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特許7551160RFIDタグおよび無線給電ひずみセンサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】RFIDタグおよび無線給電ひずみセンサー
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20240909BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240909BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20240909BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G06K19/07 170
G06K19/077 144
G06K19/077 280
G06K19/077 296
H01Q9/16
G01B7/16 Z
G06K19/077 216
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022109329
(22)【出願日】2022-07-06
(65)【公開番号】P2023181037
(43)【公開日】2023-12-21
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2022094178
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】720008759
【氏名又は名称】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特許第5358489(JP,B2)
【文献】特開2020-030459(JP,A)
【文献】特開2007-150654(JP,A)
【文献】特開2000-356505(JP,A)
【文献】特開2010-237064(JP,A)
【文献】特開2020-005170(JP,A)
【文献】特開2003-187211(JP,A)
【文献】特開2021-180447(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137330(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/077
H01Q 9/16
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の開口を有する導体パターンと、
前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップと、
前記導体パターンから第1端部まで第1方向に延伸する第1放射導体、前記導体パターンから第2端部まで第2方向に延伸する第2放射導体、ならびに、前記導体パターンから前記第1方向および前記第2方向に延伸する第3放射導体のうちの少なくとも一つとを有し、
前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つが、前記導体パターンと、絶縁層を介して接続され
前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つと前記導体パターンとの間の、前記絶縁層を介して隔離された距離が、5μm以上60μm以下の範囲では、前記距離はRFIDタグの通信距離CLに影響を及ぼさず、
前記距離が60μm以上120μm未満の範囲のある値を超えたときに、前記距離の増加とともに、前記通信距離CLが減少することを
特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記絶縁層が可逆的に伸縮し、
前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つと前記導体パターンとの間の、前記絶縁層を介して隔離された距離が、
前記絶縁層の伸縮によって変化することを
特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
請求項2記載のRFIDタグであって、
前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つと、前記導体パターンとの間の、前記絶縁層を介して隔離された距離が、前記絶縁層の伸縮のない状態では、5μm以上60μm以下の範囲にあり、
前記範囲ではRFIDリーダ・ライタが前記RFIDタグから受信する信号の変化が無く、
前記絶縁層の伸長によって、前記絶縁層を介して隔離された距離が60μm以上120μm未満の範囲のある値を超えたときに、前記信号の変化が起こることを
特徴とする無線給電型のひずみセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグおよび無線給電ひずみセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁界や電波を用いて非接触でデータの読み書きを行い、それらのデータによって認証を行うRFID(Radio Frequency Identification)は、電池や外部電源を使用せずに検知結果を無線送信する技術であり、種々のセンサーとRFIDとを組み合わせたパッシブ型センサーが知られている。
【0003】
多数配置される情報通信技術(ICT)デバイスの課題の一つが電源であり、ワイヤレス、電池レスで動作が可能な無線給型のデバイスによるセンサーネットワークの構築が期待されている。
【0004】
これまで、RFID技術の特長を生かした、ひずみセンサーからの構造物のひずみ情報を、RFIDタグを介する無線通信で送信する、構造物のひずみ計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、ひずみによる抵抗変化を捉えるホイーストンブリッジ回路型のひずみゲージをセンサーとして計測が行われ、センサー信号のひずみ測定データが、電池を搭載しないパッシブタイプのRFIDタグを介して、無線通信によって転送されている。このひずみ計測装置は、RFIDタグ自体はセンシング機能を有さず、ひずみセンサー部と無線通信機能を担うRFID部とが電気的に結線された構造となっている。
【0005】
無線によってデータ授受が可能なRFID技術は、構造物等の管理のみならず、人体の状態を検知するバイタルセンシングによって、乳幼児や、介護現場及び病院等での健康管理や見守りを行うための無線給型のセンサーへの応用が期待されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
人の体温や、心拍数、呼吸といったバイタルサインのモニタリングにおいては、計測用のデバイスの、柔軟性や軽量性といった、人が身につける場合の、装着負荷の低減が求められる。
