(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】RFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグホルダー、および増幅アンテナ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20240909BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240909BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240909BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G06K19/07 170
G06K19/077 280
H01Q1/24 Z
H01Q1/38
(21)【出願番号】P 2022143255
(22)【出願日】2022-09-08
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2022118623
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】720008759
【氏名又は名称】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071807(JP,A)
【文献】特開2009-259186(JP,A)
【文献】特開2006-258684(JP,A)
【文献】特開2016-170070(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147762(WO,A1)
【文献】特表2005-521976(JP,A)
【文献】特表2010-507117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G06K 19/07
H01Q 1/24
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられ、環状の開口を有する導体パターンと、前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップとからなるインピーダンス整合部と、
前記インピーダンス整合部から第1端部まで第1方向に延伸する放射導体と、
前記インピーダンス整合部から第2端部まで第2方向に延伸する伝熱部とを有し、
金属表面に、前記伝熱部が平行に接触するよう配置され、
前記インピーダンス整合部および前記放射導体を、前記金属表面に対して角度θ1で配置するためのホルダーとを
備え、
前記インピーダンス整合部が、前記金属表面に対して、0度より大きく90度より小さい
前記角度θ1で配置されていることを
特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記インピーダンス整合部に対向した反射板
と、前記反射板を前記金属表面に対して角度θ2で配置するための反射板保持部とを備え、
前記反射板が、前記金属表面に対して、0度より大きく90度より小さい
前記角度θ2で配置されていることを
特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記インピーダンス整合部および前記放射導体の上に配置されたスペーサーと、
前記スペーサーを介して、前記インピーダンス整合部および前記放射導体とは反対側に配置された増幅アンテナとを備え、
前記スペーサーと前記増幅アンテナとから成る組を、1または複数有し、
前記増幅アンテナの一端が前記インピーダンス整合部に接合されており、
前記スペーサーと前記増幅アンテナとの少なくとも1組が、前記インピーダンス整合部および前記放射導体に対向して配置されていることを
特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記角度θ1が、30度以上80度以下であり、
前記角度θ2が、30度以上80度以下であることを、
特徴とする請求項2記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記スペーサーの厚さが、0.01mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項3記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記インピーダンス整合部および前記放射導体が、RFIDリーダ・ライタから発信された電波の、前記金属表面および前記反射板からの反射波を利用して通信を行うよう構成されていることを特徴とする請求項2または4記載のRFIDタグ。
【請求項7】
前記金属表面から前記インピーダンス整合部の前記ICチップへの熱伝導を促進するよう、前記伝熱部が前記金属表面と接しており、
前記ICチップの温度コードによって、温度変化および温度異常の検知を行うよう構成されていることを
特徴とする請求項1、2または3記載のRFIDタグ。
【請求項8】
前記インピーダンス整合部および前記放射導体と、前記金属表面との間に、前記ホルダーに充填された吸水材を備え、
前記吸水材の交換、前記吸水材の乾燥後の再利用、および、異なる体積の吸水材の使用が可能であることを
特徴とする請求項1、2または3記載のRFIDタグ。
【請求項9】
UHF入力で観測した請求項8記載のRFIDタグのインピーダンスに関わる値であるセンサーコードSの変化による、前記吸水材の水分変化の検出および漏水検知と、前記RFIDタグの前記ICチップの温度コードによる、温度変化および温度異常の検知とを、同時に行えるよう構成されていることを特徴とするパッシブ型RFIDタグセンサー。
【請求項10】
請求項1記載のRFIDタグ用のRFIDタグホルダーであって、
前記金属表面に対して、前記インピーダンス整合部を前記角度θ1で配置するためのRFIDタグ保持面と、
吸水材を備え、前記インピーダンス整合部および前記放射導体と前記金属表面との間に充填するための吸水材保持部とを、
備えることを特徴とするRFIDタグホルダー。
【請求項11】
請求項2記載のRFIDタグ用のRFIDタグホルダーであって、
前記金属表面に対して、前記インピーダンス整合部を前記角度θ1で配置するためのRFIDタグ保持面と、
吸水材を、前記インピーダンス整合部および前記放射導体と前記反射板と前記金属表面との間に充填するための吸水材保持部と、
前記反射板を、前記角度θ2で配置するための反射板保持部とを、
備えることを特徴とするRFIDタグホルダー。
【請求項12】
請求項3記載のRFIDタグ用のRFIDタグホルダーであって、
前記金属表面に対して、前記インピーダンス整合部を前記角度θ1で配置するためのRFIDタグ保持面と、
吸水材を、前記インピーダンス整合部および前記放射導体と前記金属表面との間に充填するための吸水材保持部とを、
備えることを特徴とするRFIDタグホルダー。
【請求項13】
請求項3記載のRFIDタグ用の増幅アンテナであって、
前記インピーダンス整合部および前記放射導体の上に、前記スペーサーを介して前記インピーダンス整合部および前記放射導体に対向して配置され、一端が前記インピーダンス整合部に接合していることを
特徴とする増幅アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグホルダー、および増幅アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁界や電波を用いて非接触でデータの読み書きを行い、それらのデータによって認証を行うRFID(Radio Frequency Identification)技術においては、複数のRFIDタグを離れた位置から一括で読み込むことができ、また、RFIDタグのICに書き込まれた識別情報から、受信したデータがどのRFIDタグからのものであるかを判別することができる。
【0003】
また、RFIDリーダ・ライタからの電波によって駆動するパッシブ型のRFIDタグによって、電池や外部電源を使用せずに検知結果を無線送信することができる。
【0004】
従来、このような特徴を有するRFIDタグを排水管の継ぎ目近傍に設置して、通信状態の変化に基づき排水管の水漏れを検知する、排水管保全ための漏水検出システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。RFIDタグを用いることで、ICに書き込まれた識別情報から、漏水箇所の特定が可能となる。
【0005】
上記のような、建物や設備の保全目的において、RFIDタグを設置する場合、建物や設備の金属構造物にRFIDタグを貼り付けた状態で使用すると、金属の影響を受けて、RFIDリーダ・ライタとの無線通信ができなくなるという問題がある。
【0006】
そこで、金属に貼付した場合の通信障害対策が施された、金属対応RFIDタグが、これまでに考案されている。例えば、(i)発泡体セパレータ等によって、RFIDタグと金属面との間に距離を作ることで読み取りを可能にするタイプ、(ii)タグと金属面との間に軟磁性材料からなる磁性シートを設置して、入射磁束の反射方向を変えて読み取りを可能にするタイプ(例えば、特許文献2参照)、および(iii)貼付している金属自体をブースターアンテナ化して、読み取りを可能にするタイプ(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4484066号公報
【文献】特許第3570512号公報
【文献】特開2006-277524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
建物や設備の保全においては、漏水の検知に加えて、異常温度の検知を同時に行える必要がある。また、建物や設備内の保全のために検査を必要とする箇所は、壁、床、および天井等で覆われた場所であることが多く、赤外線温度計等の露出した表面温度を計測する手法を用いることはできない。また、温度や漏水を検知するためのセンサーを設置する場所は、建物や設備内でアクセスが難しいところである場合が多く、電池や外部電源を必要としない、メンテナンスフリーなセンサーデバイスである必要がある。
【0009】
