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特許7551213ガス発生量が低減された犠牲正極材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】ガス発生量が低減された犠牲正極材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240909BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240909BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240909BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240909BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240909BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240909BHJP
   C01G 51/00 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/48
H01M4/131
C01G51/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022581624
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2022002417
(87)【国際公開番号】W WO2022182068
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0024251
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0016374
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】テ・グ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チ・ホ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヘ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウク・ホ
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-088268(JP,A)
【文献】特表2014-513409(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0059115(KR,A)
【文献】特表2022-509032(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115052(WO,A1)
【文献】特開平04-332480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
C01G 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化リチウム(LiO)および酸化コバルト(CoO)の原料混合物を焼成して、下記化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を製造する段階を含み、
前記酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50)は、50μm以下であり、最小粒度(Dmin)は、2μm以上であり、
製造される犠牲正極材の電気伝導度は、1×10-4S/cm以上であり、
[化学式1]
LiCo(1-y)4-z
前記化学式1中、
Mは、Ti、Al、Zn、Zr、MnおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
Aは、酸素置換型ハロゲンであり、
x、yおよびzは、5≦x≦7、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.001である、犠牲正極材の製造方法。
【請求項2】
前記電気伝導度は、1×10-3S/cm~9×10-3S/cmである、請求項1に記載の犠牲正極材の製造方法。
【請求項3】
前記焼成は、500~800℃の温度で行われる、請求項1に記載の犠牲正極材の製造方法。
【請求項4】
前記酸化リチウム(LiO)および酸化コバルト(CoO)の原料混合物は、酸化リチウム(LiO)および酸化コバルト(CoO)が2~4:1のモル比で含む、請求項1に記載の犠牲正極材の製造方法。
【請求項5】
前記酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50)は、15μm~35μmである、請求項1に記載の犠牲正極材の製造方法。
【請求項6】
前記酸化リチウム(LiO)は、単峰型分布の粒度分布を有し、粒子全体の80~90%が10μm~45μmの粒度範囲に存在し、粒子全体の65~75%が15μm~35μmの粒度範囲に存在する、請求項1に記載の犠牲正極材の製造方法。
【請求項7】
犠牲正極材は、下記式1を満たし、
[式1]
gas=-1.07×DLi2O+A
前記式1中、
gasは、犠牲正極材を含む電極組立体が発生させるガス量(単位:mL/g)を示し、
Li2Oは、酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50、単位:μm)を示し、
Aは、定数であり、128≦A≦132である、請求項1に記載の犠牲正極材の製造方法。
【請求項8】
正極集電体と、
前記正極集電体上に正極活物質、導電材、有機バインダー高分子および犠牲正極材を含有する正極合材層と、を含み、
前記犠牲正極材は、下記化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を含み、1×10-4S/cm以上の電気伝導度を有し、
[化学式1]
LiCo(1-y)4-z
前記化学式1中、
Mは、Ti、Al、Zn、Zr、MnおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
Aは、酸素置換型ハロゲンであり、
x、yおよびzは、5≦x≦7、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.001である、正極。
【請求項9】
前記正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)およびジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる2種以上の元素を含むリチウム複合遷移金属酸化物である、請求項に記載の正極。
