(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】電極の位置追跡システム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20240909BHJP
B65H 43/00 20060101ALI20240909BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240909BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240909BHJP
【FI】
G01D5/12 G
B65H43/00
H01M4/04 A
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2023543026
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 KR2022011750
(87)【国際公開番号】W WO2023018135
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0107647
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ファン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・パク
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヨプ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョ・ス
(72)【発明者】
【氏名】キ・ドク・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】スン・フ
(72)【発明者】
【氏名】ス・ワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ギ・ヨン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ス・キム
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-266739(JP,A)
【文献】特開2015-159015(JP,A)
【文献】特表2021-515963(JP,A)
【文献】特表2022-524671(JP,A)
【文献】特開2020-27721(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3525265(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12
H01M 4/04
H01M 4/139
B65H 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノッチング加工される単位電極の幅であるピッチ情報が保存され、ノッチング工程においてロールツーロール状態で移送される電極ラインの電極座標情報および前記単位電極のセルIDを取得するノッチング制御部と、
前記ノッチング制御部から取得されたピッチ情報とセルIDから前記ノッチング工程で移動する特定の単位電極の位置であるセルID座標を演算する演算部と、
電極の長手方向寸法が座標として表示されノッチング工程前の電極製造工程での電極の長さ変化を把握するロールマップを、前記ノッチング制御部から伝達される電極座標情報から生成するロールマップ生成部と、
前記ロールマップの座標と前記セルID座標とを対照して、前記特定の単位電極が由来する電極製造工程における電極位置を導出するマッピング部と、を含む電極位置追跡システム。
【請求項2】
前記ノッチング工程においてロールツーロール状態で移送される電極ラインの電極座標情報は、前記ノッチング工程でアンワインダとリワインダとの間で電極がロールツーロール移送されるときに前記アンワインダとリワインダの回転量に応じた電極位置を示すエンコーダ値の情報である、請求項1に記載の電極位置追跡システム。
【請求項3】
前記単位電極のセルIDは、前記ノッチング工程で打ち抜き加工される電極タブに表示される識別標識であり、前記識別標識は、ロールツーロール状態で移送される電極の上部に配置されて前記ノッチング制御部と連結された識別標識スキャナによって取得される、請求項1に記載の電極位置追跡システム。
【請求項4】
前記演算部は、前記識別標識から前記特定の単位電極の順番を求め、前記順番と前記ピッチ情報とを乗算して前記セルIDの座標を求める、請求項3に記載の電極位置追跡システム。
【請求項5】
前記単位電極の識別標識に応じた順番が保存される保存部をさらに含み、
前記演算部は前記単位電極の識別標識と前記保存部に保存された順番とを対照して前記特定の単位電極の順番を求める、請求項4に記載の電極位置追跡システム。
【請求項6】
前記ノッチング工程前の電極製造工程は、電極活物質を集電体にコーティングしてコーティング電極を形成するコーティング工程およびコーティング電極をプレスロールで圧延するロールプレス工程を少なくとも含む、請求項1に記載の電極位置追跡システム。
【請求項7】
前記ノッチング工程前の電極製造工程は、前記ロールプレス工程後に圧延された電極を長手方向に沿って切断するスリッティング工程をさらに含む、請求項6に記載の電極位置追跡システム。
【請求項8】
前記ロールマップ生成部は、前記ロールマップ生成部に保存された電極製造工程での電極長さの変化に関するデータを前記ノッチング制御部から伝達される電極座標情報に反映して電極製造工程の各細部工程におけるロールマップを各細部工程別に生成する、請求項1に記載の電極位置追跡システム。
【請求項9】
前記ロールマップの座標は、電極長さの変化が反映された相対座標と反映されない絶対座標とを含む、請求項8に記載の電極位置追跡システム。
【請求項10】
前記マッピング部は、前記特定の単位電極のセルID座標に前記電極製造工程の各細部工程におけるロールマップによって把握される電極長さの減少値を足して前記特定の単位電極が由来する電極製造工程の各細部工程における電極位置を導出する、請求項8に記載の電極位置追跡システム。
