(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】反射防止膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/118 20150101AFI20240909BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20240909BHJP
C03C 17/38 20060101ALI20240909BHJP
C23C 16/30 20060101ALI20240909BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G02B1/118
G02B1/18
C03C17/38
C23C16/30
C23C16/40
(21)【出願番号】P 2021198662
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2023-03-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【氏名又は名称】山本 龍郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】新井 康司
(72)【発明者】
【氏名】草島 子栄
(72)【発明者】
【氏名】石川 大貴
(72)【発明者】
【氏名】並木 恵一
(72)【発明者】
【氏名】範 賓
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-537188(JP,A)
【文献】国際公開第2006/049153(WO,A1)
【文献】特開2017-151200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0130004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/118
G02B 1/18
C03C 17/38
C23C 16/30
C23C 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸層と、フッ素を含有するコート層とを有する反射防止膜の製造方法であって、 基材上に、前記凹凸層を形成する凹凸層形成工程と、前記凹凸層上にフッ素含有ガスを用いて前記コート層を成膜するコート層成膜工程と、前記凹凸層と前記コート層とが形成された前記基材を高温高湿雰囲気下で保持する保持工程とを備え、前記保持工程における高温高湿雰囲気は、温度が60~100℃、湿度が60~100%であ
り、前記保持工程は、高温高湿雰囲気下144時間以上保持して行うことを特徴とする反射防止膜の製造方法。
【請求項2】
前記凹凸層形成工程が、前記基材上にアルミナを成膜するアルミナ成膜工程と、前記アルミナが成膜された前記基材を水に浸漬させて前記凹凸層を得る浸漬工程と、からなることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項3】
プラズマ蒸着法によりフルオロポリマーを蒸着せしめることで前記コート層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止膜の製造方法。
【請求項4】
前記コート層を、厚さ5~40nmで形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の反射防止膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズなどの光学部材に反射防止機能を付与するために、様々な反射防止膜が提案されている。例えば、特許文献1に記載の反射防止膜は、ガラス基材側に配置される誘電体多層膜と、誘電体多層膜に積層して設けられたアルミナ水和物を主成分とする微細凹凸層とを備え、誘電体多層膜が、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層と相対的に低い屈折率を有する低屈折率層との交互層を含み、誘電体多層膜が、高屈折率層および低屈折率層のうちの1層として窒化ケイ素を含むバリア層を含んだものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の反射防止膜は、バリア層を設けることで、ガラス基材からのナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンが誘電体多層膜を通過して微細凹凸層に拡散するのを抑制し、経時による微細凹凸層の屈折率変化、又は屈折率変化および構造変化を抑制することができるとしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の反射防止膜は、波長400~700nmにおける平均反射率が0.4%を超えるものもあり、仮に経時による光学特性の低下を多少抑制できたとしても、そもそも望ましい低反射率とはならないという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、低反射率の反射防止膜を製造することができる製造方法及びこれを用いた反射防止膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の反射防止膜の製造方法は、凹凸層と、フッ素を含有するコート層とを有する反射防止膜の製造方法であって、基材上に、前記凹凸層を形成する凹凸層形成工程と、前記凹凸層上にフッ素含有ガスを用いて前記コート層を成膜するコート層成膜工程と、前記凹凸層と前記コート層とが形成された前記基材を高温高湿雰囲気下で保持する保持工程とを備え、前記保持工程における高温高湿雰囲気は、温度が60~100℃、湿度が60~100%であることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、凹凸層に対してフッ素を含有するコート層を設け、かつ、保持工程を行うことにより、望ましい低反射率(0.4%以下)の反射防止膜を簡易に製造することが可能である。
【0009】
前記凹凸層形成工程が、前記基材上にアルミナを成膜するアルミナ成膜工程と、前記アルミナが成膜された前記基材を水に浸漬させて前記凹凸層を得る浸漬工程と、からなることが好ましい。凹凸層としてアルミナを主成分とする膜を成膜することで、低反射率の反射防止膜を製造することができる。さらにこの場合に、凹凸層をアルミナが成膜された基材を水に浸漬させて前記凹凸層を得る浸漬工程を行うことで、簡易に低反射率の反射防止膜を製造することが可能である。
【0010】
前記保持工程における高温高湿雰囲気は、温度が60~100℃、湿度が60~100%であることが好ましい。この範囲であることで好ましく低反射率の反射防止膜を製造することが可能である。
【0011】
前記保持工程は、前記高温高湿雰囲気下で、40時間以上保持して行うことが好ましい。40時間より短いと処理の効果が低下する。
【0012】
前記プラズマ蒸着法によりフルオロポリマーを蒸着せしめることで前記コート層を形成することが好ましい。このようにフルオロポリマーを蒸着してコート層を形成することで、簡易にコート層を凹凸層上に形成することができる。
【0013】
前記コート層を、厚さ5~40nmで形成することが好ましい。厚さが40nmよりも厚いと、反射率が急激に増大してしまうおそれがある一方で、厚さが5nmよりも薄いと均一な膜を形成することが困難である。
【0014】
本発明の反射防止膜は、上述したいずれかの製造方法により製造されたことを特徴とする。上述したいずれかの製造方法により製造された反射防止膜は、所望の低反射率(波長400~700nmにおける反射率が0.4%以下)の反射防止膜である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の反射防止膜の製造方法によれば、低反射率の反射防止膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】実施例1から4の結果を示すグラフ。縦軸は反射率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
【
図3】実施例5から8、比較例1、2の結果を示すグラフ。縦軸は反射率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
【
図4】実施例9から12、比較例3の結果を示すグラフ。縦軸は反射率(%)、横軸は波長(nm)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る反射防止膜の製造方法について添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態の反射防止膜の製造方法を、
図1を用いて説明する。本実施形態の製造方法は、基材11上に、中間層12を形成する中間層形成工程(
図1(2))と、中間層12の上にアルミナ(Al
2O
3)を主成分とする前駆体層13を成膜する前駆体層成膜工程(
図1(3))と、前駆体層13が成膜された基材11を水に浸漬させて凹凸層14を得る浸漬工程(
図1(4))と、凹凸層14上にフッ素含有ガスを用いてコート層15を成膜するコート層成膜工程(
図1(5))と、成膜された基材11を高温高湿雰囲気下で保持する保持工程とを備え、基材11上に、少なくとも凹凸層14とコート層15とを有する低反射率の反射防止膜10を形成するというものである。
