(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】タイタンビカスの新規用途
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240909BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240909BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/185
A61P25/22
(21)【出願番号】P 2024040564
(22)【出願日】2024-03-14
【審査請求日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2023104588
(32)【優先日】2023-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500109836
【氏名又は名称】株式会社 赤塚植物園
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】上田 隼平
(72)【発明者】
【氏名】萩野 幸子
(72)【発明者】
【氏名】倉林 雪夫
(72)【発明者】
【氏名】澤山 道則
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 耕一
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158891(JP,A)
【文献】特開2024-059385(JP,A)
【文献】特開2010-208989(JP,A)
【文献】Plant Foods for Human Nutrition,2020年,Vol.75,pp.265-271, Supplementary methods
【文献】登録番号21813,農林水産植物の種類 Hibiscus moscheutos L.(和名:クサフヨウ種),登録品種の名称 タイタン ピーチホワイト,登録品種データベース[online][retrieved on 03 June 2024],2008年10月28日,https://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM112.aspx?TOUROKU_NO=21813&LANGUAGE=Japanese
【文献】タイタンビカスを楽しもう,AKATSUKA グリーン通信[retrieved on 03 June 2024],vol.256,2020年07月,https//www.akatsuka.gr.jp/bosco/green256/
【文献】Molecules,2020年,Vol.25,No.10,p.2307
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L31/00-33/29
A61K36/00
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDremIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒペロシドとイソクエルシトリンを(1:3)~(2:1)の割合で含むタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有する
、不安様症状を改善する抗不安剤であり、前記不安様症状が、前記不安様症状の改善作用を高架式十字迷路試験で確認できる不安様症状であることを特徴とする抗不安剤。
【請求項2】
前記タイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物として、タイタンビカス末を含み、該タイタンビカス末に含まれる前記ヒペロシドと前記イソクエルシトリンの合計量が前記タイタンビカス末の全質量に対して1.0質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の抗不安剤。
【請求項3】
タイタンピーチホワイト(農林水産省品種登録第21813号)の花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有する
、不安様症状を改善する抗不安剤であり、前記不安様症状が、前記不安様症状の改善作用を高架式十字迷路試験で確認できる不安様症状であることを特徴とする抗不安剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイタンビカスの特定の品種等の新規用途に関する。
【背景技術】
【0002】
タイタンビカスは、アオイ科フヨウ属の宿根草であり、本出願人によって開発された新しい植物である。タイタンビカスは、非常に強健で、夏の暑さにも極めて強く、秋には地上部は枯れるが、宿根草のため、翌年には芽を吹いて初夏には花を咲かせる。花期はおもに7~9月の間で、一輪一輪は一日花であるが、ひと夏で延べ200輪近くの花を咲かせる。花の直径は約15cm~25cmと非常に大きく、花色は品種により異なり、赤、ピンク、白がある。また、品種によっては草丈が3mにもなる。
【0003】
タイタンビカスの品種としては、タイタンレイア(農林水産省品種登録第27541号)、タイタンフレア(農林水産省品種登録第28201号)、タイタンピンク(農林水産省品種登録第21812号)、タイタンピーチホワイト(農林水産省品種登録第21813号)、タイタンエルフ(農林水産省品種登録第27540号)などが知られている。
【0004】
タイタンビカスは、生育旺盛で育てやすく、巨大輪の花を咲かせることなどから園芸用や観賞用として人気である。
【0005】
一方、タイタンビカスのつぼみや花は、食用に使用することも可能であり、近年では、エディブルフラワーとしての生産も行われている。エディブルフラワーとしては、タイタンレイアの品種が実用化されている。タイタンレイアは、花のサイズが大きいため、エディブルフラワーとしてのインパクトが大きく、他のエディブルフラワーと差別化しやすいことや、人工開花させた場合でも美しい状態を保つことができるためである。
【0006】
ところで、近年では、天然の植物の抽出物などについて種々の機能が報告されている(例えば特許文献1参照)。また、そのような抽出物などは飲食品や化粧品の添加剤などとしても広く利用されている。例えば、特許文献1では、オレウロペインを含むオリーブ葉抽出物を用いることにより、活動量の低下や不安の改善が図れるとされている。
【0007】
これまでにタイタンビカスに含まれる成分や生理活性について、ほとんど報告はなされておらず、更には品種等に着目した研究もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、タイタンビカスの生理活性を新たに見出すことで、そのタイタンビカスの新たな用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の抗不安剤は、ヒペロシドとイソクエルシトリンを(1:3)~(2:1)の割合で含むタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有することを特徴とする。本発明において、「タイタンビカスの花(つぼみを含む)」とは、開いた状態の花に限らず、開いていない状態の花(つぼみ)をも包含する概念であり、実際につぼみが含有されていることを限定するものではない。また、「タイタンビカスの花(つぼみを含む)」には、その加工品(例えばタイタンビカス末)も含まれる;以下、同じ。