【請求項11】
前記電極長さの減少は、各細部工程中の電極除去または細部工程後の電極除去のうち少なくとも一つによるものである、請求項10に記載の電極位置追跡システム。
【請求項12】
前記マッピング部は、前記ノッチング工程中に電極が除去された場合、除去された電極の長さと前記各細部工程のロールマップによって把握される電極長さの減少値を前記特定の単位電極のセルID座標に足して、前記特定の単位電極が由来する各細部工程における電極位置を導出する、請求項10に記載の電極位置追跡システム。
【請求項13】
前記電極製造工程の各細部工程にコーティング工程とロールプレス工程とが少なくとも含まれ、前記コーティング工程後の電極が前記ロールプレス工程での電極圧延によって所定の割合で延伸され、
前記マッピング部は前記電極の延伸により電極長さが増加される電極増加分を反映して前記特定の単位電極が由来する前記コーティング工程における電極の位置を導出する、請求項10に記載の電極位置追跡システム。
【請求項14】
前記マッピング部は、前記特定の単位電極のセルID座標に前記ロールプレス工程のロールマップで把握される電極長さの減少値を足して前記特定の単位電極が由来するロールプレス電極位置を求め、
前記ロールプレス電極位置を前記所定の割合で割り算して前記特定の単位電極が由来する前記コーティング工程における電極位置を求める、請求項13に記載の電極位置追跡システム。
【請求項15】
前記ロールマップ生成部は、前記コーティング工程、前記ロールプレス工程および前記スリッティング工程のロールマップをそれぞれ生成し、
前記マッピング部は、前記セルIDの座標と、前記コーティング工程、前記ロールプレス工程および前記スリッティング工程のロールマップ座標とを対比して前記特定の単位電極が由来する前記スリッティング工程、前記ロールプレス工程または前記コーティング工程における電極位置を導出する、請求項7に記載の電極位置追跡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノッチング工程の前の段階で製造される電極の位置を追跡し得る電極位置追跡システムに関するものである。
【0002】
本出願は、2021年8月13日付の韓国特許出願第10-2021-0107647号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加により、二次電池の需要も急激に増加している。そのなかでも、リチウム二次電池は、エネルギー密度と作動電圧が高く、保存と寿命特性に優れるという点で、各種モバイル機器はもちろん多様な電子製品のエネルギー源として広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の電極を製造する電極製造工程は、集電体である金属極板の表面に活物質および所定の絶縁物質を塗布して正極と負極を構成するコーティング工程と、コーティングされた電極を圧延するロールプレス工程と、圧延された電極を寸法に応じて切断するスリッティング工程との複数個の細部工程からなる。
【0005】
電極製造工程で製造された電極は、ノッチング工程により電極タブが形成され、正極と負極との間に分離膜を介在させて電極組立体となった後、この電極組立体をスタッキングまたは折り畳みしてパウチや缶などで包装し、電解液を注液する組み立て工程を通じて二次電池の形態が作られる。その後、組み立てられた二次電池は、充放電されて電池特性を付与する活性化工程を経て最終的な完成品の二次電池となる。
【0006】
電極ノッチング工程も広義には電極製造工程と見なし得るが、通常、電極タブを打ち抜きする電極ノッチング工程の後は、電極組み立て工程と見なす。したがって、本明細書では、ノッチング工程の前の段階を電極製造工程(いわゆる電極工程)と見なす。
【0007】
図1は、このような電極製造工程とノッチング工程における電極の状態が図示されている。
【0008】
コーターでは 活物質が集電体にコーティングされ、活物質がコーティングされた有地部11とコーティングされない無地部12が形成される。その後、電極は、ロールプレス工程でのプレスロールにより加圧されて延伸し、スリッティング工程でのスリッターにより電極の長手方向に沿って切断される。
【0009】
その後、ノッチング工程でのプレスなどにより打ち抜きされて電極タブが形成される。上記ノッチング工程では、電池セルとして製造される単位電極別にカッティングされるか、あるいは後の工程でカッティングされるように単位電極別に電極タブ13が形成される。したがって、単位電極の幅は、プレスが加工するピッチPに該当する。
【0010】
一方、上記電極製造工程およびノッチング工程では、電極がアンワインダとリワインダとの間で巻取されてロールツーロール状態で移送される。
【0011】
図2は、電極製造工程でのロールマップを図示したものである。
【0012】
コーティング工程、ロールプレス工程、スリッティング工程などにおける電極は、ロールツーロールの状態で進む。ロールマップは、このような電極の進行をシミュレートしてバー(BAR)の形態で示したものであり、上記ロールマップ上には電極の長手方向の寸法が座標として図示されている。このようなロールマップは、電極製造工程で発生する不良、品質、電極破断などに関する情報が上記座標とともに図示されており、電極製造工程における品質や不良に関するデータを一目で視覚的に容易に把握し得る。例えば、
図2のように、第1工程で電極10に破断が生じて作業者がそれを継ぎ目連結部材Tで連結する場合、電極の長さが破断された長さほど短くなる。ロールマップはこのような状況もシミュレートしてロールマップ上の座標を修正し得る。
図2を参照すると、第1工程のロールマップRが補正され、第2工程のロールマップR'では、実際の電極と同じく全体のバーの長さおよび電極上に表示された基準点M1、M2、M3の位置が修正されている。このように、ロールマップは、電極の破断などの電極ロス(loss)に関する情報を含む。また、ロールマップの座標は、各工程別に電極長さの変化が反映された相対座標(
