(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240909BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20240909BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20240909BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A61F13/15 141
A61F13/539
A61F13/533 100
A61F13/53 100
(21)【出願番号】P 2020177726
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(72)【発明者】
【氏名】ビンティ アハマド イスマ イマニ
(72)【発明者】
【氏名】山崎 良輔
(72)【発明者】
【氏名】石川 剛大
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/008608(WO,A1)
【文献】特開2017-006505(JP,A)
【文献】特開2017-064134(JP,A)
【文献】実開昭59-124524(JP,U)
【文献】特開2001-276118(JP,A)
【文献】特開2014-100307(JP,A)
【文献】特開2004-337386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0030171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に対応する縦方向と前記縦方向に直交する横方向を有し、
縦方向において着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向領域と、前記排泄部対向領域よりも着用者の腹側に配される前方領域と、前記排泄部対向領域よりも着用者の背側に配される後方領域と、に区分され、
肌側面を形成する表面シートと、非肌側面を形成する裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアの肌側面を被覆する肌側コアラップシートとを有し、
前記肌側コアラップシートは、水溶性抗菌剤を含む抗菌剤配合部を有し、
前記吸収体は、前記排泄部対向領域において、前記肌側コアラップシートと前記吸収性コアとの間に難水溶性の接着剤が配された接着剤配置部を有し、
前記吸収体は、前記抗菌剤配合部と前記吸収性コアとが平面視重なっている領域において、平面視で、前記抗菌剤配合部が、前記接着剤配置部と重なる領域と、前記接着剤配置部と重ならない領域と、を備え、
前記抗菌剤配合部が、前記排泄部対向領域において、前記接着剤配置部と重なる領域は前記吸収体の前記横方向中央部に位置し、前記接着剤配置部と重ならない領域は前記吸収体の前記横方向両側方部に位置する、
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性コアは、相対的に吸水性材料の坪量の高い高坪量部を有し、
平面視で、前記接着剤配置部は前記高坪量部と重なっている
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記排泄部対向領域に、前記表面シートと前記吸収体が一体的に凹陥した左右一対の防漏溝を備え、
前記排泄部対向領域において、平面視で前記接着剤配置部は前記一対の防漏溝間に位置する
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記接着剤配置部は、接着剤が塗工される塗工部と、接着剤が塗工されない非塗工部と、を有する
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記吸収性コアの非肌側面を被覆し、複数のコアラップシートが重なる重なり部を含む非肌側コアラップシートと、前記重なり部において複数のコアラップシート間を接合する難水溶性の接着剤と、を有し
前記非肌側コアラップシートは、前記重なり部において水溶性抗菌剤を含み、
前記重なり部を接合する接着剤と、前記肌側コアラップシートと前記吸収性コアとの間に配される接着剤とは、平面視で少なくとも一部が重なっている
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキンのような吸収性物品には、排泄物由来の臭いを抑制するために抗菌剤を配合したものが知られている(例えば特許文献1)。抗菌剤は排泄物を分解する菌の増殖を抑制することによって臭いの発生を防いで消臭効果を発揮する。特許文献1に記載される吸収性物品では、吸収性コアとコアラップシートからなる吸収体のコアラップシートに消臭剤を含ませている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品において、コアラップシートに水溶性抗菌剤が塗工されている場合、抗菌剤が拡散し、着用者の肌に近い部分での抗菌効果が弱まる傾向にある。
【0005】
本発明は、着用者の肌に近い部分での抗菌効果の向上が可能な吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、吸収体と、を備える。
上記吸収性物品は、着用者の前後方向に対応する縦方向と上記縦方向に直交する横方向を有する。
