(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】弾性繊維用処理剤及び弾性繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 15/643 20060101AFI20240909BHJP
D06M 13/152 20060101ALI20240909BHJP
D06M 101/38 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
D06M15/643
D06M13/152
D06M101:38
(21)【出願番号】P 2024015005
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋平
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-189041(JP,A)
【文献】特開2001-081674(JP,A)
【文献】特開2003-201678(JP,A)
【文献】特開2016-56496(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111206422(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、及びシリコーン化合物(B)を含有する弾性繊維用処理剤であって、
前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記成分(A)を0.01質量%以上1質量%未満の割合で含有
し、
前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記シリコーン化合物(B)を65質量%以下の割合で含有し、
前記弾性繊維用処理剤は、前記シリコーン化合物(B)として25℃における動粘度が3500mm
2
/s以下のシリコーン化合物のみを含むことを特徴とする弾性繊維用処理剤。
成分(A):酸化防止剤、及び光安定剤から選ばれる少なくとも一つ。
【請求項2】
前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記成分(A)を0.01質量%以上0.5質量%未満の割合で含有する請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項3】
前記成分(A)が、フェノール系酸化防止剤である請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
前記成分(A)が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である請求項3に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項5】
前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記シリコーン化合物(B)を20質量%以
上の割合で含有する請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、下記の炭化水素油(C)を含有する請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
炭化水素油(C):鉱物油、イソパラフィン、及びポリアルファオレフィンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項7】
前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記炭化水素油(C)を35質量%以上79.49質量%以下の割合で含有する請求項6に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項8】
前記炭化水素油(C)の30℃における動粘度が5mm
2/s以上50mm
2/s以下である請求項6に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項9】
更に、有機スルホン酸塩(D)を含有する請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項10】
前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記有機スルホン酸塩(D)を0.5質量%以上5質量%以下の割合で含有する請求項9に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする弾性繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性繊維用処理剤が付与された弾性繊維の繊維金属間摩擦を低減できるとともに解舒性を向上できる弾性繊維用処理剤及びかかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポリウレタン系弾性繊維等の弾性繊維は、他の合成繊維に比べて、繊維間の粘着性が強い。そのため、例えば弾性繊維を紡糸し、パッケージに巻き取った後、該パッケージから引き出して加工工程に供する際、パッケージから安定して解舒することが困難という問題があった。そのために、従来より弾性繊維の平滑性を向上させるため、平滑剤等を含有する弾性繊維用処理剤が使用されることがある。
