(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】台車用荷崩れ防止装置
(51)【国際特許分類】
B62B 3/04 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B62B3/04 D
(21)【出願番号】P 2023221616
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2024-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592237541
【氏名又は名称】桐生車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦彦
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-318618(JP,A)
【文献】特開2000-052993(JP,A)
【文献】特開2002-264816(JP,A)
【文献】特開2002-255039(JP,A)
【文献】特開平09-058934(JP,A)
【文献】特開2020-040727(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108032930(CN,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0472194(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の一端の両側に左右一対の第1、第2の柱部を立設し、
前記荷台の他端に被係止部を設け、前記第1、第2の柱部の上端に把持棒を構設し
、該把持棒よりも下方の前記第1、第2の柱部間を既存の横架部により連結した運搬用台車に
後付け可能な台車用荷崩れ防止装置であって、
前記既存の横架部における前記第1の柱部の近傍に設置され、引き出し可能な荷掛けベルトを巻回して内蔵するベルト絞付具と、
前記ベルト絞付具から繰り出された前記荷掛けベルトに対して、摺動自在に挿通した摺動環と、
該摺動環に直接又は間接的に連結し
、前記被係止部に係止する1つの係止フックとを備え、
前記荷掛けベルトの先端部は、
前記既存の横架部における前記第2の柱部の近傍に設けた前記荷掛けベルトの経由部を経由して固定される、又は
前記既存の横架部における前記第2の柱部の近傍に固定されることを特徴とする台車用荷崩れ防止装置。
【請求項2】
荷台の一端の両側に左右一対の第1、第2の柱部を立設し、前記荷台の他端に被係止部を設け、前記第1、第2の柱部の上端に把持棒を構設した運搬用台車に後付け可能な台車用荷崩れ防止装置であって、
前記把持棒よりも下方の前記第1、第2の柱部間を連結する横架部と、
該横架部の一方側に設置され、引き出し可能な荷掛けベルトを巻回して内蔵するベルト絞付具と、
前記ベルト絞付具から繰り出された前記荷掛けベルトに対して、摺動自在に挿通した摺動環と、
該摺動環に直接又は間接的に連結し、前記被係止部に係止する1つの係止フックとを備え、
前記荷掛けベルトの先端部は、前記横架部の他方側に設けた前記荷掛けベルトの経由部を経由して固定される、又は前記横架部の他方側に固定されることを特徴とする台車用荷崩れ防止装置。
【請求項3】
前記摺動環によって折り返した2列の前記荷掛けベルトと、前記該摺動環に直接又は間接的に連結した係止フックとにより積載した前記荷物を緊締
し、
前記係止フックは、積載した荷物を緊締する際は前記運搬用台車の他端の被係止部に係止し、荷物が空荷の際は前記把持棒に係止可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の台車用荷崩れ防止装置。
【請求項4】
前記係止フックは、前記摺動環に第2のベルトを介して間接的に連結していることを特徴とする請求項
3に記載の台車用荷崩れ防止装置。
【請求項5】
前記第2のベルトは長さ調節が可能であ
り、前記第1、第2の柱部間を連結した横架部及び前記把持棒間の長さよりも短いことを特徴とする請求項
4に記載の台車用荷崩れ防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬用台車において、荷物を荷掛けベルトにより緊締して固定するための台車用荷崩れ防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、台車に台車用荷崩れ防止具が取り付けられ、この荷崩れ防止具から荷掛けベルトを繰り出すことにより、荷物上に掛け渡して、荷物を締め付けて固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では荷物上に掛け渡す荷掛けベルトは1列のみであり、運搬中に荷物のバランスが崩れ易く、荷物がベルトの左右両側に荷崩れを起こす虞れが多分にある。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、荷物の上部に2列の荷掛けベルトを掛け渡し、荷崩れが生じ難くした台車用荷崩れ防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る台車用荷崩れ防止装置は、荷台の一端の両側に左右一対の第1、第2の柱部を立設し、前記荷台の他端に被係止部を設け、前記第1、第2の柱部の上端に把持棒を構設し、該把持棒よりも下方の前記第1、第2の柱部間を既存の横架部により連結した運搬用台車に後付け可能な台車用荷崩れ防止装置であって、前記既存の横架部における前記第1の柱部の近傍に設置され、引き出し可能な荷掛けベルトを巻回して内蔵するベルト絞付具と、