上記吸収性物品は、縦方向において着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向領域と、上記排泄部対向領域よりも着用者の腹側に配される前方領域と、上記排泄部対向領域よりも着用者の背側に配される後方領域と、に区分される。
上記表面シートは、上記吸収性物品の肌側面を形成する。
上記裏面シートは、上記吸収性物品の非肌側面を形成する。
上記吸収体は、上記表面シートと上記裏面シートとの間に位置する。
上記吸収体は、吸収性コアと、肌側コアラップシートとを有する。
上記吸収性コアは、液保持性である。
上記肌側コアラップシートは、上記吸収性コアの肌側面を被覆する。
上記肌側コアラップシートは、水溶性抗菌剤を含む抗菌剤配合部を有する。
上記吸収体は、上記排泄部対向領域において、上記肌側コアラップシートと上記吸収性コアとの間に難水溶性の接着剤が配された接着剤配置部を有する。
平面視において上記抗菌剤配合部と上記接着剤配置部とは重なっており、上記抗菌剤配合部の少なくとも一部は、横方向において上記接着剤配置部の幅よりも広い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品によれば、着用者の肌に近い部分での抗菌効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の吸収性物品の平面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した模式断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線で切断した模式部分断面図であり、圧搾溝を含む圧搾溝付近の吸収体と表面シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[ナプキンの全体構成]
本実施形態の吸収性物品1は、
図1に示すように、本体Mと、一対のウイング部Wと、を備える。吸収性物品1は、生理用ナプキンとして構成され、以下、ナプキン1と称する。
ナプキン1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、ナプキン1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。横方向Yはナプキン1における幅方向に対応する。
なお、本明細書では、ナプキン1の厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上又は肌側、着衣に近い側を下又は非肌側という事がある。また、本明細書において、「肌側面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側である。「非肌側面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
また、本明細書において、「平面視」とは、厚み方向Zから見た平面視を意味する。
【0010】
図1に示すように、ナプキン1は、縦方向Xに沿って、前方領域Fと、排泄部対向領域Cと、後方領域Rと、に区分される。
排泄部対向領域Cは、着用時に着用者の排泄部に主に対向する排泄スポット部C1と、排泄スポット部C1を挟んで横方向Yの両側にそれぞれ位置する側方部C2と、を含む。排泄部対向領域Cにおいて、ナプキン1を構成する吸収体4の横方向Yに沿って3等分し、中央の領域を排泄スポット部C1とする。
図1において、排泄部対向領域Cは、ウイング部Wの前後基端部間の領域である。
前方領域Fは、排泄部対向領域Cの前方(着用者の腹側)に配置される領域であり、着用時に着用者の排泄部の前方に対向するように配置される。
後方領域Rは、排泄部対向領域Cの後方(着用者の背側)に配置される領域であり、着用時に着用者の排泄部の後方に対向するように配置される。
なお、ナプキン1がウイング部Wを有さない場合には、例えば、ナプキン1を縦方向Xに沿って3等分して、中央の領域を排泄部対向領域Cとし、その前方に配置される領域を前方領域F、後方に配置される領域を後方領域Rとする。
【0011】
本体Mは、縦方向Xに沿って延び、図示しない粘着部によって着用時に着用者の着衣の内面に固定される。本体Mは、後述する吸収体4を有しており、着用者の排泄部からの経血等の排泄液(以下、「液」とも称する)を吸収する機能を有する。
【0012】
ウイング部Wは、排泄部対向領域Cにおいて横方向Yの外方に大きく突出するように構成される。なお、ナプキン1は、ウイング部Wを有さなくてもよい。
【0013】
図2に示すように、ナプキン1は、吸収体4と、表面シート2と、裏面シート3と、一対のサイドシート5と、を備える。本体Mにおいて、ナプキン1は、裏面シート3、吸収体4及び表面シート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、後述する接着剤や熱シール等による接合、及び後述する圧搾溝6(
図1及び3参照)によるエンボス加工等によって、適宜接合されて一体化している。なお、
図2において圧搾溝6の図示は省略している。
【0014】
吸収体4は、縦方向Xに沿って延び、表面シート2と裏面シート3との間に配置される。吸収体4は、液を表面シート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該液を保持する。吸収体4は、表面シート2側に位置する肌側面4aと、裏面シート3側に位置する非肌側面4bを有する。
