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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240909BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20240909BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
F16H57/04 E
F16H57/04 J
B60K17/12
H02K7/116
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022555319
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021032967
(87)【国際公開番号】W WO2022074997
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2020169853
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】忍足 俊一
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-121549(JP,A)
【文献】特開2020-85026(JP,A)
【文献】特開2014-207772(JP,A)
【文献】特開2011-158100(JP,A)
【文献】特開2015-107709(JP,A)
【文献】特開2008-185078(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073821(WO,A1)
【文献】特開2016-19436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
B60K 17/12
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの下流に接続された歯車機構と、
本体部と、前記本体部と接続されるポンプ入口と、を有するストレーナと、
前記ポンプ入口を介してオイルが吸引されるポンプと、を有し、
径方向から見て前記本体部は前記モータとオフセットしており、且つ、前記本体部は前記モータから見て前記歯車機構側に配置され、前記ポンプ入口の開口端と前記モータのステータの表面との距離のうちの最短距離は、前記ポンプ入口の開口端と前記歯車機構の表面との距離のうちの最短距離よりも短い、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ステータの少なくとも一部を収容する収容室を有し、
前記ポンプ入口には、前記収容室の排出口を介して排出されたオイルが導入される、動力伝達装置。
【請求項3】
モータを収容するモータ室を有するボックスと、
前記モータの下流に接続された歯車機構と、
本体部と、前記本体部と接続されるポンプ入口と、を有するストレーナと、
前記ポンプ入口を介してオイルが吸引されるポンプと、
前記モータ室内に設けられ、前記モータのステータの少なくとも一部を収容する収容室と、を有し、
前記ボックスは、径方向から見て前記モータとオーバーラップするオイル溜り部を有し、
径方向から見て前記本体部は前記モータとオフセットしており、且つ、前記本体部は前記モータから見て前記歯車機構側に配置され、前記オイル溜り部には、前記収容室の排出口を介して排出されたオイルが導入され、前記ポンプ入口は前記本体部から見てモータ側に位置する前記オイル溜り部に向けて開口している、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
前記排出口から排出されたオイルが通流する油路を有し、
前記ポンプ入口は、前記油路側に向かって開口している、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4の何れか一において、
前記収容室は、前記モータのロータと離間されている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか一において、
前記収容室は、前記モータのステータのコイルエンドを包む形状を有する、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記収容室は、前記モータのステータのコイルエンドを包む弧状部分を含む形状を有する、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7のいずれか一において、
前記排出口から排出されたオイルが通流する油路を有し、
前記油路は下方側に向かって開口している、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記ポンプ入口は、ストレーナの吸引口として構成されている、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記歯車機構の下流に接続され前記モータの内周を貫通して配置される駆動軸を有する、動力伝達装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一において、
前記歯車機構は、遊星減速ギアを含む、動力伝達装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
径方向から見て前記本体部は前記歯車機構とオーバーラップしている、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歯車機構の外周側(径方向外側)に、ストレーナの吸入口を配置した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-152320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温時においてはオイルの粘度が高くなり、又は、オイルがシャーベット状になり、ポンプの吐出量が減少する場合がある。
そこで、低温時のポンプの吐出量の減少を低減するための構造を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における動力伝達装置は、
モータと、
前記モータの下流に接続された歯車機構と、
本体部と、前記本体部と接続されるポンプ入口と、を有するストレーナと、
前記ポンプ入口を介してオイルが吸引されるポンプと、を有し、
径方向から見て前記本体部は前記モータとオフセットしており、且つ、前記本体部は前記モータから見て前記歯車機構側に配置され、前記ポンプ入口の開口端と前記モータのステータの表面との距離のうちの最短距離は、前記ポンプ入口の開口端と前記歯車機構の表面との距離のうちの最短距離よりも短い。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、低温時のポンプの吐出量の減少を低減するための構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、動力伝達装置のスケルトン図である。
図2図2は、動力伝達装置の断面の模式図である。
図3図3は、動力伝達装置の差動機構周りの拡大図である。
図4図4は、動力伝達装置の差動機構周りの拡大図である。
図5図5は、動力伝達装置の差動機構の分解斜視図である。
図6図6は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図7図7は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図8図8は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図9図9は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図10図10は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図11図11は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図12図12は、モータ周りのオイルの流れを説明する図である。
図13図13は、カバー部材の要部拡大図である。
図14図14は、コイルエンド周りのオイルの流れを説明する図である。
図15図15は、仕切壁を説明する図である。
図16図16は、カバー部材の要部拡大図である。
図17図17は、コイルエンド周りのオイルの流れを説明する図である。
図18図18は、ストレーナを説明する図である。
図19図19は、変形例1にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図20図20は、変形例1にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図21図21は、変形例2にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図22図22は、変形例3にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図23図23は、変形例4にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図24図24は、変形例5にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図25図25は、変形例6に係るオイルポンプの構成例を示す図である。
図26図26は、変形例6に係るオイルポンプの構成例を示す図である。
図27図27は、変形例6に係るオイルポンプの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、電気自動車EVが備える動力伝達装置1に適用した場合を例に挙げて説明する。
以下の説明において、第1要素(部品、部分等)に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の下流に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の上流に接続された第2要素(部品、部分等)と述べた場合、第1要素と第2要素とが動力伝達可能に接続されていることを意味する。動力の入力側が上流となり、動力の出力側が下流となる。また、第1要素と第2要素は、他の要素(クラッチ、他の歯車機構等)を介して接続されていても良い。
【0009】
「所定方向から見てオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向から見てオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0010】
「所定方向から見てオーバーラップしていない」、「所定方向から見てオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向から見てオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向から見て、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向から見て、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向から見て第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向から見て第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
軸方向から見て、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0013】
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0014】
図1は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明するスケルトン図である。
図2は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する断面の模式図である。
図3は、動力伝達装置1の遊星減速ギア4周りの拡大図である。
図4は、動力伝達装置1の差動機構5周りの拡大図である。
なお、図面中、上下方向とは、電気自動車EVに搭載された状態の動力伝達装置1に対して、鉛直線VL方向における上、下を意味するものとして説明する。
【0015】
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転をドライブシャフトDA、DB(駆動軸)に伝達する歯車機構3と、パークロック機構PLと、を有する。なお、「モータ」は、電動機機能及び/又は発電機機能を有する回転電機である。
動力伝達装置1では、モータ2の回転軸X回りの出力回転の伝達経路に沿って、パークロック機構PLと、歯車機構3と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。
【0016】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、歯車機構3を介してドライブシャフトDA、DBに伝達される。これにより、左右の駆動輪W、Wが駆動される。
【0017】
ここで、歯車機構3は、遊星減速ギア4(減速機構)と、差動機構5(デファレンシャルギア)と、から構成されている。遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されている。差動機構5は、遊星減速ギア4の下流に接続されている。差動機構5の下流には、ドライブシャフトDA、DBが接続されている。
遊星減速ギア4は、モータ2の出力回転を減速して差動機構5に入力する。差動機構5は、遊星減速ギア4から入力された回転をドライブシャフトDA、DBに伝達する。
【0018】
図2に示すように、動力伝達装置1の本体ボックス10は、モータ2を収容する第1ボックス11と、第1ボックス11に外挿される第2ボックス12と、を有する。本体ボックス10は、第1ボックス11に組み付けられる第3ボックス13と、第2ボックス12に組み付けられる第4ボックス14と、を有する。
【0019】
第1ボックス11は、円筒状の支持壁部111と、支持壁部111の一端111aに形成されたフランジ状の接合部112と、支持壁部111の他端111bに形成された筒状の嵌合部113と、を有している。
【0020】
第1ボックス11は、支持壁部111の中心線をモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで配置されている。支持壁部111の内側には、モータ2が収容される。
接合部112は、支持壁部111から回転軸Xの径方向外側に張り出している。
嵌合部113は、支持壁部111よりも小径の外径を有している。
【0021】
第2ボックス12は、円筒状の周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
周壁部121は、第1ボックス11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
【0022】
第1ボックス11と第2ボックス12は、第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。第1ボックス11は、支持壁部111の嵌合部113が、周壁部121に内嵌している。
【0023】
周壁部121の一端121a側の接合部122は、回転軸X方向から、第1ボックス11の接合部112に当接している。これら接合部122、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
第1ボックス11では、支持壁部111の外周に複数の凹溝111cが設けられている。複数の凹溝111cは、回転軸X方向に間隔をあけて設けられている。凹溝111cの各々は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121が外挿される。凹溝111cの開口が周壁部121で閉じられている。支持壁部111と周壁部121との間に、クーラントが通流する複数の冷却路CPが形成される。なお、「クーラント」は冷媒であり、たとえば、液体(冷却水等)、気体(空気等)等である。