【0011】
上記タイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物として、タイタンビカス末を含み、該タイタンビカス末に含まれる上記ヒペロシドと上記イソクエルシトリンの合計量が上記タイタンビカス末の全質量に対して1.0質量%以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の抗不安剤は、タイタンピーチホワイト(農林水産省品種登録第21813号)の花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、ヒペロシドとイソクエルシトリンを(1:3)~(2:1)の割合で含むタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、タイタンピーチホワイト(農林水産省品種登録第21813号)の花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明のサプリメントは、タイタンピーチホワイト(農林水産省品種登録第21813号)の花(つぼみを含む)の粉末、またはタイタンプレアデスの花(つぼみを含む)の粉末を含有することを特徴とする。
【0016】
本発明のAGEs産生抑制剤は、タイタンプレアデスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明のラジカル消去剤は、タイタンプレアデスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の抗不安剤は、ヒペロシドとイソクエルシトリンを(1:3)~(2:1)の割合で含むタイタンビカス、例えばタイタンピーチホワイトなどの特定の品種の花(つぼみを含む)またはその抽出物(以下、これらをまとめてタイタンビカス成分ともいう)を含有するので、不安様症状を改善することができる。上記タイタンビカス成分は、不安様症状を改善することから、例えば抗不安剤の有効成分や補助成分として用いることができ、タイタンビカスの花やつぼみを飲食品、サプリメント、医薬品、化粧品などの幅広い用途に有効活用できる。
【0019】
また、上記タイタンビカス成分は、優れたアンジオテンシン変換酵素(以下、ACE)阻害作用を有することから、例えばACE阻害剤の有効成分として用いることができる。
【0020】
タイタンピーチホワイトの花(つぼみを含む)またはその抽出物、および、タイタンプレアデスの花(つぼみを含む)またはその抽出物は、他の品種と比較して、ケルセチン配糖体の成分組成の特異性が高くなっている。また、抗不安作用、ACE阻害作用のほか、優れた種々の生理活性を示すので、サプリメントとして有用であり、日常的な摂取によって健康増進に寄与できる。
【0021】
特に、タイタンプレアデスの花(つぼみを含む)またはその抽出物は、優れたAGEs産生抑制作用を有することから、例えばAGEs産生抑制剤の有効成分として用いることができる。
【0022】
また、タイタンプレアデスの花(つぼみを含む)またはその抽出物は、優れたラジカル消去作用を有することから、例えばラジカル消去剤の有効成分として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に用いるタイタンビカス抽出物を得る工程概略図である。
【
図2】ケルセチンおよびケルセチン配糖体の構造式を示す図である。
【
図3】ケルセチン配糖体の含有量とDPPHラジカル消去活性の相関を示す図である。
【
図4】ケルセチン配糖体の含有量とスーパーオキシド消去活性の相関を示す図である。
【
図5】ケルセチン配糖体の含有量とAGEs産生抑制率の相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、タイタンビカスの新規用途を見出すべく、特に品種に着目して鋭意検討を行ったところ、特定の品種に代表されるタイタンビカス成分がより優れた生理活性を示すことを見出した。また、従来、タイタンビカス(タイタンレイアのみ)は、エディブルフラワーなどの食用に用いられることは知られているものの、サプリメントなどのように生理活性成分を摂取するための素材としては知られておらず、今回、特にタイタンレイア以外の品種について、その有効な生理活性からサプリメントなどの素材としても有用であることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0025】
本発明に係る抗不安剤、ACE阻害剤、サプリメント、抗老化剤、AGEs産生抑制剤、およびラジカル消去剤の各種剤は、特定のタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有する。
【0026】
タイタンビカス(学名Hibiscus x Titanbicus)は、アメリカフヨウ(Hibiscus moscheutos)とモミジアオイ(Hibiscus coccineus)の交配選抜種である。
【0027】
本発明で用いるタイタンビカスは、ケルセチン配糖体であるヒペロシドおよびイソクエルシトリンを含んでいる。特に、ヒペロシドとイソクエルシトリンを(1:3)~(2:1)の割合で含み、好ましくは(2:3)~(3:2)の割合で含む。後述の実施例で示すように、タイタンビカスはケルセチン配糖体を含んでおり、多くの品種では、イソクエルシトリンをある程度含むものの、ヒペロシドの含有量は低くなっている。これに対して、本発明で用いる特定のタイタンビカスは、ヒペロシドが特異的に多く含まれており、不安様症状の改善作用をはじめ、優れた生理活性作用が発揮される。
【0028】
タイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物として、タイタンビカス末を用いる場合、該タイタンビカス末に含まれるヒペロシドとイソクエルシトリンの合計量はタイタンビカス末の全質量に対して1.0質量%以上であることが好ましい。当該合計量は1.5質量%以上であってもよく、2.0質量%以上であってもよく、また5.0質量%以下であってもよい。また、上記タイタンビカス末に含まれるヒペロシドの含有量はタイタンビカス末の全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であってもよい。また、上記タイタンビカス末に含まれるイソクエルシトリンの含有量はタイタンビカス末の全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であってもよい。
【0029】
ヒペロシド、イソクエルシトリン、その他のケルセチン配糖体などの含有量および含有割合は、タイタンビカスの花(つぼみを含む)を50vol%メタノールで抽出し、後述する実施例のHPLC分析によって算出できる。
【0030】
本発明で用いるタイタンビカスの品種としては、タイタンピーチホワイト(以下、単にピーチホワイトという)、タイタンプレアデス(以下、単にプレアデスという)などが挙げられる。ピーチホワイトは、花の色が淡いピンクを含んだ白色で、中心に赤い目がある。プレアデスは、花の色はピンクで、中心に赤い目がある。例えば、ピーチホワイトは、ヒペロシドとイソクエルシトリンの含有割合が約1:1であり、不安様症状の改善の観点から好ましい。また、プレアデスは、イソクエルシトリンの含有量が、他の品種に比べて多く、ラジカル消去活性やAGEs産生抑制活性の観点から好ましい。さらに、ピーチホワイト末やプレアデス末に含まれるケルセチン配糖体は、各ケルセチン配糖体単体よりも水に溶解しやすいことから、生体利用率(バイオアベイラビリティ)が高いと考えられる。