吸収体4は、液保持性の吸収性コア7と、コアラップシート8と、を有する。吸収体4の構成については後述する。
【0015】
表面シート2は、ナプキン1の肌側面1aを形成する。
表面シート2は、液透過性のシート材として構成され、吸収体4の厚み方向Z上方に配置される。表面シート2は、着用者の肌との接触面積を低下させ着用感を向上させる等の観点から、肌対向面側に形成された複数の凸部2aを有していてもよい(
図2参照)。
表面シート2は、例えば、ホットメルト接着剤等の第1接着剤S1によって、吸収体4の肌側面4aと接合されている。第1接着剤S1は、平面視で、例えば吸収体4のほぼ全域に亘って配され、表面シート2の吸収体4からの浮き等を抑制する。
なお、表面シート2と吸収体4との間には、表面シート2から吸収体4への液の透過性の向上、吸収体4に吸収された液の表面シート2への液戻りの防止等の観点から、セカンドシートが配置されていてもよい。
【0016】
裏面シート3は、ナプキン1の非肌側面1bを形成する。
裏面シート3は、吸収体4の厚み方向Z下方に配置される。裏面シート3は、例えば、ホットメルト接着剤等の第4接着剤S4によって、吸収体4の非肌側面4bと接合されている。なお、
図2の模式図では、非肌側面4bの一部が第4接着剤S4から離間しているが、実際には、非肌側面4bの全体が裏面シート3と第4接着剤S4により接合される。
裏面シート3は、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。当該シート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等を用いることができる。
裏面シート3の非肌側面には、着衣に対して本体M及びウイング部W等を固定する図示しない粘着部が設けられている。
【0017】
一対のサイドシート5は、表面シート2の横方向Y外側に配置される。サイドシート5の材料としては、表面シート2よりも親水性が低いシート材料が好ましく、具体的には、表面シート2よりも親水性の低い不織布、フィルム材料、及び不織布とフィルム材料のラミネート構造のシート等が挙げられる。サイドシート5は、例えば接着剤によって表面シート2に接合されている。
【0018】
[吸収体の構成]
吸収体4を構成する吸収性コア7及びコアラップシート8の構成について説明する。
【0019】
(吸収性コア)
吸収性コア7は、吸水性材料を含んで構成される。吸水性材料としては、この種の吸収性物品の吸収体において使用可能なものを特に制限なく用いることができる。例えば、親水性繊維及び吸水性ポリマーが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
図2に示すように、吸収性コア7は、表面シート2側に位置する肌側面7aと、裏面シート3側に位置する非肌側面7bと、を有する。
【0020】
吸収性コア7は、非肌側面7bが略平坦面であるのに対し、肌側面7aは排泄部対向領域Cで厚み方向Z上方(肌側)に突出した突出部73を有している。
図1に示すように、ナプキン1では、突出部73は、平面視で略六角形状を有しているが、この形状に限定されない。突出部73は、吸収性コア7の他の領域と比較して、全体として吸水性材料の坪量が高く、肉厚に構成される。これにより、排泄部対向領域Cにおける吸液性を高めることができる。
【0021】
図1及び2に示すように、吸収性コア7において、突出部73を有する領域を高厚み領域71といい、それ以外の厚みの薄い領域を低厚み領域という。高厚み領域71よりも前方に位置する低厚み領域を前方低厚み領域72aといい、後方に位置する低厚み領域を後方低厚み領域72bという。
高厚み領域71の横方向Y中央部は、着用時に着用者の排泄部が主に対向する排泄スポット部C1にほぼ対応する。前方低厚み領域72aは、着用時に着用者の排泄部より腹側に位置する。後方低厚み領域72bは、着用時に着用者の排泄部より背側に位置する。
【0022】
図2に示すように、高厚み領域71は、縦方向Xに延びる複数の縦溝711及び図示しない横方向Yに延びる複数の横溝と、これら縦溝711及び横溝によりブロック状に区分けされた複数の高坪量部712を有する。縦溝711及び横溝は、高坪量部712よりも低い坪量で厚みが薄く構成される。各高坪量部712は、吸水性材料の坪量が高く厚みが厚く構成される。縦溝711及び横溝が設けられることにより、高厚み領域71は着用者の排泄部付近の形状に沿って変形し易くなっており、高い吸液性に加えてフィット性に優れたナプキン1となっている。
【0023】
(吸収性コアの坪量の測定方法)
吸収性コアが相対的に吸水性材料の坪量が高い高坪量部を有することは、以下に示す坪量の測定方法での算出結果に基づいて確認することができる。
測定対象の吸収性コア7における高厚み領域71を、相対的に厚みが厚い高坪量部712と厚みが薄い溝部との境界線に沿ってフェザー社製の片刃剃刀を用いて切断する。切断して得られた高坪量部712の小片10個をそれぞれ電子天秤(A&D社製電子天秤GR-300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定し、高坪量部の小片1個の平均重量を求める。求めた平均重量を高坪量部の小片1個当たりの平均面積で除して高坪量部の坪量を算出する。
