(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】難溶性薬剤の経口徐放性組成物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/20 20060101AFI20240909BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240909BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240909BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240909BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240909BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240909BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240909BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240909BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240909BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K9/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/14
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/26
(21)【出願番号】P 2023503122
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 CN2021095791
(87)【国際公開番号】W WO2022012172
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】202010691708.1
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518208624
【氏名又は名称】広州帝奇医薬技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】劉 鋒
(72)【発明者】
【氏名】譚 暁峰
(72)【発明者】
【氏名】梁 文偉
(72)【発明者】
【氏名】周 偉杰
(72)【発明者】
【氏名】黄 俊龍
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-133258(JP,A)
【文献】国際公開第94/006414(WO,A1)
【文献】特表平11-501948(JP,A)
【文献】特表2009-524582(JP,A)
【文献】中国特許第1204895(CN,C)
【文献】米国特許出願公開第2010/0015239(US,A1)
【文献】国際公開第2013/034173(WO,A1)
【文献】特表2007-526341(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101164532(CN,A)
【文献】特表2018-538289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難溶性薬剤の経口徐放性組成物であって、前記経口徐放性組成物は、徐放性・放出制御粒子とゲル骨格部
分の2つの部分からなり、
徐放性・放出制御粒子部分は、難溶性薬剤、腸溶性材料および液体強吸着担体を含み、
前記ゲル骨格部分は親水性ゲル骨格材料を含み、
前記徐放性・放出制御粒子は、難溶性薬剤と腸溶性材料含有液体物質とを薬剤懸濁液に調製した後に液体強吸着担体に噴出することによって得られ、
徐放性・放出制御粒子中の難溶性薬剤が徐放性・放出制御粒子重量の2%~15%を占め、
難溶性薬剤と腸溶性材料の重量割合が1:2~1:4であり、
液体強吸着担体が徐放性・放出制御粒子重量の35%~75%を占め、
徐放性・放出制御粒子が経口徐放性組成物重量の40%~70%を占め、
親水性ゲル骨格材料の使用量が経口徐放性組成物重量の20%~50%を占
め、
前記液体強吸着担体が、微結晶セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、架橋ポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、スターチ、プレゼラチン化スターチの中のいずれか1つである、
ことを特徴とする難溶性薬剤の経口徐放性組成物。
【請求項2】
前記難溶性薬剤が経口徐放性組成物の重量の10%未満を占める、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項3】
前記難溶性薬剤の粒子径d90が20μm未満に制御される、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項4】
前記腸溶性材料がpH値6~8の範囲で溶解可能な高分子材料であり、腸溶性材料で包まれた薬剤が結腸部位で完全に放出される、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項5】
前記腸溶性材料含有液体物質が腸溶性材料の水分散液形態または有機溶媒溶液形態であり、前記腸溶性材料の水分散液形態が腸溶性材料に水および/またはアルカリ性物質含有の水を加えて得られ、前記腸溶性材料の有機溶媒溶液が腸溶性材料を有機溶媒で溶解することによって得られる、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項6】
前記腸溶性材料が、メタクリル酸
・メチルメタクリレート共重合
体、メタクリル酸
・メチルアクリレート
・メチルメタクリレート共重合体の中のいずれか1つである、ことを特徴とする請求項4または5に記載の経口徐放性組成物。
【請求項7】
前記薬剤懸濁液の固形分が10~35%である、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項8】
