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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】端子構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/58 20060101AFI20240909BHJP
   H01R 4/52 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H01R4/58 B
H01R4/52
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021019658
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122432
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雄一
(72)【発明者】
【氏名】出原 侑昌
(72)【発明者】
【氏名】川上 智哉
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-110016(JP,A)
【文献】実開昭48-039487(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101246999(CN,A)
【文献】特開2013-109918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/58
H01R 4/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線が電気的に接続される端子構造であって、
配線が接続される端子部と、この端子部の上面に形成され配線が接続される配線接続部と、この配線接続部に挿入された配線を上方から下方の端子部に向かって押圧する押圧部と、この押圧部の上方に配置され、この押圧部に対して下向きの荷重を加える荷重印加部とを備え、
前記押圧部は配線に当接する当接面を備え、この当接面に配線に食い込む第1部分と、第1部分の配線への食い込み量を規制する第2部分とを形成したことを特徴とする端子構造。
【請求項2】
配線が電気的に接続される端子構造であって、
配線が接続される端子部と、この端子部の上面に形成され配線が接続される配線接続部と、この配線接続部に挿入された配線を上方から下方の端子部に向かって押圧する押圧部と、この押圧部の上方に配置され、この押圧部に対して下向きの荷重を加える荷重印加部とを備え、
前記押圧部は配線に当接する当接面を備え、この当接面に配線に食い込む第1部分と、第1部分の配線への食い込み量を規制する第2部分とを形成し、
前記押圧部は、少なくとも、当接面に前記第1部分を有する第1の部材と、当接面に前記第2部分を有する第2の部材とからなることを特徴とする端子構造。
【請求項3】
配線が電気的に接続される端子構造であって、
配線が接続される端子部と、この端子部の上面に形成され配線が接続される配線接続部と、この配線接続部に挿入された配線を上方から下方の端子部に向かって押圧する押圧部と、この押圧部の上方に配置され、この押圧部に対して下向きの荷重を加える荷重印加部とを備え、
前記押圧部は配線に当接する当接面を備え、この当接面に配線に食い込む第1部分と、第1部分の配線への食い込み量を規制する第2部分とを形成し、
前記押圧部は、少なくとも、当接面に前記第1部分を有する第1の部材と、当接面に前記第2部分を有する第2の部材と含む複数の部材が積層して形成させることを特徴とする端子構造。
【請求項4】
当接面の第1部分は、第2部分よりも配線側に位置することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の端子構造。
【請求項5】
前記端子部は、前記押圧部により押圧された配線が接続することにより、配線と電気的に接続される部材であって凸部を備え、前記第1部分をこの凸部側に配置したことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばね等の弾性部材による荷重を利用して配線を電気的に接続する端子構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
端子台や遮断器等の電気機器に組み込まれる端子構造としては、特許文献1に示されるように、ばね等の弾性部材により配線(電線)を固定するレバー式の端子構造が知られている。これはレバー操作によって昇降させることができる板ばねに配線の挿入孔を形成し、挿入された配線を板ばねの力によって端子板に密着させる構造である。このほか、弾性部材と配線との間に別部材を介在させ、弾性部材の荷重を受けた別部材が配線を押圧固定する端子構造も知られている。
【0003】
このような端子構造の場合、弾性部材の反発力により発生する電線に対する荷重は、ほぼ一定となる。もし弾性部材若しくは別部材と配線との接触面が平面であり、配線の表面に傷がない場合には、弾性部材若しくは別部材と配線との間に引っ掛かりがなく、配線に強い張力が加えられた場合に配線が抜けてしまうおそれがあった。
【0004】