測定対象の吸収性コア7における前方低厚み領域72a及び後方低厚み領域72bそれぞれから、フェザー社製の片刃剃刀を用いて小片10個を得、上記高坪量部712の坪量の算出と同様の方法で前方低厚み領域72a及び後方低厚み領域72bそれぞれの坪量を算出する。
【0024】
(コアラップシート)
図2及び3に示すように、コアラップシート8は、吸収性コア7を被覆し、例えば吸収性コア7の形状を保持する機能等を有する。
コアラップシート8は、典型的には、親水性繊維を主体とする不織布、紙などのシート状物である。コアラップシート8に含まれる親水性繊維としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;キュプラ、レーヨン等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維に親水化処理を施した繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。コアラップシートにおける親水性繊維の典型的なものは、天然繊維、セルロース系の再生繊維又は半合成繊維である。
【0025】
コアラップシート8は、吸収性コア7の肌側面7aを被覆する肌側コアラップシート8aと、非肌側面7bを被覆する非肌側コアラップシート8bと、を有する。肌側コアラップシート8aは、吸収体4の肌側面4aを形成する。非肌側コアラップシート8bは、吸収体4の非肌側面4bを形成する。
【0026】
コアラップシート8は例えば矩形状を有する。
図2に示すように、コアラップシート8は、吸収性コア7の肌側面7a側から側部を経て非肌側面7bを覆い、非肌側面7b側において、コアラップシート8の両側端部8eによる重なり部8cを有して、吸収性コア7を被覆する。非肌側コアラップシート8bは、コアラップシート8の横方向Yにおける両側端部8eが重なっている重なり部8cを含む。複数枚の、ここでは2枚のコアラップシートが重なって構成される重なり部8cは、縦方向Xに延在し、吸収体4の横方向Yの中央部付近に位置する。重なり部8cを構成する両側端部8eは、第3接着剤S3によって接合されている。
【0027】
コアラップシート8の全面には水溶性抗菌剤が塗工されている。
図1に示すように、吸収体4は、平面視で肌側面4a及び非肌側面4bそれぞれの全域において水溶性抗菌剤が含まれている肌側抗菌剤配合部15a及び非肌側抗菌剤配合部15bを有する。水溶性抗菌剤は、水によって移動しやすい状態のものである。
本明細書において、抗菌剤が水溶性であるとは、25℃のイオン交換水1Lに対する溶解度が2g以上であることをいい、水溶性抗菌剤の25℃のイオン交換水に対する溶解度は、好ましくは3g以上、更に好ましくは5g以上である。
溶解度は、次の方法によって測定することができる。2Lビーカーに入れた25℃のイオン交換水1Lに対して、十分乾燥させた測定対象(抗菌剤)を投入し、長さ20mm、幅7mmのスターラーチップを入れ、マグネチックスターラーを用いて600rpmで攪拌し、1時間攪拌しても溶解できない直前の投入量を、当該抗菌剤の25℃の水に対する溶解度とする。なお、マグネチックスターラーとしてはアズワン株式会社製HPS-100等を使用できる。
【0028】
水溶性抗菌剤としては、例えば、水によって移動しやすいイオン性のものを用いることができる。水によって移動しやすいイオン性で、かつ、菌との親和性を考慮した有機性の抗菌剤として、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等の陽イオン性の抗菌剤等が好ましい。
【0029】
[圧搾溝の構成]
図1に示すように、圧搾溝6は、ナプキン1の横方向Yにおける中心を挟んで左右に一対形成される。圧搾溝6は、例えば、本体Mの表面シート2側から厚み方向Zに圧搾加工することによって形成される。圧搾溝6は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、或いは超音波エンボス等のエンボス加工等の常法に従って形成することができる。
【0030】
図1及び3に示すように、ナプキン1は、ナプキン1の肌側面1aに形成された肌側圧搾溝6aと、吸収体4の非肌側面4bに形成された非肌側圧搾溝6bと、を有する。
肌側圧搾溝6aは、表面シート2、肌側コアラップシート8a及び吸収性コア7を一体的に凹陥する肌側凹陥部66aを含む。肌側圧搾溝6aは、複数の点状の肌側凹陥部66aが間欠的に配されて列をなし全体的に連続した線として見做せる線状となっている。
非肌側圧搾溝6bは、非肌側コアラップシート8bと吸収性コア7を一体的に凹陥する非肌側凹陥部66bを含む。非肌側圧搾溝6bは、複数の点状の非肌側凹陥部66bが間欠的に配されて列をなし全体的に連続した線として見做せる線状となっている。肌側凹陥部66a及び非肌側凹陥部66bの平面形状は特に限定されず、例えば正円状、楕円状等、多角形状等とすることができる。
【0031】
肌側凹陥部66aは、表面シート2、肌側コアラップシート8a及び吸収性コア7が一体的に厚み方向Zに圧縮されて窪んで形成される。肌側凹陥部66aは、他の領域と比較して繊維の密度が高くなるため、毛管作用によって排泄された液を吸液及び保持することができる。このように、肌側圧搾溝6aは、面内における液拡散性を制御し、吸収体4の外方への液の漏れを防止する防漏作用を有するとともに、ナプキンのよれの発生を抑制する。
非肌側凹陥部66bは、非肌側コアラップシート8bと吸収性コア7とが一体的に厚み方向Zに圧縮されて窪んで形成される。
