IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人科学技術振興機構の特許一覧

特許7551134プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法
<>
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図1
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図2
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図3
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図4
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図5
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図6
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図7
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図8
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図9
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図10
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図11
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図12
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図13
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図14
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図15
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図16
  • 特許-プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20240909BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240909BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
C12M1/00
C12N15/11 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021535463
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2020029442
(87)【国際公開番号】W WO2021020562
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019140852
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 奈保子
(72)【発明者】
【氏名】中本 航介
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 康明
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/113709(WO,A1)
【文献】SANEYOSHI, H. et al.,Synthesis and Characterization of Cell-Permeable Oligonucleotides Bearing Reduction-Activated Protecting Groups on the Internucleotide Linkages,Bioconjugate Chemistry,2016年,Vol. 27,P. 2149-2156
【文献】WU, L. et al.,Synthesis of Site-Specifically Phosphate-Caged siRNAs and Evaluation of Their RNAi Activity and Stability,Chem. Eur. J.,2014年,Vol. 20,P. 12114 - 12122
【文献】MAIER, T. and PFLEIDERER, W.,Nucleotides: Part LXXV New Types of Fluorescence Labeling of 2'-deoxycytidine,Helvetica Chimica Acta,2009年,Vol. 92,P. 2722-2736
【文献】村瀬裕貴 ほか,ゲノム合成のためのDNAアセンブリ法の開発,日本化学会春季年会講演予稿集,2020年03月05日,Vol. 100th,Page. ROMBUNNO.1E6-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
C12M
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の増幅に使用されるプライマーであって、下記式(1)で示される構造を有することを特徴とするプライマー。
【化1】

(ここで、Bは塩基を示し、R下記式(4A)で示される光分解性保護基であるか、又は下記式(2B)で示される還元剤分解性保護基を示し、Rは水素又はヒドロキシル基を示す。*は隣接するヌクレオチドの糖との結合手を意味する。)
【化2】

(ここで、R は炭素数1~20のアルキル基を示す。*はリン酸の酸素(O)との結合手を意味する。)
【化3】

(ここで、A は炭素数1~3のアルキレン基を示し、炭素数1~20の分岐鎖を有していてもよい。*はリン酸の酸素(O)との結合手を意味する。)
【請求項2】
前記Rがtert-ブチル基又はアダマンチル基であることを特徴とする請求項に記載のプライマー。
【請求項3】
前記Rが下記式(3A)で示される2-ニトロベンジル基であることを特徴とする請求項に記載のプライマー。
【化4】
【請求項4】
前記Rが下記式(3B)で示される4-ニトロベンジル基であることを特徴とする請求項に記載のプライマー。
【化5】
【請求項5】
前記式(1)で示される構造が配列中に2つ以上連続することを特徴とする請求項1に記載のプライマー。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載したプライマーを用いて接着末端を有する二本鎖DNAを製造するための二本鎖DNAの製造装置であって、
鋳型となるテンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するフォワードプライマーと、
前記テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するリバースプライマーと、
前記テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、前記フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、前記リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、前記フォワード側伸長鎖と前記リバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNAを生成する増幅手段と、
前記Rを脱保護する脱保護手段と、
を備えることを特徴とする二本鎖DNAの製造装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載したプライマーを用いて接着末端を有する二本鎖DNAを製造するための二本鎖DNAの製造方法であって、
鋳型となるテンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するフォワードプライマーと、前記テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するリバースプライマーと、を準備する準備工程と、
