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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
F16K31/06 305G
F16K31/06 305K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021542757
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2020030962
(87)【国際公開番号】W WO2021039462
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019156883
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】野口 博史
(72)【発明者】
【氏名】笠置 好成
(72)【発明者】
【氏名】岩永 弘行
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-188747(JP,A)
【文献】特開平09-250650(JP,A)
【文献】中国実用新案第205190900(CN,U)
【文献】米国特許第04844112(US,A)
【文献】特開2017-129179(JP,A)
【文献】特開2014-234912(JP,A)
【文献】特開平10-196827(JP,A)
【文献】特開平09-133242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0113148(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108426070(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06 - 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、弁座及び弁室を有するハウジングと、前記弁体を移動させる可動鉄心と、ソレノイドコイルと、前記ソレノイドコイルに通電することで前記可動鉄心を可動可能な固定鉄心と、前記可動鉄心が内部に配置されるスリーブと、を備えたソレノイドバルブであって、
前記スリーブは、一端側が閉塞されるとともに他端側に開放部が形成され、前記開放部が前記ハウジングの前記弁室に連通する開口凹部に挿入されて前記ハウジングに取り付けられており、
前記ハウジングの開口凹部には、弾性シール部材が配置される環状の溝が径方向に凹む形状で形成されており、
前記スリーブと前記ハウジングとの間は、前記弾性シール部材によってシールされているソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記スリーブは、前記弁室側の端部が当該弁室側に向かうほどに外径側から内径側に傾斜するテーパ面を有している請求項1に記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記スリーブには、環状のホルダが内嵌されている請求項1または2に記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記スリーブは、前記開放部を含む大径部と、前記大径部よりも小径の小径部と、を有し、
前記大径部に軸方向から当接可能な状態で前記ハウジングに固定される固定部材を備えている請求項1ないし3のいずれかに記載のソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御に用いられるソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソレノイドコイルに通電することで固定鉄心を磁化させ、可動鉄心を固定鉄心に引き寄せ、可動鉄心に取り付けられた弁体を従動させ弁座に対して相対移動させることにより、弁の開弁度を調節して流体の流量を制御可能なソレノイドバルブが知られている。
【0003】
また、ソレノイドバルブには、可動鉄心をスリーブ内に案内されるように配置するとともにスリーブ内に弁室の流体を流入可能とすることで、流体の圧力によって可動鉄心及び弁体の移動方向に作用する力をバランスさせて、スリーブ内に流入した流体による可動鉄心の移動への影響を小さくしたものもある。
