(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】真菌のイノノツス・オブリクウス(Inonotus Obliquus)の抽出物の新規な化粧品的及び皮膚科学的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20240909BHJP
A61K 36/07 20060101ALI20240909BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240909BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61K36/07
A61P17/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021519548
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 FR2019052535
(87)【国際公開番号】W WO2020084259
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500226948
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】BASF Beauty Care Solutions France S.A.S.
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean de Dieu, F-69007 Lyon, France
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ベルテレミー,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ボノー-ローゼイ,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】カダウ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンメール,クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】レオティ-オコンビ,サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ムスー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ペルティエ,ニコラ
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/115303(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0101433(KR,A)
【文献】特開2006-271325(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0003982(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0114600(KR,A)
【文献】Eye Serum, The Saem International, 2016年11月, Mintel GNPD [online], [検索日 2023.07.28], インターネット<URL:http://www.gnpd.com>, ID:4394489
【文献】Intensive Anti-Wrinkle Eye Cream, Grassroots Life, 2010年7月, Mintel GNPD [online], [検索日 2023.07.28], インターネット<URL:http://www.gnpd.com>, ID:1405047
【文献】Eye Cream, Nature Republic, 2013年2月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.07.28], インターネット<URL:http://www.gnpd.com>, ID:1988406
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/9068
A61P 17/00-17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の周辺の領域における隈及び/又は眼の下のたるみの外観を防止するため、及び/又は眼の周辺の領域における隈及び/又は眼の下のたるみを低減させるた
めの、イノノツス・オブリクウス(Inonotus Obliquus)の抽出物の、健康な皮膚及び/又は粘膜を目的とした、非治療的な化粧品としての使用であって、前記抽出物が、
120℃~300℃の範囲の温度及び22.1MPa未満の圧力条件下での臨界未満条件下で水の中に抽出することによって得られることを特徴とする、使用。
【請求項2】
脆弱及び/又は薄い皮膚及び/又は粘膜、及び/又は感受性の高い粘膜を保護するための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抽出物が、少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む化粧品組成物の中に、前記組成物の合計重量を基準にして、0.0001重量%~20重量%の間の濃度で含まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記抽出物が、少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む化粧品組成物の中に、前記組成物の合計重量を基準にして、0.001重量%~5重量%の間の濃度で含まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
眼の周辺の領域における隈及び/又は眼の下のたるみの外観を防止するため、及び/又は眼の周辺の領域における隈及び/又は眼の下のたるみを低減させるた
めに、イノノツス・オブリクウス(Inonotus Obliquus)の抽出物又はそれを含む化粧品組成物を、経口投与及び/又は局所投与することを含む、健康な皮膚及び/又は粘膜を目的とする化粧品ケアプロセスであって、前記抽出物が、
120℃~300℃の範囲の温度及び22.1MPa未満の圧力条件下での臨界未満条件下で水の中に抽出することによって得られることを特徴とする、プロセス。
【請求項6】
前記投与が、局所投与であることを特徴とする、請求項5に記載の化粧品ケアプロセス。
【請求項7】
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む化粧品組成物が、顔面、頭皮及び/又は粘膜、及び/又は、脚、手、大腿、腹、襟足、首、腕、胴部、背中及び顔面から選択される体の全部又は一部に適用されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の化粧品ケアプロセス。
【請求項8】
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む化粧品組成物が、襟足及び/又は顔面に適用されることを特徴とする、請求項7に記載の化粧品ケアプロセス。
【請求項9】
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む化粧品組成物が、眼の周辺の領域に適用されることを特徴とする、請求項8に記載の化粧品ケアプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させるためのイノノツス・オブリクウス(Inonotus Obliquus)の抽出物の使用、及び化粧品及び皮膚科学の分野におけるそれらの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の微小循環は、細胞毒素を排出するためのシステムであるのに加えて、細胞に栄養素を供給するためのシステムも構築している。この皮膚の微小循環は、細胞、特には内皮細胞及びリンパ細胞が良好な接着を有しているときに最適となる。ストレス又は疲労がかかる条件下や、有害な環境条件に暴露されたときには、この皮膚の微小循環に変化がもたらされる。このことは、内皮組織及びリンパ組織の接着の低下、細胞透過性の増大、及び毒素の排出の非最適化、したがって毒素の蓄積に反映される。その結果は、顔面の皮膚の上に見ることができる。眼の周辺領域にある皮膚の鈍い肌の色及び変化が、皮膚がこの領域では特に薄いので、そのため目立つ。これは、眼の下のたるみ(bag)及び隈(shadow)の外観に反映される。
【0003】
内皮細胞の接着は特に、タイプIVのコラーゲンタンパク質、VE-カドヘリン、CD31又はPECAM-1(血小板及び内皮細胞接着分子1)によって確保されるが、後者は、内皮細胞及びリンパ細胞の細胞接合部のまた別の構成タンパク質である。
【0004】
これらの徴候に加えて、より厳しい条件下では、顔面に現れる徴候の外観、たとえば顔面紅潮(ruddiness)、痒み(itching)、掻痒感(irritation)、又はさらにはクーペロシス(couperosis)が目立つであろう。
【0005】
眼の周辺の領域における隈及びたるみを低減させる効果を有する有効成分は、化粧品市場には存在しており、肌の色の輝きを改良することが可能な有効成分も同様である。しかしながら、化粧品分野は、とりわけこれらの効果を有する、代替え及び新規な成分を常に探索している。
【0006】
驚くべきことには、本願出願人は、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物が、眼の周辺の領域において眼のまわりの隈及び眼の下のたるみを低減させる能力を有するだけではなく、皮膚の色の輝き及び均一性も増強するということを見出した。この抽出物はさらに、顔面紅潮及びさらにはクーペロシスを顕著に低減させることが可能であることも明らかになった。
【0007】
真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)は、タバコウロコタケ科(Hymenochaetaceae family)の担子菌であって、シャガ(chaga)又はクリンカーポリポアー(clinker polypore)とも呼ばれている。それは、カバノキの樹皮に見出され、世界のいくつかの地域、特にロシア、カナダ、及び東ヨーロッパに見出される。
【0008】
それは、可食性の真菌であるが、さらには、特に胃腸の障害、心血管性疾病、及び糖尿病を処置するためのその薬理作用でも知られている。抗酸化性、抗炎症性、抗腫瘍性、及び抗高糖血の効果は、それらに帰せられている。
【0009】
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、化粧品組成物にすでに記載されている。
【0010】
したがって、(特許文献1)には、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む化粧品組成物が、そのフリーラジカル捕捉性及び漂白性能に関連して、開示されている。皮膚組織の接着を増強するため、又は顔面紅潮を低減させるか又は皮膚の輝かしい外観を増強させるため、それにも増して、眼の周辺の領域における眼のまわりの隈又は眼の下のたるみを低減させるために、本発明による抽出物を使用することに関しては、前記特許出願には、何の開示も示唆もない。
