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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】吐出弁付きキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B65D47/20 111
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021123120
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023018821
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-529918(JP,A)
【文献】特開2005-96776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B65D 35/44-35/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着されるキャップ基体と、キャップ基体から内容物を吐出する注出部と、注出部の内方に設けられ、容器本体の内圧により吐出口を拡縮可能な吐出弁とを備え、
吐出弁は、注出部から中心に向けて山部と谷部とに交互に折り返された弁体と、弁体の中心から谷部に沿って所定範囲まで切り込まれたスリットとを備えることを特徴とする吐出弁付きキャップ。
【請求項2】
弁体は、多角形状をなし、山部が中心に向けて水平方向に延び、谷部が中心に向けて下方に傾斜することを特徴とする請求項1に記載の吐出弁付きキャップ。
【請求項3】
吐出口は、谷部のスリットから予め開口されていることを特徴とする請求項1または2に記載の吐出弁付きキャップ。
【請求項4】
吐出口は、谷部のスリットが狭まった状態でスリット状に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の吐出弁付きキャップ。
【請求項5】
注出部は、内方に吐出弁が設けられた開口筒を備え、
開口筒は、キャップ基体を開閉自在に閉塞する蓋体に設けられた密封リングにより密封されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の吐出弁付きキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出弁付きキャップに関し、とくに、高粘度の内容物を収容する容器本体に装着する吐出弁付きキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
練りわさびや練りからし等の高粘度の内容物を収容するスクイズ容器では、吐出口を下にして容器本体を手指の力でスクイズして内容物を少量ずつ吐出させると、内容物の切れが悪いために、使用後に内容物が残り、吐出口が汚れ易いという不都合があった。
【0003】
この不都合を解消するために、高粘度の内容物を収容する容器本体の開口にスリットバルブを設け、開口を下にして容器本体を手指の力でスクイズすると、スリットバルブが押し開かれ、少量の内容物が吐出され、手指の力を緩めると、大気圧によりスリットバルブが押し戻されて開口を閉じる構造のスリットバルブ付き容器が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-112401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のスリットバルブ付き容器は、スリットバルブが圧力応答性に劣るために、内容物が高粘度の場合に、容器本体に加える圧力を緩めてもサックバック効果が小さいため、内容物の戻りが弱く、スリットバルブに内容物が残り易いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、圧力を受けると吐出口が広がり、圧力を解除すると素早く吐出口が狭くなる圧力応答性に優れた吐出弁付きキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、吐出弁付きキャップとして、容器本体の口部に装着されるキャップ基体と、キャップ基体から内容物を吐出する注出部と、注出部の内方に設けられ、容器本体の内圧により吐出口を拡縮可能な吐出弁とを備え、吐出弁は、注出部から中心に向けて山部と谷部とに交互に折り返された弁体と、弁体の中心から谷部に沿って所定範囲まで切り込まれたスリットとを備えることを特徴とする構成を採用する。
【0008】
吐出弁の実施形態として、弁体は、多角形状をなし、山部が中心に向けて水平方向に延び、谷部が中心に向けて下方に傾斜することを特徴とする構成を採用し、また、吐出口は、谷部のスリットから予め開口されていることを特徴とする構成を採用し、また、吐出口は、谷部のスリットが狭まった状態でスリット状に形成されたことを特徴とする構成を採用する。
【0009】
吐出弁付きキャップの実施形態として、注出部は、内方に吐出弁が設けられた開口筒を備え、開口筒は、キャップ基体を開閉自在に閉塞する蓋体に設けられた密封リングにより密封されることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吐出弁付きキャップは、上記構成を採用することによって、容器本体の内圧を受けた時に吐出弁の吐出口が広がり、内圧を緩めた時に吐出口が素早く狭くなるので、内容物の切れを良くすることができる。これにより、使用時に容器本体をスクイズして内容物をスムーズに吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施例である吐出弁付きキャップの閉蓋状態を示す側断面図である。