図2のR’を参照)と電極長さの変化が反映されない絶対座標とで表示し得る。上記相対座標と絶対座標は、一つのロールマップ上に併記して表示し得る。また、絶対座標で表示されたロールマップは、電極の破断などで損失されたロスの長さをロールマップバー上に視覚的に表示し得る。
【0013】
ところで、電極製造工程とノッチング工程を含む従来の電池製造過程では、半製品または完成品である電池に不良などが発生した場合、ノッチング工程までは不良の原因が分析可能であった。例えば、
図1の電極タブ13にセルIDを印刷し、半製品または完成品の電池に問題が生じると、このセルIDを確認して半製品または完成品の製造前のどの段階での原因に由来するのかを分析し得る。したがって、ノッチング工程後の電池製造過程では、上記セルIDを追跡して上記セルIDを含む半製品または完成品がどの段階、どの位置で製造されたのかを確認し得るため、電池セル単位で品質の追跡が可能であった。
【0014】
しかしながら、このような電池セル単位の品質追跡はノッチング工程までのみが可能であり、ノッチング工程前の電極製造工程では行われなかった。ノッチング工程の前には、当該電池セルが作られた電極ロールのロット番号のみを確認し得た。これにより、不良品電池セルが見つかった場合、当該電池セルが生産された電極製造工程ラインの電極ロール全体を廃棄しなければならないという状況が発生した。
【0015】
したがって、ノッチング工程の前の電極製造過程でも電池セル単位で品質追跡し得る技術の開発が必要であるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0011228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたものであって、電極製造工程におけるロールマップ情報を用いてノッチング工程で製造された単位電極が由来する電極の位置を追跡し得る電極位置追跡システムを提供するためのものある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明の電極位置追跡システムは、ノッチング加工される単位電極の幅であるピッチ(pitch)情報が保存され、ノッチング工程でロールツーロール状態で移送される電極ラインの電極座標情報および上記単位電極のセルIDを取得するノッチング制御部と、上記ノッチング制御部から取得されたピッチ情報とセルIDから上記ノッチング工程で移動する特定の単位電極の位置であるセルID座標を演算する演算部と、電極の長手方向の寸法が座標として表示されてノッチング工程の前の電極製造工程における電極の長さの変化を把握し得るロールマップを上記ノッチング制御部から伝達される電極座標情報から生成するロールマップ生成部と、上記ロールマップ座標と上記セルID座標とを対照して特定の単位電極が由来する電極製造工程における電極位置を導出するマッピング部と、を含む。
【0019】
一例として、上記ノッチング工程でロールツーロール状態で移送される電極ラインの電極座標情報は、ノッチング工程でのアンワインダとリワインダとの間で電極がロールツーロール移送されるとき、上記アンワインダとリワインダの回転量に応じた電極位置を示すエンコーダ値の情報であり得る。
【0020】
一例として、上記単位電極のセルIDは、ノッチング工程で打ち抜き加工される電極タブに表示される識別標識であり、上記識別標識はロールツーロール移送される電極の上部に配置され、上記ノッチング制御部に連結された識別標識スキャナによって取得され得る。
【0021】
具体的には、上記演算部は、上記識別標識から上記特定の単位電極の順番を求め、上記順番と上記ピッチ情報とを乗算してセルID座標を計算し得る。
【0022】
他の例として、上記単位電極の識別標識に応じた順番が保存される保存部をさらに含み、上記演算部は、上記単位電極の識別標識と上記保存部に保存された順番とを対照して上記特定の単位電極の順番を計算し得る。
【0023】
具体的には、上記ノッチング工程前の電極製造工程は、電極活物質を集電体にコーティングしてコーティング電極を形成するコーティング工程、コーティング電極をプレスロールで圧延するロールプレス工程を少なくとも含み得る。
【0024】
また、上記ノッチング工程前の電極製造工程は、上記ロールプレス工程後に圧延された電極を長手方向に沿って切断するスリッティング工程をさらに含み得る。
【0025】
上記ロールマップ生成部は、上記ロールマップ生成部に保存された電極製造工程における電極長さの変化に関するデータを上記ノッチング制御部から伝達される電極座標情報に反映して、電極製造工程の各細部工程におけるロールマップを各細部工程別に生成し得る。
【0026】
一例として、上記ロールマップの座標は、電極長さの変化が反映された相対座標と反映されない絶対座標とを含み得る。
【0027】
一例として、上記マッピング部は、上記特定の単位電極のセルID座標に上記電極製造工程の各細部工程におけるロールマップによって把握される電極長さの減少値を足して、上記特定の単位電極が由来する電極製造工程の各細部工程における電極位置を導出し得る。
【0028】
具体的には、上記電極長さの減少は、各細部工程中の電極除去または細部工程後の電極除去のうち少なくとも一つによるものであり得る。
【0029】
また、上記マッピング部は、上記ノッチング工程中に電極が除去された場合、上記除去された電極の長さと上記各細部工程のロールマップによって把握される電極長さの減少値を上記特定の単位電極のセルID座標に足して、上記特定の単位電極が由来する各細部工程における電極位置を導出し得る。
【0030】
他の例として、上記電極製造工程の各細部工程に電極コーティング工程とロールプレス工程とが少なくとも含まれて、上記電極コーティング工程完工後の電極がロールプレス工程での電極圧延により所定の割合で延伸されるとき、上記マッピング部は、上記電極延伸によって電極長さが増加される電極増加分を反映して上記特定の単位電極が由来する上記電極コーティング工程における電極位置を導出し得る。
【0031】