【0011】
(特許文献2)には、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物も含めた、4種の異なった真菌抽出物の組合せを含む化粧品組成物が開示されている。しかしながら、前記文書には、皮膚組織の接着を増強させるため、特に皮膚の紅潮を低減させるため、それにも増してさらには肌の色の輝きを増強するための、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の効果は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国特許出願公開第2004/0102773号明細書
【文献】韓国特許出願公開第2007/0046139号明細書
【文献】国際公開第02/051828号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【文献】The CTFA(Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition(1992))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先に引用した文書のいずれにも、眼の周辺の領域における眼のまわりの隈及び/又は眼の下のたるみを低減させるための、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の特性は開示されていない。さらには、それらの文書のいずれにも、皮膚の色の輝きを維持及び/又は増強させるための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物単独の使用は記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による抽出物の利点は、それが、大量に入手することが可能な出発物質であり、工業的なスケールで製造することが可能なことである。また別の利点は、この抽出物が、いくつかの細胞タイプにおいて、いくつかのタンパク質標的を同時に刺激する能力を有している点にある。最後に、特定の実施態様においては、本発明による抽出物が、臨界未満条件下に水中で得られ、その抽出プロセスは有機溶媒を一切使用しないが、その一方で、それと同時に、わずかに極性の化合物に富んだ抽出物を製造することが可能となるが、それらは、慣用される温度及び圧力条件下では、通常ほとんど抽出されない。
【0016】
したがって、本発明の第一の主題は、皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させるための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の化粧品としての使用である。
【0017】
「皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the cohesion of the skin tissues)」という表現は、本明細書においては、リンパ及び/又は上皮の細胞の接着、及び/又は表皮の接着、及び/又は真皮-表皮の接合部の接着を維持及び/又は増強させることを意味している。したがって、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、眼の周辺の領域における見栄えを防止するか、及び/又は眼のまわりの隈及び/又は眼の下のたるみを低減させるか、及び/又は皮膚の色の輝き及び/又は均一性を維持及び/又は増強させることを可能とする。
【0018】
本発明の主題はさらに、皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させるため、特には眼の周辺の領域における見栄えを防止するため、及び/又は眼のまわりの隈及び/又は眼の下のたるみを低減させるため、及び/又は皮膚の色の輝き及び/又は均一性を維持及び/又は増強させるため、及び/又はバリアー機能を維持及び/又は増強させるため、及び/又は皮膚の微小循環を維持及び/又は増強させるための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む化粧品組成物を経口投与又は局所投与することを含む化粧品ケアプロセスである。
【0019】
本発明の第三の主題は、皮膚組織の接着を失うことに伴う病態、特に痒み(itching)及び/又はひりひり感(stinging)及び/又は掻痒感(irritation)及び/又は灼熱(burning)感覚及び/又は目に見える鱗屑、を防止及び/又は軽減させるため、及び/又はクーペロシス及び/又は顔面紅潮を防止及び/又は低減させるのに使用するための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む皮膚科学的な組成物に関する。
【0020】
したがって、第一の主題は、皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させるための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の化粧品としての使用に関する。
【0021】
本発明の目的のためには、「化粧品としての使用」という用語は、非治療的な使用、すなわち、治療的な処置を必要とせず、健康な、すなわち、皮膚科学的な病態を示さず、いかなる感染症、炎症、瘢痕、疾病又は皮膚愁訴、たとえばカンジダ症、膿痂疹、乾癬、湿疹、座そう若しくは皮膚炎、又はクーペロシス(couperosis)、又は創傷若しくは外傷も示さない、皮膚及び/又は粘膜を目的とした使用を意味している。
【0022】
本発明による抽出物は、局所的に容認可能な活性のある抽出物である。「局所的に容認可能な」という用語は、本明細書においては、局所投与に適していて、皮膚及び/又は粘膜に対しては非刺激性であり、アレルギー反応を誘発せず、そして化学的に不安定でない、非毒性の抽出物を意味している。
【0023】
本発明による抽出物の使用は、経口投与であっても、局所投与であってもよい。抽出物を局所的に投与するのが有利である。「局所的に」という用語は、その抽出物を、皮膚及び/又は粘膜の表面の上に、直接局所投与する、及び/又はスプレーすることを意味している。
【0024】
「粘膜」という用語は、膣粘膜、泌尿生殖器粘膜、肛門粘膜、鼻粘膜、口粘膜、眼球粘膜、口唇及び/又は歯肉の粘膜、好ましくは口唇の粘膜を意味している。
【0025】
本発明による抽出物は、顔面及び/又は体、頭皮及び/又は粘膜の全部又は一部に局所的に投与することができるが、そのような部位は以下のものから選択される:脚、手、大腿、腹部(stomach)、襟足、首、腕、胴部、背中、髪、顔面、特に眼の周辺の領域、有利には襟足及び/又は顔面、特には眼の周辺の領域、さらにより有利には眼の周辺の領域。本発明の目的のためには、眼の周辺の領域にはまぶたも含まれる。
【0026】
「皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the cohesion of the skin tissues)」という表現は、VE-カドヘリン及び/又はコラーゲンから選択される細胞の中に存在している接着マーカーの遺伝子及び/又はタンパク質の発現を維持及び/又は増強させることによるか、及び/又はストレスに暴露された内皮細胞の構造を維持及び/又は再建することによって、内皮細胞及び/又はリンパ細胞の接着を維持及び/又は増強させることを意味している。
【0027】
内皮細胞及び/又はリンパ細胞の接着を増強することによって、眼の周辺の領域における見栄えを防止し、及び/又は眼のまわりの隈及び/又は眼の下のたるみを低減させることが可能となる。
【0028】
したがって、「眼のまわりの隈及び/又は眼の下のたるみを低減させる(reducing shadows and/or bags)」という表現は、VE-カドヘリン及び/又はコラーゲンのタンパク質及び/又は遺伝子発現を増強することを意味していて、遺伝子の発現を増強するということは、相当するmRNAの発現を増強することと定義されていると理解されたい。
【0029】
したがって、本発明の目的のためには、「VE-カドヘリンの発現を増強する(increasing the expression of VE-cadherin)」という表現は、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下におけるその遺伝子及び/又はタンパク質の発現を、抽出物が不在の場合に検出される発現のレベルに比較して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%増強することを意味している。
【0030】
本発明の有利な実施態様においては、重要なことは、有利には内皮細胞の中で測定して、より有利には実施例1d)によるか又は実施例1k)により調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下にVE-カドヘリンのタンパク質発現を増強することであり、極めて有利には、免疫組織化学によって測定され、実施例2に記載の条件下での共焦点顕微鏡測定によって検出される。
【0031】
「ストレスに暴露された内皮細胞の構造を再建する(re-establishing the structure of endothelial cells subjected to a stress)」という表現は、ストレスに暴露されたときに、たるんだり崩壊したりした内皮細胞の構造を、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下に、有利にはTNF-α(潰瘍壊死因子-α)の存在下に、再建することを意味している。本発明の有利な実施態様においては、前記細胞の構造の再建は、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下に再構築された真皮のモデルにおいてタンパク質のCD31(又はPECAM-1)を標識化して、TNF-α(対照)の存在下、より好ましくは実施例1d)によるか又は実施例1k)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下に、ストレスをかけた前記モデルと比較することによって評価されるであろう。極めて有利には、前記細胞の構造の再建は、免疫組織化学によって評価され、そして実施例3に記載の条件下での共焦点顕微鏡測定により検出されるであろう。
【0032】
最後に、「コラーゲンの発現を増強する(increasing the expression of collagen)」という表現は、コラーゲンIVの遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増強することを意味している。この発現の増強は、ケラチノサイト及び/又は内皮細胞及び/又は線維芽細胞から選択されるいくつかのタイプの細胞で測定することができる。
【0033】