図2】本発明の第1実施例である吐出弁付きキャップの開蓋状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側断面図である。
図3】本発明の第1実施例である吐出弁付きキャップの弁体を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)の斜視図である。
図4】本発明の第2実施例における弁体を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、図1でみて、左右方向を「水平方向」とし、上方向を「上」とし、下方向を「下」とする。
【実施例1】
【0013】
図1において、Aは合成樹脂製の容器本体、Bは容器本体Aに装着される合成樹脂製のキャップである。
図1に示すように、容器本体Aは、上部が開口された円筒状の口部1と、口部1の下端から次第に拡径された肩部2と、肩部2の下端から垂設された胴部3と、口部1の外周に周設された嵌合突条4とから構成され、容器本体Aは、胴部3を手指の力でスクイズして高粘度の内容物を押し出すようにしている。なお、容器本体Aは、チューブ容器やブロー容器などスクイズ可能な形態であれば、どのような容器でも構わない。
【0014】
図1および図2に示すように、キャップBは、吐出弁付きキャップとして、容器本体Aの口部1に装着されるキャップ基体Cと、キャップ基体CにヒンジEを介して一体成形された蓋体Dと、キャップ基体Cに設けられ、容器本体Aの内圧により吐出口21を拡縮可能な吐出弁Fとから構成されている。
【0015】
キャップ基体Cは、容器本体Aの口部1に装着する装着部10と、装着部10の内縁から内容物を吐出する注出部11とを備えており、装着部10は、リング状の上壁12と、上壁12の内縁下面から垂設され、外周が容器本体Aの口部1の内周に挿入される内筒13と、上壁12の内筒13の外側から垂設され、内周が口部1の外周に係合する外筒14と、上壁12の外縁下面から垂設され、外筒14を包囲する外周壁15とを備えている。
【0016】
上壁12の上面には、段部16が周縁に形成されるとともに、下面には、口部1の上端面と当接するコンタクトリング17が周設されている。
また、外筒14の内周には、口部1の嵌合突条4と係合する係合突部18が周設されている。
【0017】
注出部11は、装着部10を構成する上壁12の内縁から立設され、外周が平面視で円形状、かつ内周が平面視で多角形状の開口筒19と、開口筒19の内周縁19aから内方に向けて形成され、内容物を吐出する吐出弁Fとを備えている。
【0018】
図2および図3に示すように、吐出弁Fは、平面視で星形の吐出口21が中心に予め開口された弁体20を備え、弁体20は、開口筒19上端の多角形状をなす内周縁19aの各辺から中心軸線に向けて山部22と谷部23とに交互に折り返された複数の膜片25から構成され、さらに、弁体20は、中心から谷部23に沿ってスリット24で所定範囲まで切り込まれ、花びら状に形成されている。
【0019】
各膜片25の山部22は、内周縁19aの角部から中心軸線に向けて水平方向に延びており、山部22の形状は、中心軸線に向けて上方あるいは下方に湾曲してもよいし、中心軸線に向けて上方あるいは下方に傾斜してもよいし、中心軸線に向けて平坦にしてもよく、さらに、山部22の先端は、上方に向けて突出させてもよい。
また、谷部23は、山部22と隣接する内周縁19aの角部から中心軸線に向けて傾斜角度θで下方に傾斜した後、スリット24により切り開かれた各々の先端側が山部22の先端と近接するように湾曲して上方に延び、谷部23の先端は、最終的に、各々隣接する山部22の先端と一体になっている。
なお、谷部23の傾斜角度θは、本実施例では、40°に設定されているが、傾斜角度θは、30~50°の範囲が好ましい。
【0020】
本実施例では、図1および図2に示すように、開口筒19の中心軸線は、キャップ基体Cの中心軸線と同軸になっているが、開口筒19の中心軸線は、キャップ基体Cの中心軸からずれた位置に立設されていても構わない。
さらに、開口筒19の外周には、後述する蓋体Dとの閉蓋状態を維持するために、係合突条26が形成されている。
【0021】
蓋体Dは、図1および図2に示すように、頂壁30と、頂壁30の周縁から垂設され、キャップ基体Cの上壁12の段部16と同一端面形状を有する側周壁31とから構成され、頂壁30の裏面には、キャップ基体Cの開口筒19を外周から密封する密封リング32が垂設されている。
【0022】
側周壁31は、ヒンジEと反対側の上端部から円弧状の摘み部33が突設され、摘み部33の下方には、凹所34が形成されている。
また、密封リング32内周には、開口筒19の係合突条26と係合する係止突条35が形成されている。
【0023】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のキャップBは、図2に示すように、キャップ基体Cから蓋体Dを開蓋した状態で一体成形により作製される。
なお、本実施例では、吐出弁Fは、キャップ基体Cと一体成形されているが、吐出弁Fは、キャップ基体Cにインサート成形してもよいし、吐出弁Fを別体で成形した後、キャップ基体Cの開口筒19に固着するようにしても構わない。
【0024】
次に、容器本体AにキャップBを装着するには、図1に示すように、蓋体DをヒンジEの回りを反時計方向に回動して閉蓋し、キャップ基体Cの開口筒19外周の係合突条26に蓋体D裏面の密封リング32内周の係止突条35が係止した状態を維持する。
容器本体Aに内容物を充填した後、キャップ基体Cの装着部10を容器本体Aの口部1に打栓する。