【請求項10】
前記犠牲正極材の含有量は、正極活物質100重量部に対して0.001~5.0重量部である、請求項に記載の正極。
【請求項11】
請求項に記載の正極を含む電極組立体。
【請求項12】
請求項11に記載の電極組立体を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム前駆体の粒度を調節して、犠牲正極材の電気伝導度を特定範囲に制御することによって、充放電時にガス発生量が低減された犠牲正極材を製造する方法およびこれによって製造される犠牲正極材に関する。
【0002】
本出願は、2021年02月23日付けの韓国特許出願第10-2021-0024251号および2022年02月08日付けの韓国特許出願第10-2022-0016374号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
最近になって、電極材料の高容量化がさらに要求されるにつれて、不可逆添加剤に対してもより高い不可逆容量を有することが要求されている。しかしながら、このような高い不可逆容量を有する正極添加剤の開発に限界があった。
【0004】
一方、LiCoOのような従来の不可逆添加剤は、一般的にコバルト酸化物などを、過量のリチウム酸化物と反応させて製造される。この際、反応に参加しない未反応リチウム酸化物(LiO)などの副産物が、最終製造される不可逆添加剤に残留することになるが、これは、充放電過程で酸化を起こして、電池の内部で酸素気体を発生させることがある。このように発生した酸素気体は、体積膨張などを誘発して、電池性能の低下を招く主な要因の一つとして作用しうる。
【0005】
したがって、リチウム酸化物などの副産物の残留量が小さくて、電池の充放電過程で発生する酸素の量が少ないながらも、より高い不可逆容量を有する正極添加剤の開発が継続的に要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0012839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、電池の充放電過程で発生する酸素の量が少ないながらも、より高い不可逆容量を有する正極添加剤およびこれを含む正極とリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した問題を解決するために、本発明は、一実施形態において、
酸化リチウム(LiO)および酸化コバルト(CoO)の原料混合物を焼成して、下記化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を製造する段階を含み、
前記酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50)は、50μm以下であり、
製造される犠牲正極材の電気伝導度は、1×10-4S/cm以上である犠牲正極材の製造方法を提供する:
【0009】
[化学式1]
LiCo(1-y)4-z
【0010】
前記化学式1中、
Mは、Ti、Al、Zn、Zr、MnおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
Aは、酸素置換型ハロゲンであり、
x、yおよびzは、5≦x≦7、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.001である。
【0011】
ここで、前記電気伝導度は、1×10-3S/cm~9×10-3S/cmであってもよい。
【0012】
また、前記焼成時の温度は、500~800℃であってもよい。
【0013】
また、前記酸化リチウム(LiO)および酸化コバルト(CoO)の原料混合物は、酸化リチウム(LiO)および酸化コバルト(CoO)が2~4:1のモル比で混ざり合ったものであってもよい。
【0014】
また、前記酸化リチウム(LiO)は、平均粒度(D50)が15μm~35μmであり、最小粒度(Dmin)が2μm以上であってもよい。
【0015】
これと共に、前記酸化リチウム(LiO)は、単峰型分布の粒度分布を有し;粒子全体の80~90%が10μm~45μmの粒度範囲に存在し、粒子全体の65~75%が15μm~35μmの粒度範囲に存在していてもよい。
【0016】
また、前記製造方法によって製造された犠牲正極材は、下記式1を満たすことができる:
【0017】
[式1]
gas=-1.07×DLi2O+A
【0018】
前記式1中、
gasは、犠牲正極材を含む正極が発生させるガス量(単位:mL/g)を示し、
Li2Oは、酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50、単位:μm)を示し、および
Aは、定数であり、128≦A≦132である。
【0019】
また、本発明は、一実施形態において、
正極集電体と、
前記正極集電体上に正極活物質、導電材、有機バインダー高分子および犠牲正極材を含有する正極合材層と、を含み、
前記犠牲正極材は、下記化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を含み、1×10-4S/cm以上の電気伝導度を有する正極を提供する:
【0020】
[化学式1]
LiCo(1-y)4-z
【0021】
前記化学式1中、
Mは、Ti、Al、Zn、Zr、MnおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
Aは、酸素置換型ハロゲンであり、
x、yおよびzは、5≦x≦7、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.001である。
【0022】
ここで、前記正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)およびジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる2種以上の元素を含むリチウム複合遷移金属酸化物であってもよい。
【0023】
また、前記犠牲正極材の含有量は、正極活物質100重量部に対して0.001~5.0重量部であってもよい。
【0024】
また、本発明は、一実施形態において、前記正極を含む電極組立体を提供する。
【0025】
