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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20240909BHJP
   B60K 17/12 20060101ALN20240909BHJP
【FI】
F16H3/66 A
B60K17/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024504367
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2022044061
(87)【国際公開番号】W WO2023166802
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2022030524
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】下薗 和年
(72)【発明者】
【氏名】石井 繁
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/239550(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/105636(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/183789(WO,A1)
【文献】特開2006-242362(JP,A)
【文献】特開2006-300255(JP,A)
【文献】特開2009-61923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
B60K 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力が入力される入力軸と、
前記入力軸の下流に配置された第1遊星歯車機構と、
前記第1遊星歯車機構の下流に配置された第2遊星歯車機構と、
前記第2遊星歯車機構の下流に配置された出力軸と、を有する装置であって、
前記第1遊星歯車機構は、第1サンギアを有し、
前記第1遊星歯車機構は、第1締結要素を介して第1固定要素と接続される第1キャリアを有し、
前記第1遊星歯車機構は、第1リングギアを有し、
前記第2遊星歯車機構は、前記第1リングギアと接続される第2サンギアを有し、
前記第2遊星歯車機構は、前記出力軸と接続される第2キャリアを有し、
前記第2遊星歯車機構は、第2固定要素と接続される第2リングギアを有し、
前記第1サンギアと、前記第1キャリアと、前記第1リングギアと、のうちの一要素は、第2締結要素を介して、前記第1サンギアと、前記第1キャリアと、前記第1リングギアと、のうちの他の一要素と接続され、
前記第1サンギアは前記入力軸に接続され、
前記第2サンギアは前記入力軸に支持され、
前記第1遊星歯車機構は、ダブルピニオン式遊星歯車機構として構成され、
前記第2遊星歯車機構は、シングルピニオン式遊星歯車機構として構成され、
前記入力軸の軸方向において、前記第1リングギアと前記第1キャリアとの間に第1軸受が配置され、
前記軸方向において、前記第1リングギアと前記第2キャリアとの間に第2軸受が配置され、
前記第1軸受と前記第2軸受とは、前記入力軸の径方向に互いにオフセットして配置され、
前記第1軸受は、前記第1リングギアにおいて前記第2遊星歯車機構側に窪む凹部に内嵌され、
前記第2軸受は、前記第1リングギアにおいて前記第2遊星歯車機構側に突出する凸部に外嵌されている、装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記入力軸の軸方向において、前記第1キャリアと、前記第1サンギアとの間に第3軸受が配置される、装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記入力軸の軸方向において、前記第2サンギアと、前記第2キャリアとの間に第4軸受が配置される、装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記入力軸の軸方向において、前記第2サンギアと、前記第2キャリアとの間に第4軸受が配置される、装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記入力軸に前記駆動力を供給する動力源を有し、
前記第2遊星歯車機構は、前記入力軸の軸方向における前記動力源と前記第1遊星歯車機構との間に配置されている、装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記入力軸は、前記第1サンギア及び前記第2サンギアの内周を貫通すると共に、前記動力源の出力軸と一体に形成されている、装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記第1締結要素は、セレクタブルワンウェイクラッチである、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2つの遊星歯車機構を備える装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-175707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装置において、レイアウト性を向上することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における装置は、
