60-2が設けられ、締付け部70により可動板30の移動に伴い、各可動濾板40-1,40-2が連動して移動する仕組みとなっている。
【0056】
各々の段において、可動濾板40、濾布50、濾枠体60のセットが設けられている。つまり、可動濾板40-1と濾布50-1と濾枠体60-1のセット、可動濾板40-2と濾布50-2と濾枠体60-2のセットが設けられている。
【0057】
なお、原液注入装置80からの原液供給経路に関しては、それぞれの濾布50-1、50-2内に形成される濾過空間内に原液が供給されれば良く特に限定されないが、例えば、各濾布50に対して、可動板30、可動濾板40を貫通して隣接する濾布50に連通した原液供給パイプでつながれた構造とし、原液供給装置80から原液が一気通貫に供給される仕組みでも良い。また、原液注入装置80の供給路が並列化されており、それぞれの原液注入装置80の供給口から直接それぞれの濾布50の内部に連通した仕組みとして、それぞれの濾布50内には独立した形で原液が供給される仕組みでも良い。
【0058】
各々の段における濾過工程、メンテナンス工程は、実施例1に示した各工程と同じもので良く、それぞれのセットにおいて並列処理される。
【0059】
以上、実施例2にかかる濾過装置によれば、実施例1に示した各工程を並列処理化することができ、濾過処理能力を向上せしめることができる。
【0060】
以上、本発明の濾過装置における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、豆腐や餡子などのペースト状の食品製造のための圧搾濾過装置など濾過処理を伴う装置に対して広く適用することができる。また、原理的には食品製造以外にも汚泥水からの汚泥除去などの濾過装置など濾過処理を伴う装置に対しても広く適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 固定板
20 固定濾板
21 固定濾板吊下アーム部
30 可動板
40 可動濾板
42 可動濾板吊下アーム部
50 濾布
60 濾枠体
70 締付け部
71 取り付け部材
80 原液注入装置
90 装置本体
100,100a 濾過装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12