前記徐放性・放出制御粒子に接着剤を添加することが可能であり、前記接着剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸、アラビアゴム、ペクチン、キサンタンガム、ヤロウガムの中のいずれか1つまたは複数であり、前記接着剤の使用量は徐放性・放出制御粒子の重量の0~5%である、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項9】
前記腸溶性材料含有液体物質には、使用前に、徐放性・放出制御粒子の重量の0~8%の接着防止剤、0~8%の可塑剤、0~3%の界面活性剤の中のいずれか1つまたは複数の組み合せを任意に添加し、前記接着防止剤が、微粉末シリカゲル、タルク、モノステアリン酸グリセロールから選択され、前記可塑剤が、モノステアリン酸グリセロール、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコールから選択され、前記界面活性剤が、脂肪酸ソルビタン、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウムから選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項10】
前記親水性ゲル骨格材料が、アラビアゴム、ヤロウガム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸塩、メチルセルロース、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニールアルコールの中のいずれか1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項11】
前記ゲル骨格部分に、充填剤、接着剤、潤滑剤および滑沢剤を任意に添加することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の経口徐放性組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の経口徐放性組成物の調製方法であって、
(1)難溶性薬剤を腸溶性材料含有液体溶液に分散させて懸濁液を得た後、得られた懸濁液を液体強吸着担体に噴出して造粒し、徐放性・放出制御粒子を形成するステップと、
(2)
(a)ステップ(1)で得られた徐放性・放出制御粒子
を親水ゲル骨格材料含有材料
の成分に添加して造粒するステップ、又は、(b)ゲル骨格部分を単独で造粒した後に調製された徐放性・放出制御粒子と混合し、プレスして錠剤を
得るステップと、を含む、ことを特徴とする調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に属し、具体的に、経口徐放性組成物、特に低用量難溶性薬剤の経口徐放性組成物およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製薬分野で、血中薬剤濃度の安定化、投薬回数の低減、患者の服薬コンプライアンスの向上、薬剤の安全性、有効性の向上、副作用の低減等を目的として、多くの薬剤が徐放性多段階制御型製剤として開発されている。高活性薬剤は、臨床の場では低用量で使用され、良好な治療効果を示したが、時には血中濃度の高低や変動による毒性副作用をもたらすこともある。そのため、低用量の高活性薬の大部分は、徐放性製剤や放出制御型製剤に開発する必要がある。現在、最も成熟した経口徐放化技術には、骨格徐放化、膜制御型徐放化、浸透圧ポンプ制御型徐放化などがある。これらの技術は、一部の難溶性薬剤の徐放性製剤の開発に対応することはまだ難しく、その主な問題はプロセスが複雑で、高コストであること、放出速度や放出度の制御が不十分であること、放出が不十分であること、などである。
【0003】
非特許文献1には、食物は口から盲腸まで約3~7時間かかり、胃のpH値は約1~5、十二指腸のpH値は5~7、結腸段階では10~24時間の通過となり、結腸の平均pH値は約6.8であると記載されている。結腸pH値は比較的高く、滞留時間が長いため、薬剤吸収に重要な窓を提供する。
【0004】
徐放と局所放出技術を組み合わせることで薬剤の継続的な放出を実現することができる。特許文献1では、マトリックス型徐放性錠剤Iと被覆局在徐放錠剤IIを組み合せて形成された難溶性薬剤徐放性製剤が開示され、この組み合せでは2つの錠剤を別々に調製し、カップセルに充填して結合させる必要があり、製剤産業化に高い複雑性がある。特許文献2では、制御放出型胃内滞留システムが提供され、異なる組み合せにより胃内滞留度を高めて徐放性効果を実現し、難溶性薬剤の徐放性開発により多くのソリューションを提供する。
【0005】
一般的な結腸局在技術には、腸溶性材料コーティング、腸溶性材料骨格が含まれ、溶媒蒸発法とホットメルト押圧を使用して腸溶性材料と薬剤をマイクロスフェアーまたは粒子を調製することは、通常の腸溶性材料骨格調製手法である。
【0006】
Fahima M.Hashemらは、非特許文献2において、Eudradit(R)S 100、エチルセルロースおよび薬剤をメタノール溶液に調製した後パラフィンに分散させ、乳化剤span(R) 80を使用して微細なマイクロスフェアーを形成し、溶出および乾燥させてプレドニゾロンマイクロスフェアー製剤を得、結腸投与用のプレドニゾロンを位置決めることができることが報告されている。
【0007】
Kiran Prakash Sawantらは、非特許文献3において、Eudragit(R) S100とEudragit(R) L100および一定量の離型変性剤Polyox(商標) WSR 303とEudragit(R) L100-55を組み合わせて、ホットメルト押圧(HME)技術によりコハク酸メトプロロールの徐放性剤形を製造することが開示されている。
【0008】
腸溶性材料と原薬を使用したり、またはさらに他の放出調整用の材料を加えて徐放性または局在放出を調製することは良好な処方プロセスであるが、溶媒蒸発法で骨格マイクロスフェアーを調製するプロセスが煩雑で、調製条件が厳しく、品質の制御性も悪く、ホットメルト押圧による造粒法は、ホットメルト押圧の専用装置を必要とし、このプロセスの生産効率が低く、大規模の工業化に適しない。
【0009】
特許文献3では、エトポシド含有の薬剤組成物が開示され、腸溶性材料を固体分散担体として使用し、有機溶媒を用いて主剤を担体に溶解および分散させて乾燥・粉砕し、この固体分散物と骨格型徐放(制御)材料を混合、造粒、打錠、腸溶コーティングして徐放性・放出制御製剤を得る。しかしながら、この特許に記載されている前記方法はエトポシドのような高溶解度の化合物に適し、難溶性薬剤の大部分が大量の有機溶媒で溶解する必要があり、その後の乾燥も調製時間が長すぎるという問題をもたらし、前記固体分散体の調製方法は工業化が困難であり、効率も悪い。