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、タイプIVコラーゲンの遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増強させるのに有効である量になるようにするが、その場合、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下で、抽出物無しで検出される発現のレベルと比較して、内皮細胞内での増強が、少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、極めて好ましくは少なくとも40%となるであろう。有利には、それが、タイプIVコラーゲンのタンパク質の発現における増強であるであろうし、実施例1d)に記載された条件下か、又は実施例1k)に従って調製された抽出物の存在下に測定すればより有利であろう。この増強は、実施例4c)の条件下の免疫組織化学によって測定するのが好ましいであろう。
【0034】
したがって、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、脆弱か及び/又は薄いか及び/又は感受性の高い皮膚及び/又は粘膜を、保護及び/又は快適化させるために使用することができる。その抽出物は、(全身及び肺の)皮膚の微小循環を維持及び/又は増強させるために有用であるが、本発明の目的のためには、その皮膚の微小循環には血液循環が含まれないことは理解するべきである。
【0035】
本発明の目的のためには、「感受性の高い皮膚又は粘膜(sensitive skin or mucous membranes)」という表現は、たとえば風、汚染、寒さ及び暑さのような外部因子が原因のそれらの環境に、もはや耐えられないか、或いは辛うじて極めてほんのわずか耐えられるような皮膚又は粘膜を意味している。
【0036】
本発明の目的のためには、感受性の高い皮膚及び/又は粘膜は、アトピー性の皮膚及び/又は粘膜ではない。したがって、本発明の有利な実施態様においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む化粧品組成物が、感受性の高い皮膚及び/又は粘膜(アトピー性の皮膚及び/又は粘膜を除く)を処置するために使用されるが、「アトピー性の皮膚又は粘膜(atopic skin or mucous membranes)」という用語は、本明細書においては、重度に脱水され、そして皮膚科医によって「アトピー性」と名付けられたアトピー性の皮膚炎(dermatitis)又は皮膚病(dermatoses)に到るような皮膚又は粘膜を意味していると理解されたい。
【0037】
さらには、「皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the cohesion of the skin tissues)」という表現は、真皮-表皮の接合部の接着を維持及び/又は増強させるということを意味している。「真皮-表皮の接合部の接着を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the cohesion of the dermo-epidermal junctions)」という表現は、ケラチノサイト及び/又は線維芽細胞の中で、HSP70(熱ショックタンパク質70)及び/又はコラーゲン、好ましくはタイプIVコラーゲンの遺伝子及び/又はタンパク質の発現を維持及び/又は増強させることを意味している。
【0038】
したがって、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、タイプIVコラーゲンの遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増強させるのに有効である量になるようにするが、その場合、その増強は、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下で、本発明による抽出物無しで検出される発現のレベルと比較して、ケラチノサイト内で、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも94%、極めて好ましくは少なくとも130%となるであろう。有利には、それが、タイプIVコラーゲンのタンパク質の発現における増強であるであろうし、実施例1d)に記載された条件下か、又は実施例1k)に従って調製された抽出物の存在下に測定すればより有利であろう。この増強は、実施例4a)の条件下の免疫組織化学によって測定するのが好ましいであろう。
【0039】
「HSP70の発現を増強させる(increasing HSP70 expression)」という表現は、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下では、抽出物無しで検出される発現のレベルと比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の、HSP70の発現の遺伝子及び/又はタンパク質の増強があることを意味している。有利な実施態様においては、それは、HSP70のタンパク質の発現における増強であり、真皮性線維芽細胞において測定するのがより好ましい。タンパク質の発現を免疫組織化学により測定し、タンパク質を、実施例5の条件下で、ウェスタンブロット法によって検出するのが好ましい。
【0040】
真皮-表皮の接合部の接着を増強することによって、皮膚の色の輝き及び/又は均一性を増強させることが可能となる。したがって、本発明の一つの主題は、皮膚の色の輝き及び/又は均一性を維持及び/又は増強させるための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の使用である。
【0041】
本発明の目的のためには、「肌の色の輝きを増強する(increasing the radiance of the complexion)」という表現は、皮膚の輝かしい外観を増強すること及び/又は輝きを改良すること、及び/又は皮膚の鈍い及び/又は黄ばんだ肌の色を低減させることを意味している。
【0042】
皮膚の色の輝きは、測色法(chromametry)又は画像解析によって測定することができる。この後者のin vivoでの測定方法は、試験製品を塗布する前と後に、ボランティアの顔面を45゜の角度で、直交偏光構成で高分解能写真を撮影することからなっている。このデジタル写真に基づいて、画像解析することによって、皮膚の色、明度、均一性、及び表面組織に関連する特異的パラメーター(たとえば:L*、a*、b*、C、h゜)を抽出し、定量化することが可能となる。
【0043】
したがって、特定の実施態様においては、本発明による抽出物は、「肌の色の輝きを増強する(increasing the radiance of the complexion)」ために有効な量とするが、その場合、皮膚の輝かしい外観における増強は、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下で、少なくとも0.5%である。本発明の好ましい実施態様においては、それは、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む配合物を33名の女性の母集団の顔面に塗布してから28日後に測定したパラメーターL*における増強であり、実施例6(表4)に記載された条件下で、抽出物を含まない前記配合物を同一の条件下で塗布したのと対比する。より好ましくは、それが、実施例1c)に従って調製したI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む、実施例9)に記載の配合物であろう。
【0044】
本発明の有利な実施態様においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、肌の色の輝き及び/又は均一性を維持及び/又は増強させるため、特には、肌の色の輝き及び/又は均一性を維持及び/又は増強させることを目的とした化粧品的又は皮膚科学的な組成物において、リキウム・キネンセ(Lycium chinense)の果実の抽出物と組み合わせて使用することはない。より好ましくは、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、特に本発明における化粧品的又は皮膚科学的な組成物において、リキウム・キネンセ(Lycium chinense)の果実の抽出物と組み合わせて使用することはない。
【0045】
最後に、「皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the cohesion of the skin tissues)」という表現は、表皮の接着を維持及び/又は増強させるということを意味している。
【0046】
「表皮の接着を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the cohesion of the epidermis)」という表現は、インボルクリンの遺伝子及び/又はタンパク質の発現を維持及び/又は増強させること、及び/又はインテグリン-β-1及び/又はオクルディン及び/又はクラウディン-1の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を維持及び/又は増強させることを意味している。したがって、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、表皮の接着を増強させるのに有効な量で存在させるであろうが、その場合、インボルクリンの遺伝子及び/又はタンパク質の発現、好ましくはタンパク質の発現における増強は、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下では、抽出物無しで検出される前記タンパク質の発現のレベルと比較して、少なくとも50%、有利には100%、より有利には200%、極めて有利には400%となるであろう。有利な実施態様においては、インボルクリンのタンパク質の発現における増強は、「正常な(normal)」(いかなる病態も示さない組織から得られた)ケラチノサイトの中での、実施例1d)に従うか又は実施例1k)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下で測定されるであろうし、より有利には、タンパク質発現の中での増強は、実施例7に記載された条件下のELISAによって検出されるであろう。
【0047】
インボルクリンの発現を増強させることによってさらに、皮膚のバリアー機能を改良することも可能となる。したがって、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、皮膚のバリアー機能を維持及び/又は増強させるために使用することもできる。本発明の目的のためには、「バリアー機能を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the barrier function)」という表現は、ケラチノサイトをコルネオサイトの中に分化させることにより角化層を接着させ、それにより、表皮のホメオスタシス、及び表皮の保湿を維持するための能力を維持及び/又は増強させることを意味している。
【0048】