ここで、上記マッピング部は、上記特定の単位電極のセルID座標に上記ロールプレス工程のロールマップで把握される電極長さの減少値を足して上記特定の単位電極が由来するロールプレス電極位置を計算し、上記ロールプレス電極位置を上記所定の割合で割り算して上記特定の単位電極が由来する電極コーティング工程における電極位置を計算し得る。
【0032】
別の例として、上記ロールマップ生成部は、上記コーティング工程、ロールプレス工程およびスリッティング工程のロールマップをそれぞれ生成する。そして、上記マッピング部は、上記セルID座標と、上記コーティング工程およびロールプレス工程およびスリッティング工程のロールマップ座標とを対照して、上記特定の単位電極が由来する上記スリッティング工程、ロールプレス工程または電極コーティング工程における電極位置を導出し得る。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、ノッチング工程前の電極製造工程において、ノッチング工程の単位電極が由来する電極の位置を追跡できる。
【0034】
また、ノッチング工程で製造された単位電極が電極製造工程のどの電極に由来するのかを把握できるため、後の工程の半製品や完成品電池セルの不良原因分析や品質追跡を電極製造工程にまでセル単位で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】電極製造工程とノッチング工程における電極の状態を図示した模式図である。
【
図2】電極製造工程におけるロールマップを図示したものである。
【
図3】本発明の電極位置追跡システムを示したブロック図である。
【
図4】本発明の電極位置追跡システムに係るノッチング制御部が制御するノッチング工程を説明するための概略図である。
【
図5】ノッチング工程中に電極が除去された場合、その除去長さを導出する過程を説明する概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る電極位置追跡システムの電極位置追跡過程を示した模式図である。
【
図7】電極コーティング後のロールプレス工程で電極が延伸されることを示した概略図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る電極位置追跡システムの電極位置追跡過程を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面と多様な実施形態により本発明の細部構成を詳細に説明する。以下で説明される実施形態は本発明の理解を助けるために例示的に示されたものであり、添付の図面は本発明の理解を助けるために実際の縮尺とおりに示されたものではなく、一部の構成要素の寸法が誇張されて図示され得る。
【0037】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるため、特定の実施形態を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかしながら、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解されたい。
【0038】
図3は、本発明の電極位置追跡システム1000を示したブロック図である。
【0039】
本発明の電極位置追跡システム1000は、ノッチング加工される単位電極の幅であるピッチ(pitch)情報が保存され、ノッチング工程においてロールツーロール状態で移送される電極ラインの電極座標情報および上記単位電極のセルIDを取得するノッチング制御部100と、上記ノッチング制御部から取得されたピッチ情報とセルIDから上記ノッチング工程で移動する特定の単位電極の位置であるセルID座標を演算する演算部200と、電極長手方向寸法が座標で表示されてノッチング工程前の電極製造工程における電極長さの変化を把握し得るロールマップを上記ノッチング制御部100から伝達される電極座標情報から生成するロールマップ生成部と、上記ロールマップ座標と上記セルID座標とを対照して特定の単位電極が由来する電極製造工程における電極位置を導出するマッピング部400と、を含む。
【0040】
本発明は、ノッチング工程前の電極製造過程をセル単位で追跡するためのものである。したがって、電極位置追跡のためには、まず、ノッチング工程における追跡対象電極の位置を特定しなければならない。ノッチング工程では、連続的な電極シートが単位電極の間隔で加工されるので、上記単位電極のうち特定の単位電極を追跡対象電極として説明する。
【0041】
本発明の電極位置追跡システム1000は、ノッチング制御部100、演算部200、ロールマップ生成部300、およびマッピング部400を含む。
【0042】
上記ノッチング制御部100は、ノッチング工程においてロールツーロール状態で移送される電極ラインの移送を制御するための制御部100である。例えば、PLC制御部である。上記制御部100には、単位電極の間隔でノッチングするために単位電極の幅であるピッチ情報が保存されている。また、上記制御部100は、アンワインダとリワインダとの間でロールツーロール状態で進む電極ラインの電極座標情報を取得し得る。上記電極座標情報は、ノッチング工程においてアンワインダとリワインダとの間で電極がロールツーロール移送されるとき、上記アンワインダとリワインダの回転量に応じた電極位置を示すエンコーダ値の情報から取得し得る。ノッチング制御部100の機能を説明するために、通常のノッチング工程について説明する。
【0043】
図4は、本発明の電極位置追跡システム1000に係るノッチング制御部100が制御するノッチング工程を説明するための概略図である。
【0044】
ロールプレス工程またはスリッティング工程を経た電極は、
図4のようにアンワインダUWにローディングされ上記アンワインダUWから解き出されて、リワインダRWに向かって進みながらノッチング加工される。上記電極10はアンワインダUWからの巻出、リワインダRWで巻取されるので、その電極の移動量または各電極10の位置は上記アンワインダUWおよびリワインダRWの回転量から計算され得る。上記アンワインダUWおよびリワインダRWには、(ロータリー)エンコーダ30が設置されている。エンコーダは、モータ回転量から電極の変位や位置値であるエンコーダ値を抽出し得る。すなわち、上記エンコーダ30は、アンワインダUWおよびリワインダRWに設置されたモータ駆動部に連結されて上記アンワインダUWとリワインダRWの回転量に応じた電極位置を示すエンコーダ値を表出する。このエンコーダ値の情報により、ノッチング工程での電極ラインの電極座標情報(すなわち、電極位置情報)を取得し得る。