前記テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、前記フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、前記リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、前記フォワード側伸長鎖と前記リバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNAを生成する増幅工程と、
前記Rを脱保護する脱保護工程と、
を備えることを特徴とする二本鎖DNAの製造方法。
【請求項8】
前記Rが前記式(A)で示される光分解性保護基であり、脱保護工程は光照射により前記Rを脱保護することを特徴とする請求項7に記載の二本鎖DNAの製造方法。
【請求項9】
前記Rが前記式(2B)で示される還元剤分解性保護基であり、脱保護工程は還元剤により前記Rを脱保護することを特徴とする請求項に記載の二本鎖DNAの製造方法。
【請求項10】
前記プライマーは、前記式(1)で示される構造が配列中に2つ以上連続することを特徴とする請求項に記載の二本鎖DNAの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー及びこれを用いた二本鎖DNAの製造装置並びに二本鎖DNAの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学などの分野では、遺伝子組み換えや形質転換などを行うために、標的DNAをホストに組み込んだベクターが用いられている。一般に、標的DNAは、量が少ない場合はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅して使用される。PCRでは、標的DNA配列を含むテンプレートDNAを使用し、これに相補的に結合するプライマーを用いて熱変性とアニーリングを複数サイクル繰り返すことでテンプレートDNAを増幅している。
【0003】
PCRで増幅されたテンプレートDNAの増幅産物は、そのままでは平滑末端であり、これをプラスミドDNAなどのホストDNAと結合(ライゲーション)させるための処理をする必要がある。一般に、そのような処理として、特定の配列を切断する制限酵素を使用するが、この方法では、結合できるDNAが制限酵素の切断部位の配列に依存するため、汎用性に乏しいという問題がある。
【0004】
制限酵素を用いない方法として、増幅産物の3’末端及び5’末端を接着末端(粘着末端、突出末端などともいう)とし、ホスト側も同様に接着末端を形成して両者をライゲーションしてベクターを構築する技術がある。例えば、近年では、Gibson assembly法、In-Fusion法、SLiCE法などが知られている。これらの方法では、いずれも二本鎖DNA断片末端に15bp程度の相同配列を持たせ、二本鎖中の片側の鎖をエキソヌクレアーゼ活性で消化し、接着末端を生じさせたのちに連結する。なお、Gibson assembly法ではin vitroでTaq DNA ligaseを用いて連結し、In-Fusion法では大腸菌内の修復システムを利用して連結する。
【0005】
これらの方法では、酵素であるエキソヌクレアーゼを使用するため、コストがかかるほか、反応条件等によって部位特異性に劣ることがあり、定量的な接着末端形成が困難であるため、連結反応の効率が低いという問題があった。このため、酵素を使用しないシームレスクローニング法が求められていた。
【0006】
そこで、化学的手法により接着末端を有するDNAを調製する方法が開発され、そのためのPCR用のプライマーとして、特許文献1に記載されたものが知られている。この文献のプライマーは、非相補DNA部分の塩基配列中の3’末端に相当する塩基が保護基で修飾されている。この保護基は、DNAポリメラーゼによるDNA複製の進行を停止させる機能を有しており、光照射処理やアルカリ処理などによって被修飾塩基から脱離しうる。また、本文献では、保護基(置換基)を生体分子に導入するための置換基導入剤を用いて塩基に保護基をプライマーの塩基に導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/113709号(請求項1、請求項2など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、保護基の部分でDNA複製の進行が停止するが、塩基の部分で保護基によりポリメラーゼ活性を阻害するため、停止効率が低く、その結果、完全に伸長したものができてしまうことがあった。また、例えばDNAでは塩基はアデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類あるが、特許文献1では塩基に保護基を導入しているため、塩基の種類に応じた方法で保護基を導入する必要があり、プライマーの製造に手間やコストがかかっていた。
【0009】
本発明の目的は、停止効率が高く、かつ安価に製造することが可能なプライマーを提供することにある。また、本発明の他の目的は、このようなプライマーを用いた、接着末端を有する二本鎖DNAの製造装置及び二本鎖DNAの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、ヌクレオシドの糖の部分に分解性保護基を導入したプライマーを開発した。そして、その保護基を分解することで接着末端を有する二本鎖DNAを作製できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、核酸の増幅に使用されるプライマーであって、下記式(1)で示される構造を有することを特徴とするプライマーである。
【化1】
(ここで、Bは塩基を示し、Rは分解性保護基を示し、Rは水素又はヒドロキシル基を示す。*は隣接するヌクレオチドの糖との結合手を意味する。)
【0012】
この場合において、前記Rが下記式(2A)で示される光分解性保護基であることが好ましい。
【化2】
(ここで、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示し、炭素数1~20の分岐鎖を有していてもよい。*はリン酸の酸素(O)との結合手を意味する。)
【0013】
さらにこの場合において、前記Rが下記式(4A)で示される光分解性保護基であることが好ましい。
【化3】
(ここで、Rは炭素数1~20のアルキル基を示す。)
【0014】
上記の場合において、前記Rがtert-ブチル基又はアダマンチル基であることがより好ましい。特に、Rがtert-ブチル基であることが好適である。
【0015】
さらに、前記Rが下記式(3A)で示される2-ニトロベンジル基であることが好ましい。
【化4】
【0016】
あるいはまた、前記Rが下記式(2B)で示される還元剤分解性保護基であることが好ましい。
【化5】
(ここで、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示し、炭素数1~20の分岐鎖を有していてもよい。*はリン酸の酸素(O)との結合手を意味する。)
【0017】
この場合において、前記Rが下記式(3B)で示される4-ニトロベンジル基であることが好ましい。
【化6】
【0018】
前記式(1)で示される構造が配列中に2つ以上連続することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、上記のいずれかに記載したプライマーを用いて接着末端を有する二本鎖DNAを製造するための二本鎖DNAの製造装置であって、鋳型となるテンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するフォワードプライマーと、前記テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するリバースプライマーと、前記テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、前記フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、前記リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、前記フォワード側伸長鎖と前記リバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNAを生成する増幅手段と、前記Rを脱保護する脱保護手段と、を備えることを特徴とする二本鎖DNAの製造装置である。