「表皮の接着を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the cohesion of the epidermis)」という表現はさらに、インテグリン-β-1及び/又はオクルディン及び/又はクラウディン-1の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を維持及び/又は増強させることを意味している。
【0049】
したがって、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、インテグリン-β-1の遺伝子及び/又はタンパク質の発現、好ましくはタンパク質の発現を増強させるのに有効な量で存在させるが、その場合、この増強は、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下では、抽出物無しで検出される好ましくはタンパク質、インテグリン-β-1の発現のレベルと比較して、少なくとも50%、有利には少なくとも70%、より有利には少なくとも85%である。
【0050】
「オクルディンの遺伝子及び/又はタンパク質の発現を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the gene and/or protein expression of occludin)」という表現もまた、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下では、抽出物無しで検出される好ましくはタンパク質の発現、オクルディンの発現のレベルと比較して、好ましくは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%のタンパク質増強を維持及び/又は増強することを意味している。
【0051】
「クラウディン-1の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を維持及び/又は増強させる(maintaining and/or increasing the gene and/or protein expression of claudin-1)」という表現は、遺伝子及び/又はタンパク質、有利にはタンパク質の、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下では、抽出物無しで検出される好ましくはタンパク質の発現、クラウディン-1の発現のレベルと比較して、クラウディン-1のタンパク質の発現において少なくとも10%、有利には少なくとも20%維持及び/又は増強させることを意味している。
【0052】
有利な実施態様においては、クラウディン-1、オクルディン、及びインテグリン-β-1のタンパク質の発現における増強のそれぞれは、実施例1d)に従うか又は実施例1k)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下で、「正常な(normnal)」ケラチノサイト(すなわち、いかなる病態も示さない組織から得られたケラチノサイト)の中で測定されるであろう。より有利には、タンパク質の発現におけるこの増強は、実施例8に記載の条件下で、免疫標識化(immunolabelling)によって検出されるであろう。
【0053】
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、真菌の全体から、又は真菌の一部以上、特には菌糸又は菌核及びこれらの混合物から選択される部分から、抽出することができる。本発明による抽出物は、好ましくは、I・オブリクウス(I.Obliquus)の菌核の抽出物である。
【0054】
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、以下の方法から選択される、当業者には公知の各種抽出方法を使用して得ることができる:加熱煎出法、摩砕法(超音波摩砕法を含む)、ミキサーの使用、冷浸法、臨界未満条件下での水中の抽出法、又は溶媒を使用した抽出法。有利には、抽出を臨界未満条件下で水中で実施するであろう。
【0055】
「臨界未満条件」下での抽出という用語は、100℃より高い温度条件及び22.1MPa(221bar)未満の圧力条件下で、水の存在下での抽出を意味しており、その条件下では、水は液体状態に留まっているが、室温状態の水よりは低い粘度と表面張力を有し、その誘電率は高くなっている。
【0056】
したがって、その抽出圧力は、10MPa(100bar)~25MPa(250bar)、好ましくは15~22.1MPa(150~221bar)の間となる。
【0057】
抽出は、乾燥又は新鮮な原料、有利には乾燥原料を、原料及び抽出溶媒の合計重量を基準にして、0.1重量%~20重量%、有利には1%~10%、極めて有利には5%~10%、さらにより有利には10重量%の量で使用して実施するのがよい。
【0058】
その抽出は、室温(すなわち、20℃の温度)を含めて、4℃~300℃の範囲で実施するのがよい。本発明の好ましい実施態様においては、抽出を、60℃~90℃の温度、好ましくは70℃~85℃、より好ましくは80℃の温度で実施する。
【0059】
本発明の一つのそれに代わる実施態様においては、抽出を、4℃~25℃、より好ましくは4℃~20℃の温度、より有利には室温、すなわち20℃で実施するであろう。
【0060】
本発明のさらにまた別の代わりの実施態様においては、その抽出を、100℃~300℃、有利には120℃~250℃、より有利には140℃~200℃の範囲の温度での臨界未満条件下で、水中で実施するであろう。抽出は、所定の一定温度で実施しても、或いは温度を連続的に上げながら実施してもよい。本発明の一つの有利な実施態様においては、抽出を、160℃の一定温度で実施するであろう。代わりの実施態様においては、100℃~200℃の間で、たとえば、120℃、140℃、次いで160℃、又は110℃、130℃、次いで150℃、又はそれ以外にも120℃、145℃、次いで170℃のように3段階で勾配をつけて昇温して実施するであろう。
【0061】
抽出は、数秒~24時間、好ましくは1分~12時間、より好ましくは5分~5時間かけて、より有利には15分~2時間かけて実施するのがよい。
【0062】
その溶媒は、水、又は溶媒混合物、好ましくは極性のプロトン性溶媒から選択してよく、有利には以下のものである:水、アルコール、グリコール、ポリオール、水/アルコール、水/グリコール、又は水/ポリオールの99/1~1/99(w/w)混合物(たとえば、水と、エタノール、グリセロール、及び/又はブチレングリコール、及び/又はその他のグリコール、たとえばキシリトール、及び/又はプロパンジオールなどとの混合物)、有利には単一溶媒としての水。
【0063】
特には、水抽出によって抽出物を得る。本発明の目的のためには、「水抽出によって得られた抽出物」という表現は、その水溶液の合計重量を基準にして、60重量%を超える、有利には少なくとも70重量%、特には少なくとも80重量%、より特には少なくとも90重量%、特には少なくとも95重量%の水を含む、さらにより有利にはいかなるグリコールを含まない、特にはいかなるアルコールも含まない、より特には水だけを含む水溶液を用いて抽出することにより得られた各種抽出物を意味している。
【0064】
一つのそれに代わる実施態様においては、その抽出物が、相対比(80:20;v/v)のプロパンジオールと水との混合物の中で抽出することにより得られる。
【0065】
本発明のまた別の代わりの実施態様においては、その抽出を、好ましくはBASFによりPlantacare(登録商標)1200UPの名称で販売されているラウリルグルコシド、又はその他のカプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)から選択される、好ましくはカプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)のノニオン性界面活性剤の存在下で実施するのがよい。そのノニオン性界面活性剤の重量濃度は、抽出物の合計重量を基準にして、0.5%~5%の間、有利には0.5%~1%の間とするのがよく、より有利には1重量%である。
【0066】
本発明の特に有利な実施態様においては、その抽出物が、臨界未満条件下に水の中で抽出することにより得られるであろう。この場合においては、前記抽出物は、慣用される抽出条件下で得られる水抽出物(80℃までの温度範囲で得られる水抽出物を含む)とは、存在している化合物の点で異なっているであろう。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の第一の実施態様においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、単一溶媒としての水の中で、真菌と溶媒との合計量を基準にして10重量%の量のI・オブリクウス(I.Obliquus)の菌糸又は菌核を、温度80℃で1時間撹拌する冷浸法を用いて、溶出させることによって得ることができる。そのようにして得られた抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、その上澄みを、実施例1a)又は実施例1h)に記載の条件下で、濾過(0.45μm)するであろう。その抽出物は、液状の抽出物であって、「水抽出物」と呼び、上で定義されたような高い温度で得られたものである。
【0068】
また別の実施態様においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物が、エタノール/水混合物(70/30;v/v)の中に溶解させた、真菌と溶媒との合計量を基準にして、10重量%の量の摩砕し乾燥させた真菌の菌糸又は菌核から得られるであろう。実施される冷浸法は、温度60℃で1時間かけて実施されるであろう。そのようにして得られた抽出物を、デカントし、遠心分離にかけ、得られた上澄みを濾過する(0.45μm)。エタノールを蒸発除去し、抽出物を、実施例1b)又は実施例1i)に記載された条件下で、もう一度濾過する(0.45μm)。
【0069】
本発明のさらにまた別の実施態様においては、その抽出を、10重量%の量の、真菌の摩砕し乾燥させた菌糸又は菌核を使用して、臨界未満条件下に水中で実施するであろう。その抽出は、温度160℃で実施する。
【0070】
その抽出物を、濃縮し、濾過すると(0.45μm)、実施例1c)又は実施例1j)に提示された条件下では、水溶液の形態にある。
【0071】
本発明のまた別のそれに代わる実施態様は、実施例1c)又は実施例1j)の条件下で得られた抽出物を、実施例1d)又は実施例1k)に記載の条件下で摩砕、乾燥させて、粉体の形態にある抽出物を得ることからなっているであろう。
【0072】
最後の実施態様においては、上述の実施例1d)又は実施例1k)に記載された条件下で得られた抽出物を、実施例1e)又は実施例1l)条件下、80重量%のグリセロールを含む溶液中に溶解させるであろう。
【0073】
追加の脱色工程及び/又は脱臭工程を、抽出のいずれかのステージで、当業者に公知の技術に従って、その抽出物に対して実施してもよい。特には、活性炭を用いて抽出物を脱色させてもよい。抽出物を凍結乾燥させてもよい。
【0074】
本発明による抽出物は、単独で使用することもできるし、或いは化粧品又は皮膚科学的な組成物の中に含まれていてもよい。その抽出物を単独で化粧品の有効成分として使用する場合、有利にはそれをグリセロールを含む水溶液の中に溶解させ、有利には、抽出物を含む水-グリセロール溶液の合計重量を基準にして、60%~90%、より有利には70%~85%の濃度、極めて有利には80重量%の濃度で存在させる。