【0019】
基材11としては、反射防止膜10の形成対象であるレンズ等が挙げられるが、本実施形態では、ガラス基材を用いている。基材11としてはガラス基材以外にプラスチック基材を用いることも可能である。
【0020】
初めに、ガラス基材11の上に、中間層12を形成する。中間層12は、単層でもよいし、2以上の膜からなる複数層でもよい。複数層の場合、同一材料の膜を複数層積層してもよいし、異なる材料の膜を複数層積層してもよい。中間層12としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ニオブ等の金属酸化物等の公知の材料を用いることができる。中間層12はその材質により密着性を高めたり、反射率を低下させたりすることが可能である。
【0021】
中間層12の成膜方法としては、CVD法、スパッタ法やALD法(Atomic Layer Deposition:原子層蒸着法)等の公知の成膜方法を用いている。ALD法とは、反応室内に複数の原料ガスを交互に供給して基材上に種々の薄膜を形成する成膜方法である。具体的には、反応室内に原料ガスと反応ガスとを交互にパルス的に供給し、基材表面での反応により成膜を行うものである。すなわち、原料ガスが基材表面に吸着されている状態で、この原料ガスと反応する反応ガスを供給することにより、二つのガスを互いに接触させて反応せしめ、所望の薄膜を形成する。その際、原料ガスを吸着させた後、吸着しなかった原料ガスを排出し、次いで反応ガスを供給して吸着した原料ガスと反応させ、次いで反応しなかった反応ガスを排出するという操作を繰り返して行って、所望の膜厚を有する薄膜を形成する。このようなALD法に用いられる原料ガスの材料としては、固体、液体、気体状態のいずれでも使用することができる。
【0022】
基材11上に中間層12が形成された後、前駆体層13を形成する。前駆体層13は、後工程において凹凸層14を形成するためのものであり、凹凸層14を形成することができるものであれば、前駆体層13の材料は限定されない。前駆体層13としては、アルミナ膜が好ましく例示される。
【0023】
前駆体層13は、厚さが30~45nmであることが好ましく、より好ましくは、30~40nm、最も好ましくは30~35nmで形成されていることである。30~35nmで最も反射率を低くすることができ、40nmよりも厚くなると反射率が増大しはじめ、45nmよりも厚いと、凹凸層14が形成されにくい。
【0024】
前駆体層13の形成方法としては、公知の成膜方法を用いることができ、本実施形態では、ALD法を用いている。
【0025】
ALD法に用いられる原料ガスとしては、前駆体層13としてのアルミナ膜を形成する場合にトリメチルアルミニウム(TMA)等を用いることができる。なお、原料が固体や液体であった場合、公知の方法、例えば気化器により気化することで気体状態として原料ガスとして用いることができる。また、原料ガスは、窒素、アルゴン等のような不活性ガスからなるキャリアガスと共に反応室に供給される。
【0026】
また、反応ガスとしては、H2O等を用いることができる。反応ガスも、キャリアガスとともに反応室内に供給されてもよい。
【0027】
ALD法による前駆体層13の成膜方法を説明する。まず、基材11を成膜装置の反応室内に設置し、ステージ上の基材を所定温度に加熱し、反応室内へ、原料ガスであるTMAと、キャリアガスとを導入して基材上に供給し、吸着せしめた後、パージガスとしてアルゴンガスを用いて反応室内の原料ガスをパージする。
【0028】
次いで、プラズマ下において反応ガスを導入して、ラジカルなどの活性種を生成せしめて基材上に供給する。基材上で反応が起こり、アルミナ膜が形成される。なお、プラズマの形成方法も公知の方法を用いることができる。
【0029】
次いで、反応室内の反応ガスにアルゴンガスを用いてパージした後、上記と同様に原料ガスの供給及び反応ガスの供給のサイクルを繰り返し、目的とする前駆体層13を形成する。
【0030】
次に、前駆体層13が成膜された基材11を水に浸漬させて前駆体層13に凹凸を形成せしめて凹凸層14を得る浸漬工程を行う。ここで、本発明の水には脱イオン水も含まれ、好ましくは脱イオン水を用いることである。浸漬工程は、65~90℃の水に例えば10~60分、好ましくは10~45分前駆体層13が成膜された基材11を浸漬することで行う。なお、その後、70~100℃で5~20分保持して乾燥させる。これにより、アルミナ膜である前駆体層13は、微細な凹凸が形成された凹凸層14となる。
【0031】