【0010】
低用量免疫調節剤アプレミラスト、レナリドミド、トファシチニブ、抗凝固剤アピキサバンなどの慢性疾患や腫瘍の患者の中には、長期間服薬し、1日に複数回服用する場合があり、徐放製剤は血中薬剤濃度の制御、副作用の軽減、服用回数の減少に有益であり、したがって、低用量の難溶性薬剤に適する経口徐放性・放出制御組成物およびその調製方法の開発が臨床的に強く求められている。
【0011】
本発明者らは、研究過程において、難溶性薬剤と徐放性物質とを物理的に混合したり、さらに造粒して再打錠すると、溶解が速すぎたり、最終溶解が不完全であるという問題が生じやすく、満足な徐放性製剤開発を得ることができないことを見いだし、本発明を完成するに至った。その後、本発明者らは、粒径の小さな難溶性化合物を用いた懸濁液に腸溶性材料を用いることで、原薬を効果的に分散させ、低pH溶液での溶解速度を制御するだけでなく、高pH溶液でも十分に溶解することができ、この特性は、難溶性薬剤の徐放性製剤や放出制御製剤の開発にうまく利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】中国特許第107405311号明細書
【文献】中国特許第103442698号明細書
【文献】中国特許第1204895号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】《Oral Controlled Release Formulation Design and Drug Delivery》、Hong Wen著
【文献】《In Vitro and In Vivo Evaluation of Combined Time and pH-Dependent Oral Colonic Targeted Prednisolone Microspheres》、Fahima M.Hashemら著
【文献】《Extended release delivery system of metoprolol succinate using hot-melt extrusion: effect of release modifier on methacrylic acid copolymer》、Kiran Prakash Sawantら著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的として、本発明は、低用量難溶性薬剤の経口徐放性組成物およびその調製方法を提供することであり、薬剤懸濁液を液体強吸着担体に噴出して腸溶性材料含有の徐放性・放出制御粒子を迅速に調製し、薬剤含有量の均一性を高め、調製プロセスの溶媒使用量が少なく、生産効率が高く、親水ゲル骨格材料と組み合せて、マルチ徐放性・放出制御効果を生じ、持続的な徐放性の効果を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
技術手段として、本発明が提供する経口徐放性組成物は、徐放性・放出制御粒子とゲル骨格部の2つの部分からなり、ゲル骨格部が徐放性・放出制御粒子を包んで二重徐放性・放出制御システムを形成し、徐放性・放出制御粒子は、難溶性薬剤、腸溶性材料、液体強吸着担体を含み、ゲル骨格部分は親水性ゲル骨格材料を含む。前記徐放性・放出制御粒子は、難溶性薬剤と腸溶性材料含有液体物質とを薬剤懸濁液に調製した後に液体強吸着担体に噴出することによって得られる。
【0016】
本発明の前記経口徐放性組成物中の難溶性薬剤が徐放性・放出制御粒子重量の2%~15%を占め、難溶性薬剤と腸溶性材料の重量割合が1:2~1:4であり、液体強吸着担体が徐放性・放出制御粒子重量の35%~75%を占め、徐放性・放出制御粒子が経口徐放性組成物重量の40%~70%を占め、親水性ゲル骨格材料の使用量が経口徐放性組成物重量の20%~50%を占める。
【0017】
本発明の前記難溶性薬剤が経口徐放性組成物の重量の10%未満を占める。
【0018】
本発明の前記低用量難溶性薬剤は、アプレミラスト、レナリドミド、トファシチニブ、アピキサバンを含む。
【0019】
前記難溶性薬剤粒子径d90が20μm未満、好ましくはd90が10μm未満、最も好ましくはd90が5μm未満になるように制御される。難溶性薬剤の粒子径が小さいほど、腸溶性材料によって包まれて徐放制御を形成しやすく、後の溶出も助長される。
【0020】
本発明の前記腸溶性材料とは、pH値6~8範囲内で溶解可能な一連の高分子材料を指し、腸溶性材料によって包まれた薬剤が結腸部位で完全に放出されることを保証することができる。前記腸溶性材料は、メタクリル酸・メチルメタクリレート共重合体(メタクリル酸とメチルメタクリレートのモル比範囲が1:0.5~1:2)、メタクリル酸・メチルアクリレート・メチルメタクリレート(1:1:1)共重合体の中のいずれか1つであり、一般的にはメタクリル酸・メチルメタクリレート(1:2)共重合体、メタクリル酸・メチルメタクリレート(1:1)共重合体、メタクリル酸・メチルアクリレート・メチルメタクリレート(1:1:1)共重合体、好ましくはメタクリル酸・メチルメタクリレート(1:1)共重合体、メタクリル酸・メチルアクリレート・メチルメタクリレート(1:1:1)共重合体などである。市販されている腸溶性材料製品において、メタクリル酸・メチルメタクリレート(1:2)共重合体がアクリル酸樹脂2号、オイドラギット(Eudragit)L100など、メタクリル酸・メチルメタクリレート(1:1)共重合体がアクリル酸樹脂3号、オイドラギットS100など、メタクリル酸・メチルアクリレート・メチルメタクリレート(1:1:1)共重合体がオイドラギットFS 30Dなどである。本発明の前記徐放性・放出制御粒子中の腸溶性材料が液体として添加される。腸溶性材料含有液体物質は水分散液形態または有機溶媒溶液形態である。腸溶性材料水分散液はそれ自体で調製することができ、市販品も存在し、ある実施例では、市販品として、オイドラギットFS 30Dなどが挙げられる。前記腸溶性材料の有機溶媒溶液は有機溶媒で腸溶性材料を溶解することにより得られる。
【0021】
腸溶性材料水分散液の調製過程中、腸溶性材料および水に加えて、アルカリ性物質を添加する必要がある。アルカリ性物質は、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。腸溶性材料有機溶媒溶液は、アセトン、エタノール、四塩化炭素、イソプロパノールで腸溶性材料を溶解することにより得られる。
【0022】
