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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】脱着式テーパービット
(51)【国際特許分類】
   E21B 10/62 20060101AFI20240909BHJP
   E21B 10/44 20060101ALN20240909BHJP
   E02D 7/22 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
E21B10/62
E21B10/44
E02D7/22
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024077145
(22)【出願日】2024-05-10
【審査請求日】2024-05-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518227164
【氏名又は名称】金属工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】弁理士法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 剛巳
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-061490(JP,U)
【文献】実開昭59-121090(JP,U)
【文献】特開昭60-250193(JP,A)
【文献】実開昭52-034535(JP,U)
【文献】実開昭63-081995(JP,U)
【文献】実開昭58-115592(JP,U)
【文献】特開2022-063934(JP,A)
【文献】特開2015-001112(JP,A)
【文献】特開2020-002554(JP,A)
【文献】特開2020-190100(JP,A)
【文献】実開平05-022685(JP,U)
【文献】米国特許第03999620(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
E02D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビット本体と、ホルダーとを備え、
前記ビット本体は、
本体基部と、
前記本体基部から延びた一対の脚部と、を備え、
前記ホルダーは、
ホルダー基部と、
前記ホルダー基部の一端に設けられた、上方向、下方向にぞれぞれ突出した第1、第2の凸部と、
前記ホルダー基部の前記第1、第2の凸部の配設側とは反対側の端に設けられた第3、第4の凸部と、
を備え、
前記本体基部には、厚さ方向上下に第1、第2の凹部がそれぞれ設けられており、
前記第1、第2の凹部は、前記本体基部の前記本体基部から前記脚部へと切り替わる境界近傍において、前記ビット本体内側、前記ビット本体の厚さ方向の上下において対向するように設けられており、
前記ビット本体への前記ホルダーの装着時には、前記ホルダーの前記第1、第2の凸部が前記本体基部の前記第1、第2の凹部にそれぞれ勘合され、前記ホルダーの前記第3、第4の凸部が前記ビット本体の前記一対の脚部の後面にそれぞれ当接し、滑落を防止する
脱着式テーパービット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング等に装着可能な、ビット本体内側に脱着可能な機構を有する脱着式テーパービットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱着式テーパービットは、ケーシングビット、オーガービットを問わず、ビットがホルダーの内側に装着され、掘削方向に対して垂直にボルトで装着される構造となっている。
【0003】
ここで、例えば特許文献1では、ケーシングパイプの先端に取り付けられるホルダーと、上記ホルダーに対して着脱可能なシャンク部と超硬刃等とより成るビット本体より成り、上記ビット本体のシャンク部をホルダーの装着溝に装着し、ビット本体のシャンク部に形成されているボルト通し穴とホルダーのボルト通し穴とを合わせた状態でボルトを装着して用いるケーシング用オーガカッタービットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平7-12474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたような従来の脱着式テーパービットは、ボルト等が欠損した場合には脱落しやすい構造となっていた。
【0006】