【0004】
このようなソレノイドバルブの一例として、特許文献1のソレノイドバルブは、スリーブが固定鉄心の上端部にかしめまたは溶接によりシールされた状態で固定され、固定鉄心の下端部が弾性シール部材を介してハウジングに組付けられて、流体の外部への流出が防止されている。また、弁室からスリーブ内に流入した流体は、可動鉄心の上端部側と下端部側とにそれぞれ導かれるため、可動鉄心をスムーズに移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-7572号公報(第4,5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなソレノイドバルブは、スリーブと固定鉄心との間をかしめまたは溶接によりシールし、さらに固定鉄心とハウジングとの間を弾性シール部材によってシールしていることから、密封箇所が多く製造工程が煩雑であるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、製造工程が簡素でありながら密封性が高いソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のソレノイドバルブは、
弁体と、弁座及び弁室を有するハウジングと、前記弁体を移動させる可動鉄心と、ソレノイドコイルと、前記ソレノイドコイルに通電することで前記可動鉄心を可動可能な固定鉄心と、前記可動鉄心が内部に配置されるスリーブと、を備えたソレノイドバルブであって、
前記スリーブは、当該スリーブの開放部が前記ハウジングの前記弁室に連通する開口凹部に挿入されて前記ハウジングに取り付けられており、
前記スリーブと前記ハウジングとの間は、シール手段によってシールされている。
これによれば、スリーブとハウジングとの間はシール手段によってシールされるので、すなわち1か所がシールされることで流体側の空間の密封性を確保できることから、製造工程を簡素にすることができる。
【0009】
前記シール手段は、弾性シール部材であり、
前記弾性シール部材は、前記スリーブの外周に配置されていてもよい。
これによれば、スリーブが軸方向に移動しても弾性シール部材の潰し率を均一に保ちやすいことから、密封性を保持しやすい。
【0010】
前記スリーブは、前記弁室側の端部が当該弁室側に向かうほどに外径側から内径側に傾斜するテーパ面を有していてもよい。
これによれば、ハウジングの開口凹部にスリーブを内嵌するにあたってテーパ面によって案内することができるため、開口凹部にスリーブを内嵌することが容易であるばかりでなく、ハウジングが傷付くことを防止することができる。
【0011】
前記シール手段は、弾性シール部材であり、
前記ハウジングの開口凹部には、前記弾性シール部材が配置される環状の溝が形成されていてもよい。
これによれば、溝に弾性シール部材が配置されることにより、弾性シール部材がハウジングに対して相対移動することが規制されるため、弾性シール部材はハウジングから離脱し難くなる。また、溝はハウジングに形成されているので、簡素でありながらも構造強度の高い溝を形成しやすい。
【0012】
前記スリーブには、環状のホルダが内嵌されていてもよい。
これによれば、内嵌されたホルダによってスリーブの構造強度が高められるため、スリーブの変形を防止して、密封性を保持しやすくなる。
【0013】
前記スリーブは、前記開放部を含む大径部と、前記大径部よりも小径の小径部と、を有し、
前記大径部に軸方向から当接可能な状態で前記ハウジングに固定される固定部材を備えていてもよい。
これによれば、スリーブに抜け出し方向の力が作用しても固定部材によってスリーブの移動が規制されることから、簡素な構造でスリーブの抜け止めを成すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施例1の開弁状態であるときのソレノイドバルブを示す断面図である。
図2】閉弁状態であるときのソレノイドバルブを示す断面図である。
図3】(a),(b)は、ソレノイドバルブの組み立てを説明するための断面図である。
図4】(a)~(c)は、図3に引き続き、ソレノイドバルブの組み立てを説明するための断面図である。
図5】本発明に係る実施例2のソレノイドバルブを示す断面図である。