【0032】
肌側凹陥部66aと非肌側凹陥部66bは、平面視で重なっている。肌側圧搾溝6aと非肌側圧搾溝6bは平面視で略同じ外形形状を有し、平面視で重なっている。
肌側圧搾溝6aは、複数の、圧搾された部分である肌側凹陥部66aと、隣り合う肌側凹陥部66a間の圧搾されていない部分と、を含む。同様に、非肌側圧搾溝6bは、複数の、圧搾された部分である非肌側凹陥部66bと、隣り合う非肌側凹陥部66b間の圧搾されていない部分と、を含む。
以下、肌側圧搾溝6aと非肌側圧搾溝6bというように特に区別する必要がない場合は圧搾溝6という。また、肌側凹陥部66aと非肌側凹陥部66bというように特に区別する必要がない場合は凹陥部66という。
【0033】
ここで、圧搾溝6における「連続」した線状とは、連続した線状の凹陥部によって圧搾溝が形成される形態と、本実施形態のように不連続な複数の点状の凹陥部が列をなした集合体によって圧搾溝が形成され、全体的に連続した線と見做せる形態と、を含む。
また、圧搾溝6における「線状」は、圧搾溝の形状が平面視において直線状の態様に限られず、曲線状の態様を含む。
ナプキン1では、圧搾溝6は、全体的に、本体Mの周縁部を周回する1つの環状の連続線に見做せる形態となっているが、複数の線状部が間欠的に配されて全体として1つの環状の圧搾溝として見做せる不連続線形状が周回している形態であってもよい。
【0034】
図1に示すように、圧搾溝6は、主に縦方向Xに延びる線状の縦圧搾溝61と、前方領域Fに位置する主に横方向Yに延びる前方凸状部62と、後方領域Rに位置する主に横方向Yに延びる後方凸状部63を有する。縦圧搾溝61はナプキン1の排泄部対向領域Cを含む縦方向Xの中央部付近に位置する。
縦圧搾溝61、前方凸状部62、後方凸状部63どうしは、それらの延在方向の端部にて互いに連結されており、平面視で環状の圧搾溝6を形成する。圧搾溝6は、縦方向Xに長手方向を有する略長楕円形状を有する。
ここで「縦方向Xに延びる」とは、縦方向Xに完全に平行な態様に限られず、前方から後方に向かって延びていればよい。同様に、「横方向Yに延びる」とは、横方向Yに完全に平行な態様に限られず、右側から左側に向かって延びていればよい。
圧搾溝6は、効果的に横方向Yへの液の拡がりを抑制する観点から、着用者からの液が主に供給される排泄部対向領域Cに、少なくとも左右に一対、縦方向Xに線状に延びて設けられていることが好ましい。
【0035】
[第2及び第3接着剤の構成]
(第2接着剤)
図2に示すように、肌側コアラップシート8aと吸収性コア7は、間に配された第2接着剤S2によって接合されている。第2接着剤S2は、難水溶性の接着剤である。
難水溶性とは、25℃の水1Lに対して1g以下の溶解性であることを言う。
難水溶性の接着剤としては、例えばホットメルト接着剤が用いられ、ホットメルト接着剤としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等(特許第5972746号公報参照)を用いることができる。
図1に示すように、第2接着剤S2は、吸収体4の横方向Y中央部に、縦方向X方向における全長に亘って帯状に塗工されている。第2接着剤S2が配置されている部分を第2接着剤配置部12という。
第2接着剤S2の第2接着剤配置部12は、平面視で吸収体4の全域に対して部分的に位置するが、肌側コアラップシート8aは、表面シート2の存在によって、全体的に吸収性コア7から浮きにくい状態となっている。これにより、柔軟性を高めつつ吸収性コア7からの肌側コアラップシート8aの浮きが効果的に抑制されるとともに、接着剤による通液阻害の発生が抑制されて良好な吸液性が保持される。
【0036】
図1に示すように、第2接着剤S2の塗工パターンは、第2接着剤S2が塗工される塗工部16と、塗工されていない非塗工部17とが混在するパターンとなっている。第2接着剤配置部12において、塗工部16及び非塗工部17が、例えば縦方向又は横方向の少なくとも1つの方向で存在するように、第2接着剤S2は間欠に塗工される。
間欠塗工パターンの例としては、スパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状、ストライプ状等が挙げられる。
【0037】
(第3接着剤)
図1に示すように、平面視において、非肌側コアラップシート8bのコアラップシート8の重なり部8cにおける両側端部8e間に塗工される第3接着剤S3は、吸収体4の横方向Y中央部に、縦方向X方向における全長に亘る帯状に塗工されている。第3接着剤S3が配置されている部分を第3接着剤配置部13という。第3接着剤配置部13と第2接着剤配置部12とは平面視でほぼ重なっている。
吸収性コア7全体を被覆する1枚のコアラップシート8において、両側端部8eが第3接着剤S3によって接合され、両側端部8e間の開き等が抑制される。これにより、コアラップシート8により制限される吸収性コア7が位置する空間が維持されて吸収体4の形状が維持され易くなる。
【0038】
第3接着剤S3には、好ましくは、第2接着剤S2と同様に、難水溶性の接着剤を用いることができる。
第3接着剤S3の塗工パターンは特に限定されず、第2接着剤S2と同様に塗工部16と非塗工部17とが混在するように間欠に塗工されてもよいし、連続的に塗工されてもよい。ナプキン1の柔軟性を高める観点からは、第3接着剤S3は間欠的に塗工されることが好ましい。間欠塗工パターンの例としては、スパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状、ストライプ状等が挙げられる。