【0075】
本発明の一つのそれに代わる実施態様においては、その抽出物が、極性溶媒、たとえば水、アルコール、ポリオール、グリコール、たとえば、ペンチレングリコール及び/又はブチレングリコール及び/又はヘキシレングリコール及び/又はカプリリルグリコール、又はそれらの混合物、好ましくは水-グリコール混合物、より好ましくはヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、及びこれらの混合物から選択されるグリコールを含む溶媒の中に、溶解及び/又は希釈される。有利には、得られた抽出物を、ヘキシレングリコールを含む、特には化粧品成分の合計重量を基準にして、0.1重量%~10重量%の間のヘキシレングリコール、好ましくは0.5重量%~5重量%の間のヘキシレングリコールを含む水溶液の中に、希釈され及び/又は可溶である。有利には、得られた抽出物を、カプリリルグリコールを含む、特には抽出物を含む水溶液の合計重量を基準にして、0.01重量%~5重量%の間のカプリリルグリコール、好ましくは0.1重量%~1重量%の間のカプリリルグリコールを含む水溶液の中に、希釈され及び/又は可溶である。
【0076】
別な方法として、抽出物を、少なくとも1種の、化粧品として許容される賦形剤を含む化粧品組成物の中に、含ませることもできる。「化粧品として許容される賦形剤」という用語は、皮膚に対して非刺激性であり、アレルギー反応を誘発することなく、そして化学的に安定な化粧品賦形剤を意味している。
【0077】
したがって、本発明の主題は、皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させるため、特には眼の周辺の領域における見栄えを防止するため、及び/又は眼のまわりの隈及び/又は眼の下のたるみを低減させるため、及び/又は皮膚の色の輝き及び/又は均一性を維持及び/又は増強させるため、及び/又は皮膚の微小循環を維持及び/又は増強させるため、及び/又は皮膚のバリアー機能を維持及び/又は増強させるための、少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む化粧品組成物におけるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の使用である。
【0078】
本発明の有利な実施態様においては、その抽出物が、化粧品組成物の中に、組成物の合計重量を基準にして、0.0001重量%~20重量%の間、好ましくは0.001重量%~5重量%の間、より好ましくは0.01重量%~3重量%の間の濃度で存在するであろう。
【0079】
有利には、その化粧品組成物が、脚、手、大腿、腹、襟足、首、腕、胴部、背中、顔面、特に眼の周辺の領域、有利には襟足及び/又は顔面、特には眼の周辺の領域、さらにより有利には眼の周辺の領域から選択される、顔面及び/又は体の全部又は一部、頭皮及び/又は粘膜に適用されるであろう。
【0080】
有利には、その化粧品組成物は、特に高齢者又は乳幼児の、薄い及び/又は脆弱な皮膚及び/又は粘膜を保護及び/又は快適化させるために使用することができる。
【0081】
賦形剤は、以下のものから選択することができる:界面活性剤及び/又は乳化剤、保存剤、緩衝剤、キレート化剤、変性剤、乳白剤、pH調節剤、還元剤、安定剤、粘稠化剤、ゲル化剤、皮膜形成性ポリマー、充填剤、つや消し剤、光沢剤、顔料、着色剤、芳香剤、及びこれらの混合物。(非特許文献1)には、本発明で使用するのに適した各種の化粧品賦形剤が記載されている。
【0082】
有利には、賦形剤が、以下のものを含む群から選択される:ポリグリセロール、エステル、セルロースポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、スクロースベースの安定剤、ビタミンE及びそれらの誘導体、キサンタンゴム、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、鹸化不能物質、フィトステロール、シリコーン、タンパク質加水分解物、ベタイン、アミンオキシド、植物抽出物、スクロースエステル、二酸化チタン、グリシン、及びパラベン、より好ましくは以下のものからなる群から選択される:ステアレス-2、ステアレス-21、グリコール-15ステアリルエーテル、セテアリールアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、カプリリルグリコール、天然トコフェロール、グリセロール、リン酸ジヒドロキシセチルナトリウム、イソプロピルヒドロキシセチルエーテル、グリコールステアレート、トリイソノナノイン、オクチルココエート、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス-7、カルボマー、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ビサボロール、ジメチコーン、水酸化ナトリウム、PEG-30ジポリヒドロキシステアレート、カプリリック/カプリックトリグリセリド、セテアリールオクタノエート、ジブチルアジペート、ブドウ種油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコーン、キサンタンゴム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、鉱物質ワックス及びオイル、イソステアリルイソステアレート、プロピレングリコールジペラルゴネート、プロピレングリコールイソステアレート、PEG8、蜜蝋、水素化パーム核油からのグリセリド、ラノリンオイル、ゴマ油、乳酸セチル、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、スクロース、低密度ポリエチレン、生理食塩溶液、及びこれらの混合物。
【0083】
化粧品組成物は、以下のものから選択することができる:水性若しくは油性の溶液、クリーム若しくは水性ゲル剤若しくは油性ゲル剤、特にシャワージェル、乳状液、エマルション、マイクロエマルション若しくはナノエマルション(これは、特には、水中油型若しくは油中水型又は複相若しくはシリコーンベースである)、マスク、セラム、ローション、液状セッケン、軟膏剤、フォーム、パッチ、無水製剤(これは、好ましくは、液状、ペースト状又は固体状で、たとえば、メイクアップ粉体、ワンド、又はスティック、特には、口紅の形状)。それがクリーム又はセラムであれば、有利である。
【0084】
化粧品組成物にはさらに、以下のものが含まれていてもよい:本発明による抽出物を用いて相補的若しくは相乗的な効果をもたらす、バリアー機能を増強し、上皮経由の水分喪失を低下させるもの、及び/又は皮膚及び/又は粘膜の水分含量を増やす、及び/又は細胞の中の水の循環を改良する目的でのアクアポリン合成を刺激するものから選択される皮膚及び/又は粘膜のバリアー機能を強化するための有効成分。以下のものも挙げられる:セリン、尿素及びその誘導体、マリンコラーゲン及びグリコサミノグリカンとしての硫酸コンドロイチンのミクロスフェアのような製品、ヒアルロン酸塩、尿素、トレハロース、グリセリルトリアセテート、及びポリクアテルニウム-51を含む配合物(それぞれ、Marine Filling Spheres(商標)及びAdvanced Moisturizing Complex(商標)の名称で販売されている);Hyaluronic Filling Spheres(商標)の名称で販売されているヒアルロン酸ミクロスフェア;紅藻類の抽出物、又はアカシア多糖、アルギネート及びセリンの混合物(それぞれ、Osmogelline(商標)及びMicropatch(商標)セリンの名称で販売されている);又は、プルラン、ヒアルロン酸、又はそれらの塩若しくは誘導体、並びにアルギン酸又はそれらの塩若しくは誘導体を組み合わせたもの(PatcH20(商標)の名称で販売されている)。たとえば、以下のようなその他の化合物を使用してもよい:アルキルセルロース、レシチン、スフィンゴイドベースの化合物、セラミド、リン脂質、コレステロール及びその誘導体、グルコスフィンゴリピド、フィトステロール(スティグマステロール及びβ-シトステロール、カンペステロール)、必須脂肪酸、1,2-ジアシルグリセロール、4-クロマノン、五環トリテルペン、たとえば、ウルソール酸、ワセリン、ラノリン、糖、特にはトレハロース及びその誘導体、ラムノース、フルクトース、マルトース、ラクトース、エリスリトール、マンニトール、D-キシロース及びグルコース、アデノシン及びその誘導体、ソルビトール、多価アルコール(有利にはC2~C6、より有利にはC3~C6、たとえばグリセロール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセロール、ポリグリセロール、及びそれらの混合物)、グリセロール及びその誘導体、ポリアクリル酸グリセリル、乳酸ナトリウム、ペンタンジオール、セリン、乳酸、AHA、BHA、ナトリウムピドレート、キシリトール、乳酸ナトリウム、エコチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、コラーゲン、プランクトン、ステロイド誘導体(DHEA、その7-酸化及び/又は17-アルキル化誘導体、及びサポゲニンを含む)、ジヒドロジャスモン酸メチル、ビタミンD及びその誘導体、マルバ・シルヴェストリス(Malva sylvestris)の抽出物又はセンテラ・アシアティカ(Centella asiatica)の抽出物、アクリル酸のホモポリマー、β-グルカン、特にはカルボキシメチルβ-グルカンナトリウム、C-グリコシド誘導体、たとえば(特許文献3)に記載されているようなもの、ジャコウバラ油、亜鉛を添加した微細藻類プロフィリヂウム・クルエンツム(Prophyridium cruentum)の抽出物(Vincienceから、Algualane Zinc(商標)の名称で販売)、アルギニン、アセチルヘキサペプチド(Lipotechから、Diffuporine(商標)の名称で販売)、ビオラ・トリコロル(Viola tricolor)の加水分解物(Silabから、Aquaphyline(商標)の名称で販売)、又はカッシア・アングスチフォリア(Cassia angustifolia)の種子からの多糖抽出物(本願出願人から、Hyalurosmooth(商標)の名称で販売)、サッカロマイセス・セレヴィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)の発酵加水分解物(Relipidium(商標)の名称で販売)、又はそうでなければ、天然加湿因子の化合物、又は蜂蜜の天然抽出物(本願出願人から、Melhydran(商標)の名称で販売)。
【0085】
たとえば、加齢防止成分及び/又は漂白活性薬剤及び/又は汚染防止成分及び/又は肌の色の輝きを増進させる成分などの、他のタイプの活性薬剤がその組成の中に存在していてもよい。
【0086】