【0003】
従来、特許文献1に開示される弾性繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、所定のホスホン酸化合物及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、酸化防止剤とを含有する弾性繊維用油剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の弾性繊維用処理剤は、弾性繊維用処理剤が付与された弾性繊維の繊維金属間摩擦の低減効果及び解舒性の向上という各効能の両立を十分に図ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、弾性繊維用処理剤において、成分(A)として酸化防止剤又は光安定剤を所定量と、シリコーン化合物(B)を配合した構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の弾性繊維用処理剤では、下記の成分(A)、及びシリコーン化合物(B)を含有する弾性繊維用処理剤であって、前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記成分(A)を0.01質量%以上1質量%未満の割合で含有し、
前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記シリコーン化合物(B)を65質量%以下の割合で含有し、
前記弾性繊維用処理剤は、前記シリコーン化合物(B)として25℃における動粘度が3500mm
2
/s以下のシリコーン化合物のみを含むことを特徴とする。
【0008】
成分(A):酸化防止剤、及び光安定剤から選ばれる少なくとも一つ。
態様2は、態様1に記載の弾性繊維用処理剤において、前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記成分(A)を0.01質量%以上0.5質量%未満の割合で含有する。
【0009】
態様3は、態様1又は2に記載の弾性繊維用処理剤において、前記成分(A)が、フェノール系酸化防止剤である。
態様4は、態様3に記載の弾性繊維用処理剤において、前記成分(A)が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
【0010】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載の弾性繊維用処理剤において、前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記シリコーン化合物(B)を20質量%以上の割合で含有する。
【0011】
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載の弾性繊維用処理剤において、更に、下記の炭化水素油(C)を含有する。
炭化水素油(C):鉱物油、イソパラフィン、及びポリアルファオレフィンから選ばれる少なくとも1つ。
【0012】
態様7は、態様6に記載の弾性繊維用処理剤において、前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記炭化水素油(C)を35質量%以上79.49質量%以下の割合で含有する。
【0013】
態様8は、態様6又は7に記載の弾性繊維用処理剤において、前記炭化水素油(C)の30℃における動粘度が5mm2/s以上50mm2/s以下である。
態様9は、態様1~8のいずれか一態様に記載の弾性繊維用処理剤において、更に、有機スルホン酸塩(D)を含有する。
【0014】
態様10は、態様9に記載の弾性繊維用処理剤において、前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記有機スルホン酸塩(D)を0.5質量%以上5質量%以下の割合で含有する。
【0015】
態様11の弾性繊維は、態様1~10のいずれか一態様に記載の弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弾性繊維用処理剤が付与された弾性繊維の繊維金属間摩擦を低減できるとともに、解舒性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の弾性繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、酸化防止剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも一つの成分(A)、並びにシリコーン化合物(B)を含む。また、処理剤は、さらに鉱物油、イソパラフィン、及びポリアルファオレフィンから選ばれる少なくとも1つの炭化水素油(C)、有機スルホン酸塩(D)を含んでもよい。
【0018】
(成分(A))
処理剤が成分(A)を含有することにより、特に処理剤が付与された弾性繊維の解舒性を向上できる。成分(A)としては、酸化防止剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも一つである。
【0019】