図6】本発明に係る実施例3のソレノイドバルブを示す断面図である。
図7】本発明に係る実施例4のソレノイドバルブを示す断面図である。
図8】本発明に係る実施例5のソレノイドバルブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るソレノイドバルブを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係るソレノイドバルブにつき、図1から図4を参照して説明する。
【0017】
図1図2に示されるように、ソレノイドバルブ1は、非通電時に開弁状態となり、通電時に閉弁状態となるON-OFF式かつノーマルオープン式のソレノイドバルブであり、冷媒の流れを制御するために空調機内を循環する冷媒の流路に設けられるものである。
【0018】
ソレノイドバルブ1は、スリーブ10と、可動鉄心20と、パイロット弁体30と、固定鉄心40と、ホルダ50と、ソレノイド成形体60と、ソレノイドケース65と、プレート70と、ハウジング80と、主弁体90と、OリングP1と、から主に構成され、主弁体90に作用するパイロット圧を利用して閉弁可能なパイロット式のソレノイドバルブである。
【0019】
スリーブ10は、ステンレスの板をプレス成型することで側面視ハンマー状の有底円筒状に形成されており、閉塞部を有する小径部11と、開放部12aを有する大径部12と、から構成されている。尚、スリーブ10は、ステンレス以外の金属で形成されていてもよく、樹脂で形成されていてもよい。
【0020】
小径部11は、円板状の閉塞部と、閉塞部の外径端に略直交して軸方向に延設された周壁と、を有している。大径部12は、小径部11よりも大径であり、小径部11の周壁の軸方向下端に略直交して外径方向に延設された環状底壁13と、環状底壁13の外径端に略直交して軸方向に延設された円筒壁14と、円筒壁14の下端から内径側に向かって屈曲して延設された屈曲壁15と、を有している。屈曲壁15は、大径部12の主弁室82側の端部をなしている。
【0021】
可動鉄心20は、鉄等の磁性を有する金属材料から中空の円柱状に形成されており、スリーブ10の小径部11内に配置され、その外周面がスリーブ10の内周面に案内されながら軸方向に移動可能となっている。
【0022】
パイロット弁体30は、軸方向に延設されたロッド31と、ロッド31の下端部に固定されたパイロット弁体要素32と、から構成されている。ロッド31は、その上端部が可動鉄心20の貫通孔に挿入された状態で可動鉄心20に固定されており、可動鉄心20の移動に従動して軸方向に移動可能となっている。また、冷媒が可動鉄心20とスリーブ10との間を通じて可動鉄心20の上方側と下方側に流出入可能となっている。
【0023】
固定鉄心40は、鉄等の磁性を有する金属材料から軸方向に貫通する貫通孔を有する中空の円筒状に形成されており、その大部分がスリーブ10の小径部11内に配置され、その一部である下端部がホルダ50の凹部51に挿嵌され、スリーブ10の大径部12内に配置されている。
【0024】
また、固定鉄心40の上端部には、軸方向下方側に凹み、貫通孔が連通する凹部が形成されており、凹部には、可動鉄心20を固定鉄心40に対して離間方向に付勢するためのコイルスプリングS1が配置されている。
【0025】
ホルダ50は、鉄等の磁性を有する金属材料から固定鉄心40よりも大径な中空の円筒状に形成されており、固定鉄心40の下端部に外嵌固定されかつスリーブ10の大径部12に内嵌されている。径方向中心部には、上方側から順に、軸方向下方側に凹み、環状の底を有する凹部51が形成され、凹部51に連通して軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。また、ホルダ50は、その下端部の外周に、軸方向下方側に向かうほどに外径側から内径側に傾斜するテーパ面52が形成されている。
【0026】
ホルダ50の凹部51には、固定鉄心40の下端部が挿嵌されて固定されている。尚、固定鉄心40とホルダ50とは、圧着や螺子や溶接等の既知の方法により固定されているが、固定されていなくともよい。また、固定されていない態様であれば、固定鉄心40の軸方向、特に可動鉄心20側への移動を規制する規制手段を別途設けることが好ましい。
【0027】