【0031】
タイタンビカスとしては、少なくとも花(つぼみを含む)を用いる。この場合、花とつぼみが混じったものを用いてもよく、花のみ、つぼみのみを用いてもよい。なお、原料となるタイタンビカスには、葉、種、茎、根などのその他の部分が含まれていてもよいが、成分濃度が高まることから、その他の部分は含まれないことが好ましい。また、ガク(萼)は、衛生面などの観点から、花やつぼみから取り除かれることが好ましい。つまり、原料となるタイタンビカスにはガクが含まれないことが好ましい。
【0032】
本発明の各種剤には、タイタンビカスの花(つぼみを含む)を加工処理した粉末などの加工品をそのまま用いてもよく、当該加工品などを抽出した抽出物を用いてもよい。すなわち、「タイタンビカスの花(つぼみを含む)」には、それらを粉末状にしたタイタンビカス末も包含される。
図1には、本発明の各種剤の製造方法の一例として、タイタンビカス抽出物を得る工程概略図を示す。
【0033】
図1において、この製造方法は(a)加工工程と(b)抽出工程を含む。この方法では、原料にタイタンビカスの花・つぼみが用いられている。これらは、生の状態でもよく、冷凍保存された状態でもよい。
【0034】
[(a)加工工程]
図1において、加工工程は、乾燥工程と粉砕工程を含む。乾燥工程における乾燥手法は特に限定されず、自然乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥などを行うことができる。加熱乾燥の場合、加熱温度は例えば40℃~80℃とすることができる。続く粉砕工程における粉砕手法は特に限定されず、ミル、クラッシャー、石臼などの周知の粉砕機を用いて行うことができる。粉砕物の粒径をある程度揃えるため、パンチングスクリーンを用いることが好ましい。得られたタイタンビカスの花・つぼみの加工品の粒径、形態は特に限定されないが、水分量は10重量%未満であることが好ましい。なお、粉砕工程後、さらに別の工程(例えばフリーズドライ工程や殺菌工程など)を設けて、加工品を得るようにしてもよい。
【0035】
[(b)抽出工程]
抽出手法は特に限定されないが、例えば、溶媒抽出、超臨界抽出などが挙げられる。抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数1-4のアルコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ヘキサンなどの炭化水素類;ジエチルエーテルなどのエーテル類;アセトニトリルなどが挙げられる。これら抽出溶媒は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
後述の実施例で示すように、タイタンビカスの花(つぼみを含む)はケルセチン配糖体を多く含有する。ケルセチン配糖体を効率良く抽出する観点から、抽出溶媒は、水、アルコール類、これらの混合溶媒が好ましく、含水メタノール、含水エタノールがより好ましい。含水アルコールのアルコール濃度は、例えば30vol%~90vol%であり、50vol%~90vol%であってもよい。
【0037】
抽出温度は例えば20℃~80℃であり、例えば、浸漬抽出、振とう抽出、超音波抽出などを採用することができる。
【0038】
本発明において、タイタンビカス成分の形態は、特に限定されず、例えば、粉末状、液状(例えば、抽出溶媒を含む抽出液)などであってもよい。なお、
図1では、タイタンビカス抽出物を得る工程を示したが、(a)加工工程によって得られる、タイタンビカスの花・つぼみの加工品(タイタンビカス末)を各種剤に用いてもよい。
【0039】
本発明で用いるタイタンビカスは、ヒペロシドおよびイソクエルシトリン以外に、その他のケルセチン配糖体およびケルセチンを含むことが好ましい。ケルセチン配糖体は、下記の式で表されるケルセチンのヒドロキシ基に糖が結合したものである。ケルセチン配糖体において、糖の結合位置やその数は特に限定されない。
【0040】
【0041】
ケルセチン配糖体における糖としては、単糖、オリゴ糖、多糖などが挙げられる。単糖としては、リボース、アラビノースなどのペントース、グルコース、マンノース、ガラクトースなどのヘキソースなどが挙げられ、オリゴ糖や多糖は、これらの単糖類が結合したものである。なお、糖の数が2以上である場合、糖は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、糖上のヒドロキシ基は他の置換基で置換されていてもよく、例えばエステル結合やエーテル結合に修飾されていてもよい。
【0042】
図2にケルセチン配糖体の具体的な構造を示す。ヒペロシドは、ケルセチンの3位に単糖であるガラクトースが結合したものであり、イソクエルシトリンは、ケルセチンの3位に単糖であるグルコースが結合したものである。その他のケルセチン配糖体として、ルチン(ケルセチンの3位に二糖であるβ-ルチノースが結合)、Q3MG(ケルセチンの3位に6-マロニルグルコースが結合)、およびQ3Samb(ケルセチンの3位に二糖であるサンブビオースが結合)を含むことが好ましい。
【0043】
図2に示すように、ケルセチン配糖体は、全てにおいて共通のケルセチン構造を有しており、結合している糖の種類や数が異なっている。例えば、ルチンは二糖が結合しているため、小腸では吸収されずに、大腸において腸内細菌による代謝を受けて吸収される。一方、1個のグルコースが結合しているイソクエルシトリンは、小腸において吸収される。また、ヒペロシドも大腸において腸内細菌による代謝を受けて吸収される。また、いずれのケルセチン配糖体も遊離のケルセチンとして吸収される。
【0044】
タイタンビカス成分が複数のケルセチン配糖体(例えばヒペロシド、イソクエルシトリン、およびルチン)を含むことで、互いに共通のケルセチン構造を有するとしても、体内に吸収される場所や吸収されるまでの時間に違いが生じることから、体内における活性保持に有効に働くと考えられる。また、イソクエルシトリンは、ケルセチンやルチンよりも体内に吸収されやすいとの報告もあることから、上記タイタンビカス成分がイソクエルシトリンをより多く含む場合、体内への吸収性という面からも有利であると考えられる。
【0045】
なお、上記タイタンビカス成分には、上述した以外のケルセチン配糖体が含まれていてもよい。例えば、他のケルセチンルチノシド、他のケルセチングルコシド、他のケルセチンガラクトシド、ケルセチンラムノシド、ケルセチングルクロニドなどが含まれていてもよい。
【0046】
上記タイタンビカス成分としてタイタンビカス末を用いる場合、該タイタンビカス末に含まれるケルセチンおよびケルセチン配糖体の合計量はタイタンビカス末の全質量に対して2.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であってもよい。
【0047】
また、上記タイタンビカス成分には、ケルセチンおよびケルセチン配糖体以外の成分(その他成分)が含まれていてもよい。その他成分としては、フラボノイド(特にケンフェロール)、プロアントシアニジンを含むことが好ましい。なお、フラボノイドとして、ミリセチン、ルテオリン、アピゲニンは含まれていなくてもよい。
【0048】