本実施形態の処理剤に供する酸化防止剤としては、公知のものを適宜採用できる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中で、フェノール系酸化防止剤が好ましく適用され、さらにフェノール系酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく適用される。なお、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、フェニル基1つに対し、炭素数3以上8以下の分岐鎖状の炭化水素基が2つ以上置換しているフェノール系酸化防止剤、又は3員環以上8員環以下の構造を4つ以上含むフェノール系酸化防止剤を示す。
【0020】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばIrganox1010(BASFジャパン社製)、Irganox1035(BASFジャパン社製)、Irganox1076(BASFジャパン社製)、Irganox1098(BASFジャパン社製)、Irganox1135(BASFジャパン社製)、Irganox1330(BASFジャパン社製)、Irganox1425WL(BASFジャパン社製)、Irganox259(BASFジャパン社製)、Irganox3114(BASFジャパン社製)、Irganox565(BASFジャパン社製)、アデカスタブAO-20(ADEKA社製)、アデカスタブAO-50(ADEKA社製)、アデカスタブAO-60(ADEKA社製)、アデカスタブAO-80(ADEKA社製)、アデカスタブAO-330(ADEKA社製)、IONOX330(シェル化学社製)、ISONOX129(スケネクタディー社製)、スミライザーGS(住友化学社製)、BHT(富士フイルム和光純薬社製)、スミライザーGA-80(住友化学社製)、HOSTANOX O310(クラリアントケミカルズ社製)、サイアノックス1790(サイテック社製)、LOWINOX1790(SIグループ製)、ケミノックス179(ケミプロ化成社製)等が挙げられる。
【0021】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばIrganox1141(BASFジャパン社製)、Irganox1520L(BASFジャパン社製)、Irganox245(BASFジャパン社製)、アデカスタブAO-30(ADEKA社製)、アデカスタブAO-40(ADEKA社製)、スミライザーGM(住友化学社製)、スミライザーBBM-S(住化ケムテックス社製)、スミライザーMDP-S(住友化学社製)、ヨシノックス425(エーピーアイ コーポレーション社製)、HOSTANOX O3(クラリアントケミカルズ社製)、DRAGONOX-CA(広州渤龍化工有限公司製)、DRAGONOX BBM(広州渤龍化工有限公司製)等が挙げられる。
【0022】
アミン系酸化防止剤の具体例として、例えばIrganox5057(BASFジャパン社製)等が挙げられる。
ホスファイト系酸化防止剤の具体例として、例えばアデカスタブPFP-8(ADEKA社製)、アデカスタブPFP-36(ADEKA社製)、アデカスタブHP-10(ADEKA社製)、アデカスタブ2112(ADEKA社製)、アデカスタブ1178(ADEKA社製)、アデカスタブ1500(ADEKA社製)、アデカスタブC(ADEKA社製)、アデカスタブ135A(ADEKA社製)、アデカスタブ3010(ADEKA社製)、アデカスタブTPP(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0023】
チオエーテル系酸化防止剤の具体例として、例えばアデカスタブAO-412S(ADEKA社製)、アデカスタブ503(ADEKA社製)等が挙げられる。
ベンズイミダゾール系酸化防止剤の具体例として、例えばスミライザーMB(住化ケムテックス社製)等が挙げられる。
【0024】
リン系酸化防止剤の具体例として、例えばHOSTANOX P-EPQ(クラリアントケミカルズ社製)等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤の具体例として、例えばHOSTANOX SE-10(クラリアントケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0025】
光安定剤の具体例としては、例えばJAST500(城北化学工業社製)、Tinuvin765(BASFジャパン社製)、Tinuvin123(BASFジャパン社製)、Tinuvin234(BASFジャパン社製)、HN-150(日本ファインケム社製)、Chimassorb944LD(BASFジャパン社製)、アデカスタブLA-57(ADEKA社製)、アデカスタブLA-68(ADEKA社製)、アデカスタブLA-72(ADEKA社製)、アデカスタブLA-81(ADEKA社製)、Tinuvin622SF(BASFジャパン社製)等が挙げられる。
【0026】
これらの成分(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤の不揮発分中における成分(A)の含有割合の下限は、0.01質量%以上である。かかる含有割合が0.01質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の解舒性をより向上できる。成分(A)の含有割合の上限は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満である。かかる含有割合が1質量%未満の場合、処理剤が付与された弾性繊維の繊維金属間摩擦を低減できる。さらに、かかる含有割合が0.5質量%未満の場合、処理剤が付与された弾性繊維の解舒性及び耐黄変性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。また、不揮発分とは、処理剤を105℃で2時間熱処理して揮発性成分を十分に除去したものをいう。以下、不揮発分の定義は、同じ条件を採用するものとする。