【0007】
装着負荷の低減においては、電池や外部電源を必要としないパッシブ型のセンサーであることが好ましく、フレキシブル基板表面にアンテナと水晶振動子からなる感知素子とが実装されたセンサータグが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5717972号公報
【文献】特開2019-141622号公報
【文献】国際公開第2014/129069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および3に記載のような、これまでの無線給電型センサーデバイスの構造は、従来からセンサーとして用いられてきた、ひずみセンサーや水晶振動子等の検知部と、無線通信及び無線給電のためのRFID部とが、電気的に結線された構造や、基板上に実装された構造となっていた。
【0010】
このような従来の無線給電型のひずみセンサー装置では、人体の状態を検知するバイタルセンシング用途においては、人体への装着負荷が高くなってしまうという課題があった。また、検知部のコストや実装回路の形成に伴うコストから、乳幼児や、介護現場及び病院等での健康管理や見守りにおいて、使い捨て使用が可能な、低価格でディスポーザブルな無線給型センサータグ用途での使用は難しいという課題もあった。
【0011】
また、特許文献1に記載の無線給電型のひずみセンサー装置では、センサー部にホイーストンブリッジ回路型のひずみゲージが用いられているが、これはハードな構造物における歪を検知するのに適したものであり、人体等のソフトな対象物のひずみ検知には適したものとなっていないという課題があった。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、人体への装着負荷を低減することができ、人体等のソフトな対象物のひずみも検知可能であり、低価格でディスポーザブルなRFIDタグおよび無線給電ひずみセンサーを提供することを目的とする。これは、放射導体とインピーダンス整合部とからなる、柔軟で軽量なRFIDタグ自身が、無線給電型のひずみセンサーとして機能する、より簡便な構造のセンサータグにより実現可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るRFIDタグは、環状の開口を有する導体パターンと、前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップと、前記導体パターンから第1端部まで第1方向に延伸する第1放射導体、前記導体パターンから第2端部まで第2方向に延伸する第2放射導体、ならびに、前記導体パターンから前記第1方向および前記第2方向に延伸する第3放射導体のうちの少なくとも一つとを有し、前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つが、前記導体パターンと、絶縁層を介して接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るRFIDタグは、前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つが、前記導体パターンと、前記絶縁層で接続され、前記絶縁層が、ひずみに対して可逆的に伸縮してもよい。
【0015】
本発明に係る無線給電ひずみセンサーは、本発明に係るRFIDタグから成り、前記導体パターンと、前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つとを接続する前記絶縁層の伸びにより、RFIDリーダ・ライタがRFIDタグから受信している電力に関わる値であるリーダRSSIが減少し、前記導体パターンと、前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つとを接続する前記絶縁層の伸びの復元により、前記リーダRSSIが回復することで、ひずみの有無および繰返しひずみの回数を検知可能に設けられていてもよい。また、本発明に係る無線給電ひずみセンサーは、本発明に係るRFIDタグから成り、前記導体パターンと、前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つとを接続する前記絶縁層の伸びにより、RFIDタグがRFIDリーダ・ライタから受信している電力に関わる値であるオンチップRSSIが減少し、前記導体パターンと、前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つとを接続する前記絶縁層の伸びの復元により、前記オンチップRSSIが回復することで、ひずみの有無および繰返しひずみの回数を検知可能に設けられていてもよい。また、本発明に係る無線給電ひずみセンサーは、本発明に係るRFIDタグから成り、前記導体パターンと、前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つとを接続する前記絶縁層の伸びにより、UHF入力で観測したRFIDタグのインピーダンスに関わる値であるセンサーコードSが増加し、前記導体パターンと、前記第1放射導体、前記第2放射導体および前記第3放射導体のうちの少なくとも一つとを接続する前記絶縁層の伸びの復元により、前記センサーコードSが回復することで、ひずみの有無および繰返しひずみの回数を検知可能に設けられていてもよい。
【0016】
また、本発明に係るRFIDタグは、前記導体パターンを含む平面に対して垂直な方向を第3方向とするとき、絶縁層を伸縮させるひずみは、いかなる方向のひずみであってもよく、例えば、第3方向のひずみであっても、導体パターンを含む平面に平行なひずみであってもよく、両方の方向のひずみが重なったひずみであってもよい
【0017】
本発明に係るRFIDタグは、使用周波数がUHF帯の周波数であることが好ましい。また、本発明に係るRFIDタグは、前記導体パターンの前記第1方向端と、前記導体パターンの前記第2方向端との間の長さが、1mm以上30mm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、人体への装着負荷を低減することができ、人体等のソフトな対象物のひずみも検知可能であり、低価格でディスポーザブルなRFIDタグおよび無線給電ひずみセンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1に係るUHF帯RFIDタグ(形状A)の(a)平面図及び(b)断面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るUHF帯RFIDタグ(形状B)の(a)平面図及び(b)断面図である。
図3】本発明の実施の形態に関し、UHF帯RFIDタグの通信距離の測定方法を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るUHF帯RFIDタグ(形状A、ICチップ20A使用、および、形状B、ICチップ20A使用)の、絶縁層の厚さD1と通信距離との関係を示す表である。