【0039】
[吸収体の第2接着剤及び抗菌剤に関する構成]
図1及び2に示すように、ナプキン1では、排泄部対向領域Cにおいて、第2接着剤配置部12と肌側抗菌剤配合部15aとが接して、平面視で重なっており、肌側抗菌剤配合部15aは、横方向Yにおいて第2接着剤配置部12の幅(横方向Yにおける寸法)よりも広くなっている。
図1に示す例では、前方領域F、排泄部対向領域C、後方領域Rに亘って、平面視で、肌側抗菌剤配合部15a内に第2接着剤配置部12が位置しており、縦方向Xに沿った全長に亘って、肌側抗菌剤配合部15aは第2接着剤配置部12よりも幅が広くなっている。
【0040】
平面視で、排泄部対向領域Cは、第2接着剤配置部12と肌側抗菌剤配合部15aが重なる領域と、第2接着剤配置部12が重ならない肌側抗菌剤配合部15aのみの領域と、を有する。
第2接着剤配置部12と肌側抗菌剤配合部15aとが接して重なる領域は、排泄部対向領域Cの横方向Y中央部に位置し、排泄スポット部C1にほぼ対応して位置する。肌側抗菌剤配合部15aのみの領域は、両側方部C2にほぼ位置する。
【0041】
上述したように、第2接着剤S2は難水溶性の接着剤であり、コアラップシート8に含まれる抗菌剤は水溶性である。
図2に示すように、肌側抗菌剤配合部15aを有する肌側コアラップシート8aは、第2接着剤S2に接して、第2接着剤S2よりも上方に位置する。
平面視で第2接着剤配置部12と重なる肌側コアラップシート8aに存在する抗菌剤は、着用時、着用者からの液によって溶けるが、他の部材への移動が難水溶性の第2接着剤S2によって抑制され、着用者の肌に近い部分に留まった状態となっている。一方、肌側抗菌剤配合部15aのみの領域に存在する抗菌剤は、着用者からの液によって溶けて液とともに吸収性コア7等の他の部材へ移動しやすい状態となっている。
【0042】
経血等の液には、脂質、糖質、タンパク質、血漿などが存在し、これらの物質により菌の繁殖が促進されることで悪臭が発生しやすくなっている。
ナプキン1では、上述のように、第2接着剤配置部12と肌側抗菌剤配合部15aとが重なる領域において、着用者からの液によって他の部材に移動しない、着用者の肌に近い部分に留まる抗菌剤を確保することができる。これにより、ナプキン1の着用者の肌に近い部分での菌の繁殖が抑制され、ナプキン1における着用者の肌に近い部分及び着用者の排泄部付近の抗菌効果が向上し、悪臭の発生等を抑制することができる。加えて、ナプキン1では、第2接着剤配置部12が重ならない肌側抗菌剤配合部15aのみの領域があり、液とともに他の部材に移動しやすい抗菌剤が存在しているので、吸収体4においても、液とともに移動した抗菌剤によって菌の繁殖が抑制されて抗菌効果が発現され得る。
【0043】
ここでは、コアラップシート8全体に抗菌剤が含まれている例をあげたが、これに限られない。例えば、肌側コアラップシート8aにおいて、平面視で横方向Y中央部に縦方向Xに延在した帯状に、部分的に抗菌剤が含まれていてもよい。排泄部対向領域Cにおいて、平面視で、第2接着剤配置部12と肌側抗菌剤配合部15aとが接して重なっている領域があり、肌側抗菌剤配合部15aの少なくとも一部が、横方向Yにおいて第2接着剤配置部12の幅よりも広くなっていればよい。換言すると、排泄部対向領域Cにおいて、少なくとも平面視で第2接着剤配置部12と肌側抗菌剤配合部15aとが接して重なる領域と、第2接着剤配置部12が重ならない肌側抗菌剤配合部15aのみの領域の双方が存在していればよい。
これにより、ナプキンにおいて、肌側コアラップシート8aには、着用時に吸収性コア7へと液とともに移動しやすい抗菌剤と、他の部材に移動せず、着用者の肌に近い部分に留まる抗菌剤とが存在することとなる。これによって、ナプキン1における着用者の肌に近い部分及び着用者の排泄部付近の抗菌効果が向上するとともに、吸収体4内においても抗菌効果が効率よく発現され得る。
【0044】
ナプキン1において、相対的に坪量の高い高坪量部712は、着用時に排泄部に対向して位置し、周囲よりも経血が保持されやすい領域であり、菌が多く存在しやすい領域である。
このように、吸収性コア7が相対的に坪量の高い高坪量部712を有する場合、高坪量部712と第2接着剤配置部12とが平面視で重なっていることが好ましい。
これにより、平面視で、菌が多く存在する領域である高坪量部712と第2接着剤配置部12とが重なる領域では、第2接着剤S2により移動が抑制された抗菌剤が着用者の肌に近い部分に留まり、着用者の肌に近い部分の抗菌剤を確保することができ、ナプキン1における着用者の肌に近い部分及び着用者の排泄部付近の抗菌効果が効率よく発現されて抗菌効果が向上する。
【0045】
図1に示すように、ナプキン1の排泄部対向領域Cにおいて、平面視で、第2接着剤配置部12は左右一対の防漏溝6の間に位置することが好ましい。
これにより、ナプキン1では、第2接着剤配置部12と防漏溝6とが重ならず、第2接着剤配置部12と左右それぞれの防漏溝6との間に第2接着剤が配置されていない領域が存在する形態となる。