また、固定鉄心40の貫通孔及びホルダ50の貫通孔は、ロッド31が軸方向に移動可能に連通しており、それぞれの内周面の少なくとも一部は、ロッド31の外周面に当接可能に形成・配置されているため、ロッド31を案内可能となっている。
【0028】
ソレノイド成形体60は、ボビン61に巻き付けられたソレノイドコイルとしてのコイル62を樹脂63によりモールド成形することにより形成され、スリーブ10の小径部11に外嵌されており、図示しないコネクタからコイル62へ通電することで磁界を発生可能となっている。ソレノイドケース65は、鉄等の磁性を有する金属材料から底に貫通孔が形成されたハット状に形成されており、ソレノイド成形体60に外装された状態で、ソレノイドケース65の外径方向に延出して形成されたフランジの小挿通孔に挿入されたボルト66によってハウジング80に固定されている。より詳しくは、ハウジング80に固定されているソレノイドケース65は、内部にソレノイド成形体60を収納しているとともに、ソレノイドケース65の底の貫通孔にスリーブ10の小径部11が挿入され、ソレノイドケース65の底から小径部11の閉塞部を含む上端部が突出した状態となっている。
【0029】
プレート70は、矩形状に形成されており、径方向中央部を軸方向に貫通する大挿通孔71と、外径側端部を軸方向に貫通し大挿通孔71よりも小径な小挿通孔と、が形成されている。大挿通孔71は、スリーブ10の小径部11が挿入可能に形成されており、スリーブ10の大径部12及びソレノイド成形体60よりも小径に形成されている。プレート70の小挿通孔は、ソレノイドケース65の小挿通孔と位置合わせされて形成されている。
【0030】
プレート70は、スリーブ10の小径部11が大挿通孔71に挿入され、スリーブ10の大径部12の環状底壁13に当接された状態で、プレート70の小挿通孔及びソレノイドケース65の小挿通孔に挿入されたボルト66によってソレノイドケース65と共にハウジング80に固定されている。すなわち、プレート70は、スリーブ10の抜け出しを防止する本発明における固定部材である。
【0031】
ハウジング80には、アルミニウムで形成されており、外側に連通する流入路81と、流入路81が連通する主弁室82と、主弁座83と、主弁座83の径方向中央部を軸方向に貫通し主弁室82及びハウジング80の外側に連通する流出路84と、が形成されており、流入路81、主弁室82、流出路84の順で冷媒が流れる流路が形成されている。主弁室82には、主弁体90と、主弁体90を主弁座83から離間方向に付勢するコイルスプリングS2が配置されている。主弁室82、主弁座83は、それぞれ本発明における弁室、弁座である。
【0032】
また、ハウジング80は、主弁室82の上方側において、軸方向下方側に凹み、環状の底を有する開口凹部85が形成されており、開口凹部85は、主弁室82及びハウジング80の外側と連通している。また、開口凹部85の側部には、外径側に凹む環状の溝86が形成されており、溝86には、OリングP1が配置されている。このOリングP1により、ハウジング80とスリーブ10の大径部12との間がシールされている。すなわち、OリングP1は、本発明におけるシール手段としての弾性シール部材である。
【0033】
主弁体90は、段付き円筒状に形成され、本発明における弁体であり、上端部にウェアリングP2が装着され、下端部に主弁体要素94が固定されている。ウェアリングP2は、主弁室82の内周面に摺動可能に当接している。
【0034】
また、主弁体90の径方向中央部には、上方側から順に、軸方向下方側に凹み、環状の底を有し後述するパイロット弁室91を画成する凹部と、パイロット弁体弁座92と、パイロット弁体弁座92の径方向中央部を貫通してパイロット弁室91及び主弁体90の軸方向下方側にそれぞれ連通する大連通路93と、が形成されている。また、凹部の外径側には、凹部の底から軸方向に貫通し、大連通路93よりも小径な小連通路95が形成されている。
【0035】
パイロット弁室91は、主弁体90と、ハウジング80と、ホルダ50と、パイロット弁体30と、により画成された空間であり、主弁体90が軸方向上方側に移動するほどにその容積が小さくなり、主弁体90が軸方向下方側に移動するほどにその容積が大きくなる。
【0036】