そのため、弾性部材若しくは別部材の配線との接触面に鋭角状の突起部を形成し、配線との間に引っ掛かりを作ることもあるが、突起部の先端に荷重が集中するため突起部が配線に深く食い込んで行き、配線を切断してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-064266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、配線の抜けや配線の切断を防止しつつ、配線を強固に固定することができる端子構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、配線が電気的に接続される端子構造であって、配線が接続される端子部と、この端子部の上面に形成され配線が接続される配線接続部と、この配線接続部に挿入された配線を上方から下方の端子部に向かって押圧する押圧部と、この押圧部の上方に配置され、この押圧部に対して下向きの荷重を加える荷重印加部とを備え、前記押圧部は配線に当接する当接面を備え、この当接面に配線に食い込む第1部分と、第1部分の配線への食い込み量を規制する第2部分とを形成したことを特徴とするものである。
【0008】
なお前記押圧部は、少なくとも、当接面に前記第1部分を有する第1の部材と、当接面に前記第2部分を有する第2の部材とからなるものとすることができる。また、前記押圧部は、少なくとも、当接面に前記第1部分を有する第1の部材と、当接面に前記第2部分を有する第2の部材と含む複数の部材を積層して形成することができる。また、当接面の第1部分は、第2部分よりも配線側に位置することが好ましい。また、前記端子部は、前記押圧部により押圧された配線が接続することにより、配線と電気的に接続される部材であって凸部を備え、前記第1部分をこの凸部側に配置した構造とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の端子構造は、荷重印加部により荷重が加えられる当接面に、配線に食い込む第1部分と第1部分の配線への食い込み量を規制する第2部分とを形成したものであるから、第1部分によって配線の抜けを防止することができ、第2部分によって配線の切断を防止することができる。また、当接面に荷重印加部により荷重が加えられるので、配線を強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の端子構造を用いたレバー式の端子台の外観斜視図である。
図2】本発明の端子構造を用いたレバー式の端子台の外観斜視図である。
図3】本発明の端子構造を用いたレバー式の端子台の分解斜視図である。
図4】中央の端子ユニットの分解斜視図である。
図5】要部の分解斜視図である。
図6】操作部を持ち上げた状態の側面図である。
図7】操作部を下した状態の側面図である。
図8】配線接続状態を示す要部の斜視図である。
図9】配線接続状態を示す要部の側面図である。
図10】押圧部の各種変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。この実施形態は本発明を圧縮ばねを用いたレバー式の端子台に適用したものである。しかし圧縮ばねに限定されるものではなく、板ばねを用いることもできる。またレバー式に限定されるものではなく、配線を挿入した後に操作することによって、配線に荷重を加える構造であればよい。さらに本発明は端子台に限定されるものではなく、回路遮断器などの他の配電用機器の端子にも適用可能である。
【0012】
以下に説明する端子台は、工事現場等に仮設置される仮設分電盤などで使用されることを想定している。仮設分電盤の端子台には使用する電気機器や電気設備により電流値が大きく異なるため、様々なサイズの配線が接続される。そのため、以下に説明する端子台は圧縮ばねを用いることで、押圧部に強い押圧力を作用させ、細い配線から太い配線まで、様々なサイズの配線に対応できる構成となっている。
【0013】
(全体構成)
図1図2は、本発明の端子構造を用いたレバー式の端子台の外観斜視図であり、図3はその分解斜視図である。この端子台は、中央の端子ユニット10を左右のベース11で挟み込んだ構造である。
【0014】
図4は中央の端子ユニット10の分解斜視図であり、左右に分割された端子ケース12の内部に、端子部13、ヨーク部14、操作部15等の内部機構が組み込まれている。図5はこの内部機構の分解斜視図である。以下に図4図5を参照しつつ、内部機構の詳細を説明する。
【0015】
端子部13は略平板状の部材であり、その一端には図4に示される端子ねじ16のためのねじ孔17が形成されており、一方の配線(図示せず)がねじ固定される。端子部13の他端側の上面は配線接続部18となっており、この配線接続部18に挿入された他方の配線19が、図8に示されるように固定される。なお、端子部13のねじ孔17が形成された部分は左右の端子ケース12により挟持され、反対側の端部は左右のベース11により挟持されている。配線19は中央の端子ユニット10の下部に形成された配線挿入口20から配線接続部18に挿入される。
【0016】
図4図5に示されるように、端子部13の反対側の端部寄りの部分の上面には、ヨーク部14が設けられている。ヨーク部14は金属板を逆U字状に折り曲げ加工したものであり、その下端部が端子部13に固定されている。ヨーク部14の内部には押圧部21と、この押圧部21を下方の端子部13に向かって押圧する荷重印加部22が設けられている。ヨーク部14の両側面には上下方向にスリット23が形成されている。
【0017】
押圧部21は図5中に拡大して示すように矩形状の端部24を左右に備え、これらの部分が図4に示すようにヨーク部14のスリット23内に挿入されている。このため押圧部21はヨーク部14の内部で昇降することができる。押圧部21の端部24をスリット23に挿通し、押圧部21の一部をヨーク部14の内側面に当接させることにより、押圧部21の左右方向の移動を規制することができる。また、スリット23の幅と押圧部21の前後方向の厚みとをほぼ同一とすることにより、押圧部21の前後方向の移動も規制することができる。
【0018】