【0027】
(シリコーン化合物(B))
処理剤がシリコーン化合物(B)を含有することにより、処理剤が付与された弾性繊維の繊維金属間摩擦を低減できる。
【0028】
シリコーン化合物(B)の具体例としては、特に制限はないが、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン等が挙げられる。
【0029】
シリコーン化合物(B)の動粘度は、適宜設定されるが、例えば25℃における動粘度が2mm2/s以上10000mm2/s以下が挙げられる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。25℃における動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定される。本発明においては、処理剤中において、シリコーン化合物(B)として25℃における動粘度が3500mm
2
/s以下のシリコーン化合物のみを含む。
【0030】
これらのシリコーン化合物(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤の不揮発分中におけるシリコーン化合物(B)の含有割合の下限は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。かかる含有割合が10質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の繊維金属間摩擦をより低減できる。シリコーン化合物(B)の含有割合の上限は、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。かかる含有割合が99.5質量%以下の場合、処理剤の油剤安定性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。本発明においては、処理剤の不揮発分中に、シリコーン化合物(B)を65質量%以下の割合で含有する。
【0031】
(炭化水素油(C))
処理剤が炭化水素油(C)を含有することにより、弾性繊維のパッケージの形状特性をより向上できる。炭化水素油(C)としては、鉱物油、イソパラフィン、及びポリアルファオレフィンから選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0032】
鉱物油としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば、スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。鉱物油は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
【0033】
イソパラフィンは、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
ポリアルファオレフィンの具体例としては、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン等を重合して得られるポリアルファオレフィン等が挙げられる。ポリアルファオレフィンは、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
【0034】
炭化水素油(C)の30℃における動粘度の下限は、好ましくは5mm2/s以上である。炭化水素油(C)の30℃における動粘度の上限は、好ましく200mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下である。炭化水素油(C)の動粘度をかかる範囲に規定することにより、弾性繊維のパッケージの形状特性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。30℃における動粘度は、JIS
Z 8803に準拠して測定される。なお、複数種類の炭化水素油(C)が適用される場合は、全ての炭化水素油(C)を混合した際の動粘度の値が採用される。
【0035】
これらの炭化水素油(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤の不揮発分中における炭化水素油(C)の含有割合の下限は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。かかる含有割合が25質量%以上の場合、弾性繊維のパッケージの形状特性をより向上できる。炭化水素油(C)の含有割合の上限は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは79.49質量%以下である。かかる含有割合が85質量%以下の場合、弾性繊維のパッケージの形状特性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0036】
(有機スルホン酸塩(D))