さらに、ビット交換の作業負担が過大であり、ビットの外側にホルダーが位置する構図であることから、掘削時に装着部へ相当な負荷がかかっていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ビット交換の作業負担を軽減し、掘削時の負荷が装着部にかかるのをかなり軽減すると共に、ホルダーの摩耗並びに欠損を防ぎ、ビット本体とホルダーに凹凸形状を加工することで、ボルト等の欠損時の安易な脱落を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る脱着式テーパービットは、ビット本体と、ホルダーとを備え、前記ビット本体は、本体基部と、前記本体基部から延びた一対の脚部と、を備え、前記ホルダーは、ホルダー基部と、前記ホルダー基部の一端に設けられた、上方向、下方向にぞれぞれ突出した第1、第2の凸部と、前記ホルダー基部の前記第1、第2の凸部の配設側とは反対側の端に設けられた第3、第4の凸部と、を備え、前記本体基部には、厚さ方向上下に第1、第2の凹部がそれぞれ設けられており、前記第1、第2の凹部は、前記本体基部の前記本体基部から前記脚部へと切り替わる境界近傍において、前記ビット本体内側、前記ビット本体の厚さ方向の上下において対向するように設けられており、前記ビット本体への前記ホルダーの装着時には、前記ホルダーの前記第1、第2の凸部が前記本体基部の前記第1、第2の凹部にそれぞれ勘合され、前記ホルダーの前記第3、第4の凸部が前記ビット本体の前記一対の脚部の後面にそれぞれ当接し、滑落を防止する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビット交換の作業負担を軽減し、掘削時の負荷が装着部にかかるのをかなり軽減すると共に、ホルダーの摩耗並びに欠損を防ぎ、ビット本体とホルダーに凹凸形状を加工することで、ボルト等の欠損時の安易な脱落を防止する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットの構成図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、同脱着式テーパービットの構成図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットのビット本体の構成図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、同ビット本体の構成図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットのホルダーの構成図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、同ホルダーの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットは、以下の特徴を有する。
【0013】
第1に、従来のテーパービットは溶接式であるのに対して、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットは脱着式となっている。
【0014】
第2に、従来のテーパービットは、ケーシングビット、オーガービットを問わず、ビット本体がホルダーの内側に装着される形状であったのに対して、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットは、ホルダーがビット本体の内側に装着される形状となっている。
【0015】
第3に、従来のテーパービットは、ケーシングビット、オーガービットを問わず、掘削方向に対して垂直に、ボルトでケーシングやヘッド等(以下、ケーシング等という)に装着される形状となっていたのに対して、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットは、ビット本体の幅方向、すなわち掘削方向に対して平行に、ボルト等でケーシング等に装着される形状となっている。
【0016】
第4に、従来のテーパービットは、ケーシングビット、オーガービットを問わず、ビット本体をホルダーに差込むだけであり、ボルトが欠損した場合にはケーシングから脱落しやすい構造となっていたのに対して、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットは、ビット本体側とホルダー側に凹凸形状を加工しているので、ボルト等が欠損した場合でもケーシング等から安易に脱落しない構造となっている。
【0017】
図1図2(a)、図2(b)には、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットの構成を示し説明する。より詳細には、図1には、同脱着式テーパービットの斜視図を示し、図2(a)には、同脱着式テーパービットの平面図を示し、図2(b)には、同脱着式テーパービットの側面図を示し、構成及び作用を説明する。なお、各部の構成を明確に示すために、図2(a)及び図2(b)でのみ硬質肉盛を図示している。
