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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240909BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20240909BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/095
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021010029
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022113974
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】河野 星志
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012549(JP,A)
【文献】特開2019-086892(JP,A)
【文献】特開2015-205648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援機能により自車両の運転を支援する運転支援装置であって、
自車両の所定時間後の未来位置を予測する車両位置予測手段と、
前記未来位置の周囲を囲む車両領域を設定する領域設定手段と、
物標の前記所定時間後の未来位置を予測する物標位置予測手段と、
前記領域設定手段により設定された前記車両領域内に前記物標位置予測手段により予測された前記物標の未来位置が含まれるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記車両領域内に前記物標の未来位置が含まれると判断された場合に前記運転支援機能を作動させる機能作動手段と、
前記物標の進行方向を導出する物標進行方向導出手段と、を備え、
前記判断手段は、
自車両と前記物標との距離が、予め設定された所定距離内である場合には当該物標を前記判断の対象とするが、前記所定距離内に入っていない場合には前記判断の対象としない第1の簡易判定を行い、
前記第1の簡易判定で前記判断の対象とすると判断された場合に、前記物標進行方向導出手段により導出された前記物標の進行方向と平行であって、前記物標の位置を通る直線が、自車両の予測進路を含む領域である存在可能性領域を通る箇所がなければ前記判断の対象とせず、当該存在可能性領域を通る箇所があれば前記判断の対象とする第2の簡易判定を行うことを特徴とする運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転を支援する装置として、自車両の周辺に位置する物体との衝突を回避したり、衝突時の被害を軽減させるものがある。例えば、特許文献1に記載の運転支援装置は、自車両の周辺に位置する物体との衝突の有無を判定する衝突判定装置であり、自車両の推定経路と、周辺の物体の推定経路とを算出し、自車両と周辺の物体とに交わりがある場合は、当該物体との衝突があると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-8288号公報(段落0019~0059等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の衝突判定装置では、自車両の操舵量の変化速度と自車両の速度とに基づいて自車両の推定経路を算出するとともに、推定経路上の各位置において自車両の領域を算出する。自車両の領域は、自車両の大きさを示す車両諸元に基づいて算出される。また、物体検出装置により検出された物体の位置と自車両に対する物体の相対速度とに基づいて物体の推定経路を算出するとともに、推定経路上の各位置において物体の領域を算出する。物体の領域は、物体検出装置により算出された物体の大きさに基づいて算出される。そして、判定部は、自車両の推定経路上の各位置の自車両の領域と、物体の領域との間に重なりがある場合に自車両と物体との衝突があると判定する。
【0005】
このように、特許文献1に記載の衝突判定装置では、様々な算出処理や判定処理が必要になるが、衝突判定を行わなければならない物体は通常複数存在するため、ECUなどの演算部の処理負荷が増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、衝突可能性がある物標に対してのみ詳細な衝突予測を行うことにより、演算部の処理負荷の軽減を図ることができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の運転支援装置は、運転支援機能により自車両の運転を支援する運転支援装置であって、自車両の所定時間後の未来位置を予測する車両位置予測手段と、前記未来位置の周囲を囲む車両領域を設定する領域設定手段と、物標の前記所定時間後の未来位置を予測する物標位置予測手段と、前記領域設定手段により設定された前記車両領域内に前記物標位置予測手段により予測された前記物標の未来位置が含まれるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