処理剤が有機スルホン酸塩(D)を含有することにより、処理剤が付与された弾性繊維の制電性をより向上できる。本実施形態の処理剤に供される有機スルホン酸塩(D)としては、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族スルホコハク酸塩、芳香族スルホン酸塩等が挙げられる。
【0037】
有機スルホン酸を構成する炭化水素基としては、不飽和結合の有無について特に制限はなく、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であってもよい。分岐鎖状の炭化水素基を有するスルホン酸の場合、その分岐位置は特に制限されるものではなく、例えば、α位が分岐した炭素鎖であってもよいし、β位が分岐した炭素鎖であってもよい。
【0038】
有機スルホン酸の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン塩、ジブチルエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0039】
有機スルホン酸塩の具体例としては、例えばラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルキルスルホン酸(C13以上15以下)塩、二級アルキルスルホン酸(C11以上14以下)塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0040】
これらの有機スルホン酸塩(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤の不揮発分中における有機スルホン酸塩(D)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。かかる含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が付与された弾性繊維の制電性をより向上できる。有機スルホン酸塩(D)の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。かかる含有割合が10質量%以下の場合、処理剤が付与された弾性繊維の制電性を効率的に向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る弾性繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の弾性繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している弾性繊維である。弾性繊維に対する第1実施形態の処理剤の付着量は、特に制限はないが、本発明の効果をより向上できる観点から、溶媒を含まない処理剤の量として0.1質量%以上10質量%以下の割合で付着していることが好ましい。
【0042】
弾性繊維としては、特に制限はないが、例えばポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。かかる場合に本発明の効果の発現をより高くできる。
【0043】
本実施形態の弾性繊維の製造方法は、第1実施形態の処理剤を弾性繊維に給油することにより得られる。処理剤の給油方法としては、希釈することなくニート給油法により、弾性繊維の紡糸工程において弾性繊維に付着させる方法が好ましい。付着方法としては、例えばローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。給油ローラーは、通常口金から巻き取りトラバースまでの間に位置することが一般的であり本実施形態の製造方法にも適用できる。これらの中でも延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーにて第1実施形態の処理剤を弾性繊維、例えばポリウレタン系弾性繊維に付着させることが効果の発現が顕著であるため好ましい。
【0044】
本実施形態に適用される弾性繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、弾性繊維の品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
【0045】
(本実施形態の効果)
本実施形態の処理剤及び弾性繊維の効果について説明する。
(1)本実施形態の処理剤では、成分(A)として酸化防止剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも一つ、並びにシリコーン化合物(B)を配合して構成した。したがって、処理剤が付与された弾性繊維の繊維金属間摩擦を低減できるとともに、解舒性を向上できる。本発明は、従来の弾性繊維同士の接触防止により解舒性低下を抑制するためのシリカ等の固形微粒子等を必須成分とする必要はない。本発明は、成分(A)により弾性繊維同士の膠着を防止することにより、弾性繊維の繊維金属間摩擦の低減性に影響を与えることなく、解舒性を向上できる。
【0046】
(2)また、処理剤が付与された弾性繊維の耐黄変性、制電性、及び弾性繊維のパッケージの形状特性を向上できる。また、処理剤の油剤安定性を向上できる。
(3)処理剤が、更に、鉱物油、イソパラフィン、及びポリアルファオレフィンから選ばれる少なくとも1つ炭化水素油(C)を配合する場合、弾性繊維のパッケージの形状特性をより向上できる。
【0047】