それらの薬剤は、たとえば、以下のようなものであってもよい:カッシア・アラタ(Cassia alata)の葉の抽出物(DN-Age(商標)の名称で販売)及び/又は、抗酸化性活性薬剤としてのレイシの抽出物(Litchiderm(商標)の名称で販売)、脱グリケート剤としてのサルビア・ミルチオリッザ(Salvia miltiorhizza)の抽出物とナイアシンアミドとを組み合わせたもの(CollRepair(商標)の名称で販売)、しわ防止剤のチコリの抽出物(Lox-Age(商標)の名称で販売)、アキレア・ミレフォリウム(Achillea millefolium)の抽出物(Neurobiox(商標)の名称で販売)、ポリゴヌム・ビストルタ(Polygonum bistorta)の抽出物(Perlaura(商標)の名称で販売)、ガランガの抽出物(Hyalufix(商標)の名称で販売)、トウモロコシの抽出物(Deliner(商標)の名称で販売)、又はボアンドゼイア・スブテラネア(Voandzeia subterranea)の抽出物(本願出願人より、Epigenist(商標)の名称で販売)、又は、その他の、皮膚の堅牢性を促進する活性薬剤、たとえば、合成テトラペプチド(Dermican(商標)の名称で販売)、ヒビスクス・アベルモスクス(Hibiscus abelmoschus)の抽出物(Linefactor(商標)の名称で販売)、マメの精製抽出物(Proteasyl(商標)の名称で販売)、マニルカラ・ムルチネルビス(Manilkara multinervis)の抽出物(Elestan(商標)の名称で販売)、若しくはアルガンのパルプ抽出物(本願出願人により、Argassential(商標)の名称で販売)。オリガヌム・マジョラナ(Origanum majorana)植物の抽出物(Dermagenist(商標)の名称で販売)、及び/又はカヤ・セネガレンシス(Khaya senegalensis)の抽出物(Collalift(登録商標)18の名称で販売)もまた、化粧品組成物に添加してもよい。
【0087】
汚染防止剤及び/又は皮膚の輝きを増進させる薬剤としては、本願出願人によってArganyl(商標)の名称で販売されているアルガン油の抽出物、及びPurisoft(商標)の名称で販売されているモリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)の種子抽出物が挙げられるであろう。
【0088】
有利には、それが、リキウム・キネンセ(Lycium chinense)の果実の抽出物ではないであろう。
【0089】
本発明のまた別の主題は、皮膚組織の接着を維持及び/又は増強させるため、特には内皮細胞及び/又はリンパ細胞の接着を維持及び/又は増強させるため、及び/又は表皮の接着、及び/又は真皮-表皮の接合部の接着のための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物、又はそれを含む化粧品組成物の、局所投与又は経口投与、好ましくは局所投与を含む化粧品ケアプロセスに関する。
【0090】
したがって、前記プロセスによって、眼の周辺の領域における見栄えを防止すること、及び/又は眼のまわりの隈及び/又は眼の下のたるみを低減させることが可能となる。さらには、その化粧品ケアプロセスによって、皮膚の色の輝き及び/又は均一性を維持及び/又は増強することも可能となる。この場合においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、リキウム・キネンセ(Lycium chinense)の果実の抽出物と組み合わせて使用されることはない。前記プロセスによってさらに、皮膚のバリアー機能及び/又は皮膚の微小循環を維持及び/又は増強することも可能となる。
【0091】
本発明の一つの実施態様においては、プロセスは、本発明による抽出物又はそれを含む化粧品組成物を、脚、手、大腿、腹部、襟足、首、腕、胴部、背中、髪、顔面、特に眼の周辺の領域、有利には襟足及び/又は顔面、特に眼の周辺の領域、さらにより有利には眼の周辺の領域から選択される、顔面、頭皮及び/又は粘膜及び/又は体、の全部又は一部に局所投与することからなる。
【0092】
最後の主題は、有利には血管構造物及び/又は表皮の接着を増強することによる、顔面紅潮(前記抽出物は、リキウム・キネンセ(Lycium chinense)の果実の抽出物と組み合わせての使用はしない)、及び/又は皮膚組織の接着が減少することから起きる病態、特には痒み及び/又はひりひり感及び/又は掻痒感及び/又は灼熱感及び/又は目に見える鱗屑及び/又はクーペロシスを防止及び/又は低減させるために使用するための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む皮膚科学的な組成物に関する。
【0093】
したがって、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む皮膚科学的な組成物は、耐えがたいか及び/又は反応を起こしている皮膚及び/又は粘膜を処置するために使用することができる。
【0094】
耐えがたいか及び/又は反応を起こしている皮膚又は粘膜とは、痒み、ひりひり感、掻痒感、自覚的な灼熱感、目に見える鱗屑及び/又は顔面紅潮を呈している皮膚又は粘膜であるが、ただし、先に定義されたようなアトピー性の皮膚又は粘膜ではない。
【0095】
本発明の一つの有利な実施態様においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物又はそれを含む皮膚科学的な組成物が、脚、手、大腿、腹、襟足、首、腕、胴部、背中、顔面、特に眼の周辺の領域、有利には襟足及び/又は顔面、特には眼の周辺の領域から選択される、顔面及び/又は頭皮及び/又は粘膜及び/又は体の全部又は一部に局所的に適用されるであろう。
【0096】
本発明の特に有利な実施態様においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を、「顔面紅潮を低減させる(reducing ruddiness)」のに有効な量とするが、その場合、顔面紅潮における低減が、33人の女性のヒト母集団の顔面に、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む配合物を塗布してから7日又は28日後で、抽出物無しの同一の配合物に相当する対照と比較して、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%である。
【0097】
顔面紅潮における低減は、in vivoで測色法又は画像解析によって測定することができる。したがって、皮膚、特に顔面の色の評価は、パラメーターa*を測定することにより、実施できる。
【0098】
本発明の好ましい実施態様においては、それは、顔面紅潮を呈している顔面について実施例6(表4)の条件下で測定したパラメーターa*における低減、より好ましくは実施例1c)に従って調製したI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む、実施例9)に記載された配合物を塗布した後の低減である。
【0099】
有利には、顔面紅潮を防止及び/又は低減させるために使用されるそのI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、リキウム・キネンセ(Lycium chinense)の果実の抽出物との組合せでは使用されない。より有利には、前記抽出物は、臨界未満条件下、水中で得られる。別な方法として、顔面紅潮を防止及び/又は低減させるために使用される、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む皮膚科学的な組成物には、L・キネンセ(L.chinense)の果実の抽出物は一切含まれない。
【0100】
また別の実施態様においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、好ましくは臨界未満条件下、水中で得られるか、又はそれを含む皮膚科学的な組成物が、クーペロシスを防止するか及び/又は低減させるために使用される。
【0101】
したがって、本発明の有利な実施態様においては、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物が、組成物の合計重量を基準にして0.0001重量%~20重量%の間、好ましくは0.001重量%~5重量%の間、より好ましくは0.01重量%~3重量%の間の濃度の少なくとも1種の皮膚科学的に容認できる賦形剤を含む、皮膚科学的な組成物の中に含まれるであろう。
【0102】
本発明の極めて有利な実施態様においては、その抽出物が、掻痒感及び/又は痒みを防止するか及び/又は低減させるために、フォミトプシス・オフィキナリス(Fomitopsis officinalis)の各種抽出物及び/又はアガリクス・ブラゼイ(Agaricus blazei)の各種抽出物と組み合わせては使用されず、有利にはA・ブラゼイ・ムリイル(A.blazei Muriill)及び/又はヘリキウム・エリナケウム(Hericium erinaceum)の各種抽出物と組み合わせて使用されない。より有利には、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む本発明による組成物には、F・オフィキナリス(F.officinalis)の各種抽出物、及び/又はA・ブラゼイ(A.blazei)の各種抽出物、及び/又はH・エリナケウム(H.erinaceum)の各種抽出物を含まない。より有利な実施態様においては、本発明による組成物には、F・オフィキナリス(F.officinalis)の各種抽出物又はA・ブラゼイ(A.blazei)の各種抽出物、又はH・エリナケウム(H.erinaceum)の各種抽出物を含まない。
【0103】
本発明の記述を参照しながら、以下に実施例を示す。これらの実施例は、説明の目的で示すのであって、いかなる点においても本発明の範囲を限定するものではない。それぞれの実施例は、一般的な範囲を有している。それらの実施例は、本発明とは不可分の部分を形成し、そして各種の従来技術に比較して新規であるかのように見えるいかなる特徴も、記述を全体として受け取れば、実施例も含めて、本発明とは不可分の部分を形成している。
【0104】
特に断らない限り、パーセントは、重量/重量基準で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】本発明による抽出物の存在下における、内皮細胞内のVE-カドヘリンのタンパク質の発現における増強(A:対照、及びB:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物(0.001%(w/v)培地))。
【
図2】ストレスに暴露された再構築真皮のモデルにおける内皮構造物のたるみに及ぼすI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の効果(マーカーCD31)(A:対照、B:ストレス(TNF-α)、及びC:TNF-α+I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物)。
【
図3】本発明による抽出物の存在下における、線維芽細胞内のタイプIVコラーゲンのタンパク質の発現における増強(A:対照、及びB:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物(0.001%(w/v)培地))。
【
図4】本発明による抽出物の存在下における、内皮細胞内のタイプIVコラーゲンのタンパク質の発現における増強(A:対照、及びB:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物(0.001%(w/v)培地))。