記車両領域内に前記物標の未来位置が含まれると判断された場合に前記運転支援機能を作動させる機能作動手段と、前記物標の進行方向を導出する物標進行方向導出手段と、を備え、前記判断手段は、自車両と前記物標との距離が、予め設定された所定距離内である場合には当該物標を前記判断の対象とするが、前記所定距離内に入っていない場合には前記判断の対象としない第1の簡易判定を行い、前記第1の簡易判定で前記判断の対象とすると判断された場合に、前記物標進行方向導出手段により導出された前記物標の進行方向と平行であって、前記物標の位置を通る直線が、自車両の予測進路を含む領域である存在可能性領域を通る箇所がなければ前記判断の対象とせず、当該存在可能性領域を通る箇所があれば前記判断の対象とする第2の簡易判定を行うことを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、判断手段による判断は全ての物標を対象として行うのではなく、第1の簡易判定により、自車両と物標との距離が予め設定された所定距離内かどうかに基づき当該物標を判断の対象とするかしないかを判断して判断の対象を所定距離内のものに絞り込み、判断の対象として絞り込んだ物標については、さらに第2の簡易判定により、当該物標の進行方向と平行であって、当該物標の位置を通る直線が、自車両の予測進路を含む領域である存在可能性領域を通る箇所がなければ前記判断の対象とせず、当該存在可能性領域を通る箇所があれば判断の対象とするため、判断手段の判断処理の負荷のさらなる軽減を図ることができる上、より正確な判断に基づいて運転支援機能を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る運転支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】機能作動処理の流れを示す図である。
図3】未来位置推定処理の流れを示すフローチャートである。
図4】車両とその前方に存在する対象物(他車両)とを示す図である。
図5】車両領域について説明するための図である。
図6】作動機能決定処理の流れを示すフローチャートである。
図7】衝突可能性の有無の簡易判定の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
<運転支援システム>
図1は、本発明の一実施形態に係る運転支援システム1の構成を示すブロック図である。
【0014】
運転支援システム1は、車両A(図4参照)に搭載されて、車両Aの運転を支援するシステムである。運転支援システム1は、車両Aと前方の車両などの物標T(図4参照)との衝突を回避または衝突による被害を軽減するための運転支援機能として、自動ブレーキの作動前に衝突の可能性を警報する衝突警報機能と、ドライバに衝突を回避するための行動を促すために、自動ブレーキにより車両Aを1次目標減速度で減速させる1次ブレーキ機能(緩ブレーキ機能)と、衝突の回避および衝突被害の軽減のために、自動ブレーキにより車両Aを1次目標減速度よりも大きい2次目標減速度で減速させる2次ブレーキ機能(強ブレーキ機能)を有している。
【0015】
運転支援システム1には、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)11が含まれる。ECU11は、マイコン(マイクロコントローラ)12を備えている。マイコン12には、CPU13およびメモリ14が内蔵されている。車両Aには、ECU11以外に、各部を制御するための複数のECUが搭載されており、ECU11は、他のECUとCAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0016】
また、車両Aには、カメラ21が搭載されている。カメラ21は、たとえば、所定のフレームレートで静止画を連続して撮影可能なステレオカメラであり、車両Aの前方を広角で撮像可能なように、たとえば、車室内の前部中央のルームミラーの前方に設置されている。カメラ21では、左右両眼のイメージセンサから入力される一対の画像データから、イメージセンサに撮像された各画像で同一対象物に対応する対象画素が抽出され、その一対の画像間での対象画素の位置のずれ量が検出されて、三角測量の原理で同一対象物までの距離が算出される。カメラ21の出力信号は、ECU11に入力される。
【0017】
車両Aにはさらに、車速センサ22、舵角センサ23およびヨーレートセンサ24が設けられている。車速センサ22は、車両Aの走行に伴って回転する回転体(たとえば、ドライブシャフト)の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。舵角センサ23は、車両Aのステアリング機構(たとえば、ハンドル)の舵角中点に対する舵角(絶対舵角)に応じた検出信号を出力する。その舵角は、舵角中点からステアリング機構が右に切られた状態(ハンドルが右側に回された状態)で正の値をとり、左に切られた状態(ハンドルが左側に回された状態)で負の値をとる。ヨーレートセンサ24は、車両Aの重心点を通る鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートに応じた検出信号を出力する。車速センサ22、舵角センサ23およびヨーレートセンサ24の検出信号は、ECU11に入力される。