前記腸溶性材料の液体物質は使用する前に、接着防止剤、可塑剤、界面活性剤などを添加することができる。接着防止剤としては、微粉末シリカゲル、タルク、モノステアリン酸グリセロール(GMS)などが挙げられ、可塑剤としては、モノステアリン酸グリセロール(GMS)、クエン酸トリエチル(TEC)、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、界面活性剤としては、脂肪酸ソルビタン(span)、ポリソルベート(Tween)、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0023】
本発明中の難溶性薬剤は、攪拌、高速せん断ホモジナイズ、高速ボルテックス、超音波分散などの種々の方法により腸溶性材料含有液体物質に分散して薬剤懸濁液を得ることができるし、難溶性薬剤を事前に溶媒に混合して分散した後腸溶性材料含有液体物質に加え、均一に混合して薬剤懸濁液を得ることもできる。
【0024】
前記薬剤懸濁液中の固形分が10~35%であり、好ましくは15~25%である。
【0025】
本発明中の前記液体強吸着担体は、水に不溶であるが液体吸着量が大きい物質であり、薬剤懸濁液の急速噴出過程における余剰溶媒の適時吸着という要求に応えることができ、過湿による粒子の過剰成長、不均一な造粒という現象を抑制することができ、腸溶性材料液体の徐放性・放出制御粒子への造粒過程を迅速かつ円滑に実現することができる。
【0026】
前記液体強吸着担体としては、微結晶セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、架橋ポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、スターチ、プレゼラチン化スターチ、好ましくは微結晶セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0027】
本発明の前記徐放性・放出制御粒子中に徐放性・放出制御粒子重量0~5%の割合で接着剤を添加し、より造粒効果の高い徐放性・放出制御粒子を得ることができる。前記接着剤としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸、アラビアゴム、ペクチン、キサンタンガム、ヤロウガムの中のいずれか1つまたは複数が挙げられる。
【0028】
前記腸溶性材料含有液体物質は使用する前に、徐放性・放出制御粒子の重量に対して0~8%の接着防止剤、0~8%の可塑剤、0~3%の界面活性剤の中のいずれか1つまたは複数の組み合せを選択可能に添加することが可能であり、前記接着防止剤は、微粉末シリカゲル、タルク、モノステアリン酸グリセロールから選択され、前記可塑剤は、モノステアリン酸グリセロール、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコールから選択され、前記界面活性剤は、脂肪酸ソルビタン、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウムから選択される。
【0029】
本発明の前記徐放性・放出制御粒子はゲル骨格部分の成分に添加されて造粒されてもよいし、ゲル骨格部分を単独で造粒した後調製した徐放性・放出制御粒子と混合してもよいし、または徐放性・放出制御粒子をゲル骨格部分の成分と直接混合してもよい。
【0030】
本発明の前記経口徐放性組成物において、ゲル骨格部分は親水性ゲル骨格材料を含み、さらに充填剤、接着剤、滑沢剤、潤滑剤などの他の薬剤賦形剤を含んでもよい。
【0031】
前記親水性ゲル骨格材料としては、アラビアゴム、ヤロウガム、ポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、アルギン酸塩、メチルセルロース(MC)、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースおよびナトリウム塩、カルボマー、ポリビニールアルコール(PVA)などが挙げられる。
【0032】
本発明中の前記親水性ゲル材料は、迅速な水和を実現してゲル層を形成することができるため、早期に溶出速度を制御する目的を達成することができる。親水性ゲル骨格部分の種類や使用量を調整することにより、一定期間内に錠剤を侵食することができ、侵食の過程で徐放性・放出制御粒子部分が錠剤から離れ、独立した徐放性制御ユニットを形成することができる。
【0033】
本発明中の親水性ゲル骨格材料の使用量が製剤重量の20%~50%を占め、好ましくは20%~40%を占める。親水性ゲル骨格材料の使用量が約50%を超えると、その徐放性作用の変動幅が顕著に低下し、かえって材料コストが増大する。
【0034】
前記ゲル骨格部分に、充填剤、接着剤、潤滑剤や滑沢剤が選択的に添加されてもよい。
【0035】
本発明の前記ゲル骨格部分中の充填剤は、セルロース誘導体およびスターチ誘導体の中のいずれか1つまたは2つを含むが、これらに限定されなく、例えば乳糖、マンニトール、キシリトール、果糖、ショ糖、デキストリン、微結晶セルロース、プレゼラチン化スターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチなどが挙げられ、より好ましくは乳糖、マンニトール、デキストリン、微結晶セルロース、プレゼラチン化スターチ中の1つまたは複数である。本発明中の親水性ゲル骨格材料の使用量が製剤重量の0%~35%を占める。
【0036】
充填剤の主な機能は圧縮性、流動性、粒子成形性などの効果を向上させ、充填剤の使用量は目標製品の必要に応じて調整することにより一定の補助役割を果たす。
【0037】
前記接着剤としては、ポリビニルピロリドン、スターチスラリー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、カラギーナン、アルギン酸、アラビアゴム、ペクチン、キサンタンガム、ヤロウガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。接着剤の主な作用は、急速造粒と圧縮性改善である。本発明中の接着剤の使用量が経口徐放性組成物総重量の0%~10%を占める。
【0038】
前記潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、べヘンサングリセリル、水素添加植物油およびステアリルアルコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明中の潤滑剤の使用量が経口徐放性組成物総重量の0%~5%を占める。