次に、ソレノイドバルブ1の組み立て方法の一例について、図3図4に基づいて説明する。先ず、ホルダ50の凹部51に固定鉄心40の下端部を挿嵌し、圧入固定する。その後、ホルダ50の貫通孔に軸方向下方側からパイロット弁体30を挿入した後、パイロット弁体30の上端部にコイルスプリングS1を外装させ、パイロット弁体30の上端部を可動鉄心20の貫通孔に挿入させてカシメ固定する(図3(a)を参照。)。可動鉄心20の径及びパイロット弁体要素32を有するパイロット弁体30の下端部の径は、固定鉄心40の貫通孔の径よりも大きいことから、可動鉄心20及びパイロット弁体30の軸方向への抜け出しが規制された状態となる。すなわち、可動鉄心20、パイロット弁体30、固定鉄心40、ホルダ50及びコイルスプリングS1がユニット化された状態となる。
【0037】
次いで、図3(b)を参照して、ユニット化された可動鉄心20、パイロット弁体30、固定鉄心40、ホルダ50及びコイルスプリングS1の上方側から、ホルダ50の上端面にスリーブ10の環状底壁13が当接するまでスリーブ10を外装する。このとき、スリーブ10の大径部12の下端には、屈曲壁15(図3(b)の吹き出し内の実線を参照)が形成されておらず、円筒壁14が大径部12の下端まで直線状に延びた状態(図3(b)の吹き出し内の破線を参照)となっている。この円筒壁14の径は、ホルダ50の径よりも僅かに大きいことから容易に外装することができる。また、ホルダ50の上端面にスリーブ10の環状底壁13が当接することでその移動が規制されるため、軸方向の位置合わせをすることができるとともに、固定鉄心40が可動鉄心20側へ移動することを規制することができる。すなわち、固定鉄心40が可動鉄心20側へ移動することを規制するために必要な構成が簡素化されている。
【0038】
その後、スリーブ10の大径部12の円筒壁14の下端部を内径側へと折り曲げることで、図3(b)の吹き出し内の実線に示されるように、屈曲壁15が形成され、ホルダ50にかしめた状態となり、スリーブ10、可動鉄心20、パイロット弁体30、固定鉄心40、ホルダ50及びコイルスプリングS1をユニット化することができる。また、屈曲壁15の外周面は、軸方向下方側に向かうほどに外径側から内径側に傾斜するテーパ面15aとなっている。
【0039】
屈曲壁15の形成については、円筒壁14の下端部を内径側へと折り曲げる際に、ホルダ50のテーパ面52とテーパ面52の上端から上方に延びる端面との角を起点として折り曲げることができるとともに、折り曲げがテーパ面52によって規制されることから、加工が容易である。
【0040】
次いで、図4(a),(b)を参照して、ユニット化されたスリーブ10の大径部12をコイルスプリングS2(図1参照)、主弁体90、及びOリングP1が配置されたハウジング80の開口凹部85に挿入する。このとき、屈曲壁15のテーパ面15aによって、開口凹部85への大径部12の内嵌が案内されるとともに、OリングP1への大径部12の内嵌が案内されるため、開口凹部85及びOリングP1に大径部12を内嵌することが容易であるばかりでなく、ハウジング80及びOリングP1が傷付くことが防止されている。また、図4(b)に示されるように、ホルダ50が開口凹部85の底に当接することでその移動が規制されるため、位置決めが容易である。
【0041】
その後、図4(c)を参照して、プレート70の大挿通孔71にスリーブ10の小径部11を挿通させて、略同一平面を成しているハウジング80の上端面及びスリーブ10の環状底壁13の上端面にプレート70を当接させる。
【0042】
さらに、ソレノイド成形体60をスリーブ10の小径部11に外嵌させてプレート70上に載置し、ソレノイドケース65を外装させ、ソレノイドケース65をプレート70を挟んだ状態でボルト66(図1参照)によりハウジング80に固定することで、図4(c)に示されるように、ソレノイドバルブ1を組み立てることができる。
【0043】
また、組み立てられた状態のソレノイドバルブ1は、開口凹部85の軸方向の寸法である開口凹部85の底からプレート70の下端までの寸法と、ホルダ50の下端から環状底壁13の上端までの寸法、すなわち環状底壁13及びホルダ50の厚み寸法の和と略同一である。これにより、環状底壁13及びホルダ50は、開口凹部85の底とプレート70とにそれぞれ当接し、挟まれていることから、軸方向への移動が規制されており、スリーブ10に対して冷媒からの圧力や振動等の外力が作用しても安定した状態を保つことができる。
【0044】