【0018】
さらに、図3図4(a)、図4(b)には、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットのビット本体の構成を示し説明する。より詳細には、図3には、同ビット本体の斜視図を示し、図4(a)には、同ビット本体の平面図を示し、図2(b)には、同ビット本体の側面図を示し、構成及び作用を説明する。なお、各部の構成を明確に示すために、図4(a)及び図4(b)でのみ硬質肉盛を図示している。
【0019】
そして、図5図6(a)、図6(b)には、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットのホルダーの構成を示し説明する。より詳細には、図5には、同ホルダーの斜視図を示し、図6(a)には、同ホルダーの平面図を示し、図6(b)には、同ホルダーの側面図を示し、構成及び作用を説明する。なお、各部の構成を明確に示すために、図6(a)及び図6(b)でのみ硬質肉盛を図示している。
【0020】
これらの図に示されるように、脱着式テーパービット1のビット本体2は、本体基部4と当該本体基部4から延びた2本の脚部5,6で構成されている。以下では、本体基部4側を、ビット本体2の先端とも称し、脚部5,6側を、ケーシング等への装着側又はビット本体2の後端とも称する。先端が向いている方向が掘削方向であり、当該掘削方向に垂直な方向が孔壁方向(杭芯方向ともいう)となる(ビット本体2の厚み方向とも称する)。これら掘削方向と孔壁方向(杭芯方向ともいう)に垂直な方向は、ビット本体2の幅方向と称する。
【0021】
ここで、「杭芯」とは、基礎工事に使用する既成杭、場所打ち杭、鋼管杭等のあらゆる杭工事における「杭の中心」であり、種々の杭の引抜き工事、障害物撤去工事等に使用するケーシング及び掘削翼の中心部を意味する。一方、「孔壁」とは、基礎工事に使用する既成杭、場所打ち杭、鋼管杭等のあらゆる杭工事における杭の外周側及び、種々の杭の引抜き工事、障害物撤去工事に使用するケーシング及び掘削翼の外周側、すなわち、地盤もしくは障害物を掘削して構築した地中孔の孔壁を意味する。
【0022】
図3図4(a)、図4(b)などに示されるように、本体基部4は、掘削方向、即ちビット本体2の先端側に向けて、上部の頂部が突出した所謂山型形状となっている。この本体基部4の先端、山型形状部分には、超硬チップ7が配設されている。すなわち、本体基部4の先端の山形形状の頂部は、超硬チップ7の先端頂部となっている。具体的には、超硬チップ7は、本体基部4の先端の上部の第1平面部4bから掘削方向に向けて突出するように配設された山形形状の傾斜部7aと、本体基部4の先端の上部の第2平面部4cから掘削方向に向けて突出するように配設された山形形状の傾斜部7bとを備えている。
【0023】
超硬チップ7の傾斜部7a、7bが連続する頂部は、本体基部4の上下方向において掘削用のエッジを形成している。このほか、本体基部4の先端において、超硬チップ7a、7bが配設された位置の下方平面8a、8bは、掘削土(もしくは切粉)の滞留がより軽減されるだけでなく、掘削土(もしくは切粉)の流れが上方に向かうように制御することで、掘削効率を高めるのに寄与している。また、本体基部4の脚部5、6へと繋がる部分の近傍であって、ホルダー3の先端部3aの図1の装着関係でいうところの厚み方向の上下内側には、突出部9a,9bが勘合される凹部9a、9bが形成されている。
【0024】
脚部5、6は、所定間隔を隔てて平行に、且つ側面から見た様子がコの字状となるように、本体基部4から後端側に向けて延びている。この脚部5、6には、ケーシング等にビット本体2を、後述するホルダー3を介してボルト等で装着するための、孔部が設けられている。より具体的には、脚部5には、脚部6と対向する平面から所定の深さで閉じた孔部5a、5b、5cが所定間隔で掘削方向に並ぶように形成されている。脚部6には、脚部5と対向する平面から貫通するように孔部6a、6b、6cが所定間隔で掘削方向に並ぶように形成されている。
【0025】
ここで、各部の材質について言及すると、本体基部4、脚部5、6の母材は、SCM440(クロモリ鋼)等を採用することができる。そして、超硬チップ7としては、JIS使用分類記号でいうE3(材質名MG30)、E4(材質名MG40)、E5(材質名MG50)、E6(材質名MG60)等やCIS規格のG4(CIS材種記号VC-40)、G5(CIS材種記号VC-50)等を採用できる。但し、これには限定されない。このほか、本体基部4には、硬質肉盛10が配設されている。
【0026】