ケルセチン配糖体などのポリフェノールは、摂取後、ただちに抱合という過程を経て、体外に排出される。特に、特定の一成分を大量に摂取した場合には、ほぼすべてが排出されてしまう。しかし、野菜や果物には類似の成分が複数含まれており、これらを一緒に摂取することで、一部の成分が抱合を受けずに体内に取り込まれる現象が起こるとされている。また、種類の異なる複数のフラボノイドを同時に摂取している日常的な食事においては、代謝パターンが食材の組み合わせによって変化するものと考えられている。ケルセチン配糖体をはじめとしたフラボノイドの体内における作用は十分に解明されているわけではないが、種類の異なる複数のフラボノイドを同時に摂取することは、単一の成分を大量に摂取した場合とは異なる作用が期待される。そのため、その他成分として他のフラボノイド(ケンフェロールなど)を含むことで、体内における吸収性に有利になると推察される。
【0049】
本発明の抗不安剤は、上述したタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有し、不安様症状の改善作用を示す。ここで、不安様症状とは、不安感、焦燥感、恐怖感などの状態を表すほか、無気力、無関心、うつ様症状に含まれる抑制性症状、不安による睡眠障害などを包含する症状をいう。
【0050】
本発明において、不安様症状の改善作用の程度は、例えば、高架式十字迷路試験などの不安レベルの評価系を用いて評価することができる。具体的には、高架式十字迷路試験において、被験物質の投与後の不安レベルが、投与前の不安レベルを下回る場合に、抗不安作用が発揮されたと判定することができる。
【0051】
ケルセチン配糖体は、様々な野菜や果物に広く含まれているが、ヒペロシドとイソクエルシトリンにおいては、抗うつ作用があることが知られている(参考文献1;Biol. Pharm. Bull. 24(7)、848-851)。また、ラフマ由来ヒペロシドおよびラフマ由来イソクエルシトリンは、睡眠の質の向上に役立つとして、機能性表示食品の関与成分として届出が受理されている。後述する高架式十字迷路試験の結果に加えて、これらの報告例などからも、上述したタイタンビカス成分は不安様症状の改善作用を示すといえる。
【0052】
本発明のACE阻害剤は、上述したタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有し、ACE阻害作用を示す。生活習慣病の一つである高血圧は、心筋梗塞などの心臓疾患や、脳卒中などの脳血管障害の原因となる。生体内における主な血圧調整系は4種類あるが、その中でもレニン・アンジオテンシン系は、特に重要な役割を果たすと言われている。一方で、植物由来の食品の摂取は血圧上昇を抑制することが知られている。その理由として、野菜などの植物由来の食品には、食物繊維やカリウム、γ-アミノ酪酸といった血圧の上昇を抑制する成分が多く含まれること、高血圧に関与する酵素の1つであるACEを阻害することによる血圧上昇の抑制などが考えられている。体内では、ACEによってアンジオテンシンIから強力な血管収縮作用を持つアンジオテンシンIIが生成されることで血圧が上昇することが知られている。したがって、ACE活性を阻害することは、血圧の過剰な上昇を抑制する上で特に有効である。そのため、近年、高血圧予防を目的とした数多くの機能性食品が販売されており、ACE阻害作用を有する食品成分が注目されている。これまでに、タイタンビカスがACE阻害作用を有するとの報告はなく、今回、タイタンビカスが高血圧予防を目的とした食品成分に資することを見出した。
【0053】
本発明の抗老化剤は、上述したタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有し、抗老化作用を示す。この抗老化作用は、AGEs産生抑制作用およびラジカル消去作用の少なくともいずれかの作用に基づいて発揮される。なお、タイタンビカス成分が有する抗老化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されない。
【0054】
本発明のAGEs産生抑制剤は、上述したタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有し、AGEs産生抑制作用を示す。美容の研究において、近年、抗糖化が注目されている。糖化とはグルコースなどの還元糖が非酵素的にタンパク質と結合することで、それによって産生される物質を最終糖化産物(Advanced Glycation Endproducts)と呼んでいる。この最終糖化産物(AGEs)は、糖尿病合併症、動脈硬化、神経変性疾患などに関与していることが示唆されており、また、皮膚の老化にも密接な関連があることが明らかとなってきている。
【0055】
AGEsは加齢に伴って増加するが、皮膚のタンパク質であるコラーゲン部分でメイラード反応が生じると、タンパク質中のリジン残基のアミノ基などと糖のカルボニル基が非酵素的に反応し、AGEsが産生しコラーゲン部分同士を架橋させる。そして、架橋構造が形成されると、皮膚本来の弾力性が失われる。また、シワやたるみなどの発生にも繋がるとされている。このように、糖化を防ぐことは健康だけでなく美容にとっても重要であり、AGEs産生を抑制することで、アンチエイジングに繋がるといえる。後述の実施例に示すように、特にプレアデスの花(つぼみを含む)またはその抽出物は、AGEs産生抑制作用に優れている。
【0056】
本発明のラジカル消去剤は、上述したタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有し、ラジカル消去作用を示す。アンチエイジングにおいて、生体成分を酸化させる、活性酸素やフリーラジカルなどのラジカルもまた注目されている。ラジカルとは、1以上の不対電子対を有する原子または分子を指し、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシド、DPPHラジカルなどを含む。皮膚は、特に、紫外線などの環境因子の刺激を直接受けることから、ラジカルが生成しやすく、生成したラジカルによって、例えばコラーゲンなどの生体組織が分解、変性、架橋などされ、その結果、皮膚のしわ形成や皮膚の弾力低下などの老化の原因になると考えられている。そのため、ラジカルを消去(捕捉)することで、しわ形成や弾力低下などの皮膚の老化や、ラジカルの酸化ストレスが原因となって誘発されるような疾患(糖尿病合併症、動脈硬化症、神経変性疾患など)を予防、改善できると考えられる。後述の実施例に示すように、特にプレアデスの花(つぼみを含む)またはその抽出物は、ラジカル消去作用に優れている。
【0057】
本発明の各種剤は、飲食品、サプリメント、医薬品、化粧品などとして、またはこれらに配合する素材として使用可能である。例えば、不安様症状や、高血圧、アンチエイジングなどの予防・改善などを謳った、または表示した保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)などとして、またはこれらの添加剤として使用可能である。
【0058】
本発明の各種剤は、剤形や適用方法などについて特に限定されず、例えば経口用、皮膚外用剤などとすることができる。経口用の場合、剤形は、例えば、錠剤、液剤、粉末剤、カプセル剤などの形態にすることができる。皮膚外用剤の場合、剤形は、例えば、液剤、ローション剤、乳剤、軟膏剤、クリーム剤などの形態にすることができる。
【0059】