【0024】
第1ボックス11の支持壁部111の外周では、凹溝111cが設けられた領域の両側に、リング溝111d、111dが形成されている。リング溝111d、111dには、シールリング114、114が外嵌して取り付けられている。
これらシールリング114は、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0025】
第1ボックス11の上下方向の上側の領域では、支持壁部111の内周に、後記する油孔170a、171aが開口している。
油孔170a、171aは、回転軸X方向における支持壁部111の一端111a側と他端111b側の内周に開口している。
【0026】
第2ボックス12の他端121bには、内径側に延びる壁部120が設けられている。壁部120は、周壁部121から回転軸Xに直交する向きで設けられている。壁部120の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフトDAが挿通する開口120aが設けられている。
壁部120では、モータ2側(図中、右側)の面に、開口120aを囲む筒状のモータ支持部125が設けられている。
モータ支持部125は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部125は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0027】
第2ボックス12の周壁部121は、動力伝達装置1の電気自動車EVへの搭載状態を基準とした上下方向において、下側の領域の径方向の厚みが、上側の領域よりも厚くなっている。
この径方向の厚みが厚い領域には、第2ボックス12を回転軸X方向に貫通するオイル溜り部128が形成されている。
【0028】
オイル溜り部128は、回転軸X方向における周壁部121の一端121a側と他端121b側で油路180、181を介して第1ボックス11の内側の空間(モータ室Sa)と連通している。
油路180は、第1ボックス11の支持壁部111に設けた油孔180aと、第2ボックス12の周壁部121に設けた油孔180bと、から構成される。
油路181は、第1ボックス11の支持壁部111に設けた油孔181aと、第2ボックス12の周壁部121に設けた油孔181bと、から構成される。
油路180、181は、第1ボックス11の支持壁部111と、第2ボックス12の周壁部121を、それぞれ上下方向に貫通して形成されている。
【0029】
第3ボックス13は、回転軸Xに直交する壁部130を有している。壁部130の外周部には、回転軸X方向から見てリング状を成す接合部132が設けられている。
第1ボックス11から見て第3ボックス13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。第3ボックス13の接合部132は、第1ボックス11の接合部112に回転軸X方向から接合されている。第3ボックス13と第1ボックス11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ボックス11は、支持壁部111の接合部122側(図中、右側)の開口が、第3ボックス13で塞がれている。
【0030】
第3ボックス13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフトDAの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフトDAの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフトDAの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第1ボックス11側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフトDAがベアリングB4を介して支持されている。
【0031】
周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)には、モータ支持部135が配置されている。モータ支持部135は、回転軸Xを間隔をあけて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。
接続壁136は、モータ支持部135と一体に形成されている。接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられている。接続壁136は、回転軸Xに沿ってモータ2から離れる方向に延びている。接続壁136の先端側は、図示しないボルトにより、第3ボックス13の壁部130に固定されている。
【0032】
モータ支持部135は、接続壁136を介して第3ボックス13で支持されている。モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
【0033】
接続壁136の上下方向の下側の領域には、当該接続壁136を回転軸Xの径方向に貫通する貫通孔136aが形成されている。
接続壁136の内側の空間と、モータ室Saとが、貫通孔136aを介して連通している。
【0034】
第4ボックス14は、遊星減速ギア4と差動機構5の外周を囲む周壁部141と、周壁部141における第2ボックス12側の端部に形成されたフランジ状の接合部142と、を有している。
第4ボックス14は、第2ボックス12から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。第4ボックス14の接合部142は、第2ボックス12の接合部123に回転軸X方向から接合されている。第4ボックス14と第2ボックス12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0035】
動力伝達装置1の本体ボックス10の内部は、壁部120によって、モータ2を収容するモータ室Saと、歯車機構3(遊星減速ギア4と差動機構5)を収容するギア室Sbとに区画されている。すなわち、壁部120は、歯車機構3とモータ2との間に設けられた隔壁を構成する。
具体的には、モータ室Saは、第1ボックス11の内側で、第2ボックス12の壁部120と、第3ボックス13の壁部130との間に形成されている。モータ室Saは、上下方向の下側の領域において、前記した油路180、181を介して、オイル溜り部128と連通している。
ギア室Sbは、第4ボックス14の内径側で、第2ボックス12の壁部120と、第4ボックス14の周壁部141との間に形成されている。ギア室Sbは、上下方向の下側の領域において、前記したオイル溜り部128と連通している。
【0036】
本体ボックス10のモータ室Saとギア室Sbには、オイルOLが封入されている(図2参照)。モータ室Sa内のオイルOLは、冷却路CPを通流するクーラントとの熱交換で冷却されると共に、モータ2を冷却する。なお、オイルOLは、クーラントとは異なる材料で構成されている。ギア室Sb内のオイルOLは、歯車機構3を潤滑すると共に歯車機構3を冷却する。モータ室Saとギア室Sbは、本体ボックス10の内部で連通しており、モータ室Saとギア室Sb内のオイルOLの油面の高さは同じである。
【0037】
ギア室Sbの内部には、プレート部材PTが配置されている。
プレート部材PTは、第4ボックス14にボルトBで固定されている。
プレート部材PTは、ギア室Sbを、遊星減速ギア4と差動機構5を収容する第1ギア室Sb1と、パークロック機構PLを収容する第2ギア室Sb2とに区画している。
回転軸X方向において第2ギア室Sb2は、第1ギア室Sb1と、モータ室Saとの間に位置している。
【0038】
図2に示すように、ギア室Sbの内部には、ストレーナ80が配置されている。
ストレーナ80は、ギア室Sbにおけるプレート部材PTの下側で、第4ボックス14に図示しない固定具で固定されている。ストレーナ80の吸引部82は、回転軸X方向でオイル溜り部128と対向する位置に設けられている。ストレーナ80は、本体ボックス10の外部に配置されたオイルポンプ85に接続されている。すなわち、吸引部82は、オイルポンプ85のポンプ入口を構成する。
【0039】
モータ2は、モータシャフト20と、ロータコア21(ロータ)と、ステータコア25(ステータ)と、を有する。モータシャフト20は円筒状である。ドライブシャフトDAは、モータシャフト20の内周を貫通して配置される。ロータコア21は円筒状であり、モータシャフト20に外挿される。ステータコア25は、ロータコア21の径方向外側に位置する固定体である。ステータコア25は、ロータコア21の外周を間隔をあけて囲む。
【0040】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、第3ボックス13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側に位置するベアリングB1は、第2ボックス12の円筒状のモータ支持部125の内周に支持されている。
【0041】
モータ支持部135、125は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側で、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0042】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0043】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ボックス11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
ステータコア25は、ヨーク部251と、ティース部252と、コイル253と、を有する。ヨーク部251はリング状であり、支持壁部111の内周に固定される。ティース部252は、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出する。コイル253は、複数のティース部252に跨がって巻線(図示せず)を巻き付けることで形成されている。コイル253を形成する巻線には、公知の銅線等を用いることができる。なお、コイル253は、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を分布巻きした構成としても良いし、集中巻きした構成としても良い。
【0044】
図2に示すように、ステータコア25では、コイル253は、ロータコア21を囲む円筒状の基部253cと、回転軸X方向における基部253cの両端部に位置するコイルエンド253a、253bと、から構成されている。
コイル253は、回転軸X方向の長さが、ロータコア21よりも長くなるように設定されている。コイル253は、コイルエンド253a、253bが、ロータコア21よりも回転軸X方向にそれぞれ張り出している。コイルエンド253a、253bは、ティース部252を挟んで対称な形状を成している。
【0045】
ステータコア25のコイルエンド253a、253bには、後記するカバー部材9A、9Bがそれぞれ被せられている。カバー部材9A、9Bは、例えば樹脂などの絶縁体で構成されている。
【0046】
図3に示すように、コイル253の基部253cは、外周面253c1が回転軸Xの径方向でヨーク部251と間隔をあけて対向する。また、コイル253の基部253cは、内周面253c2が回転軸Xの径方向でロータコア21と間隔をあけて対向する。
【0047】
図2に示すように、第2ボックス12の壁部120(モータ支持部125)には、開口120aが設けられている。モータシャフト20の他端20b側は、開口120aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、第4ボックス14内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、第4ボックス14の内側で、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0048】
図3に示すように、モータシャフト20では、第4ボックス14内に位置する領域に、段部201が設けられている。段部201は、モータ支持部125の近傍に位置している。
【0049】
モータシャフト20では、段部201から他端20bの近傍までの領域が、外周にスプラインが設けられた嵌合部202となっている。
嵌合部202の外周には、パークギアPgとサンギア41がスプライン嵌合している。
【0050】
パークギアPgは、回転軸X方向における一方の側面が、段部201に当接している。回転軸X方向におけるパークギアPgの他方の側面には、サンギア41の円筒状の基部410の一端410aが当接している。
基部410の他端410bには、モータシャフト20の他端20bに螺合したナットNが、回転軸X方向から圧接している。
サンギア41とパークギアPgは、ナットNと段部201との間に挟み込まれた状態で、モータシャフト20に対して相対回転不能に設けられている。
【0051】
サンギア41は、モータシャフト20の他端20b側の外周に、歯部411を有している。歯部411の外周には、段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0052】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432とを有している。
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432が、回転軸Xに平行な軸線X1方向で並んで、一体に設けられたギア部品である。
大径歯車部431は、小径歯車部432の外径R2よりも大きい外径R1で形成されている。
段付きピニオンギア43は、軸線X1に沿う向きで設けられている。段付きピニオンギア43の大径歯車部431がモータ2側(図中、右側)に位置している。
【0053】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔をあけて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、径方向外側に突出する複数の係合歯421が設けられている。複数の係合歯421は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
リングギア42の外周に設けた係合歯421が、第4ボックス14の支持壁部146に設けた歯部146a(図2参照)にスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。
【0054】
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432の内径側を軸線X1方向に貫通した貫通孔430を有している。
段付きピニオンギア43は、貫通孔430を貫通したピニオン軸44の外周で、ニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0055】
ピニオン軸44の外周では、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられている。
【0056】
図4に示すように、ピニオン軸44の内部には、軸内油路440が設けられている。軸内油路440は、軸線X1に沿ってピニオン軸44の一端44aから、他端44bまで貫通している。
ピニオン軸44には、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させる油孔442、443が設けられている。
【0057】
油孔443は、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。
油孔442は、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。
ピニオン軸44において油孔443、442は、段付きピニオンギア43が外挿された領域内に開口している。
【0058】
さらに、ピニオン軸44には、オイルOLを軸内油路440に導入するための導入路441が設けられている。