次に、ソレノイドバルブ1の動作について説明する。ソレノイドバルブ1は、ソレノイド成形体60のコイル62に通電されていない状態において、可動鉄心20がコイルスプリングS1の付勢力により固定鉄心40と離間して上方側に配置され、パイロット弁体要素32がパイロット弁体弁座92から離間している。これにより、ハウジング80の主弁室82に流入する冷媒の一部が、主弁体90の小連通路95を通じてパイロット弁室91に流入した後、大連通路93を通じて主弁室82の流出路84側へと流出可能であるため、パイロット弁室91のパイロット圧は、主弁室82の主弁座83側の圧力と略同圧である。このとき、主弁体90にはコイルスプリングS2の付勢力が作用しており、図1に示されるように、主弁体90がホルダ50の下端面に当接した状態、かつ、主弁体90の主弁体要素94が主弁座83と離間した状態、すなわち開弁状態となっている。
【0045】
一方、閉弁状態のソレノイドバルブ1において、ソレノイド成形体60のコイル62に通電すると、固定鉄心40及びホルダ50が磁化される。固定鉄心40はコイル62に対して軸方向に沿って配置され、ホルダ50はコイル62に対して径方向に沿って配置されており、換言すればコイル62によって形成される磁界に沿うように配置されているため、固定鉄心40及びホルダ50は磁気回路をなし、強い磁力を帯びる。
【0046】
固定鉄心40及びホルダ50が磁化されると、その磁力を受けることによって可動鉄心20は、コイルスプリングS1の付勢力に抗しながら、固定鉄心40へと引き寄せられて、軸方向下方側へと移動する。このとき、冷媒の一部が可動鉄心20及びパイロット弁体30の上端側と下端側とに流出入しており、軸方向両側から作用する力がバランスされているため、スリーブ10内に流入した冷媒が可動鉄心20の移動の妨げとなることが防止され、スムーズに可動鉄心20及びパイロット弁体30を移動させることができる。これは、通電を停止してコイルスプリングS1の付勢力によって可動鉄心20が軸方向上方側へと移動する際にも同様である。
【0047】
そして、可動鉄心20が固定鉄心40へと引き寄せられることに従動してパイロット弁体30も軸方向下方側へと移動し、パイロット弁体要素32が主弁体90のパイロット弁体弁座92に着座すると、パイロット弁室91内の冷媒が大連通路93から主弁室82内に流出できなくなるため、パイロット弁室91のパイロット圧は、相対的に主弁室82の主弁座83側の圧力よりも高くなる。
【0048】
磁力により可動鉄心が引き寄せられる力と、主弁体90に作用する圧力差に基づく力との合力が、コイルスプリングS1の付勢力とコイルスプリングS2の付勢力との合力を上回ると、主弁体90がコイルスプリングS2の付勢力に抗してパイロット弁体30と共に主弁座83側へと移動して、主弁体90の主弁体要素94が主弁座83に着座し、図2に示されるように、ソレノイドバルブ1は閉弁状態となる。このように、パイロット圧を利用して主弁体90を移動させるため、磁界の発生に必要な電力を省力化することができる。
【0049】
また、閉弁状態のソレノイドバルブ1は、ソレノイド成形体60のコイル62への通電を停止することで、可動鉄心20がコイルスプリングS1の付勢力によって上方側へと移動する。これにより、パイロット弁室91内の冷媒が大連通路93から主弁室82内に流出するようになることから、パイロット弁室91のパイロット圧と主弁室82の主弁座83側の圧力との差が小さくなり、主弁体90がコイルスプリングS2の付勢力によって上方側へと移動し、図1に示されるように、開弁状態となる。
【0050】
以上説明してきたように、本実施例におけるソレノイドバルブ1は、スリーブ10とハウジング80との間が一つのOリングP1によってシールされていることから、外部に冷媒が漏出することが防止されている。すなわちスリーブ10とハウジング80との間の1か所がシールされることで冷媒側の空間の密封性を確保できることから、製造工程を簡素にすることができる。
【0051】
また、ソレノイドバルブ1は、スリーブ10とハウジング80との間に配置されたOリングP1が径方向に押し潰された状態となっているため、スリーブ10が軸方向に移動してもOリングP1の潰し率を均一に保ちやすいことから、密封性を保持しやすい。
【0052】