本発明のサプリメントは経口摂取されるものであり、上述したタイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有する。上記タイタンビカス成分は、優れた生理活性作用を有することからサプリメントとして有用である。例えば、サプリメントは栄養補給や健康増進などの目的で摂取され、錠剤、液剤、粉末剤、カプセル剤などの形態であり、タイタンビカス成分(好ましくはピーチホワイト末またはプレアデス末)が、サプリメント全量に対して、例えば0.1質量%~50質量%含まれる。そのタイタンビカス成分の含有量は、0.5質量%~30質量%であってもよく、1質量%~20質量%であってもよい。
【0060】
例えば、サプリメントを摂取する場合、タイタンビカス成分に含まれるヒペロシドの摂取量が1日あたり0.1mg~10mg(好ましくは0.3mg~3mg)、タイタンビカス成分に含まれるイソクエルシトリンの摂取量が1日あたり0.1mg~10mg(好ましくは0.3mg~3mg)となるように摂取することが好ましい。
【実施例】
【0061】
[1.タイタンビカスの8品種のケルセチン配糖体の含有量について]
(a)ケルセチン配糖体の抽出
タイタンビカスの8品種(カシオペア、シルフィード、ウラノス、ピーチホワイト、ネオン、アルテミス、レイア、プレアデス)の各つぼみからケルセチン配糖体の抽出を行った。抽出溶媒としては、アセトニトリルと2-プロパノールとエタノールを2:1:1で混合した溶媒を用いた。以下の手順で抽出した。
1:つぼみ1個を100ml溶のガラス製ビーカーに入れた。
2:つぼみの生重量8.7gあたり50mlの抽出溶媒を添加した。
3:薬サジでつぼみを少しつぶし、つぼみを抽出溶媒中に完全に沈めた。
4:室温、暗所で20時間静置した。
5:20時間後、抽出液を0.45μmのシリンジフィルターでろ過した。
6:メタノールでろ過した抽出液を2倍希釈、4倍希釈した。
7:上記5でろ過した抽出液および上記6で希釈した希釈液の、3サンプルに含まれるケルセチン配糖体を定量分析した。
【0062】
(b)抽出物の成分分析
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(測定波長254nm)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):Agilent 1100 Series(アジレント社製)
カラム:ZORBAX Eclipse XDB-C18(アジレント社製;カラム内径4.6mm、カラム長さ250mm、粒子径5μm)
カラム温度:40℃
移動相A:アセトニトリル(100%)
移動相B:0.01%ギ酸
流速:1.000ml/min
各移動相の送液:移動相Aおよび移動相Bの混合比を表1に示すように変更
【0063】
【0064】
ルチン、ヒペロシド、イソクエルシトリンおよびケルセチンについては、それぞれの標準物質(ルチン・3水和物、ヒペロシド、イソクエルシトリン、ケルセチン・2水和物)から得られた検量線を用いて、定量分析を実施した。各検量線は、各標準物質のメタノール溶液(標準原液)、10倍希釈溶液、100倍希釈溶液を用いて、上記HPLC分析によって作成した。なお、Q3SambおよびQ3MGは、標準物質を入手することができなかったため、Q3Sambの定量にはルチンの検量線を用い、Q3MGの定量にはイソクエルシトリンの検量線を用いた。なお、類似の構造を有する物質をモデル化合物として、定量分析する手法は一般的に広く用いられている。
【0065】
上記HPLC分析条件によるケルセチンおよび各ケルセチン配糖体の検出時間は、以下のとおりである。
Q3Samb :約4.1min
ルチン :約4.8min
ヒペロシド :約5.8min
イソクエルシトリン:約6.0min
Q3MG :約6.6min
ケルセチン :約16.2min
【0066】
タイタンビカスの8品種におけるつぼみ生重量100gあたりに含まれるケルセチン配糖体の含有量(mg/100g)を表2に示す。
【0067】
【0068】
表2に示すように、つぼみ生重量100gあたりの分析結果においては、エディブルフラワーとして食用実績のあるレイアは、ケルセチン配糖体の総量は2番目に多い結果となった。8品種の中で、最もつぼみに含まれるケルセチン配糖体の濃度が高い品種は、プレアデスであった。また、ヒペロシドは、品種間のバラツキが特に大きく、カシオペア、シルフィード、ウラノス、ネオンからは検出されなかったが、ピーチホワイトからは最も多く検出され、次いでプレアデスで多く検出された。
【0069】
ヒペロシドが検出された品種において、ヒペロシドとイソクエルシトリンの含有割合については、ピーチホワイトは約1:1であり、プレアデスは約1:2であった。これに対して、レイアは約1:8であり、アルテミスは約1:8であった。ピーチホワイトおよびプレアデスは、他の品種と比べて、イソクエルシトリンに対するヒペロシドの含有割合が高い結果となった。
【0070】
[2.3品種のタイタンビカス末の生理活性試験]
(a)タイタンビカス末の製造
原料には、3品種(レイア、ピーチホワイト、プレアデス)のつぼみを用いた。原料となるタイタンビカスのつぼみは、つぼみの付け根の部分を切り取り、ガクが付いた状態で収穫した。また、開花したタイタンビカスの花もガクが付いた状態で収穫した。収穫したつぼみと花は、速やかにガクを取り除いた上で冷凍保存した。その後、冷凍したつぼみと花を、以下の表3に示す加工手順で粉末化および殺菌した。なお、表3には、ピーチホワイト末について示すが、他のタイタンビカス末(レイア末、プレアデス末)も同様の手順で製造した。
【0071】
【0072】
粉末化および殺菌の結果、16.68kgのピーチホワイトのつぼみ(冷凍品)から、1385gのピーチホワイト末を製造した。得られたピーチホワイト末の水分量は5%台と非常に低く、さらに一般生菌数も食品としては十分に低く抑えられているため、常温(暗所が好ましい)での保管が可能である。
【0073】
(b)成分分析
0.2gのピーチホワイト末を15ml容遠沈管に量り取り、さらに抽出溶媒として1mlの50vol%メタノール(メタノールを超純水で2倍希釈したもの)を添加し、タイタンビカス末に含まれる成分を50vol%メタノールに溶出させた。抽出液は0.45μmのフィルター(フィルター素材:親水性混合セルロースエステル、直径25mm、孔径:0.45μm、株式会社島津ジーエルシー製)でろ過を行い、抽出物を得た。この抽出物をサンプルとして、上記のHPLC条件で成分分析を行なった。表4には、ピーチホワイト末の結果を示す。
【0074】
【0075】
表4に示すように、生つぼみと同様、ピーチホワイト末においても、ヒペロシドとイソクエルシトリンの含有量は約1:1で検出された。表4より、ピーチホワイト末は100gあたり、ケルセチン配糖体を合計で3000mg以上含有し、そのうち、ヒペロシドを800mg以上(具体的には1000mg以上)、イソクエルシトリンを800mg以上(具体的には1000mg以上)含有することが判明した。なお、レイア末、プレアデス末も、概ね生つぼみの場合と同様の結果が得られた。
【0076】
また、別途ケンフェロールの定量分析を行ったところ、ピーチホワイト末100gにおけるケンフェロールの含有量は0.62mg/100gであった。また、レイア末100gにおけるケンフェロールの含有量は0.22mg/100g、プレアデス末100gにおけるケンフェロールの含有量は2.59mg/100gであった。
【0077】
(c)DPPHラジカル消去活性
参考文献2(食品機能研究法、光琳、2000年、p.218-220)に基づいて評価した。抽出溶媒には50vol%エタノールを用いた。レイア末、ピーチホワイト末、プレアデス末のDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去活性を吸光光度法(可視)で測定した。結果を表5に示す。