駆動力が入力される入力軸と、
前記入力軸の下流に配置された第1遊星歯車機構と、
前記第1遊星歯車機構の下流に配置された第2遊星歯車機構と、
前記第2遊星歯車機構の下流に配置された出力軸と、を有する装置であって、
前記第1遊星歯車機構は、第1サンギアを有し、
前記第1遊星歯車機構は、第1締結要素を介して第1固定要素と接続される第1キャリアを有し、
前記第1遊星歯車機構は、第1リングギアを有し、
前記第2遊星歯車機構は、前記第1リングギアと接続される第2サンギアを有し、
前記第2遊星歯車機構は、前記出力軸と接続される第2キャリアを有し、
前記第2遊星歯車機構は、第2固定要素と接続される第2リングギアを有し、
前記第1サンギアと、前記第1キャリアと、前記第1リングギアと、のうちの一要素は、第2締結要素を介して、前記第1サンギアと、前記第1キャリアと、前記第1リングギアと、のうちの他の一要素と接続され、
前記第1サンギアは前記入力軸に接続され、
前記第2サンギアは前記入力軸に支持され、
前記第1遊星歯車機構は、ダブルピニオン式遊星歯車機構として構成され、
前記第2遊星歯車機構は、シングルピニオン式遊星歯車機構として構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、レイアウト性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、装置を説明するスケルトン図である。
図2図2は、装置の断面模式図である。
図3図3は、装置の断面模式図である。
図4図4は、歯車機構を説明する図である。
図5図5は、歯車機構を説明する図である。
図6図6は、歯車機構を説明する図である。
図7図7は、差動歯車機構を説明する図である。
図8図8は、第1遊星歯車機構の回転を説明する図である。
図9図9は、第2遊星歯車機構の回転を説明する図である。
図10図10は、差動歯車機構の回転を説明する図である。
図11図11は、装置の締結表を説明する図である。
図12図12は、セレクタブルワンウェイクラッチの締結状態を説明する図である。
図13図13は、入力軸の倒れを説明する図である。
図14図14は、変形例1にかかる装置を説明するスケルトン図である。
図15図15は、変形例2にかかる装置を説明するスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、第1要素(部品、部分等)に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の下流に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の上流に接続された第2要素(部品、部分等)と述べた場合、第1要素と第2要素とが動力伝達可能に接続されていることを意味する。動力の入力側が上流となり、動力の出力側が下流となる。また、第1要素と第2要素は、他の要素(クラッチ、他の歯車機構等)を介して接続されていても良い。
【0009】
「所定方向から見てオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向から見てオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0010】
「所定方向から見てオーバーラップしていない」、「所定方向から見てオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。
「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向から見てオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向から見て、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向から見て、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向から見て第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向から見て第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
軸方向から見て、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0013】