排泄部対向領域Cの左右一対の防漏溝6で挟まれる領域は、着用者からの液が多く供給され、菌が多く存在し得る領域である。このような領域に、第2接着剤配置部12と肌側抗菌剤配合部15aとが重なる領域が位置することにより、ナプキン1における着用者の肌に近い部分及び着用者の排泄部付近の抗菌剤による抗菌効果が効率よく発現されるとともに、第2接着剤S2が配置されていない領域が位置することにより、第2接着剤による通液阻害が発生しにくく、肌側コアラップシート8aに含まれる抗菌剤が吸収性コア7内へ液とともに速やかに移動し、吸収体4内における抗菌効果を効果的に向上させることができる。
【0046】
第2接着剤の第2接着剤配置部12は、塗工部16と非塗工部17とを有していることが好ましい。
第2接着剤配置部12では、塗工部16において、抗菌剤を第2接着剤S2付近に留まらせることができ、着用者の肌に近い部分の抗菌剤を確保することができる。非塗工部17において、抗菌剤を第2接着剤S2にとどまらせることなく吸収性コア7といった他の部材に移動し得る状態とし、他の部材にて抗菌効果が発現できるようにすることができる。
これにより、第2接着剤配置部12において、着用者の肌に近い部分の抗菌効果の向上と他の部材に移動している液に対する抗菌効果の双方を得ることができる。また、非塗工部17が存在するように第2接着剤S2を塗工することにより、第2接着剤配置部12での柔軟性を高め、かつ、接着剤による通液阻害の発生が抑制された良好な吸液性が有するナプキン1とすることができる。
【0047】
第2接着剤配置部12が塗工部16と非塗工部17を有している場合、平面視で第2接着剤配置部12と重なる抗菌剤配合部15aの抗菌剤は、平面視で塗工部と重なっていることが好ましい。しかし、この形態に限られず、抗菌剤が非塗工部17と平面視重なっていてもよい。例えば、第2接着剤配置部12がスパイラル形状に塗工された接着剤を複数本有する場合は、抗菌剤が縦方向X又は横方向Yの何れかにおいて塗工部16と重なっていて、残部は非塗工部と重なっていても良い。また、線状に塗工された接着剤が複数本、横方向Yに間欠的に配置されたストライプ形状の場合には、抗菌剤が塗工部16のみと重なる形態、塗工部16と非塗工部17双方に重なるよう配されるのが好ましいが、非塗工部17のみに重なる様配されても良い。この場合、線状接着剤塗工部間隔、すなわち非塗工部の幅は、抗菌剤の幅の60%以上であることが好ましく、80%以上であることが好ましい。非塗工部17に配された抗菌剤は、液との接触によって厚み方向以外に、抗菌剤配合部15aの面内にも拡散しうるので、第2接着剤配置部12の接着剤に捕捉されて移動が抑制され得る。
【0048】
[吸収体の第3接着剤及び抗菌剤に関する構成]
コアラップシート8の全面に水溶性抗菌剤が含まれており、平面視における非肌側コアラップシート8bの全域に水溶性抗菌剤が分布しており、非肌側コアラップシート8bは非肌側抗菌剤配合部15bを有している。非肌側コアラップシート8bに含まれる重なり部8cにおいても水溶性抗菌剤が含まれる。
図1及び2に示すように、平面視で、排泄部対向領域Cにおいて、第3接着剤配置部13と非肌側抗菌剤配合部15bとは接して重なっており、非肌側抗菌剤配合部15bは、横方向Yにおいて第3接着剤配置部13の幅よりも広くなっている。
重なり部8cに配される第3接着剤S3と、肌側コアラップシート8aと吸収性コア7との間に配される第2接着剤S2とは、平面視で少なくとも一部が重なっている。
【0049】
上述したように、第3接着剤S3は難水溶性の接着剤であり、コアラップシート8に含まれる抗菌剤は水溶性である。
図2に示すように、非肌側抗菌剤配合部15bを有する非肌側コアラップシート8bは、第3接着剤S3に接して、第3接着剤S3の上方及び下方に位置する。
非肌側抗菌剤配合部15bと第3接着剤配置部13が接して位置することにより、着用時、側端部8eに含まれる抗菌剤は、重なり部8cまで到達した着用者からの液によって溶けるが、他の部材への移動が難水溶性の第3接着剤S3によって抑制され、重なり部8cに留まった状態となっている。これにより、非肌側面4bでの菌の繁殖が効果的に抑制されて抗菌性が保たれることとなり、ナプキン1全体としての抗菌性が向上する。
また、着用時、着用者からの圧力がナプキン1に加わることによって、吸収体4に吸収された液が着用者の肌側へ戻る、所謂液戻りが生じる場合がある。この液戻りの際に、重なり部8cに含まれていた抗菌剤が液とともに着用者の肌側に向かって移動する。ナプキン1では、排泄部対向領域Cにおいて、第3接着剤S3と第2接着剤S2とが平面視で重なっているので、重なり部8cに含まれていた抗菌剤の一部が液戻り時に液とともに着用者の排泄部の近くに効率よく移動しやすく、排泄部付近の抗菌効果をより向上させることができる。
【0050】
ここでは、非肌側コアラップシート8bの全域に抗菌剤が含まれる例をあげたが、少なくとも第3接着剤S3が塗工される重なり部8cに抗菌剤が含まれていればよく、吸収体4の非肌側面4bでの抗菌性を保持することができる。
【0051】
[本実施形態の補足説明]
以下、各構成に係る数値をあげるが、これらは一例であり、これらに限定されるものではない。
【0052】
(抗菌剤の坪量)
コアラップシート8における抗菌剤の坪量は、抗菌剤の種類等に応じて適宜決定することができる。一例をあげると、コアラップシート8において、抗菌性を一定水準以上で付与する観点から、抗菌剤の坪量は、好ましくは0.01g/m2以上、より好ましくは0.02g/m2以上である。
コアラップシートに含まれる抗菌剤の坪量は、液体クロマトグラフ/質量分析計(商品名:6140 LC/MS,アジレント・テクノロジー株式会社製、イオン化法:ESI)にて測定することができる。或いは、検量線を作成し、これに基づいて抗菌剤の含有量を測定し、坪量を算出することもできる。