ピニオン軸44の外周において導入路441は、後記する第2ケース部7の支持孔71a内に位置する領域に開口している。導入路441は、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させている。
【0059】
支持孔71aの内周には、ケース内油路781が開口している。ケース内油路781は、第2ケース部7の基部71から突出するガイド部78の外周と、支持孔71aとを連通させている。
軸線X1に沿う断面視においてケース内油路781は、軸線X1に対して傾斜している。ケース内油路781は、回転軸X側に向かうにつれて、基部71に設けたスリット710に近づく向きで傾斜している。
【0060】
ケース内油路781には、後記するデフケース50が掻き上げたオイルOLが流入する。ケース内油路781には、デフケース50の回転による遠心力で外径側に移動するオイルOLが流入する。
ケース内油路781から導入路441に流入したオイルOLは、ピニオン軸44の軸内油路440に流入する。軸内油路440に流入したオイルOLは、油孔442、443から径方向外側に排出される。油孔442、443から排出されたオイルOLは、ピニオン軸44に外挿されたニードルベアリングNBを潤滑する。
【0061】
ピニオン軸44では、導入路441が設けられた領域よりも他端44b側に、貫通孔444が設けられている。貫通孔444は、ピニオン軸44を直径線方向に貫通している。
ピニオン軸44は、貫通孔444と、後記する第2ケース部7側の挿入穴782との軸線X1回りの位相を合わせて設けられている。挿入穴782に挿入された位置決めピン44pが、ピニオン軸44の貫通孔444を貫通する。これによって、ピニオン軸44は、軸線X1回りの回転が規制された状態で、第2ケース部7側で支持される。
【0062】
図4に示すように、ピニオン軸44の長手方向の一端44a側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第1軸部445となっている。第1軸部445は、デフケース50の第1ケース部6に設けた支持孔61aで支持されている。
ピニオン軸44の長手方向の他端44b側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第2軸部446となっている。第2軸部446は、デフケース50の第2ケース部7に設けた支持孔71aで支持されている。
【0063】
ここで、第1軸部445は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない一端44a側の領域を意味する。第2軸部446は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない他端44b側の領域を意味する。
ピニオン軸44の第2軸部446の軸線X1方向の長さは、第1軸部445の軸線X1方向の長さよりも長い。
【0064】
以下、差動機構5の主要構成を説明する。
図5は、差動機構5のデフケース50周りの分解斜視図である。
図4および図5に示すように、差動機構5のデフケース50は、第1ケース部6と第2ケース部7を回転軸X方向で組み付けて形成される。本実施形態では、デフケース50の第1ケース部6と第2ケース部7が、遊星減速ギア4のピニオン軸44を支持するキャリアとしての機能を有している。
【0065】
図5に示すように、デフケース50の第1ケース部6と第2ケース部7との間には、3つのピニオンメートギア52と、3つのピニオンメートシャフト51と、が設けられている。ピニオンメートシャフト51は、ピニオンメートギア52を支持する支持軸として機能する。
ピニオンメートシャフト51は、回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている。
ピニオンメートシャフト51各々の内径側の端部は、共通の連結部510に連結されている。
【0066】
ピニオンメートギア52は、ピニオンメートシャフト51の各々に1つずつ外挿されている。ピニオンメートギア52の各々は、回転軸Xの径方向外側から、連結部510に接触している。
この状態においてピニオンメートギア52の各々は、ピニオンメートシャフト51で回転可能に支持されている。
【0067】
図4に示すように、ピニオンメートシャフト51には、球面状ワッシャ53が外挿されている。球面状ワッシャ53は、ピニオンメートギア52の球面状の外周に接触している。
【0068】
デフケース50では、回転軸X方向における連結部510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。
サイドギア54Aは、第1ケース部6で回転可能に支持されている。サイドギア54Bは、第2ケース部7で回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。
【0069】
図5に示すように、第1ケース部6は、リング状の基部61を有している。
図4に示すように、基部61は、回転軸X方向に厚みW61を有する板状部材である。
基部61の中央部には、開口60が設けられている。基部61における第2ケース部7とは反対側(図中、右側)の面には、開口60を囲む筒壁部611が設けられている。筒壁部611の外周は、ベアリングB3を介して、プレート部材PTで支持されている。
【0070】
図5に示すように、基部61における第2ケース部7側の面には、第2ケース部7側に延びる3つの連結梁62が設けられている。
連結梁62は、回転軸X周りの周方向に、等間隔で設けられている。連結梁62は、基部61に対して直交する基部63と、基部63よりも幅広の連結部64と、を有している。
【0071】
図4に示すように、連結部64の先端面には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝65が設けられている。
連結部64の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う形状で円弧部641が形成されている。
円弧部641では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される。
【0072】
連結梁62では、基部63と連結部64との境界部にギア支持部66が接続されている。ギア支持部66は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。ギア支持部66は、中央部に貫通孔660を有している。
【0073】
ギア支持部66では、基部61とは反対側(図中、左側)の面に、貫通孔660を囲む凹部661が設けられている。凹部661には、サイドギア54Aの裏面を支持するリング状のワッシャ55が収容される。
サイドギア54Aの裏面には、円筒状の筒壁部541設けられている。ワッシャ55は筒壁部541に外挿されている。
【0074】
図5に示すように、基部61には、ピニオン軸44の支持孔61aが開口している。支持孔61aは、回転軸X周りの周方向で間隔をあけて配置された連結梁62、62の間の領域に開口している。
図3に示すように、基部61には、支持孔61aを囲むボス部616が設けられている。ボス部616には、ピニオン軸44に外挿されたワッシャWcが、回転軸X方向から接触する。
【0075】
図5に示すように、連結部64では、支持溝65の両側に、ボルト穴67、67が設けられている。
第1ケース部6の連結部64には、第2ケース部7側の連結部74が回転軸X方向から接合される。第1ケース部6と第2ケース部7は、第2ケース部7側の連結部を貫通したボルトBが、ボルト穴67、67に螺入されて、互いに接合される。
【0076】
図5に示すように、第2ケース部7は、リング状の基部71を有している。
図4に示すように、基部71は、回転軸X方向に厚みW71を有する板状部材である。
基部71の中央部には、基部71を厚み方向に貫通する貫通孔70が設けられている。
基部71における第1ケース部6とは反対側(図中、左側)の面には、貫通孔70を囲む筒壁部72と、筒壁部72を間隔をあけて囲む周壁部73が設けられている。
周壁部73の先端には、回転軸X側に突出する突起部73aが設けられている。突起部73aは、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
【0077】
周壁部73の外径側には、ピニオン軸44の3つの支持孔71aが開口している。支持孔71aは、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
周壁部73の内径側には、基部71を厚み方向に貫通する3つのスリット710が設けられている。
図5に示すように、回転軸X方向から見てスリット710は、周壁部73の内周に沿う弧状を成している。スリット710は、回転軸X周りの周方向に所定の角度範囲で形成されている。
【0078】
図5に示すように、第2ケース部7においてスリット710は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。スリット710の各々は、支持孔71aの内径側を、回転軸X周りの周方向に横切って設けられている。
【0079】
回転軸X周りの周方向で隣り合うスリット710、710の間には、紙面手前側に突出した突出壁711が設けられている。突出壁711は、回転軸Xの径方向に直線状に延びている。突出壁711は、外径側の周壁部73と内径側の筒壁部72とに跨がって設けられている。
【0080】
3つの突出壁711は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。突出壁711は、スリット710に対して、回転軸X周りの周方向に大凡45度位相をずらして設けられている。
【0081】
周壁部73の外径側では、回転軸X周りの周方向で隣り合う支持孔71a、71aの間に、紙面奥側に窪んだボルト収容部76、76が設けられている。
ボルト収容部76の内側には、ボルトの挿通孔77が開口している。挿通孔77は、基部71を厚み方向(回転軸X方向)に貫通している。
【0082】
基部71における第1ケース部6側(図中、右側)の面には、第1ケース部6側に突出する連結部74が設けられている。
連結部74は、第1ケース部6側の連結梁62と同数設けられている。
【0083】
図4に示すように、連結部74の先端面には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝75が設けられている。
【0084】
連結部74の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う円弧部741が設けられている。
円弧部741では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される。
第2ケース部7では、基部71における第1ケース部6側の面に、サイドギア54Bの裏面を支持するリング状のワッシャ55が載置される。サイドギア54Bの裏面には、円筒状の筒壁部540が設けられている。ワッシャ55は筒壁部540に外挿されている。
【0085】
第2ケース部7の基部71には、ガイド部78が設けられている。ガイド部78は、第1ケース部6側(図中右側)に突出している。ガイド部78は、第1ケース部6のボス部616と同数設けられている。
【0086】
図4に示すように、軸線X1に沿う断面視において、ガイド部78の支持孔71aには、第1ケース部6側からピニオン軸44が挿入される。ピニオン軸44は、位置決めピン44pにより、軸線X1回りの回転が規制された状態で位置決めされている。
この状態において、ピニオン軸44に外挿された段付きピニオンギア43の小径歯車部432が、ワッシャWcを間に挟んで、軸線X1方向からガイド部78に当接している。
【0087】
デフケース50では、第2ケース部7の筒壁部72に、ベアリングB2が外挿されている。筒壁部72に外挿されたベアリングB2は、第4ボックス14の支持部145で保持されている。デフケース50の筒壁部72は、ベアリングB2を介して、第4ボックス14で回転可能に支持されている。
【0088】
支持部145には、第4ボックス14の開口部145aを貫通したドライブシャフトDBが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフトDBは、支持部145で回転可能に支持されている。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフトDBに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0089】
デフケース50の第1ケース部6は、筒壁部611に外挿されたベアリングB3を介して、プレート部材PTで支持されている。
図2に示すように、第1ケース部6の内部には、第3ボックス13の挿通孔130aを貫通したドライブシャフトDAが、回転軸X方向から挿入されている。
ドライブシャフトDAは、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0090】
図4に示すように、デフケース50の内部では、ドライブシャフトDA、DBの先端部の外周に、サイドギア54A、54Bがスプライン嵌合している。サイドギア54A、54BとドライブシャフトDA、DBとが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0091】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されている。サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の連結部510が位置している。
図5に示すように、本実施形態では、合計3つのピニオンメートシャフト51が、連結部510から径方向外側に延びている。ピニオンメートシャフト51の各々に、ピニオンメートギア52が支持されている。ピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0092】
図2に示すように、第4ボックス14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。デフケース50の下部側は、貯留されたオイルOL内に位置している。
本実施形態では、連結梁62が最も下部に位置した際に、連結梁62がオイルOL内に位置する高さまで、オイルOLが貯留されている。
貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
【0093】
図6から図11は、オイルキャッチ部15を説明する図である。
図6は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。
図7は、図6に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図8は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。図8は、デフケース50を配置した状態を示している。
図9は、図8に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図10は、図8におけるA-A断面の模式図である。
図11は、動力伝達装置1を上方から見た場合におけるオイルキャッチ部15と、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)との位置関係を説明する模式図である。
なお、図6および図8では、第4ボックス14の接合部142と、支持壁部146の位置を明確にするために、ハッチングを付して示している。
【0094】
図6に示すように、回転軸X方向から見て第4ボックス14には、中央の開口部145aを間隔をあけて囲む支持壁部146が設けられている。支持壁部146の内側(回転軸X)が、デフケース50の収容部140となっている。
第4ボックス14内の上部には、オイルキャッチ部15の空間と、ブリーザ室16の空間が形成されている。
【0095】
第4ボックス14の支持壁部146では、鉛直線VLと交差する領域に、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる連通口147が設けられている。
【0096】
オイルキャッチ部15とブリーザ室16は、回転軸Xと直交する鉛直線VLを挟んだ一方側(図中、左側)と他方側(図中、右側)に、それぞれ位置している。
オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転中心(回転軸X)を通る鉛直線VLからオフセットした位置に配置されている。上方からオイルキャッチ部15を見ると、オイルキャッチ部15は、デフケース50の真上からオフセットした位置に配置されている。
ここで、鉛直線VLは、動力伝達装置1の電気自動車EVでの設置状態を基準とした鉛直線VLである。回転軸X方向から見て鉛直線VLは、回転軸Xと直交している。
なお、以下の説明において水平線HLは、動力伝達装置1の電気自動車EVでの設置状態を基準とした水平線HLである。回転軸X方向から見て水平線HLは、回転軸Xと直交している。
【0097】
図7に示すように、オイルキャッチ部15は、支持壁部146よりも紙面奥側まで及んで形成されている。オイルキャッチ部15の下縁には、紙面手前側に突出して支持台部151(棚部)が設けられている。支持台部151は、支持壁部146よりも紙面手前側であって、第4ボックス14の接合部142よりも紙面奥側までの範囲に設けられている。
【0098】
図6に示すように、回転軸X方向から見て、オイルキャッチ部15の鉛直線VL側(図中、右側)には、連通口147が設けられている。連通口147は、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる。連通口147は、支持壁部146の一部を切り欠いて形成されている。
回転軸X方向から見て連通口147は、鉛直線VLをブリーザ室16側(図中、右側)から、オイルキャッチ部15側(図中、左側)に横切る範囲に設けられている。
【0099】
図8に示すように、本実施形態では、動力伝達装置1を搭載した電気自動車EVの前進走行時に、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
そのため、オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。そして、連通口147の周方向の幅は、鉛直線VLを挟んだ左側のほうが、右側よりも広くなっている。鉛直線VLを挟んだ左側は、デフケース50の回転方向における下流側であり、右側は上流である。これにより、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入できる。
【0100】
さらに、図11に示すように、前記したピニオン軸44の第2軸部446の回転軌道の外周位置と、大径歯車部431の回転軌道の外周位置は、回転軸Xの径方向でオフセットしている。第2軸部446の回転軌道の外周位置のほうが、大径歯車部431の回転軌道の外周位置よりも内径側に位置している。
そのため、第2軸部446は外径側に空間的な余裕がある。オイルキャッチ部15は、この空間を利用して設けられており、本体ボックス10内の空間の有効利用が可能となっている。
【0101】
図11に示すように、第2軸部446は、モータ2から見て小径歯車部432の奥側に突出している。第2軸部446の周辺部材(例えば、第2軸部446を支持するデフケース50のガイド部78)が、オイルキャッチ部15に近接して位置する。
これによって、周辺部材からオイルキャッチ部15へのオイルOL(潤滑油)の供給をスムーズに行うことができる。
【0102】
図7に示すように、支持台部151の奥側には、油孔151aの外径側の端部が開口している。油孔151aは、第4ボックス14内を内径側に延びている。油孔151aの内径側の端部は、支持部145の内周に開口している。
図4に示すように、支持部145において油孔151aの内径側の端部は、リップシールRSとベアリングB2との間に開口している。
【0103】
図9および図11に示すように、支持台部151には、オイルガイド152が載置されている。
オイルガイド152は、キャッチ部153と、キャッチ部153から第1ボックス11側(図9における紙面手前側)に延びるガイド部154とを有している。
【0104】
図11に示すように、上方から見て支持台部151は、回転軸Xの径方向外側で、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)の一部に重なる位置に、段付きピニオンギア43(大径歯車部431)との干渉を避けて設けられている。
回転軸Xの径方向から見て、キャッチ部153は、ピニオン軸44の第2軸部446と重なる位置に設けられている。さらにガイド部154は、ピニオン軸44の第1軸部445と大径歯車部431と重なる位置に設けられている。
【0105】
そのため、デフケース50が回転軸X回りに回転する際に、デフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部が、キャッチ部153とガイド部154側に向けて移動する。
【0106】
キャッチ部153の外周縁には、支持台部151から離れる方向(上方向)に延びる壁部153aが設けられている。回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部は、オイルガイド152に貯留される。
【0107】
キャッチ部153の奥側(図9における紙面奥側)では、壁部153aに切欠部155が設けられている。
切欠部155は、油孔151aに対向する領域に設けられている。キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部は、切欠部155の部分から油孔151aに向けて排出される。
【0108】
ガイド部154は、デフケース50との干渉を避けた位置を、第2ボックス12側(図11における下側)に向けて延びている。
ガイド部154の幅方向の両側には、壁部154a、154aが設けられている。壁部154a、154aは、ガイド部154の長手方向の全長に亘って設けられている。壁部154a、154aは、キャッチ部153の外周を囲む壁部153aに接続されている。
キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部が、ガイド部154側にも流れる。
【0109】
図10に示すように、ガイド部154は、キャッチ部153から離れるにつれて下方に傾斜している。ガイド部154の先端154bは、第2ボックス12の壁部120との間に隙間をあけて設けられている。
壁部120では、ガイド部154の延長上となる位置に油路126aの一端126a1が開口している。油路126aは、周壁部121の外周121cに設けたリブ126内に設けられている。
ガイド部154の先端154bと油路126aの一端126a1は、回転軸X方向(図10における左右方向)で間隔をあけて対向している。
そのため、デフケース50で掻き上げられたのち、ガイド部154を自重で流下するオイルOLの一部が、油路126aに流入すると共に、残りの一部が、壁部120の内周を伝って下方に移動するようになっている。
【0110】
図12は、モータ2周りのオイルOLの流れを説明する図である。図12では、図2とは異なる断面が示されている。
図13は、カバー部材9Bを説明する図である。図13は、図12のA領域の拡大図である。
図14は、コイルエンド253b周りのオイルOLの流れを説明する図である。図14は、図12におけるC-C断面の模式図である。
図15は、カバー部材9Bの仕切壁95を説明する図である。図15は、図14のA-A断面の模式図である。
なお、図14では、カバー部材9Bの大きさを誇張して記載している。また、図14では、収容室K内におけるコイルエンド253bが配置される領域を、クロスハッチングを付して仮想線で示している。また、図14では、ドライブシャフトDAを破線で示している。図15では、仕切壁95の位置を判り易くするために、仕切壁95の部分にクロスハッチングを付してある。
【0111】
前記したように、第2ボックス12のリブ126内には、オイルOLが流入する油路126aが形成されている(図10参照)。リブ126は、第2ボックス12の周壁部121の外周121cから外方に膨出して、油路126aを囲んでいる。
【0112】
図12に示すように、リブ126は、第2ボックス12の他端側の接合部123から、一端側の接合部122まで及んで形成されている。
リブ126の内部の油路126aは、長手方向の一端126a1が、接合部123の端面に開口している。油路126aは、接合部122近傍まで延びている。油路126aの他端126a2には、内径側に延びる油孔170bが連絡している。
油孔170bは、前記した支持壁部111の油孔170aに対向する位置に開口している。本実施形態では、周壁部121側の油孔170bと、支持壁部111側の油孔170aとが、油路126aとモータ室Saとを連通させる油路170を構成している。
【0113】
油路126aの一端126a1側には、内径側に延びる油孔171bが連絡している。
油孔171bは、前記した支持壁部111の油孔171aに対向する位置に開口している。本実施形態では、周壁部121側の油孔171bと、支持壁部111側の油孔171aとが、油路126aとモータ室Saとを連通させる油路171を構成している。
【0114】
本実施形態では、デフケース50の回転によって掻き上げられたオイルOLの一部が、オイルキャッチ部15に到達する。オイルキャッチ部15内のオイルOLの一部が、ガイド部154から油路126aに排出されたのち、油路170、171を通って、モータ室Saに供給される。
【0115】
図12に示すように、油路170の鉛直線VL方向下側には、前記したコイルエンド253aと、当該コイルエンド253aを包むカバー部材9Aが位置している。
油路171の鉛直線VL方向下側には、前記したコイルエンド253bと、当該コイルエンド253bを包むカバー部材9Bが位置している。
【0116】
ここで、本実施形態にかかるコイルエンド253a、253bおよび、これらコイルエンド253a、253bを包むカバー部材9A、9Bは、モータ2のティース部252を挟んで互いに対称な形状を成している。
【0117】
図14に示すように、カバー部材9Bは、回転軸Xを囲むリング状を成している。カバー部材9Bは、コイルエンド253bが設けられた領域を囲むように設けられている。
【0118】
図13に示すように、コイルエンド253bは、回転軸Xに沿う向きで設けられた外周面253b1および内周面253b2と、回転軸Xの径方向に沿う向きで設けられた端面253b3と、を有している。以下、外周面253b1と内周面253b2と端面253b3とを合わせて、表面253b4とも表記する。
コイルエンド253bの外周面253b1は、回転軸X方向(図中、左右方向)の幅W1が、内周面253b2の幅W2よりも短い(W1<W2)。そのため、コイルエンド253bの外径側(外周面253b1)には、ティース部252との間に、回転軸X方向の隙間Caが形成されている。
【0119】
図13に示すように、カバー部材9Bは、外周壁90と、内周壁91と、接続壁92と、を有している。外周壁90は、コイルエンド253bの外周面253b1を、間隔をあけて囲む筒状を成している。内周壁91は、コイルエンド253bの内周面253b2に内挿された筒状を成している。接続壁92は、コイルエンド253bの端面253b3と、回転軸X方向に間隔をあけて対向している。
【0120】
接続壁92は、回転軸X方向でコイルエンド253bおよび壁部120とオーバーラップしている。また、接続壁92は、コイルエンド253bの端面253b3に対して略平行に配置されていると共に、外周壁90と内周壁91の端部同士を接続している。
【0121】
外周壁90は、回転軸Xの径方向で、コイルエンド253bおよび支持壁部111とオーバーラップしている。外周壁90の先端には、内径側に延びる係止部90aが設けられている。係止部90aは、外周壁90の先端側を内径側に折り曲げて形成されている。係止部90aは、コイルエンド253bとティース部252との間の隙間Caに挿入されている。
【0122】
内周壁91は、回転軸Xの径方向でコイルエンド253bおよびモータ支持部125とオーバーラップしている。内周壁91は、モータ2の回転軸Xの径方向で、ロータコア21の外周と、ステータコア25のコイルエンド253bとの間を横切るように設けられている。
【0123】
カバー部材9Bは、内周壁91の先端91aを、回転軸X方向からティース部252に当接させると共に、係止部90aをコイルエンド253bのティース部252側の側面に係止させた状態で、コイルエンド253bに取り付けられている。
【0124】
カバー部材9Bがコイルエンド253bに取り付けられると、コイルエンド253bが、カバー部材9Bの外周壁90と内周壁91と接続壁92とで囲まれた空間K内に収容される。この状態において、コイルエンド253bの側方と上方には、カバー部材9Bとの間にオイルOLが流入可能な隙間が形成される。以下、空間Kを、収容室Kとも表記する。すなわち、カバー部材9Bの収容室Kは、ステータコア25の少なくとも一部であるコイルエンド253bを収容する。
ここで、収容室Kは、モータ室Sa内において、モータ2のロータコア21から離間された空間である。また、収容室Kは、歯車機構3が位置する空間であるギア室Sbから離間された空間である。なお、離間された空間とは、壁によって他の空間から隔離された空間を意味する。収容室Kは、外周壁90と内周壁91と接続壁92によってロータコア21や、ギア室Sbから隔離された空間を構成する。
【0125】
図14に示すように、回転軸X方向から見て、カバー部材9Bの内部に形成される収容室Kは、回転軸Xを、間隔をあけて囲む略環状を成している。なお、図14では、収容室K内におけるコイルエンド253bが配置される領域を、クロスハッチングを付した仮想線で示している。
【0126】
図13に示すように、カバー部材9Bをコイルエンド253bに取り付けると、収容室Kが、第1ボックス11の内部のモータ室Saから隔離して形成される。収容室Kの容積は、モータ室Saの容積よりも小さい。
【0127】
ここで、図13に示すように、回転軸Xの径方向におけるカバー部材9Bの外周壁90と、第1ボックス11の支持壁部111との間には、隙間CL1が形成される。
また、回転軸Xの径方向におけるカバー部材9Bの内周壁91と、第2ボックス12のモータ支持部125との間には、隙間CL2が形成される。カバー部材9Bの接続壁92と、第2ボックス12の壁部120との間には、回転軸X方向の隙間CL3が形成される。
【0128】
図13に示すように、カバー部材9Bの外周壁90には、当該外周壁90を貫通する貫通孔901と、貫通孔901を囲む筒壁部902が形成されている。
回転軸Xの径方向から見て外周壁90では、貫通孔901が、コイルエンド253bと重なる位置関係で設けられている。貫通孔901を囲む筒壁部902は、鉛直線VL方向の上側に突出している。
図14に示すように、貫通孔901と筒壁部902は、回転軸Xを通る水平線HLよりも上側に形成されている。
【0129】
図13に示すように、外周壁90において貫通孔901は、カバー部材9Bをコイルエンド253bに取り付けた際に、油孔171aと鉛直線VL方向で間隔をあけて対向する位置に設けられている。
本実施形態では、貫通孔901を囲む筒壁部902は、油孔171aの内径よりも大きい外径で形成されている。そのため、筒壁部902は、油孔171aが開口する支持壁部111との間に鉛直線VL方向の隙間をあけて設けられている。
なお、筒壁部902は、油孔171aの内径よりも小さい外径で形成されていても良い。この場合には、筒壁部902が油孔171aに挿入された状態で配置されるようにしても良い。
【0130】
図14に示すように、回転軸X方向から見て、カバー部材9Bの外周壁90では、鉛直線VL方向における最も高い位置に、貫通孔901が設けられている。
図14において鉛直線VLは、回転軸Xに直交する直線であり、貫通孔901は、鉛直線VLに対して同心となる位置で、外周壁90を鉛直線VL方向に貫通している。
【0131】
回転軸X方向から見て、貫通孔901に隣接する位置には、外周壁90を鉛直線VL方向に貫通する貫通孔903が形成されている。
回転軸X方向から見て、貫通孔903は、貫通孔901に対して回転軸X周りの周方向にオフセットしている。貫通孔903は、貫通孔901と共に、回転軸Xを通る水平線HLよりも上側に位置している。ここで、「隣接」とは、貫通孔903が貫通孔901の近くに配置されている状態を意味する。
【0132】
図14に示すように、貫通孔901、903は、カバー部材9Bの内側の収容室Kと、外側のモータ室Saとを、それぞれ連通している。