(4)処理剤が、更に、有機スルホン酸塩(D)を配合する場合、処理剤が付与された弾性繊維の制電性をより向上できる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0048】
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他成分として処理剤の品質保持、品質向上のための平滑剤、高級アルコール、界面活性剤、制電剤、つなぎ剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、その他成分の処理剤中における含有割合は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から好ましくは40質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0050】
試験区分1(処理剤の調製)
各実施例、各比較例に用いた処理剤は、表1,2に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
【0051】
(実施例1)
成分(A)のヒンダードフェノール系酸化防止剤としてアデカスタブAO-20(ADEKA社製)(A-1)を0.05部(%)、シリコーン化合物(B)としてポリジメチルシロキサン(25℃における動粘度10mm2/s)(B-1)を58.95部(%)、炭化水素油(C)としてピュアスピンRC(30℃における動粘度13.1mm2/s、コスモ石油ルブリカンツ社製)(C-1)を35部(%)、有機スルホン酸塩(D)として炭素数14のα-オレフィンスルホン酸カルシウム塩(D-1)を5部(%)、及びその他成分として2-ヘキシル-1-デカノール(商品名ISOFOL16、SASOL社製)(Z-3)1部(%)をよく混合して均一にすることで実施例1の処理剤を調製した。
【0052】
(実施例2~32,43,49,50,55~58,60、参考例33~42,44~48,51~54,59,61~65、比較例1~6)
実施例2~32,43,49,50,55~58,60、参考例33~42,44~48,51~54,59,61~65、比較例1~6は、実施例1と同様にして成分(A)、シリコーン化合物(B)、炭化水素油(C)、有機スルホン酸塩(D)、及びその他成分を表1,2に示した割合で混合することで処理剤を調製した。
【0053】
各例の処理剤中における成分(A)、シリコーン化合物(B)、炭化水素油(C)、有機スルホン酸塩(D)、及びその他成分の各成分の種類、各成分の含有割合の合計を100%とした場合における各成分の比率を、表1,2の「成分(A)」欄、「シリコーン化合物(B)」欄、「炭化水素油(C)」欄、「有機スルホン酸塩(D)」、及び「その他成分」欄にそれぞれ示す。
【0054】
【0055】
【表2】
表1,2に記載される成分(A)、シリコーン化合物(B)、炭化水素油(C)、有機スルホン酸塩(D)、及びその他成分の詳細は以下のとおりである。
【0056】
<成分(A):酸化防止剤>
(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
A-1:アデカスタブAO-20(ADEKA社製)
A-2:アデカスタブAO-50(ADEKA社製)
A-3:アデカスタブAO-60(ADEKA社製)
A-4:アデカスタブAO-80(ADEKA社製)
A-5:アデカスタブAO-330(ADEKA社製)
A-6:サイアノックス1790(サイテック社製)
A-7:Irganox1098(BASFジャパン社製)
A-8:Irganox3114(BASFジャパン社製)
A-9:Irganox1010(BASFジャパン社製)
A-10:Irganox1076(BASFジャパン社製)
A-11:BHT(富士フイルム和光純薬社製)
A-12:スミライザーGA-80(住友化学社製)
A-13:ケミノックス179(ケミプロ化成社製)
A-14:LOWINOX1790(SIグループ製)
(その他のフェノール系酸化防止剤)
A-15:HOSTANOX O3(クラリアントケミカルズ社製)
A-16:アデカスタブAO-30(ADEKA社製)
A-17:アデカスタブAO-40(ADEKA社製)
A-18:Irganox245(BASFジャパン社製)
A-19:DRAGONOX-CA(広州渤龍化工有限公司製)
A-20:DRAGONOX BMM(広州渤龍化工有限公司製)
<成分(A):光安定剤>
A-21:アデカスタブLA-57(ADEKA社製)
A-22:アデカスタブLA-68(ADEKA社製)
A-23:アデカスタブLA-72(ADEKA社製)
A-24:アデカスタブLA-81(ADEKA社製)
A-25:Tinuvin622SF(BASF社製)
A-26:TinuvinPA123(BASF社製)
A-27:Tinuvin234(BASFジャパン社製)
A-28:HN-150(日本ファインケム社製)
A-29:Chimassorb944LD(BASFジャパン社製)
<シリコーン化合物(B)>
B-1:ポリジメチルシロキサン(25℃における動粘度10mm2/s)
B-2:ポリジメチルシロキサン(25℃における動粘度20mm2/s)
B-3:25℃における動粘度が1000mm2/sであり、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比(エチレンオキサイド:プロピレンオキサイド)が1:1であるエーテル変性シリコーン
