(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法とその方法に用いられるプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20240909BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H05K3/34 502D
H05K3/34 501D
H05K3/34 506C
H05K3/28 B
(21)【出願番号】P 2020142359
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】林 清志
(72)【発明者】
【氏名】西野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】川畑 大地
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-304055(JP,A)
【文献】特開平3-218092(JP,A)
【文献】実開昭60-99569(JP,U)
【文献】特開2004-335683(JP,A)
【文献】特開2009-266553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に導電性箔からなる回路パターンが被着されたプリント配線基板を、この片面に対してフローハンダ付けした状態で、上記回路パターンが被着された片面を上側にして周壁を有するケーシング内に取り付け、ケーシングの周壁を貫通して外側から挿入された棒状の端子の先端が上記回路パターンの一部に形成されたランドと重なる状態にして、この端子の先端をこのランドに対してハンダ付けする電子装置の製造方法において、上記フローハンダ付けする前の段階で上記ランドの表面の一部にソルダレジストを被着させ、フローハンダ付けによってこのランドの表面に被着するハンダ量を減少させて、このランドの表面に被着されるハンダの厚みを減少させることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
上記ランドと上記端子の先端とが重なる部分を中心とした所定の範囲のみに上記ソルダレジストを選択的に被着させ、この所定の範囲内に被着されるハンダの厚みを減少させると共に、この所定の範囲を囲む3方向にはソルダレジストを被着させず、所定の範囲に被着されるハンダの厚みより厚いハンダを被着させることを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
上記請求項2に記載の電子装置の製造方法に用いられるプリント配線基板であって、上記ランドと上記端子の先端とが重なる部分を中心とした所定の範囲のみに上記ソルダレジストを選択的に被着させ、この所定の範囲を囲む3方向にはソルダレジストを被着させないことを特徴とするプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングの外側から挿通された端子の先端をケーシング内のプリント配線基板のランドにハンダ付けする電子装置の製造方法と、この電子装置の製造方法に用いられる上記プリント配線基板とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の発明として、例えば、上方に開口する有底のケーシング内にプリント配線基板を固定し、一方、ケーシングの周壁を貫通してケーシングの外側から棒状の端子を差し込み、この端子の先端をプリント配線基板に形成されているランドに対してハンダ付けする電子装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記端子の先端をハンダ付けするランドが設けられている面に電子部品が実装され、その実装された電子部品がプリント配線基板に対してフローハンダ付けされていると、必然的にランドの表面にもハンダが被着される。端子の先端がハンダ付けされるランドが比較的大きなものであると、このランドにフローハンダ付け時に被着されるハンダの量が多くなり、そのためこのランドに被着されるハンダの厚みが厚くなる。すると、このランドにハンダ付けする端子の先端が、ハンダ付けする前の段階でフローハンダ付け時に被着されたハンダと干渉して、既に端子が貫通されている状態でプリント配線基板をケーシング内に取り付けようとすると端子が上方に曲がり、プリント配線基板をケーシング内に固定した状態で端子を挿入する場合には端子の先端がハンダに干渉してケーシングの周壁に十分に挿通できないという不具合が生じる。
【0005】
なお、端子が重なる部分にランドを形成せずに、この端子の先端と重なる部分を3方向から囲む位置にランドを設けることも考えられるが、端子と重なる部分にランドが形成されていないと、ハンダ付け後に強度不足などの不具合が生じ、採用することができない。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上記不具合の生じない電子装置の製造方法およびその製造方法に用いられるプリント配線基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明による電子装置の製造方法は、少なくとも片面に導電性箔からなる回路パターンが被着されたプリント配線基板を、この片面に対してフローハンダ付けした状態で、上記回路パターンが被着された片面を上側にして周壁を有するケーシング内に取り付け、ケーシングの周壁を貫通して外側から挿入された棒状の端子の先端が上記回路パターンの一部に形成されたランドと重なる状態にして、この端子の先端をこのランドに対してハンダ付けする電子装置の製造方法において、上記フローハンダ付けする前の段階で上記ランドの表面の一部にソルダレジストを被着させ、フローハンダ付けによってこのランドの表面に被着するハンダ量を減少させて、このランドの表面に被着されるハンダの厚みを減少させることを特徴とする。