一方、図5図6(a)、図6(b)などに示されるように、ホルダー3は、ホルダー基部3bの掘削方向の前後の端に、凸部3a、3cが設けられた構成となっている。図1の装着関係でいうところの、厚み方向から見た側面の形状は略H形状となっている。掘削方向前方の凸部3aは、厚み方向の上下において突出した凸部3a-1、3a-2を備えている。掘削方向後方の凸部3cは、厚み方向の上下において突出した凸部3c-1、3c-2を備えている。そして、ホルダー基部3bには、図1の装着関係でいうところの厚み方向に貫通した孔部3b-1、3b-2、3b-3が、所定間隔で形成されている。この孔部3b―1、3b-2、3b-3の開口の中心軸が、ビット本体2の脚部5の孔部5a、5b、5cの中心軸と、脚部6の孔部6a、6b、6cの中心軸と一致するような位置関係で、ホルダー3は、ビット本体2に装着され、一体となり、脱着式テーパービットを構成するようになっている。尚、ホルダー3は、その凸部3a及びホルダー基部3bが、ビット本体2の脚部5,6の間にはみ出すことなく収容されると共に、その凸部3cがビット本体2の脚部5,6の後面に当接して滑落防止の機能を高めている。また、ビット本体2のテーパー角度に合わせてテーパー部を加工することにより、掘削抵抗をより低減する効果も奏する。
【0027】
このような構成において、ビット本体2へのホルダー3の装着に際しては、ビット本体2の凹部9a、9bに、ホルダー3の凸部3a-1、3a-2が勘合され、ホルダー3の掘削方向後端の凸部3c-1、3c-2が、ビット本体2の脚部5,6の後面に当接して位置固定されることとなる。
【0028】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、ビット本体2と、ホルダー3とを備え、ビット本体2は、本体本体基部4と、基部から延びた一対の脚部5,6とを備え、本体本体基部4には、厚さ方向上下に一対の凹部9a,9bが設けられており、ホルダー3は、ホルダー基部3bと、ホルダー基部に設けられた一対の凸部3a-1,3a-2とを備え、ビット本体へのホルダーの装着時には、ホルダーの一対の凸部がビット本体の一対凹部にそれぞれ勘合される脱着式テーパービットが提供される。尚、ホルダー3は、ビットの滑落防止と掘削抵抗軽減のために設けられた端部に相当する凸部3c以外の部分(3a、3b)が、ビット本体2に内包されていてもよい。
【0029】
したがって、本発明の実施形態に係る脱着式テーパービットでは、ビット交換時に溶接式で掛かる手間(溶接付け、ガス切断)が、ホルダー装着時のみしか掛からないため、時間や材料費(溶接棒、酸素、アセチレン等)のコスト軽減を図ることができる。
【0030】
さらに、ビット本体の内側にホルダーが装着されることにより、ホルダーの損耗を防ぐと共に、ボルト等止めでの安易な脱着が可能になる。
【0031】
また、掘削方向に対して平行にボルト等止めすることにより、掘削時に掛かるボルト等への負荷を相当数軽減できる。なお、軽減の度合については、掘削機、掘削方法、掘削対象により異なる。
【0032】
そして、ビット本体側とホルダー側に凹凸形状があることにより、万が一、ボルト等が欠損した場合でも、安易に脱落することが無く、施工上の安全と施工箇所に異物を残置しない効果が高まる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【0034】
例えば、ビット本体2の刃先形状は任意で変更可能である。ビット本体とホルダーの全ての寸法は任意に設計可能である。ビット本体とホルダーの凹凸形状は任意に変更可能である。そして、接合時のボルト等の形状と使用数は任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1…脱着式テーパービット、2…ビット本体、3…ホルダー、3a…先端部、3a-1,3a-2…凸部、3b…本体基部、3b-1,3b-2,3b-3…孔部、3c…後端部、3c-1,3c-2…凸部、4…基部、4a…側面部、4b…第1平面部,4c…第2平面部,4d…第3平面部、5…脚部、5a,5b,5c…孔部、6…脚部、6a,6b,6c…孔部、7…超硬ビット、8a,8b…下方平面、9a,9b…凹部、10…硬質肉盛。
【要約】
【課題】ビット交換の作業負担を軽減し、掘削時の負荷が装着部にかかるのをかなり軽減すると共に、ホルダーの摩耗並びに欠損を防ぎ、ビット側とホルダー側に凹凸形状を加工することでボルト等欠損時の安易な脱落を防止する。
【解決手段】本発明は、ビット本体2と、ホルダー3とを備え、ビット本体2は、本体本体基部4と、基部から延びた一対の脚部5,6とを備え、本体本体基部4には、厚さ方向上下に一対の凹部9a,9bが設けられており、ホルダー3は、ホルダー基部3bと、ホルダー基部に設けられた一対の凸部3a-1,3a-2とを備え、ビット本体へのホルダーの装着時には、ホルダーの一対の凸部がビット本体の一対凹部にそれぞれ勘合される脱着式テーパービットである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6