押圧部21の上部には荷重印加部22の荷重を受ける受座25が形成されている。荷重印加部22は弾性部材であり、この実施形態では圧縮コイルばねである。圧縮コイルばねの上端はヨーク部14の内部天井面に接触し、その下端は押圧部21の受座25に嵌まっている。このため、押圧部21は圧縮コイルばねからなる荷重印加部22により下方の端子部13に向かって押圧され、配線接続部18の上に挿入された他方の配線19を固定する。なお、本願発明の特徴的部分である押圧部21の下面形状については、後に詳しく説明する。
【0019】
ヨーク部14の上方には、操作部15が配置されている。操作部15はレバーからなり、フック27を介して押圧部21を昇降操作する機能を持つ。操作部15の一端は軸28によって端子ケース12に枢着されている。また操作部25の他端部29は端子ケース12から突出し、操作する際に指が掛かり易いように円弧状に形成されている。操作部15の軸28よりもやや離れた部分にフック27の上端支持部30が形成されている。
【0020】
フック27は図4に示すようにヨーク部14を跨ぐ逆U字状の線状部材であり、その上端は操作部15の上端支持部30に支持されている。またその両側の下端部31は上向きに折り曲げられ、押圧部21の矩形状の端部24に係合している。このため、操作部15を図6のように引き上げればフック27が押圧部21を強制的に引き上げ、操作部を26を図7のように水平に戻せばフック27による引き上げがなくなるので、押圧部21は荷重印加部22により端子部13に向かって押圧され、配線接続部18に挿入された他方の配線19を固定する。なお、図4に示される26は配線接続の有無を表示する表示手段である。
【0021】
(押圧部の説明)
以下に、本発明の特徴的部分である押圧部21について詳細に説明する。図8に示されるように、押圧部21はその下面の当接面32が配線19に当接し、配線19を端子部13の表面に押し付けて固定する部材である。
【0022】
本発明では押圧部50の当接面32に、図9に示すように配線19に食い込む第1部分33と、第1部分33の配線19への食い込み量を規制する第2部分34とを形成する。第1部分33は鋭角状の断面を持つことが好ましく、第2部分34は平らな面を有することが好ましい。当接面の第1部分33は、第2部分34よりも配線19側に位置している。
【0023】
このような構成を採用することによって、荷重印加部22から押圧部21に加えられる荷重を第1部分33に集中させ、配線19に傷を付けながら食い込ませることができる。その後に配線19の表面に第2部分34が当接することによって、第1部分33の先端に集中していた荷重の一部を第2部分34に分散させ、第1部分33が過度に配線19に食い込むことを防止することができる。第2部分34は荷重の分散を目的とするものであるから、必ずしも平面に限定されるものではなく、突起状とすることも可能である。
【0024】
上記した第1部分33は配線19を横断する方向に形成し、配線の長手方向の断面が尖っていることが望ましい。しかし第1部分33を配線19の正面から見たときの形状は、平面であっても、突起部を有していても差し支えない。
【0025】
配線19に食い込む第1部分33は、配線19に確実に傷をつけて食い込ませるために、配線19に使用される材質よりも硬度の高い材質であることが好ましい。配線には銅材が用いられることが多いため、例えばステンレス材や熱処理された鋼材を用いることができる。
【0026】
図5図9に示すようにこの実施形態では押圧部21は2枚の金属板を積層した構造である。35は当接面32に第1部分32を有する肉薄の第1の部材であり、36は当接面32に第2部分34を有する第2の部材である。この場合には第1の部材35を第2の部材36よりも硬質材とすることもできる。また第1の部材35を第2の部材36よりも薄くすることで、配線19をより強固に固定することができる。
【0027】
図10に押圧部21の変形例を示す。(A)は図5と同様に片側に配線19に食い込む第1部分33を形成しているが、全体を一体化した金属部材により構成した例である。(B)は第1部分33を反対側に形成し、かつ第1の部材35と第2の部材36との積層構造としたものである。(C)は第1部分33を有する第1の部材35を、第2部分34を有する第2の部材36の両側に配置したものである。(D)は第1部分33を有する第1の部材35を中央に配置し、その両側を第2部分34を有する第2の部材36で挟んだ構造である。このように、具体的な配置については様々な変形が可能である。
【0028】
なお、図5図8に示すように、端子部13の上面には凸部37と凸部38とを設けている。凸部37は端子部13を幅方向に横断するように形成され、凸部38は配線接続部18の位置に、端子部13の幅方向の両側に形成されている。実施形態では配線19の挿入作業性を考慮して上記の順に形成しているが、凸部37を配線接続部18の後ろ側(図9の右側)に配置してもよい。
【0029】
また配線19に食い込む第1部分33は、端子部13の凸部37に近い側に設ける方が、配線19をより確実に固定することができる。しかし必ずしもこの順に限定されるものではなく、逆にすることもできる。
【0030】
以上に説明した通り、本発明の端子構造によれば、配線の抜けや配線の切断を防止しつつ、配線を強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 中央の端子ユニット
11 左右のベース
12 端子ケース
13 端子部
14 ヨーク部
15 操作部
16 端子ねじ
17 ねじ孔
18 配線接続部
19 配線
20 配線挿入口
21 押圧部
22 荷重印加部
23 スリット
24 端部
25 受座
26 表示手段
27 フック
28 軸
29 他端部
30 上端支持部
31 下端部
32 当接面
33 第1部分
34 第2部分
35 第1の部材
36 第2の部材
37 凸部
38 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10