貫通孔901の上方には、前記した油路171が開口している。そのため、油路171から排出されるオイルOLが、貫通孔901からカバー部材9Bの内側の収容室K内に流入するようになっている。
【0133】
収容室Kの内部には、回転軸X周りの周方向で隣り合う貫通孔901、903の間に、仕切壁95が設けられている。仕切壁95は、収容室Kの内部空間を仕切る仕切部を構成する。仕切壁95もまた、回転軸Xを通る水平線HLよりも上側に位置している。
収容室Kは、仕切壁95により、貫通孔901が開口する一端から貫通孔903が開口する他端まで、回転軸X周りの周方向に略一周するオイルOLの流路を形成する。
貫通孔901は、形成された流路へのオイルOLの導入口であり、貫通孔903は、オイルOLの排出口となっている。
【0134】
図15に示すように、仕切壁95は、コイルエンド253bがカバー部材9Bで包まれた状態において、カバー部材9Bの外周壁90、内周壁91および接続壁92と、コイルエンド253bの表面235b4との隙間を塞ぐように設けられている。
なお、仕切壁95は、カバー部材9Bで包む前に、コイルエンド253bの外形に倣う形状に予め形成されていても良い。また、仕切壁95は、カバー部材9Bで包む前に、収容室K内に液体状のシール材を予め充填し、コイルエンド253bをカバー部材9Bで包む過程でシール材がコイルエンド253bの外形に倣うように変形させても良い。シール材は、所定時間経過後に固まる性質を有するものであればよい。
【0135】
図16は、カバー部材9Aを説明する図である。図16は、図12のB領域の拡大図である。
図17は、コイルエンド253a周りのオイルOLの流れを説明する図である。図17は、図16におけるA-A断面の模式図である。
【0136】
図16に示すように、カバー部材9Aは、前記したカバー部材9Bと同じ構成を有している。
カバー部材9Aは、外周壁90と、内周壁91と、接続壁92と、を有している。外周壁90は、コイルエンド253aの外周面253a1を、間隔をあけて囲む筒状を成している。内周壁91は、コイルエンド253aの内周面253a2に内挿された筒状を成している。接続壁92は、コイルエンド253aの端面253a3と、回転軸X方向に間隔をあけて対向している。以下、外周面253a1と内周面253a2と端面253a3とを合わせて、表面253a4とも表記する。
【0137】
図16に示すように、接続壁92は、回転軸X方向でコイルエンド253aおよび壁部130とオーバーラップしている。また、接続壁92は、コイルエンド253aの端面253a3に対して略平行に配置されていると共に、外周壁90と内周壁91の端部同士を接続している。
【0138】
外周壁90は、回転軸Xの径方向で、コイルエンド253aおよび支持壁部111とオーバーラップしている。外周壁90の先端には、内径側に延びる係止部90aが設けられている。係止部90aは、外周壁90の先端側を内径側に折り曲げて形成されている。係止部90aは、コイルエンド253aとティース部252との間の隙間Caに挿入されている。
【0139】
内周壁91は、回転軸Xの径方向でコイルエンド253aおよびモータ支持部135とオーバーラップしている。内周壁91は、モータ2の回転軸Xの径方向で、ロータコア21の外周と、ステータコア25のコイルエンド253aとの間を横切るように設けられている。
【0140】
カバー部材9Aもまた、内周壁91の先端91aを、回転軸X方向からティース部252に当接させると共に、係止部90aをコイルエンド253aのティース部252側の側面に係止させた状態で、コイルエンド253aに取り付けられている。
【0141】
カバー部材9Aがコイルエンド253aに取り付けられると、コイルエンド253aが、カバー部材9Aの外周壁90と内周壁91と接続壁92とで囲まれた空間K(収容室K)内に収容される。この状態において、コイルエンド253aの側方と上方には、カバー部材9Aとの間にオイルOLが流入可能な隙間が形成される。すなわち、カバー部材9Aの収容室Kは、ステータコア25の少なくとも一部であるコイルエンド253aを収容する。また、カバー部材9Aの収容室Kは、モータ室Sa内においてモータ2のロータコア21から隔離された空間である。収容室Kの容積は、モータ室Saの容積よりも小さい。
【0142】
図17に示すように、カバー部材9Aの外周壁90には、当該外周壁90を貫通する貫通孔901と、貫通孔901を囲む筒壁部902が形成されている。
図16に示すように、回転軸Xの径方向から見て外周壁90では、貫通孔901が、コイルエンド253aと重なる位置関係で設けられている。
外周壁90において貫通孔901は、カバー部材9Aをコイルエンド253aに取り付けた際に、油路170(油孔170a)と鉛直線VL方向(図中、上下方向)で対向する位置に設けられている。
【0143】
図17に示すように、回転軸X方向から見て、貫通孔901に隣接する位置には、外周壁90を鉛直線VL方向に貫通する貫通孔903が形成されている。
回転軸X方向から見て、貫通孔903は、貫通孔901に対して回転軸X周りの周方向にオフセットしている。貫通孔903は、貫通孔901と共に、回転軸Xを通る水平線HLよりも上側に位置している。
【0144】
カバー部材9Aでは、回転軸X周りの周方向で隣接する貫通孔901、903の間に、仕切壁95が設けられている。仕切壁95は、収容室Kの内部空間を仕切る仕切部を構成する。仕切壁95もまた、回転軸Xを通る水平線HLよりも上側に位置している。
カバー部材9Aの内部には、仕切壁95により、貫通孔901が開口する一端から貫通孔903が開口する他端まで、回転軸X周りの周方向に略一周するオイルOLの流路が形成される。
【0145】
図14に示すように、カバー部材9Bの収容室K内を略一周したオイルOLは、貫通孔903からモータ室Saに排出される。図17に示すように、カバー部材9Aの収容室K内を略一周したオイルOLもまた、貫通孔903からモータ室Saに排出される。
図12に示すように、モータ室Saに排出されたオイルOLは、前記した油路180、181を通ってオイル溜り部128に移動可能となっている。オイル溜り部128と連通するギア室Sbには、ストレーナ80が配置されている。
【0146】
以下、ストレーナ80について説明する。
図18は、ストレーナ80を説明する図である。図18は、ストレーナ80の断面を示している。また、図18は、デフケース50が回転した際に、鉛直線VL方向における最も低い位置を通る大径歯車部431を仮想線で記載している。
【0147】
ストレーナ80は、第4ボックス14のギア室Sb内に配置されている。ストレーナ80は、ギア室Sb内でプレート部材PTの下側に配置されている。ストレーナ80は不図示の固定具により、第4ボックス14の内壁に固定されている。
【0148】
図18に示すように、ストレーナ80は、本体部81と吸引部82とを備える。本体部81は、例えば中空の容器である。吸引部82は、例えば、本体部81から突出する筒状部材である。
【0149】
本体部81は、アッパケース811とロアケース812とから構成された中空の容器である。アッパケース811とロアケース812との間には、オイルOLを濾過するフィルタFが挟み込まれている。フィルタFには、例えば公知の不織布などを用いることができる。
【0150】
吸引部82は、ロアケース812を貫通する貫通孔820と、当該貫通孔820を囲む筒壁部821と、から構成されている。吸引部82における筒壁部821の先端は、貫通孔820が開口した開口端82aとなっている。すなわち、吸引部82は、ストレーナ80の吸引口を構成する。
【0151】
吸引部82は、本体部81から回転軸X方向における第2ボックス12側に突出している。吸引部82の開口端82aは、第2ギア室Sb2において回転軸X方向でオイル溜り部128と対向する位置に設けられている。
【0152】
図18に示すように、ストレーナ80が第4ボックス14に固定された状態において、吸引部82は、回転軸X方向におけるコイルエンド253bと歯車機構3との間に位置している。本体部81は、アッパケース811に接続された配管PIを介して、本体ボックス10の外部に設けられたオイルポンプ85の吸引口85a(図2参照)に接続している。オイルポンプ85は、例えば、不図示のモータにより駆動される電動オイルポンプを用いることができる。オイルポンプ85は、不図示の制御装置により駆動を制御されている。
【0153】
図2に示すように、オイルポンプ85の吐出口85bは、不図示の配管を介して、本体ボックス10の上部に形成された油孔Ha、Hcに接続している。
図2に示すように、油孔Haは、第4ボックス14の支持壁部146の遊星減速ギア4の上方に形成されている。油孔Hcは、第3ボックス13における接続壁136の上方に形成されている。
【0154】
図18に示すように、ストレーナ80が第4ボックス14に固定された状態において、吸引部82は、ギア室Sb内に貯留されたオイルOLに浸かっている。この状態において、吸引部82の開口端82aは、以下の条件を満たす位置に配置されている。
(i)開口端82aとコイル253の表面253Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aとコイルエンド253bの外周面253b1とを結ぶ距離が最短距離L1となる。
なお、コイル253の表面253Sとは、基部253cの外周面253c1、内周面253c2、及びコイルエンド253a、253bの表面253a4、253b4(図13図16参照)から構成されるコイル253全体の表面のことである。
(ii)開口端82aと歯車機構3の表面3Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aと遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431a(仮想線参照)とを結ぶ距離が最短距離L2となる。
なお、歯車機構3の表面3Sとは、遊星減速ギア4、差動機構5におけるギア室Sbとの境界面のことである。
(iii)最短距離L1は、最短距離L2よりも短い(L1<L2)。
【0155】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
図1に示すように、動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、歯車機構3(遊星減速ギア4、差動機構5)と、ドライブシャフトDA、DB(駆動軸)と、が設けられている。
【0156】
図2に示すように、モータ2の駆動により、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0157】
図3に示すように、遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっている。段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0158】
サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、第4ボックス14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。
【0159】
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432の外径R2は、大径歯車部431の外径R1よりも小さくなっている(図3参照)。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速される。減速された回転は、デフケース50(差動機構5)に出力される。
【0160】
そして、デフケース50が、入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフトDA、DBが回転軸X回りに回転する。これにより動力伝達装置1が搭載された電気自動車EVの左右の駆動輪W、W(図1参照)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0161】
図2に示すように、第4ボックス14(ギア室Sb)の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。そのため、貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50(段付きピニオンギア43)により掻き上げられる。掻き上げられたオイルOLにより、歯車機構3全体が潤滑される。
具体的には、掻き上げられたオイルOLによって、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。
【0162】
図8に示すように、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
第4ボックス14の上部には、オイルキャッチ部15が設けられている。オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。デフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入する。
【0163】
図12に示すように、オイルキャッチ部15に流入したオイルOLの一部は、キャッチ部153からガイド部154側に流れたのち、油路126aに流入する。油路126aに流入したオイルOLは、油路170、171から排出される。
【0164】
図14および図17に示すように、油路171、170から排出されるオイルOLの多くは、油路171、170の鉛直線VL方向の下側でそれぞれ開口する貫通孔901、901から、カバー部材9B、9Aの内部に流入する。前記したようにカバー部材9B、9Aの内部には、それぞれ仕切壁95、95が設けられている。
【0165】
図14に示すように、カバー部材9B内の収容室Kには、仕切壁95により、貫通孔901が設けられた領域から貫通孔903が設けられた領域まで、回転軸X周りの周方向に略一周するオイルOLの流路が形成されている。図17に示すように、カバー部材9A内の収容室Kもまた、仕切壁95により、貫通孔901が設けられた領域から貫通孔903が設けられた領域まで、回転軸X周りの周方向に略一周するオイルOLの流路が形成されている。
【0166】
カバー部材9B、9Aでは、収容室K内に流入したオイルOLの多くをそれぞれ内部に貯留できるようになっている。
さらに、図14に示すように、カバー部材9Bでは、貫通孔901を囲む筒壁部902が、鉛直線VL方向の上側に突出している。鉛直線VL方向における貫通孔903の下端は、筒壁部902の上端よりも、高さh分だけ下側に位置している。そのため、収容室K内に流入したオイルOLは、貫通孔903の下端の高さまで、収容室K内に貯留できるようになっている。また、図17に示すように、カバー部材9Aにおいても、貫通孔901を囲む筒壁部902が、鉛直線VL方向の上側に突出している。鉛直線VL方向における貫通孔903の下端は、筒壁部902の上端よりも、高さh分だけ下側に位置している。そのため、収容室K内に流入したオイルOLは、貫通孔903の下端の高さまで、収容室K内に貯留できるようになっている。
【0167】
図14および図17に示すように、収容室Kには、貫通孔901からオイルOLが連続的に流入する。収容室Kに流入したオイルOLは、収容室K内を回転軸X周りの周方向における一方向(図14および図17における矢印方向)に通流したのち、貫通孔903から収容室Kの外部であるモータ室Sa内に排出される。
【0168】
この際に、コイルエンド253b、253aは、周方向のほぼ全周に亘って収容室K内のオイルOLに油没している。オイルOLは、収容室Kを貫通孔903に向けて移動する過程で、コイルエンド253b、253aとの熱交換を行う。熱交換によってコイルエンド253bは冷却され、オイルOLは温められる。
【0169】
ここで、コイル253を構成する巻線の材質は銅であり、熱伝導性が高い。そのため、コイルエンド253a、253bが冷却されると、熱伝導によってコイル253全体が冷却され、最終的にヨーク部251やティース部252を含むステータコア25全体が冷却されることになる。
【0170】
図14および図17に示すように、カバー部材9Aの貫通孔903およびカバー部材9Bの貫通孔903からそれぞれ排出されたオイルOLは、自重によりモータ室Saの下方に移動して、モータ室Saの下部に貯留される。