【0078】
【0079】
表5に示すように、タイタンビカス末には、DPPHラジカルを消去する活性があることが判明した。また、レイア末、ピーチホワイト末、プレアデス末の順に、DPPHラジカル消去活性が強くなった。なお、TEとは、Trolox相当量(Trolox equivalent)を指し、1μmolのTroloxが示す活性を単位とした。
【0080】
上記の結果を受けて、ケルセチン配糖体の含有量とDPPHラジカル消去活性能の相関関係を解析した。ケルセチン配糖体として、ルチン、ヒペロシド、イソクエルシトリン、ケルセチンを対象として定量値を用いて解析を行った。なお、今回の解析に用いた定量値は、日本食品分析センターにて分析された結果(表6参照)を使用した。
【0081】
【0082】
3品種のタイタンビカス末におけるイソクエルシトリン含有量とDPPHラジカル消去活性能について相関関係を解析した結果、極めて高い相関関係が見られることが分かった(
図3参照)。一方で、イソクエルシトリン以外のケルセチン配糖体とDPPHラジカル消去活性能に明確な相関関係は見られなかった。また、近似式のy切片が0としてもR
2=0.996となったことから、タイタンビカス末におけるDPPHラジカル消去活性はイソクエルシトリンの濃度に依存している可能性が示唆された。
【0083】
(d)スーパーオキシド消去活性
続いてラジカル種として、生体内にも存在するスーパーオキシドラジカルを用いた。電子スピン共鳴(ESR)法によって、レイア末、ピーチホワイト末およびプレアデス末のスーパーオキシド消去活性を測定した。結果を表7に示す。なお、表中の単位は、J.M.McCord及びI.Fridovichが定義した単位[J.Biol.Chem.,224,6049(1969)]に相当する消去能として表示した。
【0084】
【0085】
表7に示すように、プレアデス末のスーパーオキシド消去活性が最も高く、次いでピーチホワイト末、レイア末の順となった。この順は、ケルセチン配糖体の含有量の順と同じであったため、スーパーオキシド消去活性においてもケルセチン配糖体との相関が示唆された。そこで、上記(c)と同様に、各種ケルセチン配糖体の含有量とスーパーオキシド消去活性の相関関係を解析した。
【0086】
3種類のタイタンビカス末におけるイソクエルシトリンの含有量とスーパーオキシド消去活性の相関関係を解析した結果、高い相関関係が見られた(
図4(a)参照)。また、ルチン、イソクエルシトリンおよびケルセチンの合計量とスーパーオキシド消去活性についても相関関係を解析した結果、高い相関関係が見られた(
図4(b)参照)。タイタンビカス末におけるスーパーオキシド消去活性の一部をイソクエルシトリンが担っており、ルチンやケルセチンも一定の効果があることが示唆された。
【0087】
(e)AGEs産生抑制活性
D-グルコースおよびウシ血清アルブミン(BSA)の糖化反応により産生するAGEs由来の蛍光強度を指標として、タイタンビカス末存在下での蛍光強度を測定することで、タイタンビカス末がAGEs産生に与える影響を検討した。
【0088】
タイタンビカス末に50vol%エタノールを加え、振とう機を用いて10分間振とうした後、10分間超音波処理した。その後、遠心分離(3000r/min、10分間)し、上清を分取した。得られた上清を50mg/mL試験液とした。
【0089】
1.5mL容マイクロチューブにBSA溶液100μL、D-グルコース溶液500μL、試験液20μLおよびリン酸緩衝液380μLを加えた後、60℃で48時間加温したものを反応溶液とした。試験液の代わりにリン酸緩衝液を加えたものを未処置対照、D-グルコース溶液の代わりにリン酸緩衝液を加えたものをブランクとして同様の試験を行なった。反応溶液20μLを96ウェルプレートに分取し、水200μLを加えて混合した。
【0090】
マイクロプレートリーダー(SpectraMax M2e,Molecular Devices,LLC.)を用い、AGEs由来の蛍光強度を測定した(励起波長370nm、蛍光波長440nm)。
【0091】
未処置対照の蛍光強度に対する各反応溶液の蛍光強度から、下記の式(1)、(2)によりAGEs産生抑制率を算出した。
AGEs産生率(%)=[(反応溶液の蛍光強度)/(未処置対照の蛍光強度)]×100・・・(1)
AGEs産生抑制率(%)=100-AGEs産生率・・・(2)
なお、上記式(1)中の各蛍光強度はブランクの蛍光強度を差し引いた値である。
【0092】
【0093】
表8に示すように、終濃度1mg/mLの各タイタンビカス末において、AGEsの産生をレイア末で27%、ピーチホワイト末で30%、プレアデス末で36%抑制できることが判明した。AGEs産生抑制率が30%を超える食品素材(スパイスなど)は少なく、これら3品種のタイタンビカス末における結果は、タイタンビカス末に一定の抗糖化作用を示すものであり、この結果にはケルセチン配糖体が関与していることが示唆された。
【0094】
前述の通り、タイタンビカス末にはAGEs産生抑制活性があることが示唆されたが、ケルセチン配糖体の含有量が多い方が、AGEs産生抑制率も高いことが予想された。そこで、ケルセチン配糖体の含有量とAGEs産生抑制率の相関関係を解析した。3品種のタイタンビカス末におけるイソクエルシトリンとAGEs産生抑制率について相関関係を解析した結果、相関関係が見られた(
図5(a)参照)。また、イソクエルシトリンとルチンの合計含有量とAGEs産生抑制率についても相関関係を解析した結果、高い相関関係が見られた(
図5(b)参照)。これらのことから、タイタンビカス末におけるAGEsの産生抑制の一部をイソクエルシトリンが担っており、ルチンも一定の効果があることが示唆された。
【0095】
[3.ピーチホワイト末の水への溶解性について]
ピーチホワイト末の水への溶解性を評価した。なお、比較対照として、各種ケルセチン配糖体の定量分析に使用したルチン、イソクエルシトリン、ヒペロシドの標準物質も同様の試験を実施した。
【0096】
ピーチホワイト末と各種ケルセチン配糖体標準物質をイオン交換水または50%メタノール溶液に混ぜた。0.45μmのフィルターで上記の溶液のろ過を行い、HPLCを用いて、ろ液における各種ケルセチン配糖体の定量分析を実施した。この場合、溶媒に溶解しなかったケルセチン配糖体は、0.45μmのフィルターによって除去されることになる。「イオン交換水におけるエリア面積」/「50%メタノール溶液におけるエリア面積」を算出し、水への溶解性を評価した。結果を表9に示す。
【0097】
【0098】
試験の結果、標準物質のルチン、イソクエルシトリン、ヒペロシドのイオン交換水への溶解性はいずれも低いことが分かった。一方で、ピーチホワイト末に含まれる各種ケルセチン配糖体は、標準物質のそれらと比較して、水に溶解しやすいことが分かった。ピーチホワイト末にはこれらのケルセチン配糖体以外にも様々な成分が含まれており、それらの成分がケルセチン配糖体の水への溶解性を高めていると推察される。精製度の高いケルセチン配糖体は水への溶解性が低いことから、ピーチホワイト末の方が生体利用性には有利であると考えられる。
【0099】
[4.ピーチホワイト末における抗不安試験]
(a)被験物質の投与
ピーチホワイト末を用いて、抗ストレス作用や抗不安作用を検証する方法として一般的に広く認知されている「マウスを用いた高架式十字迷路試験」によって、ピーチホワイトの抗不安作用を検証した。陽性対照として抗うつ薬である「ジアゼパム」投与群も設定した。