【0039】
前記滑沢剤としては、タルク、微粉末シリカゲル、シリカ、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸およびその金属塩などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明中の滑沢剤の使用量が経口徐放性組成物総重量の0%~5%を占める。
【0040】
好ましい実施形態では、前記経口徐放性組成物は、徐放性・放出制御粒子とゲル骨格部の2つの部分からなり、徐放性・放出制御粒子部分は、アプレミラスト、腸溶性材料、液体強吸着担体を含み、ゲル骨格部分は親水性ゲル骨格材料を含み、前記腸溶性材料はオイドラギットS100、オイドラギットFS 30Dであり、前記液体強吸着担体は微結晶セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、架橋ポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含み、前記親水性ゲル骨格材料はアラビアゴム、ヤロウガム、ポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、アルギン酸塩、メチルセルロース(MC)、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース及ナトリウム塩、カルボマー、ポリビニールアルコール(PVA)を含み、アプレミラストと腸溶性材料重量比が1:2~1:4であり、前記徐放性・放出制御粒子は、難溶性薬剤と腸溶性材料を懸濁液に調製した後に液体強吸着担体に噴出することにより得られる。
【0041】
本発明が提供する経口徐放性組成物は、難溶性薬剤を腸溶性材料含有液体物質に分散させることで得られた懸濁液を液体強吸着担体に噴出して徐放性・放出制御粒子部分を形成してから、ゲル骨格部分材料と組み合せて加工し、混合粒子を得、プレスして錠剤を得るものである。
【0042】
本発明が提供する経口徐放性組成物中の徐放性・放出制御粒子は、高せん断造粒、流動床造粒、サイドスプレー造粒などの湿式造粒プロセスにより得ることができ、ゲル骨格部分は、粉末直接混合、湿式造粒プロセス、乾式造粒プロセスにより得ることができる。
【0043】
本発明が提供する経口徐放性組成物の調製過程では、調製した徐放性・放出制御粒子をゲル骨格部分の成分に添加して造粒してもよいし、ゲル骨格部分を単独で造粒した後調製した徐放性・放出制御粒子と混合してからその後の打錠プロセスを行う。
【0044】
本発明が提供する経口徐放性組成物中の徐放性粒子部分はゲル骨格部によって包まれてマルチ徐放性・放出制御システムを形成する。本発明中の徐放性・放出制御粒子は、即時放出、持続放出、局在制御放出の3種類の溶出放出効果を形成でき、原薬の腸溶性材料で包まれない部分が即時放出効果を示し、急速造粒乾燥過程で一部の孔を形成し、酸性媒体中で腸溶被覆物質骨格が持続放出効果を示し、完全包まれた原薬の一部が腸溶被覆局所放出効果を示し、徐放性・放出制御粒子中の即時放出部分は外層がゲル骨格部で包まれた後徐放性を効果的に形成でき、ゲル徐放性層は十二指腸、空腸、回腸などの高pH環境を効果的に抵抗し、腸溶性材料で完全に包まれた有効成分の一部が盲腸、結腸に到達し、放出が完全で、安定かつ有効な局在放出効果を達成することができる。
【0045】
本発明の前記徐放性・放出制御粒子の酸性媒体中での溶出速度は、腸溶性材料による原薬の包まれる度合いおよび薬剤放出の制御度合いによって評価・検出することができる。中国薬局方2015年版四大原則<0931>の第二法を参照すると、回転数75rpm、放出媒体として体積900mlの塩化ナトリウムの塩酸溶液(pH1.2)、温度37℃±0.5℃で徐放性・放出制御粒子の溶出速度を検出する。120分の溶出速度を酸溶出速度とする。
【0046】
本発明中の前記徐放性・放出制御粒子の酸溶解度の目標制御範囲が33%~80%であり、好ましくは、制御範囲が50%~80%である。
【0047】
本発明の経口徐放性組成物について、中国薬局方2020年版の四大原則<0941>の含量均一性検査法を参照にする。徐放性錠剤10錠を取り、表示量を100として各単回投与量の相対含有量xiを測定し、その平均値と標準偏差S、表示量と平均値の差の絶対値Aを求め、A+2.2Sを計算し、A+2.2Sが15未満のとき、含有量均一性が適格であるとみなすことができる。
【0048】
本発明の経口徐放性組成物は、2時間で30%以下、12時間で50~80%、20時間で80%以上の溶解度を有し、24時間連続的に放出することが可能である。
【0049】
本発明の経口徐放性組成物については、中国薬局方2020年版の四大原則<0931>の第二法を参照すると、回転数75rpm、温度37℃±0.5℃で溶出速度を検出する。並行試験用サンプルを6単位量採取し、放出媒体として体積750mlの塩化ナトリウムの塩酸溶液(pH1.2)を使用し、120分後サンプリングして溶出速度を検出し、上記酸液に温度37℃±0.5℃の0.3mol/Lリン酸ナトリウム溶液150mLを加え、10時間運転し続けた後、上記酸液中に温度37℃±0.5℃の0.5mol/Lリン酸ナトリウム溶液100mLを加え(必要に応じて2mol/Lの塩酸溶液または2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液でpH値を7.8に調整する)、または品種ごとに定められた時間に従い、所定のサンプリングポイントに溶出液を適量吸収し、濾過し、サンプリングから濾過まで30秒以内に完了させる。品種で規定された方法に従って測定し、各錠剤(粒)の緩和液への溶出量を算出する。
【発明の効果】
【0050】
本発明は以下の有益な効果を有する。従来技術と比較すると、本発明は、徐放性粒子がゲル骨格部で部分的に包まれて二重徐放性・放出制御システムを形成する技術を開示し、調製された低用量難溶性薬剤の経口徐放性組成物は以下の利点を有する。
(1)調製プロセスが簡単で、溶媒使用量が少なく、効率が高く、原薬と腸溶性材料が分散して懸濁液体物質を形成し、薬剤負荷量を増加させ、溶媒使用量を減らし、液体吸着量の大きい材料を担体として、急速噴出による造粒・乾燥を経って、徐放性・放出制御粒子を得る。
(2)原薬は懸濁液として噴霧形態で他の材料に加え、分散が均一で、混合均一性のリスクを低減し、薬剤の含有量の均一性を確保する。