「軸方向」とは、装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0014】
以下、本実施形態について説明する。
本実施形態では、装置の一例として、車両用の動力伝達装置を説明する。
図1は、動力伝達装置1を説明するスケルトン図である。
図2は、動力伝達装置1の断面の模式図である。図2は、動力伝達装置1を車両へ搭載した状態において、動力伝達装置1を車両後方からみたときの断面を示している。
図3は、動力伝達装置1の断面の模式図である。図3は、動力伝達装置1を車両へ搭載した状態において、動力伝達装置1を車両上方からみたときの断面を示している。
【0015】
図1に示すように、動力伝達装置1は、駆動源であるモータ2と、モータ2の出力回転を差動歯車機構8に伝達する歯車機構3と、ドライブシャフトDA、DBと、を有する。なお、モータ2は、電動機機能と発電機機能のうちの少なくとも一方の機能を発揮する回転電機である。
【0016】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、歯車機構3と、差動歯車機構8と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。ドライブシャフトDA、DBは、モータ2の回転軸X1と平行な軸線X5に沿う向きに設けられている。
【0017】
モータ2が駆動されると、モータシャフト20が回転軸X1回りに回転する。モータシャフト20は、モータ2の駆動力が入力される入力軸を構成する。モータシャフト20の回転は、歯車機構3で減速されて差動歯車機構8に伝達される。差動歯車機構8に伝達された出力回転は、ドライブシャフトDA、DBを介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪K、Kに伝達される。
【0018】
図3に示すように、歯車機構3は、第1遊星歯車機構4と、第2遊星歯車機構5と、リダクションギア6と、カウンタギア7と、から構成される。歯車機構3では、第1遊星歯車機構4が、モータ2の下流に接続されている。第2遊星歯車機構5は、第1遊星歯車機構4の下流に接続されている。リダクションギア6は、第2遊星歯車機構5の下流に接続されている。カウンタギア7は、リダクションギア6の下流に接続されている。差動歯車機構8は、歯車機構3のカウンタギア7の下流に接続されている。ドライブシャフトDA、DBは、差動歯車機構8の下流に接続されている。ドライブシャフトDA、DBは、差動歯車機構8から車両左右方向に延びている。ドライブシャフトDA、DBは、それぞれ図示しない左右の駆動輪に接続されている。リダクションギア6は、第2遊星歯車機構5の下流に接続される。リダクションギア6は、第2遊星歯車機構5の回転をカウンタギア7に出力する出力軸を構成する。
【0019】
図3に示すように、動力伝達装置1は、モータ2、歯車機構3および差動歯車機構8を収容するハウジングHSを有する。
ハウジングHSは、モータ2を収容するモータケース10と、歯車機構3を収容するギアケース13と、差動歯車機構8を収容するアクスルケース17と、を有する。
ギアケース13は、回転軸X1方向におけるモータケース10の他端側(図中左側)に接合されている。アクスルケース17は、動力伝達装置1を車両に搭載した状態における、モータケース10及びギアケース13よりも車両前方側に配置されている。
【0020】
図2に示すように、モータケース10は、第1ケース部材11と、第1ケース部材11の一端に接合される第2ケース部材12を有する。第1ケース部材11は、筒状の支持壁部111を有する。支持壁部111の一端111aには、フランジ状の接合部112が設けられている。支持壁部111の他端111bには、フランジ状の接合部113が設けられている。
支持壁部111は、回転軸X1に沿わせた向きで設けられている。支持壁部111の内側には、モータ2が収容される。
【0021】
図2に示すように、支持壁部111の他端111b側には、内径側に延びる壁部110が設けられている。壁部110は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。壁部110の回転軸X1と交差する領域に、モータシャフト20が挿通する開口110aが開口している。
【0022】
壁部110には、開口110aを囲むモータ支持部115が設けられている。モータ支持部115は、壁部110のモータ2側(図中、右側)の面に設けられている。モータ支持部115は、壁部110からモータ2側に延びる筒状を成している。
モータ支持部115は、ロータコア21の端部21bに回転軸X1方向の隙間をあけて対向している。モータ支持部115の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部115で支持されている。
【0023】
図2に示すように、第2ケース部材12は、回転軸X1に直交する壁部120と、接合部122とを有する。