また、ソレノイドバルブ1は、ハウジング80の溝86にOリングP1が配置されることにより、OリングP1がハウジング80に対して軸方向に相対移動することが規制されるため、OリングP1はハウジング80から離脱し難くなっている。また、溝86はアルミニウム製のハウジング80に形成されており、溝86を構成する部分の厚みが少なくともスリーブ10の板厚よりも大きいことから、簡素でありながらも構造強度が高い。
【0053】
また、ソレノイドバルブ1は、ホルダ50によってスリーブ10の大径部12の構造強度が高められているため、大径部12の変形を防止して、密封性を保持しやすい。
【0054】
また、ソレノイドバルブ1は、スリーブ10に対して抜け出し方向に圧力や外力等が作用しても、プレート70にスリーブ10の環状底壁13が当接しており、スリーブ10の移動が規制されることから、簡素な構造でスリーブ10の抜け止めを成すことができる。尚、本実施例では、プレート70にスリーブ10の環状底壁13が常に当接している態様であるが、プレート70にスリーブのフランジが常に当接していない態様であってもよく、このような態様であっても、スリーブが抜け出し方向に移動することでフランジがプレート70に当接して移動が規制されるため、抜け出しを防ぐことができる。
【0055】
また、ソレノイドバルブ1は、非通電時において、ホルダ50の下端面によって主弁体90の停止位置が位置決めされるため、構造を簡素化することができる。
【実施例2】
【0056】
次に、実施例2に係るソレノイドバルブ101につき、図5を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。ソレノイドバルブ101の固定鉄心140は、その下端部に外径側に延設されたフランジ部41が形成されており、前記実施例1における固定鉄心40とホルダ50とを一体に形成した形状となっている。このような構成であれば、固定鉄心40とホルダ50とを固定する工程を省略することができる。
【実施例3】
【0057】
次に、実施例3に係るソレノイドバルブにつき、図6を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。ハウジング180の開口凹部185には、内周面と環状の底との角にOリングP1が配置されており、ハウジング180とスリーブ10との間がシールされている。このような構成であっても、1か所がシールされることで冷媒側の空間の密封性を確保することができる。すなわち、スリーブとハウジングとの間を1か所密封することで、冷媒側の空間の密封性を確保することが可能であれば、Oリングが配置される位置が適宜変更されてもよい。
【0058】
また、ハウジング180の開口凹部185は、内周面と環状の底との角にOリングP1が配置されることから、前記実施例1で説明した溝86が形成されていないため、ハウジング180の製造が容易である。
【0059】
また、スリーブとホルダとの間が密封されている態様であれば、ホルダとハウジングとの間がOリングによって密封されていてもよく、ホルダとハウジングとの間がOリングによって密封される態様であれば、Oリングを配置可能な環状の溝が開口凹部の底に形成されていてもよい。この態様であれば、Oリングがハウジングに対して径方向に移動することが規制されるため、Oリングはハウジングから離脱し難くなる。
【実施例4】
【0060】
次に、実施例4に係るソレノイドバルブにつき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。スリーブ110の大径部112は、円筒壁114の軸方向中央部に内径側に突出するように形成された環状突起16と、円筒壁114の軸方向下端部であり軸方向下方側に向かうほどに外径側から内径側に傾斜するテーパ面115aが形成された本発明の弁室側の端部としてのテーパ端部115(詳しくは、図7の吹き出し内を参照)と、を有し、環状突起16は、その外径側に、内径側に向かって凹む環状の環状溝17が形成されている。ホルダ150は、環状突起16に位置合わせされて形成された環状溝53を有している。
【0061】
ホルダ150の内嵌については、ホルダ150をスリーブ110の大径部112内に押し込むことで、円筒壁114を外径側へと押し広げるように弾性変形させながら移動し、環状溝53に環状突起16が到達すると、円筒壁114が弾性復帰し、環状溝53に環状突起16が挿嵌され、ホルダ150を抜け止めが成された状態で大径部112に内嵌させることができる。すなわち、前記実施例1のように、大径部12の下端部をかしめる工程を省略することができる。