建物や設備の保全目的で使用するRFIDタグは、建物や設備の金属構造物に貼付した場合の通信障害対策が施された、金属対応RFIDタグである必要がある。従来の上記(i)~(iii)に記載のような金属対応RFIDタグにおいては、RFIDタグを貼付した金属表面からの電磁波の反射の影響を低減することで通信障害対策を行っていた。しかし、この手法では、金属表面からの反射波を有効利用できないため、RFIDタグとRFIDリーダ・ライタとの間の通信距離CLの改善に限界があるという課題があった。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、金属表面からの反射波を有効に使用することのできるRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグホルダー、および増幅アンテナを提供することを目的とする。また、建物や設備の保全において、壁、床、および天井等で覆われた場所の、温度および漏水の検知を同時に行える、電池や外部電源を必要としない、メンテナンスフリーなRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグホルダー、および増幅アンテナを提供することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
RFIDタグを金属体に貼付した場合に、通信距離CLが大幅に短くなり、通信不能になる現象は、金属体に入射した電磁波による渦電流の発生によって説明されている。この現象を、空気中から金属表面に入射した電磁波の位相の変化から見た場合、固定端反射となり、位相がπずれることで位相反転が起こり、入射波と反射波とは弱めあうことになる。金属対応タグで、発泡体セパレータ等によって、RFIDタグと金属表面との間に距離を作ることで読み取りを可能にする上記(i)のタイプは、金属表面の固定端反射面からRFIDタグを離すことにより、上記の問題の影響の低減を図っている。タグと金属面との間に軟磁性材料からなる磁性シートを設置する上記(ii)のタイプの場合には、入射磁束の反射方向を変えることで、固定端反射での電磁波の干渉の問題の解決を図っている。貼付している金属自体をブースターアンテナ化する上記(iii)のタイプの場合には、RFIDタグの片端の一部を金属体の端に貼付し、反対側のアンテナ及びインピーダンス整合部は金属表面外のフリースペース(空気中)に配置されるため、RFIDタグのほとんどの部分は、金属表面の固定端反射の影響を受けないことになる。しかし、RFIDタグの金属体への貼付箇所には制限が生じることになる。
【0012】
上記の金属対応タグでは、いずれの場合にも、金属表面からの電磁波の反射波の影響を避けることによって、問題の解決を図っている。しかし、これでは、電磁波の金属表面からの反射波のエネルギーを有効利用できていないという課題がある。
【0013】
本発明に係るRFIDタグでは、上記の金属対応タグにおける課題を解決するために、金属体表面からの反射波をも利用できるようなRFIDタグ構造とし、さらに、RFIDタグに対向する位置に、電磁波の反射板を配置することで、さらに電磁波のエネルギーの有効利用を可能とした構造であることを特徴とする。すなわち、本発明に係るRFIDタグは、絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられ、環状の開口を有する導体パターンと、前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップとからなるインピーダンス整合部と、前記インピーダンス整合部から第1端部まで第1方向に延伸する放射導体と、前記インピーダンス整合部から第2端部まで第2方向に延伸する伝熱部とを有し、金属表面に、前記伝熱部が平行に接触するよう配置され、前記インピーダンス整合部が、前記金属表面に対して、0度より大きく90度より小さい角度θ1で配置されていることを特徴とする。また、本発明に係るRFIDタグは、前記インピーダンス整合部に対向した反射板を備え、前記反射板が、前記金属表面に対して、0度より大きく90度より小さい角度θ2で配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係るRFIDタグは、建物や設備の保全目的で使用するために、通信距離の長い、UHF帯の周波数を使用することが好ましい。本発明に係るRFIDタグは、前記角度θ1が、30度以上80度以下であることが好ましい。あるいは、前記角度θ1が、30度以上80度以下であり、前記角度θ2が、30度以上80度以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係るRFIDタグは、前記インピーダンス整合部および前記放射導体が、RFIDリーダ・ライタから発信された電波の、前記金属表面からの反射波を利用して通信を行うよう構成されていることが好ましい。あるいは、前記インピーダンス整合部および前記放射導体が、RFIDリーダ・ライタから発信された電波の、前記金属表面および前記反射板からの反射波を利用して通信を行うよう構成されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係るRFIDタグは、前記インピーダンス整合部および前記放射導体の上に配置されたスペーサーと、前記スペーサーを介して、前記インピーダンス整合部および前記放射導体とは反対側に配置された増幅アンテナとを備え、前記スペーサーと前記増幅アンテナとから成る組を、1または複数有し、前記増幅アンテナの一端が前記インピーダンス整合部に接合されており、前記スペーサーと前記増幅アンテナとの少なくとも1組が、前記インピーダンス整合部および前記放射導体に対向して配置されていることが好ましい。この場合、前記スペーサーの厚さが、0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係るRFIDタグは、前記金属表面に保持するためのホルダーを備えていてもよい。このとき、前記インピーダンス整合部および前記放射導体と、前記金属表面との間に、前記ホルダーに充填された吸水材を備え、前記吸水材の交換、前記吸水材の乾燥後の再利用、および、異なる体積の吸水材の使用が可能であることが好ましい。この場合、温度センシングのための温度コードおよび、周囲の誘電率の違いによるインピーダンス変化に対応したセンサーコードSの計測が可能なICチップを採用していることが好ましい。これにより、RFIDタグのICチップが接続される導体パターンに連なる導体からなる伝熱部を金属体の表面に接触することで、金属体の測温を行い、ICチップを配したインピーダンス整合部と接触して配した吸水材の吸水および保水によって、センサーコードSが変化することを利用して、漏水の検知を行うことができる。
【0018】
本発明に係るRFIDタグは、ICチップ以外の電子デバイスを有しないために、電池や外部電源を必要としない、RFIDリーダ・ライタからの電波を受けたパッシブ型のセンサーであり、温度および漏水の検知を同時に行えることが好ましい。
【0019】
本発明に係るRFIDタグは、前記金属表面から前記インピーダンス整合部の前記ICチップへの熱伝導を促進するよう、前記伝熱部が前記金属表面と接しており、前記ICチップの温度コードによって、温度変化および温度異常の検知を行うよう構成されていることが好ましい。
【0020】
本発明に係るパッシブ型RFIDタグセンサーは、UHF入力で観測した、吸水材を有する本発明に係るRFIDタグのインピーダンスに関わる値であるセンサーコードSの変化による、前記吸水材の水分変化の検出および漏水検知と、前記RFIDタグの前記ICチップの温度コードによる、温度変化および温度異常の検知とを、同時に行えるよう構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るRFIDタグホルダーは、吸水材を有する本発明に係るRFIDタグ用のRFIDタグホルダーであって、前記金属表面に対して、前記インピーダンス整合部を前記角度θ1で配置するためのRFIDタグ保持面と、前記吸水材を、前記インピーダンス整合部および前記放射導体と前記金属表面との間に充填するための吸水材保持部とを、備えることを特徴とする。あるいは、本発明に係るRFIDタグホルダーは、吸水材を有する本発明に係るRFIDタグ用のRFIDタグホルダーであって、前記金属表面に対して、前記インピーダンス整合部を前記角度θ1で配置するためのRFIDタグ保持面と、前記吸水材を、前記インピーダンス整合部および前記放射導体と前記反射板と前記金属表面との間に充填するための吸水材保持部と、前記反射板を、前記角度θ2で配置するための反射板保持部とを、備えることを特徴とする。この場合、インピーダンス整合部、放射導体、伝熱部、反射板、および吸水材を3次元的な配置に保持することができる。
【0022】
本発明に係る増幅アンテナは、スペーサーを有する本発明に係るRFIDタグ用の増幅アンテナであって、前記インピーダンス整合部および前記放射導体の上に、前記スペーサーを介して前記インピーダンス整合部および前記放射導体に対向して配置され、一端が前記インピーダンス整合部に接合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、金属表面からの電磁波の反射波を有効に使うことのできるRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグホルダー、および増幅アンテナを提供することができる。これにより、金属体に貼付時の通信距離が向上し、温度および漏水の検知を同時に行える、建物や設備の保全を目的とした、RFIDタグセンサーを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る(a)RFIDタグ(形状A0)の平面図及び(b)断面図、(c)RFIDタグ(形状B0)の平面図及び(d)断面図、(e)RFIDタグ(形状C0)の平面図及び(f)断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に関し、RFIDタグの通信距離の測定方法を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグの、通信距離測定時における金属板への貼付位置を模式的に示す平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る(a)RFIDタグ(形状A)、(b)RFIDタグ(形状B)、(c)RFIDタグ(形状C)の、通信距離測定時における金属板へのブースター型貼付配置を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)の、アンテナ長と通信距離との関係を示す表である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状B)の、アンテナ長と通信距離との関係を示す表である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状C)の、アンテナ長と通信距離との関係を示す表である。