第1ケース部材11から見て第2ケース部材12は、歯車機構3とは反対側(図中、右側)に位置している。第2ケース部材12の接合部122は、第1ケース部材11の接合部112に回転軸X1方向から接合されている。第2ケース部材12と第1ケース部材11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ケース部材11は、接合部112側(図中、右側)の開口が、第2ケース部材12で塞がれている。
【0024】
第2ケース部材12では、壁部120の回転軸X1と交差する領域に、モータ支持部125が設けられている。モータ支持部125は、回転軸X1を間隔を空けて囲む筒状を成している。モータ支持部125は、壁部120の第1ケース部材11側(図中、左側)の面に設けられている。
【0025】
モータ支持部125の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の一端20a側の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部125で支持されている。
【0026】
図2に示すように、モータケース10の他端(図中、左側)には、ギアケース13が回転軸X1方向から接合されている。ギアケース13は、3つのケース部材(第3ケース部材14、第4ケース部材15、第5ケース部材16)から構成される。これら第3ケース部材14、第4ケース部材15、第5ケース部材16は、回転軸X1に沿ってモータケース10から離れる向きにこの順番で重ね合わせられている。
【0027】
第3ケース部材14は、筒状の支持壁部141を有する。支持壁部141の一端141aには、フランジ状の接合部142が設けられている。支持壁部141の他端141bには、フランジ状の接合部143が設けられている。
【0028】
モータケース10から見て第3ケース部材14は、モータ2とは反対側(図中、左側)に位置している。第3ケース部材14の接合部142は、第1ケース部材11の接合部113に回転軸X1方向から接合されている。第3ケース部材14と第1ケース部材11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0029】
支持壁部141は、モータ2の回転軸X1に沿わせた向きで設けられている。支持壁部141の内側には、リダクションギア6とカウンタギア7が収容される。
支持壁部141の一端141a側には、内径側に延びる壁部140が設けられている。壁部140は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。壁部140の回転軸X1と交差する領域に、後記するリダクションギア6のシャフト部62が挿通する開口140aが、設けられている。
【0030】
壁部140には、開口140aを囲むシャフト支持部145が設けられている。シャフト支持部145は、壁部140のモータ2側(図中、右側)の面に設けられている。シャフト支持部145は、壁部140からモータ2側に延びる筒状を成している。
シャフト支持部145の内周には、ベアリングB2が支持されている。リダクションギア6のシャフト部62の外周が、ベアリングB2を介してシャフト支持部145で支持されている。
【0031】
図2に示すように、第4ケース部材15は、筒状の支持壁部151を有する。支持壁部151の一端151aには、フランジ状の接合部152が設けられている。支持壁部151の他端151bには、フランジ状の接合部153が設けられている。
【0032】
第3ケース部材14から見て第4ケース部材15は、モータ2とは反対側(図中、左側)に位置している。第4ケース部材15の接合部152は、第3ケース部材14の接合部143に回転軸X1方向から接合されている。第4ケース部材15と第3ケース部材14とは、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0033】
支持壁部151は、モータ2の回転軸X1に沿わせた向きで設けられている。支持壁部151の内側には、第1遊星歯車機構4と第2遊星歯車機構5が収容される。
支持壁部151の一端151a側には、内径側に延びる壁部150が設けられている。壁部150は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。壁部150の回転軸X1と交差する領域に、後記するリダクションギア6のシャフト部62が挿通する開口150aが設けられている。
【0034】
壁部150の、第3ケース部材14側(図中、右側)の面に、開口150aを囲み、第3ケース部材14側に延びる筒状のシャフト支持部155が設けられている。
シャフト支持部155の内周には、ベアリングB2が支持されている。リダクションギア6のシャフト部62の外周が、ベアリングB2を介してシャフト支持部155で支持されている。
【0035】
図2に示すように、第5ケース部材16は、有底筒状を成している。第5ケース部材16は、回転軸X1に直交する底壁部160と、底壁部160の外周を囲む周壁部161と、周壁部161の一端161aに設けられたフランジ状の接合部162と、を有している。
【0036】