また、本発明は、一実施形態において、前記電極組立体を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明による犠牲正極材の製造方法は、特定のサイズを満たすリチウム前駆体を使用して犠牲正極材の電気伝導度を特定範囲に調節することによって、電池充電時に正極で発生するガス、特に酸素(O)ガスの発生を低減させることができるので、これを含む電池の安定性と寿命を向上させる効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】犠牲正極材の製造時に使用される酸化リチウム(LiO)の平均粒度別45℃での充放電回数による正極のガス発生量を示すグラフである。
図2】犠牲正極材の製造時に使用される酸化リチウム(LiO)の平均粒度別60℃での貯蔵時間(単位:週)による正極のガス発生量を示すグラフである。
図3】犠牲正極材の製造時に使用される酸化リチウム(LiO)の平均粒度による正極のガス発生量を示すグラフである。
図4】犠牲正極材の製造時に使用される酸化リチウム(LiO)の平均粒度による犠牲正極材の初期充放電曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を詳細な説明に詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0029】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0030】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部だけでなく、下部に配置される場合も含むことができる。
【0031】
また、本発明において、「D50」は、全体の体積を100%として粒度分布の累積曲線を求めるとき、この累積曲線で体積百分率50%に達する点の粒度であり、粒度が小さい側から累積して体積が50%になる所での粒度を意味する。前記平均粒度(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができ、前記レーザー回折法は、一般的に、サブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒度の測定が可能であり、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0032】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0033】
犠牲正極材の製造方法
本発明は、一実施形態において、酸化リチウム(LiO)および酸化コバルト(CoO)の原料混合物を焼成して、下記化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を製造する段階を含む犠牲正極材の製造方法を提供する:
【0034】
[化学式1]
LiCo(1-y)4-z
【0035】
前記化学式1中、
Mは、Ti、Al、Zn、Zr、MnおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
Aは、酸素置換型ハロゲンであり、
x、yおよびzは、5≦x≦7、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.001である。
【0036】
本発明による犠牲正極材の製造方法は、化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を犠牲正極材として製造するためのものであり、前記化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物は、逆蛍石型構造(anti‐fluorite structure)を有するLiCoO4-z(ただし、Aは、FまたはClであり、5.4≦x≦6.8および0≦z≦0.0005)を含んでもよく、場合によっては、前記LiCoO4-zのコバルト(Co)位置にTi、Al、Zr、MnおよびNiのうちいずれか一つ以上がドープされたものを含んでもよい。具体的に、前記リチウムコバルト金属酸化物は、LiCoO、LiCo(1-y)Ti、LiCo(1-y)Al、LiCo(1-y)Zn、LiCo(1-y)Zr、LiCo(1-y)Mn、LiCo(1-y)Ni(ただし、0≦y≦0.4)およびこれらの混合物からなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0037】
このようなリチウムコバルト金属酸化物を含む犠牲正極材は、2~4:1のモル比、例えば2.5~3.5:1、または、2.95~3.1:1のモル比で混ざり合った酸化リチウム(LiO)および酸化コバルト(CoO)の原料混合物を焼成することによって製造することができ、前記原料混合物にTi、Al、Zr、MnおよびNiの酸化物を1種以上添加する場合、Ti、Al、Zr、MnおよびNiが1種以上ドープされた形態のリチウムコバルト金属酸化物を製造することができる。
【0038】
この際、前記焼成は、少量の酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気、例えば、0.01~0.1%;0.02~0.09%;または0.05~0.08%の分圧で酸素ガスを含有するアルゴン(Ar)ガスや窒素(N)ガス雰囲気下で行われ得る。
【0039】
また、前記焼成を行うときの温度は、混ざり合った金属酸化物が化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物に変形できる範囲であれば、特に限定されずに適用可能である。具体的に、前記焼成を行うときの温度は、500~800℃であってもよく、より具体的には、500~700℃;600~800℃;600~750℃;650~800℃;630~770℃;または660~740℃であってもよい。
【0040】
一例として、前記焼成は、0.04~0.07%の分圧で酸素ガスを含有するアルゴン(Ar)ガス雰囲気下で、670~730℃で2~20時間の間行われ得、この場合、製造される犠牲正極材内で化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物の分率を高めることができ、これによって電池の充放電時に発生するガス量を低減させることができる。
【0041】
また、本発明による犠牲正極材の製造方法は、その形態が特に限定されるものではないが、サイズが特定範囲に調節された酸化リチウム(LiO)を原料物質として使用することができる。具体的に、前記犠牲正極材の製造方法は、平均粒度(D50)が50μm以下である酸化リチウム(LiO)が使用でき、より具体的には、平均粒度(D50)が10μm~50μm;10μm~40μm;10μm~30μm;10μm~20μm;20μm~50μm;25μm~50μm;15μm~40μm;15μm~35μm;15μm~25μm;20μm~40μm;25μm~35μm;または15μm~20μmである酸化リチウム(LiO)が使用できる。
【0042】