凹凸層14は、凸部により相対的に凹部が形成されて構成されており、その凸部は根本から先に向かって細くなる傾向にあり、その形状からグラスライクアルミナ(Grass Like Alumina)とも呼ばれる。また、この凹凸層14はアルミナを水に浸漬することで得たことから、主成分がアルミナ水和物である。
【0032】
次に、凹凸層14上にフッ素含有ガスを用いてフッ素を含有するコート層15を成膜するコート層成膜工程を行う。成膜方法は、上述した公知の成膜方法を用いることができるが、本実施形態では、PE-CVD法によりコート層を形成する。
【0033】
フッ素含有ガスは、フッ素を含有するものであればよく、例えば、C4F8、CHF3等公知のフルオロカーボンガスを用いることができる。
【0034】
CVD法によるフッ素を含有するコート層15の成膜方法を説明する。まず、基材を反応室内に設置し、反応室内へ、フッ素含有ガスを導入して基材11の凹凸層14上に供給して、コート層15としてのフルオロポリマー膜の成膜を行う。
【0035】
コート層15は、厚さが5~40nmであることが好ましく、より好ましくは、6~20nm、最も好ましくは6~10nmで形成されていることである。厚さが40nmよりも厚いと、反射率が急激に増大してしまうおそれがあるが、この範囲で形成されていることで、より反射率の低い反射防止膜を形成することが可能である。
【0036】
最後に、高温高湿雰囲気下に曝した状態で所定時間保持する保持工程を行う。具体的には、保持工程は、温度60~100℃、湿度60~100%の雰囲気下に、基材11を40時間以上保持して行う。一例として、保持工程は、温度85℃、湿度80%の雰囲気下で保持時間を144~408時間とすることが挙げられる。この場合、反射率が低い所望の反射防止膜10を得ることができる。なお、保持時間については、保持時間が長くなったとしても一定のところで得られる反射防止膜の反射率は飽和するものと考えられるが、現在の実施例からは、上限値として408時間を得ている。また、保持時間の下限値としては、実施例の状況から40時間が挙げられ、この下限値から低反射率の反射防止膜を得ることができ、好ましくは、下限値は144時間である。このようにして、反射率の低い基材11に設けられた、中間層12、凹凸層14、コート層15からなる反射防止膜10を得ることが可能である。
【0037】
本実施形態においては、フッ素を含有するコート層15を凹凸層14に設け、かつ、保持工程により高温高湿条件で保持することで、反射率が0.4%以下である低反射率の反射防止膜を得ることができる。コート層15を形成するのみ、また、保持工程のみではこのような低反射率の反射防止膜を製造することができない。これは、コート層15を成膜するとしても、
図1(5)のようにコート層15が凹凸層14の全面を覆っていることが好ましいが、成膜時の成膜ガスの入射角等から微細な凹凸が不規則に形成されている凹凸層14の凹凸のすべてを覆うことができず、凹凸の根元などがコートされず露出したまま残されてしまうことが考えられる。他方で、保持工程のみ行うと、凹凸層14が高温高湿雰囲気により全体の構造が変化しすぎてしまい、所望の低反射率の反射防止膜とはならないが、凹凸の根元部分については、保持工程を行うことで、基板11と凹凸層14との屈折率の差が小さくなることが考えられる。したがって、本実施形態で説明したように、フッ素含有膜でコート層15を形成してなるべく凹凸層14を覆って全体構造が変化しないようにしつつ、未コートで残ってしまう凹凸層14については、高温高湿雰囲気に曝す保持工程を行うことで、基材11と凹凸層14との屈折率の差を小さくして、反射防止膜全体的として反射率を低下することが可能となったものと考えられる。
【0038】
(実施例)
【0039】
本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
【0040】
実施例1として、下記のようにして反射防止膜10を得た。即ち、基材11として、ガラス板を用意し、当該基材11をALD装置の反応室内に設置し、二酸化ケイ素膜を単層で中間層12として形成した。次いで、基材を100℃に加熱し、反応室内へ、原料ガスであるTMAと、キャリアガスとしてのアルゴンガスとを60sccmで0.07秒間導入して基材上に供給し、吸着、熱分解せしめた後、パージガスとしてアルゴンガスを用いて反応室内の原料ガス5秒間パージした。
【0041】
次いで、プラズマ下において反応ガスであるH2Oを0.1秒間導入して、ラジカルなどの活性種を生成せしめて100℃に加熱される基材上に供給した。基材上で反応が起こり、アルミナ膜が形成された。プラズマは、誘導結合型プラズマであり、アルゴンガスを120sccm、O2ガスを100sccm、ICP電力300W、ステージ温度100℃、圧力10~20Paで形成され、プラズマ時間は5秒であった。
【0042】