【実施例】
【0106】
実施例1:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を得るための方法
実施例1a)
真菌と溶媒の合計量(重量)を基準にして10重量%の量の真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)の菌糸を、単一溶媒としての水の中に溶解させ、温度80℃で1時間かけて撹拌し、冷浸させた。次いで、その抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、その上澄みを濾過した(0.45μm)。そのようにして得られた抽出物は、液状である。
【0107】
実施例1b)
真菌と溶媒の合計量(重量)を基準にして10重量%の量の真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)の摩砕し乾燥させた菌糸を、エタノール/水混合物(70/30;v/v)の中に溶解させ、温度60℃で1時間かけて撹拌し、冷浸させた。そのようにして得られた抽出物を、デカントし、遠心分離にかけ、得られた上澄みを濾過した(0.45μm)。エタノールを蒸発除去させ、その抽出物を再度濾過した(0.45μm)。そのようにして得られた抽出物は、液状である。
【0108】
実施例1c)
真菌と溶媒の合計量(重量)を基準にして10重量%の量の真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)の摩砕し乾燥させた菌糸を、抽出カラム中で、温度160℃での臨界未満条件下で、水の中に抽出した。次いでその抽出物を、濃縮し、濾過した(0.45μm)。そのようにして得られた抽出物は、液状である。
【0109】
実施例1d)
真菌と溶媒の合計量(重量)を基準にして10重量%の量の真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)の摩砕し乾燥させた菌糸を、抽出カラム中で、温度160℃での臨界未満条件下で、水の中に抽出した。次いでその抽出物を濃縮し、そして濾過し(0.45μm)、次いで乾燥させ、摩砕した。その抽出物は、粉体状である。
【0110】
実施例1e)
実施例1c)の記載のようにして得られた抽出物を、グリセロールの中で希釈して、80重量%のグリセロールを含む水-グリセロール溶液を得た。
【0111】
実施例1f)
実施例1a)の記載のようにして得られた液状の抽出物を、凍結乾燥させた。
【0112】
実施例1g)
実施例1b)の記載のようにして得られた液状の抽出物を、凍結乾燥させた。
【0113】
実施例1h)
真菌と溶媒の合計量(重量)を基準にして10重量%の量の真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)の菌核を、単一溶媒としての水の中に溶解させ、温度80℃で1時間かけて撹拌し、冷浸させた。次いで、その抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、その上澄みを濾過した(0.45μm)。そのようにして得られた抽出物は、液状である。
【0114】
実施例1i)
真菌と溶媒の合計量(重量)を基準にして10重量%の量の真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)の摩砕し乾燥させた菌核を、エタノール/水混合物(70/30;v/v)の中に溶解させ、温度60℃で1時間かけて撹拌し、冷浸させた。そのようにして得られた抽出物を、デカントし、遠心分離にかけ、得られた上澄みを濾過した(0.45μm)。エタノールを蒸発除去させ、その抽出物を再度濾過した(0.45μm)。そのようにして得られた抽出物は、液状である。
【0115】
実施例1j)
真菌と溶媒の合計量(重量)を基準にして10重量%の量の真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)の摩砕し乾燥させた菌核を、抽出カラム中で、温度160℃での臨界未満条件下で、水の中に抽出した。次いでその抽出物を、濃縮し、濾過した(0.45μm)。そのようにして得られた抽出物は、液状である。
【0116】
実施例1k)
真菌と溶媒の合計量(重量)を基準にして10重量%の量の真菌のI・オブリクウス(I.Obliquus)の摩砕し乾燥させた菌核を、抽出カラム中で、温度160℃での臨界未満条件下で、水の中に抽出した。次いでその抽出物を濃縮し、そして濾過し(0.45μm)、次いで乾燥させ、摩砕した。その抽出物は、粉体状である。
【0117】
実施例1l)
実施例1j)の記載のようにして得られた抽出物を、グリセロールの中で希釈して、80重量%のグリセロールを含む水-グリセロール溶液を得た。
【0118】
実施例1m)
実施例1h)の記載のようにして得られた液状の抽出物を、凍結乾燥させた。
【0119】
実施例1n)
実施例1i)の記載のようにして得られた液状の抽出物を、凍結乾燥させた。
【0120】
実施例2:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下での、内皮細胞内のVE-カドヘリンの発現の増強
プロトコル:
正常な内皮細胞(病的組織由来ではない)を、FBS(ウシ胎仔血清)を含む培地の中で、3日かけて培養した。その増殖培地を、増殖因子を含まない内皮細胞のための培地と置換し、次いでその細胞を、TNF-α(潰瘍壊死因子-α)の存在下(陽性対照)、又は実施例1d)に従って調製したI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を補充したTNF-αと共に、又は抽出物無し(対照)で、3日かけてインキュベートした。
【0121】
その処置の後で、アセトンを用い、-20℃で10分かけて細胞を固定した。PBS緩衝液(リン酸塩生理食塩液)を用いて洗浄してから、それらの切片を、血清溶液の中に30分間入れておいた。抗-VE-カドヘリン一次抗体を、4℃で一夜かけてインキュベートした。PBSを用いて洗浄してから、蛍光色素Alexa 488にカップリングさせた二次抗体を、遮光下に室温(20℃)で45分かけて適用した。室温で5分ずつ数回洗浄してから、対比染色剤のエバンスブルーを適用した。共焦点顕微鏡(TCS-SP2、Leica)を使用して、観察を実施した。次いで、得られた画像を使用して、微小血管の光の平均面積(the mean area of the light)の測定を実施した。統計的な検定は、マン-ホイットニー検定を介して実施した。
【0122】
結果と結論:それらの結果を、以下の表1と
図1で照合する。
【0123】
【0124】
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物によって、TNF-αの存在の条件に対して、微小血管の光の平均面積を修復し、そして顕著に増強させることが可能となった。
図1に、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下に、VE-カドヘリンのタンパク質の発現の増強を介しての、内皮細胞の増強された接着を、対照と比較して示す。このように、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物によって、皮膚の微小循環を維持及び/又は増強することが可能となる。
【0125】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0126】
実施例3:再構築された真皮のモデルにおける、マーカーCD31のタンパク質の発現の増強
プロトコル:
線維芽細胞で構成される真皮を接種により得て、10%の血清及びビタミンCを補充したDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)の中に21日間浸漬させてインキュベートした。内皮細胞及びリンパ細胞を添加し、10%の血清及びEGF(上皮成長因子)の存在下にインキュベートした。それらのシートを重ね合わせてインキュベートした。TNF-α(潰瘍壊死因子-α)を用いるか(陽性対照)、又は実施例1d)により得られたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を補充(0.001%w/v)したTNF-αを用いた処置を、7日間実施した(n=4)。再構築された真皮の中で、パラフィン中に切片を作成し、次いで標識付けをした。それらの切片の脱パラフィンを行い、再水和させ、次いでクエン酸塩緩衝液の中で回収した。それらの切片を、2%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いてインキュベートすることにより飽和させた。次いでそれらの切片を、抗CD31一次抗体と共に一夜インキュベートした。5回洗浄してから、蛍光色素Alexa 488と結合させた二次抗体を、遮光下に45分かけて適用した。共焦点顕微鏡(Zeiss、LSM700)を用いて観察した。次いで、得られた画像を使用して、微小血管の光の平均面積の測定を実施した。統計的な検定は、マン-ホイットニー検定を介して実施した。
【0127】
結果と結論:
それらの結果を、以下の表2と
図2で照合する。
【0128】
【0129】
TNF-αを用いて、ストレスの影響をin vitroで模倣したが、TNF-αは、皮膚の微小血管構造の組織と機能を変化させることが知られている。それは、崩壊された構造の存在に反映される。それらは、たるみ構造とも呼ばれている。
【0130】
実施例1d)に従って調製したI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下では、皮膚の微小血管構造は、再建された(対照と同等)。したがって、本発明による抽出物によって、皮膚の微小血管構造に及ぼすストレスの影響を補正することが可能となる。このように、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物によって、皮膚の微小循環を維持及び/又は増強することが可能となる。
【0131】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0132】
実施例4:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下でのタイプIVコラーゲンの合成の増強
実施例4a)ケラチノサイト
プロトコル:
いかなる病態も呈さないケラチノサイトを、KSFM特異培地の中37℃で培養して(5%CO2;95%相対湿度)、集密を達成させ、次いで、実施例1d)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物と共に、又はI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物無しで、48時間かけてインキュベートした。培地を除き、水酸化アンモニウムをベースとする溶解溶液を用いて、細胞を溶解させた。BSA(ウシ血清アルブミン)溶液を用い、30分かけてウェルを飽和させ、次いで抗コラーゲンIV抗体と共に1時間かけてインキュベートした。洗浄してから、それらの細胞を、ウサギ(ヤギの抗ウサギ)二次抗体と共に1時間インキュベートした。培地を除き、蛍光発色溶液で置換した。蛍光は、340exc/615emナノメートルで記録した。