(3)マルチ徐放性・放出制御システムにより、放出時間を延ばし、完全に溶出することができ、本発明中の徐放性・放出制御粒子は即時放出、持続放出、局在制御放出の3つの溶出放出効果を形成することができ、徐放性・放出制御粒子の段階的な放出とゲル骨格部の徐放性作用を合わせて放出時間を効果的に延長でき、腸道で完全に溶出する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0053】
(実施例1~4)
実施例1~4で用いた組成と用量比が以下の表1に示され、各バッチの材料合計量が500g(溶媒重量を除く)である。
【表1】
【0054】
実施例1~4の調製プロセスステップ:
1)オイドラギットS 100を適量エタノール(95%)に溶解し、アプレミラスト、タルクとクエン酸トリエチルを適量のエタノール(95%)に加え、ホモジナイザーで約10分間均質化した後、オイドラギットS 100溶液に注ぎ、造粒過程中攪拌器で懸濁液を連続的に攪拌する。
2)ステップ1)の懸濁液をWBF-2G流動床上噴霧造粒法により微結晶セルロースに噴霧し、過程中噴霧圧力を0.5~2.0bar(10分ごとに0.5bar、最大値まで増加する)、噴霧速度を5~15g/分(分ごとに5g/分、最大値まで増加する)、風量を90m3/時間、空気温度を45℃とし、噴霧した後、50~60℃で20分乾燥して、残留溶媒を除去し、乾燥粒子を得ることができる。
3)ステップ2)で得られた乾燥粒子を40メッシュの篩で乾式造粒し、徐放性・放出制御粒子を得る。
徐放性・放出制御粒子の酸溶出速度をサンプリング・検出し、各サンプルは約60mgのアプレミラストを含有する。
【0055】
(実施例5~8)
実施例5~8で用いた組成と使用量は以下の表2で示され、アプレミラストに用いた原薬粒子径分布d90が7.4μmであり、各バッチの材料合計量が500g(溶媒重量を除く)である。
【表2】
【0056】
実施例5~8調製プロセスステップ:
1)接着防止剤、可塑剤、界面活性剤、主剤を一定量の溶媒熱水(70℃~80℃)に加え、高せん断ホモジナイザーで10分間均質化して、懸濁液を得、持続的に攪拌して用意する。
2)ステップ1)の懸濁液をWBF-2G流動床上噴霧造粒法により微結晶セルロースに噴出し、過程中噴霧圧力を0.5~2.0bar(10分ごとに0.5bar、最大値まで増加する)、噴霧速度を5~15g/分(10分ごとに5g/分、最大値まで増加する)、風量90m3/時間、空気温度45℃に制御し、液体噴出した後、50~60℃で20分乾燥し、残留溶媒を除去して乾燥粒子を得る。
3)ステップ2)で得られた乾燥粒子を30メッシュの篩で乾式造粒して、徐放性・放出制御粒子を得る。
徐放性・放出制御粒子の酸溶出速度をサンプリング・検出し、各サンプルは約60mgのアプレミラストを含む。
【0057】
(実施例9)
実施例9で用いた組成と使用量は以下の表3に示され、アプレミラストで用いた原薬粒子径分布d90が15μmであり、各バッチの材料合計量が500g(溶媒重量を除く)である。
【表3】
【0058】
実施例9の調製プロセスステップ:
1)腸溶性材料オイドラギットL100をゆっくりと水に注ぎ、5~10分間攪拌する。腸溶性材料が完全に濡れた後、水酸化ナトリウム粉末または溶液をゆっくりと加えて攪拌し続け、最後に30分間攪拌し続ける。次に原薬、可塑剤と接着防止剤を加え、均一に攪拌し続けた後40メッシュの篩で濾過し、懸濁液を得、攪拌し続けて用意する。
2)ステップ1)の懸濁液をWBF-2G流動床上噴霧造粒法により微結晶セルロースに噴出し、過程中噴霧圧力を0.5~2.0bar(10分ごとに0.5bar、最大値まで増加する)、噴霧速度を5~15g/分(10分ごとに5g/分、最大値まで増加する)、風量90m3/時間、空気温度45℃に制御し、液体噴出した後、50~60℃で20分乾燥し、残留溶媒を除去して乾燥粒子を得る。
3)ステップ2)で得られた乾燥粒子を20メッシュの篩で乾式造粒して、徐放性・放出制御粒子を得る。
徐放性・放出制御粒子の酸溶出速度をサンプリング・検出し、各サンプルは約60mgのアプレミラストを含む。
【0059】
(実施例10~13)
実施例10~13で用いた組成と使用量は以下の表4に示され、各バッチの混合粒子の合計重量が400gである。
【表4】
【0060】
実施例10~13の調製プロセスステップ:
1)徐放性・放出制御粒子と親水性ゲル材料、潤滑剤を10分間混合して、混合粒子を得る。
2)混合粒子を打錠機に投入し、Φ11mmの円形金型を選択し、目標錠剤重量に合わせて打錠し、徐放性・放出制御錠剤を得る。
【0061】
実施例10~13の調製で得られた錠剤溶出状況が以下の表5に示され、溶出曲線が
図1に示される。
【表5】
【0062】
(実施例14~17)
実施例14~17で用いた組成と使用量は以下の表6に示され、各バッチの混合粒子の合計重量は400gである。
【表6】
【0063】
実施例14~17の調製プロセスステップ:
1)徐放性・放出制御粒子と親水性ゲル材料、潤滑剤を10分間混合して、混合粒子を得る。
2)混合粒子を打錠機に投入し、カップセル型金型を選択し、目標錠剤重量に合わせて打錠し、徐放性・放出制御錠剤を得る。
【0064】
実施例14~17の調製で得られた錠剤溶出状況が以下の表7に示され、溶出曲線が
図2に示される。
【表7】
【0065】
(実施例18)
実施例18で用いた組成と使用量は以下の表8に示され、アピキサバンの粒子径分布d90が4.3μmであり、混合粒子の合計重量が500gである。
【表8】
【0066】
実施例18の調製プロセスステップ:
1)接着防止剤、可塑剤、界面活性剤、主剤を一定量の溶媒熱水(70℃~80℃)に加え、高せん断ホモジナイザーで10分間均質化し、得られた懸濁液の固形分が約30%であり、持続的に攪拌して用意する。
2)ステップ1)の懸濁液をゆっくりと腸溶性材料オイドラギットFS 30Dに加える同時に、通常の攪拌機で中速で攪拌してから、懸濁液を40メッシュの篩で濾過して用意する。
3)接着剤、液体強吸着担体をEMG2-6高せん断造粒機に加え予備混合し、5分間均一に混合した後、ステップ2)で得られた懸濁液を1~3分内で造粒機中の材料に噴出し、2分間攪拌し続けて適切な濡れ性を持つ軟質材料を得る。
4)ステップ3)の軟質材料を旋回式造粒機により40メッシュで湿式造粒する。
5)ステップ4)で得られた材料を乾燥し、得られた乾燥粒子を15メッシュの篩で乾式造粒して、徐放性・放出制御粒子を得る。
6)高せん断造粒プロセスによりゲル骨格部分を作製する。親水性ゲル材料、充填剤を高せん断造粒機に加えて均一に混合した後、溶媒である純水を造粒機中の材料に噴出し、攪拌し続けて適切な濡れ性を持つ軟質材料を得る。
7)ステップ2)の軟質材料を回転式Comil粉砕機により8*8mm正方形の篩で湿式造粒する。
