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  • 特許-エアフィルタおよびフィルタパック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】エアフィルタおよびフィルタパック
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B01D46/52 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021031030
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131848
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 数弘
(72)【発明者】
【氏名】穴田 憲志
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-238208(JP,A)
【文献】特開2013-132637(JP,A)
【文献】特開2004-290913(JP,A)
【文献】特開2016-182587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-20
B01D 46/52
B01D 63/14
F02M 35/024
F24F 8/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下流方向に直交する一対の通風面と、前記一対の通風面に直交する一対の端面とを有するろ材と、
前記通風面を露出して前記ろ材を収容するフィルタ枠と、
各前記端面を覆い、前記各端面と前記フィルタ枠とをシールするシート状緩衝材と、
前記各端面と前記シート状緩衝材とを固定するホットメルト接着剤と、
前記シート状緩衝材の前記ホットメルト接着剤に面する側の面の少なくとも一部に配置され、前記ホットメルト接着剤の溶融点において前記シート状緩衝材よりも熱収縮率の小さい部材からなる縮み防止部材と、を備えるエアフィルタ。
【請求項2】
前記ろ材は、前記各通風面に折筋が表れるようにジグザグ状に折り畳まれ、前記各端面にジグザグ形状が表れる、請求項1記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記各端面は、長手方向および短手方向を有し、
前記縮み防止部材は、前記各端面の前記長手方向に渡って前記シート状緩衝材に配置される、請求項1または2記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記シート状緩衝材は、ポリウレタン樹脂からなる緩衝材である、請求項1から3のいずれか一項記載のフィルタパック。
【請求項5】
前記縮み防止部材は、ポリエチレンからなるシート状部材である、請求項1から4のいずれか一項記載のフィルタパック。
【請求項6】
フィルタ枠に収容されるフィルタパックであって、
ジグザグ状に折り畳まれ、折筋が表れる一対の気流の通風面と、前記通風面に直交しジグザグ形状が表れる一対の端面とを有するろ材と、
各前記端面を覆い、前記各端面と前記フィルタ枠とをシールするシート状緩衝材と、
前記各端面と前記シート状緩衝材とを固定するホットメルト接着剤と、
前記シート状緩衝材の前記ホットメルト接着剤に面する側の面の少なくとも一部に配置され、前記ホットメルト接着剤の溶融点において前記シート状緩衝材よりも熱収縮率の小さい部材からなる縮み防止部材と、を備えるフィルタパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業空調やビル空調などに使用されるエアフィルタおよびこれを構成するフィルタパックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタパックとフィルタ枠との隙間をシールするために、シート状の緩衝材を用いるエアフィルタが知られている。シート状の緩衝材は、ジグザグ状に折り畳まれたろ材の、ジグザグが表れる面に対して、接着剤などで固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-083713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート状の緩衝材は、ろ材のジグザグが表れる面に固定されるため、緩衝材とろ材との接触面積が小さい。このため、輸送中や、フィルタ枠への取付時に、緩衝材が剥がれやすく、使用時においてもシール性を損なうおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、シール性の高いエアフィルタおよびフィルタパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアフィルタは、上述した課題を解決するために、上下流方向に直交する一対の通風面と、前記一対の通風面に直交する一対の端面とを有するろ材と、前記通風面を露出して前記ろ材を収容するフィルタ枠と、各前記端面を覆い、前記各端面と前記フィルタ枠とをシールするシート状緩衝材と、前記各端面と前記シート状緩衝材とを固定するホットメルト接着剤と、前記シート状緩衝材の前記ホットメルト接着剤に面する側の面の少なくとも一部に配置され、前記ホットメルト接着剤の溶融点において前記シート状緩衝材よりも熱収縮率の小さい部材からなる縮み防止部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るエアフィルタおよびフィルタパックにおいては、高いシール性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エアフィルタを前方(上流側)から示す斜視図。