【0100】
4週齢のCrl:CD1(ICR)雄マウスを6日間以上、馴化飼育した。群分け日のマウス体重を基に、各群の平均体重が各々均等になるように、EXSUS(Version10.1.3、イーピーエス株式会社)を用いて、体重層別割付法で各10匹ずつの4群に群分けした。
【0101】
試験群は以下のとおりである。
1群:コントロール群
2群:ピーチホワイト末低用量群(イソクエルシトリンとヒペロシドの合計濃度2.5mg/kg)
3群:ピーチホワイト末高用量群(イソクエルシトリンとヒペロシドの合計濃度10mg/kg)
4群:ジアゼパム群(3mg/kg)
【0102】
被験物質には、ピーチホワイト末、ジアゼパム(陽性対照)を用いた。これら被験物質をマウスに経口投与する際は、0.5w/v%メチルセルロース400溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)を媒体として用いた。ピーチホワイト末の場合、イソクエルシトリンとヒペロシドの合計濃度として、0.25mg/mLもしくは1mg/mL(投与用量:2.5mg/kg、10mg/kg)になるように調製した。ジアゼパムの場合、0.3mg/mL(投与用量:3mg/kg)になるように調製した。
【0103】
1群については、高架式十字迷路試験を実施する24時間前、5時間前、1時間前の計3回、媒体をマウスに経口投与した。
2群および3群については、高架式十字迷路試験を実施する24時間前、5時間前、1時間前の計3回、ピーチホワイト末溶液を経口投与した。
4群については、高架式十字迷路試験を実施する24時間前、5時間前にそれぞれ媒体を経口投与し、1時間前にジアゼパム3mg/kg投与液を経口投与した。
【0104】
(b)高架式十字迷路試験
マウスを200Lux下で5時間以上馴化させた後(5時間前と1時間前の被験物質の投与は200Lux下で行った)、高架式十字迷路装置のClosed armにマウスを頭から入れ、5分間測定した。測定項目は、Closed arm進入回数、Open arm進入回数、Closed arm滞在時間(秒)、Open arm滞在時間(秒)およびLocomotor activity(Open arm進入回数+Closed arm進入回数)の5項目とした。arm進入判定は、四肢がarmに入った時とした。Closed armから真ん中のエリアに出て、また同じClosed armに戻った時は、進入回数を1とカウントすることにした。
【0105】
(c)データ解析
試験で得られた結果は、平均値±標準誤差(Mean±SE)で表記した。さらに、Closed arm進入回数、Open arm進入回数について、コントロール群とピーチホワイト末群との多群間比較では、Bartlett検定を用いて等分散であればDunnett検定を、不等分散であれば、Steel検定を用いて平均値の差を検定した。コントロール群とジアゼパム群との2群間比較では、F検定を行って等分散であればStudent t検定を、不等分散であればAspin Welch t検定を用いて平均値の差を検定した。また、Closed arm進入率、Open arm進入率について、コントロール群とピーチホワイト末群との多群間比較では、Steel検定を用いて、コントロール群とジアゼパム群との2群間比較では、Wilcoxon検定を用いて平均値の差を検定した。いずれも両側検定で実施して、有意水準5%とし、各統計解析にはSAS(Version9.4、SAS Institute Inc.)と連動したEXSUS(Version10.1.3、イーピーエス株式会社)を用いた。結果を表10に示す。
【0106】
【0107】
表10に示すように、コントロール群におけるOpen arm進入率平均値が22.6%であったのに対し、ピーチホワイト末高用量群におけるOpen arm進入率平均値は26.5%と、ピーチホワイト末高用量群の方が高い値を示した。この結果より、ピーチホワイト末(10mg/kg)の投与によって、マウスの不安が抑制傾向を示していることが示唆された。なお、今回の試験では、試験の24時間前、5時間前、1時間前の計3回、被験物質を投与したが、例えば10mg/kg、複数日間連続投与した試験を行うことで、より有意な差が得られると推察される。
【0108】
なお、本試験とは別系統のマウスにピーチホワイト末2000mg/kgを単回投与した急性毒性試験においては、死亡例などの異常は見られなかった。そのため、ピーチホワイト末は、非常に安全性の高い食品素材であるといえる。安全性の高い天然物が不安を抑制する傾向が見られたことは大変有意義である。
【0109】
[5.タイタンビカス末におけるアンジオテンシン変換酵素阻害試験]
この試験では、基質(Hip-His-Leu)からACEにより分解されるジペプチドをオルトフタルアルデヒド(以下、OPA)により蛍光化した後、反応物の蛍光強度を測定することでACE活性を求め、ピーチホワイト末またはプレアデス末がACE活性に与える影響を評価した。
【0110】
ピーチホワイト末またはプレアデス末に50vol%エタノールを加え、振とう機で10分間振とうした後、10分間超音波処理した。超音波処理後、遠心分離(3000r/min、10分間)し、上清を分取した。得られた上清を50mg/ml試験液原液とした。試験液原液をHEPES緩衝液で希釈し、表11に示した検体濃度の試験液を調製した。
【0111】
96ウェルマイクロプレートに上記で調製した試験液を25μl加えた後、ACE溶液を25μl加え、37℃で5分間静置した。試験液の代わりにHEPES緩衝液を加えたものを未処置対照、ACE溶液の代わりにリン酸緩衝液を加えたものをブランクとして同様に試験を行った。静置後、基質溶液を25μl加えて反応を停止し、OPA溶液を25μl加え、室温で20分間静置した。さらに、0.1mol/l塩酸を25μl加えて室温で10分間静置した。
【0112】
主な試薬などは以下の通りである。
HEPES緩衝液:塩化ナトリウム及びHEPES[Sigma-Aldrich]に水を加え、pH8.3に調整した後、Triton-Xを加え水で0.1mol/lとした溶液(0.3mol/l塩化ナトリウム、0.01%Triton-X含有)。
ACE溶液:ACE(ウサギ肺由来)[Sigma-Aldrich]をリン酸緩衝液で13mU/mlとした溶液。
基質溶液:Hip-His-Leu[株式会社ペプチド研究所]をHEPES緩衝液で8mmol/lとした溶液。
OPA溶液:OPA[富士フィルム和光純薬株式会社]をメタノールで1%とした溶液。
【0113】
マイクロプレートリーダー[SpectraMax M2e Molecular Devices,LLC.]を用い、反応物の蛍光強度を測定した(励起波長355nm、蛍光波長460nm)。
【0114】
未処置対照の蛍光強度に対する各試験液の蛍光強度から、次の式によりACE活性及び阻害率を算出した。なお、式中の各蛍光強度はブランクの蛍光強度を差し引いた値とした。
ACE活性(%)=(試料液の蛍光強度)/(未処置対照の蛍光強度)×100
ACE活性阻害率(%)=100-ACE活性(%)
【0115】
検体の終濃度は次の式により算出した。
終濃度(mg/ml)
=検体濃度(mg/ml)×Sa/(Sa+Ace+Sub+Naoh+Opa+Hcl)
=検体濃度(mg/ml)÷6
Sa :試験液分注量(25μl)
Ace :ACE溶液分注量(25μl)
Sub :基質溶液分注量(25μl)
Naoh:0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液分注量(25μl)