【
図8】本発明の実施の形態1に係る(a)RFIDタグ(形状A)、(b)RFIDタグ(形状B)、(c)RFIDタグ(形状C)の、通信距離測定時における、インピーダンス整合部、アンテナ部、伝熱部、および吸水材の金属板への配置状態を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A、B、およびC)の、インピーダンス整合部と金属板との間の角度θ1と、通信距離CLとの関係を示す表である。
【
図10】本発明の実施の形態1に係る(a)RFIDタグ(形状A)、(b)RFIDタグ(形状B)、(c)RFIDタグ(形状C)の平面図である。
【
図11】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)の、インピーダンス整合部と金属板との間の角度θ1と、通信距離CLとの関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状A)の、温度およびセンサーコードに及ぼす吸水量の影響の測定における、(a)インピーダンス整合部、アンテナ部、伝熱部、吸水材、およびホルダーの金属板への配置状態を示す斜視図、(b) (a)の吸水材の変形例を示す斜視図である。
【
図13】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状A、
図12(a)の配置、θ1=70°、吸水材:セルローススポンジ)における、吸水(2分毎に0.1mlの55℃温水をセルローススポンジに滴下)にともなう(a)温度および(b)センサーコードの時間変化を示すグラフである。
【
図14】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状A、
図12(b)の配置、θ1=70°、吸水材:セルローススポンジ)における、吸水(2分毎に0.1mlの55℃温水をセルローススポンジに滴下)にともなう(a)温度および(b)センサーコードの時間変化を示すグラフである。
【
図15】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状A、
図8(a)の配置、θ1=70°、吸水材:セルローススポンジ)における、吸水(2分毎に0.1mlの55℃温水をセルローススポンジに滴下)にともなう(a)温度および(b)センサーコードの時間変化を示すグラフである。
【
図16】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグの、インピーダンス整合部を金属板に対してθ1の角度で保持するためのRFIDタグホルダーの形状を示す斜視図である。
【
図17】本発明の実施の形態3に係るRFIDタグの、インピーダンス整合部を金属板に対してθ1の角度で保持し、反射板を金属板に対してθ2の角度で保持するためのRFIDタグホルダーの形状を示す斜視図である。
【
図18】本発明の実施の形態3に係るRFIDタグの、反射板の有無および角度による通信距離の変化を示す表である。
【
図19】本発明の実施の形態4に係るRFIDタグの、インピーダンス整合部を金属板に対してθ1の角度で保持するためのRFIDタグホルダーの形状を示す斜視図である。
【
図20】本発明の実施の形態4に係るRFIDタグの、RFIDリーダ・ライタアンテナと、金属板上にホルダーで配置したRFIDタグとの角度が(a)θ1、(b)(1/2)θ1、(c)0°(平行)のときの通信距離CLを示す平面図である。
【
図21】本発明の実施の形態4に係る増幅アンテナの(a)平面図および(b)断面図である。
【
図22】本発明の実施の形態4に係るRFIDタグの、増幅アンテナを1段装着した状態での(a)平面図および(b)断面図である。
【
図23】本発明の実施の形態4に係るRFIDタグ(θ1=70度)の、増幅アンテナ(スペーサー厚10mm)を1段装着した時の、増幅アンテナのアンテナ長と通信距離との関係を示すグラフである。
【
図24】本発明の実施の形態4に係るRFIDタグの、増幅アンテナ(アンテナ長112mm)を1もしくは2段装着した時の、スペーサーの厚さと通信距離との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向、ならびに、同一および等しいなどの用語には、実施形態の作用及び効果を損なわない程度のずれが許容される。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。
【0026】
本発明の実施の形態のRFIDタグならびに温度および漏水センサーは、UHF帯RFIDタグの構成要素である、インピーダンス整合部、ICチップ、放射導体からなるアンテナに加えて、ICチップに温度を伝熱によって伝えるための金属体に接触する略四辺形状の伝熱部、インピーダンス整合部と接触する位置に設置され、漏水した水を保持するための吸水材、およびインピーダンス整合部を、金属体表面に対して或る角度で設置し、吸水材を保持するためのホルダーからなる。
【0027】
RFIDリーダ・ライタとRFIDタグとの間の通信特性をさらに改善するためには、前記の構成要素に、RFIDリーダ・ライタからの電波をアンテナ側に反射するための反射板およびホルダーが加えられる。
【0028】
本発明の実施の形態のUHF帯RFIDタグは、金属体を多く含む建物や設備の保全目的で使用されるもので、金属体に貼付しても通信障害の起こらない金属対応RFIDタグであることが必要となる。RFIDリーダ・ライタから金属表面へ達する電波の反射を利用したRFIDタグの検討によって、3次元的な形状で金属表面へ貼付するRFIDタグによって、目的とする金属対応RFIDタグを実現できるという着想に至った。本発明は、このような着想をもとになされたものである。
【0029】
次に、上記のRFIDタグおよび温度および漏水センサーの各要素を詳述する。
【0030】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るUHF帯RFIDタグ(形状A0、B0、およびC0)の平面図及び断面図であり、本発明の実施の形態のRFIDタグの要素の一つとなる。本発明の実施の形態1に係るRFIDタグは、絶縁基材10、導体層12、インピーダンス整合部絶縁基材11と開口
21を有するインピーダンス整合部導体層13とICチップ20とから構成されるインピーダンス整合部30,放射導体31、および伝熱部32を備える。
【0031】
絶縁基材10と導体層12とからなる放射導体31は、アンテナとして機能し、絶縁基材10と導体層12とからなる伝熱部32は、金属表面と接触して設置され、伝熱によって金属体からICチップ20に温度を伝える役割を担う。伝熱部32と金属表面との接触は、伝熱部32を金属表面に固定するための粘着テープや粘着剤、および金属表面の塗装やコーティングなどの絶縁層を介したものであってもよい。
【0032】
絶縁基材10は板状又はフィルム状の部材で、その表面には導体層12が形成され、平面視で、インピーダンス整合部30の開口21、放射導体31、および伝熱部32の形状に加工されている。
【0033】
図1では、インピーダンス整合部30の開口21の形状は、X軸方向に平行な一対の長辺と、Y軸方向に平行な一対の短辺とを有する略四辺形である。しかし、開口21の形状は、図示の形態に限られず、例えば、X軸方向に平行な一対の短辺と、Y軸方向に平行な一対の長辺とを有する略四辺形でもよい。開口21の形状である略四辺形には、完全な四辺形が含まれてもよい。ここでの“略”とは、角又は辺が丸みを帯びていることを表す。四辺形には、長方形、ひし形、平行四辺形、正方形が含まれてもよい。開口21の形状は、四辺形以外の多角形、円形、楕円でもよい。
【0034】
図1では、放射導体31の形状は、平面視で、複数の折れ曲がりを有するメアンダライン型となっている。しかし、放射導体31の形状は、図示の形態に限られず、例えば、X軸方向を長手方向とする矩形状、短冊状の略矩形形状が、インピーダンス整合部30の開口21端でつながった形状でもよく、矩形以外の形状でもよい。また、メアンダライン型形状における屈曲の回数や、メアンダラインの幅、およびX軸方向とY軸方向の幅は限定されない。
【0035】
図1では、伝熱部32の形状は、平面視で、略四辺形の形状となっている。しかし、伝熱部32の形状は、図示の形態に限られず、四辺形以外の多角形、円形、楕円、および折れ曲がりのある構造でもよく、限定されない。また、伝熱部32の面積は、金属体からICチップ20への伝熱の効率に影響を与えるものの、限定されない。
【0036】
絶縁基材10の材質は、特に限定はされないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化樹脂共重合体、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアセタール等の樹脂基材や、紙基材等、紙フェノール基材、紙エポキシ基材、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材等の複合基材等が挙げられる。可撓性の観点からは、樹脂基材や紙基材等が好ましい。絶縁基材10の厚さは、その柔軟性、強度の観点から、4~1000μmが好ましく、8~150μmがより好ましい。
【0037】
導体層12、およびインピーダンス整合部30の開口21を有するインピーダンス整合部導体層13の材質は、特に限定はされないが、導電性を有する導体から形成される。例えば、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、クロム、亜鉛、鉛、タングステン、鉄等の金属であってもよい。導体層12およびインピーダンス整合部導体層13の材質は、酸化スズもしくはITO(酸化インジウムスズ)等の金属酸化物、金、銀もしくは銅等の金属ナノワイヤーを用いた導電膜、樹脂に金属粉や導電性カーボン材料を混合した導電性樹脂混合物、または導電性樹脂のフィルム等であってもよい。導体層12およびインピーダンス整合部導体層13の厚さは、柔軟性、強度の観点から、0.01~1000μmが好ましく、1~100μmがより好ましい。
【0038】