【0020】
さらに、本発明は、上記のいずれかに記載したプライマーを用いて接着末端を有する二本鎖DNAを製造するための二本鎖DNAの製造方法であって、鋳型となるテンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するフォワードプライマーと、前記テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ前記式(1)で示される構造を有するリバースプライマーと、を準備する準備工程と、前記テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、前記フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、前記リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、前記フォワード側伸長鎖と前記リバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNAを生成する増幅工程と、前記Rを脱保護する脱保護工程と、を備えることを特徴とする二本鎖DNAの製造方法である。
【0021】
この場合において、前記Rが前記式(2A)で示される光分解性保護基であり、脱保護工程は光照射により前記Rを脱保護することが好ましい。
【0022】
あるいは、前記Rが前記式(2B)で示される還元剤分解性保護基であり、脱保護工程は還元剤により前記Rを脱保護することが好ましい。
【0023】
また、前記プライマーは、前記式(1)で示される構造が配列中に2つ以上連続することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、脱保護効率が高く、かつ安価に製造することが可能なプライマーを提供することが可能となる。また、本発明によれば、このようなプライマーを用いた、接着末端を有する二本鎖DNAの製造装置及び二本鎖DNAの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】接着末端を有する二本鎖DNAの製造方法及び製造装置を示す模式図である。
図2】オリゴヌクレオチドpAcGFP_Fw2合成時における、脱保護後(a)と精製後(b)のクロマトグラムである。
図3】鎖伸長停止ケージドアナログT*を含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした鎖伸長反応の停止を示す図である。
図4】PCR反応のアガロースゲル電気泳動分析を示す図である。
図5】PCR断片の連結反応の模式図である。
図6】T**を含むオリゴヌクレオチドを用いた接着末端の作成実験を示す図である。
図7】Naを用いた1Tの脱保護反応の実験結果を示す図である。
図8】Naを用いた2Tの脱保護反応の実験結果を示す図である。
図9】リン酸修飾基中の置換基Rをより嵩高くした実験の概要を示す図である。
図10】修飾オリゴヌクレオチドの熱サイクル条件における安定性試験の結果を示す図である。
図11】修飾プライマーがPCR条件において安定(分解耐性)であることを示す実験の結果を示す図である。
図12】tBuタイプ修飾プライマーの脱保護反応の逆相HPLC分析の実験結果を示す図である。
図13】PCR産物の試験管内での連結反応(Taq DNAリガーゼ)の実験悔過を示す図である。
図14】鎖伸長停止ケージドアナログ(配列TT、tBuタイプ)を含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした鎖伸長反応の停止を示す図である。
図15】鎖伸長停止ケージドアナログ(配列TT、アダマンチルタイプ)を含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした鎖伸長反応の停止を示す図である。
図16】鎖伸長停止ケージドアナログ(配列AA及びTA、tBuタイプ)を含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした鎖伸長反応の停止を示す図である。
図17】鎖伸長停止ケージドアナログ(配列CC及びGC、tBuタイプ)を含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした鎖伸長反応の停止を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.プライマー
以下、本発明のプライマーについて説明する。本発明のプライマーは、核酸の増幅に使用されるプライマーであって、下記式(1)で示される構造を有する。
【化7】
(ここで、Bは塩基を示し、Rは分解性保護基を示し、Rは水素又はヒドロキシル基を示す。*は隣接するヌクレオチドの糖との結合手を意味する。)。なお、結合手*のうち、式(1)の3’側の結合手は、3’側において隣接するヌクレオチドの糖の5’炭素に結合し、5’側 の結合手は、5’側において隣接するヌクレオチドの糖の3’炭素に結合する。また、DNAプライマーの場合は、Rは水素、RNAプライマーの場合は、Rはヒドロキシル基である。
【0027】
Bは塩基であり、具体的には、DNAプライマーの場合はアデニン、グアニン、シトシン、チミンから選択され、RNAプライマーの場合はアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルから選択される。
【0028】
の分解性保護基とは、何らかの処理により分解する保護基(置換基)を意味する。ここでいう処理としては、光照射処理、還元処理、アルカリ処理、酸処理、酸化処理、脱シリル化処理、熱処理、エステラーゼ処理、ホスファターゼ処理などを挙げることができる。ポリメラーゼは核酸のリン酸基の負電荷をより強く認識しているため、特許文献1のように塩基に保護基を導入するよりも、式(1)のようにリン酸基を保護基でマスクするほうが、ポリメラーゼの停止効率をより高めることができると推測される。
【0029】
(1)光分解性保護基
処理が光照射である場合、Rが下記式(2A)で示される光分解性保護基であることが好ましい。
【化8】
(ここで、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示し、炭素数1~3の分岐鎖、あるいは炭素数1~20の分岐鎖を有していてもよい。*はリン酸の酸素(O)との結合手を意味する。)
【0030】
炭素数1~のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基を挙げることができる。炭素数1~20の分岐鎖としては、tert-ブチル基、sec-ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などを挙げることができる。
【0031】
としては、下記式(4A)で示される光分解性保護基であることが好ましい。
【化9】
(ここで、Rは炭素数1~20のアルキル基を示す。)
特に、Rは、tert-ブチル基やアダマンチル基のような嵩高いものが好ましい。後述する実施例で示すように、Rが嵩高いほど、修飾部位の化学的安定性と複製反応の阻害効果が高い。したがって、Rは炭素数が3以上であり、4以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、10以上であることが特に好ましい。実施例に記載の置換基(Rがメチル基、tert-ブチル基、アダマンチル基)では、化学的安定性の低い順に、メチル基<tert-ブチル基<アダマンチル基となる。
【0032】
としては、下記式(3A)で示される2-ニトロベンジル基を挙げることができる。
【化10】
【0033】
(2)還元剤分解性保護基
処理が還元処理の場合、Rが下記式(2B)で示される還元剤分解性保護基であることが好ましい。
【化11】

(ここで、Aは炭素数1~3のアルキレン基を示し、炭素数1~20の分岐鎖を有していてもよい。*はリン酸の酸素(O)との結合手を意味する。)