【0018】
車両Aには、油圧式のブレーキシステムが搭載されている。ブレーキシステムは、ブレーキペダル、ブレーキブースタ、マスタシリンダ、ブレーキアクチュエータ25および各車輪に設けられるブレーキを含む。ブレーキペダルは、運転席に着座した運転者の右足での足踏み操作が便利な位置に配置されている。ブレーキペダルが踏まれると、そのブレーキペダルに入力された踏力がブレーキブースタに伝達される。ブレーキブースタでは、エンジンの吸気系に発生する負圧が利用され、その負圧と大気圧との圧力差によりブレーキペダルの踏力が増幅される。ブレーキブースタで増幅された力がブレーキブースタからマスタシリンダに伝達され、その力に応じた油圧がマスタシリンダから発生する。マスタシリンダの油圧がブレーキアクチュエータ25に伝達され、ブレーキアクチュエータ25から各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が供給されて、その油圧により、各ブレーキから車輪に制動力が付与される。また、ブレーキアクチュエータ25には、電動ポンプが内蔵されており、自動ブレーキが作動時には、電動ポンプがバッテリからの電力で駆動されて、電動ポンプで発生した油圧が各ホイールシリンダに供給される。
【0019】
また、車両Aには、警報器26が備えられている。警報器26は、各種の警報を出力するものであり、その警報は、光により出力されてもよいし、音または音声により出力されてもよい。
【0020】
<機能作動処理>
図2は、機能作動処理の流れを示す図である。
【0021】
車両A(図4参照)では、走行中および停車中にかかわらず、ECU11により、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能を選択的に作動させるための機能作動処理が実行される。
【0022】
機能作動処理では、まず、カメラ21の出力信号から車両Aの前方を移動する車両等の物標T(図4参照)が認識されて、その物標Tの移動方向および移動速度などの情報が取得される(ステップS1)。カメラ21により複数の物標Tが認識された場合は、各物標Tそれぞれに対する移動方向および移動速度などの情報が取得される。また、車速センサ22、舵角センサ23およびヨーレートセンサ24の検出信号から自車である車両Aの車速、舵角およびヨーレートなどの情報が取得される(ステップS1)。舵角およびヨーレートの情報は、車両Aの旋回状態の情報である旋回情報の一例である。
【0023】
次に、物標Tおよび車両Aのt秒後(t>0)の位置である未来位置が推定される(ステップS2)。未来位置は、各物標Tそれぞれにおいて推定される。
【0024】
次に、各物標Tそれぞれに対して、衝突可能性の有無の簡易判定が行われる(ステップS3)。当該判定で、衝突可能性が無いと判定された物標Tに対しては、後述する各機能(衝突警報機能、1次ブレーキ機能、2次ブレーキ機能)ごとの衝突予測は行われない。
【0025】
衝突可能性の有無の簡易判定は、車両Aの未来位置(t秒後の推定位置)と、各物標Tの未来位置(t秒後の推定位置)との距離R1が所定の閾値Rxよりも大きい場合(R≧Rx)の場合は、当該物標Tと車両Aとの衝突可能性がないと判定される。一方、距離R1が所定の閾値Rxよりも小さい場合(R<Rx)は、当該物標Tと車両Aとの衝突可能性があると判定される。当該判定については後述する。衝突可能性の有無の簡易判定は、カメラ21により複数の物標Tが認識されている場合は、各物標Tそれぞれに対して行われる。
【0026】
なお、簡易判定について、推定されたt秒後の車両Aと各物標Tとの距離によるのに加えて、物標Tの進行方向が車両Aの予測進路に対して離れる方向である場合には、推定されたt秒後の車両Aと物標Tとの距離R1が所定の閾値Rxよりも小さい場合であっても、衝突可能性がないと判定するようにしてもよい。当該判定についても後述する。
【0027】
その後、物標Tおよび車両Aの未来位置に基づいて、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能の機能ごとに、物標Tと車両Aとの衝突が予測される(ステップS4)。なお、当該衝突予測は、上記した簡易判定において衝突可能性があると判定された物標Tに対しては行われるが、衝突可能性がないと判定された物標Tに対しては行われない。
【0028】
そして、その予測結果から、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能のいずれの機能を作動させるかが決定される(ステップS5)。
【0029】
衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能のいずれかの機能の作動が決定された場合、ブレーキアクチュエータ25または警報器26に対して、その機能の作動を要求する指令とともに、ブレーキアクチュエータ25または警報器26の動作を制御するための制御指示値が送信される(ステップS6)。
【0030】
<未来位置推定>