図5】本発明の実施の形態1に係るUHF帯RFIDタグ(形状A、ICチップ20A使用)の、放射導体材質及び厚さと通信距離との関係を示す表である。
図6】本発明の実施の形態1に関し、UHF帯RFIDタグ(形状C)の(a)平面図及び(b)断面図である。
図7】本発明の実施の形態2に係るUHF帯RFIDタグ(形状D)の(a)平面図及び(b)断面図である。
図8】本発明の実施の形態2に係るUHF帯RFIDタグ(形状D)の、引張りひずみセンサーとしての特性評価の測定方法を示す(a)RFIDタグを縮めた状態、(b)RFIDタグを伸ばした状態の平面図である。
図9】本発明の実施の形態2に係るUHF帯RFIDタグ(形状D、ICチップ20A使用)の、伸縮の繰り返しに伴う(a)リーダRSSIの変化、(b)オンチップRSSIの変化、(c)センサーコードSの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向、ならびに、同一および等しいなどの用語には、実施形態の作用及び効果を損なわない程度のずれが許容される。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。
【0021】
本発明に係る無線給電ひずみセンサーの構造は、UHF帯RFIDタグの構成要素である、インピーダンス整合部、ICチップ及び放射導体からなるダイポール型アンテナに加えて、インピーダンス整合部と放射導体とを接続する、可逆的に伸縮する絶縁層からなる。
【0022】
従来のUHF帯RFIDタグにおいては、ICチップと電気的に接続されたインピーダンス整合部の導体パターンは、ダイポールアンテナ型の放射導体に連なった、連続的な導体構造となっている。これに対して、本発明に係る無線給電ひずみセンサー機能を有するUHF帯RFIDタグにおいては、インピーダンス整合部と、放射導体からなるダイポール型アンテナとが、絶縁層で隔てられており、直流的には絶縁されている。
【0023】
本発明に係るUHF帯RFIDタグにおいては、ICチップが接続されたインピーダンス整合部の開口を形成する環状の導体パターンと、放射導体からなるダイポール型アンテナとを接続する絶縁層の厚さを適切に規定することで、インピーダンス整合部の導体パターンと放射導体との間に電磁結合が形成され、RFIDタグとRFIDリーダ・ライタのアンテナとの間の通信距離(CL)の低減を抑制できることを見出し、絶縁層の伸縮や圧縮による状態変化を利用することで、柔軟で軽量なRFIDタグ自身が、無線通信及び無線給電のみならず、センサーとしての機能も有する、より簡便な構造のひずみセンサータグを実現できるという着想に至った。本発明は、このような着想をもとになされたものである。
【0024】
次に、上記のひずみセンサー機能を有するUHF帯RFIDタグの各要素を詳述する。
【0025】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るUHF帯RFIDタグ(形状A)の平面図及び断面図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ101について説明する。本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ101は、絶縁基材10、インピーダンス整合部絶縁基材11、絶縁層12、ICチップ20、開口を有する導体パターン31、第1放射導体33及び第2放射導体34を備える。ここで、放射導体は、第1放射導体33と第2放射導体34とが部分的につながった、図2に示すような第3放射導体35であってもよい。
【0026】
絶縁基材10は、板状又はフィルム状の部材で、Z軸方向の正側で、インピーダンス整合部絶縁基材11と接合している。この例では、絶縁基材10は、平面視において、X軸方向を長手方向とする矩形状の外形を有する。しかし、絶縁基材10の外形は、矩形以外の形状でもよく、例えば、X軸方向に平行な長軸を有する楕円、X軸方向に平行な辺の長さとY軸方向に平行な辺の長さとが等しい正方形などでもよい。
【0027】
絶縁基材10の材質は、特に限定はされないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化樹脂共重合体、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアセタール等の樹脂基材や、紙基材等、紙フェノール基材、紙エポキシ基材、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材等の複合基材等が挙げられる。可撓性の観点からは、樹脂基材や紙基材等が好ましい。絶縁基材10の厚さは、その柔軟性、強度の観点から、4~1000μmが好ましく、8~150μmがより好ましい。
【0028】
第1放射導体33、第2放射導体34、及び第3放射導体35は、絶縁基材10、インピーダンス整合部絶縁基材11及びICチップ20と、絶縁層12を介して設けられた平面状の導体である。第1放射導体33、第2放射導体34、及び第3放射導体35は、Z軸方向の正側で、絶縁基材10の上に所定の公知の方法で平面状に形成された導電層であってもよい。
【0029】
インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31、第1放射導体33、第2放射導体34、及び第3放射導体35の材質は、特に限定はされないが、導電性を有する導体から形成される。例えば、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、クロム、亜鉛、鉛、タングステン、鉄等の金属であってもよい。第1放射導体33及び第2放射導体34の材質は、酸化スズもしくはITO(酸化インジウムスズ)等の金属酸化物、金、銀もしくは銅等の金属ナノワイヤーを用いた導電膜、樹脂に前記金属粉や導電性カーボン材料を混合した導電性樹脂混合物、または導電性樹脂のフィルム等であってもよい。第1放射導体33及び第2放射導体34の厚さは、柔軟性、強度の観点から、0.05~1000μmが好ましく、1~100μmがより好ましい。
【0030】
ICチップ20は、インピーダンス整合部32の開口21の近傍で、導体パターン31に電気的に接続された半導体部品である。ICチップ20は、RFIDタグ101の外部に存在するリーダ・ライタ等の通信機器との間で、所定の情報を、第1放射導体33及び第2放射導体34からなるアンテナパターンによって送受するよう構成されている。ICチップ20は、第1放射導体33、第2放射導体34、もしくは第3放射導体35からなるアンテナパターンを介して、センサーにより検知された状態を表す情報を送信するよう構成されている。
【0031】