炭素数1~のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基を挙げることができる。炭素数1~20の分岐鎖としては、tert-ブチル基、sec-ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などを挙げることができる。
【0034】
としては、下記式(3B)で示される4-ニトロベンジル基を挙げることができる。
【化12】
【0035】
(3)その他の分解性保護基
アルカリ処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、イソブチリル基、ベンゾイル基、アセトキシメチル基などを挙げることができる。酸処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、トリチル基を挙げることができる。酸化処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、アリルオキシメチル基、ジメトキシベンジルオキシメチル基、トリメトキシベンジルオキシメチル基などを挙げることができる。脱シリル化処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、t-ブチルジメトキシシリルオキシメチル基、t-ブチルジフェニルシリルオキシメチル基などを挙げることができる。熱処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、イソシアネート基を挙げることができる。エステラーゼ処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、アセトキシメチル基を挙げることができる。ホスファターゼ処理により被修飾塩基から脱離し得る分解性保護基としては、リン酸メチル基を挙げることができる。
【0036】
本発明のプライマーは、特にPCRで好適に使用される一本鎖DNA又は一本鎖RNAであり、上記式(1)で示される構造を分子内に有するオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。プライマーの塩基対の数は、標的DNAなどの配列等に応じて適宜設定することができるが、一般にオリゴヌクレオチドでは例えば20塩基対以下、ポリヌクレオチドでは例えば20塩基対超である。ポリヌクレオチドの塩基対の数の上限としては特に制限はないが、一般的に使用されるプライマーとしては例えば40塩基対以下が好ましい。また、オリゴヌクレオチドの塩基対の数の下限としては、プライマーとして使用できる長さであれば特に制限はないが、一般的に使用されるプライマーとしては例えば5塩基対以上が好ましい。
【0037】
プライマーにおいては、前記式(1)で示される構造が配列中に1つのみ存在するよりも、この構造が2つ以上連続することが好ましい。式(1)の構造が配列中に1つのみの場合は、その構造部分でDNAポリメラーゼによるDNAの複製が停止しなかった場合は接着末端の形成ができなくなる。しかしながら、式(1)の構造が2つ以上連続することで、DNAの複製が確率的により停止しやすくなり、接着末端形成の効率が高くなる。
【0038】
2.プライマーの製造方法
本発明のプライマーは、上記式(1)の構造を有する修飾ヌクレオチド(以下、「ヌクレオチド誘導体」ということがある)を合成し、これに非修飾のヌクレオチドをホスホロアミダイト法などの固相合成法で連結することで製造することができる。
【0039】
プライマーの合成方法の概要としては、まずヌクレオシドの5’ヒドロキシル基を保護し、3’ヒドロキシル基にN,N-ビス(ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィンを反応させる。次に、ニトロベンジルアルコールを反応させて分解性保護基を導入する。その後、ホスホロアミダイトなどを反応させ、固相合成法で非修飾のヌクレオチドを連結させてプライマーを合成する。以下、実施例に掲載したプライマーの具体的な製造方法について詳細に説明する。
【0040】
(a)還元剤分解性保護基を有するヌクレオシド誘導体(※式(1)において、Rが式(2B)、Rが水素の化合物)及びプライマーの合成
【化13】
【0041】
上記の合成スキ-ムに沿って説明する。以下で説明する合成スキ-ムにおいて、数字は化合物の番号を表す。まず、デオキシリボヌクレオシド(下記スキ-ムではチミジン)を出発物質として用意する。これに4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(DMTrCl)、ピリジンを加え、リボースの5’ヒドロキシル基に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド基を結合させる(化合物24)。次に、N,N-ビス(ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィンを、トリエチルアミン(TEA)、テトラヒドロフラン(THF)に添加し、デオキシリボースの3’ヒドロキシル基にホスホロアミダイトを結合させる(化合物25)。次に、4-ニトロベンジルアルコールを反応混合物に加え、次いで5-(メチルチオ)-1H-テトラゾールを添加して化合物26を得る。その後は常法により、所望の配列となるようにヌクレオチドを固相合成してプライマーを合成する。
【0042】
3.接着末端を有する二本鎖DNAの製造方法及び製造装置
つぎに、接着末端を有する二本鎖DNAの製造方法及び製造装置について説明する。本発明の二本鎖DNAの製造装置は、本発明のプライマーを用いて接着末端を有するための装置である。また、本発明の二本鎖DNAの製造方法は、標的DNA配列を含むテンプレートDNAを使用し、本発明のプライマーを用いて接着末端を有する方法である。以下、図1を参照して説明する。なお、本実施形態では、プライマーにおいて、式(1)の構造が連続して2つ存在するものを使用しているが、式(1)が1つのみの場合も同様の方法・装置を使用することができる。
【0043】
まず、試薬としてフォワードプライマーとリバースプライマーを含むPCR増幅用プライマーセットを準備する(準備工程)。フォワードプライマーは、テンプレートDNAのアンチセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ式(1)で示される構造を有する。また、リバースプライマーは、テンプレートDNAのセンス鎖の一部の配列と相補的であり、かつ式(1)で示される構造を有する。
【0044】
図の(a)に示すように、フォワードプライマーとリバースプライマーは、増幅したい標的DNA配列を挟むように配列を決定する。また、プライマーにおける式(1)の分解性保護基を有するヌクレオチドの位置は、目的とする接着末端の配列(図の(c))において、3’陥没側における最も3’末端側のヌクレオチドの3’側に隣接する位置に相補的な位置となるように設計する。式(1)の構造が2つ以上連続している場合は、式(1)の構造のヌクレオチドのうち最も3’側に位置するヌクレオチドが上記の位置となるようにする。その他の試薬としては、PCRに使用するポリメラーゼ(Taqポリメラーゼなど)、バッファー、dNTPなどである。
【0045】
次に、PCR装置(増幅手段)を用いてテンプレートDNAの配列を増幅する(増幅工程)。PCR装置は、テンプレートDNAを鋳型としてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を複数サイクル行い、フォワードプライマーが伸長したフォワード側伸長鎖と、リバースプライマーが伸長したリバース側伸長鎖とを生成し、フォワード側伸長鎖とリバース側伸長鎖とをアニーリングして3’末端が陥没した二本鎖DNA(図の(b))を生成する。
【0046】
PCRでは、熱変性、アニーリング、伸長反応を繰り返して、テンプレートDNAの配列を増幅する。PCRの条件にもよるが、熱変性は約95℃、1~3分間、アニーリングはプライマーのTm±5℃、伸長反応は1~10分間で行う。PCRのサイクル数は特に制限はないが、一般に24~40サイクル程度である。
【0047】