ここで、前記酸化リチウム(LiO)の最小粒度(Dmin)は、2μm以上であってもよく、より具体的には、2.5μm以上;3μm以上;5μm以上;2μm~25μm;2μm~20μm;2μm~10μm;2μm~7μm;2μm~4.5μm;4μm~10μm;15μm~25μm;または18μm~22μmであってもよい。
【0043】
また、前記酸化リチウム(LiO)は、単峰型分布の粒度分布を有していてもよく、前記単峰型分布を有する酸化リチウム(LiO)は、粒子全体の80~90%が10μm~45μmの粒度範囲に存在し、粒子全体の65~75%が15μm~35μmの粒度範囲に存在していてもよい。
【0044】
一例として、前記酸化リチウム(LiO)は、単峰型分布の粒度分布を有し、平均粒度(D50)および最小粒度(Dmin)がそれぞれ25μm~30μmおよび4μm~6μmであり、粒子全体の80~90%が12μm~40μmの粒度範囲に存在し、粒子全体の65~75%が20μm~35μmの粒度範囲に存在していてもよい。
【0045】
本発明による犠牲正極材の製造方法は、原料物質である酸化リチウム(LiO)の粒度を上記のように制御することによって、小さい粒度の酸化リチウムが容易に浮遊し、製造工程時の作業性が落ち、大きい粒度を有する酸化リチウムの反応性が低下して、犠牲正極材の収率が低下するのを防止することができる。それだけでなく、従来、化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を含む犠牲正極材は、焼成工程により逆蛍石型構造(anti‐fluorite structure)を有するようになるが、このような犠牲正極材は、初期充放電以後にも高温条件の充放電で酸素(O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、水素(H)などを含有するガスを発生させる問題がある。しかしながら、本発明のように上述した範囲に粒度が制御された酸化リチウム(LiO)を使用する場合、製造される犠牲正極材の電気伝導度が特定範囲を満たすように制御でき、これによって前記犠牲正極材を含む電池の充放電時に発生する酸素ガスの量を低減することができる。
【0046】
一例として、本発明によって製造された犠牲正極材の粉体電気伝導度は、1×10-4S/cm以上であってもよく、具体的に上限値は、9×10-3S/cm以下、8×10-3S/cm以下、7×10-3S/cm以下または6×10-3S/cm以下であってもよく、下限値は、5×10-4S/cm以上、8×10-4S/cm以上、1×10-3S/cm以上または2×10-3S/cm以上であってもよい。より具体的に、前記犠牲正極材の粉体電気伝導度は、1×10-3S/cm~9×10-3S/cm;2×10-3S/cm~9×10-3S/cm;4×10-3S/cm~8.5×10-3S/cm;4×10-3S/cm~6.5×10-3S/cm;または5×10-3S/cm~8.2×10-3S/cmであってもよい。
【0047】
他の一例として、本発明によって製造された犠牲正極材は、電池の初期放電時に発生するガスの量が顕著に低減されて、下記式1を満たすことができる:
【0048】
[式1]
gas=-1.07×DLi2O+A
【0049】
前記式1中、
gasは、犠牲正極材を含む正極が発生させるガス量(単位:mL/g)を示し、
Li2Oは、酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50、単位:μm)を示し、および
Aは、定数であり、128≦A≦132である。
【0050】
前記式1は、本発明によって製造された犠牲正極材を用いて製造される電池の初期放電時、正極で発生するガス量と犠牲正極材の製造時に使用される酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50)の相関関係を示すものであり、本発明によって製造される犠牲正極材は、平均粒度(D50)が50μm以下である酸化リチウム(LiO)を使用して製造され、これを用いて製造された正極は、初期放電時に70mL/g以下、具体的には、70mL/g~130mL/gのガスを発生させるので、前記式1を満たすことができる。
【0051】
本発明による犠牲正極材の製造方法は、特定範囲の平均粒度(D50)を満たす酸化リチウムを使用して犠牲正極材の電気伝導度を特定範囲に制御することによって、電池充電時に正極で発生するガス、特に酸素(O)ガスの発生を顕著に低減させることができるので、これを含む電池の安定性と寿命を向上させる効果に優れているという利点がある。
【0052】
正極
また、本発明は、一実施形態において、
正極集電体と、
前記正極集電体上に正極活物質、導電材、有機バインダー高分子および犠牲正極材を含有する正極合材層と、を含み、
前記犠牲正極材は、下記化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を含み、1×10-4S/cm以上の電気伝導度を有する正極を提供する:
【0053】
[化学式1]
LiCo(1-y)4-z
【0054】
前記化学式1中、
Mは、Ti、Mg、Al、Zn、Zr、MnおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
Aは、酸素置換型ハロゲンであり、
x、yおよびzは、5≦x≦7、0≦y≦0.4、および0≦z≦0.001である。
【0055】
本発明による正極は、正極集電体上に正極合材層が形成された構造を有し、かつ、前記正極合材層は、正極活物質;導電材;および有機バインダー高分子とともに、本発明の製造方法によって製造され、化学式1で示すリチウムコバルト金属酸化物を含有する犠牲正極材を含み、活性化以後に電池の充放電時および/または高温貯蔵時に発生するガス、特に酸素(O)ガスを低減させる効果に優れている。
【0056】
一例として、前記正極は、活性化以後に電池を50回充放電(45℃、4.5C/0.3C条件)する場合、ガス発生量が15mL/g以下であってもよく、具体的には、13mL/g以下、10mL/g以下または5mL/g以下であってもよい。
【0057】
他の一例として、前記正極は、活性化以後に60℃で4週間貯蔵する場合、ガス発生量が5mL/g以下であってもよく、具体的には、3mL/g以下、2mL/g以下または1.8mL/g以下であってもよい。
【0058】