B-4:25℃における動粘度が3500mm2/sであり、官能基当量が2000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
B-5:25℃における動粘度が2500mm2/sであり、官能基当量が3300g/molであるカルボキシル変性シリコーン
<炭化水素油(C))>
C-1:ピュアスピンRC(30℃における動粘度13.1mm2/s、コスモ石油ルブリカンツ社製)
C-2:ダイアナフレシアW8(30℃における動粘度10.0mm2/s、出光興産社製)
C-3:Ultra S2(30℃における動粘度11.0mm2/s、S-OIL社製)
C-4:GS-310(30℃における動粘度8.3mm2/s、Shell Chemicals社製)
C-5:Ultra S3(30℃における動粘度17.5mm2/s、S-OIL社製)
C-6:ダイアナフレシアW32(30℃における動粘度49.0mm2/s、出光興産社製)
C-7:PAO 401(30℃における動粘度26.2mm2/s、日鉄ケミカル&マテリアル社製)
C-8:PAO 601(30℃における動粘度46.7mm2/s、日鉄ケミカル&マテリアル社製)
C-9:スーパーゾルLA41(30℃における動粘度5.7mm2/s、出光興産社製)
C-10:ダイアナフレシアW90(30℃における動粘度162.2mm2/s、出光興産社製)
<有機スルホン酸塩(D)>
D-1:炭素数14のα-オレフィンスルホン酸カルシウム塩
D-2:ドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム塩
D-3:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩
D-4:ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩
D-5:ジオクチルスルホコハク酸ホスホニウム塩
D-6:炭素数14のα-オレフィンスルホン酸アンモニウム塩
D-7:ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩
<その他成分>
Z-1:ラウリルオレアート
Z-2:イソステアリルアルコール1モルに対し、プロピレンオキサイド5モルを付加させた化合物
Z-3:2-ヘキシル-1-デカノール(商品名ISOFOL16、SASOL社製)
Z-4:エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸
試験区分2(弾性繊維の製造)
分子量2000のポリテトラメチレングリコールとジフェニルメタンジイソシアネートとから得たプレポリマーをジメチルアセトアミド溶液中にてエチレンジアミンにより鎖伸長反応させ、濃度30%の紡糸ドープを得た。この紡糸ドープを紡糸口金から加熱ガス流中において乾式紡糸した。そして、巻き取り前の延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーより、乾式紡糸したポリウレタン系弾性繊維に、処理剤をローラーオイリング法でニート給油した。
【0057】
以上のようにローラー給油した弾性繊維を、巻き取り速度が600m/分で、長さ58mmの円筒状紙管に、巻き幅38mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて巻き取り、40デニールの乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージ500gを得た。処理剤の付着量の調節は、給油ローラーの回転数を調整することで何れも5%となるように行った。
【0058】
こうして得られたローラー給油した乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを用いて、弾性繊維の繊維-金属間摩擦、解舒性、耐黄変性、糸形状、及び制電性について評価を行った。また、処理剤の油剤安定性について評価した。
【0059】
試験区分3(弾性繊維の評価)
(解舒性の評価)
片側に第1駆動ローラーとこれに常時接する第1遊離ローラーとで送り出し部を構成した。また反対側に第2駆動ローラーとこれに常時接する第2遊離ローラーとで巻き取り部を構成した。該送り出し部に対し該巻き取り部を水平方向で20cm離して設置した。第1駆動ローラーに、得られた紡糸直後の乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを装着し、糸巻の厚さが2mmになるまで解舒して、第2駆動ローラーに巻き取った。第1駆動ローラーからのポリウレタン系弾性繊維の送り出し速度を50m/分で固定した。一方、第2駆動ローラーへのポリウレタン系弾性繊維の巻き取り速度を50m/分より徐々に上げて、ポリウレタン系弾性繊維をパッケージから強制解舒した。この強制解舒時において、送り出し部分と巻き取り部分との間でポリウレタン系弾性繊維の踊りがなくなる時点での巻き取り速度V(m/分)を測定した。下記式により解舒性(%)を求め、次の基準で評価した。結果を表1,2の「解舒性」欄に示す。
【0060】
解舒性(%)=(V-50)×2
・解舒性の評価基準
4(優れる):解舒性が100%未満の場合(全く問題なく、安定に解舒できる)
3(良好):解舒性が100%以上且つ140%未満の場合(糸の引き出しにほとんど抵抗が無く、また糸切れの発生も無く、安定に解舒できる)