第4ケース部材15から見て第5ケース部材16は、第3ケース部材14とは反対側(図中、左側)に位置している。第5ケース部材16の接合部162は、第4ケース部材15の接合部153に回転軸X1方向から接合されている。第5ケース部材16と第4ケース部材15とは、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0037】
周壁部161は、モータ2の回転軸X1に沿わせた向きで設けられている。周壁部161の内側には、後記するクラッチ35が収容される。
【0038】
周壁部161の一端161a側には、内径側に延びる壁部163が設けられている。壁部163は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。壁部163の回転軸X1と交差する領域に、クラッチ35のクラッチドラム352を囲む開口163aが設けられている。
【0039】
壁部163の、第4ケース部材15側(図中、右側)の面に、開口163aを囲む筒壁部164が設けられている。筒壁部164は、第4ケース部材15側に延びている。
【0040】
図2に示すように、第5ケース部材16では、底壁部160の回転軸X1と交差する領域に、円柱状のシャフト支持部165が設けられている。シャフト支持部165は、回転軸X1に沿う向きに設けられている。シャフト支持部165は、底壁部160の第4ケース部材15側の面からモータ2側に延びている。
【0041】
回転軸X1方向におけるシャフト支持部165の端面には、支持穴166が開口している。シャフト支持部165の端面からみて、支持穴166は、回転軸X1方向でモータ2から離れる向きに窪んでいる。回転軸X1方向からみて、支持穴166は、回転軸X1を中心とする円形の穴である。
【0042】
図2に示すように、支持穴166には、モータシャフト20の他端20b側が挿入されている。回転軸X1の径方向において、モータシャフト20の他端20b側の外周と支持穴166の内周との間には、ニードルベアリングNBが介在している。これにより、モータシャフト20の他端20b側は、シャフト支持部165に相対回転可能に支持されている。
【0043】
図2に示すように、モータケース10とギアケース13を接合したハウジングHS内の空間は、第1ケース部材11の壁部110及び第4ケース部材15の壁部150によって、3つに区画される。
具体的には、回転軸X1方向において、壁部110から第2ケース部材12側の空間がモータ2を収容するモータ室Saである。回転軸X1方向において、壁部110と壁部150との間の空間がリダクションギア6及びカウンタギア7を収容する第1ギア室Sb1である。回転軸X1方向において、壁部150から第5ケース部材16側の空間が、第1遊星歯車機構4及び第2遊星歯車機構5を収容する第2ギア室Sb2である。
【0044】
ここで、図3に示すように、第3ケース部材14には、車両前方側に開口部141cが設けられている。第3ケース部材14は、開口部141cを全周に亘って囲むフランジ状の接合部144を有する。第3ケース部材14の接合部144には、車両前方側から、アクスルケース17が接合される。
【0045】
図3に示すように、アクスルケース17は、ハウジング部171と、円筒部172A、172Bと、を有する。ハウジング部171は、差動歯車機構8を収容する。円筒部172A、172Bは、ハウジング部171の一端部171aと他端部171bにそれぞれ設けられている。円筒部172A、172Bは、軸線X5方向で互いに離れる向きに延びると共に、それぞれドライブシャフトDA、DBを収容する。
【0046】
図3に示すように、ハウジング部171には、車両後方側に開口部171cが設けられている。ハウジング部171は、開口部171cを全周に亘って囲む接合部173を有している。ハウジング部171の接合部173は、第3ケース部材14の接合部144に回転軸X1及び軸線X5に直交する直線Lm方向から接合されている。アクスルケース17と第3ケース部材14とは、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。また、ハウジング部171と第3ケース部材14は、開口部171c、141cを介して互いの内部空間(第1ギア室Sb1、デフ室Sb3)が連通している。
【0047】
ここで、デフ室Sb3、モータ室Sa、第1ギア室Sb1及び第2ギア室Sb2内には、それぞれ潤滑用のオイルOLが貯留される。これらデフ室Sb3、モータ室Sa、第1ギア室Sb1及び第2ギア室Sb2内に貯留されたオイルOLの油面の高さは、図示しない連通孔を介して略同じになる(図2及び図10参照)。
【0048】
図2に示すように、モータ2は、モータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を間隔を空けて囲むステータコア25とを、有する。
【0049】