ここで、前記正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)およびジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる2種以上の元素を含むリチウム複合遷移金属酸化物であってもよい。例えば、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1種以上の遷移金属で置換された層状化合物;化学式Li1+xMn2-x(ここで、xは、0~0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;LiCuOなどのリチウム銅酸化物;LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNiMn2-xで表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどが挙げられる。
【0059】
また、前記犠牲正極材は、上述した本発明による犠牲正極材の製造方法によって製造されたものであり、特定範囲の平均粒度(D50)を満たす酸化リチウムを使用して犠牲正極材の電気伝導度を特定範囲に制御したものであってもよく、これによってこれを含む正極は、活性化時に発生するガス、特に酸素(O)ガスの量が顕著に少ない。
【0060】
具体的に、前記犠牲正極材の粉体電気伝導度は、1×10-4S/cm以上であってもよく、具体的に上限値は、9×10-3S/cm以下、8×10-3S/cm以下、7×10-3S/cm以下または6×10-3S/cm以下であってもよく、下限値は、5×10-4S/cm以上、8×10-4S/cm以上、1×10-3S/cm以上または2×10-3S/cm以上であってもよい。より具体的に、前記犠牲正極材の粉体電気伝導度は、1×10-3S/cm~9×10-3S/cm;2×10-3S/cm~9×10-3S/cm;4×10-3S/cm~8.5×10-3S/cm;4×10-3S/cm~6.5×10-3S/cm;または5×10-3S/cm~8.2×10-3S/cmであってもよい。
【0061】
また、前記犠牲正極材は、正極活物質100重量部に対して0.001~5.0重量部で含んでもよい。より具体的に、前記犠牲正極材は、正極活物質100重量部に対して、0.001~4.0重量部;0.001~3.0重量部;0.001~2.0重量部;0.001~1.0重量部;0.01~2.0重量部;0.05~2.0重量部;0.1~2.0重量部;または0.1~1.5重量部で含んでもよい。
【0062】
また、前記導電材は、正極活物質100重量部に対して1~20重量部で添加されてもよく、具体的には、正極活物質100重量部に対して1~10重量部;1~5重量部;3~8重量部;または2~5重量部で添加されてもよい。
【0063】
また、このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できる。
【0064】
また、前記有機バインダー高分子は、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であり、正極活物質100重量部に対して1~20重量%で添加されてもよく、具体的には、正極活物質100重量部に対して1~10重量部;1~5重量部;3~8重量部;または2~5重量部で添加されてもよい。
【0065】
また、このような有機バインダー高分子の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエーテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン‐ブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0066】
これと共に、前記正極は、正極活物質、導電材および有機バインダー高分子以外に、正極の膨張を抑制させるための充填材をさらに含んでもよく、このような充填材としては、当該電池に化学的変化を誘発することなく、繊維状材料であれば、特に限定されるものではない。具体的に、前記充填材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体や;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用できる。
【0067】
また、前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などが使用でき、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用してもよい。また、前記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、前記正極集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0068】
電極組立体
また、本発明は、一実施形態において、上述した正極を含む電極組立体を提供する。
【0069】
本発明による電極組立体は、上述した正極、負極および前記正極と負極の間に介在された分離膜を含む構造を有していてもよく、場合によっては、前記分離膜が排除されることもできる。
【0070】
ここで、前記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして製造され、必要に応じて正極と同じ導電材、有機バインダー高分子、充填材などを選択的にさらに含んでもよい。
【0071】
また、前記負極活物質は、例えば、天然黒鉛のように完全な層状結晶構造を有するグラファイト、低結晶性層状結晶構造(graphene structure;炭素の6角形ハニカム形状平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性部分と混ざり合っているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭などの炭素および黒鉛材料や;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’、Al、B、P、Si、周期律表の第1族、第2族、第3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、BiおよびBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li‐Co‐Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などが使用できる。
【0072】
天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できる。
【0073】
一例として、前記負極活物質は、炭素および黒鉛材料80~95重量%とSiO 5~20重量%を混合したものであってもよく、前記炭素および黒鉛材料は、黒鉛および/またはアセチレンブラックとカーボンナノチューブを1:0.05~0.5重量比で混合したものであってもよい。
【0074】