ICチップ20は、インピーダンス整合部30の開口21の近傍で、インピーダンス整合部導体層13に電気的に接続された半導体部品である。ICチップ20は、RFIDタグの外部に存在するリーダ・ライタ等の通信機器との間で、所定の情報を、放射導体31からなるアンテナパターンによって送受するように構成されている。ICチップ20は、放射導体31からなるアンテナパターンを介して、センサーにより検知された状態を表す情報を送信するように構成されている。
【0039】
ICチップ20は、インピーダンス整合部30の開口21を有するインピーダンス整合部導体層13と同層に配置されてもよいし、開口21を有するインピーダンス整合部導体層13とは異なる層に配置されてもよい。ICチップ20は、開口21を有するインピーダンス整合部導体層13に引き出し線を介して電気的に接続されてもよいし、開口21を有するインピーダンス整合部導体層13に設けられた電極に実装されてもよい。ICチップ20は、開口21を有するインピーダンス整合部導体層13に形成されたスリット又は切り欠きを跨ぐように配置されてもよい。
【0040】
図1では、導体層12とインピーダンス整合部導体層13とは、接触した配置で図示されているが、導体層12とインピーダンス整合部導体層13とは、同種の導体からなる連結した構造でもよく、異なる導体からなる構造でもよく、導電性ペーストで接続した構造でもよく、また、接着材、粘着剤、もしくは粘着テープ等を用いて固定した構造でもよい。
【0041】
インピーダンス整合部30は、ICチップ20と略四辺形の開口21を有する環状導体とからなるループ回路を形成しており、開口21の形状や大きさ等を調整して、複素インピーダンスの虚部(リアクタンス)を制御することで、放射導体31からなるアンテナ部とICチップとの間での信号の入出力におけるインピーダンス整合を担っている。
【0042】
インピーダンス整合部30のインピーダンスは、フリースペース(空気中、周囲環境の誘電率1)で最適値となるように設計されているが、インピーダンス整合部30が、高誘電率の物質に囲まれたり接触したりする場合には、最適なインピーダンス整合値が異なる値となる。或る種のICチップ(ICチップ20)は、オートチューニング機構を有しており、周囲環境の変化に合わせて、ICチップのインピーダンス整合値を最適化し、オートチューニング機構によって変化したインピーダンス値に関わるパラメータを、センサーコードSとしてRFIDリーダ側に送信する機能を有している。
【0043】
インピーダンス整合部30に接触する位置に、吸水材50を配置し、漏水が起こった時の水を保持することで、センサーコードSの変化として、漏水の有無を検知することができる。
【0044】
或る種のICチップ(ICチップ20)は、温度センサー機能を有し、温度コードとしてRFIDリーダ側に送信する機能を有している。UHF帯RFID技術では、壁、床、および天井等で覆われた場所の間であっても、RFIDタグとRFIDリーダ・ライタとの間で送受信による通信を行えることから、建物や設備の保全用途の、電池や外部電源を必要としない、メンテナンスフリーな金属対応RFIDタグセンサーが可能となる。
【0045】
建物や設備には、金属構造体が多く存在する。UHF帯の電波は、金属体の周囲を回りこんで進むことができるが、RFIDタグを金属体自体に貼付しなければならない場合には、金属表面での電波の干渉等の問題で、通信距離CLが大幅に短くなり、通信不能になる現象が問題となる。
【0046】
図2は、UHF帯RFIDタグの通信距離CLの測定方法を示す概念図である。測定装置70は、RFIDリーダ・ライタ71とRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72とを有する。通信距離CLは、アンテナ72の表面とRFIDタグ73のICチップとの間の距離として計測される。測定においてRFIDタグを固定するために、ベースプレート74が設けられている。フリースペース(空気中)での通信距離CLの測定においては、発泡スチロールプレートを用いた。金属体に貼付した場合の通信距離CLの測定においては、金属板を用いた。
【0047】
図3は、前記の金属体の通信距離CLへの影響を確認するために、形状A0のRFIDタグ101を金属板40(200×100×1mm)の中央に、平面状に貼付した状態を模式的に示す平面図である。形状A0のRFIDタグ101は、フリースペース(空気中)においての通信距離CLは564cmであったが(250mWリーダ・ライタおよび直線偏波アンテナを測定に使用)、
図3の配置で金属板40に貼付することで、通信距離CLはゼロとなった。
【0048】
図4には、形状A0、B0、およびC0のRFIDタグを、金属板40(200×100×1mm)の長手方向の端に貼付した状態を模式的に示した。RFIDタグの伝熱部32の部分が金属板40と接触するように貼付され、インピーダンス整合部30および放射導体31の部分は、金属板40の表面から外れて、空気中のフリースペースに配置されている。このような配置は、ブースター型に分類され、インピーダンス整合部30の周囲環境はフリースペースのままであるために、インピーダンス整合のための最適値の大きな変化はなく、また、RFIDタグのアンテナの片端が接続した金属体が、ブースターアンテナとして作用する場合があり、通信障害を回避することができることが知られている。
【0049】
図5、6、および7は、それぞれ、形状A、B、およびCのRFIDタグのアンテナ長と通信距離との関係を示す表である。アンテナ長は、RFIDタグの複数の折れ曲がりを有するメアンダラインアンテナ部を引き延ばして直線換算した長さとした。形状A0、B0、およびC0のRFIDタグのアンテナ部をカットすることで、アンテナ長の長さを変化させた。形状A0、B0、およびC0のRFIDタグは、それぞれ、異なるメアンダラインアンテナの幅およびアンテナの折れ曲がりの繰り返し回数を有しており、これらのアンテナ形状で、アンテナ長が異なるものを総称して、それぞれ、形状A、B、およびCのRFIDタグと呼ぶこととする。
【0050】
図5、6、および7において、いずれの場合にも、RFIDタグを、ブースター型で金属板40へ貼付することによって通信障害を回避できたが、それらの通信距離は、空気中での通信距離に比べて低下した。また、ブースター型での金属板40への貼付において、形状AのRFIDタグが最も長い通信距離を示したが、これは、アンテナ部端がより金属板40から遠ざかる形状であることに起因している。
【0051】
ブースター型のRFIDタグの配置においては、貼付する場所が金属体の端の部分に限定されることになり、建物や設備の保全目的での使用において、漏水を検知できる場所が限られるために好ましくない。また、インピーダンス整合部と接触する位置に、漏水した水を保持するための吸水材を設置したとしても、漏水の状況を敏感に捉えることが難しくなってしまう。
【0052】
図8に示すような、RFIDタグと吸水材50(乾燥したセルローススポンジ)とからなる3次元形状で、角度θ1をもって金属板40に設置すれば、漏水を検知できる場所は金属体の端に限定されなくなり、漏水の状態を、より敏感に反映した検知を可能にできる。この場合の温度は、金属板40の表面に接触して設置される伝熱部32からインピーダンス整合部30のICチップへの伝熱によって検知される。
【0053】
図8の配置において、角度θ1が、30および60度の場合の通信距離を、形状A、B、およびCのタグに対して、
図9に示した。この時用いたRFIDタグの平面図を、
図10に示した。形状AのRFIDタグ104、形状BのRFIDタグ105、および形状CのRFIDタグ106のメアンダライン型のアンテナ部の長さは、それぞれ、150、164、164
mmであった。いずれのRFIDタグにおいても、角度θ1が60度の場合に、ブースター型の金属板40への貼付の場合よりも長い通信距離であった。
【0054】
図11には、形状AのRFIDタグ104を、
図8(a)の配置で金属板40(200×100×1mm)の中央に設置した場合の、通信距離CLの角度θ1依存性を、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面にRFIDタグのインピーダンス整合部30が平行の場合、およびRFIDリーダ・ライタのアンテナ面に金属板40の表面が平行の場合に関して示した。RFIDリーダ・ライタのアンテナ面に、RFIDタグのインピーダンス整合部30が平行で、RFIDタグのインピーダンス整合部30を金属板40の表面に対して角度θ1で配置したとき、RFIDリーダ・ライタからの電波は、金属面に対して、(90-θ1)度の角度で入射することになり、金属板40の表面からRFIDタグに向かう反射波が生じる。RFIDタグは、RFIDリーダ・ライタのアンテナから直接に入射する電波に加えて、金属板40の表面からRFIDタグに向かう反射波を受けることになり、通信距離CLが向上する。
【0055】
図11に示されるように、金属板40の表面からRFIDタグへの反射波が生じる状態となる、RFIDタグのインピーダンス整合部30が平行の場合のほうが、金属板40の表面が平行の場合よりも、長い通信距離となった。また、RFIDタグのインピーダンス整合部30が平行の場合、角度θ1が70度において、もっとも長い通信距離CLとなった。これよりも角度θ1が大きい場合には、金属面への電波の入射角が浅くなりすぎて、金属板40の表面からRFIDタグに向かう反射波が減少するために、通信距離CLのさらなる増加は起こらなかった。角度θ1が30度以上90度以下の範囲で、通信距離CLは200cm以上となった。しかし、90度の角度では吸水材50をインピーダンス整合部30の下に配置しづらくなる。
【0056】
図11において、金属板40の表面が平行の場合には、金属表面からの反射波による通信距離CL増加の影響は少ない。角度θ1が30度より小さい範囲においては、金属板40の影響による通信距離の低下がみられる。角度θ1が80度より大きい範囲においては、RFIDタグのインピーダンス整合部30がRFIDリーダ・ライタのアンテナに対して垂直に近い配置となるために、RFIDタグがRFIDリーダ・ライタから直接受ける電波が減り、通信距離の低下が起こる。上記の結果より、金属表面に対するインピーダンス整合部30の角度θ1は、0度より大きくかつ90度より小さい範囲であることが好ましく、30度以上かつ80度以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0057】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係るUHF帯RFIDタグについて説明する。実施の形態2の説明において、実施の形態1と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0058】