図のように、PCR増幅産物には3’末端が陥没した二本鎖DNAが含まれる。これは、プライマーを鋳型として相補鎖が合成される際に、式(1)の分解性保護基がポリメラーゼ反応を阻害し、反応を停止させるためである。
【0048】
その後、図の(c)に示すように、所定の処理によりRを脱保護し、5’末端が突出した接着末端を形成する(脱保護工程)。所定の処理は、Rを脱保護するための処理であり、上記の光照射処理、還元処理などを挙げることができる。
【0049】
以下、脱保護メカニズムについて説明する。下記式に示すように、所定の処理を施すと、式(1)の分解性保護基Rがヌクレオチドのリン酸から脱離する。
【化14】
【0050】
光照射処理としては、例えば、光源装置(脱保護手段)により300~400nmの波長の光を1~30分間照射する方法を挙げることができる。また、還元処理としては、例えば、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)などの還元剤を用い、例えば70~80℃、1~30分間処理する方法を挙げることができる。これにより、プライマーの式(1)のヌクレオシドの分解性保護基が脱保護され、5’突出末端(3’陥没末端)を有する二本鎖DNAを合成することができる。その他の処理についても同様に、分解性保護基を脱保護する装置(脱保護装置)を使用して脱保護を行う。
【0051】
本発明では、制限酵素などによらずに自由自在に接着末端を設計することができるため、所望の配列を有するDNAを自由に連結することができる。例えば、標的DNAとベクターの両方の配列を設計し、脱保護処理により両者に共通の接着末端を形成させてライゲーションを行って組換えDNAを調製し、これをクローニングやライブラリーの作成、大量発現系の構築などに使用することができる。また、接着末端を有する複数のゲノム配列を連結することで、試験管内でゲノムビルドアップ反応を行うことができる。あるいは、平滑末端の状態で細胞内に二本鎖DNAを導入し、細胞内で脱保護処理を行うことで、細胞内でゲノムビルドアップ反応を行うこともできる。
【実施例
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。また、以下の実施例において「%」表示は特に規定しない限り質量基準(質量パ-セント)である。
【0053】
1.鎖伸長停止ケージドアナログT*
(1)鎖伸長停止ケージドアナログT*を含むオリゴヌクレオチドの合成
鎖伸長停止ケージドアナログT*を含むオリゴヌクレオチド(表1)は、ホスホロアミダイト法に基づき核酸自動合成機(NR-2A 7MX、日本テクノサービス社製)により合成した。鎖伸長停止ケージドアナログT*のアミダイト化合物(化13)は、既報(Wu,L.et al.,Chem.Eur.J.2014,20,12114-12122)に従い合成した。5’末端のリン酸化には、市販のアミダイト試薬5’-Phosphate-ON Reagent(ChemGenes社製)を用いた。合成後のオリゴヌクレオチドは定法に従い脱保護したのち、逆相HPLCにより精製した[システム,日立ハイテクサイエンス社製 LaChrom Elite; カラム,YMC社製Hydrosphere C18(250×10mm I.D.);溶離液A,5%アセトニトリルを含む50mM triethylammonium acetate(pH 7.0);溶離液B,アセトニトリル;グラジエント条件、0~60% 溶離液B/20分;溶離液量,3mL/分;波長260nmの吸光度により検出](図2)。
【化15】
【0054】
下記表に、合成した鎖伸長停止ケージドアナログT*を含むオリゴヌクレオチド配列を示す。pは5’末端の水酸基がリン酸化されていることを示す。
【表1】
【0055】
図2は、オリゴヌクレオチドpAcGFP_Fw2合成時における、脱保護後(a)と精製後(b)のクロマトグラムを示す図である。精製前のクロマトグラム(a)に示す14.1分付近のピークが目的物に由来するピークである。これを分取して精製した(b)。
【0056】
(2)鎖伸長停止ケージドアナログT*を含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした複製反応
Q5(登録商標) High-Fidelity DNA polymerase, Deep Vent(登録商標) DNA polymerase, Phusion(登録商標) High-Fidelity DNA polymeraseはNew England Biolabs社から購入した。Pfu DNA polymeraseはプロメガ社から購入した。酵素反応の反応液[1μM Primer(5’ Fluorescein-ACCGAGCTCGAATTCGCC 3’),1μM Template(0T,1T又は2T,表1),0.2mM dNTPs,0.02 units/μL polymeraseを含む]は各酵素に添付の緩衝液を用い、推奨条件に従い作成した。反応液をアプライドバイオシステムズ 2720サーマルサイクラーにて95℃で1分、55℃で30秒、次いで72℃で10,30又は60分間加熱した。加熱後の反応液10μLに2×ホルムアミドローディング溶液10μLを加え、90℃で3分間加熱した後、7.5M尿素を含む20%変性PAGEにより解析した(図3)。泳動後のゲルに含まれるオリゴヌクレオチド鎖をプライマー鎖の5’末に修飾したフルオレセイン基由来の蛍光に基づきChemiDoc XRS+イメージングシステムにて検出した。
【0057】
図3は、鎖伸長停止ケージドアナログT*を含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした鎖伸長反応の停止を示す図である。(a)は用いたオリゴヌクレオチドの配列。(b)~(e)は市販の耐熱性ポリメラーゼを用いた鎖伸長反応の変性PAGE解析結果、(f)はPfu DNA polymeraseを用い、2Tを鋳型にした反応のMALDI-TOF分子量解析結果を示す。下パネルは原料(Primer)の解析結果(コントロール実験)を示す。
【0058】
図3(f)に示した鎖伸長産物の分子量解析は次のとおり行った。前述の条件にてPfu DNA polymeraseを含む2Tを鋳型にした酵素反応を作成し、95℃で1分、55℃で30秒、次いで72℃で40分間加熱した。反応液(50μL)をTE飽和フェノールとクロロホルムの等量混合液で抽出し、酢酸アンモニウム塩存在下アルコール沈殿し、DNAを回収した。質量分析計ultrafleXtreme(Bruker Daltonics)を用い、MALDI-TOF分子量解析を行った。
【0059】
(3)鎖伸長停止による接着末端形成を利用したクローニング反応
図5はPCR断片の連結反応の模式図である。この図に示す方法でPCR断片の連結を行った。まず、ベクター側断片(5.3kb)は以下のようにして調製した(図4(a))。反応液[0.5μM pET21d_Fw2, 0.5μM pET21d_Rev2, 0.8ng/μL pET21d(Novagen),20mM Tris-HCl(pH8.8 at 25℃),10mM KCl,10mM(NHSO,2mM MgSO,0.1% Triton(登録商標) X-100, 0.1mg/mL BSA,0.2mM dNTPs,0.02U/μL Pfu DNA polymerase]をアプライドバイオシステムズ MiniAmp Plusサーマルサイクラーにて以下の加熱条件に付した[(95℃,15秒→50℃,30秒→72℃,7.5分間)/サイクル×30サイクル]。
【0060】
インサート側断片(0.75kb)は以下のようにして調製した(図4(b))。反応液[0.5μM pAcGFP1_Fw2, 0.5μM pAcGFP1_Rev2, 0.8ng/μL pAcGFP1(Takara), 20mM Tris-HCl(pH8.8 at 25℃),10mM KCl,10mM(NHSO, 2mM MgSO, 0.1% Triton(登録商標) X-100, 0.1mg/mL BSA, 0.2mM dNTPs, 0.02U/μL Pfu DNA polymerase]をアプライドバイオシステムズ MiniAmp Plusサーマルサイクラーにて以下の加熱条件に付した[(95℃,15秒→55℃,15秒→72℃,1分間)/サイクル×30サイクル]。
【0061】