図12に示すように、油路180、181は、鉛直線VL方向下側に向かって開口している。モータ室Saは、鉛直線VL方向の下側領域において、前記した油路180、181を介してオイル溜り部128と連通している。
【0171】
デフケース50が回転軸X回りに回転すると、回転するデフケース50によりギア室Sb内のオイルOLが掻き上げられる。そうすると、モータ室Saからギア室Sbに向かうオイルOLの流れが形成されて、オイル溜り部128内のオイルOLがギア室Sb側に移動する。
オイル溜り部128は、油路180、181を介してモータ室Saと連通している。従って、モータ室Saの下部に滞留するオイルOLが、油路180、181を介して、オイル溜り部128側に流入する。
【0172】
また、オイルポンプ85を駆動させることで、オイルポンプ85の吸引によって負圧が発生する。この負圧により、オイル溜り部128内のオイルOLは、ギア室Sb側への移動が促進される(図18における矢印参照)。
そうすると、モータ室Saの下部に滞留するオイルOLは、油路180、181を介したオイル溜り部128側への移動が促進される。
【0173】
図18に示すように、第2ギア室Sb2には、ストレーナ80の吸引部82が位置している。吸引部82は、油路180、181側に開口端82aを向けて配置されている。
油路180、181を通ってオイル溜り部128からギア室Sb側に移動したオイルOLの一部は、回転するデフケース50が位置する第1ギア室Sb1に到達する前に、第2ギア室Sb2内に位置する吸引部82の開口端82aから、ストレーナ80の本体部81に吸入される。
本体部81に吸入されたオイルOLは、フィルタFで濾過されたのち、配管PIを介して吸引口85a(図2参照)からオイルポンプ85に吸引される。
【0174】
図2に示すように、オイルポンプ85に吸引されたオイルOLは、所定の圧力に加圧されたのち吐出口85bから吐出される。吐出されたオイルOLは、不図示の配管を介して、本体ボックス10内部の油孔Ha、Hcにそれぞれ供給される。
【0175】
図2に示すように、油孔Haに供給されたオイルOLは、第4ボックス14内の遊星減速ギア4とデフケース50周りを潤滑する。油孔Hcに供給されたオイルOLは、接続壁136を伝ってベアリングB1を潤滑する。
【0176】
図12に示すように、第2ギア室Sb2内のオイルOLのうち、ストレーナ8の吸引部82から吸引されなかったオイルOLは、デフケース50の回転により生じた流れによって第1ギア室Sb1に移動したのち、回転するデフケース50によって掻き上げられる。
【0177】
ここで、例えば冬季などの外気温が低い低温環境下では、オイルOLの粘度が高くなる、又は、オイルOLがシャーベット状になることがある。
かかる場合、オイルOLの流動性が低いために、オイルポンプ85へのオイルOLの吸引量が少なくなる。吸引量が少なくなると、オイルポンプ85からのオイルOLの吐出量もまた少なくなる。
【0178】
電気自動車EVでは、モータ2が熱源となる。具体的には、モータ2のうち、電流が流れるコイル253(コイルエンド253a、253b、基部253c)が熱源となる。
【0179】
本実施形態では、図12に示すように、オイルキャッチ部15でキャッチされたオイルOLが、油路126aを通って、熱源であるコイル253のうちのコイルエンド253a、253bに供給される。
油路126aから供給されたオイルOLは、コイルエンド253a、253bを覆うカバー部材9A、9Bの内部を通過する際に、コイルエンド253a、253bとの熱交換で温められるようになっている。
【0180】
そのため、コイルエンド253a、253bとの熱交換でオイルOLを温めない場合に比べて、オイルOLの流動性が高くなる。
前記したように、コイルエンド253a、253bとの熱交換で温められたオイルOLは、モータ室Saの下部や、モータ室Saの下部に位置するオイル溜り部128に戻されるようになっている。
【0181】
電動オイルポンプ85の駆動により、ストレーナ80側に吸引されるオイルOLは、モータ室Saやオイル溜り部128内のオイルOLである。
このモータ室Saやオイル溜り部128内に戻されるオイルOLが、コイルエンド253a、253bとの熱交換で温められていると、流動性が高められたオイルOLが、電動オイルポンプ85側に吸引されることになる。
【0182】
よって、コイルエンド253a、253bとの熱交換でオイルOLを温めない場合に比べて、オイルOLの流動性が高くなる。
これにより、オイルポンプ85が、低温環境下において高粘度またはシャーベット状になったオイルOLを吸引することを低減できる。そのため、オイルポンプ85によるオイルOLの吐出量が減少することを低減できる。
【0183】
また、図18に示すように、吸引部82の開口端82aからコイルエンド253bの外周面253b1までの最短距離L1を、吸引部82の開口端82aから遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aまでの最短距離L2よりも短く設定している(L1<L2)。
これにより、吸引部82の開口端82aが、熱源であるコイルエンド253bに近づけられると共に、歯車機構3から遠ざけられる。
よって、オイルポンプ85は、温められたオイルOLを取り入れることができる。
【0184】
また、デフケース50が回転軸X周りに回転して、ギア室Sb内のオイルOLを掻き上げることにより、ギア室Sb内のオイルOLの油面の高さが局所的に低くなる。かかる場合、ギア室Sb内にオイルポンプの吸入口が位置していると、エア吸いなどを生じる可能性がある。
上記のように、吸引部82の開口端82aを、歯車機構3から遠ざけて配置することで、定常時のデフケース50の回転に伴って油面が低下した際の影響(例えば電動オイルポンプ85によるエア吸いなど)を好適に低減できる。
【0185】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
モータ2と、
モータ2の下流に接続された歯車機構3と、
ストレーナ80の吸引部82(ポンプ入口)を介してオイルOLが吸引されるオイルポンプ85(ポンプ)と、を有する。
モータ2のステータコア25は、コイル253を有する。
歯車機構3は、遊星減速ギア4を有する。
吸引部82の開口端82aと、コイル253の表面253Sとを結ぶ距離のうち、吸引部82の開口端82aとコイルエンド253bの外周面253b1とを結ぶ距離が最短距離L1となる。
吸引部82の開口端82aと歯車機構3の表面3Sとを結ぶ距離のうち、吸引部82の開口端82aと遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aとを結ぶ距離が最短距離L2となる。
最短距離L1は、最短距離L2よりも短い。
【0186】
このように構成すると、低温時のポンプの吐出量の減少を低減するための構造を提供することができる。具体的には、ポンプ入口となる吸引部82の開口端82aを、熱源となるモータ2のコイルエンド253bに近づけることにより、コイルエンド253bとの熱交換で温められたオイルOLを吸引できる。これにより、低温時のオイルポンプ85のオイル吐出量の減少を低減することができる。また、吸引部82の開口端82aを歯車機構3から遠ざけることにより、定常時のデフケース50の回転にともなう油面低下の影響を低減することができる。
【0187】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(2)動力伝達装置1は、ステータコア25の少なくとも一部であるコイルエンド253a、253bを収容する収容室Kを有する。
吸引部82には、油路180、181(排出孔)を介して、オイル溜り部128に排出された収容室K内のオイルOLが導入される。
【0188】
収容室Kは、歯車機構3が位置する空間であるギア室Sbから離間された空間である。
この収容室K内で、収容室K内に導入されたオイルOLが、コイルエンド253a、253bとの熱交換で温められる。温められたオイルOLは、最終的に、油路180、181を通って、オイル溜り部128に流入する。
上記のように構成して、油路181に近い位置に、吸引部82を配置すると、温められたオイルOLをオイルポンプ85に優先的に導入できる。
よって、低温環境下でのオイルOLの温度が低いときに、オイルポンプ85へのオイルOLの吸引量の低下に起因して、オイルポンプ85からのオイルOLの吐出量が減少することをより効果的に低減できる。
【0189】
なお、収容室Kからモータ室Saに排出されたのち、油路180、181を介してオイル溜り部128に移動したオイルOLを吸引部82へ導入するための構造としては、例えば下記の態様があるが、本件発明はこれらの態様にのみ限定されるものではない。
(a)吸引部82の開口端82aと油路181の下端との最短距離L20(図18参照)を、吸引部82の開口端82aと遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aとの最短距離L2よりも短くする。
(b)吸引部82と油路180、181とをパイプ等を用いて直接接続する。
(c)油路180、181から排出されたオイルOLを、本体ボックス10に設けられたボックス内油路を介して吸引部82に導入する。
(d)油路180、181から排出されたオイルOLを、吸引部82に向けてガイドするガイドリブ等のガイド部材を、本体ボックス10自身に設ける、若しくは、本体ボックス10に別部材(ガイドプレートなど)として取り付ける。
【0190】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(3)動力伝達装置1は、モータ2と、
モータ2の下流に接続された歯車機構3と、
ストレーナ80の吸引部82を介してオイルOLが吸引されるオイルポンプ85と、
ステータコア25の少なくとも一部であるコイルエンド253a、253bを収容する収容室Kを有する。
吸引部82には、油路180、181(排出孔)を介して排出された収容室K内のオイルOLが導入される。
【0191】
歯車機構3から離間した収容室K内に供給されたオイルOLは、コイルエンド253a、253bとの熱交換により温められる。温められたオイルOLは、最終的に、油路180、181を通ってオイル溜り部128に流入する。
上記の構成により、油路181に近い位置に吸引部82を配置することで、温められたオイルOLを、オイルポンプ85に優先的に導入できる。よって、低温環境下でのオイルOLの温度が低いときに、オイルポンプ85へのオイルOLの吸引量の低下に起因して、オイルポンプ85からのオイルOLの吐出量が減少することをより効果的に低減できる。
【0192】
なお、油路180、181を介してオイル溜り部128に移動したオイルOLを吸引部82へ導入するための構造としては、例えば下記の態様があるが、本件発明はこれらの態様にのみ限定されるものではない。
(a)吸引部82の開口端82aと油路181の下端との最短距離L20(図18参照)を、吸引部82の開口端82aと遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aとの最短距離L2よりも短くする。
(b)吸引部82と油路180、181とをパイプ等を用いて直接接続する。
(c)油路180、181から排出されたオイルOLを、本体ボックス10に設けられたボックス内油路を介して吸引部82に導入する。
(d)油路180、181から排出されたオイルOLを、吸引部82に向けてガイドするガイドリブ等のガイド部材を、本体ボックス10自身に設ける、若しくは、本体ボックス10に別部材(ガイドプレートなど)として取り付ける。
【0193】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(4)吸引部82は、油路180、181側に向かって開口している。
【0194】
油路180、181は、コイルエンド253a、253bとの熱交換により温められたオイルOLのオイル溜り部128への流入口である。この流入口を向いて、吸引部82が開口していることで、温められたオイルOLをオイルポンプ85に吸引できる。
これにより、低温環境下でのオイルOLの温度が低いときに、オイルポンプ85へのオイルOLの吸引量の低下に起因して、オイルポンプ85からのオイルOLの吐出量が減少することをより効果的に低減できる。
【0195】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(5)モータ室Sa内において収容室Kは、モータ2のロータコア21から離間された空間として形成されている。
【0196】
収容室Kを、モータ2のロータコア21から離間した空間として、モータ室Sa内に形成することで、収容室Kの容積を小さくできる。
収容室Kを、モータ2のロータコア21から離間させずに形成する場合、収容室Kの容積が、モータ2のロータコア21の分だけ大きくなる。
よって、モータ2のロータコア21から離間した空間として、モータ室Sa内に形成することで、離間させない場合と比べて、収容室Kの容積を小さくすることができる。
これにより、オイルOLの量が少なくなっても、オイルOLとコイルエンド253a、253bとの接触面積を増やすことができるので、熱交換効率を向上することができる。
【0197】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(6)収容室Kは、モータ2のステータコア25のコイルエンド253a、253bを包む形状を有する。
【0198】
例えば、コイルエンド253a、253bを収容室Kで包まない場合、コイルエンド253a、253b周りにオイルOLを留めておくことができない。そのため、コイルエンド253a、253bとオイルOLとが接触している面積は少なくなるので、熱交換の効率が下がる。この場合において、熱交換の効率を上げるためには、油路126aからコイルエンド253a、253bへ供給するオイルOLの量を増やす必要がある。そうすると、オイルOLの使用量が増えるので、動力伝達装置1全体の重量の増加や、コストアップにつながる。
そこで、上記のように構成すると、コイルエンド253a、253b周りにオイルOLを留めておくことができる。そのため、コイルエンド253a、253bとオイルOLとの接触面積を増やすことができる。よって、オイルOLは、少ない量でもステータコア25との接触面積を増やすことができ、効率よく熱交換を行うことができる。
【0199】
ここで、本実施形態では、収容室Kは、回転軸X周りの周方向で、コイルエンド253a、253bを全周に亘って包むリング状を成しているものを例示したが、この態様に限定されるものではない。例えば、収容室Kは、回転軸X周りの周方向で、少なくともコイルエンド253a、253bの一部を包む弧状部分を有していれば良い。
【0200】
すなわち、動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(7)回転軸X方向から見て、収容室Kは、モータ2のステータコア25のコイルエンド253a、253bを包む弧状部分を含む形状を有する。
【0201】
例えば、回転軸X方向から見た形状が円弧形状を成すカバー部材9A、9Bにより、収容室Kを形成すると共に、コイルエンド253a、253bにおける本体ボックス10内の油面よりも上側に位置する領域を覆うように構成する。
かかる場合、収容室K内に導入されたオイルOLと、コイルエンド253a、253bとの接触時間を長くすることができるので、熱交換の効率を向上できる。
なお、弧状部分を含む形状には、環状形状、切欠きのある環状形状等が含まれる。
「環状形状」の一例は、本実施形態のように、コイルエンド253a、253bを回転軸Xの全周に亘ってカバー部材9A、9Bで包んだ場合に形成される収容室Kの形状が挙げられる。
また、「切欠きのある環状形状」の一例は、図示は省略するが、回転軸X周りの周方向におけるカバー部材9A、9Bの貫通孔901と貫通孔903の間の領域を切欠いた場合に形成される収容室Kの形状が挙げられる。この場合において、収容室Kは、回転軸X方向から見て略C字形状を成している。
【0202】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(8)油路180、181は、上下方向下側(下方側)に向かって開口している。
【0203】