本発明の実施の形態2での、RFIDタグ104(形状A)の温度およびセンサーコードSに及ぼす吸水量の影響の測定における、インピーダンス整合部30、放射導体31からなるアンテナ部、伝熱部32、吸水材50、およびRFIDタグホルダーA60の金属板40への配置状態を、
図12に示す。金属板40に対する、インピーダンス整合部30の角度θ1は、吸水材50およびRFIDタグホルダーA60によって保持される。RFIDタグホルダーA60は、接着剤、粘着剤、および粘着テープ等によって、金属板40の表面に保持される。
【0059】
吸水材50は、乾燥したセルローススポンジを略三角柱状の形状に切り出したもので、
図12(a)に示すように、金属板40の表面に対して角度θ1となる面に、インピーダンス整合部30を配置している。吸水材50の形状は限定されず、例えば、
図12(b)に示すような、角度θ1を有する略台形柱状の形状でもよい。
【0060】
図13に、
図12(a)の配置(θ1=70°、吸水材50:セルローススポンジ、体積 1.98cm
3)のRFIDタグ104(形状A)において、2分毎に0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下した場合の、温度およびセンサーコードSの時間変化を示す。
図13(a)に示すように、0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下するたびに、温度の上昇が起こり、その後、温度センサーとなるICチップ20を含むインピーダンス整合部30と、伝熱部32との間での熱伝導が起こり、伝熱部32と接触している金属板40の周囲温度(略25℃)に低下している。
【0061】
図13(b)のセンサーコードSは、0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下するたびに低下を示した。滴下直後に低下したセンサーコードSが、徐々に増加する挙動が起こっているが、これは、セルローススポンジに滴下した水が、滴下位置からセルローススポンジ全体に広がっていくことに起因している。47分前後で急激なセンサーコードSの低下が起こっているが、これはセルローススポンジの吸水量が限界に達したためで、セルローススポンジからの水滴の排出が観測された。
【0062】
センサーコードSの値は、或る種のICチップ(ICチップ20)のオートチューニング機構によって変化したインピーダンス値に関わるパラメータとなるため、RFIDタグの形状やサイズ、および周囲環境によって変化し、その絶対値によって吸水状態の判断をすることはできない。このため、あらかじめ乾燥状態のセンサーコードS、および吸水量に伴うセンサーコードSの変化、および吸水材50の吸水限界でのセンサーコードSを求めておき、それらの相対的な変化や検量線によって、吸水状態および漏水の検知を行う必要がある。
【0063】
図14に、
図12(b)の配置(θ1=70°、吸水材50:セルローススポンジ、体積 1.02cm
3)のRFIDタグ104(形状A)における、2分毎に0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下した場合の、温度およびセンサーコードの時間変化を示す。時間0分の乾燥状態のセンサーコードSは、
図13の
図12(a)の配置の場合と同様である。
図14(b)に示すように、センサーコードSがほぼ一定値となる吸水材の吸水限界が、27分前後で起こっている。吸水限界の起こる時間は、
図12(a)の配置の場合に比べて略1/2となっているが、これは吸水材であるセルローススポンジの体積の比である1.02/1.98にほぼ一致している。
【0064】
図15に、
図8(a)の配置(θ1=70°、吸水材50:セルローススポンジ、体積 1.38cm
3)のRFIDタグ104(形状A)に、2分毎に0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下した場合の、温度およびセンサーコードの時間変化を示す。
図12(a)の配置との違いは、RFIDタグホルダーA60が無く、セルローススポンジの吸水材50が両面テープで直接に金属体表面に取り付けられている点である。この場合には、
図15に示すように、吸水によるセルローススポンジの膨張・変形の影響で、温度やセンサーコードSの測定が不安定となり、また、25分前後で、両面テープで金属体表面に取り付けたセルローススポンジ50の脱離が起こって測定不能となった。
【0065】
RFIDタグ104と吸水材50とを用いた、吸水に伴うセンサーコードSの測定は、
図12の簡易な形状のRFIDタグホルダーA60によっても実験室的には可能であったが、建物や設備の保全で用いられる場合には、より安定にRFIDタグと吸水材とを保持するホルダーが必要となるため、
図16に示す3次元形状のRFIDタグホルダーB61を作成した。RFIDタグホルダーB61は、吸水材保持部64、放射導体31からなるRFIDタグ保持部66、および金属体表面に伝熱部32を接触して配置するための伝熱部保持部67を備えており、吸水材50の吸水による膨張・変形によっても脱離や、インピーダンス整合部30の角度θ1の変化が起こりづらい構造としている。RFIDタグは、RFIDタグ保持面65に、粘着テープや粘着剤などで固定してもよいが、RFIDタグ保持部66のような、スリット状の開口部を通して設置することでも、角度θ1でより安定に保持される。また、RFIDタグホルダーB61は、吸水材50を、金属板40に直接に接触して保持できるようにして、漏水による水の吸収が起こりやすい構造としている。伝熱部32と金属表面との接触は、伝熱部32を金属表面に固定するための粘着テープや粘着剤、および金属表面の塗装やコーティングなどの絶縁層を介したものであってもよい。
【0066】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係るUHF帯RFIDタグについて説明する。実施の形態3の説明において、実施の形態1及び2と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0067】
本発明の実施の形態3に係るUHF帯RFIDタグは、金属体に貼付する場合の通信障害の課題を解決するために、金属体表面からの反射波を利用したRFIDタグ構造を特徴としている。さらにRFIDリーダ・ライタからの電波のエネルギーを有効利用するために、
図17に示すような、反射板保持部68を有する、RFIDタグホルダーC62を作成した。
【0068】
反射板保持部68には、RFIDリーダ・ライタからの電波を、対向した位置に配置されるRFIDタグに反射するように、金属表面を有する反射板が設置される。反射板からRFIDタグへの電波の効果的な反射を考えるとき、金属表面に対する反射の角度θ2は、0度より大きくかつ90度より小さい範囲であることが好ましく、30度以上かつ80度以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0069】
図18に、本発明の実施の形態3に係るUHF帯RFIDタグにおける反射板の有無の影響、およびRFIDリーダ・ライタのアンテナ面への角度による通信距離の変化を示した。インピーダンス整合部30と金属板40との角度θ1が70度で、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面と金属板40とが平行(角度0度)の条件の時、反射板がない場合には、通信距離CLは116cmであったのに対して、反射板(アルミニウム箔/PET複合フィルム、20×70mm)を、反射板保持部68に、反射板と金属板40との角度が70度になるように設置することで、通信距離CLは略2倍の198cmとなった。
【0070】
前記と同様な、インピーダンス整合部30、反射板、金属板40、角度θ1、および角度θ2の配置において、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面と金属板40とが20度(RFIDタグのインピーダンス整合部30がRFIDリーダ・ライタのアンテナ面に垂直)および-20度(反射板がRFIDリーダ・ライタのアンテナ面に垂直)としたときの通信距離CLを、
図18に示した。金属板40をRFIDリーダ・ライタのアンテナ面と平行の位置(角度0度)から、20ないし-20度前後傾けることで、通信距離CLは400cm以上の値となり、反射板の顕著な効果が示された。
【0071】
反射板が無く、角度θ1が20度である場合(
図11)での通信距離CL(132cm)に比べて、反射板があることで、通信距離CLは400cm以上の値となり、通信距離CLを3倍以上大きくすることが可能であった。これによって、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面から、金属体の表面に広い角度範囲から入射する電波に対して良好な通信特性を保つことのできる、金属対応RFIDタグと、それを用いた温度および漏水の検知を同時に行える、電池や外部電源を必要としない、メンテナンスフリーな金属対応RFIDタグセンサーを実現した。
【0072】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4に係るUHF帯RFIDタグについて説明する。実施の形態4の説明において、実施の形態1、2、及び3と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0073】
図19に、本発明の実施の形態4に係るRFIDタグホルダーD63を示す。
図19に示すように、RFIDタグホルダー63は、インピーダンス整合部30を金属板40に対してθ1の角度で保持するためのRFIDタグ保持面65と、吸水材50を、インピーダンス整合部30および放射導体31と金属表面との間に充填するための吸水材保持部64とを、備えている。
【0074】
図20は、実施の形態4に係るRFIDタグ73の通信距離の測定における、RFIDリーダ・ライタアンテナ72と、金属板40上にRFIDタグホルダー63で配置したRFIDタグとの角度を示す平面図である。
図20(a)で示される通信距離CL(θ1)は、金属板40上にRFIDタグ73がRFIDタグホルダー63によってθ1の角度で保持され、RFIDタグ73がRFIDリーダ・ライタアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である。この時、RFIDリーダ・ライタアンテナ72に平行な面と金属板40との角度は、θ1になる。
【0075】