なお、本実施例では、キャップBは、キャップ基体Cと蓋体DとをヒンジEで連結してなるヒンジキャップとして具体化しているが、蓋体Dは、ヒンジを無くしてアンダーカット等で嵌合させる蓋体であっても構わない。
【0025】
本実施例のキャップBが装着されたスクイズ可能な容器本体Aを使用するには、図1に示す状態から、蓋体Dの側周壁31に形成された凹所34に指を当て、摘み部33を持ち上げると、蓋体DがヒンジEの回りを時計方向に回動する。
蓋体Dがキャップ基体Cから少し持ち上がると、キャップ基体Cの開口筒19外周の係合突条26に係止していた蓋体D内面の密封リング32内周の係止突条35が外れることにより、キャップBが開蓋される。
【0026】
吐出弁Fは、容器本体Aからの内圧を受けないときには、図3に示すように、吐出口21が最小の開口状態にある。
この後、容器本体Aの口部1が下を向くように傾けて容器本体Aの胴部3を手指の力でスクイズすることにより、容器本体A内の圧力が高まり、収容された内容物が弁体20の吐出口21を押し広げながら吐出することができ、手指の力を緩めると、弾性力により弁体20の先端が押し戻されて吐出口21を元の状態に狭めるようになる。
【0027】
弁体20が押し戻された状態で、開口筒19を上向きにして手指を容器本体Aの胴部3から離すと、吐出口21から空気が容器本体A内に流入して、手指によりスクイズされ変形した容器本体Aの形状が元に戻る。
その際に、吐出口21に付着した内容物は、容器本体A内に戻り易くなる。
【0028】
次に、容器本体A内の内容物を使用した後、蓋体Dを閉蓋すると、図1に示すように、キャップ基体Cの開口筒19外周の係合突条26に蓋体D裏面の密封リング32内周の係止突条35が係止した状態を維持する。
【0029】
従来のスリットバルブでは、吐出後に高粘度の内容物が弁体に付着して残り易いため、使用後の内容物の切れが悪かったが、本実施例のキャップBでは、弁体20を山部22と谷部23に折り返して成形したことにより、吐出弁Fは、容器本体Aの内圧を受けた時に吐出口21が広がり、内圧を緩めた時に吐出口21が素早く狭くなるので、内容物の切れを良くすることができる。
【実施例2】
【0030】
次に、第1実施例の吐出弁Fを変更した第2実施例について説明する。
以下、第1実施例と同一の構成部分には同一の符号を付し、異なる構成部分のみ異なる符号を付して相違点を中心に説明する。
【0031】
図4において、Faは、吐出口41が中心から開口される弁体40を備える吐出弁であり、弁体40は、図示しない開口筒上端の多角形状をなす内周縁19aの各辺から中心軸線に向けて山部42と谷部43とに交互に折り返された複数の膜片45から構成され、さらに、弁体40は、中心から谷部43に沿ってスリット44で所定範囲まで切り込まれることにより、中央に、スリット状に開口された吐出口41が形成されている。
【0032】
各膜片45の山部42は、内周縁19aの角部から中心軸線まで水平方向に延び、谷部43は、山部42と隣接する内周縁19aの角部から中心軸線に向けて傾斜角度θで下方に傾斜した後、スリット44が形成された各々の先端側が山部42の先端と近接するように湾曲して上方に延び、谷部43の先端は、最終的に、各々隣接する山部42の先端と一体になっている。
【0033】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
吐出弁Faは、図示しない容器本体からの内圧を受けないときには、図4に示すように、吐出口41は、谷部43に沿って切り込まれたスリット44が狭まったままで、スリット状に開口された状態にある。
次に、容器本体を手指の力でスクイズすると、容器本体内の圧力が高まり、吐出口41は、収容された内容物が弁体40のスリット44を押し広げることにより、星形に拡張し、内容物を吐出することができる。
さらに、手指の力を緩めると、吐出口41は、膜片45の弾性力により弁体40のスリット44が押し戻されて元のように、スリット状に狭められた状態になる。
【0034】
弁体40が押し戻された状態で、手指を容器本体から離すと、吐出口41から空気が容器本体内に流入して、手指によりスクイズされ変形した容器本体の形状が元に戻る。
その際に、吐出口41に付着した内容物は、容器本体内に戻り易くなる。
【0035】
第1実施例と同様に、本実施例の吐出弁Faでは、弁体40を山部42と谷部43に折り返して成形したことにより、吐出弁Faは、容器本体の内圧を受けた時に弁体40のスリット状の吐出口41を押し広げ、内圧を緩めた時にスリット状の吐出口41を狭めるので、内容物の切れを良くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の吐出弁付きキャップは、ヒンジキャップに限らず、ヒンジを無くしてアンダーカット等で嵌合させたキャップにも適用でき、高粘度の内容物を収容する容器のキャップとして広く使用することができるものであり、とくに、練りからしや練りわさびなど、スクイズして使用する必要がある内容物を収容する容器のキャップとして好適である。
【符号の説明】
【0037】
A 容器本体
B キャップ
C キャップ基体
D 蓋体
E ヒンジ
F、Fa 吐出弁
θ 傾斜角度
1 口部
2 肩部
3 胴部
4 嵌合突条
10 装着部
11 注出部
12 上壁
13 内筒
14 外筒
15 外周壁
16 段部
17 コンタクトリング
18 係合突部
19 開口筒
19a 内周縁
20、40 弁体
21、41 吐出口
22、42 山部
23、43 谷部
24、44 スリット
25,45 膜片
26 係合突条
30 頂壁
31 側周壁
32 密封リング
33 摘み部
34 凹所
35 係止突条
図1
図2
図3
図4