ICチップ20は、インピーダンス整合部の開口21を有する導体パターン31と同層に配置されてもよいし、開口21を有する導体パターン31とは異なる層に配置されてもよい。ICチップ20は、開口21を有する導体パターン31に引き出し線を介して電気的に接続されてもよいし、開口21を有する導体パターン31に設けられた電極に実装されてもよい。ICチップ20は、開口21を有する導体パターン31に形成されたスリット又は切り欠きを跨ぐように配置されてもよい。
【0032】
RFIDタグ101は、ICチップ20、給電部30、インピーダンス整合部32、第1放射導体33及び第2放射導体34、もしくは第3放射導体35を含み、インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31と、第1放射導体33及び第2放射導体34、もしくは第3放射導体35とは、絶縁層12を介して、電磁結合によって電気的に接続されている。
【0033】
給電部30は、ICチップ20が電気的に接続された箇所である。ICチップ20は、給電部30を介して、インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31、第1放射導体33、第2放射導体34、もしくは第3放射導体35に給電する。給電部30は、例えば、インピーダンス整合部32に形成された導体部(例えば、引き出し線、電極、スリット又は切り欠きなど)である。
【0034】
インピーダンス整合部32は、開口21を形成する環状の導体パターン31の一例である。インピーダンス整合部32は、給電部30が近傍に設けられた略四辺形の開口21を形成する環状導体である。インピーダンス整合部32は、給電部30を含む領域において、開口21を囲うループ回路を形成する。インピーダンス整合部32は、このループ回路の作用によって、ICチップ20と開口21を形成する環状の導体パターン31との間で、インピーダンスを整合する。
【0035】
開口21を形成する環状の導体パターン31とICチップ20との間でインピーダンス整合が取れていない場合には、信号の反射が起こってしまい、RFIDタグ101の通信距離が低下する。UHF帯RFIDタグ用のICチップ20のインピーダンスは、数十~百数十Ωの範囲であり、統一されてはいない。インピーダンス整合部32のループ状構造の大きさや形状によって、複素インピーダンスの虚部(リアクタンス)を制御することで、ICチップ20とのインピーダンス整合を取ることができる。
【0036】
開口21の形状は、図1に示す形態では、X軸方向に平行な一対の長辺と、Y軸方向に平行な一対の短辺とを有する略四辺形である。しかし、開口21の形状は、図1の形態に限られず、例えば、X軸方向に平行な一対の短辺と、Y軸方向に平行な一対の長辺とを有する略四辺形でもよい。開口21の形状である略四辺形には、完全な四辺形が含まれてもよい。“略”とは、角又は辺が丸みを帯びていることを表す。四辺形には、長方形、ひし形、平行四辺形、正方形が含まれてもよい。開口40の形状は、四辺形以外の多角形、円形、楕円でもよい。
【0037】
開口21を形成する環状の導体パターン31の大きさが、30mm四方より小さく、放射導体からなるアンテナを備えていない場合には、RFIDタグ101の通信方式は、アンテナの共振に基づく電波方式による通信ではなく、RFIDリーダが発する電磁波の電界成分と磁界成分のうち、近傍界(Near Field)で強くなる磁界成分による電磁誘導方式(磁界結合方式)の通信になる。この場合通信距離は数cm~数十cmと短く、電波方式のUHF帯RFIDタグに比べて、通信距離の面での制限がある。
【0038】
電波方式での通信を行うための通常のRFIDタグでは、インピーダンス整合部32の開口21を形成する環状の導体パターン31と、放射導体からなるアンテナとは、連続的な導体構造または電気的に接続された構造となっている。
【0039】
これに対して、本発明の実施の形態1のRFIDタグ101では、インピーダンス整合部32の開口21を形成する環状の導体パターン31と、アンテナを形成する第1放射導体33、第2放射導体34、および第3放射導体35のうちの少なくとも一つの放射導体とが、絶縁層12を介して接続されることを特徴としている。絶縁層12の厚さを適切に規定することで、インピーダンス整合部32の導体パターン31と放射導体との間に電磁結合が形成され、RFIDタグとRFIDリーダ・ライタのアンテナとの間の通信距離(CL)の低減を抑制できる。
【0040】
絶縁層12の材質は、特に限定はされないが、例えば、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化樹脂共重合体、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアセタール等の樹脂基材や、紙基材等、紙フェノール基材、紙エポキシ基材、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材等の複合基材等が挙げられる。可撓性の観点からは、樹脂や紙基材などが好ましく、ひずみ測定のための伸縮性の観点からは、ポリウレタン(PU)フィルムやエラストマーフィルムなどがより好ましい。
【0041】
RFIDタグ101は、アンテナを形成する第1放射導体33及び第2放射導体34、もしくは第3放射導体35、ならびに絶縁層12を覆う不図示の絶縁膜を備えてもよい。不図示の絶縁膜は、保護膜(カバーフィルム)として機能する。絶縁膜の材質の例示は、絶縁層12の材質の上述の例示と同じでよい。
【0042】
図3は、UHF帯RFIDタグの通信距離CLの測定方法を示す概念図である。測定装置70は、RFIDリーダ・ライタ71とRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72を有する。空気中に配置された状態でのRFIDタグ73の通信距離を測定するため、RFIDタグ73は、発泡スチロールプレート74に固定されている。通信距離CLは、アンテナ72の表面とRFIDタグ73のICチップとの間の距離として計測される。
【0043】
図3の通信距離CLの測定に用いたRFIDタグ101(形状A)において、絶縁基材10は略四辺形の形状とした。インピーダンス整合部絶縁基材11は略四辺形で、Z軸方向の正側に、略四辺形の孔状の開口21を有した、アルミニウムからなる導体パターン31が備えられている。第1放射導体33は、略四辺形で、第2放射導体34は、略四辺形とした。しかし、第1放射導体33、第2放射導体34、および第3放射導体35の形状は、略四辺形には限定されない。また、互いに異なる寸法でもよい。
【0044】
図1(a)に示すように、平面(X-Y平面)視において、開口21を有する導体パターン31のX軸正方向端の導体部は、第1放射導体33のX軸負方向端と、幅L5で重なっている。平面(X-Y平面)視において、開口を有する導体パターン31のX軸負方向端の導体部は、第2放射導体34のX軸正方向端と、幅L6で重なっている。第1放射導体33のX軸正方向端と第2放射導体34のX軸負方向端との距離を、アンテナ長Lとする。