このように構成すると、油路180、181は、真下又は斜め下に向けて開口することで重力を利用して温められたオイルOLを排出できる。これにより、温められたオイルOLの排出効率を高め、低温において吸引部82へ導入される油量を増加することができる。
【0204】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(9)吸引部82は、内部にフィルタFを備えるストレーナ80の吸引口として構成されている。
【0205】
このように構成すると、吸引部82から吸引されたオイルOLを、フィルタFで濾過して不純物が除去されたオイルOLを用いて、各部品の潤滑や冷却を行うことができる。
【0206】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(10)ドライブシャフトDA(駆動軸)は、モータ2の内周を貫通して配置される。モータ2の内周を貫通したドライブシャフトDAは、歯車機構3の下流に接続される。
【0207】
このように構成すると、本体ボックス10内の油面高さを下げて歯車機構3の撹拌抵抗を減らすことができると共に、低温時におけるオイルOLの流量減少を低減することができる。
【0208】
このような構造の動力伝達装置1は、本体ボックス10内において、モータ2、遊星減速ギア4、差動機構5の占める面積が大きく、それぞれの外径方向下側の空間は、小さくなる傾向がある。かかる空間の領域の容積が小さくなると、容積が大きい場合と比べて、同じ量のオイルOLであっても貯留されたオイルOLの高さ(油面高さ)が高くなる傾向がある。油面高さが高くなると、デフケース50の掻き上げによる撹拌抵抗が増えるため、油面高さをできるだけ低くしたいとい要求がある。このような構造の動力伝達装置1において、吸引部82(オイルポンプ入口)を本体ボックス10の第4ボックス14の内壁に形成することで、ギア室Sb内の油面高さを下げやすくなるため、特に有効である。
【0209】
このような動力伝達装置1において、オイルOLの量を減らして油面高さを低くすると、低温環境下のようなオイルOLの温度が低く、オイルOLの流動性が低下した場合に、オイルポンプに吸引されるオイルOLの量が、流動性の低下に応じて少なくなり、オイルポンプから吐出されるオイルOLの量が少なくなる。
【0210】
本件発明の上記した構成を採用すると、オイルOLの流動性が低下した場合であっても、オイルポンプに吸引されるオイルOLの量を確保できるので、オイルポンプから吐出されるオイルOLの量が減少する事態の発生を好適に低減できる。
【0211】
このように、油面高さを下げたい要求がある構造の動力伝達装置に、本件発明の上記した構成を採用することは特に有効である。
【0212】
(変形例1)
以下、変形例1にかかる動力伝達装置1Aについて説明する。
なお、以下の説明では、前記した動力伝達装置1と異なる部分について説明する。前記した動力伝達装置1と共通する部分については同じ符号を付して説明する。
【0213】
図19は、変形例1にかかる動力伝達装置1Aを説明する図である。
図20は、ストレーナ80周りのオイルの流れを説明する図である。図20では、説明の便宜上、動力伝達装置1Aの一部を省略して、回転軸X方向の長さを短くしている。
なお、図20では、デフケース50が回転した際に、鉛直線VL方向における最も低い位置を通る大径歯車部431を仮想線で記載してある。
【0214】
図19に示すように、変形例1にかかる動力伝達装置1Aは、カバー部材9A、9Bを備えていない。そのため、コイルエンド253a、253bは、それぞれカバー部材9A、9Bで包まれることなく、モータ室Sa内に露出している。
【0215】
第2ボックス12の周壁部121は、動力伝達装置1Aの設置状態を基準とした上下方向における下側の領域の径方向の厚さが、他の領域よりも厚くなっている。
この径方向の厚みが厚くなった部分の内側に、オイル溜り部128が形成されている。
【0216】
オイル溜り部128の第3ボックス13A側(図中、右側)の開口が、第1ボックス11Aのフランジ状の接合部112Aにより封止されている。
接合部112Aには、当該接合部112Aを回転軸X方向に貫通する貫通孔112aが形成されている。貫通孔112aは、オイル溜り部128と、第1ボックス11Aと第3ボックス13Aとの間に形成される空間Scとを連通している。
この空間Scは、鉛直線VL方向の下側の領域で、モータ室Saに連通している。そのため、モータ室Saは、空間Scと貫通孔112aを介して、オイル溜り部128と連通している。
【0217】
図19に示すように、第2ボックス12Aの他端121bでは、フランジ部123の内径側に、モータ支持部125を支持するための梁部120Aが設けられている。梁部120Aは、フランジ部123の内周とモータ支持部125の外周とに跨がって設けられている。
梁部120Aは、回転軸X周りに周方向に間隔を開けて複数設けられている。回転軸X周りの周方向で隣り合う梁部120A、120Aの間は、モータ室Saとギア室Sb(第2ギア室Sb2)とを連通する開口120bとなっている。
【0218】
モータ支持部125は、回転軸Xを間隔をあけて囲むと共に、モータ室Sa内に延出している。モータ支持部125の先端側は、コイルエンド253bの内側に挿入されている。
モータ支持部125の先端部は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
モータ支持部125の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部125で支持されている。
【0219】
動力伝達装置1Aでは、モータ室Saは、第1ボックス11A内の、第2ボックス12の梁部120Aと、第3ボックス13Aの壁部130との間に形成されている。
また、ギア室Sbは、第4ボックス14内の第2ボックス12の梁部120Aと、第4ボックス14の周壁部141との間に形成されている。モータ室Saとギア室Sbとは、梁部120Aの開口120bを介して連通している。
【0220】
ここで、ストレーナ80は、第4ボックス14内に固定されている。図20に示すように、ストレーナ80の吸引部82は、回転軸X方向におけるコイルエンド253bと歯車機構3との間に位置している。ストレーナ80の吸引部82は、ギア室Sb内に貯留されたオイルOLに浸かっている。この状態において、吸引部82の開口端82aは、以下の条件を満たす位置に配置されている。
(i)開口端82aとコイル253の表面253Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aとコイルエンド253bの外周面253b1とを結ぶ距離が最短距離L1となる。
(ii)開口端82aと歯車機構3の表面3Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aと遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aとを結ぶ距離が最短距離L2となる。
(iii)最短距離L1は、最短距離L2よりも短い(L1<L2)。
【0221】
また、図19に示すように、変形例1にかかる動力伝達装置1Aでは、オイルポンプ85の吐出口85bは、不図示の配管を介して、本体ボックス10の上部に形成された油孔Ha、Hb、Hcに接続している。油孔Haは、第4ボックス14の支持壁部146の遊星減速ギア4の上方に形成されている。油孔Hbは、第2ボックス12Aのコイルエンド253bとパークロック機構PLの間に形成されている。油孔Hcは、第3ボックス13Aにおける接続壁136の上方に形成されている。
【0222】
かかる構成の動力伝達装置1Aの作用を説明する。
図19に示すように、オイルキャッチ部15に流入したオイルOLの一部は、ガイド部154から油路126aへ排出される。油路126aを通流するオイルOLは、油路170、171から排出される。
【0223】
図19に示すように、油路170、171から排出されたオイルOLは、熱源であるコイル253のコイルエンド253a、253bとそれぞれ接触する。コイルエンド253a、253bに接触したオイルOLは、これらコイルエンド253a、253bを伝いながら自重によって鉛直線VL方向下側に移動する。
この過程でオイルOLとコイルエンド253a、253bとの間での熱交換で、コイルエンド253a、253bが冷却される一方で、オイルOLが温められる。
これにより、モータ室Saの下部には、熱交換によって温められたオイルOLが貯留される。
【0224】
図19に示すように、オイルポンプ85を駆動させると、オイルポンプ85の吸引力により、本体ボックス10内には、ギア室Sb側に向かうオイルOLの流れが発生する。
具体的には、図20に示すように、モータ室Saに貯留されたオイルOLのうち、コイルエンド253a側に位置するオイルOLの一部は、モータ室Saの下部の空間Scから、連通孔112aを通る。連通孔112aを通ったオイルOLは、オイル溜り部128に流入したのち、第2ギア室Sb2に向けて移動する。
また、コイルエンド253b側のオイルOLの一部は、開口120bを通って、第2ギア室Sb2に移動する。
【0225】
図20に示すように、第2ギア室Sb2の下部には、ストレーナ80の吸引部82の開口端82aが位置している。コイルエンド253a、253bとの熱交換で温められたオイルOLは、オイルポンプ85の吸引力によって、吸引部82の開口端82aからストレーナ80内に流入する。ストレーナ80に流入したオイルOLは、オイルポンプ85に吸引される。
よって、オイルポンプ85は、コイルエンド253a、253bとの熱交換で温められて、粘度の下がったオイルOLをストレーナ80の吸引部82から吸引することができる。
【0226】
これにより、オイルポンプ85が、低温環境下において高粘度またはシャーベット状になったオイルOLを吸引することを低減できる。そのため、オイルポンプ85によるオイルOLの吐出量が減少することを低減できる。
【0227】
図19に示すように、オイルポンプ85に吸引されたオイルOLは、不図示の配管を介して、本体ボックス10内部の油孔Ha、Hb、Hcにそれぞれ供給される。油孔Haに供給されたオイルOLは、第4ボックス14内の遊星減速ギア4とデフケース50周りを潤滑する。油孔Hbに供給されたオイルOLは、ベアリングB1と、パークロック機構PLを潤滑する。油孔Hcに供給されたオイルOLは、接続壁136を伝ってベアリングB1を潤滑する。
【0228】
ここで、図20に示すように、変形例1にかかる動力伝達装置1Aでは、吸引部82の開口端82aからコイルエンド253bの外周面253b1までの最短距離L1を、吸引部82の開口端82aから遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aまでの最短距離L2よりも短く設定している(L1<L2)。
これにより、吸引部82の開口端82aが、熱源であるコイルエンド253bに近づけられると共に、歯車機構3から遠ざけられる。よって、オイルポンプ85は、温められたオイルOLを取り入れつつ、定常時のデフケース50の回転に伴って油面が低下した際の影響(例えば電動オイルポンプ85によるエア吸いなど)を受けることを低減できる。
【0229】
本実施形態及び変形例1では、ストレーナ80の開口端82aを第2ギア室Sb2の下方に配置したもの例示したが、ストレーナ80の配置は、この態様にのみ限定されない。
吸引部82の開口端82aからコイル253の表面253Sまでの距離のうちの最短距離が、吸引部82の開口端82aから歯車機構3の表面3Sまでの距離のうちの最短距離よりも短くなる位置であればよい。例えば、変形例2~5のようにしてもよい。
なお、以下の説明では、動力伝達装置1Aと異なる部分について説明し、同じ部分ついては、同じ符号を付して説明する。
【0230】
(変形例2)
図21は、変形例2にかかる動力伝達装置1Bを説明する図である。図21では、説明の便宜上、動力伝達装置1Bの一部を省略して、回転軸X方向の長さを短くして示している。
【0231】
図21に示すように、変形例2にかかる動力伝達装置1Bでは、ストレーナ80は、前記した空間Sc内に配置されている。
ストレーナ80は、アッパケース811とロアケース812の重ね合わせ方向を回転軸Xに沿わせた向きで空間Sc内に配置されている。
ストレーナ80は、アッパケース811を第3ボックス13Aの壁部130側に位置させると共に、ロアケース812を、第1ボックス11Aのフランジ状の接合部112A側に位置させた向きで設けられている。
ストレーナ80は、不図示の固定具により、第3ボックス13Aに固定されている。
【0232】
ストレーナ80は、吸引部82を鉛直線VL方向の上側に向けて設けられている。吸引部82の開口端82aは、モータ室Sa内に位置している。回転軸X方向から見て、ストレーナ80は、吸引部82の開口端82aと、コイルエンド253aとが、重なる位置関係で設けられている。
【0233】
この状態において、吸引部82の開口端82aは、以下の条件を満たす位置に配置されている。
(i)開口端82aとコイル253の表面253Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aとコイルエンド253aの端面253a3とを結ぶ距離が最短距離L3となる。
(ii)開口端82aと歯車機構3の表面3Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aと第1ケース部6の基部61の側面610とを結ぶ距離が最短距離L4となる。
(iii)最短距離L3は、最短距離L4よりも短い(L3<L4)。
【0234】
オイルポンプ85を駆動させると、オイルポンプ85の吸引力により、モータ室Sa内には、ストレーナ80に向かうオイルOLの流れが発生する。
具体的には、図21に示すように、モータ室Saに貯留されたオイルOLの一部は、吸引部82の開口端82a側に移動する(図中、矢印方向)。
【0235】
ここで、ストレーナ80側に吸引されて移動するオイルOLは、熱源であるコイルエンド253aとの熱交換で温められたオイルOLである。
よって、オイルポンプ85は、コイルエンド253aとの熱交換で温められて、粘度の下がったオイルOLをストレーナ80の吸引部82から吸引することができる。
【0236】
これにより、オイルポンプ85が、低温環境下において高粘度またはシャーベット状になったオイルOLを吸引することを低減でき、オイルポンプ85によるオイルOLの吐出量が減少することを低減できる。
【0237】
変形例2にかかる動力伝達装置1Bでは、吸引部82の開口端82aからコイルエンド253aの端面253a3までの最短距離L3を、吸引部82の開口端82aから第1ケース部6の基部61の側面610までの最短距離L4よりも短く設定している(L3<L4)。
【0238】
これにより、吸引部82の開口端82aが、熱源であるコイルエンド253aに近づけられると共に、歯車機構3から遠ざけられる。よって、オイルポンプ85は、温められたオイルOLを取り入れつつ、定常時のデフケース50の回転に伴って油面が低下した際の影響(例えば電動オイルポンプ85によるエア吸いなど)を受けることを低減できる。
【0239】
(変形例3)
図22は、変形例3にかかる動力伝達装置1Cを説明する図である。
図22では、デフケース50が回転する際に、自転しながら回転軸X周りに公転する大径歯車部431が最も下側の領域を通るときの位置を仮想線で示している。
【0240】
図22に示すように、変形例3にかかる動力伝達装置1Cでは、ストレーナ80は、オイル溜り部128内に配置されている。ストレーナ80は、オイル溜り部128内で不図示の固定具により、周壁部121に固定されている。ストレーナ80の吸引部82は、回転軸Xの径方向でコイル253とオーバーラップする位置に配置される。
【0241】
この状態において、吸引部82の開口端82aは、以下の条件を満たす位置に配置されている。
(i)開口端82aとコイル253の表面253Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aとコイルエンド253aの外周面253a1とを結ぶ距離と、コイルエンド253bの外周面253b1とを結ぶ距離がそれぞれ最短距離L5、L5となる。
(ii)開口端82aと歯車機構3の表面3Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aと遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aとを結ぶ距離が最短距離L6となる。