モータシャフト20は、回転軸X1方向の一端20a側が第2ケース部材12内に位置している。モータシャフト20は、回転軸X1方向の他端20b側が第5ケース部材16内に位置している。モータシャフト20は、回転軸X1方向における一端20a側と他端20b側の間の領域が、第1ケース部材11の壁部110、第3ケース部材14の壁部140及び第4ケース部材15の壁部150を回転軸X1方向に貫通している。
【0050】
図2に示すように、モータシャフト20には、第1ケース部材11内に位置する領域において、ロータコア21が外挿されている。モータシャフト20には、第3ケース部材14内に位置する領域において、リダクションギア6が外挿されている。モータシャフト20には、第4ケース部材15内における第3ケース部材14側の領域において、第2遊星歯車機構5が外挿されている。モータシャフト20には、第4ケース部材15内における第5ケース部材16側の領域において、第1遊星歯車機構4が外挿されている。
【0051】
図4は、歯車機構3を構成する第1遊星歯車機構4を説明する図である。なお、図4では、説明の便宜上、内側ピニオンギア43Aと外側ピニオンギア43Bを回転軸X1の径方向に並べてある。
図5は、歯車機構3を構成する第2遊星歯車機構5を説明する図である。
図6は、歯車機構3を構成するリダクションギア6とカウンタギア7を説明する図である。
図7は、差動歯車機構8を説明する図である。図7は、図3の要部拡大図である。
図8は、第1遊星歯車機構4の回転を説明する図である。図8は、図4におけるA-A断面の模式図である。なお、図8では、一速の場合の回転方向を示している。また、図8では、ピニオン軸44A、44Bは省略してある。
図9は、第2遊星歯車機構5の回転を説明する図である。図9は、図5におけるA-A断面の模式図である。なお、図9では、ピニオン軸54は省略してある。
図10は、差動歯車機構8の回転を説明する図である。図10は、図6におけるA-A断面の模式図である。なお、図10では、見やすくするために、リダクションギア6とカウンタギア7については歯部61、71のみを記載し、差動歯車機構8についてはファイナルギア81のみを記載してある。
【0052】
(第1遊星歯車機構4)
図4に示すように、第1遊星歯車機構4は、ダブルピニオン式遊星歯車機構である。具体的には、第1遊星歯車機構4は、第1サンギア41と、内側ピニオンギア43Aと、外側ピニオンギア43Bと、第1キャリア45と、第1リングギア42と、を有する。
【0053】
第1遊星歯車機構4の第1サンギア41は、モータシャフト20の外周にスプライン嵌合している。すなわち、モータシャフト20は、第1サンギア41の内周を回転軸X1方向に貫通している。第1サンギア41は、ギアが外周に形成された歯部41aと、当該歯部41aから回転軸X1方向に延びる筒状のシャフト部41bと、を有している。第1サンギア41は、シャフト部41bを、第5ケース部材16側に向けて設けられている。
【0054】
シャフト部41bの外径側には、第2締結要素であるクラッチ35が設けられている。
クラッチ35は、クラッチハブ351がシャフト部41bの外周にスプライン嵌合している。クラッチハブ351は、小径筒部351aと、当該小径筒部351aより大径の大径筒部351cと、これら小径筒部351aと大径筒部351cとを接続する円板部351bと、を有する。円板部351bは、回転軸X1に直交する。小径筒部351aと大径筒部351cは、回転軸X1方向で円板部351bから互いに離れる方向に延びている。
【0055】
クラッチハブ351は、大径筒部351cの外周にドライブプレート355(内径側摩擦板)がスプライン嵌合している。クラッチハブ351は、小径筒部351aが第1サンギア41のシャフト部41bの外周にスプライン嵌合している。
【0056】
シャフト部41bおよび小径筒部351aは、それぞれ回転軸X1方向で第5ケース部材16のシャフト支持部165と対向している。これらシャフト部41bおよび小径筒部351aと、シャフト支持部165との間には、スラストベアリングBaが介在している。
【0057】
第1サンギア41の歯部41aには、内側ピニオンギア43Aが噛合している。内側ピニオンギア43Aは、回転軸X1の径方向における第1サンギア41と反対側で外側ピニオンギア43Bと噛合している。外側ピニオンギア43Bは、回転軸X1の径方向における内側ピニオンギア43Aと反対側で第1リングギア42に噛合している。内側ピニオンギア43Aと外側ピニオンギア43Bとの組み合わせは、回転軸X1周りの周方向にそれぞれ3つ設けられている(図8参照)。
【0058】
図4に示すように、内側ピニオンギア43A及び外側ピニオンギア43Bは、回転軸X1の径方向において第1リングギア42の周壁部421と第1サンギア41の歯部41aとの間に位置している。
内側ピニオンギア43A及び外側ピニオンギア43Bは、それぞれの内径側をピニオン軸44A、44Bが貫通している。内側ピニオンギア43Aと外側ピニオンギア43Bは、ピニオン軸44A、44Bにそれぞれ回転可能に支持されている。
【0059】