図4のように、アンワインダエンコーダ30Uおよびリワインダエンコーダ30Rは、ノッチング制御部100に連結されて電極移動に応じたエンコーダ値をノッチング制御部100に送出している。これにより、上記ノッチング制御部100は、上記エンコーダ値からロールツーロール状態で移送される電極ラインの電極座標情報を取得することができ、電極長さ情報も取得し得る。
【0045】
一方、上記制御部100は、ノッチングされる各単位電極のセルIDも取得し得る。
図4を参照すると、ノッチング工程において、電極は打ち抜き装置50で打ち抜きされて、単位電極別に電極タブが形成される。電極タブの形状は
図1によく図示されている。上記打ち抜き後に単位電極の電極タブには、所定の識別標識が具備される。例えば、電極タブにバーコードを印刷するかあるいはレーザーマーキングする。上記バーコードやレーザーマーキングなどの識別標識によって当該単位電極またはその単位電極で製造された半製品や完成品の電池セルを他の半製品および完成品と区別し得る。このような意味で、上記識別標識は、電池セルのアイデンティティを表すセルIDと称する。上記セルIDを印刷する装置を
図4には図示しなかった。ただし、打ち抜き装置50で打ち抜き加工されて識別標識が印刷された単位電極のセルIDは、識別標識スキャナ60によってスキャンされて上記ノッチング制御部100に転送される。ノッチング制御部100は、このセルIDとピッチ情報を演算部200に送り、演算部200では上記ピッチ情報とセルIDからノッチング工程で移動する特定の単位電極の位置であるセルID座標を演算し得る。
【0046】
具体的には、上記演算部200は、上記識別標識(セルID)から特定の単位電極の順番を計算し、上記ピッチを乗算してセルID座標を計算し得る。例えば、識別標識としてのバーコードがノッチング工程の電極ラインで順番に印刷されると、上記バーコードは単位電極の順番を示す。通常、サーバなどの保存部500には、上記バーコード(識別標識)と単位電極との順番関係が保存されており、上記バーコードを認識すると単位電極の順序を確認し得る。もし、特定のバーコードの単位電極が抜けていると、それはその単位電極がノッチングラインで抜けたことを意味し得る。したがって、演算部200は、上記保存部500に保存された順番と識別標識スキャナによって取得された識別標識とを対照して特定の単位電極の順番を計算し得る。
【0047】
例えば、ノッチング工程のピッチが0.1メートルであり、当該特定の単位電極の順番が5000番であると、上記特定の単位電極のセルID座標は上記順番とピッチを乗算して500メートルとなる。このとき、アンワインダUWとリワインダRWのエンコーダ値から取得される電極座標情報からノッチングラインの電極長さが760メートルであると判明された場合、上記特定の単位電極は760メートルから500メートルの地点に位置した単位電極として特定し得るものである。
【0048】
上記演算部200は、例えば、ECS(Embedded Computer System)のようなリアルタイムシステムになり得、マイクロコンピュータを上記演算部200に採用し得る。後述するように、上記演算部200は、セルID座標を演算してマッピング部400に転送する。
【0049】
また、本発明は、上記ノッチング制御部100から伝達される電極座標情報からロールマップを生成するロールマップ生成部300を含む。本発明は、ノッチング工程前の電極製造工程における電極位置を追跡するためのものであるため、上記ロールマップも電極製造工程の各細部工程別に生成する。具体的には、上記ノッチング工程前の電極製造工程は、電極活物質を集電体にコーティングしてコーティング電極を形成するコーティング工程、コーティング電極をプレスロールで圧延するロールプレス工程を少なくとも含み得る。また、上記ノッチング工程前の電極製造工程は、上記ロールプレス工程後に圧延された電極を長手方向に沿って切断するスリッティング工程をさらに含み得る。
【0050】
上述したように、ロールマップはロールツーロール状態で進行される電極をシミュレートしたものであって、電極の長手方向寸法が座標として表示されてそこから電極長さの変化を把握し得る。
【0051】
ノッチング工程の電極は、その前のスリッティング工程、ロールプレス工程および電極コーティング工程でロールツーロール移送される電極から製造されたものであるため、電極位置追跡のために上記工程の電極長さ変化に関する情報を含んでいるロールマップが必要である。上記ロールマップは、電極コーティング工程、ロールプレス工程およびスリッティング工程でそれぞれ作成され得る。上記ロールマップには、当該工程時に電極が破断して除去されたり、不良が発生して作業者が除去したりするなど、電極が除去される工程中の電極除去部に関する情報が表示される。ロールマップは電極の長手方向寸法が座標として表示されるため、実際の電極が破断および連結などによって当該工程中に電極の長さに変化が発生する場合、それをロールマップ上に表示し得る。また、ロールマップには所定の間隔で複数個の基準点が表示されており、この基準点から電極の破断の長さを算出し得る。上記基準点は、電極に印刷された基準点をシミュレートして示したものである。
【0052】
一方、電極製造工程の各細部工程の間において、工程完了後に電極の一定の部分を切り取る場合がある。通常、ロールツーロール進行初期と終期の電極は品質が均一でない場合が多いため、当該工程の始端部または終端部の電極を切り取る場合が多い。このような電極除去部を完工後電極除去部とする。