【0062】
また、テーパ面115aが形成されていることから、前記実施例1と同様に、OリングP1への内嵌が容易であるばかりでなく、OリングP1が傷付くことが防止されている。また、環状溝17は、OリングP1の軸方向への移動を規制することができる。
【0063】
尚、スリーブ110の円筒壁114の弾性を利用してホルダ150を内嵌させる態様として説明したが、これに限らず、熱膨張により円筒壁114を拡径させてホルダ150を挿入させた後、冷却することで内嵌してもよく、円筒壁にホルダ150を内嵌させた後、円筒壁をホルダ150に圧着させることで環状突起16及び環状溝17を形成して固定してもよい。
【実施例5】
【0064】
次に、実施例5に係るソレノイドバルブにつき、図8を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。ソレノイドバルブ201のハウジング280は、流入路81が連通する弁室182と、弁室182内に形成された弁座183と、を有し、弁座183には、弁体130の弁体要素132が着座可能となっている。このように、本発明のソレノイドバルブはパイロット式に限定されるものではない。
【0065】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0066】
例えば、前記実施例では、ソレノイドバルブは、ON-OFF式である態様として説明したが、これに限らず、開弁度を段階的に調節可能であってもよい。
【0067】
また、ソレノイドバルブは、ノーマルオープン式である態様として説明したが、これに限らず、ノーマルクローズ式であってもよい。
【0068】
また、ソレノイドバルブは、空調機に使用される態様として説明したが、これに限らず、車両の自動変速機等の油圧により制御される装置、給湯器等に使用されるものであってもよく、空調機に使用されるものに限定されるものではない。
【0069】
また、スリーブとハウジングとはOリングによってシールされている構成として説明したが、これに限らず、溶接やコーキング等のシール手段によりシールされていてもよい。
【0070】
また、スリーブは、側面視ハンマー状に形成されている態様として説明したが、これに限らず、側面視矩形状やドーム状に形成されていてもよく、その形状は適宜変更されてもよい。
【0071】
また、固定部材は、プレート70である態様として説明したが、これに限らず、大径部に当接可能な状態で配置されていれば棒状の部材や爪状の部材等が固定部材として用いられていてもよく、溶接やコーキング等が用いられていてもよい。
【0072】
また、開口凹部85には、環状の底が形成されており、当該底にホルダが当接して位置決めされる構成として説明したが、これに限らず、開口凹部が底を有さず、ストレートに主弁室と連通していてもよい。このような態様であれば、スリーブがハウジングに溶接等で強固に固定されていてもよく、ホルダの移動を規制するための規制手段を別途設けてもよい。
【0073】
また、主弁体90は、開弁時にホルダ50に当接する態様として説明したが、これに限らず、ホルダ50から離間していてもよい。このような態様であれば、主弁体90の移動を規制するための規制手段を別途設けてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 ソレノイドバルブ
10 スリーブ
11 小径部
12 大径部
12a 開放部
15 屈曲壁(端部)
15a テーパ面
20 可動鉄心
30 パイロット弁体
40 固定鉄心
50 ホルダ
62 コイル(ソレノイドコイル)
70 プレート(固定部材)
80 ハウジング
82 主弁室(弁室)
83 主弁座(弁座)
85 開口凹部
86 溝
90 主弁体(弁体)
101,201 ソレノイドバルブ
110 スリーブ
112 大径部
115 テーパ端部(端部)
115a テーパ面
130 弁体
140 固定鉄心
150 ホルダ
180,280 ハウジング
182 弁室
183 弁座
185 開口凹部
P1 Oリング(シール手段,弾性シール部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8