【0045】
図4は、図1に示す形状AのRFIDタグ(ICチップ20A使用)101、および図2に示す形状BのRFIDタグ(ICチップ20A使用)102において、絶縁層12の厚さD1と通信距離CLとの関係を示す表である。計測には、UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型)を用いた。
【0046】
RFIDタグ101は、略四辺形の絶縁基材10(PETフィルム、X軸方向長さL:略64mm、Y軸方向幅W5:略6mm、厚さ略0.10mm)、インピーダンス整合部絶縁基材11(X軸方向長さL4:略14mm、Y軸方向幅W4:略6mm)、アルミニウムからなる導体パターン31(X軸方向:略14mm、Y軸方向:略4.7mm)、略四辺形の孔状のアルミニウムパターンの開口21(X軸方向長さL3:略7.9mm、Y軸方向幅W3:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)、絶縁層12、略四辺形の第1放射導体33(X軸方向長さL1:略28mm、Y軸方向幅W1:略5mm、材質:銅テープB、厚さ35μm)及び略四辺形の第2放射導体34(X軸方向長さL2:略28mm、Y軸方向幅W2:略5mm、材質:銅テープB、厚さ35μm)を備え、L5及びL6が略3mmで、アンテナ長Lが略64mmの形状とした。第1放射導体33及び第2放射導体34は、厚さ35μmの銅箔(銅テープB)とした。
【0047】
RFIDタグ102は、略四辺形の絶縁基材10(PETフィルム、X軸方向長さL:略64mm、Y軸方向幅W5:略6mm、厚さ略0.10mm)、インピーダンス整合部絶縁基材11(X軸方向長さL4:略14mm、Y軸方向幅W4:略6mm)、アルミニウムからなる導体パターン31(X軸方向:略14mm、Y軸方向:略4.7mm)、略四辺形の孔状のアルミニウムパターンの開口21(X軸方向長さL3:略7.9mm、Y軸方向幅W3:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)、絶縁層12(PETフィルム、厚さ略0.005mm)、略四辺形の孔状の開口(X軸方向長さL3:略7.9mm、Y軸方向幅W3:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)と、切り欠き(X軸方向長さ:6mm)とを有する略四辺形の第3放射導体35(X軸方向長さL:略64mm、Y軸方向幅W1:略5mm、材質:アルミ箔、厚さ11μm)を備え、アンテナ長Lが略64mmの形状とした。
【0048】
図4に示すように、絶縁層12の厚さD1が5μm以上60μm以下の範囲では、インピーダンス整合部32の導体パターン31と放射導体との間に電磁結合が形成されるために、通信距離CLの変化はないが、厚さD1が120μm以上では、通信距離CLが徐々に減少した。絶縁層12による通信距離CLの減少を80%以下にするためには、厚さD1は5μm以上500μm以下であることが好ましく、絶縁層12による通信距離CLの減少を70%以下にするためには、厚さD1は5μm以上210μm以下であることがより好ましく、絶縁層12による通信距離CLの減少を40%以下にするためには、厚さD1は5μm以上120μm以下であることがさらに好ましい。
【0049】
図5は、形状AのRFIDタグ(ICチップ20A使用)101において、略四辺形の第1放射導体33(X軸方向長さL1:略31mm、Y軸方向幅W1:略5mm)、略四辺形の第2放射導体34(X軸方向長さL2:略31mmm、Y軸方向幅W2:略5mm)及び絶縁層12(厚さ:略16μm)を備え、アンテナ長Lが略70mmである場合の、放射導体の材質及び厚さと通信距離CLとの関係を示す表である。計測には、UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型)を用いた。
【0050】
放射導体が無い場合には、RFIDタグ101とリーダ・ライタアンテナ72とが直接接触した場合に断続的に通信が起こるのみであり、このときの通信距離CLは図5において0cmと表記した。
【0051】
放射導体の部材に関しては、銅テープとアルミニウムテープとで、通信距離CLはすべて91mmで、それらの間での違いは無なかった。また、アンテナ部材の厚さに関しては、厚さ11μmから50μmの範囲においては、通信距離CLへの影響は無かった。銅テープBは、テープ裏面に、導電性粒子分散型の導電性粘着剤を備えたものであるが、導電性粘着剤型ではない他の銅テープやアルミニウムテープとの比較において、通信距離CLの違いは無かった。
【0052】
図6は、図5に関わるRFIDタグ101の形状において、第1放射導体33及び第2放射導体34と、インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31との間の絶縁層12を無くして、それらの間の電気的な接続を銀ペースト40でとったRFIDタグ(形状C)103の構造の平面図及び断面図である。UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型)を用いて計測したRFIDタグ103の通信距離CLは、121mmであり、図4に関わる絶縁層12の有るRFIDタグ101の通信距離CLからの増加は、略31%であった。
【0053】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係るUHF帯RFIDタグについて説明する。実施の形態2の説明において、実施の形態1と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0054】
本発明の実施の形態2に係る、引張ひずみセンサー用のRFIDタグの構造を、図7に示した。
【0055】
7は、伸縮性を高めた構造であるRFIDタグ(形状D104の平面図及び断面図を示した。RFIDタグ(形状D104の、第1放射導体33および第2放射導体34のうちの少なくとも一つの放射導体は、放射導体切断部37を有しており、放射導体の上下方向から、ポリウレタンフィルムからなる伸縮性フィルム13で覆うことで保持した構造としている。図では、放射導体切断部37は、L8,L9、L10及びL11の位置に、ジグザグ構造が形成されているが、放射導体切断部37の位置及び形状は、これに限定されない。
【0056】
RFIDタグ(形状D104では、0.4Nでも2mmの伸長があり、より微小な力での引張ひずみの測定に適した構造であった。
【0057】