PCR反応後の反応液(50μL)にそれぞれTE飽和フェノール(ナカライテスク)とクロロホルムの等量混合液(100μL)を加え、激しく混和したのち遠心(14,000×g,3分間)し,水層を分離した。同様にクロロホルム(100μL)で反応液を抽出したのち、水層に3M NaOAc(pH5.2)5μLとイソプロピルアルコール60μLを加えた。-30℃で1時間冷却した後、遠心(20,000×g,20分間)し、DNAをペレットとして回収した。PCR反応の鋳型プラスミドDNAを分解するため、2種の反応産物をそれぞれ制限酵素DpnI(Toyobo)と37℃で1時間反応させた(0.8U/μL DpnI in 33mM Tris-acetate(pH7.9),10mM Mg(OAc), 66mM KOAc,0.5mM dithiothreitol,反応液量20μL)。反応液に水80μLを添加し、TE飽和フェノールとクロロホルムの等量混合液(100μL)を加え、激しく混和したのち遠心(14,000×g,3分間)し、水層を分離した。同様にクロロホルム(100μL)で反応液を抽出したのち、3M NaOAc(pH5.2)10μLとイソプロピルアルコール110μLを加えた。-30℃で1時間冷却した後、遠心(20,000×g,20分間)し、DNAをペレットとして回収した。DNAペレットを水に溶解しアガロースゲル電気泳動(GelRed(和光純薬工業)を含む0.8% Agarose S(和光純薬工業))により分析し、DNAサイズマーカー(Quick-Load Purple 1 kb Plus DNA Ladder、New England Biolabs)のバンド強度と比較することで含まれる目的DNAの濃度を算出した[ベクターDNA断片(5μL)、13ng/μL;インサートDNA断片(50μL),23ng/μL]。
【0062】
べクターDNA断片(26.5ng)とインサート断片(26.5ng)の混合液5μLを96穴マルチウェルプレートのウェルに加え、光照射装置MAX-305(朝日分光)により波長365nmの光を約4mW/cmで10分間照射した。同溶液を大腸菌コンピテントセル溶液25μL(NEB 5-alpha Competent E.coli(High Efficiency)、New England Biolabs)に添加し形質転換した。これをアンピシリンナトリウム(50μg/mL)を含むLB寒天培地に塗布し37℃で一晩培養した。生じたコロニー476個から20個を選択しコロニーPCRを行い、ベクターへの目的インサートの挿入の有無を判別した。PCR反応液をアガロースゲル電気泳動により解析し、20クローンのうち目的連結反応産物は18個含まれることが分かった(PCRプライマー, 5’ TAATACGACTCA CTATAGGG 3’, 5’ GCTAGTTATTGCTCAGCGG 3’;コロニー陽性率90%)。連結反応産物10クローンについて、これを含む菌体を液体培養し、プラスミドDNAを抽出した。2種のプライマー配列(5’ GGTGATGTCGGCGATATAGG 3’, 5’ GCCAATCCGGATATAGTTCCT 3’)を用い、DNAシーケンサーABI PRISM 3500xL Genetic Analyzerにより得られたプラスミドDNAの配列を解析した。4か所のプライマーDNA由来部位、これらのうちの2か所のオーバーラップ部位、及びこれらに挟まれた範囲の塩基配列を解析した結果、10クローンすべてで設計どおりの配列を含み、変異は観察されなかった。
【0063】
図4は、PCR反応のアガロースゲル電気泳動分析を示す図である。Lane1,サイズマーカー;lane2,反応液を示す。(a)ベクター側断片の調製。(b)インサート側断片の調製である。
【0064】
2.還元条件で脱保護されるアナログ(T**)
(1)還元条件で脱保護されるアナログ(T**)の合成
以下に還元条件で脱保護されるアナログ(還元脱保護アナログ)の合成スキームを示す。以下、この合成スキームに従って、還元脱保護アナログの合成手順を説明する。
【化16】
【0065】
3-O-[2-(4-ニトロベンジルオキシ)(ジイソプロピルアミノ)ホスファニル]-5-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2-デオキシ-チミジン(化合物26)の合成
THF(7mL)中の化合物24(0.50g、1.32mmol)及びEtN(200μL、1.45mmol)の混合物に、室温でN,N-ビス(ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィン(0.39g、1.45mmol)を加えた。反応が完了するまで、生じた混合物を室温で25分間撹拌した(化合物25)。次の工程を精製せずに続けた。4-ニトロベンジルアルコール(0.22g、1.45mmol)を反応混合物に加え、次いで5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール(0.17g、1.45mmol)を加えた。反応は室温で20分後に完了した。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO、HO、及びブラインで洗浄した。蒸発後、混合物を中性フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中2%トリエチルアミン/EtOAc=2:1~1:1)で精製して化合物26(0.46g、0.56mmol、42%)を得た。
【0066】
(2)オリゴヌクレオチドの合成
合成した切断アナログT**のアミダイトは終濃度50 mMのアセトニトリル溶液とし、ホスホロアミダイト法に基づきDNA合成機を用いてDNAオリゴマーを合成した。脱保護は定法に従って行い、逆相HPLC [日立ハイテクサイエンス社製 LaChrom Elite;カラム,YMC社製Hydrosphere C18(250×10mm)]により精製し、MALDI-TOF/MS(Bruker)を用いて構造を確認した。合成したDNAの配列を以下の表に示す。
【表2】
【0067】
(3)プライマー伸長実験
Q5 High-Fidelity DNA polymeraseはNew England Biolabs社から購入した。Pfu DNA polymeraseはプロメガ社から購入した。酵素反応の反応液[1μM Primer (5’ Fluorescein-ACCGAGCTCGAATTCGCC 3’),1μM Template(0T,1T又は2T,表2),0.2mM dNTPs,0.02units/μL polymeraseを含む]は各酵素に添付の緩衝液を用い、推奨条件に従い作成した。反応液をアプライドバイオシステムズ2720サーマルサイクラーにて95℃で1分、55℃で30秒、次いで72℃で10、30又は60分間加熱した。加熱後の反応液9μLに2×ホルムアミドローディング溶液9μLを加え、90℃で3分間加熱した後、7.5M尿素を含む20%変性PAGEにより解析した(図6)。泳動後のゲルに含まれるオリゴヌクレオチド鎖をプライマー鎖の5’末に修飾したフルオレセイン基由来の蛍光に基づきChemiDoc XRS+イメージングシステムにて検出した。
【0068】
(4)T**を1つ含むオリゴヌクレオチド(1T)の脱保護反応
オリゴヌクレオチド(5’-ACGACTCACT**ATAGGGCGAATTCGAGCTCGGT-3’,10μM)を20mM Tris-HCl(pH7.4)に溶解し、Naを終濃度1mMとなるように加え、室温で30分間静置した。その後、脱保護反応の進行を逆相HPLC[日立ハイテクサイエンス社製 LaChrom Elite;カラム,YMC社製Hydrosphere C18 (250×10mm)]により解析した(図7)。
【0069】
(5)T**を2つ含むオリゴヌクレオチド(2T)の脱保護反応
オリゴヌクレオチド(5’-ACGACTCACT**T**TAGGGCGAATTCGAGCTCGGT-3’,10μM)を20mM Tris-HCl(pH7.4)に溶解し、Naを終濃度10mMとなるように加え、室温で30分間静置した。その後、脱保護反応の進行を逆相HPLC[日立ハイテクサイエンス社製 LaChrom Elite;カラム,YMC社製Hydrosphere C18(250×10mm)]により解析した(図8)。
【0070】
3.リン酸修飾基中の置換基Rをより嵩高くした実験