図2と関連して説明したように、ロールマップに表示される座標は、このような電極長さの変化が反映された相対座標と反映されない絶対座標がある。したがって、絶対座標で表示されるロールマップ上には座標データとともに除去された電極部も表示し得るため、不良や破断に関する情報をロールマップ上に視覚的に表示し得る。ただし、本発明では、説明の便宜のために、電極の長さおよび座標の他に異なる視覚的情報はロールマップから省略して示す。複数個の細部工程からなる電極製造工程の場合、先行する工程のロールマップは、後の工程のロールマップ作成時に参照となり得る。たとえば、電極コーティング工程、ロールプレス工程およびスリッティング工程によって電極が製造される場合、電極コーティング工程におけるロールマップは、後のロールプレス工程で参照となる。もし、電極コーティング工程中に電極が除去されたり、コーティング工程の完工後に電極が除去されたりする場合には、ロールプレス工程のロールマップにはこのような事項が反映(補正)されるべきである。すなわち、ロールプレス工程のロールマップは、電極コーティング工程の絶対座標が表示されたロールマップを参照して基準点と座標を表示し、かつ電極長さの変化に関する事項を反映して座標を補正する必要がある。このような意味で、ロールプレス工程の絶対座標を有するロールマップは、先行工程の電極コーティング工程において相対座標を有するロールマップだといえる。同様に、ロールプレス工程中または工程後に、電極に長さの変化が発生した場合、後のスリッティング工程ロールマップではこのような事項を反映する必要がある。それを反映したスリッティング工程のロールマップは、スリッティング工程自体では絶対座標のロールマップであり得るが、ロールプレス工程を基準にしては相対座標のロールマップだと言える。
【0053】
これより、ロールマップが絶対座標または相対座標として表示されることは、工程間の関係と関連して相対的なものである。本発明では、このような座標の種類を好適に活用して電極の位置を追跡し得る。
【0054】
上記ロールマップ生成部300は、そのロールマップ生成部300に保存された電極製造工程での電極長さの変化に関するデータを上記ノッチング制御部100から伝達される電極座標情報に反映して電極製造工程の各細部工程、例えば、コーティング工程、ロールプレス工程およびスリッティング工程におけるロールマップを生成し得る。例えば、上記ロールマップ生成部300は、電極製造工程を管理する生産管理システム(MES:Manufacturing Execution System)または上記生産管理システムの一つの構成要素であり得る。上記コーティング工程、ロールプレス工程およびスリッティング工程も、
図4と同様にアンワインダとリワインダ(RW)との間で電極がロールツーロール状態で進行しながら各工程を経るため、電極ラインの電極座標情報をエンコーダ値などから計算し得る。また、電極が当該工程中に除去されるか(工程中除去)、あるいは工程終了後に除去される場合(完工後除去)、その除去長さも電極上に示された基準点の間隔変動で把握し得る。
図4のように、基準点計測器が電極製造工程での電極ラインに配置されるので、上記基準点計測器で電極除去長さを測定し得る。このような情報はすべて電極MESに保存されている。したがって、ノッチング制御部100から伝達される電極座標情報のみが特定されると、その情報に上記電極製造工程でMESに保存されていた電極長さの変化に関するデータを加減して当該ノッチング電極の由来となったスリッティング工程のロールマップ、ロールプレス工程のロールマップおよび電極コーティング工程のロールマップを逆算して生成し得る。上記生産管理システムMESは、データ処理システムとして中央処理部、演算部200、判定部などを備えているので、上記情報からロールマップを容易に生成し得る。また、所定のデータ視覚化装置も備えて上記ロールマップを画面上に視覚化して表出し得る。ソースとなるデータから図表やグラフで視覚化する過程は当該技術分野で知られているので、それに関する具体的な説明は省略する。
【0055】
図3を再び参照すると、上記ノッチング制御部100は、ノッチング工程の電極ラインの座標情報を組み立て工程のMES110に送り、上記組み立て工程のMES110がロールマップ生成部300に座標情報を送り得る。ノッチング工程の後からは、電極製造工程(いわゆる電極工程)ではなく組み立て工程に属するため、ノッチング制御部100は組み立て工程のMES110と連結され得る。また、ノッチング工程ではロールマップを作成しなくても、上記座標情報とセルIDから電極製造工程での電極位置の追跡が可能である。ただし、ノッチング工程とその前の工程(例えばスリッティング工程やロールプレス工程)との連続性および相関性を把握するために、上記組み立て工程のMES110でノッチング工程のロールマップを作成することもできる。この場合、上述したノッチング工程でノッチング制御部100が取得したエンコーダ値、セルID、ピッチ情報などが利用され得る。実質的に、ノッチング制御部100がノッチング電極ラインの電極座標情報を取得するので、それを座標化して表すとそれ自体がノッチング工程のロールマップとなる(後述する
図6を参照)。
【0056】
マッピング部400は、上記生成されたロールマップの座標とセルID座標とを対照して、特定の単位電極が由来する電極製造工程における電極位置を導出する。上記マッピング部400は、データベースに蓄積されたデータを共通の形式に変換して管理するデータウェアハウスDWであり得る。データウェアハウスは、データに基づく意思決定が可能であり、複数のソースのデータを統合して分析が可能であるため、上記演算部200からセルID座標と上記ロールマップ生成部300からのロールマップ座標とを対照および整合させるマッピング作業を通じて、ノッチング工程の特定の単位電極が由来する電極製造工程における電極位置を導出し得る。
【0057】
マッピング部400による電極位置追跡の過程は、下記のように実施形態と図面を参照して具体的に説明する。
【0058】
(第1実施形態)
図6は、本発明の一実施形態に係る電極位置追跡システム1000の電極位置追跡の過程を示す模式図である。
【0059】
図6に図示された例において、ノッチング制御部100から保存されたピッチ情報は0.1メートルであり、ノッチング工程においてロールツーロール状態で移送される電極ラインの電極座標情報からノッチング電極ラインの長さ(座標)は760メートルであることを確認した。
【0060】