また、前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などが使用でき、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用してもよい。また、前記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、前記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0075】
また、前記分離膜は、正極と負極の間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。分離膜は、当業界において通常使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的には、耐化学性および疎水性のポリプロピレン;ガラス繊維;またはポリエチレンなどからなるシートや不織布などが使用でき、場合によっては、前記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によりコートされた複合分離膜を使用してもよい。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。また、前記分離膜の気孔直径は、平均0.01~10μmであり、厚さは、平均5~300μmであってもよい。
【0076】
一方、前記電極組立体は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収納されるか、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型電池に収納されてもよい。
【0077】
一例として、前記電極組立体は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒形電池またはパウチ型電池に収納された形態を有していてもよい。
【0078】
リチウム二次電池
また、本発明は、一実施形態において、前記で言及された電極組立体を含むリチウム二次電池を提供する。
【0079】
本発明によるリチウム二次電池は、前記電極組立体にリチウム塩含有電解液が含浸されている構造を有していてもよい。
【0080】
この際、前記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなってもよく、前記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用できる。
【0081】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ‐ブチロラクトン、1,2‐ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0082】
また、前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合剤などが使用できる。
【0083】
また、前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNi、LiN‐LiI‐LiOH、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiPO‐LiS‐SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0084】
これと共に、リチウム塩は、非水系電解質に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4‐フェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用できる。
【0085】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭素ガスをさらに含んでもよく、FEC(Fluoro‐Ethylene Carbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含んでもよい。
【0086】
一方、本発明は、一実施形態において、上述した二次電池を単位電池として含む電池モジュールを提供し、前記電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0087】
前記電池パックは、高温安定性および長いサイクル特性と高いレート特性などが要求される中大型デバイスの電源として使用でき、このような中大型デバイスの具体的な例としては、電気モーターにより動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E‐bike)、電気スクーター(E‐scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられ、より具体的には、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0088】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
【0089】
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0090】
実施例1~5および比較例1~2.犠牲正極材の製造
酸化リチウム(LiO、単峰型分布)と酸化コバルト(CoO)を3.0~3.03のモル比を有するように反応器に投入し、ミキサー(mixer)を用いて約30分間均一に乾式混合した。その後、準備した原料混合物を電気炉に入れ、アルゴンガス(Ar)条件下で約700℃で10時間の間焼成して、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)を得た。この際、酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50)および最小粒度(Dmin)と焼成時にアルゴンガスに含有された酸素ガス(O)の分圧を下記表1に示した。
【0091】
【表1】
【0092】
実験例1.
本発明によって製造された犠牲正極材の電気伝導度を評価するために、実施例1~3と比較例1~2で製造された犠牲正極材の電気伝導度を測定した。この際、前記測定は、分体抵抗特性測定装置を用いて各犠牲正極材の体積と圧力変化による面抵抗を4ポイントプローブ(4‐point probe)方式で測定し、測定された体積と入力された質量を用いて粉体電気伝導度を算出し、その結果を下記表2に示した。
【0093】
【表2】
【0094】
前記表2に示されたように、実施例で製造された犠牲正極材は、電気伝導度が1×10-3S/cm~8.5×10-3S/cmであり、本発明による粉体電気伝導度を満たすことが分かる。
【0095】
実験例2.