図3は、未来位置推定処理の流れを示すフローチャートである。図4は、車両Aとその前方に存在する物標T(他車両)とを示す図である。なお、車両Aと物標Tの未来位置の推定は、例えば50ms周期で行われ、各周期それぞれで、現時刻から一定時間(例えば5秒)先まで微小時間ごとに車両Aと物標Tの未来位置が推定される。また、カメラ21が複数の物標Tを認識している場合は、全ての物標Tに対して未来位置が推定される。
【0031】
物標Tおよび車両Aの未来位置については、具体的には、以下のようにして推定される。
【0032】
たとえば、現時における車両Aの中心Cを原点とし、車両Aの車幅方向(左右方向)をX軸方向とし、進行方向(前後方向)をY軸方向する直交座標系において、物標Tの現在位置を表す座標を(X’0,Y’0)とする。また、物標Tの移動ベクトル(速度)のX成分およびY成分をそれぞれVX,VYとする。この場合、物標Tの未来位置(t秒後の位置)のX座標X’(t)およびY座標Y’(t)は、
【0033】
X’(t)=X’0+VX*t ・・・(1)
Y’(t)=Y’0+VY*t ・・・(2)
【0034】
となる。物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))は、それらの式(1),(2)を用いて推定される(ステップS21)。
【0035】
車両Aの未来位置のX座標X(t)およびY座標Y(t)は、それぞれ式(3),(4)を用いて推定される。
【0036】
X(t)=R(1-cos(Δθ))+u(t) ・・・(3)
Y(t)=R*sin(Δθ)+v(t) ・・・(4)
【0037】
ここで、Rは、車両Aの旋回半径であり、式(5)に従って、車両Aの車速VをヨーレートYrで除することにより求められる。ヨーレートYrは、旋回方向が車両Aの重心点を上方から見て時計回りの方向であるときに正の値をとり、反時計回りの方向であるときに負の値をとる。
【0038】
R=V/Yr ・・・(5)
【0039】
Δθは、車両Aの旋回による回転角であり、式(6)に従って、車両AのヨーレートYrに時間tを乗じることにより求められる。
【0040】
Δθ=Yr*t ・・・(6)
【0041】
車両Aが停車中でないとき、つまり車両Aの走行中は、車速センサ22の検出信号から車速Vの実測値を取得することができる。また、ヨーレートセンサ24の検出信号からヨーレートYrの実測値を取得することができる。したがって、車両Aの走行中は(ステップS22のNO)、車速VおよびヨーレートYrの実測値が式(5),(6)に代入され、これにより求まる旋回半径Rおよび回転角Δθが式(3),(4)に代入されて(ステップS23)、車両Aの未来位置(X(t),Y(t))が推定される(ステップS24)。
【0042】
ところが、車両Aの停車中は、車速VおよびヨーレートYrの実測値を取得することができない。そのため、車両Aの停車中は、車両Aの発進後の車速の仮想値である仮想車速が車速Vとされて、その仮想車速が式(5)に代入される。また、車両Aの発進後のヨーレートの仮想値である仮想ヨーレートがヨーレートYrとされて、その仮想ヨーレートが式(6)に代入される。そして、これにより求まる旋回半径Rおよび回転角Δθが式(3),(4)に代入されて(ステップS25)、車両Aの未来位置(X(t),Y(t))が推定される(ステップS24)。
【0043】
仮想車速は、ECU11のメモリ14に仮想車速情報として記憶されており、予め定められた車速値であってもよいし、車両Aの過去の発進の際の加速から学習した車速値であってもよく、一定値であってもよいし、時間の経過に伴って増大する値であってもよい。
【0044】
仮想ヨーレートは、たとえば、車両Aの停車中に舵角センサ23の検出信号から舵角が取得されて、その舵角と仮想車速とから演算により設定される。舵角は、舵角中点からステアリング機構が右に切られた状態で正の値をとり、左に切られた状態で負の値をとるので、仮想ヨーレートは、車両Aが右旋回する場合に正の値をとり、左旋回する場合に負の値をとる。したがって、仮想ヨーレートの正負は、車両Aの発進後の旋回方向を表す。
【0045】
<衝突予測>
図5は、車両領域AA(t)について説明するための図である。なお、衝突予測は、上記した衝突可能性の有無の簡易判定で衝突可能性がありとなった物標Tに対してのみ実施される。また、衝突予測は、所定周期(例えば50ms)で行われる。
【0046】
物標Tと車両Aとの衝突を予測するため、領域設定手段の一例としてのECU11により、未来位置(X(t),Y(t))に位置する車両Aを取り囲む矩形状の車両領域AA(t)が設定される。車両Aの中心Cと車両領域AA(t)の4つの頂点(角)P1,P2,P3,P4との各間の距離をrとし、車両Aの中心Cから車幅方向の右側に延びる直線に対して中心Cと頂点P1とを結ぶ直線がなす角度をθとして、車両領域AA(t)における右前角の頂点P1のX座標P1x(t)およびY座標P1y(t)は、それぞれ式(7),(8)で表される。
【0047】
P1x(t)=X(t)+rcos(θ-Δθ) ・・・(7)
P1y(t)=Y(t)+rsin(θ-Δθ) ・・・(8)
【0048】
左前角の頂点P2のX座標P2x(t)およびY座標P2y(t)は、それぞれ式(9),(10)で表される。