図2図1のII-II線に沿う断面図。
図3】フィルタパックの上端面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るエアフィルタ1およびフィルタパック20の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、エアフィルタ1を前方(上流側)から示す斜視図である。
【0011】
図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
【0012】
図3は、フィルタパック20の上端面を示す図である。
【0013】
以下の説明において、「前(上流側)」、「後(下流側)」、「上」、「下」、「右」、および「左」は、図1から図3における定義に従う。
【0014】
エアフィルタ1は、例えば産業空調やビル空調などをはじめとし、広い対象に利用可能なエアフィルタ1である。エアフィルタ1は、フィルタ枠10と、フィルタパック20と、を有する。
【0015】
フィルタ枠10は、上下流方向に開口した矩形状の枠状部材である。フィルタ枠10は、例えば、亜鉛鉄板、ステンレス板、アルミ板、樹脂などからなり、上下方向に対向する一対の上下枠材12と、左右方向に対向する一対の左右枠材13と、を組み合わせて形成される。フィルタ枠10は、フィルタパック20の通風面31を囲むようにしてフィルタパック20を収容する。フィルタ枠10は、下流側の開口にのみ開口の内側に延びるフランジ11を有している。
【0016】
フィルタパック20は、フィルタ枠10に対して交換可能に取り付けられる。フィルタパック20は、ろ材30と、シート状緩衝材40と、ホットメルト接着剤50と、縮み防止部材60と、を有する。
【0017】
ろ材30は、所定の折幅でジグザグ状に折り畳まれた、略直方体形状の外形を有する。ろ材30は、合成繊維や無機質繊維などからなるフェルト、不織布や織布などの繊維体からなる。ろ材30は、上下流方向に直交する一対の通風面31と、一対の通風面31に直交する一対の上下端面32および一対の左右端面33を有する。各通風面31には、ろ材30の折筋が表れ、各上下端面32には、ろ材30のジグザグ形状が表れる。本実施形態におけるろ材30においては、各上下端面32は、左右方向に沿う長手方向および前後方向に沿う短手方向を有する、長方形状である。
【0018】
ろ材30の寸法は、特に限定されないが、例えば、100mm×100mm×30mm~1500mm×1500mm×300mmの範囲のものを使用することができる。また、フィルタパック20のろ過性能は適宜設定されるが、プレフィルタであれば、質量法で30~99%のろ材30を使用することができ、中性能フィルタであれば、計数法で20~99%のろ材30を使用することができる。
【0019】
シート状緩衝材40は、ろ材30の各上下端面32を覆い、各上下端面32とフィルタ枠10との間をシールする。シート状緩衝材40は、前後方向に沿う各端部に、ろ材30の通風面31側に折り曲げられた折り曲げ部41を有する。折り曲げ部41は、3mm~20mmの幅(上下方向長さ)を有することが好ましい。3mmより小さい場合は、フィルタパック20との接着面積が小さくなりすぎ、接着強度が低下するおそれがあり、20mmより大きい場合は、通風面31の有効開口面積が小さくなるため圧力損失が上昇するおそれがある。
【0020】
シート状緩衝材40は、ろ材30とフィルタ枠10との間をシールし、かつ相対的に強度が小さいろ材30の上下端面32が、フィルタ枠10に接触する際に生じる応力を緩衝できる材料からなる緩衝材である。シート状緩衝材40は、例えば、ゴム(ポリウレタン樹脂など)からなる発泡体である。シート状緩衝材40は、その他、不織布、ガラス繊維であってもよい。
【0021】
シート状緩衝材40がゴムである場合、ポリエーテル系のウレタンゴム、ポリエステル系のウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどを適用しうる。これらゴムは、密度が10~100kg/mであることが好ましく、20~50kg/mとすることがさらに好ましい。ゴムが発泡体の場合には、10kg/mより小さい場合は、発泡体の気泡が多くなりシール性が悪くなるおそれがある。100kg/mより大きい場合は、硬さが増しすぎシール性が悪くなるおそれがある。
【0022】
シート状緩衝材40が不織布である場合、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの繊維を、ケミカルボンド法、サーマルボンド法またはスパンボンド法により得たものを適用しうる。
【0023】
シート状緩衝材40がガラス繊維である場合、平均繊維径以下の綿状(短繊維)の原材料を乾式で不織布にしたものを適用でき、密度30~230g/mのガラス繊維を乾式で不織布にしたものが好ましい。
【0024】