本発明によって製造された犠牲正極材の性能を評価するために、下記のような実験を行った。
【0096】
イ)ガス放出量の測定
ホモミキサー(homo mixer)にN‐メチルピロリドン溶媒を注入し、実施例1~5および比較例1~2で製造されたそれぞれの犠牲正極材と、アセチレンブラック導電材、改質されたシラノールバインダーおよび分散剤を95:3:1.7:0.3の重量比で投入した後、3,000rpmで60分間混合して、プレ分散液を準備した。
【0097】
犠牲正極材の含有量が正極活物質(LiNi0.6Co0.2Mn0.2)100重量部に対して2重量部となるように準備したプレ分散液を正極活物質に混合し、N‐メチルピロリドン溶媒に混ざり合った正極活物質、バインダーであるPVdFおよび導電材であるカーボンブラックを96:1:3の重量比となるようにホモミキサー(Homo mixer)に投入した後、3,000rpmで80分間分散して、正極用スラリーを製造した。製造された正極用スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布し、100℃で乾燥後、圧延して、正極を製造した。
【0098】
前記正極とリチウム金属対極を使用して2032タイプのセルを製造した。前記正極とリチウム金属対極の間には、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレーター(厚さ:約16μm)を介在し、電解液を注入して、半電池形態のセルを製作した。
【0099】
この際、前記電解液は、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7(体積比)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF、0.7M)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI、0.5M)、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF、0.2重量%)、ビニルカーボネート(VC、2重量%)、1,3‐プロパンスルトン(PS、0.5重量%)、およびエチレンサルフェート(Esa、1重量%)を混合した溶液を使用した。
【0100】
製作されたセルに対して4.5C/0.3C条件で1回充放電を実施して、化成(formation)を行い、以後、45℃で0.3C/0.3C条件で50回充放電を繰り返し行うことによって、各充放電時に発生するガス量と60℃で4週間貯蔵時に発生するガス量を測定した。その結果を下記表3と図1および図2に示した。
【0101】
【表3】
【0102】
前記表3と図1および図2に示されたように、本発明によって製造された犠牲正極材は、充放電過程で発生するガス量が低減されることが示された。このような傾向は、犠牲正極材の製造時に使用されるリチウム前駆体、例えば酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50)が大きく、焼成時に使用される不活性ガス内に酸素ガス(O)を低い分圧で使用するほど大きくなることを確認することができる。
【0103】
ロ)初期充放電の評価
ガス放出量の測定時に行った方法と同じ方法で半電池形態のセルを製作し、かつ、電解液としてエチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:2:1(体積比)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF、1.0M)およびビニルカーボネート(VC、2重量%)を混合した溶液を使用した。
【0104】
製作された各セルを対象に充放電(formation)を行って、初期充電容量を測定した。この際、前記充放電(formation)は、25℃、70mah/3mAhの条件で行い、その結果を下記表4と図3に示した。
【0105】
【表4】
【0106】
前記表4および図3に示されたように、本発明によって製造された犠牲正極材は、電池の性能を向上させる効果があることが分かる。
【0107】
具体的に、実施例の犠牲正極材を含む電池は、リチウム前駆体、例えば、酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50)が小さくなるほど、初期充電容量が高まる傾向を示した。これは、酸化リチウム(LiO)の平均粒度(D50)が小さくなる場合、充電容量は向上するが、活性化段階以後に充放電および/または貯蔵時に発生するガス量が増加することを意味する。
【0108】
このような結果から、本発明によって製造される犠牲正極材は、製造時に特定のサイズを満たすリチウム前駆体を使用して犠牲正極材の電気伝導度を特定範囲に調節することによって、電池の性能を向上させる効果に優れており、電池充放電時に電極組立体で発生するガス、特に酸素(O)ガスの発生を低減させることができるので、これを含む電池の安定性と寿命を改善する効果に優れていることが分かる。
【0109】
以上では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0110】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求範囲によって定められるべきである。
図1
図2
図3
図4