また、ECS演算部200では、保存部500に入力されたバーコード-順番情報を対照して、ノッチング工程の特定の単位電極に印刷されたバーコード(セルID)から上記特定の単位電極の順番が5000番であることが分かった。そして、上記ピッチ情報(0.1メートル)と順番を乗算してセルID座標を500メートルとして演算した。
【0061】
また、ノッチング制御部100に保存されたエンコーダ値などをロールマップ生成部300である電極MESに転送して上記電極MESでロールプレス工程のロールマップ、電極コーティング工程のロールマップを絶対座標、相対座標別にそれぞれ生成した。上記演算部200で演算されたセルID座標と上記電極MESで生成されたロールマップ情報はマッピング部に転送され、上記マッピング部400で以下のような対照過程を通じて、ノッチング工程のセル番号5000番の特定の単位電極がロールプレス工程の電極のどの位置あるいは電極コーティング工程における電極のどの位置に由来するのかを追跡した。
【0062】
具体的には、上記マッピング部400は、特定の単位電極のセルID座標(500メートル)に電極製造工程の各細部工程でのロールマップ(ロールプレスロールマップ、コーティングロールマップ)によって把握される電極長さの減少値を足す。通常、電極工程における電極長さの減少は、各細部工程中の電極除去(工程中の除去)または細部工程後の電極除去(完工後の除去)のうち少なくとも一つによるものである。
【0063】
上述したように、ノッチング電極ラインの特定の単位電極のセルID座標は500メートルである。したがって、この500メートルの地点で生産された単位電極に基づいた半製品または完成品の電池セルから不良などの問題が発生した場合、当該セルを分解して上記セルIDを確認することによって、電極製造工程における電極位置を追跡することができ、これにより、不良がどの電極位置に由来するのかなどのセル単位の不良原因の分析が可能である。
【0064】
上記のように、ノッチングラインの特定の単位電極のセルID座標が特定されると、電極製造工程の各細部工程のロールマップで把握される電極長さの減少値を足して上記特定の単位電極が由来する電極製造工程における電極座標を計算する。
【0065】
本実施形態では、上記詳細工程で電極コーティング工程とロールプレス工程が行われ、コーティング工程のロールマップとロールプレス工程のロールマップを用いる場合を想定した。参考として、ロールプレス工程後にスリッティング工程が行われ、スリッティング工程でもロールマップが作成され得るが、電極位置追跡工程の原理は同じであるため、本実施形態ではスリッティング工程における電極長さの変化は除いて電極位置追跡過程を説明する。また、スリッティングはロールプレスされた電極を長手方向に単に切断するものであって、電極コーティング工程やロールプレス工程のような激しい電極長さの変化はよく発生しない。したがって、本明細書では、スリッティング工程のロールマップは除いて電極位置追跡過程を説明する。しかしながら、スリット工程でロールマップが作成されると、本実施形態と同じ原理でそのロールマップの座標を対照して電極位置を追跡し得ることはもちろんである。
【0066】
図6では、ロールプレス工程との対比のために、ノッチング電極ラインの電極座標情報とセルID座標とを用いて組み立てMESでノッチングラインのロールマップを作成したものが図示されている。しかしながら、上述したように、
図6に図示されたノッチング工程のロールマップは説明の便宜のために示したものであって、電極位置追跡において必ずしも必須的なものではない。すなわち、ノッチング工程のセルID座標のみあれば、電極製造工程のロールマップを活用して電極位置を追跡し得る。ただし、後述するように、ノッチング工程内で電極が除去された場合などにおいて、電極製造工程と同様に上記電極除去を反映するノッチング工程のロールマップを作成しておくと、先行するロールプレス工程のロールマップと連携して電極位置の特定をより容易にし得るという長所がある。
【0067】
上記ノッチング工程において上記特定の単位電極のセルID座標が変化された履歴がないと、その座標に基づいて電極位置を追跡する。
【0068】
しかしながら、ノッチング工程内で、例えば、一定の長さの電極を除去した工程中除去があった場合には、その除去された電極の長さを足してからこそ、正確な電極位置の追跡が可能である。本実施形態はノッチング工程中に電極が除去されたことを想定したものである。ノッチング工程中に除去された電極は、電極上にマーキングされた複数個の基準点間隔が電極除去に起因して変動されたとき、設定された基準点間隔と対比することによって求めることができる。それについては後述する。
【0069】
図6を参照すると、ノッチングラインの5000番セルの座標が500メートルであり、ノッチングラインから30メートルの電極が除去(ノッチング工程中除去)された場合、ノッチング工程前のロールプレス工程でのロールマップ座標では、上記単位電極の座標が530メートルになる。ロールプレス工程で相対座標として図示されたロールマップは、上述したように、ノッチング工程を基準とすると絶対座標のロールマップになり得る。また、30メートルの電極がノッチング工程中に除去されたことを考えて相対座標として図示されたロールプレスロールマップの電極長さ(座標)は790メートルとなる。
【0070】
次に、ロールプレスロールマップの絶対座標として図示されたロールマップを参照する。ロールプレス工程後20メートルの電極が除去(完工後除去)されたので、その除去された長さを足すと、ノッチングラインの5000番セルのロールプレス工程での電極座標は550メートルとなり、電極長さ(座標)は810メートルとなる。したがって、ノッチングライン座標が500メートルである特定の単位電極(セルID5000番)は、ロールプレスロールマップにおいて550メートルの座標を有する電極に由来することが分かる。これにより、少なくともロールプレス工程での電極位置をセル単位で追跡し得る。
【0071】