図20(b)で示される通信距離CL((1/2)θ1)は、金属板40上にRFIDタグ73がRFIDタグホルダー63によってθ1の角度で保持され、RFIDリーダ・ライタアンテナ72に平行な面と金属板40との角度が、(1/2)θ1である場合の通信距離である。この時、RFIDリーダ・ライタアンテナ72の面への法線に対して、RFIDタグ73及び金属板40は、ともに(1/2)(180-θ1)度の角度で配置されている。
【0076】
図20(c)で示される通信距離CL(0)は、金属板40上にRFIDタグ73がRFIDタグホルダー63によってθ1の角度で保持され、金属板40がRFIDリーダ・ライタアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である。
【0077】
図21は、実施の形態4に係る増幅アンテナ107の(a)平面図および(b)断面図である。
図21では、放射導体31からなる増幅アンテナ107は、平面視で複数の折れ曲がりを有するメアンダライン型の形状となっている。しかし、増幅アンテナ107の形状は、図示の形態に限られず、例えば、X軸方向を長手方向とする矩形状、短冊状の略矩形形状が片端でつながった形状でもよく、矩形以外の形状でもよく、限定されない。また、メアンダライン型形状における屈曲の回数や、メアンダラインの幅、およびX軸方向とY軸方向の幅は限定されない。
【0078】
ここで、増幅アンテナ107とは、RFIDタグの構造に加えることで、RFIDタグの通信距離を向上させるための構成要素である。増幅アンテナ107は、増幅アンテナ接合点22を、RFIDタグのインピーダンス整合部導体層13に接合することで使用される。この時、RFIDタグの放射導体31と、増幅アンテナ107とは、スペーサーを挟んだ対向した配置で保持される。RFIDタグの放射導体31からの信号と、増幅アンテナ107からの信号とが、インピーダンス整合部30のICチップ20に供給されることで、RFIDタグの通信距離を向上させることができる。
【0079】
増幅アンテナ107が、RFIDタグのインピーダンス整合部30の反対側に位置する放射導体31の端に接合された場合には、放射導体31のアンテナ長を変えるのと同等となるため、増幅アンテナ107の増幅アンテナ接合点22をRFIDタグのインピーダンス整合部導体層13に接合する場合とは、効果を異にする。
【0080】
図22は、本発明の実施の形態4に係るRFIDタグにおいて、増幅アンテナ107を1段装着した状態における、平面図および断面図である。
図22(b)の断面図に示されるように、増幅アンテナ107は、スペーサー51を介して、RFIDタグ73と対向して配置さる。このとき、増幅アンテナ107の、増幅アンテナ接合点22が、RFIDタグのインピーダンス整合部30のインピーダンス整合部導体層13に接合される。
【0081】
図22では、増幅アンテナ接合点22とインピーダンス整合部導体層13とは、接触した配置で図示されているが、増幅アンテナ接合点22とインピーダンス整合部導体層13とは、同種の導体からなる連結した構造でもよく、異なる導体からなる構造でもよく、導電性ペーストで接続した構造でもよく、接着材、粘着剤、もしくは粘着テープ等を用いて固定した構造でもよく、また、絶縁層を介して接着材、粘着剤、もしくは粘着テープ等を用いて固定した構造でもよい。
【0082】
図23は、実施の形態4に係るRFIDタグを、θ1=70度の角度で金属板40に保持し、スペーサー51として10mmの発泡スチロールを用い、増幅アンテナ107を1段装着した時の、増幅アンテナ107のアンテナ長と通信距離との関係を示すグラフである。増幅アンテナ107において、増幅アンテナ接合点22と反対側の端からカットしていくことで、増幅アンテナ107のアンテナ長を変化させた。増幅アンテナ107のアンテナ長は、複数の折れ曲がりを有するメアンダラインアンテナ部を引き延ばして直線換算した長さとした。
【0083】
増幅アンテナ107を1段装着した時の通信距離CL(θ1)およびCL((1/2)θ1)は、増幅アンテナ107を装着しない場合の通信距離(
図11)と比べて、2倍前後の通信距離の増加を示した。これは、RFIDタグの放射導体31からの信号に加えて、増幅アンテナ107からの信号が、インピーダンス整合部30のICチップ20に供給されることによる。
【0084】
図24は、実施の形態4に係るRFIDタグを、θ1=70度の角度で金属板40に保持し、増幅アンテナ107(アンテナ長112mm)を1もしくは2段装着した時の、スペーサー51の厚さと通信距離との関係を示す表である。発泡体からなるスペーサー厚が、1mm前後で通信距離は最大となっている。
【0085】
図24には、RFIDタグに装着する増幅アンテナ107とスペーサー51とからなる組を、1段から2段にした場合の通信距離への影響を示したが、RFIDタグの放射導体31からの信号に加えて、1段目の増幅アンテナ107からの信号と、2段目の増幅アンテナ107からの信号とを、インピーダンス整合部30のICチップ20に供給することにより、通信距離を増加させることができた。
【0086】
RFIDタグの放射導体31の第1端部と増幅アンテナ107の端とを電気的に短絡すると、上記の効果は失われた。
【0087】
[具体例]
次に、本発明の実施の形態の具体的な実施例及び、比較の形態の具体的な比較例について説明する。本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。なお、具体例で使用した材料および装置は、以下のとおりである。
【0088】
[材料]
(1)アルミ箔/PET複合フィルム:パナック製;AL-PET9-100、アルミ箔厚 9μm、PET膜厚100μm。
(2)ICチップ20:AXZON社製;Magnus-S3、サイズ 1.6BSC×1.6BSC、厚さ 0.35mm。
(3)UHF帯RFIDタグTDB:Avery Dennison Smartrac社;Temperature Sensor Dogbone、ICチップ:Axzon Magnus-S3、周波数帯:UHF 860-960MHz、ICチップ:ICチップ20(Magnus-S3)。
(4)接着剤:コニシ株式会社製;ボンド ウルトラ多用途SU。
(5)吸水材50:日本インソール工業製;セルローススポンジ(天然繊維素材100%)。
(6)3Dプリンター用フィラメント:XYZprinting社製;ABS 3Dプリンター用フィラメント ブラック。
(7)ラベルテープ:株式会社ミツキ;材質 ポリエチレンクロス、接着剤 アクリル糊。
(8)両面テープ:日東電工株式会社製;両面接着テープ、基材 発泡ブチルゴムシート、粘着剤 アクリル系。
(9)アルミニウムテープ:日東電工株式会社製;アルミテープ、軟質アルミ箔、厚さ略0.05mm、裏面粘着層あり。
(10)金属板40:泰豊; 鉄板 縦100mm横200mm 厚1mm。
(11)PPシート:ダイソー製;材質ポリプロピレン、厚さ1.2mm。
(12)銅テープ:3M製;導電性片面銅箔テープ Cu-35C、軟質圧延銅箔、厚さ略0.035mm、テープ幅略5mm、導電性粒子分散アクリル系粘着剤。
(13)3Mスコッチ はってはがせる両面テープ:スリーエム製;667-1-19D、厚さ略0.065mm。
(14)発泡スチロールボード:ダイソー製;発泡ポリスチレン、厚さ5mmおよび2mm。
(15)発泡ポリエチレンシート:ダイソー製;厚さ略1mm。
【0089】
[装置]
(16)UHF帯RFIDリーダ・ライタ:タカヤ株式会社製;UTR-S201,特定小電力無線局タイプ、送信周波数 916.8MHz~923.2MHz(18チャンネル)、送信出力 10dBm(10mW)~24dBm(250mW)、インターフェース USBインターフェース基板TR3-IF-U1C。
(17)UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型):タカヤ株式会社製;UTR-UA1709-1。
(18)355nmナノ秒パルスレーザー光源:Inngu laser社;Pulse 355-3A,355nm、3W、繰り返し周波数 30kHz、パルス幅 13ns。
(19)ガルバノスキャナー:MASTER LASER社製;Model GH2D10C f‐θレンズ焦点距離 100mm、制御ソフトウェア BJJCZ社製 EzCAD。
(20)3Dプリンター:XYZprinting社製;ダヴィンチ 1.0Pro3-in-1。
[ソフトウェア]
(21)UHF帯RFIDリーダ・ライタ用ソフトウェア:タカヤ株式会社製;UTRRWManager Version1.3.2およびICチップ20対応温度測定用デモソフトウェア
【実施例1】
【0090】
[RFIDタグの作成と測定方法]
図1に示すRFIDタグ(形状A0、B0、およびC0)を、以下のように作成した。略四辺形の孔状の開口(X軸方向長さ:略7.9mm、Y軸方向幅:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)と、切り欠き(X軸方向長さ:6mm)とを有する略四辺形の開口21、平面視で、複数の折れ曲がりを有するメアンダライン型の放射導体31、および略四辺形の伝熱部32を備えた、絶縁基材10上に形成された導体層12からなるパターンは、355nmのレーザー光をf‐θレンズで集光し、ガルバノスキャナーで走査することで、アルミ箔/PET複合フィルムのレーザーカットによって作成した。
【0091】
RFIDタグの形状A0、B0、およびC0ともに、
図1の平面図での伝熱部32のY軸方向の幅は、略20mmとした。複数の折れ曲がりを有するメアンダライン型の放射導体31の寸法は、形状A0およびB0の場合、折れ曲がった各導体の幅を略2mm、折れ曲がった各導体間の間隔を略2mmとした。形状C0の場合、折れ曲がった各導体の幅を略1mm、折れ曲がった各導体間の間隔を略1mmとした。メアンダライン型の放射導体31の上端と下端との間の距離は、形状A0の場合、略10mm、形状B0およびC0の場合、略20mmとした。伝熱部32の形状は、形状A0、B0、およびC0ともに、略四辺形(略20mm×20mm)とした。
【0092】
UHF帯RFIDタグTDB(ICチップ20)から、インピーダンス整合部30の開口21を有するインピーダンス整合部導体層13及びICチップ20を備える略四辺形のインピーダンス整合部絶縁基材11(X軸方向長さ:略14mm、Y軸方向幅:略6mm)を切り出し、レーザーカットによって作成したアルミ箔/PET複合フィルムパターンの開口とインピーダンス整合部30の開口21との位置をあわせて、接着剤で固定した。この時、レーザーカットによって作成したアルミ箔/PET複合フィルムパターンのアルミ箔側を、インピーダンス整合部30の側とした。UHF帯RFIDタグTDB(ICチップ20)から切り出したインピーダンス整合部30は、ICチップ20保護用に非常に薄い樹脂フィルムで覆われているが、この樹脂フィルムの有無(除去の有無)による通信距離の変化はほとんど起こらなかった。