前記ベルト絞付具から繰り出された前記荷掛けベルトに対して、摺動自在に挿通した摺動環と、該摺動環に直接又は間接的に連結し、前記被係止部に係止する1つの係止フックとを備え、前記荷掛けベルトの先端部は、前記既存の横架部における前記第2の柱部の近傍に設けた前記荷掛けベルトの経由部を経由して固定される、又は前記既存の横架部における前記第2の柱部の近傍に固定されることを特徴とする。
また、上記目的を達成するための本発明に係る台車用荷崩れ防止装置は、荷台の一端の両側に左右一対の第1、第2の柱部を立設し、前記荷台の他端に被係止部を設け、前記第1、第2の柱部の上端に把持棒を構設した運搬用台車に後付け可能な台車用荷崩れ防止装置であって、前記把持棒よりも下方の前記第1、第2の柱部間を連結する横架部と、該横架部の一方側に設置され、引き出し可能な荷掛けベルトを巻回して内蔵するベルト絞付具と、前記ベルト絞付具から繰り出された前記荷掛けベルトに対して、摺動自在に挿通した摺動環と、該摺動環に直接又は間接的に連結し、前記被係止部に係止する1つの係止フックとを備え、前記荷掛けベルトの先端部は、前記横架部の他方側に設けた前記荷掛けベルトの経由部を経由して固定される、又は前記横架部の他方側に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る台車用荷崩れ防止装置によれば、2列の荷掛けベルトを荷物上に掛け渡して緊締することが可能であるので、運搬中に荷崩れが発生し難い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】台車が空荷の状態の実施例の台車用荷崩れ防止装置の斜視図である。
【
図2】荷物に荷掛けベルトを装着した状態を前方から見た斜視図である。
【
図4】第2のベルトを使用しない場合の後方から見た斜視図である。
【
図5】荷掛けベルトの先端を経由部を経て固定した場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は運搬用台車が空荷の状態の台車用荷崩れ防止装置の斜視図、
図2は荷物に荷掛けベルトを掛け渡した状態を前方から見た斜視図、
図3は後方から見た斜視図である。
【0010】
図1に示すように、運搬用台車Cは荷物を積載する荷台C1を有し、荷台C1の下面の四隅に設けられた4個の車輪C2により台車Cは移動自在とされている。更に、荷台C1の一端の例えば前方である両側には、左右一対の金属製の第1、第2の柱部C3、C3’が上下方向に立設されており、これらの第1、第2の柱部C3、C3’の上端間には、運搬用台車Cを操作するための把持棒C4が掛け渡されている。また、第1、第2の柱部C3、C3’の中間高さ位置には、第1、第2の柱部C3、C3’同士を連結する金属製の横架部C5が水平方向に設けられている。
【0011】
台車用荷崩れ防止装置は運搬用台車Cに取り付け可能な装置であって、第1の柱部C3の近傍に設置され、引き出し可能な荷掛けベルト1を巻回して内蔵するベルト絞付具2と、引き出された荷掛けベルト1に対して、摺動自在に挿通した摺動環3と、この摺動環3に直接又は第2のベルト4を介して間接的に連結し、運搬用台車Cの他端の被係止部に係止する係止フック5とから構成されている。
【0012】
ベルト絞付具2は荷掛けベルト1を繰り出して荷物を締め付けるためのものであり、市販品を採用することもでき、第1の柱部C3の近傍の横架部C5の一方側に固定されている。
【0013】
ベルト絞付具2の大きさは幅10cm、高さ15cm、奥行き3cm程度であり、内部には、例えば長さ2m、幅25mmのポリプロピレン製の平帯状のベルトから成る荷物固定用の荷掛けベルト1がロールに巻回されて、繰り出し自在に収納されている。
【0014】
荷掛けベルト1は例えば渦巻きばねにより巻回方向、つまり図示する矢印方向への付勢力により、内部に引き込まれている。また、荷掛けベルト1には図示しないロック機構を備えており、例えばボタン式のロック機構によって荷掛けベルト1の繰り出し及び巻き戻し状態をロックし、荷掛けベルト1の状態を維持することができる。なお、このボタン式のロック機構のロックを解除することで、再度荷掛けベルト1の繰り出し及び巻き戻しが可能となる。
【0015】
ベルト絞付具2から引き出された荷掛けベルト1の先端部6は、横架部C5の他方側である第2の柱部C3’の近傍に位置するベルト端固定部7に固定されている。
【0016】
なお、図示するようにベルト端固定部7を横架部C5に新設しているが、柱部C3と横架部C5とが連結する隙間をベルト端固定部7として先端部6を固着するようにしてもよい。荷掛けベルト1の横架部C5における両端部の位置は、荷物Pに掛け渡す2列の荷掛けベルト1同士の間隔を決定し、十分に離隔されている。
【0017】
また、繰り出された荷掛けベルト1には、摺動自在に例えば金属製の摺動環3が挿通されており、摺動環3に荷掛けベルト1と同材質の第2のベルト4が取り付けられ、この第2のベルト4の先端には例えば金属製の係止フック5が固定されている。
【0018】