次いで、反応室内の反応ガスにアルゴンガスを用いて3秒間パージした後、上記と同じ条件で原料ガスの供給及び反応ガスの供給のサイクルを繰り返し、目的とする前駆体層13としてのアルミナ膜を厚さ30nmで形成した。
【0043】
次いで、75℃の水に30分前駆体層13が成膜された基材を浸漬して、微細な凹凸が形成された凹凸層14を得た。
【0044】
次に、基材を反応室内に設置し、圧力2.0Pa、電力100Wで、CHF3を50sccmで60秒間導入して基材上に供給してフルオロポリマー膜の成膜を行った。得られたフルオロポリマー膜は、平均して厚さが10.4nmであった。
【0045】
その後、基材11を温度85℃湿度85%にて144時間保持し、反射防止膜10を得た。
【0046】
実施例2として、基材11を温度85℃湿度85%にて264時間保持した以外は実施例1と同様に反射防止膜10を得た。
【0047】
実施例3として、基材11を温度85℃湿度85%にて332時間保持した以外は実施例1と同様に反射防止膜10を得た。
【0048】
実施例4として、基材11を温度85℃湿度85%にて408時間保持した以外は実施例1と同様に反射防止膜10を得た。
【0049】
実施例1~4の反射防止膜について、分光反射率計測装置(株式会社ラムダビジョン製、LRMS-600P1)により波長に対する反射率を測定した。結果を
図2に示す。
【0050】
図2に示すように、実施例1から4の場合には、すべての波長域において、反射防止膜の反射率は0.4未満であり、良い光学特性を有することが分かった。
【0051】
次いで、実施例5として、実施例1とはフッ素含有コート層形成工程において、電力100Wとしてフッ素含有コート層を平均厚さ10.4nmで得た点以外は実施例1と同様に反射防止膜10を得た。
【0052】
実施例6として、基材11を温度85℃湿度85%にて264時間保持した以外は実施例5と同様に反射防止膜10を得た。
【0053】
実施例7として、基材11を温度85℃湿度85%にて332時間保持した以外は実施例5と同様に反射防止膜10を得た。
【0054】
実施例8として、基材11を温度85℃湿度85%にて408時間保持した以外は実施例5と同様に反射防止膜10を得た。
【0055】
比較例1として、フッ素含有コート層形成工程及び保持工程を行わなかった以外は実施例5と同様に反射防止膜を得た。
【0056】
比較例2として、保持工程を行わなかった以外は実施例5と同様に反射防止膜を得た。
【0057】
実施例5~8、比較例1,2の反射防止膜について、分光反射率計測装置(株式会社ラムダビジョン製、LRMS-600P1)により波長に対する反射率を測定した。結果を
図3に示す。
【0058】
図3に示すように、比較例1では、すべての波長域において、反射率が0.2%を超え、特に波長が800nm近辺では0.4を超えた。また、比較例2は、反射率が0.3%を超える場合があった。他方で、実施例5~8の場合には、比較例と比べて反射率は低かった。実施例5~8の場合には、すべての波長域において、反射率は0.1%未満であり、また、保持工程の保持時間による光学特性の差異はほとんどなかった。反射防止膜として非常に優れた光学特性を有することが分かった。
【0059】
次いで、実施例9として、実施例5とはフッ素含有コート層形成工程において、成膜時間を30秒としてフッ素含有コート層を平均厚さ6.3nmで得た点以外は実施例5と同様に反射防止膜10を得た。
【0060】
実施例10として、基材11を温度85℃湿度85%にて264時間保持した以外は実施例9と同様に反射防止膜10を得た。
【0061】
実施例11として、基材11を温度85℃湿度85%にて332時間保持した以外は実施例9と同様に反射防止膜10を得た。
【0062】
実施例12として、基材11を温度85℃湿度85%にて408時間保持した以外は実施例9と同様に反射防止膜10を得た。
【0063】
比較例3として、フッ素含有コート層形成工程及び保持工程を行わなかった以外は実施例9と同様に反射防止膜を得た。
【0064】
実施例9~12、比較例3の反射防止膜について、分光反射率計測装置(株式会社ラムダビジョン製、LRMS-600P1)により波長に対する反射率を測定した。結果を
図4に示す。
【0065】
図4に示すように、比較例3では、すべての波長域において、反射率が0.2%を超え、波長が800nm近辺では0.25%を超えた。他方で、実施例5~8の場合には、すべての波長域において、反射率は0.15%未満であり、また、保持工程の保持時間(144時間~408時間)による光学特性の差異はほとんどなかった。反射防止膜として優れた光学特性を有することが分かった。
【符号の説明】
【0066】
10 反射防止膜
11 基材
12 中間層
13 前駆体層
14 凹凸層
15 コート層