【0049】
P2x(t)=X(t)+rcos(π-θ-Δθ) ・・・(9)
P2y(t)=Y(t)+rsin(π-θ-Δθ) ・・・(10)
【0050】
左後角の頂点P3のX座標P3x(t)およびY座標P3y(t)は、それぞれ式(11),(12)で表される。
【0051】
P3x(t)=X(t)+rcos(π+θ-Δθ) ・・・(11)
P3y(t)=Y(t)+rsin(π+θ-Δθ) ・・・(12)
【0052】
右後角の頂点P4のX座標P4x(t)およびY座標P4y(t)は、それぞれ式(13),(14)で表される。
【0053】
P4x(t)=X(t)+rcos(2π-θ-Δθ) ・・・(13)
P4y(t)=Y(t)+rsin(2π-θ-Δθ) ・・・(14)
【0054】
距離rは、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能の各機能に応じて可変に設定される。具体的には、距離rは、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能の各機能を作動させる制御の緊急度の高いものほど小さい値に設定される。2次ブレーキ機能は、衝突の回避および衝突被害の軽減を目的とするため、その作動が遅れると衝突被害が大きくなるおそれがあり、2次ブレーキ機能を作動させる制御は、緊急度が高い。1次ブレーキ機能は、ドライバに衝突を回避するための行動を促すことを目的とするため、その作動の遅れが衝突被害に直結しないので、1次ブレーキ機能を作動させる制御は、2次ブレーキ機能を作動させる制御よりも緊急度が低い。衝突警報機能は、自動ブレーキの作動前に衝突の可能性をドライバに報知することを目的とするため、衝突警報機能を作動させる制御は、1次ブレーキ機能を作動させる制御よりも緊急度が低い。そこで、2次ブレーキ機能に対しては、距離rが予め定める値r1に設定され、1次ブレーキ機能に対しては、距離rが値r1よりも大きい値r2に設定され、衝突警報機能に対しては、距離rが値r2よりもさらに大きい値r3に設定される。
【0055】
ECU11により、距離rがr1に設定されて、t秒後の未来位置(X(t),Y(t))における車両Aの中心Cからそれぞれ距離r1だけ離れた頂点P1の座標(P1x(t),P1y(t))、頂点P2の座標(P2x(t),P2y(t))、頂点P3の座標(P3x(t),P3y(t))および頂点P4の座標(P4x(t),P4y(t))が求められる。そして、それらの頂点P1~P4で定まる車両領域AA(t)内に物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))が含まれるか否かが判定され、物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))が車両領域AA(t)内に含まれる場合、2次ブレーキ機能について、車両Aと物標Tとの衝突の可能性が予測されるとして、「衝突予測あり(衝突可能性あり)」と判断される。
【0056】
ECU11により、距離rがr2に設定されて、未来位置(X(t),Y(t))における車両Aの中心Cからそれぞれ距離r2だけ離れた頂点P1の座標(P1x(t),P1y(t))、頂点P2の座標(P2x(t),P2y(t))、頂点P3の座標(P3x(t),P3y(t))および頂点P4の座標(P4x(t),P4y(t))が求められる。そして、それらの頂点P1~P4で定まる車両領域AA(t)内に物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))が含まれるか否かが判定され、物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))が車両領域AA(t)内に含まれる場合、1次ブレーキ機能について、車両Aと物標Tとの衝突の可能性が予測されるとして、「衝突予測あり(衝突可能性あり)」と判断される。
【0057】
ECU11により、距離rがr3に設定されて、未来位置(X(t),Y(t))における車両Aの中心Cからそれぞれ距離r3だけ離れた頂点P1の座標(P1x(t),P1y(t))、頂点P2の座標(P2x(t),P2y(t))、頂点P3の座標(P3x(t),P3y(t))および頂点P4の座標(P4x(t),P4y(t))が求められる。そして、それらの頂点P1~P4で定まる車両領域AA(t)内に物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))が含まれるか否かが判定され、物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))が車両領域AA(t)内に含まれる場合、衝突警報機能について、車両Aと物標Tとの衝突の可能性が予測されるとして、「衝突予測あり(衝突可能性あり)」と判断される。
【0058】
<衝突可能性の有無の簡易判定1>
次に、衝突可能性の有無の簡易判定について説明する。上述のように、カメラ21が認識している物標Tについては、各機能を作動させるか否かの判断にかかる衝突予測が行われる前に、当該物標が衝突する可能性があるか否かの簡易判定が行われる。