8)ステップ3)で得られた材料を乾燥し、得られた乾燥粒子を20メッシュの篩で乾式造粒して、ゲル骨格部粒子を得る。
9)徐放性・放出制御粒子、ゲル骨格部粒子、潤滑剤を混合筒に20分間混合して、混合粒子を得る。
10)混合粒子を高速回転式打錠機で打錠し、Φ10mmの円形金型を選択し、1錠に10mgのアピキサバンを含有するアピキサバン徐放性錠剤を得る。
【0067】
実施例18において、一定量の徐放性・放出制御粒子(約10mgのアピキサバン含有)の酸溶出速度は60%であり、調製した錠剤の溶出状況が以下の表11に示され、溶出曲線が
図3に示される。
【0068】
(実施例19)
実施例19で用いた組成と使用量は以下の表9に示され、レナリドミドの粒子径分布d90は7.5μmであり、混合粒子の合計重量は500gである。
【表9】
【0069】
実施例19の調製プロセスステップ:
1)徐放性・放出制御粒子部分の調製プロセスについては実施例1を参照する。
2)流動床造粒プロセスによりゲル骨格部分を作製する。親水性ゲル材料、充填剤を造粒流動床に加えて10分間混合した後、溶媒である純水を造粒機中の材料に噴出し、材料温度を約40℃、風量を1103m/時間に制御して造粒し、液体噴出した後30分間乾燥して乾燥粒子を得る。
3)ステップ2)で得られた乾燥粒子を20メッシュの篩で乾式造粒し、ゲル骨格部粒子を得る。
4)徐放性・放出制御粒子、ゲル骨格部粒子、潤滑剤を混合筒に20分間混合して、混合粒子を得る。
5)混合粒子を高速回転式打錠機で打錠し、Φ12mmの円形金型を選択し、目標錠剤重量に合わせて打錠して、レナリドミド徐放性素錠を得る。
6)胃溶性コーティング層材料を純水に分散させて10%固形分の懸濁液を得、素錠を高効率多孔質コーティング機に投入し懸濁液を噴霧してコーティングし、錠芯重量の3%増量でコーティングを行って、レナリドミド徐放性錠剤を得る。
【0070】
実施例19中の徐放性・放出制御粒子の酸溶出速度が68%であり、調製した錠剤の溶出状況が以下の表11に示され、溶出曲線が
図3に示される。
【0071】
(実施例20)
実施例20で用いた組成と使用量は以下の表10に示され、トファシチニブの粒子径分布d90は10μmであり、混合粒子の合計重量は500gである。
【表10】
【0072】
実施例20の調製プロセスステップ:
1)徐放性・放出制御粒子部分の調製プロセスについては実施例1を参照する。
2)高せん断造粒プロセスによりゲル骨格部分を作製する。徐放性・放出制御粒子、親水性ゲル材料、充填剤を高せん断造粒機に加えて均一に混合した後、溶媒である純水を造粒機中の材料に噴出し、造粒し、溶媒である純水を造粒機中の材料に噴出し、攪拌し続け、適切な濡れ性を持つ軟質材料を得る。
3)ステップ2)の軟質材料を回転式Comil粉砕機により8*8mmの正方形の篩で湿式造粒する。
4)ステップ3)で得られた材料を乾燥し、得られた乾燥粒子を20メッシュの篩で乾式造粒して造粒粒子を得る。
5)ステップ4)で得られた造粒粒子、潤滑剤を混合筒に20分間混合して、混合粒子を得る。
6)混合粒子を高速回転式打錠機で打錠し、Φ11mmの円形金型を選択し、目標錠剤重量に合わせてプレスしてトファシチニブ徐放性錠剤を得る。
【0073】
実施例20において、一定量の徐放性・放出制御粒子(約22mgのトファシチニブ含有)の酸溶出速度が66%であり、調製した錠剤の溶出状況が以下の表11に示され、溶出曲線が
図3に示される。
【表11】
【0074】
(比較例1)
本発明と従来技術の相違点を区別するために、本発明者らは中国特許第1204895号明細書で開示した固体分散体の調製プロセスを参照して、本発明の実施例1中の徐放性・放出制御粒子と類似の処方を用いて比較用サンプルを調製する。
(1)中国特許第1204895号明細書の方法を参照してアプレミラスト固体分散体を調製し、まずアプレミラスト10gとオイドラギットS100粉末20gを15L以上のエタノールに溶解する必要があり、本発明の実施例1の処方に従って計算し、10gアプレミラストサンプルの場合エタノールの使用量が1L未満であり、有機溶媒の使用量を大幅に削減することができる。
(2)中国特許第1204895号明細書の骨格型錠剤の固体分散体の調製方法が十分に開示されていないので、通常の乾燥方法により上記溶液A 200mLを入れたビーカーを60℃のオーブンで溶媒を48時間蒸発させた結果固形分が完全に乾燥されていなく、継続的に乾燥すると多くの時間がかかるが、本発明の実施例1では通常の流動床造粒機を用いて噴霧法で懸濁液を液体強吸着担体に急速に噴出して造粒操作を完了し、時間を60分以内に制御でき、乾燥効果が良好である。
【0075】
したがって、中国特許第1204895号明細書の開示方法と比較すると、本発明は有機溶媒の使用量を顕著に削減でき、乾燥時間を短縮でき、省エネで環境に優しく、効率が高い。
【0076】
(比較例2)
比較例2は、本発明の実施例5中の徐放性・放出制御粒子と類似の処方を参照してサンプルを調製し、その相違点は液体強吸着担体である微結晶セルロースを液体吸着性の悪い乳糖に変更し、得られた徐放性・放出制御粒子を実施例14の処方プロセスに従って錠剤を得る。
【0077】
試験過程中、徐放性・放出制御粒子の造粒過程の粒子径が異なり、層状化現象が起こりやすいことが判明した。サンプルを検出したところ、比較例2の徐放性・放出制御粒子の酸溶出速度は91%であり、制御目標の上限の80%を超え、錠剤の含有量均一性A+2.2Sが16.2であり、合格限界15を超え、錠剤溶出も明らかに速すぎ、具体的な状況は以下の表12に示される。
【表12】
【0078】
(比較例3~4)
比較例3および比較例4は、本発明の実施例6中の徐放性・放出制御粒子処方と実施例15の処方を参照して錠剤を調製し、比較例3の徐放性・放出制御粒子処方は単独で造粒することではなく粉末混合により混合した後ヒドロキシプロピルメチルセルロースK15M PH DC、乳糖、ステアリン酸マグネシウムと混合した後打錠して比較例3の錠剤を得、比較例4の徐放性・放出制御粒子処方では、造粒するとき、原薬をまずポビドンK30、カルボキシメチルスターチナトリウムと混合し、腸溶性材料、接着防止剤、可塑剤、界面活性剤を単独で懸濁液に調製し、その後の噴霧・造粒、打錠プロセスは実施例15を参照して比較例4の錠剤を得る。
【0079】
サンプルを検出したところ、比較例3および比較例4の錠剤の含有量均一性A+2.2Sがそれぞれ17.2、18.3であり、合格限界15を超え、比較例3の錠剤の溶出も明らかに速すぎ、比較例4の溶出が完全ではなく、溶出速度の具体的な状況は以下の表13に示される。