以下、PCR停止プライマーにおいてリン酸修飾基中の置換基Rをより嵩高くしたとき、修飾部位の化学的安定性及び複製反応阻害効果を評価した。図9は、この実験の概要を示す図である。
【0071】
(1)アミダイト試薬 (dT,R=Me,tBu,adamantyl)の合成
置換基Rをより嵩高くし、複製反応阻害効果、化学的安定性向上を目指した。
(1-1)メチル型dTホスホロアミダイトの合成
【化17】
参照)Chem.Eur.J.2014,20,12114-12122
5’-DMTr-チミジン(343mg,0.63mg)の懸濁液に光保護アミダイト試薬(300mg,0.75mmol)と1H-テトラゾール(53mg,0.75mmol)をCHCl(1.7mL)中、アルゴン下、0℃で添加し、室温で4時間撹拌した。この混合物をシリカゲルカラム(3%TEAを含むCHCl/AcOEt=3/1)に直接アプライして粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%TEAを含むHex/AcOEt=3/1)で精製し、Meアナログアミダイト(309mg、58%)を得た。
31P-NMR(159MHz,CDCl3):δ 148.8,147.8,147.7;HR-ESI-MS(m/z)calcd.863.3392[M+Na]、found 863.3415。
【0072】
(1-2)アダマンチル型dTホスホロアミダイトの合成
【化18】
CHCl(4mL)中の5’-DMTr-チミジン(258mg,0.47mmol)の溶液にDIPEA(107μL,0.61mmol)とビス(ジイソプロピルアミノ)-Cl-ホスフィン(163mg,0.61mmol)をアルゴン下、0℃で加え、室温で2時間撹拌した。次いで、上記反応混合物に2-ニトロ-α-アダマンチルベンジルアルコール(150mg、0.52mmol)と1H-テトラゾール(50mg、0.71mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物に1H-テトラゾール(50mg,0.71mmol)を加え、更に1時間撹拌した。HOを加えた後、反応混合物をAcOEtで抽出し、ブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥し、蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5% TEAを含むHex/AcOEt=1/1)で粗生成物を精製し、Adアナログアミダイト(169mg、37%)を得た。
31P-NMR(159MHz,CDCl3):δ 153.1,151.9,150.2,148.1;HR-ESI-MS(m/z)calcd.983.4331[M+Na]、found 983.4336。
【0073】
(1-3)tBu置換アナログの4種類の塩基(A,G,C,T)のアミダイト試薬合成スキーム(まとめ)
以下に、4種類の塩基を用いた場合におけるアミダイト試薬の合成スキームの概要を示す。
【化19】
【0074】
(1-4)Pac-dAホスホロアミダイトの合成
【化20】
5’-DMTr-Pac-dA(2.0g,2.9mmol)の懸濁液に光保護アミダイト試薬(2.6g,5.8mmol)と5(メチルチオ)-1H-テトラゾール(1.0g,8.7mmol)をCHCl(7.5mL)中でアルゴン下、0℃で加え、室温で6時間撹拌した。溶液をAcOEt(200mL)に注ぎ、水(200mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水(200 mL)、食塩水(200 mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で有機相を乾燥し、濾過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hex/AcOEt=2/1、1% TEA含有)で精製し、t-Bu dTアナログアミダイト(1.1g、37%)を得た。
HR-ESI-MS(m/z)calcd.1048.4350[M+Na]、found 1048.4437。
【0075】
(1-5)dTホスホロアミダイトの合成
【化21】
5’-DMTr-Pac-dA(1.5g,2.8mmol)の懸濁液に光保護アミダイト試薬(2.4g,5.5mmol)と5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール(0.64g,5.5mmol)をCHCl(10mL)中にアルゴン下、0℃で添加し、室温で7時間撹拌した。溶液をAcOEt(200mL)に注ぎ、水(200mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水(200mL)、食塩水(200mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hex/AcOEt=2/1、1% TEAを含む)で精製し、t-Bu dAアナログアミダイト(2.0g、81%)を得た。
HR-ESI-MS(m/z)calcd.905.2267[M+Na]、found 905.3978。
【0076】
(1-6)Pac-dGホスホロアミダイトの合成
【化22】
5’-DMTr-Pac-dG(2.0g,2.8mmol)の懸濁液に光保護アミダイト試薬(2.5g,5.7mmol)と5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール(0.99g,8.5mmol)をCHCl(7.5mL)中でアルゴン下、0℃で加え、室温で6時間撹拌した。溶液をAcOEt(200mL)に注ぎ、水(200mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水(200mL)、食塩水(200mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hex/AcOEt=2/1で1% TEAを含む、AcOEt/MeOH=40/1)で精製し、t-Bu dGアナログアミダイト(1.2g,41%)を得た。
HR-ESI-MS (m/z)calcd.1143.5678[M+TEA]、found 1143.5867。
【0077】
(1-7)Ac-dCホスホロアミダイトの合成
【化23】
5’-DMTr-Ac-dC(1.8g,3.2mmol)の懸濁液に光保護アミダイト試薬(2.8g,6.3mmol)と5(メチルチオ)-1H-テトラゾール(0.73mg,6.3mmol)をCHCl(8.0mL)中にアルゴン下、0℃で加え、室温で6時間撹拌した。溶液をAcOEt(200mL)に注ぎ、水(200mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水(200mL)、食塩水(200mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hex/AcOEt=1/1、1% TEA含有)で精製し、t-Bu dCアナログアミダイト(2.1g、74%)を得た。
HR-ESI-MS(m/z)calcd.1011.5355 [M+TEA]、found 1011.5503。
【0078】
(2)修飾オリゴヌクレオチドの熱サイクル条件(PCR条件)における安定性(分解耐性)試験
(反応条件)
10μM oligo(Me1T or tBu1T) in 20mM Tris-HCl,10mM(NHSO,10mM KCl,2mM MgSO,pH8.8.本組成の溶液を熱サイクル条件[(95℃,1分→50℃,30秒→72℃,3分)×30cycles]に付したのち、逆相HPLCにて分析した。
【0079】
(分析条件)
システム;日立ハイテクサイエンス社製LaChrom Elite
カラム;YMC社製Hydrosphere C18(250×4.6mm)
移動相;A液,5%アセトニトリルを含む50mM triethylammonium acetate(TEAA, pH7.0)
B液,アセトニトリル
(B液含量を20分かけて0%から60%へと増加させた(linear gradient))
移動相流量;1mL/分
検出波長;260nm
【0080】
(結果)