は、RFIDタグ104(ICチップ20A使用)の引張りひずみセンサーとしての特性評価の測定に関する概念図である。図には、RFIDタグ104での測定の様子を示している。固定ステージ78にRFIDタグ104の一端を固定し、もう一方のRFIDタグ104の端を、移動ステージ77に固定した。移動ステージ77を、コンピューターで制御したステッピングモーター75からなる一軸自動ステージ76で、図(b)に示すように、X軸の正方向に移動させて、RFIDタグ104を伸ばし、図(a)に示すように、X軸の負方向に移動させて、RFIDタグ104を縮めることにより、その伸縮に伴ってRFIDリーダ・ライタ71により無線通信で検知した、RFIDタグ104からの信号の変化の測定を行った。計測には、UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型)を用いた。タグアンテナ面がRFIDリーダ・ライタ71側のアンテナ面に平行で、タグアンテナの長手方向が地面に対して横向きの配向方向で、アンテナの直線偏波方向と、タグアンテナの長手方向とが一致するように設置した。
【0058】
(a)は、自動ステージのX軸方向位置の0mm―1mm-0mm往復変位を1サイクルとして、RFIDタグ(形状D、ICチップ20A使用)104を伸縮させたときの、リーダRSSIの変化を示す。RFIDリーダ・ライタ71がRFIDタグ104から受信している電力に関わる値である、リーダRSSIの値は、RFIDタグ104の伸びにより減少し、RFIDタグ104の伸びの復元により回復した。このような、RFIDタグ104の伸縮に伴うリーダRSSIの値の減少―回復のサイクルが、再現性よく観測された。RFIDタグ(形状D104は、リーダRSSIの変化によって、ひずみの有無や繰返しひずみの回数を検知することができる、無線給電ひずみセンサーとしての機能を有している。
【0059】
(b)は、自動ステージのX軸方向位置の0mm―1mm-0mm往復変位を1サイクルとして、RFIDタグ(形状D、ICチップ20A使用)104を伸縮させたときの、オンチップRSSIの変化を示す。RFIDタグ104がRFIDリーダ・ライタ71から受信している電力に関わる値である、オンチップRSSIの値は、RFIDタグ104の伸びにより減少し、RFIDタグ104の伸びの復元により回復した。このような、RFIDタグ104の伸縮に伴うオンチップRSSIの値の減少―回復のサイクルが、再現性よく観測された。RFIDタグ(形状D104は、オンチップRSSIの変化によって、ひずみの有無や繰返しひずみの回数を検知することができる、無線給電ひずみセンサーとしての機能を有している。
【0060】
(c)は、自動ステージのX軸方向位置の0mm―1mm-0mm往復変位を1サイクルとして、RFIDタグ(形状D、ICチップ20A使用)104を伸縮させたときの、センサーコードSの変化を示す。センサーコードSは、UHF入力で観測したRFIDタグ104のインピーダンスに関わる値である。センサーコードSの値は、RFIDタグ104の伸びにより増加し、RFIDタグ104の伸びの復元により減少し回復した。このような、RFIDタグ104の伸縮に伴うセンサーコードSの値の増加―回復のサイクルが、再現性よく観測された。RFIDタグ(形状D104は、センサーコードSの変化によって、ひずみの有無や繰返しひずみの回数を検知することができる、無線給電ひずみセンサーとしての機能を有している。
【0061】
本発明の実施の形態2に係る無線給電ひずみセンサーは、柔軟で軽量なUHF帯RFIDタグからなり、身体に装着しても負荷が低く、無線通信によって測定データの転送を行えることから、呼吸に伴う胸腹部の動きをひずみセンサーで計測することで、睡眠時無呼吸症候等の検査に用いることができる。
【0062】
[具体例]
次に、本発明の実施の形態の具体的な実施例及び、比較の形態の具体的な比較例について説明する。本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。なお、具体例で使用した材料および装置は、以下のとおりである。
【0063】
[材料]
(1)放射導体形成用銅テープA:サンハヤト株式会社製;銅箔テープ T-160C、硬質銅箔、厚さ略0.03mm、裏面粘着層あり。
(2)放射導体形成用銅テープB:3M製;導電性片面銅箔テープ Cu-35C、軟質圧延銅箔、厚さ略0.035mm、テープ幅略5mm、導電性粒子分散アクリル系粘着剤。
(3)放射導体形成用銅テープC:KOZEEY;銅箔テープ STK0157000514、厚さ略0.05mm、裏面粘着層あり。
(4)放射導体形成用アルミニウムテープA:三菱アルミニウム株式会社製;アルミホイル、厚さ略0.011mm、両面テープ:日東電工株式会社製;極薄両面テープNo.5600、厚さ略5μm。
(5)放射導体形成用アルミニウムテープB:日東電工株式会社製;アルミテープ、軟質アルミ箔、厚さ略0.05mm、裏面粘着層あり。
(6)絶縁フィルム:スリーエムジャパン株式会社製;ポリエステル(PET)フィルム、厚さ略0.10mm。
(7)Agペースト:藤倉化成株式会社製;ドータイトD-550
(8)薄型フィルムドレッシング:日東電工株式会社製;ポリウレタンフィルム、パーミロールLite、厚さ8μm。
(9)薄型フィルムドレッシング:日東電工株式会社製;ポリウレタンフィルム、パーミロール、厚さ30μm。
(10)ICチップ20A:AXZON社製;Magnus-S3、サイズ 1.6BSC×1.6BSC、厚さ 0.35mm。
(11)シリコーン系エラストマーフィルム:アズワン株式会社製;シリコンゴムシート、厚さ 0.5mm。
12)UHF帯RFIDタグA:Avery Dennison Smartrac社;Temperature Sensor Dogbone、ICチップ:Axzon Magnus-S3、周波数帯:UHF 860-960 MHz、ICチップ:ICチップ20A。
【0064】
[装置]
13)UHF帯RFIDリーダ・ライタ:タカヤ株式会社製;UTR-S201,特定小電力無線局タイプ、送信周波数 916.8MHz~923.2MHz(18チャンネル)、送信出力 10dBm(10mW)~24dBm(250mW)、インターフェース USBインターフェース基板TR3-IF-U1C。
14)UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型):タカヤ株式会社製;UTR-UA1709-1。
15)UHF帯外付けアンテナ(円偏波型):Times-7社製;A5020。
16)355nmナノ秒パルスレーザー光源:Inngu laser社;Pulse 355-3A,355nm、3W、繰り返し周波数 30kHz、パルス幅 13ns。
17)ガルバノスキャナー:MASTER LASER社製;Model GH2D10C f‐θレンズ焦点距離 100mm、制御ソフトウェア BJJCZ社製 EzCAD。
18)デジタルフォースゲージ:株式会社イマダ製;センサー付け替え可能表示器eZT。
19)デジタルフォースゲージ用ロードセル:株式会社イマダ製;圧縮・引張両用ロードセル eDPU-2N、最大荷重 2N。