【0059】
この実施形態では、車両Aの未来位置(t秒後の位置)と、カメラ21が認識している各物標Tそれぞれに対して未来位置(t秒後の位置)が推定される。簡易判定では、推定された車両Aの未来位置と、物標Tの未来位置とに基づいて両者の距離R1が算出される。距離R1の算出は、カメラ21が認識している全ての物標Tに対して行われる。
【0060】
車両Aの未来位置(t秒後の位置)は、車両Aの中心C(図5参照)の未来位置とし、物標Tの未来位置(t秒後の位置)は、物標Tの中心の未来位置とする。
【0061】
車両Aの未来位置(車両Aの中心Cのt秒後の位置)のX座標X(t)は、式(3)から算出され、Y座標Y(t)は、式(4)から算出される。
【0062】
また、物標Tの未来位置(物標Tの中心のt秒後の位置)のX座標X’(t)は、式(1)から算出され、Y座標Y’(t)は式(2)から算出される。ここで、物標Tの現在位置を表す座標を(X’0,Y’0)は、物標Tの種別と、その種別に応じて記憶されているモデル形状とに基づいて推定することができる。具体的には、物標Tについては、カメラ21の画像から当該物標Tが、人であるか、車両であるか、2輪車であるか等の物標の種別が判定される。また、物標の種別に応じたモデル形状がマイコン12のメモリ14に記憶されており、カメラ21の画像から推定した物標Tの種別と、その種別に応じて記憶されているモデル形状とに基づいて、物標Tの中心の現在位置を示す座標(X’0,Y’0)を推定できる。
【0063】
また、カメラ21の画像により推定された物標Tの種別と、カメラ21で認識できる当該物標Tの部分位置とに基づいて中心を推定することができる。例えば、物標Tが四輪車両と推定された場合であって、カメラ21が前方左端、後方右端、後方左端の3点は認識できるが、前方右端が認識できていない場合は、当該3点に基づいて残りの1点(前方右端)の座標を推定し、カメラ21で認識した3点と、推定した残りの1点とに基づいて、当該四輪車両の中心座標を推定する。物標Tの中心位置の推定方法は、適宜変更可能である。
【0064】
車両Aの未来位置(t秒後の位置)と、物標Tの未来位置(t秒後の位置)との距離R1は、式(15)で表される。
【0065】
R=√((X(t)-X’(t))+(Y(t)-Y’(t))) ・・・(15)
【0066】
そして、ECU11は、算出したRの値が所定の閾値Rxよりも小さい場合(R<Rx)に、車両Aと物標Tとの衝突可能性がありと判定する。この実施形態では、閾値Rxは、例えば、車両Aが80km/hで走行しているときに通常の自動ブレーキ(例えば2次ブレーキ)を作動させた場合に、自動ブレーキの作動タイミングから車両Aの停止タイミングまでに要する距離とすることができるが、当該距離を現在の車両Aの車速に応じて可変するようにしてもよい。
【0067】
なお、この実施形態では、車両Aの未来位置(t秒後の位置)と物標Tの未来位置(t秒後の位置)との距離R1が所定の閾値Rxよりも小さい場合に車両Aと物標Tとの衝突可能性がありと判定するように構成したが、車両Aの現在位置と物標Tの現在位置との距離R1が所定の閾値Rxよりも大きい場合に車両Aと物標Tとの衝突可能性がないと判定するように構成してもよい。
【0068】
また、車両Aの未来位置および物標Tの未来位置は、複数の時刻で算出されるが、各時刻それぞれにおいて、算出された距離R1と所定の閾値Rxが比較され、衝突可能性の有無が判定される。例えば、同じ物標Tであっても、時刻t1では、車両Aと物標Tの未来位置(t1での位置)の距離R1が閾値Rxよりも小さい場合は衝突可能性があると判定され、その後に機能ごとの衝突予測が行われるが、時刻t2では、車両Aと物標Tの未来位置(t2での位置)の距離R1が閾値Rxよりも大きい場合は衝突可能性がないと判定され、その後に機能ごとの衝突予測は行われない。
【0069】
<衝突可能性の有無の簡易判定2>
上記した衝突可能性の有無の簡易判定1(車両Aの未来位置と物標Tの未来位置との距離R1<閾値Rx→衝突可能性あり)で衝突可能性があると判定された場合であっても、物標Tの進行方向が車両Aの予測進路から離れた方向であると判定した場合は、各機能(衝突警報機能、1次ブレーキ機能、2次ブレーキ機能)ごとの衝突予測を行わないようにしてもよい。
【0070】
ECU11は、車両Aの車速、操舵角、ヨーレートなどから車両Aの予測進路を算出する。また、ECU11は、既知の車両Aの車幅、現在の操舵角およびヨーレートなどに応じて決定される車両Aの存在可能性領域M(図7参照)を設定する。例えば、存在可能性領域Mは、メモリ14に記憶されているマップに基づいて設定される。なお、存在可能性領域Mは、車両Aの予測進路を含む領域である。
【0071】
また、ECU11は、物標Tの進行方向を導出し、当該進行方向と平行であって、物標Tの位置を通る直線が、設定された存在可能性領域Mを通る箇所があるか否かを判定する。
ここで、存在可能性領域Mを通る箇所がある場合、ECU11は、車両Aと物標Tとの衝突可能性があると判定し、存在可能性領域Mを通る箇所がない場合は、物標Tの進行方向が車両Aに対して離れる方向あると推定し、車両Aと物標Tとの衝突可能性がないと判定する。カメラ21が複数の物標Tを認識している場合、当該判定は、全ての物標Tに対して行われる。当該判定で車両Aと物標Tとの衝突可能性がないと判定されるのは、例えば、車両Aが右旋回しているときに、物標Tが車両Aから見て左方向に進行している場合である。