さらに、電極コーティング工程での電極位置追跡の過程について説明する。ロールプレスロールマップの絶対座標を基準にして550メートルの電極位置が追跡された後、ロールプレス工程中に40メートルの電極が除去されたことをコーティング工程の相対座標として図示されたロールマップから確認し得る。したがって、ノッチングライン座標が500メートルである特定の単位電極(セルID5000番)の電極座標は550メートルから590メートルに変更され、電極長さ(座標)は850メートルとなる。最後に、電極コーティング工程の絶対座標として図示されたロールマップと相対座標として図示されたロールマップとを対照して、電極コーティング工程後に50メートルの電極が除去されたことを確認して、電極座標を修正する。これにより、ノッチングライン座標が500メートルである特定の単位電極(セルID5000番)の電極座標は590メートルから640メートルに変更され、電極長さ(座標)は900メートルとなる。すなわち、760メートルのノッチングラインの電極は元々900メートルの長さを有していたことがわかり、セルID5000番の単位電極は、電極コーティング工程時に640メートルの地点の電極から製造されたことを把握し得る。
【0072】
以上のように、特定の単位電極のノッチングラインの座標と、上記ロールマップの座標とを対照して、上記特定の単位電極が由来するロールプレス工程における電極位置または電極コーティング工程の電極位置を追跡し得る。
【0073】
図5は、ノッチング工程中に電極が除去された場合、その除去長さを導出する過程を説明する模式図である。
【0074】
ノッチング工程の電極には複数個の基準点が所定の間隔で印刷されている。
図4には、このような基準点を認識する基準点認識器40が図示されている。第1基準点M1と第2基準点M2との間で、例えば、電極破断により100メートルの電極ロスが発生したとき、第1基準点M1の位置値は変化しないが、第2基準点M2および第3基準点M3と電極終端部の位置が変動される。このような基準点変動に応じて、上記基準点認識器40およびそれと連動されたエンコーダ30が変化された基準点位置値を導出すると、上記ノッチング制御部100が設定された基準点位置値と対比して破断された電極ロス量が第1基準点と第2基準点との間で100メートルになることを算出し得る。
【0075】
したがって、ノッチング工程中に電極が破断などで除去されて基準点間の間隔が変動されたとき、導出された基準点位置値と設定された基準点位置値とを対比して、電極のロス量(除去された電極の長さ)を算出し得る。
【0076】
(第2実施形態)
図7は電極コーティング後のロールプレス工程で電極が延伸されることを示した概略図であり、
図8は本発明の他の実施形態に係る電極位置追跡の方法を示した概略図である。
【0077】
図7に示すように、電極コーティング工程でコーティングされた電極は、ロールプレス工程でプレスロール(図示せず)によって圧延されて所定の割合で延伸される。したがって、ノッチング工程の単位電極のセルID座標に基づいて前工程の電極位置を追跡する場合には、このような電極の延伸による座標変化も反映する必要がある。すなわち、上記マッピング部400は、電極延伸により電極長さが増加される電極増加分を反映して、上記特定の単位電極が由来する電極コーティング工程における電極位置を正確に導出し得る。
【0078】
図8には、ロールプレスによる電極延伸を考慮して電極位置を追跡する実施形態が図示されている。
図8の(c)は、上記
図6のロールプレス工程中の電極除去を反映して、5000番の単位電極がロールプレス工程で590メートルに由来し、このときの電極長さが850メートルとなったことを示したものである。
図6では、ロールプレスによる電極延伸を考慮しないが、
図8ではそれを考慮して電極コーティング工程の電極位置を追跡したものである。
【0079】
図8の(a)は、電極コーティング工程が完工された後に、900メートルの電極のうち60メートルが除去されたことを示す絶対座標のコーティング工程ロールマップである。上記完工後除去部60メートルを反映した相対座標のコーティング工程ロールマップが
図8の(b)である。
図8の(b)のロールマップは、電極長さ(座標)が840メートルとなる。ロールプレスによる電極延伸が生じると、ロールプレスロールマップと電極コーティング工程のロールマップが不一致となる。したがって、電極が延伸された分ほどロールマップを補正するか、あるいは上記延伸に応じた電極長さの増加を考慮して電極座標を求めるべきである。
【0080】
再び
図8の(c)を参照すると、ロールプレス工程で850メートルの長さを有する電極において590メートルの座標がノッチング工程の特定の単位電極が由来するロールプレス電極位置である。
【0081】
このロールプレス電極座標590メートルを電極が延伸された所定の割合(850/840)で割り算すると583メートルとなる。すなわち、583メートルがノッチング工程の単位電極が由来する電極コーティング工程における電極位置となる。ただし、この場合にはコーティング工程後に60メートルの電極が除去されたので、その完工後の除去部の電極長さを足してからこそ、真のコーティング工程の電極座標となる。完工後除去部60メートルを足すと、コーティング工程の電極長さは900メートルであり、上記単位電極が由来する電極コーティング工程における電極座標は643メートルとなって電極位置追跡が完了する。
【0082】
以上、図面や実施例などを通じて本発明をより詳細に説明した。しかしながら、本明細書に記載の図面または実施例などに記載された構成は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願時点においてこれらを代替し得る多様な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0083】
10:電極
11:有地部
12:無地部
13:電極タブ
P:ピッチ
T:継ぎ目連結部材
M1:第1基準点
M2:第2基準点
M3:第3基準点
UW:アンワインダ
RW:リワインダ
100:ノッチング制御部
110:組み立てMES
200:演算部
300:ロールマップ生成部
400:マッピング部
500:保存部
20:継ぎ目認識センサ
30、30U、30R:エンコーダ
40:基準点認識器
50:打ち抜き装置
60:識別標識スキャナ