【0093】
インピーダンス整合部30の裏面の粘着層を覆っている剥離紙を除去後、テープ(20×6mm)で、インピーダンス整合部30およびレーザーカットによって作成したアルミ箔/PET複合フィルムパターンの開口部裏側を覆った。
【0094】
図2に示す測定装置70での測定において、通信距離CLは、RFIDリーダ・ライタ71の出力が24dBm(250mW)の時の値とした。アンテナ72には直線偏波型のUHF帯外付けアンテナを用いた。空気中に配置された状態でのRFIDタグの通信距離CLを測定する場合には、RFIDタグ73を、プレート74に発泡スチロールプレート(220mm×90mm×5mm)を用いて固定した。発泡スチロールは内部に空隙を多く含む低誘電率材料であり、通信距離CLに影響を与えない。通信距離CLは、アンテナ72の表面とRFIDタグ73のICチップとの間の距離として計測される。
図2の測定装置で、RFIDタグの通信距離に及ぼす金属体の影響を調べる場合には、プレート74に金属板(200×100×1mm)を用いた。
【0095】
アンテナ72は直線偏波型のUHF帯外付けアンテナであり、直線偏波が床面に対して平行になるように、三脚上に設置した。測定においては、RFIDタグの長手方向(伝熱部32からインピーダンス整合部30へ伸びる方向)が、床面に対して平行になるように、偏波方向を合わせて保持した。UHF帯RFIDリーダ・ライタ用ソフトウェアでの通信が可能となるように、RFIDタグの位置や配向を微調整しながら測定を行い、通信が可能な最長距離を、通信距離CLとした。
【0096】
RFIDリーダ・ライタ71のUHF帯外付けアンテナとしては、円偏波型のものも、本発明の実施の形態のRFIDタグとの通信に用いることができる。円偏波型のアンテナを用いた場合には、直線偏波型のアンテナを用いた場合に比べて、通信距離は減少するが、RFIDタグに対して、より広い角度からの電波照射での通信が可能となる。
【実施例2】
【0097】
[RFIDタグの特性評価]
図4には、形状A0、B0、およびC0のRFIDタグを、金属板40(200×100×1mm)の長手方向端に貼付した状態を模式的に示した。RFIDタグの伝熱部32の部分が金属板40と接触するように貼付され、インピーダンス整合部30および放射導体31の部分は金属板40の表面から外して、空気中のフリースペースに配置した。このようなRFIDタグ配置は、ブースター型に分類される。
【0098】
図5、6、および7は、それぞれ、形状A、B、およびCのRFIDタグのアンテナ長と通信距離CLとの関係を示す表である。アンテナ長は、RFIDタグの複数の折れ曲がりを有するメアンダラインアンテナ部を引き延ばして直線換算した長さとした。形状A0、B0、およびC0のRFIDタグのアンテナ部をカットすることで、アンテナ長の長さを変化させた。形状A0、B0、およびC0のRFIDタグは、それぞれ、異なるメアンダラインアンテナの幅およびアンテナの折れ曲がりの繰り返し長さを有しており、これらのアンテナ長を変化させたものを総称して、それぞれ、形状A、B、およびCのRFIDタグと呼ぶこととする。
【0099】
図5、6、および7において、いずれの場合にも、金属板へブースター型で貼付することによって通信障害を回避できたが、それらの通信距離は、空気中での通信距離に比べて低下した。
【0100】
[比較例1:RFIDタグを金属板中央に貼付した場合の特性評価]
図3に示すように、形状A0のRFIDタグ101を金属板40(200×100×1mm)の中央に平面状に貼付した状態で測定を行ったところ、通信距離CLはゼロであった。
【実施例3】
【0101】
[3次元形状を有するRFIDタグの特性評価]
図8に示すような、RFIDタグと吸水材(乾燥したセルローススポンジ)50とからなる3次元形状で、角度θ1をもって金属板40に設置したRFIDタグの特性評価を行った。セルローススポンジは、幾分水を含んだ湿った状態で供給されるため、160℃のホットプレート上での乾燥、または電子レンジを用いた加熱による乾燥を行った。乾燥したセルローススポンジを、角度θ1の角を有する略直角三角柱状(三角柱状の高さ略1cm)にカットし、両面テープで金属板40に固定後、RFIDタグのインピーダンス整合部30を、金属板40に対して角度θ1になるように、セルローススポンジに合わせて、伝熱部32を、アルミニウムテープで金属板40に固定した。この時、RFIDタグを構成するアルミ箔/PET複合フィルムの、アルミ箔側が金属板40と接触するようにした。伝熱部32の金属体へ固定および接触は、PETフィルムおよび粘着層等の絶縁基材を介したものであってもよい。
【0102】
この3次元形状を有するRFIDタグにおいて、角度θ1が、30および60度の場合の通信距離を、形状A、B、およびCのタグに対して、
図9に示した。この時用いたRFIDタグの平面図を、
図10に示した。形状AのRFIDタグ104、形状BのRFIDタグ105、および形状CのRFIDタグ106のメアンダライン型のアンテナ部の長さは、それぞれ直線換算で、150、164、164cmであった。いずれのRFIDタグにおいても、角度θ1が60度の場合に、ブースター型金属板貼付の場合よりも長い通信距離CLとなった。
【0103】
前記の測定においては、RFIDタグのインピーダンス整合部30が、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面に対して平行としており、金属板40の表面とRFIDタグのインピーダンス整合部30とは、θ1の角度となっているので、RFIDリーダ・ライタのアンテナからの入射波は、金属面に対して、(90-θ1)度の角度で入射することになり、金属板40の表面からRFIDタグに向かう反射波が生じる。角度θ1が小さいほど、反射波がRFIDタグに照射される割合が少なくなる。
【0104】
図11には、形状AのRFIDタグ104を、
図8の配置で金属板40の中央に設置した場合の、通信距離CLの角度θ1依存性を、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面にRFIDタグのインピーダンス整合部30が平行の場合、およびRFIDリーダ・ライタのアンテナ面に金属板40の表面が平行の場合に関して示した。角度θ1が、30度以上90以下の範囲で、通信距離CLは200cm以上となり、70度付近では、500cm近い通信距離であった。
【実施例4】
【0105】
[RFIDタグの温度およびセンサーコードSに及ぼす吸水量の影響]
図12に、RFIDタグホルダーA60に、形状AのRFIDタグ104、吸水材50を配置した状態の斜視図を示した。金属板40の中央部への配置においては、RFIDタグホルダーA60を両面テープで金属板40に固定し、伝熱部32をアルミニウムテープで、金属板40に固定した。この時、RFIDタグを構成するアルミ箔/PET複合フィルムの、アルミニウム側が金属板40と接触するようにした。伝熱部32の金属体へ固定および接触は、PETフィルムおよび粘着層等の絶縁基材を介したものであってもよい。
【0106】
RFIDタグホルダーA60は、角度θ1が70度の略直角三角柱で、金属板40に固定する面の内面のサイズが10×10mmで、三角柱の高さ(Y軸方向の幅)が10mm、Z軸方向の長さ(金属面からの高さ)が27.5mmで、PPシートのカットおよび接着剤固定により作成した。吸水材50は、乾燥したセルローススポンジを、略直角三角柱状の形状(金属板40の側の面のサイズ:12×10mm、三角柱の高さ:10mm、Z軸方向の長さ:33mm)にカットしたもので、RFIDタグホルダーA60の内部に設置し、この吸水材50の露出面に接するように、形状AのRFIDタグ104を設置した。
【0107】
金属板40の上に、RFIDタグ104および吸水材50を設置したRFIDタグホルダーA60を、両面テープで固定後、金属板40の長手方向の辺が床面と平行で、金属面が床と垂直になるように、金属板40を三脚に固定した。この時、形状AのRFIDタグ104のインピーダンス整合部30が、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面と平行で、RFIDリーダ・ライタのアンテナ偏波方向(床面に対して平行)と、RFIDタグの長手方向とが一致するように調整を行った。また、RFIDタグの伝熱部32を、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面により近くなるように配置した。このような配置では、金属面からの反射波が、金属面に設置した伝熱部32の方向から、インピーダンス整合部30および放射導体31に入射する。
【0108】
図13に、
図12(a)の配置(θ1=70°、吸水材50:セルローススポンジ、体積 1.98cm
3)のRFIDタグ104(形状A)に、2分毎に0.1mlの55℃の温水を、ピペットでセルローススポンジに滴下した場合の、温度およびセンサーコードSの時間変化を示した。
図13(a)に示すように、0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下するたびに、温度の上昇が起こっている。滴下後の温度上昇のピーク温度が異なるのは、温水の滴下位置の違いによるもので、インピーダンス整合部30のICチップ20により近い位置に温水を滴下した場合ほど、温度上昇が大きくなった。ICチップ20から離れた位置に滴下した場合には、セルローススポンジの吸水によって、温水がICチップ20に達するまでの、ゆっくりとした温度上昇が起こった。
【0109】
図13(b)のセンサーコードSは、0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下するたびに低下を示した。センサーコードSの値は、或る種のICチップ(ICチップ20)のオートチューニング機構によって変化したインピーダンス値に関わるパラメータとなるため、RFIDタグの形状やサイズ、および周囲環境によって変化する。ICチップ20のセンサーコードSは、フリースペース(空気中)では、乾燥状態で250前後の値で、水による湿潤状態で数十まで低下するのが通常であるが、金属に貼付した状態では、ICチップ20のオートチューニング機構によるインピーダンス調整が顕著に起こるためか、400以上のかなり高い値となった。このため、あらかじめ乾燥状態のセンサーコードS、および吸水量に伴うセンサーコードSの変化、および吸水材50の吸水限界でのセンサーコードSを求めておき、それらの相対的な変化や検量線によって、吸水状態および漏水の検知を行う必要がある。