20)一軸自動ステージ:中央精機;自動ステージ ALZ-602-HG1M、送りネジリード:1mm、分解能:1μm、使用モータ:オリエンタルモーター株式会社製;PK544PMB-C1(5相ステッピングモーター)からPK224MD15B(2相ステッピングモーター)に置換。
21)2相ステッピングモータードライバー・コントローラー:大▲亜▼科技;CNCコントロールボードLXGRBL-NANO1.6。
[ソフトウェア]
22)UHF帯RFIDリーダ・ライタ用ソフトウェア:タカヤ株式会社製;UTRRWManager Version1.3.2。
23)UHF帯RFIDリーダ・ライタ用自作ソフトウェア:タカヤ株式会社UTR通信プロトコルver1.15とシリアルポート制御モジュールEasyCommとを用いて、Microsoft Excelから、RFIDリーダ・ライタの制御およびデータ取得を行った。
24)グラフ処理ソフト:WaveMetrics社;Igor Pro。
【実施例1】
【0065】
[RFIDタグ(形状A)101の作成と特性評価]
図1に示すRFIDタグ(形状A)101を、以下のように作成した。
UHF帯RFIDタグA(ICチップ20A)から、インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31及びICチップ20Aを備える略四辺形のインピーダンス整合部絶縁基材11(X軸方向長さL4:略14mm、Y軸方向幅W4:略6mm)を切り出し、絶縁基材10である略四辺形のPETフィルム(軸方向長さL:略64mm、Y軸方向幅W5:略6mm、厚さ略0.10mm)に貼り付けた。
【0066】
インピーダンス整合部絶縁基材11は、Z軸方向の正側に、略四辺形の孔状の開口21(X軸方向長さL3:略7.9mm、Y軸方向幅W3:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)を有した、アルミニウムからなる導体パターン31(X軸方向:略14mm、Y軸方向:略4.7mm)が備えられている。
【0067】
次に、インピーダンス整合部絶縁基材11の開口21を有する導体パターン31を覆っていた、UHF帯RFIDタグA(ICチップ20A)の絶縁層12を除去してアルミニウムからなる導体パターン31を露出させた後に、インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31及びICチップ20Aの上面に、膜厚を変えた別の絶縁層12を貼り付けた。絶縁層12としては、ポリウレタンフィルム(薄型フィルムドレッシングパーミロール及びパーミロールLite)またはシリコーン系エラストマーフィルムを用いた。さらに、絶縁層12の上面に、第1放射導体33及び第2放射導体34を貼り付けた。
【0068】
第1放射導体33は、略四辺形(X軸方向長さL1:略28mm、Y軸方向幅W1:略5mm、材質:銅テープB)で、第2放射導体34は、略四辺形(X軸方向長さL2:略28mm、Y軸方向幅W2:略5mm、材質:銅テープB)とした。しかし、第1放射導体33の形状と第2放射導体34の形状は、略四辺形には限定されない。また、互いに異なる寸法でもよい。
【0069】
平面(X-Y平面)視において、開口21を有する導体パターン31のX軸正方向端の導体部は、第1放射導体33のX軸負方向端と、幅L5(略3mm)で重なっている。平面(X-Y平面)視において、開口21を有する導体パターン31のX軸負方向端の導体部は、第2放射導体34のX軸正方向端と、幅L6(略3mm)で重なっている。第1放射導体33のX軸正方向端と第2放射導体34のX軸負方向端との距離を、アンテナ長Lとする。図1に関わる実施例でのアンテナ長Lは、略64mmであった。
【0070】
図2に示すRFIDタグ(形状B)102を、以下のように作成した。
UHF帯RFIDタグA(ICチップ20A)から、インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31及びICチップ20Aを備える略四辺形のインピーダンス整合部絶縁基材11(X軸方向長さL4:略14mm、Y軸方向幅W4:略6mm)を切り出し、絶縁基材10である略四辺形のPETフィルム(軸方向長さL:略64mm、Y軸方向幅W5:略6mm、厚さ略0.10mm)に貼り付けた。
【0071】
インピーダンス整合部絶縁基材11は、Z軸方向の正側に、略四辺形の孔状の開口21(X軸方向長さL3:略7.9mm、Y軸方向幅W3:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)を有した、アルミニウムからなる導体パターン31(X軸方向:略14mm、Y軸方向:略4.7mm)が備えられている。
【0072】
次に、インピーダンス整合部絶縁基材11の開口21を有する導体パターン31を覆っていた、UHF帯RFIDタグA(ICチップ20A)の絶縁層12を除去してアルミニウムからなる導体パターン31を露出させた後に、アルミホイル(厚さ略0.011mm)と両面テープ(厚さ略5μm)とからなる第3放射導体35を、第3放射導体35の開口とインピーダンス整合部32の開口部の位置が合うように、貼り付けた。
【0073】
略四辺形の孔状の開口(X軸方向長さL3:略7.9mm、Y軸方向幅W3:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)と、切り欠き(X軸方向長さ:6mm)とを有する略四辺形の第3放射導体35(X軸方向長さL:略64mm、Y軸方向幅W1:略5mm、材質:アルミ箔、厚さ11μm)は、両面テープ(厚さ略5μm)を貼り付けたアルミホイル(厚さ略0.011mm)を、355nmのレーザー光をf‐θレンズで集光し、ガルバノスキャナーで走査することで、レーザーカットによって作成した。第3放射導体35の形状は、略四辺形には限定されず、開口の左右の長さや幅は、異なる寸法でもよい。
【0074】
図3に示す測定装置70では、RFIDリーダ・ライタ71の出力を24dBm(250mW)とし、アンテナ72には直線偏波型または円偏波型のUHF帯外付けアンテナを用いた。空気中に配置された状態でのRFIDタグ73(101)の通信距離CLを測定するため、RFIDタグ73を、発泡スチロールプレート74に固定した。発泡スチロールは内部に空隙を多く含む低誘電率材料であり、通信距離CLに影響を与えない。通信距離CLは、アンテナ72の表面とRFIDタグ73のICチップとの間の距離として計測される。
【0075】
RFIDタグ101(形状A、ICチップ20A使用、および、形状B、ICチップ20A使用)において、絶縁層12の厚さD1と通信距離CLとの関係を求めたものが、前述の図4である。また、RFIDタグ101の放射導体の材質および厚さと通信距離CLとの関係を求めたものが、前述の図5である。通信距離CLの測定には、UHF帯RFIDリーダ・ライタ用のソフトウェアである「UTRRWManager Version1.3.2」を用いた。
【0076】