(iii)最短距離L5は、最短距離L6よりも短い(L5<L6)。
【0242】
オイルポンプ85を駆動させると、オイルポンプ85の吸引力により、モータ室Sa内のオイルOLに、オイル溜り部128に向かう流れが発生する。
具体的には、モータ室Saに貯留されたオイルOLのうち、コイルエンド253a側のオイルOLは、連通孔112aを通ってオイル溜り部128に移動する。コイルエンド253b側のオイルOLは、開口120bからギア室Sbを経由して、オイル溜り部128に移動する。
【0243】
ここで、モータ室Sa内からオイル溜り部128側に吸引されて移動するオイルOLは、熱源であるコイルエンド253a、253bとの熱交換で温められたオイルOLである。
よって、オイルポンプ85は、コイルエンド253aとの熱交換で温められて、粘度の下がったオイルOLをストレーナ80の吸引部82から吸引することができる。
【0244】
これにより、オイルポンプ85が、低温環境下において高粘度またはシャーベット状になったオイルOLを吸引することを低減でき、オイルポンプ85によるオイルOLの吐出量が減少することを低減できる。
【0245】
変形例3にかかる動力伝達装置1Cでは、吸引部82の開口端82aからコイルエンド253aの外周面253a1との最短距離L5、吸引部82の開口端82aからコイルエンド253bの外周面253b1との最短距離L5を、吸引部82の開口端82aから遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aまでの最短距離L6よりも短く設定している(L5<L6)。
【0246】
これにより、吸引部82の開口端82aが、熱源であるコイルエンド253a、253bに近づけられると共に、歯車機構3から遠ざけられる。よって、オイルポンプ85は、温められたオイルOLを取り入れつつ、定常時のデフケース50の回転に伴って油面が低下した際の影響(例えば電動オイルポンプ85によるエア吸いなど)を受けることを低減できる。
【0247】
(変形例4)
図23は、変形例4にかかる動力伝達装置1Dを説明する図である。
図23では、説明の便宜上、動力伝達装置1Dの一部を省略して、回転軸X方向の長さを短くしている。
【0248】
図23に示すように、変形例4にかかる動力伝達装置1Dでは、ストレーナ80Aは、ギア室Sb内で、プレート部材PTの下側に配置されている。
ストレーナ80Aは、アッパケース811とロアケース812の重ね合わせ方向を、回転軸Xに直交させた向きで、不図示の固定具により第4ボックス14に固定されている。
【0249】
吸引部82Aは、筒状部材であり、開口端82a側(先端側)をコイルエンド253bとモータ支持部125との間に挿入可能な長さを有している。
吸引部82Aは、ロアケース812からモータ2側にオフセットした位置から回転軸X側の上方に折り曲げられている。吸引部82Aは、プレート部材PTの第2ボックス12側を回転軸X側の上方に向けて直線状に延びたのち、モータ2側に折り曲げられている。吸引部82Aの開口端82aは、コイルエンド253bの内周面253b2とモータ支持部125との間に挿入されている。
【0250】
この状態において、吸引部82Aの開口端82aは、以下の条件を満たす位置に配置されている。
(i)開口端82aとコイル253の表面253Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aとコイルエンド253bの内周面253b2とを結ぶ距離が最短距離L7となる。
(ii)開口端82aと歯車機構3の表面3Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aと第1ケース部6の基部61の側面610とを結ぶ距離が最短距離L8となる。
(iii)最短距離L7は、最短距離L8よりも短い(L7<L8)。
【0251】
オイルポンプ85を駆動させると、オイルポンプ85の吸引力により、モータ室Sa内のオイルOLに、開口端82aに向かう流れが発生する。
具体的には、モータ室Saに貯留されたオイルOLのうち、コイルエンド253b側のオイルOLは、吸引部82Aの開口端82aからストレーナ80A内に流入したのち、オイルポンプ85に吸引される。
【0252】
ここで、ストレーナ80A側に吸引されて移動するオイルOLは、熱源であるコイルエンド253bとの熱交換で温められたオイルOLである。
よって、オイルポンプ85は、コイルエンド253bとの熱交換で温められて、粘度の下がったオイルOLをストレーナ80Aの吸引部82Aから吸引することができる。
【0253】
これにより、オイルポンプ85が、低温環境下において高粘度またはシャーベット状になったオイルOLを吸引することを低減でき、オイルポンプ85によるオイルOLの吐出量が減少することを低減できる。
【0254】
変形例4にかかる動力伝達装置1Dでは、吸引部82Aの開口端82aからコイルエンド253aの内周面253a2までの最短距離L7を、吸引部82の開口端82aから第1ケース部6の基部61の側面610までの最短距離L8よりも短く設定している(L7<L8)。
これにより、吸引部82の開口端82aが、熱源であるコイルエンド253bに近づけられると共に、歯車機構3から遠ざけられる。よって、オイルポンプ85は、温められたオイルOLを取り入れつつ、定常時のデフケース50の回転に伴って油面が低下した際の影響(例えば電動オイルポンプ85によるエア吸いなど)を受けることを低減できる。
【0255】
(変形例5)
図24は、変形例5にかかる動力伝達装置1Eを説明する図である。図24では、説明の便宜上、動力伝達装置1Eの一部を省略して、回転軸X方向の長さを短くしている。
【0256】
図24に示すように、変形例5にかかる動力伝達装置1Eでは、ストレーナ80Bは、モータ室Saにおける空間Scに収容されている。ストレーナ80Bは、アッパケース811とロアケース812の重ね合わせ方向を回転軸Xに沿わせて空間Sc内に配置されていると共に、不図示の固定具により、第3ボックス13Aに固定されている。
【0257】
吸引部82Bは、筒状部材であり、開口端82a側(先端側)をコイルエンド253aとモータ支持部135との間に挿入可能な長さを有している。
吸引部82Bは、ロアケース812からモータ室Sa内を鉛直線VL方向上側に向かって延びたのち、モータ2側に折り曲げられている。吸引部82Bの開口端82aは、コイルエンド253aの内周面253a2とモータ支持部135との間に挿入されている。
【0258】
この状態において、吸引部82Bの開口端82aは、以下の条件を満たす位置に配置されている。
(i)開口端82aとコイル253の表面253Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aとコイルエンド253aの内周面253a2とを結ぶ距離が最短距離L9となる。
(ii)開口端82aと歯車機構3の表面3Sとを結ぶ距離(直線距離)のうち、開口端82aと第1ケース部6の基部61の側面610とを結ぶ距離が最短距離L10となる。
(iii)最短距離L9は、最短距離L10よりも短い(L9<L10)。
【0259】
オイルポンプ85を駆動させると、オイルポンプ85の吸引力により、モータ室Sa内のオイルOLに、開口端82aに向かう流れが発生する。
具体的には、モータ室Saに貯留されたオイルOLのうち、コイルエンド253b側のオイルOLは、吸引部82Aの開口端82aからストレーナ80A内に流入したのち、オイルポンプ85に吸引される。
【0260】
ここで、ストレーナ80B側に吸引されて移動するオイルOLは、熱源であるコイルエンド253aとの熱交換で温められたオイルOLである。
よって、オイルポンプ85は、コイルエンド253aとの熱交換で温められて、粘度の下がったオイルOLをストレーナ80Bの吸引部82aから吸引することができる。
【0261】
これにより、オイルポンプ85が、低温環境下において高粘度またはシャーベット状になったオイルOLを吸引することを低減でき、オイルポンプ85によるオイルOLの吐出量が減少することを低減できる。
【0262】
変形例5にかかる動力伝達装置1Eでは、吸引部82Bの開口端82aからコイルエンド253aの内周面253a2までの最短距離L9を、吸引部82の開口端82aから第1ケース部6の基部61の側面610までの最短距離L10よりも短く設定している(L9<L10)。
これにより、吸引部82Bの開口端82aが、熱源であるコイルエンド253aに近づけられると共に、歯車機構3から遠ざけられる。よって、オイルポンプ85は、温められたオイルOLを取り入れつつ、定常時のデフケース50の回転に伴って油面が低下した際の影響(例えば電動オイルポンプ85によるエア吸いなど)を受けることを低減できる。
【0263】
(変形例6)
図25図27は、変形例6に係るオイルポンプ85の構成例を示す図である。
本実施形態及び変形例1~5では、動力伝達装置1において、オイルOLを濾過して循環させる機構が、オイルポンプ85とストレーナ80とから構成される例を説明した(図18参照)。ただし、オイルOLの循環機構は、本実施形態及び変形例1~5の例に限定されるものではなく、例えば、ストレーナ80を省略して構成しても良い。
【0264】
図25に示すように、ストレーナを省略した場合は、オイルポンプ85の吸引口85aに接続する配管PIの内部に、不純物を濾過するフィルタFを配置しても良い。
図25の場合は、オイルポンプ85を駆動させると、配管PIの端部PEからオイルOLが吸引され、フィルタFを通過してオイルポンプ85の吸引口85aに吸引される。すなわち、配管PIの端部PEが、「ポンプ入口」に対応する。
【0265】
図26も、図25と同様に、配管PIの端部PEが「ポンプ入口」に対応する例であるが、図26では、配管PIの端部PEを拡径させ、端部PEにフィルタFを配置している。図26のように構成することで、フィルタFのサイズを大きくすることができる。
図25および図26の構成の場合、オイルポンプ85と配管PIの両方を本体ボックス10内(図2参照)に配置しても良い。あるいは、オイルポンプ85は本体ボックス10の外部に配置し、配管PIの一部を本体ボックス10内に配置しても良い。この場合は、少なくとも配管PIの端部PEをコイルエンド253aまたはコイルエンド253bの近傍に配置すると良い。
【0266】
図27は配管も省略した例であり、フィルタFを、オイルポンプ85の吸引口85aに直接配置している。この場合、吸引口85aが「ポンプ入口」に対応する。
図27の構成の場合、オイルポンプ85を本体ボックス10内のコイルエンド253aまたはコイルエンド253b近傍に配置し、吸引口85aがコイルエンド253aの表面253a4またはコイルエンド253bの表面253b4と対向する位置に配置すると良い。
【0267】
(その他の変形例)
実施の形態では、オイルポンプ85として電動オイルポンプを用いる例を説明したが、機械式オイルポンプを用いても良い。機械式オイルポンプは、例えば、本体ボックス10のモータ室Sa内に配置し、モータ2の回転を利用して駆動するようにしても良い。
【0268】
「歯車機構」は、歯車を含む機構全体である。例えば、本実施形態の場合は、歯車機構3は、遊星減速ギア4と差動機構5(デファレンシャルギア)とから構成される。
【0269】
「ポンプ入口とモータのステータとの距離」とは、ポンプ入口の開口端部とステータの表面との最短距離を意味する。例えば、本実施形態で示したように、ストレーナ80の吸引部82の開口端82aと、ステータコア25を構成するコイル253のコイルエンド253bの外周面253b1との直線距離L1である。
【0270】
「ポンプ入口と歯車機構との距離」とは、ポンプ入口の開口端部と歯車機構を構成する歯車の表面との最短距離を意味する。例えば、本実施形態で示したように、歯車機構3が複数の歯車(遊星減速ギア4、差動機構5)から構成されている場合は、吸引部82の開口端82aに近いほうの歯車である遊星減速ギア4の大径歯車部431の外周面431aと、吸引部82の開口端82aとの直線距離L2である。
【0271】
本実施形態や変形例1~5では、「歯車機構の表面」として、「遊星減速ギア4における大径歯車部431の外周面431a」や、「差動機構5における第1ケース部6の基部61の端面610」を例示したが、これに限定されない。例えば、大径歯車部431の側面や第1ケース部6の連結梁62の外周面なども「歯車機構3の表面3S」に含まれる。
【0272】
また、「ステータの表面」として、熱源となるコイル253の表面253Sを例示したがこれに限定されない。例えばステータコア25を構成するヨーク部251やティース部252の表面を含めても良い。コイル253の熱は、ヨーク部251やティース部252にも伝達されるため、1つの熱源と考えることができるからである。
【0273】
「ポンプ入口と排出口との距離」とは、ポンプ入口の開口端部と、排出口の開口端部との最短距離を意味する。例えば、本実施形態で示したように、吸引部82の開口端82aと、油路181の下端との直線距離L20である。
なお、「排出口が複数ある場合」における「ポンプ入口と排出口との距離」は、ポンプ入口の開口端に最も近い位置にある排出口と、ポンプ入口との最短距離を意味する。例えば、本実施形態で示したように、油路180、181がある場合、吸引部82に最も近い連通孔181の下端と、吸引部82の開口端部82aとの直線距離である。
【0274】
ここで、上記した本実施形態や変形例1~5では、ストレーナ80は、ポンプ入口としての吸引部82を1つ備える場合を例示したが、この態様に限定されない。ストレーナ80は、ポンプ入口としての吸引部82を複数備えていても良い。
この場合、「ポンプ入口とモータのステータとの距離」とは、相手方(ステータコア25)の表面に最も近い位置にある吸引部82と、ステータコア25の表面との最短距離を意味する。また、「ポンプ入口と歯車機構との距離」とは、相手方(歯車機構3)の表面に最も近い位置にある吸引部82と、歯車機構3の表面との最短距離を意味する。「ポンプ入口と排出口との距離」とは、相手方(排出口(例えば油路181)の開口端部)に最も近い位置にある吸引部82と、油路181の開口端部との最短距離を意味する。
【0275】
「ポンプ入口」は、オイル溜りに接触している、すなわちオイル溜りに浸かっているものであり、かつオイルポンプ85の吸引口85aと接続されているものである。
例えば、本実施形態で示したように、オイルポンプ85の吸引口85aにストレーナ80が接続されている場合は、ストレーナ80の吸引部82がポンプ入口に対応する。
また、例えば、変形例6で示したように、オイルポンプ85の吸引口85aが直接オイル溜りに接触している(浸かっている)場合は、オイルポンプ85の吸引口85aがポンプ入口に対応する。
【0276】
また、本実施形態では、モータを搭載した電気自動車EVの動力伝達装置(パワートレイン装置(変速機、減速機等))を例示したが、これに限定されない。モータを備えるものであれば、電気自動車以外にも適用することができる。
【0277】
ここで、「下流に接続」とは、上流に配置された部品から下流に配置された部品へと動力が伝達される接続関係にあることを意味する。例えば、「モータ2の下流に接続された遊星減速ギア4」という場合は、モータ2から遊星減速ギア4へと動力が伝達されることを意味する。なお、例えば、モータ2の下流に、変速機構、クラッチなどを介して、歯車機構3が接続されていても良い。この場合は、モータ2の動力が変速機構、クラッチなどを介して歯車機構3に動力伝達される接続関係となる。変速機構は、変速機能を有する機構であり、例えば有段変速機構、無段変速機構を含む。
【0278】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0279】
1、1A~1E :動力伝達装置
2 :モータ
3 :歯車機構
4 :遊星減速ギア
21 :ロータコア(ロータ)
25 :ステータコア(ステータ)
80 :ストレーナ
82 :吸引部(ポンプ入り口)
85 :オイルポンプ(ポンプ)
3S :表面
82a :開口端
253a、253b :コイルエンド
253S :表面
253a4 :表面
253b4 :表面
L1~L10 :最短距離
180、181 :連通孔(排出口)
DA :ドライブシャフト(駆動軸)
K :収容室
OL :オイル
VL :鉛直線
X :回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27