【表13】
【0080】
比較例3および比較例4と比較すると、本発明の実施例15を採用すると錠剤の含有量均一性が合格範囲内にあり、錠剤がゆっくりと溶出し、最終的に完全に溶出する(20時間で80%以上溶出)。
【0081】
以上、本発明で開示した低用量難溶性薬剤徐放性経口組成物は、高pH感受性腸溶性材料を用いて原薬を懸濁液に調製し、噴出法により即時放出、持続放出、制御放出型の総合的な徐放性・放出制御粒子を調製してから、親水性ゲル材料を介してさらなる徐放性を形成し、薬剤のマルチ徐放性・放出制御を達成する同時に、腸溶性材料の分散と制御放出型作用を利用して、難溶性薬剤の完全な溶出を確保し、難溶性薬剤の不完全な溶出現象を回避することができる。本発明で調製したサンプルの含有量均一性が良好であり、溶出および放出時間が長く、プロセスが簡単で実用が高い。
【0082】
[付記]
[付記1]
難溶性薬剤の経口徐放性組成物であって、前記経口徐放性組成物は、徐放性・放出制御粒子とゲル骨格部の2つの部分からなり、徐放性・放出制御粒子部分は、難溶性薬剤、腸溶性材料および液体強吸着担体を含み、前記ゲル骨格部分は親水性ゲル骨格材料を含み、前記徐放性・放出制御粒子は、難溶性薬剤と腸溶性材料含有液体物質とを薬剤懸濁液に調製した後に液体強吸着担体に噴出することによって得られ、徐放性・放出制御粒子中の難溶性薬剤が徐放性・放出制御粒子重量の2%~15%を占め、難溶性薬剤と腸溶性材料の重量割合が1:2~1:4であり、液体強吸着担体が徐放性・放出制御粒子重量の35%~75%を占め、徐放性・放出制御粒子が経口徐放性組成物重量の40%~70%を占め、親水性ゲル骨格材料の使用量が経口徐放性組成物重量の20%~50%を占める、ことを特徴とする難溶性薬剤の経口徐放性組成物。
【0083】
[付記2]
前記難溶性薬剤が経口徐放性組成物の重量の10%未満を占める、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0084】
[付記3]
前記難溶性薬剤の粒子径d90が20μm未満に制御される、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0085】
[付記4]
前記腸溶性材料がpH値6~8の範囲で溶解可能な高分子材料であり、腸溶性材料で包まれた薬剤が結腸部位で完全に放出される、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0086】
[付記5]
前記腸溶性材料含有液体物質が腸溶性材料の水分散液形態または有機溶媒溶液形態であり、前記腸溶性材料の水分散液形態が腸溶性材料に水および/またはアルカリ性物質含有の水を加えて得られ、前記腸溶性材料の有機溶媒溶液が腸溶性材料を有機溶媒で溶解することによって得られる、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0087】
[付記6]
前記腸溶性材料が、メタクリル酸とメチルメタクリレート共重合体の混合物、メタクリル酸とメチルアクリレートとメチルメタクリレート共重合体の中のいずれか1つである、ことを特徴とする付記4または5に記載の経口徐放性組成物。
【0088】
[付記7]
前記薬剤懸濁液の固形分が10~35%である、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0089】
[付記8]
前記液体強吸着担体が、微結晶セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、架橋ポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、スターチ、プレゼラチン化スターチの中のいずれか1つである、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0090】
[付記9]
前記徐放性・放出制御粒子に接着剤を添加することが可能であり、前記接着剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸、アラビアゴム、ペクチン、キサンタンガム、ヤロウガムの中のいずれか1つまたは複数であり、前記接着剤の使用量は徐放性・放出制御粒子の重量の0~5%である、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0091】
[付記10]
前記腸溶性材料含有液体物質には、使用前に、徐放性・放出制御粒子の重量の0~8%の接着防止剤、0~8%の可塑剤、0~3%の界面活性剤の中のいずれか1つまたは複数の組み合せを任意に添加し、前記接着防止剤が、微粉末シリカゲル、タルク、モノステアリン酸グリセロールから選択され、前記可塑剤が、モノステアリン酸グリセロール、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコールから選択され、前記界面活性剤が、脂肪酸ソルビタン、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウムから選択される、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0092】
[付記11]
前記親水性ゲル骨格材料が、アラビアゴム、ヤロウガム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸塩、メチルセルロース、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニールアルコールの中のいずれか1つである、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0093】
[付記12]
前記ゲル骨格部分に、充填剤、接着剤、潤滑剤および滑沢剤を任意に添加することができる、ことを特徴とする付記1に記載の経口徐放性組成物。
【0094】
[付記13]
付記1に記載の経口徐放性組成物の調製方法であって、
(1)難溶性薬剤を腸溶性材料含有液体溶液に分散させて懸濁液を得た後、得られた懸濁液を液体強吸着担体に噴出して造粒し、徐放性・放出制御粒子を形成するステップと、
(2)ステップ(1)で得られた徐放性・放出制御粒子と親水ゲル骨格材料含有材料を混合し、プレスして錠剤を得、徐放性・放出制御粒子をゲル骨格部分の成分に加えて造粒し、またはゲル骨格部分を単独で造粒した後に調製された徐放性・放出制御粒子と混合し、プレスして錠剤を得るステップと、を含む、ことを特徴とする調製方法。