[比較例1:RFIDタグ(形状C)103の作成と特性評価]
インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31と第1放射導体33及び第2放射導体34との間に位置する絶縁層12の影響を調べるために、絶縁層12の無いRFIDタグ(形状C)103を作成し、RFIDタグ(形状A)101との特性の比較を行った。
【0077】
図6に示すRFIDタグ(形状C)103を、以下のように作成した。
UHF帯RFIDタグ101(ICチップ20A)と同様に、ICチップ20A及びインピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31からなる略四辺形のインピーダンス整合部絶縁基材11を備える絶縁基材10である略四辺形のPETフィルムを用意し、絶縁層12は無くして、第1放射導体33及び第2放射導体34を、絶縁基材10、インピーダンス整合部絶縁基材11及び導体パターン31に直接貼り付けた。第1放射導体33及び第2放射導体34と、インピーダンス整合部32との間に、銀ペースト40を塗布して、電気的な接続をとった。第1放射導体33のX軸正方向端と第2放射導体34のX軸負方向端との距離であるアンテナ長Lは、略64mmであった。なお、通信距離CLの測定には、UHF帯RFIDリーダ・ライタ用のソフトウェアである「UTRRWManager Version1.3.2」を用いた。
【0078】
RFIDタグ103の通信距離CLは、121mmであり、絶縁層12の有る図5の通信距離CLからの増加は、絶縁層12の厚さが60μm以下のとき、31%程度であった。本発明に係るUHF帯RFIDタグでは、ICチップが接続されたインピーダンス整合部の開口を形成する環状の導体パターンと、放射導体からなるダイポール型アンテナとを接続する、絶縁層の厚さを適切に規定することで、インピーダンス整合部の導体パターンと放射導体との間に電磁結合が形成され、RFIDタグとRFIDリーダ・ライタとの間の通信距離(CL)の低減を抑制できる。
【0079】
絶縁層12によって分離される、インピーダンス整合部32の開口21を有する導体パターン31と、第1放射導体33、第2放射導体34、もしくは第3放射導体35の間の距離の変化によって通信距離が変わる特性は、引張や圧縮ひずみにより伸縮が生じ得るような絶縁層12を用いて、その長さや厚さが変わることを利用した、ひずみセンサーに応用することができる。
【実施例2】
【0080】
[引張ひずみセンサー用のRFIDタグ104の作成と特性評価]
伸縮性を高めた、図に示す形状のRFIDタグ(ICチップ20A使用)104を作成した。RFIDタグ(形状104の、第1放射導体33ないし第2放射導体34のうち、少なくとも一つの放射導体は、放射導体切断部37を有しており、放射導体の上下方向から、ポリウレタンフィルム(厚さ:略8μm)からなる伸縮性フィルム13で覆うことで連結し保持した構造としている。図の放射導体切断部37は、355nmのレーザー光をf‐θレンズで集光し、ガルバノスキャナーで走査してレーザーカットで、L8(略4mm)、L9(略6mm)、L10(略4mm)及びL11(略6mm)の位置に、導体部の不連続構造(不連続部の幅:略47μm)を形成したジグザグ形状となっているが、放射導体切断部37の形成法、形状及び形成位置は、これに限定されない。
【0081】
形状のRFIDタグ104は、インピーダンス整合部絶縁基材11(X軸方向長さL4:略14mm、Y軸方向幅W4:略6mm)、アルミニウムからなる導体パターン31(X軸方向:略14mm、Y軸方向:略4.7mm)、略四辺形の孔状のアルミニウムパターンの開口21(X軸方向長さL3:略7.9mm、Y軸方向幅W3:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)、略四辺形の第1放射導体33(X軸方向長さL1:略36mm、Y軸方向幅W1:略5mm、材質:銅テープB)及び略四辺形の第2放射導体34(X軸方向長さL2:略36mm、Y軸方向幅W2:略5mm、材質:銅テープB)を備えており、絶縁層12、第1放射導体33及び第2放射導体34は、X軸の正及び負方向から、ポリウレタンフィルム(パーミロールLite、厚さ8μm)からなる伸縮性フィルム13で覆われた構造となっている。
【0082】
平面(X-Y平面)視において、開口21を有する導体パターン31のX軸正方向端の導体部は、第1放射導体33のX軸負方向端と、幅L5(略3mm)で重なっている。平面(X-Y平面)視において、開口21を有する導体パターン31のX軸負方向端の導体部は、第2放射導体34のX軸正方向端と、幅L6(略3mm)で重なっている。第1放射導体33のX軸正方向端と第2放射導体34のX軸負方向端との距離であるアンテナ長Lは、80mmとした。
【0083】
に示すような、コンピューターで制御した一軸自動ステージ76を用いて、RFID104(ICチップ20A使用)の引張りひずみセンサーとしての特性評価を行った結果が、図9(a)~(c)である。なお、各図のグラフ表示においては、グラフ処理ソフトによるスムージング処理を行っている。リーダRSSI、オンチップRSSI、およびセンサーコードSは、「タカヤ株式会社UTR通信プロトコルver1.15」とシリアルポート制御モジュール「EasyComm」とを用いた自作ソフトウェアによって、RFIDリーダ・ライタの制御およびMicrosoft Excelへのデータを取り込むことで、測定を行った。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明により、アンテナとインピーダンス整合部とからなる、柔軟で軽量なRFIDタグ自身が、無線給電型ひずみセンサーとして機能する、より簡便な構造のセンサータグを提供することができる。よって、人体への装着負荷が低い、ディスポーザブルな無線給型ひずみセンサータグを低コストで提供することができ、乳幼児や、介護現場及び病院等での健康管理や見守りにおいて、好適に利用できる。
【0085】
以上、実施形態を説明したが、本発明の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 絶縁基材
11 インピーダンス整合部絶縁基材
12 絶縁層
13 伸縮性フィルム
20 ICチップ
21 開口
30 給電部
31 (開口を有する)導体パターン
32 インピーダンス整合部
33 第1放射導体
34 第2放射導体
35 第3放射導体
37 放射導体切断部
40 銀ペースト
70 測定装置
71 リーダ・ライタ
72 リーダ・ライタアンテナ
73 RFIDタグ
74 発泡スチロールプレート
75 ステッピングモーター
76 一軸自動ステージ
77 移動ステージ
78 固定ステージ
101,102,104, RFIDタグ
103(比較例の)RFIDタグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9