【0133】
コラーゲンIV濃度は、市場に出回っているコラーゲンIV標準曲線から推論した。それらの結果は、細胞の中に含まれるDNAの量に対して正規化した(Picogreen kit)。
【0134】
結果:
【0135】
【0136】
結論:
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、ケラチノサイトの中のコラーゲンIVの発現を少なくとも100%増強し、表皮の接合部の接着を増強するその能力を示した。したがって、この抽出物は、肌の色の輝きの増強を可能とする。
【0137】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0138】
実施例4b)線維芽細胞
プロトコル:
正常な(病気ではない)線維芽細胞を、特異培地(Normal Human Dermal Fibroblasts、Promocell)の中に接種し、2日間培養してから、実施例1d)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物有り又は無しで、48時間インキュベートした。培養の後で、アセトンを用い-20℃で10分間かけて細胞を固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)緩衝液を用いて洗浄し、次いで血清溶液中で、30分間インキュベートした。抗コラーゲンIV一次抗体を、室温(20℃)で2時間インキュベートした。PBSを用いて洗浄してから、Alexa 488にカップリングさせた二次抗体を、遮光下に室温(20℃)で45分かけて適用した。室温(20℃)で5分ずつ数回洗浄してから、対比染色剤のエバンスブルーを適用した。共焦点顕微鏡(TCS-SP2、Leica)を使用して、観察を実施した。
【0139】
結果と結論:
図3
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、線維芽細胞の中のコラーゲンIVのタンパク質の発現を増強し、表皮の接合部の接着を増強するその能力を示した。したがって、本発明による抽出物は、皮膚の色の輝きを増強する。
【0140】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0141】
実施例4c)内皮細胞
プロトコル:
正常な内皮細胞(病的組織由来ではない)を、内皮細胞のために特異化させた培地の中で、37℃(5%CO2)で培養して、集密に到達させた。それらの細胞を、実施例1d)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物有り又は無しで、48時間インキュベートした。その処置の後で、アセトンを用い、-20℃で10分かけて細胞を固定した。PBS緩衝液を用いて洗浄してから、それらのスライドを、血清溶液の中に30分間入れておいた。抗コラーゲンIV一次抗体を、室温(20℃)で2時間インキュベートした。PBSを用いて洗浄してから、Alexa 488にカップリングさせた二次抗体を、遮光下に室温で45分かけて適用した。室温で5分ずつ数回洗浄してから、対比染色剤のエバンスブルーを適用した。共焦点顕微鏡(TCS-SP2、Leica)を使用して、観察を実施した。
【0142】
結果と結論:
図4
これらの結果は、内皮細胞の中のタイプIVコラーゲンのタンパク質の発現を増強させ、従ってそれらの接着を増強させる、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の能力を示した。したがって、本発明によるI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物によって、眼の周辺の領域において見栄えを防止し、及び/又は眼の下のたるみ及び/又は眼のまわりの隈を低減させることが可能となる。
【0143】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0144】
実施例5:本発明による抽出物の存在下における、マーカーHSP70のタンパク質の発現の増強
プロトコル:
線維芽細胞を、FGM(Fibroblast Growth Medium)培地の中で、温度37℃、5%CO2、及び95%相対湿度で培養して、集密に到達させた。それらの細胞を、実施例1d)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物有り又は無しで、48時間インキュベートした。それらの細胞を、PBS(リン酸緩衝生理食塩液)緩衝液を用いて洗浄してから、溶解させた。その溶解物を集め、ウサギ抗HSP70一次抗体と共に30分間インキュベートし、それに続けて二次抗体を用いた。自動化ウェスタンブロット法により試料を40分かけて溶離させ、タンパク質を、それらの分子量の関数として分離することを可能とした。ケミルミネッセンス法で顕色させてから、タンパク質HSP70の検出を実施した。細胞溶解物の中に含まれているタンパク質の量は、市販のBCA(BiCinchoninic acid Assay)キットを使用して定量した。それらの結果は、タンパク質の量に関連させて合理化し、百分率で表した。
【0145】
結果:
【0146】
【0147】
結論:
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、マーカーHSP70のタンパク質の発現を増強させる、従って真皮-表皮の接合部の接着を増強させるのに有効であることを示し、したがって、皮膚の色の輝きを維持及び/又は増強することを可能とする。
【0148】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0149】
実施例6:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下での、肌の色の輝きを増強させ、そして顔面紅潮を低減させることの、in vivoでの測定
プロトコル:
35~58歳の33人の顔面紅潮を示す女性の母集団について、臨床試験を実施した。実施例1c)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を、組成物の合計重量を基準にして0.2重量%含む、実施例9に記載された組成物を、対象の母集団の顔面の半分に、1日2回、7日間及び28日間塗布した。水と置き換えてI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含まない組成物を、対照として、その母集団の顔面の残りの半分に塗布した。
【0150】
顔面紅潮及び皮膚の輝かしい外観の強度を、時間0(最初の塗布の前)、T7及びT28(それぞれ第7日、及び第28日)に、色彩色差計を使用してパラメーターのa*及びL*を測定することにより、測定した。パラメーターa*の低下は、顔面紅潮の強度の低下を反映している。パラメーターL*の増大は、皮膚の輝かしい外観における増強を反映している。
【0151】
結果:
【0152】
【0153】
結論:
対照に比較して、顔面の半分の紅潮の強度における顕著な低下が、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む組成物の塗布から7日後及び28日後に測定されたが、このことは、皮膚の顔面紅潮を防止及び低減させるための、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の能力を反映している。
【0154】
【0155】
結論:
対照に比較して、パラメーターL*における、従って皮膚の輝かしい外観における顕著な増強が、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を含む組成物を塗布してから28日後には、測定された。したがって、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、皮膚の色の輝きを増強させるのには有効である。
【0156】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0157】
実施例7:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下でのインボルクリンの発現の増強
プロトコル:
正常な(病気ではない)ヒトケラチノサイトを、2%のウシ胎児血清及び0.03mMのカルシウムの存在下、37℃(5%CO2)で3日かけて培養してから、I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を2段階の高い濃度で用いるか、又は抽出物無しで、さらに3日間インキュベートした(実施例1d)において調製したI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物)。タンパク質のインボルクリンを抽出し、ELISA法によって、その量を測定した。それらの結果を、対照(抽出物添加無しでの培養)に対する平均パーセントとして表す(n=3)。
【0158】
結果:
【0159】
【0160】
結論:
その抽出物は、ヒトケラチノサイトの中のインボルクリンのタンパク質の発現を増強させ、そしてそれらをコルネオサイトに区別するのに有効であることを示し、表皮の接着だけではなく皮膚のバリアー機能も改良することを可能とした。
【0161】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0162】
実施例8:I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物を用いた表皮の接着の補強
プロトコル:
健康な59歳のドナーから得た、「正常な」ヒトケラチノサイト、すなわち、いかなる病態も示さないケラチノサイトを、2種の異なった最終濃度の、実施例1d)に従って調製されたI・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物の存在下、又はそれの不在下(対照)で、48時間培養し、次いでその細胞培地を除いた。それらの細胞を回収し、免疫学的局在決定(ウェスタンブロット法)を実施する目的で、規定の溶解緩衝液(CellLytic、Sigma)を用いて溶解させた。そのタンパク質濃度は、BCA法により求めた。それらのタンパク質は、抗インテグリンβ-1、抗クラウディン-1、及び抗オクルディン一次抗体を使用したキャピラリー電気泳動によって同定し、次いでペルオキシダーゼ結合抱合二次抗体を使用して免疫局在化させた。それらの結果を定量化し、未処理の対照と対比して表した。
【0163】
結果:
【0164】
【0165】
【0166】
結論:
I・オブリクウス(I.Obliquus)の抽出物は、皮膚ケラチノサイトにおけるインテグリンβ-1、クラウディン-1、及びオクルディンの合成を刺激する、その能力を示した。したがって、その抽出物は、表皮の接着を増強させるのに有効であり、感受性が高いか及び/又は耐えがたいか及び/又は反応を起こしている皮膚を、保護及び快適化するのに使用することができる。
【0167】
実施例1k)による抽出物を使用しても、同じ結果が得られる。
【0168】
実施例9)顔面のための配合物
【0169】
【0170】