【0008】
なお、上記ランドと上記端子の先端とが重なる部分を中心とした所定の範囲のみに上記ソルダレジストを選択的に被着させ、この所定の範囲内に被着されるハンダの厚みを減少させると共に、この所定の範囲を囲む3方向にはソルダレジストを被着させず、所定の範囲に被着されるハンダの厚みより厚いハンダを被着させることが望ましい。
【0010】
あるいは、請求項2に記載の電子装置の製造方法に用いられるプリント配線基板であって、上記ランドと上記端子の先端とが重なる部分を中心とした所定の範囲のみに上記ソルダレジストを選択的に被着させ、この所定の範囲を囲む3方向にはソルダレジストを被着させないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、フローハンダ付けによってランド上に被着されるハンダの厚みを均一にするのではなく、ランドにハンダ付けされる端子と重なる部分の厚みを薄くすることにより、ハンダ付けされる前の段階での端子とハンダとの干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】ランドに被着させるソルダレジストの実施の形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、本図ではケーシング1内にプリント配線基板2を収納し、そのプリント配線基板2の上面に設けられた1対のランド4に端子31の先端部分をハンダ付けし、その後に蓋11をケーシング1に接着して密閉するものである。1対の端子31は端子本体3に固定されて一体となっており、ケーシング1の周壁に設けた貫通穴12を通して外部からケーシング1の内側に向かって挿通される。なお、プリント配線基板2をケーシング1内に固定した後で端子31を貫通穴12に挿通してもよく、あるいは貫通穴12に端子31を挿通した状態でプリント配線基板2を傾けてケーシング1内に収納させてもよい。
【0014】
このプリント配線基板2は図示しないが上面21にはランド4の他に各種の電子部品が実装され、フローハンダ付けによってプリント配線基板2の上面21にそれら各種の電子部品がハンダ付けされている。なお、プリント配線基板2の上面にフローハンダ付けを施す場合には、ハンダ付けを行いたくない部分および銅箔による回路パターンが被着されていない部分にはソルダレジストと呼ばれる塗料が塗布され保護されている。
【0015】
ランド4は後に端子31の先端がハンダ付けされるため、ランド4の全域をソルダレジストで覆うことはできない。ただし、ランド4の表面に全くソルダレジストを塗布しないと、ランド4の表面に厚くハンダが被着し、端子31の先端をハンダ付けする前にランド4に被着されたハンダと端子31の先端とが干渉して、端子31を貫通穴12に挿通できない状態が生じたり、挿通されている端子31が上方に湾曲し、あるいはプリント配線基板2をケーシング1内に収納できないなどの不具合が生じるおそれがある。
【0016】
そこで、
図2に示すように、ランド4の表面のうち、端子31の先端と重なる部分にソルダレジスト41を図示のように選択的に塗布することによって、端子31の先端と重なる部分に被着するハンダ量を少なくして、ハンダの厚みを薄くした。
【0017】
図3に示すように、端子31の先端はハンダに干渉することなく、ランド4の上方に位置することができる。この状態で手作業によって端子31の先端をランド4にハンダ付けすると、ランド4の表面のハンダのうち、ソルダレジスト41が塗布されていない部分のハンダや、端子の下側に薄く被着されているハンダと端子31の先端とが強固にハンダ付けされることになる。
【0018】
ところで、ランド4の表面にソルダレジストを塗布するパターンは特定の一種類に限定されるものではない。
図4を参照して、本図(a)に示すものは上記
図2に示したパターンと同じものである。端子31の先端と重なる部分4Aには端子31と平行な4条のソルダレジスト41を塗布した。そして端子31の先端と重なる部分4Aを3方向から囲む範囲4Bにはソルダレジストを塗布せず、上記フローハンダ付けによって厚いハンダが被着するようにした。
【0019】
本図(a)に示すパターンの他に、例えば複数個の矩形状のソルダレジスト42を塗布してもよい。また、本図(c)に示すように、格子状にソルダレジスト43を塗布してもよい。以上の(a)~(c)はあくまで例示であり、これらのパターンの他であっても上記端子31の先端と重なる部分3Aにハンダ層の厚みが薄くなるように選択的にソルダレジストを塗布すればよい。
【0020】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。例えば、上記実施の形態では、回路パターンが被着されている一方の面に電子部品を実装した片面実装基板について説明したが、回路パターンが被着されていない他方の面にも電子部品を実装する両面実装基板についても適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ケーシング
2 プリント配線基板
4 ランド
11 蓋
12 貫通穴
21 上面
31 端子
41 ソルダレジスト
42 ソルダレジスト
43 ソルダレジスト