Opa :OPA溶液分注量(25μl)
Hcl :0.1mol/l塩酸分注量(25μl)
【0116】
また、ピーチホワイト末またはプレアデス末について、縦軸にACE活性阻害率、横軸に検体濃度を配したグラフより対数近似曲線を作成し、IC50(50%阻害濃度)を算出した。結果を表11に示す。
【0117】
【0118】
試験の結果、ピーチホワイト末におけるIC50値は0.163(終濃度0.163mg/mlで阻害率50%)、プレアデス末におけるIC50値は0.134(終濃度0.134mg/mlで阻害率50%)と高い数値を示した。参考文献3(日本食品科学工学会誌、第59巻、第7号、348-353頁(2012))には、80種類の野菜の粉末のACE活性阻害率が報告されているが、野菜などの天然物の粉末と比較しても、このピーチホワイト末やプレアデス末のACE阻害活性は非常に高いといえる。例えば、日々の食事の中で血圧のコントロールができれば、生活習慣病予防の観点からも非常に望ましいと考えられる。
【0119】
また、上記の結果より、プレアデス末はピーチホワイト末よりもACE阻害活性が高いことが分かった。上記表6に示すように、ピーチホワイト末とプレアデス末におけるケルセチン配糖体(4成分)の含有量は、2.800g/100gおよび2.820g/100gと、ほぼ同程度である。しかし、それぞれのACE阻害活性(IC50値)はプレアデス末の方が高いことから、ケルセチン配糖体の総量ではなく、特定のケルセチン配糖体の含有量とACE阻害活性に相関関係があると推察された。プレアデス末におけるACE阻害活性はピーチホワイト末の活性の約1.2倍であり、プレアデス末におけるイソクエルシトリンの含有量はピーチホワイト末の約1.3倍である。このことから、タイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物におけるACE阻害活性はイソクエルシトリンの含有量に依存していると推察される。
【0120】
[6.タイタンビカス末におけるプロアントシアニジンの含有量]
成人が一日に消費する酸素は約500リットルで、そのうち3~10%は体内で活性酸素に変換されると考えられている。ヒトの体内で発生する活性酸素やフリーラジカルは老化や各種生活習慣病の原因となる。一方で、一部の合成酸化防止剤に発がん性の疑いがあるとの報告がなされており、有効で安全性の高い天然抗酸化物質は有望である。ポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンは種々の食品、たとえばブドウ、イチゴ、リンゴなどの果実類、大麦などの麦類、黒豆、小豆などの豆類、およびそれらの加工食品に微量含まれている。プロアントシアニジンは特に水などの極性溶媒中で強力な抗酸化能を発揮し、たとえば代表的なプロアントシアニジンであるプロシアニジン二量体は親水性ペルオキシラジカルに対し、強い捕捉作用を示し、二量体では1分子あたり、8個の親水性ラジカルを捕捉できることが分かっている。この捕捉数は既知抗酸化物質の中で最大である。このようにプロアントシアニジンは強力な抗酸化能を有することが知られているが、タイタンビカスの花(つぼみを含む)にプロアントシアニジンが含まれているかどうかの報告は無い。
【0121】
バニリン-硫酸法を用いて、タイタンビカス末(レイア末、ピーチホワイト末、プレアデス末)に含まれるプロアントシアニジンの定量分析を行った。方法は以下の通りである。なお、総プロアントシアニジン含有量は(+)-カテキン相当量((+)-カテキン標準品、富士フイルム和光純薬株式会社)として算出した。
1:タイタンビカス末を2、3、4、6、8、10mg測りとり、それぞれ15ml遠沈管に入れ、1mlのメタノールを添加した。なお、(+)-カテキンはメタノールで調製した1mg/ml溶液をメタノールにて0.01mg/ml、0.02mg/ml、0.05mg/ml、0.10mg/ml、0.15mg/ml、0.20mg/ml、0.25mg/mlに希釈し、分析サンプルとした。
2:1%(w/v)バニリン/メタノールを2ml添加した。
3:25%(v/v)硫酸/メタノールを2ml添加した。
4:30℃で15分間、振とうした。
5:メタノールを1ml添加した。
6:遠心分離(600g×2分、室温)で上清を得た。
7:500nmにおける上清の吸光度を測定することにより定量した。
結果を表12に示す。
【0122】
【0123】
表12に示すように、タイタンビカス末にはプロアントシアニジンが含まれることが判明した。その含有量は、プレアデス末が3品種の中では最も多く、次いでレイア末、ピーチホワイト末の順となった。
【0124】
ここで、プロアントシアニジンを含むとされる赤米のプロアントシアニジン総量とDPPHラジカル消去活性能には非常に高い相関関係があるとの報告がある(r=0.948)(参考文献4;日本食品科学工学会誌、第58巻、第12号、576-582頁(2011))。一方で、タイタンビカス末におけるDPPHラジカル消去活性は、イソクエルシトリンの濃度と高い相関関係が見られている(表5および
図3参照)。また、タイタンビカス末におけるスーパーオキシド消去能には、ケルセチン配糖体以外の成分が関与している可能性がある。これらからすると、タイタンビカス末と赤米は、いずれもプロアントシアニジンを含むものの、ラジカル消去の作用機序が異なる可能性もある。
【0125】
また、プロアントシアニジンが腸内細菌叢を介して認知機能の低下を抑制するとの報告もある(参考文献5;化学と生物、Vol.60、No.3、137-143頁(2022))。上述したように、タイタンビカス末の高架式十字迷路試験において、マウスの不安様症状の改善作用が示されたが、タイタンビカス末に含まれるケルセチン配糖体だけでなく、プロアントシアニジンがマウスの脳に作用している可能性もある。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の抗不安剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、抗老化剤、AGEs産生抑制剤、ラジカル消去剤、サプリメントは、例えばヒペロシドとイソクエルシトリンを(1:3)~(2:1)の割合で含むタイタンビカス、具体的な品種としてタイタンピーチホワイトやタイタンプレアデスの花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有することにより各種生理作用を示すので、飲食品、サプリメント、医薬品、化粧品などの幅広い用途に有効活用できる。具体的には、各種剤は、抗不安や、血圧抑制、抗酸化などを訴求点とした食品素材や美容素材などとして活用できる。また、上記各種剤は、園芸用や観賞用などとしてやむを得ず出荷できずに廃棄されていたタイタンビカスの花やつぼみについて、新たな付加価値を持たせたアップサイクル商品といえ、SDGsの達成にも貢献できる。
【要約】
【課題】タイタンビカスの新たな用途を提供する。
【解決手段】本抗不安剤、本アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、ヒペロシドとイソクエルシトリンを(1:3)~(2:1)の割合で含むタイタンビカス、例えば、タイタンピーチホワイト(農林水産省品種登録第21813号)の花(つぼみを含む)またはその抽出物を含有し、タイタンビカスの花(つぼみを含む)またはその抽出物として、タイタンビカス末を含み、該タイタンビカス末に含まれるヒペロシドとイソクエルシトリンの合計量が1.0質量%以上である。
【選択図】
図1