オリゴヌクレオチドMe1Tを熱サイクルに付した後には、約50%の基質において修飾基の脱離が見られた(図10の(d):観察されたピークが修飾を含まない同配列オリゴヌクレオチドの溶出時間と一致することを確認した)。それに対し、tBu1Tの場合は熱サイクルに付しても保護基の脱離は観察されなかった(図10の(e))。したがって、Me,tBuタイプ修飾の安定性を比較した結果、後者の優位性が示された。
【0081】
(3)修飾プライマーがPCR条件において安定(分解耐性)であることを示す実験(tBuアナログ導入数1,2,3の比較)
(反応条件)
10μM oligo(tBu1T,tBu2T or tBu3T) in 20 mM Tris-HCl,10mM (NHSO,10mM KCl,2mM MgSO,pH8.8。本組成の溶液を熱サイクル条件[(95℃,1min→50℃,30sec→72℃,3min)×30cycles]に付したのち、逆相HPLCにて分析した。
【0082】
(分析条件)
システム;日立ハイテクサイエンス社製LaChrom Elite
カラム;YMC社製Hydrosphere C18(250×4.6mm)
移動相;A液,5%アセトニトリルを含む50mM triethylammonium acetate(TEAA,pH7.0)
B液,アセトニトリル
(B液含量を20分かけて0%から60%へと増加させた(linear gradient))
移動相流量;1mL/分
検出波長;260nm
【0083】
(結果)
図11に示すように、修飾の導入数を2個、3個に増加させても本条件では保護基の脱離は見られなかった。
【0084】
(4)tBuタイプ修飾プライマーの脱保護反応の逆相HPLC分析
(脱保護反応条件)
光照射(図12の(b));10μM oligo,10mM Tris-HCl(pH8.5)
溶液に対し365nm光(4mW/cm)を10分間照射
還元反応(図12の(c));5μM oligo,10mM Na,20mM Tris-HCl(pH8.5)
溶液を25℃で30分間インキュベート
【0085】
(分析条件)
システム;日立ハイテクサイエンス社製LaChrom Elite
カラム;YMC社製Hydrosphere C18(250×4.6mm)
移動相;A液,5%アセトニトリルを含む50mM triethylammonium acetate(TEAA,pH7.0)
B液,アセトニトリル
(B液含量を20分かけて0%から60%へと増加させた(linear gradient))
移動相流量;1mL/分
検出波長;260nm
【0086】
以下の還元条件でも同様に脱保護が可能であることを確認済みである。
・10μM oligo,10mM B(OH),50mM NaOH,30% EtOH/water;25℃,2hours
・10μM oligo,1.5mM TiCl,20mM citrate buffer(pH6.0);25℃,2hours
【0087】
図12に示すように、365nm光照射、及び亜ジチオン酸ナトリウムによる還元反応の両者で定量的な反応進行を確認した。
【0088】
(5)PCR産物の試験管内での連結反応(Taq DNAリガーゼ)
図13中に記載の熱耐性ポリメラーゼを使用し、PCR反応により二本鎖DNA断片を調製した。1.0kb断片の調製に用いた鋳型はpET21プラスミドDNA、プライマー配列は以下の2本である。
下線部T()はリン酸部にMe、tBu型修飾基を含むことを示す。pは5’末端がリン酸化されていることを示す。
Fw(21-nt),5’ CGCCGAGACAGAACTTAATGG 3’
Rev(38-nt),5’ pAATCTCCTTCTTTAAGTTAAACAAAATTATTTCTAGAG 3’
0.74kb断片の調製に用いた鋳型はpAcGFP1プラスミドDNA、プライマー配列は以下の2本である。
下線部T()はリン酸部にMe、tBu型修飾基を含むことを示す。pは5’末端がリン酸化されていることを示す。
Fw(35-nt),5’ pAAAGAAGGAGATTAACCATGGTGAGCAAGGGCGCC 3’
Rev(34-nt),5’ GCAACCAAGCTTCTCACTTGTACAGCTCATCCAT 3’
【0089】
図中に記載の市販の耐熱性ポリメラーゼを使用し、推奨条件に従いPCR反応を実施し、1.0kb断片及び0.74kb断片をそれぞれ調製した。反応の進行はアガロースゲル電気泳動(GelRed(和光純薬工業)を含む1.5% Agarose S(和光純薬工業))にて確認した。PCR反応後、反応液200μLにTE飽和フェノール(ナカライテスク)とクロロホルムの等量混合液200μLを加え、激しく混和したのち遠心(20,000×g,1分間)、水層を分離した。同様にクロロホルム200μLで反応液を抽出したのち,3M NaOAc(pH5.2)20μLとイソプロピルアルコール220μLを加えた。-30℃で1時間冷却した後、遠心(20,000×g,20分間)することでDNAを回収した。目的とするDNA産物をアガロースゲル電気泳動(GelRed(和光純薬工業)を含む1.5% Agarose S(和光純薬工業))により精製した。切り出したゲル片からWizard SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ)を用いてDNAを抽出した。
【0090】
このようにして調製した1.0kb断片と0.74kb断片をTaq DNAリガーゼを用いて連結し、その効率をアガロースゲル電気泳動で評価した。最初にリン酸部の保護基を除去するために、DNA溶液(5μL;24nM 1.0kb断片,24nM 0.74kb断片,1mM Tris-HCl(pH8.5))に365-nm光を4mW/cmの強度で5分間照射した。次いで、この2つのDNA断片を含む溶液にTaq DNAリガーゼ(New England Biolabs)を加え、37℃で2時間インキュベートした。反応液組成は以下のとおりである。2.8nM 1.0kb断片,2.8nM 0.74kb断片,1.6U/μL Taq DNAリガーゼ,20mM Tris-HCl,25mM potassium acetate,10mM magnesium acetate,1mM NAD 1, 10mM DTT, 0.1% Triton X-100,pH7.6.反応液に水80μLを加え、全量を約100μLとし、TE飽和フェノール(ナカライテスク)とクロロホルムの等量混合液100μLを加え、激しく混和したのち遠心(20,000×g,1分間)、水層を分離した。同様にクロロホルム100μLで反応液を抽出したのち、3M NaOAc(pH5.2)10μLとイソプロピルアルコール110μL,20mg/mL グリコーゲン 1μLを加えた。-30℃で15分間冷却した後、遠心(20,000×g,20分間)することでDNAを回収した。回収したDNA産物をアガロースゲル電気泳動(1.5% Agarose S(和光純薬工業))により泳動した。泳動後のゲルをGelRed水溶液で染色し、バンドを可視化した(BioRad ChemiDoc XRS+システム)。
【0091】
図に示すように、Me,tBuプライマーの比較を行い、後者でより高い連結効率が得られることを確認した。
【0092】
(6)鎖伸長停止ケージドアナログを含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした複製反応
上記「(2)鎖伸長停止ケージドアナログT*を含むオリゴヌクレオチドを鋳型にした複製反応」と同様に、複製反応の実験を行った。
酵素反応の反応液[1μM Primer(5’ Fluorescein-ACCGAGCTCGAATTCGCC 3’),1μM Template(各図に配列及び構造記載),0.2mM dNTPs,0.02 units/μL polymeraseを含む]は各酵素に添付の緩衝液を用い、推奨条件に従い作成した。反応液をアプライドバイオシステムズ 2720サーマルサイクラーにて95℃で1分、55℃で30秒、次いで72℃で30分間加熱した。加熱後の反応液10μLに2×ホルムアミドローディング溶液10μLを加え、90℃で3分間加熱した後、7.5M尿素を含む20%変性PAGEにより解析した(図14図17)。泳動後のゲルに含まれるオリゴヌクレオチド鎖をプライマー鎖の5’末に修飾したフルオレセイン基由来の蛍光に基づきChemiDoc XRS+イメージングシステムにて検出した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17