2(可):解舒性が140%以上且つ180%未満の場合(糸の引き出しにやや抵抗があるものの、糸切れの発生は無く、安定に解舒できる)
1(不良):解舒性が180%以上の場合(糸の引き出しに抵抗があり、糸切れもあって、操業に問題がある)
(耐黄変性の評価)
各処理剤が付着したパッケージ(500g巻き)の端面部分を色彩色差計(MINOLTA製の色彩色差計:CR-300)でb値を測定した後、1週間紫外線照射機により紫外線を照射しながら保管した。この保管後のパッケージについて紫外線照射前に測定した同じ端面部分のb値を上記色彩色差計で測定した。この時の紫外線下で1週間保管前後のb値の差を測定値とした。下記の基準で耐黄変性を評価した。結果を表1,2の「耐黄変性」欄に示す。
【0061】
・耐黄変性の評価基準
4(優れる):b値の差が0.4未満の場合
3(良好):b値の差が0.4以上且つ0.6未満の場合
2(可):b値の差が0.6以上且つ1未満の場合
1(不可):b値の差が1以上の場合
(繊維-金属摩擦の評価)
摩擦測定メーター(エイコー測器社製、SAMPLE FRICTION UNIT MODEL TB-1)を用いた。二つのフリーローラー間に直径1cmで表面粗度2Sのクロムメッキ梨地ピンを配置した。このクロムメッキ梨地ピンに対し、前記のパッケージ(500g巻き)から引き出したポリウレタン系弾性繊維の接触角度が90度となるように繊維を通した。25℃で60%RHの条件下、入側で初期張力(T1)5gをかけ、100m/分の速度で走行させたときの出側の2次張力(T2)を測定した。下記の数式から摩擦係数を求め、次の基準で評価した。結果を表1,2の「繊維-金属摩擦」欄に示す。
【0062】
摩擦係数=(2/3.14)xln(T2/T1)
・繊維-金属間摩擦の評価基準
3(良好):摩擦係数が0.22未満
2(可):摩擦係数が0.22以上且つ0.30未満
1(不良):摩擦係数が0.30以上
(油剤安定性の評価)
各処理剤を、25℃で3ヵ月静置して、下記の基準で油剤安定性を評価した。結果を表1,2の「油剤安定性」欄に示す。
【0063】
・油剤安定性の評価基準
3(良好):沈殿、分離が無く、調製時と同様に均一な状態を保っている場合
2(可):ごくわずかに沈殿を生じるが、撹拌によって調製時と同様に均一な状態に復元する場合
1(不可):沈殿、分離が生じ、撹拌によって均一な状態に復元しない場合
(糸形状の評価)
40デニールの乾式紡糸したポリウレタン系弾性繊維に試験区分1で調製した処理剤をローラー給油法で7.0%付着させた。そして巻き取り速度550m/分で、長さ57mmの円筒状紙管に、巻き幅42mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて500g巻き取り、ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを得た。この糸パッケージ(500g巻き)について、捲き幅の最大値(Wmax)と最小幅(Wmin)を計測し、双方の差(Wmax-Wmin)からバルジを求め、下記の基準で評価した。結果を表1,2の「糸形状」欄に示す。
【0064】
・糸形状の評価基準
5(非常に優れる):バルジが1mm未満の場合
4(優れる):バルジが1mm以上且つ2mm未満の場合
3(良好):バルジが2mm以上且つ3mm未満の場合
2(可):バルジが3mm以上且つ6mm未満の場合
1(不可):バルジが6mm以上の場合
(制電性の評価)
二つのフリーローラー間に直径1cmで表面粗度2Sのクロムメッキ梨地ピンを配置し、このクロムメッキ梨地ピンに対し、糸パッケージから引き出したポリウレタン系弾性繊維の接触角度が90度となるようにした。このクロムメッキ梨地ピンの下部1cmの位置に静電電位測定器(春日電機社製の商品名KSD-0103)を配置し、25℃で65%RHの条件下、50m/分の速度で送り出し、100m/分の速度で巻き取った場合の発生電気を測定して、次の基準で評価した。結果を表1,2の「制電性」欄に示す。
【0065】
・制電性の評価基準
4(優れる):発生電気が30ボルト未満の場合(全く問題無く、安定に操業できる)
3(良好):発生電気が30ボルト以上且つ50ボルト未満の場合(整経工程で僅かな寄りつきがあるが、問題なく安定に操業できる)
2(可):発生電気が50ボルト以上且つ100ボルト未満の場合(整経工程で若干の寄りつきがあるが、問題なく安定に操業できる)
1(不可):発生電気が100ボルト以上の場合(整経工程で糸の寄りつきが起こり、操業に問題が起きる)
表1,2の各比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤によると、処理剤が付与された弾性繊維の繊維-金属間摩擦を低減できるとともに、解舒性、耐黄変性、糸形状、及び制電性を向上できる。また、処理剤の油剤安定性を向上できる。
【要約】
【課題】繊維金属間摩擦を低減できるとともに解舒性を向上できる弾性繊維用処理剤及びかかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維を提供する。
【解決手段】本発明の弾性繊維用処理剤は、酸化防止剤、及び光安定剤から選ばれる少なくとも一つの成分(A)、並びにシリコーン化合物(B)を含有する弾性繊維用処理剤であって、前記弾性繊維用処理剤の不揮発分中に、前記成分(A)を0.01質量%以上1質量%未満の割合で含有することを特徴とする。
【選択図】なし