【0110】
図14に、
図12(b)の配置(θ1=70°、吸水材50:セルローススポンジ、体積 1.02cm
3)のRFIDタグ104(形状A)に、2分毎に0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下した場合の、温度およびセンサーコードの時間変化を示した。吸水材50であるセルローススポンジの体積の比に対応して、吸水材50の吸水限界となる時間は短くなった。想定する漏水状態に合わせて、吸水材50の体積を決めることが必要となる。
【0111】
[比較例2:RFIDタグホルダーが無い場合]
図15に、
図8(a)の配置(θ1=70°、吸水材50:セルローススポンジ、体積 1.02cm
3)のRFIDタグ104(形状A)に、2分毎に0.1mlの55℃の温水をセルローススポンジに滴下した場合の、温度およびセンサーコードSの時間変化を示した。吸水材50およびRFIDタグホルダーA60を用いずに、セルローススポンジを両面テープで直接に金属体表面に取り付けた設置状態であったため、25分前後で、両面テープで金属体表面に取り付けたセルローススポンジの脱離が起こって、測定不能となった。
【実施例5】
【0112】
[3D形状を有した吸水材およびRFIDタグホルダーの制作]
より安定にRFIDタグと吸水材50とを保持するために、
図16に示す3次元形状のRFIDタグホルダーB61を、3Dプリンターで作成した。この構造では、吸水材保持部64に保持される吸水材50が、金属体40と直接接触した構造であるために、より敏感な漏水の検知が可能となる。また、RFIDタグ保持面65およびRFIDタグ保持部66によって、吸水材50の吸水膨張によるアンテナ角度への影響を極力抑えることができた。RFIDタグホルダーB61は、両面テープ等の粘着剤によって、金属板40の表面に固定した。
【実施例6】
【0113】
[反射板を有したRFIDタグホルダーの制作と反射板の効果]
RFIDリーダ・ライタからの電波のエネルギーをさらに有効利用するために、
図17に示すような、反射板保持部68を備える、RFIDタグホルダーC62を3Dプリンターで作成した。反射板保持部68には、RFIDリーダ・ライタからの電波を、対向した位置に配置されるRFIDタグに反射するように、金属表面を有する反射板が設置される。反射板(アルミ箔/PET複合フィルム、20×70mm)を、反射板と金属板40との角度θ2が70度となるよう反射板保持部68に設置した。RFIDタグホルダーB62は、両面テープ等の粘着剤によって、金属板40の表面に固定した。
【0114】
図18に、RFIDタグ104(形状A)における反射板の有無の影響、およびRFIDリーダ・ライタのアンテナ面への角度による通信距離の変化を示した。反射板が無い場合の通信距離CL(132cm)に比べて、反射板があることで、通信距離CLを向上させることができた。また、反射板を備えることで、RFIDリーダ・ライタのアンテナ面から、金属体40の表面に広い角度範囲から入射する電波に対して、良好な通信特性得ることができた。
【実施例7】
【0115】
[3D形状を有したRFIDタグホルダーDの制作]
RFIDタグを金属板40上にθ1の角度で保持するために、
図19に示す3次元形状のRFIDタグホルダーD63を、3Dプリンターで作成した。RFIDタグを、金属表面に対して角度θ1になっているRFIDタグ保持面65に、両面テープで固定し、RFIDホルダー63の張り出し部分を、両面テープで金属板に固定した。このとき、伝熱部32は、アルミニウムテープ(40mm×40mm)で金属板40上に固定した。
【0116】
通信距離の測定における、RFIDタグホルダー63を用いて金属板40上に固定したRFIDタグ73と、RFIDリーダ・ライタアンテナ72の配置との角度を、平面図で
図20に示した。
図20(a)で示される通信距離CL(θ1)は、RFIDタグ73がRFIDリーダ・ライタアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である。
図20(b)で示される通信距離CL((1/2)θ1)は、RFIDリーダ・ライタアンテナ72に平行な面と金属板40との角度が、(1/2)θ1である場合の通信距離である。この時、RFIDリーダ・ライタアンテナ72の面への法線に対して、RFIDタグ73及び金属板40は、ともに(1/2)(180-θ1)度の角度で配置される。
図20(c)で示される通信距離CL(0)は、金属板40がRFIDリーダ・ライタアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である。前記のいずれの配置においても、通信が可能となる、RFIDリーダ・ライタアンテナ72の面とRFIDタグのICチップ20との間の距離を通信距離CLとした。
【実施例8】
【0117】
[増幅アンテナの作成とRFIDタグへの装着]
図21に示した増幅アンテナ107は、アルミ箔/PET複合フィルム上に、f‐θレンズで集光した355nmのレーザー光をガルバノスキャナーで走査することで、レーザーカットによって作成した。複数の折れ曲がりを有するメアンダライン型の放射導体31は、折れ曲がった各導体の幅を略2mm、折れ曲がった各導体間の間隔を略2mmとし、メアンダライン型の放射導体31の上端と下端との間の距離を略10mmとした。
【0118】
増幅アンテナ107をRFIDタグへの装着する場合の配置を、
図22の平面図および断面図に示した。RFIDタグをθ1=70度の角度で金属板40に保持し、スペーサー51を介して、RFIDタグ73と対向する位置に、増幅アンテナ107を両面テープで張り付けた。この時、RFIDタグ73のアルミ箔/PET複合フィルムからなる伝熱部32のアルミ箔側を金属板40に接触させて、アルミニウムテープ52で固定しており、平面図で、インピーダンス整合部30の部分のRFIDタグの表面は、PETフィルム(厚さ0.1mm)となる。アルミ箔/PET複合フィルムからなる増幅アンテナ107のアルミ箔をスペーサー51側とすることで、増幅アンテナ107の増幅アンテナ接合点22を、RFIDタグのインピーダンス整合部30に接合させ、接着剤およびラベルテープで固定した。
【0119】
図22には、増幅アンテナ107とスペーサー51とからなる組を1段、RFIDタグに装着した場合を示したが、
図22において、増幅アンテナ107の上に、スペーサー51をさらに設け、その上に、2段目の増幅アンテナ107を配置し、2段目の増幅アンテナ107の増幅アンテナ接合点22をRFIDタグのインピーダンス整合部30に接合させることで、2段の増幅アンテナ構造からなるRFIDタグを形成することができる。このように複数の増幅アンテナ107を設けることで、多段の増幅アンテナ構造からなるRFIDタグを形成することができる。
【実施例9】
【0120】
[増幅アンテナ有するRFIDタグの特性評価]
図23には、RFIDタグ101(形状A、アンテナ長154mm)を、RFIDタグホルダーDを用いて、θ1=70度の角度で、金属板40に保持し、増幅アンテナ107を1段装着した時の、増幅アンテナ107のアンテナ長と通信距離との関係を示すグラフを示した。スペーサー51には、厚さ10mmの発泡スチロールを用いた。増幅アンテナ107のアンテナ長は、RFIDタグの複数の折れ曲がりを有するメアンダラインアンテナ部を引き延ばして直線換算した長さとした。増幅アンテナ107を1段装着した時の通信距離CL(θ1)およびCL((1/2)θ1)は、増幅アンテナ107を装着しない場合の通信距離(
図11)と比べて、2倍前後の通信距離の増加を示した。
【0121】
図24にはRFIDタグ101(形状A、アンテナ長154mm)をθ1=70度の角度で金属板40に保持し、増幅アンテナ107(アンテナ長112mm)を1もしくは2段装着した時の、スペーサー51の厚さと通信距離との関係を示す表を示した。発泡体からなるスペーサー厚が、1mm前後で通信距離は最大を示した。RFIDタグと増幅アンテナ107とが、アルミ箔/PET複合フィルムのPETフィルム(厚さ0.1mm)を介して対向して配置された場合を、スペーサー厚0.1mmとして
図24に示した。
【0122】
図24に示されるように、RFIDタグに装着する増幅アンテナ107とスペーサー51とからなる組を、1段から2段に増やした場合に、通信距離が増加した。
【0123】
[比較例3:RFIDタグの放射導体と増幅アンテナとが電気的に短絡した場合]
RFIDタグ101(形状A、アンテナ長154mm)をθ1=70度の角度で金属板40に保持し、スペーサー51として厚さ2mmの発泡スチロールを用いて、増幅アンテナ107(アンテナ長112mm)を1段装着し、RFIDタグの放射導体31の第1端部と増幅アンテナ107の端とを、銅テープで電気的に短絡したところ、通信距離CL(θ1)およびCL((1/2)θ1)は、それぞれ434mmおよび460mmとなり、
図24に示されるスペーサー厚が2mmの場合に比べて減少した。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明により、温度および漏水の検知を同時に行える、金属体からの反射波を有効に利用した、電池や外部電源を必要としない、メンテナンスフリーな金属対応タグを提供することができ、建物や設備の保全において、好適に利用できる。
【0125】
以上、実施形態を説明したが、本発明の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0126】
10 絶縁基材
11 インピーダンス整合部絶縁基材
12 導体層
13 インピーダンス整合部導体層
20 ICチップ
21 開口
22 増幅アンテナ接合点
30 インピーダンス整合部
31 放射導体
32 伝熱部
40 金属板
50 吸水材
51 スペーサー
52 アルミニウムテープ
60 RFIDタグホルダーA
61 RFIDタグホルダーB
62 RFIDタグホルダーC
63 RFIDタグホルダーD
64 吸水材保持部
65 RFIDタグ保持面
66 RFIDタグ保持部
67 伝熱部保持部
68 反射板保持部
70 測定装置
71 リーダ・ライタ
72 リーダ・ライタアンテナ
73 RFIDタグ
74 ベースプレート
101, 102,103,104,105,106 RFIDタグ
107 増幅アンテナ