【0053】
(第2及び第3接着剤の塗工幅、肌側及び非肌側抗菌剤配合部の幅)
コアラップシート8に、例えば上記範囲の坪量で抗菌剤が塗工されている場合、排泄部対向領域Cにおける、第2接着剤S2の塗工幅(第2接着剤配置部12の横方向Yにおける寸法)は、着用者の肌に近い部分での十分な抗菌効果の発現という観点から、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上である。第2接着剤S2の塗工幅の上限値は、排泄部対向領域Cにおける肌側抗菌剤配合部15aの幅によって適宜設定することができ、少なくとも平面視で肌側抗菌剤配合部15aのみの領域が存在するように設定する。
コアラップシート8に上記範囲の坪量で抗菌剤が塗工され、排泄部対向領域Cにおいて、縦方向Xに亘って肌側抗菌剤配合部15aが第2接着剤配置部12よりも幅が広い形態である場合、排泄部対向領域Cにおける、肌側抗菌剤配合部15aの幅(横方向Yにおける寸法)は、吸収体4内での効果的な抗菌効果の発現という観点から、次のように設定されることが好ましい。すなわち、肌側抗菌剤配合部15aの幅は、第2接着剤配置部12よりも、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上広く設定される。液との接触面積を増やし、ナプキン1全体の抗菌効果を向上させる観点から、平面視における肌側コアラップシート8aの全域に抗菌剤が分布していることがより好ましい。この場合、肌側抗菌剤配合部15aの幅は吸収体4の幅と同じ寸法となる。
【0054】
第3接着剤S3の塗工幅(第3接着剤配置部13の横方向Yにおける寸法)は、重なり部8cの横方向Yの寸法によって適宜決定することができる。一例をあげると、非肌側コアラップシート8bの全域に、例えば上記範囲の坪量で抗菌剤が塗工されている場合、排泄部対向領域Cにおける第3接着剤S3の塗工幅は、重なり部8cでの十分な接着効果及び重なり部8c付近での十分な抗菌効果の発現の観点から、好ましくは5mm以上、より好ましくは8mm以上である。
非肌側抗菌剤配合部15bの幅は、特に限定されない。重なり部8c付近での抗菌効果の発現の観点から、第3接着剤配置部13と非肌側抗菌剤配合部15bとが平面視で少なくとも一部が重なるように設定すればよい。これにより、重なり部8cの少なくとも一部で、重なり部8cに留まる抗菌剤を確保することができる。尚、ナプキン1全体の抗菌効果を向上させる観点から、平面視における非肌側コアラップシート8bの全域に抗菌剤が分布していることがより好ましい。
【0055】
(第2接着剤配置部における非塗工部の割合)
第2接着剤配置部12において、着用時、着用者の肌に近い部分の抗菌効果を向上させつつ、吸収体4内の抗菌効果も維持する観点から、第2接着剤配置部12における非塗工部17が占める割合は例えば50%以上90%以下であることが好ましい。
【0056】
(接着剤配置部の位置の確認方法、塗工部と非塗工部の確認方法)
接着剤配置部が塗工部及び非塗工部を有することは、以下の方法により確認することができる。
接着剤が塗工されている領域をトナーで着色し、画像処理機能を有する顕微鏡を用いてトナーで着色されている部分を観察する。これにより、ナプキン全体における接着剤配置部の位置と、接着剤配置部が塗工部と非塗工部を有していることを確認することができる。また、顕微鏡を用いた観察と画像処理によって、接着剤配置部の面積、トナーで着色されている部分となる塗工部16の面積、着色されていない部分となる非塗工部17の面積等を算出することができる。
【0057】
[他の構成例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、以上の実施形態では、吸収性物品として生理用ナプキンの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、尿取りパットやおりものシート、使い捨ておむつ等であってもよい。吸収性物品は、一般に、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有して構成される。
【0058】
また、例えば、上記実施形態では、吸収性コア7の高厚み領域71に縦溝711及び横溝が設けられている例をあげたが、吸収性コア7の形状はこれに限定されない。例えば、高厚み領域71に縦溝又は横溝の一方が設けられてもよいし、高厚み領域71が溝を有さず全域が高坪量部で形成されていてもよい。
また、上記の実施形態では、吸収性コアが突出部を有し、相対的に厚みが厚い高厚み領域を有する例をあげたが、突出部のない全体的に平坦な吸収性コアを有するナプキンに本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1…生理用ナプキン(吸収性物品)
1a…肌側面
1b…非肌側面
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
7…吸収性コア
7a…吸収性コアの肌側面
7b…吸収性コアの非肌側面
8…コアラップシート
8a…肌側コアラップシート
8b…非肌側コアラップシート
12…第2接着剤配置部(接着剤配置部)
15a…肌側抗菌剤配合部(抗菌剤配合部)
S2…第2接着剤(肌側コアラップシート吸収性コアとの間の接着剤)
F…前方領域
C…排泄部対向領域
R…後方領域