【0072】
なお、物標Tの進行方向については、所定周期(例えば50ms)で算出される物標Tの直近の位置と、一つ前の周期で算出された物標Tの位置とに基づいて導出することができるが、さらに遡った物標Tの位置を踏まえて物標Tの進行方向を導出するようにしてもよい。
【0073】
そして、ECU11は、車両Aの未来位置と物標Tの未来位置との距離R1に基づいて衝突可能性がありと判定した場合であっても、物標Tの進行方向が車両Aに対して離れる方向ある場合は衝突可能性がないと判定し、各機能(衝突警報機能、1次ブレーキ機能、2次ブレーキ機能)ごとの衝突予測を行う対象から除外する。
【0074】
<作動機能決定処理>
図6は、作動機能決定処理の流れを示すフローチャートである。
【0075】
衝突予測の結果に基づいて、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能のいずれの機能を作動させるかを決定するため、ECU11により、作動機能決定処理が実行される。カメラ21が複数の物標Tを認識している場合、当該決定処理は、上記した衝突可能性の簡易判定において衝突可能性があると判定した物標Tに対してのみ実行される。
【0076】
作動機能決定処理では、距離r=r1のときに「衝突予測あり」と判断された場合(ステップS41のYES)、2次ブレーキ機能の作動が決定される(ステップS42)。
【0077】
距離r=r1のときに「衝突予測あり」と判断されず(ステップS41のNO)、距離r=r2のときに「衝突予測あり」と判断された場合(ステップS43のYES)、1次ブレーキ機能の作動が決定される(ステップS44)。
【0078】
距離r=r1,r2のいずれのときにも「衝突予測あり」と判断されず(ステップS43のNO)、距離r=r3のときに「衝突予測あり」と判断された場合(ステップS45のYES)、衝突警報機能の作動が決定される(ステップS46)。
【0079】
距離r=r1,r2,r3のいずれのときにも「衝突予測あり」と判断されなかった場合には(ステップS45のNO)、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能のいずれの機能も作動対象外であると判断される(ステップS47)。
【0080】
<作用効果>
以上のように、上記した実施形態によれば、衝突予測はカメラ21が認識している全ての物標Tに対して実施するのではなく、衝突可能性の有無の簡易判定で衝突可能性があると判定された物標Tのみに実施するため、ECU11の衝突予測にかかる処理負荷の軽減を図ることができる。
【0081】
また、衝突予測の対象とする物標Tを限定することで、より正確な衝突予測演算を行うことができる。ここで、より正確な衝突予測演算とは、車両Aや物標Tの未来位置の演算周期を小さくする(例えば演算周期=50ms)ことなどが挙げられる。また、衝突予測の対象とする物標Tを限定することで、例えば衝突予測に用いる変数を記憶するのに必要な記憶容量を抑制することができる。
【0082】
また、衝突可能性の有無の簡易判定において、車両Aと物標Tとの距離R1(未来位置の距離)が所定の閾値Rxよりも小さい場合であっても、当該物標Tの進行方向と平行であって、当該物標の中心を通る直線の一部が、車両Aの存在可能性領域Mを通らない場合は、物標Tが車両Aの予測進路に対して離れた方向に進行していると推定し、衝突可能性がないと判定する(衝突可能性の有無の簡易判定2を参照)。この場合は、物標Tの進行方向が車両Aの予測進路に対して離れている場合も、当該物標Tが衝突予測の実施対象から除外されるため、ECU11の衝突予測にかかる処理の負荷のさらなる軽減を図ることができる。
【0083】
また、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能を選択的に作動させるために、車両Aが停車である場合には、仮想車速および仮想ヨーレートに基づいて、停車状態から発進した後の車両Aの未来位置(X(t),Y(t))が予測される。未来位置(X(t),Y(t))の予測に仮想車速および仮想ヨーレートが用いられることにより、未来位置(X(t),Y(t))を精度よく予測することができる。未来位置の時系列は、車両Aの発進後の進路を表す。したがって、交差点での右折待ちや一旦停止などによる停車中に、車両Aの位置に変化がなくても、車両Aが発進した際の車両Aの進路を精度よく予測することができる。そのため、その進路上での車両Aと物標Tとの衝突を予測することができる。
【0084】