図1の台車Cにおいては、空荷のために便宜上、係止フック5は把持棒C4に係止している。この状態で、荷掛けベルト1は渦巻きばねの付勢力により、強い張力で張り渡され、第2のベルト4を引き寄せて、係止フック5が把持棒C4から外れないように係止している。
【0019】
図2はダンボール箱等から成る複数個の荷物Pを運搬用台車Cの荷台C1上に積載し、荷物P上に荷掛けベルト1を2列に掛け渡した状態を前方から見た斜視図、
図3は後方から見た斜視図である。
【0020】
荷台C1上に荷物Pを積載してから、摺動環3を持って、ベルト絞付具2の導出口から渦巻きばねの付勢力に抗して荷掛けベルト1を引き出し、ベルト端固定部7との間に張られた荷掛けベルト1に対し摺動環3が中間位置となるように摺動して調整する。荷掛けベルト1はこの摺動環3により折り返されて2列とされ、摺動環3に固定された第2のベルト4を介して係止フック5を他端である後方の荷台C1の左右中央近傍の被係止部であるフレームC7等に係止する。これにより、係止フック5は後方において、荷掛けベルト1に対して第2のベルト4を介してY字状に連結することになる。この状態で前述のロック機構によって荷掛けベルトが伸縮しないようにロック状態にする。
【0021】
この場合に、第2のベルト4の長さを大きくし過ぎてロックすると、荷掛けベルト1の引出し長さが短くなり、荷物Pを2列の荷掛けベルト1により十分に押さえ付けることが、必ずしもできなくなるので、荷物Pの安定のためにも第2のベルト4は短い状態でロックすることが好ましい。
【0022】
しかし、市販のベルト絞付具2においては、荷掛けベルト1の長さは限定されているので、積載した荷物Pの大きさが過大となると、荷掛けベルト1の長さが足りなくなることもあり、その対策として、第2のベルト4を採用し、その長さをバックルなどにより伸縮自在に調整できるようにしてもよい。
【0023】
なお、係止フック5は第2のベルト4を介することなく、摺動環3に直接的に取り付けることもできる。このように、第2のベルト4を省略する場合には、
図4に示すように係止フック5は荷掛けベルト1をV字状に連結することになる。
【0024】
図2~
図4に示すように、ベルト絞付具2から引き出され、ロック状態とした荷掛けベルト1は、荷物Pを緊締した状態を維持すると供に、荷物Pは台車Cの前部と後部との間を往復する間隔を開けた2列の荷掛けベルト1により緊締されるので、荷崩れが発生し難い。なお、ベルト絞付具2は必ずしもロック機構を備える必要はなく、このような場合は、内部の渦巻きばねによる付勢力によって荷物Pに対して張力が与えられる状態となる。
【0025】
なお、既存の金属製の横架部C5に対して、後付けでベルト絞付具2、摺動環3、第2のベルト4、係止フック5を取り付けてもよいし、ベルト絞付具2、摺動環3、第2のベルト4、係止フック5を取り付けた横架部を用意し、既存の台車Cに取り付けてもよい。
【0026】
図5は荷掛けベルト1の先端部6は、第2の柱部C3’の近傍に位置するベルト端固定部7の位置に固定するのではなく、他の位置を採用することもできる。つまり、荷掛けベルト1は第2の柱部C3’の近傍の例えば横架部C5に設けた経由部8を経て方向変換するようにして、荷掛けベルト1の先端部6を例えばベルト絞付具2の近傍に固定しても、先の実施例のように荷物Pに対して2列の荷掛けベルト1により緊締することができる。
【0027】
また、上述の実施例においては、第1、第2の柱部C3、C3’間の横架部C5に対してベルト絞付具2、ベルト端固定部7を後付けで配置したが、予めベルト絞付具2、ベルト端固定部7を、または、ベルト絞付具2、ベルト端固定部7、経由部8を取り付けた横架部を用意し、この横架部を第1、第2の柱部C3、C3’間に固定するようにしてもよい。更にはそれぞれ第1、第2の柱部C3、C3’に直接に固定したり、第1、第2の柱部C3、C3’の近傍に設けた取付部材に固定してもよい。
【0028】
なお、本明細書においては、上下、左右、前後の字句は、図面の理解を容易にするために使用しており、本願発明がこれらの字句によって限定されるものではない。
【0029】
このように、発明に係る台車用荷崩れ防止装置によれば、2列の荷掛けベルト1を荷物P上に掛け渡して緊締することが可能であるので、運搬中に荷崩れが発生し難い。
【符号の説明】
【0030】
1 ベルト
2 ベルト絞付具
3 摺動環
4 第2のベルト
5 係止フック
6 先端部
7 ベルト端固定部
8 経由部
C 運搬用台車
C3 第1の柱部
C3’ 第2の柱部
C4 把持棒
C5 横架部
P 荷物
【要約】
【課題】2列の荷掛けベルトを荷物上に掛け渡して、荷崩れが発生し難くする。
【解決手段】荷台C1から立設された第1、第の柱部C3、C3’間を連結する横架部C5が設けられている。横架部C5の一方側にはベルト絞付具2が固定されている。ベルト絞付具2内には荷掛けベルト1が巻回されており、付勢力により荷掛けベルト1は引き込まれている。荷掛けベルト1の先端は横架部C5の他方側のベルト端固定部7に固定されている。荷掛けベルト1に荷掛けベルト1を2列に折り返すための摺動環が挿通されており、摺動環には係止フックが固定されている。
荷台C1上に荷物Pを積載してから、ベルト絞付具2の導出口から付勢力に抗して荷掛けベルト1を引き出し、荷物Pを2列の荷掛けベルト1により押さえ付け、台車Cの他端において係止フックを台車Cの被係止部に係止する。
【選択図】
図2