シート状緩衝材40の厚さは、1~10mmであることが好ましい。1mmより薄い場合は、フィルタパック20とフィルタ枠10の隙間を十分にシールすることが困難であり、10mmより厚い場合は、矩形形状の開口を備えたフィルタ枠10に装着するために、ろ材30の通風面31が狭くなるからである。
【0025】
なお、シート状緩衝材40は、ろ材30の左右端面33にも同様に配置されていてもよい。すなわち、ろ材30の通風面31を囲む全ての側周面はシート状緩衝材40で覆われていてもよい。
【0026】
ホットメルト接着剤50は、例えば150度から200度で溶融し、冷却時に接着する、ポリオレフィンなどからなる接着剤である。ホットメルト接着剤50は、ろ材30の上下端面32と、シート状緩衝材40とを接着し固定する。また、ホットメルト接着剤50は、ろ材30とシート状緩衝材40との間のシール材としても機能する。
【0027】
縮み防止部材60は、シート状緩衝材40のホットメルト接着剤50に面する側の面である内側面43の少なくとも一部に配置される、シート状の部材である。具体的には、フィルタパック20においては、上下方向において、ろ材30、ホットメルト接着剤50、縮み防止部材60、シート状緩衝材40の順で積層されている。縮み防止部材60は、ホットメルト接着剤50の溶融点近傍において、シート状緩衝材40よりも熱収縮率の小さい部材からなる。すなわち、縮み防止部材60は、溶融された高温状態のホットメルト接着剤50によりろ材30とシート状緩衝材40とが接着される際に、ホットメルト接着剤50の熱により生じるシート状緩衝材40の縮み量よりも小さい縮み量を有する部材からなる。縮み防止部材60は、シート状緩衝材40がウレタンフォームである場合、例えばポリエチレンからなるシート状部材(面密度130g/m)からなるのが好ましい。縮み防止部材60は、この他、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンなどを使用しうる。
【0028】
縮み防止部材60は、シート状緩衝材40の縮み防止およびシール性の両立の観点から、縮み量の大きい上下端面32の長手方向である左右方向に渡ってシート状緩衝材40に配置される。
【0029】
このように構成されたフィルタパック20は、フィルタ枠10の内周面15(図2)にシート状緩衝材40が緩衝しながらフィルタ枠10の上流側の開口から挿入される。フィルタパック20は、シート状緩衝材40の折り曲げ部41において下流側のフランジ11に面接触する。使用時においては、フィルタパック20は気流によりフランジ11に押し当てられ、エアフィルタ1のシール性が確保される。フィルタパック20の交換時においては、上流側の開口から取り外されることにより、フィルタパック20は簡単に新しいものに交換される。
【0030】
次に、フィルタパック20の組立について説明する。
【0031】
まず、縮み防止部材60が長手方向に渡って配置されたシート状緩衝材40を準備する。この縮み防止部材60は、シート状緩衝材40に対して固定されておらず、配置されているのみである。シート状緩衝材40の縮み防止部材60が配置された内側面43を上方にした状態で、ホットメルト接着剤50をシート状緩衝材40に塗布する。このとき、シート状緩衝材40はホットメルト接着剤50の熱により縮むが、シート状緩衝材40よりも熱収縮率の小さい縮み防止部材60との面接触による摩擦が生じる。このため、縮み防止部材60は、シート状緩衝材40の長手方向の縮み止めとして機能し、シート状緩衝材40の縮みを低減できる。次に、ろ材30の上下端面32をシート状緩衝材40に配置する。ホットメルト接着剤50は冷却とともに固化し、ろ材30とシート状緩衝材40とを接着し固定する。
【0032】
このようなエアフィルタ1は、フィルタ枠10とフィルタパック20との間の緩衝およびシール機能を担うシート状緩衝材40を、ホットメルト接着剤50で固定したため、ろ材30に対して剥がれにくくすることができる。また、ホットメルト接着剤50がろ材30とシート状緩衝材40との間のシール機能も担うことができるため、一層のフィルタ効率も向上できる。また、縮み防止部材60がシート状緩衝材40の縮み止めとして機能するため、シート状緩衝材40が組立時に縮んでしまうことが防止される。このため、ホットメルト接着剤50を用いたとしても、エアフィルタ1のシール性や、フィルタ枠10とフィルタパック20との緩衝機能が低減することを防止できる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0034】
例えば、ろ材30は、直線的な折筋を形成するように折り畳んだもの以外にも、曲線的に折筋を形成し波形形状をなすように折り畳まれてもよい。また、ろ材30は、ジグザグ状に折り畳まれたもの以外にも、繊維体を直方体(平板)形状に構成したものであってもよい。
【0035】
エアフィルタ1は、フィルタパック20がフィルタ枠10に対して交換型である例を説明したが、フィルタ枠10とフィルタパック20が一体型のものに適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 エアフィルタ
10 フィルタ枠
11 フランジ
12 上下枠材
13 左右枠材
15 内周面
20 フィルタパック
30 ろ材
31 通風面
32 上下端面
33 左右端面
40 シート状緩衝材
41 折り曲げ部
43 内側面
50 ホットメルト接着剤
60 縮み防止部材
図1
図2
図3