車両Aと物標Tとの衝突を予測するため、具体的には、車両Aの所定時間後の未来位置(X(t),Y(t))が予測されて、その予測された未来位置(X(t),Y(t))の周囲を囲む車両領域AA(t)が設定される。車両領域AA(t)は、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能の個々に応じた大きさに設定される。一方、物標Tの所定時間後の未来位置(X’(t),Y’(t))が予測される。そして、物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))が車両領域AA(t)内に含まれるか否かが判断され、物標Tの未来位置(X’(t),Y’(t))が車両領域AA(t)内に含まれる場合、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能のうち、車両領域AA(t)の大きさに応じた機能が作動される。これにより、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能をそれぞれに適切なタイミングで作動させることができる。
【0085】
衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能は、作動の緊急度により区分されており、車両領域AA(t)の大きさは、その緊急度が高いほど小さく設定される。これにより、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能をそれぞれの作動の緊急度に応じた適切なタイミングで作動させることができる。すなわち、作動の緊急度が比較的低い機能、つまり衝突警報については、車両領域AA(t)の大きさが大きく設定されるので、車両Aと物標Tとが近づく早期の段階で作動させることができる。一方、作動の緊急度が比較的高い機能、つまり1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能については、車両領域AA(t)の大きさが小さく設定されるので、車両Aと物標Tとの衝突の可能性が高まった段階で作動させることができる。
【0086】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0087】
たとえば、前述の実施形態では、車両Aの中心Cと車両領域AA(t)の4つの頂点(角)P1,P2,P3,P4との各間の距離rが2次ブレーキ機能、1次ブレーキ機能および衝突警報機能の機能ごとにそれぞれ一定値r1,r2,r3に設定される構成を取り上げた。これに限らず、距離rは、車両Aの挙動(旋回状況、加減速状況など)に応じて可変に設定されてもよい。
【0088】
その例として、車両Aの右旋回時には、車両Aが右方向に進むと考えられるため、中心Cと頂点P1,P4との各間の距離rを相対的に大きい値に設定し、中心Cと頂点P2,P3との各間の距離rを相対的に小さい値に設定してもよい。車両Aの左旋回時には、車両Aが左方向に進むと考えられるため、中心Cと頂点P2,P3との各間の距離rを相対的に大きい値に設定し、中心Cと頂点P1,P4との各間の距離rを相対的に小さい値に設定してもよい。
【0089】
車両Aの加速時には、中心Cと頂点P1,P2との各間の距離rを相対的に大きい値に設定し、中心Cと頂点P3,P4との各間の距離rを相対的に小さい値に設定してもよい。車両Aの減速時には、中心Cと頂点P3,P4との各間の距離rを相対的に大きい値に設定し、中心Cと頂点P1,P2との各間の距離rを相対的に小さい値に設定してもよい。
【0090】
また、前述の実施形態では、車両Aの走行中は、車速VおよびヨーレートYrの実測値を用いて、車両Aの未来位置(X(t),Y(t))が推定され、車両Aの停車中は、仮想車速および仮想ヨーレートを用いて、車両Aの未来位置(X(t),Y(t))が推定されるとした。しかしながら、ヨーレートYrおよび仮想ヨーレートを用いなくても、車両Aの旋回方向を実測または予測し、その旋回方向と車両Aの車速とを用いれば、推定の精度は低下するが、たとえば、旋回半径Rおよび回転角Δθをそれぞれ予め定めた固定値として、車両Aの未来位置(X(t),Y(t))を推定することもできる。また、車両Aの舵角の実測値または仮想値と車両Aの車速とを用いて、車両Aの未来位置(X(t),Y(t))を推定することもできる。
【0091】
運転支援機能として、衝突警報機能、1次ブレーキ機能および2次ブレーキ機能を例に挙げたが、これら以外にも、車両Aを走行中の車線内に維持して走行させる車線維持支援(LKA:Lane Keeping Assist)機能、車両Aを先行車に追従して走行させるアダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)機能、車両Aを駐車位置に駐車する際の操舵を支援する駐車支援機能、およびドライバの死角を監視する死角監視(BSM:Blind Spot Monitor)機能を例示することができる。
【0092】
また、上記した実施形態や変形例は、ガソリン車に限らず、電気自動車、ハイブリッド車、自動運転車にも適用することができる。
【0093】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1:運転支援システム
11:ECU(運転支援装置、車両位置予測手段、領域設定手段、物標位置予測手段、判断手段、機能作動手段、物標進行方向導出手段)
A:車両(自車両)
T:物標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7