ピニオン軸44A、44Bは、それぞれ回転軸X1に平行な軸線X2a、X2bに沿う向きで設けられている。ピニオン軸44Aは、軸線X2a方向における両端部が、それぞれ側板部451、452の支持孔H1a、H2aに挿入されている。ピニオン軸44Bは、軸線X2b方向における両端部が、それぞれ側板部451、452の支持孔H1b、H2bに挿入されている。側板部451、452は、第1キャリア45を構成する一対のキャリアプレートである。
【0060】
側板部451、452は、軸線X2a、X2b方向に直交する方向で互いに平行に設けられている。モータ2側に位置する一方の側板部451は、他方の側板部452よりも回転軸X1側まで延びている。側板部451は、内周面451c側の領域が、回転軸X1方向で第1サンギア41とオーバーラップする。回転軸X1方向における側板部451と第1サンギア41との間には、後記するスラストベアリングBb(第3軸受)が介在している。
【0061】
図4に示すように、第1キャリア45の側板部452には、クラッチドラム352が固定されている。クラッチドラム352は、回転軸X1に直交する円板状の底壁部352aと、底壁部352aの外周を全周に亘って囲む周壁部352bと、を有する。クラッチドラム352は、底壁部352aが、側板部452に固定されている。
【0062】
周壁部352bは、回転軸X1を囲む円筒状を成している。周壁部352bは、回転軸X1方向で、側板部452から離れる向きに延びると共に、クラッチハブ351の大径筒部351cを囲んでいる。クラッチドラム352の周壁部352bの内周には、ドリブンプレート356(外径側摩擦板)がスプライン嵌合している。
【0063】
クラッチドラム352の周壁部352bと、クラッチハブ351の大径筒部351cとの間では、回転軸X1方向でドライブプレート355とドリブンプレート356とが交互に並んでいる。
【0064】
図2に示すように、ピストン353はアクチュエータACTに接続されている。アクチュエータACTは、図示しない制御装置からの指示によりピストン353を回転軸X1方向に進退移動させることで、ドライブプレート355とドリブンプレート356との接触/非接触を切り替える(図4における矢印方向)。これにより、クラッチ35の締結/開放が切り替えられる。
【0065】
また、図4に示すように、クラッチドラム352の外周には、第1締結要素であるセレクタブルワンウェイクラッチ36が設けられている。セレクタブルワンウェイクラッチ36は、回転軸X1の径方向でクラッチドラム352の周壁部352bと第5ケース部材16の筒壁部164とに跨って設けられている。なお、図2~4では、セレクタブルワンウェイクラッチ36を簡略化して記載してある。
【0066】
図示は省略するが、セレクタブルワンウェイクラッチ36は、アクチュエータを備えている。セレクタブルワンウェイクラッチ36は、アクチュエータによってギアの噛合いを切り替える。これにより、第5ケース部材16とクラッチドラム352とは、セレクタブルワンウェイクラッチ36を介して相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とが切り替えられる。
【0067】
具体的には、セレクタブルワンウェイクラッチ36を介在させることで、クラッチドラム352と第5ケース部材16との相対回転は、以下の3つの回転態様を選択できる。
(a)クラッチドラム352が第5ケース部材16に対して一方向にのみ回転可能な状態(以下、係合状態と表記する)。
(b)クラッチドラム352が第5ケース部材16に対して一方向および他方向のいずれの方向にも回転可能な状態(以下、開放状態と表記する)。
(c)クラッチドラム352が第5ケース部材16に対して一方向および他方向のいずれの方向にも回転不能な状態(以下、締結状態と表記する)。
【0068】
図4に示すように、第1リングギア42は、回転軸X1を囲むリング状の周壁部421を有する(図8参照)。周壁部421は、内周にギアが形成されている。外側ピニオンギア43Bは、第1リングギア42の周壁部421と噛合している。
【0069】
図4に示すように、第1リングギア42は、回転軸X1方向における周壁部421の一端421a側から内径側に延びる円板部422を有している。円板部422は、軸線X2a、X2b方向で隙間を空けて側板部451と対向している。円板部422の内周面422c側の領域には、回転軸X1方向で周壁部421から離れる向きに延びる連結部423が設けられている。回転軸X1方向における円板部422の一方側と他方側には、それぞれ後記するスラストベアリングBc(第1軸受)、Bd(第2軸受)が設けられている。
【0070】
図4に示すように、第1リングギア42の連結部423は、回転軸X1を囲むリング状を成している。連結部423の内周には、第2遊星歯車機構5の第2サンギア51がスプライン嵌合している。
【0071】
(第2遊星歯車機構5)
図2に示すように、第4ケース部材15内において、第1遊星歯車機構4に隣りあう位置に、第2遊星歯車機構5が設けられている。
第2遊星歯車機構5は、シングルピニオン式遊星歯車機構である。具体的には、図5に示すように、第2遊星歯車機構5は、第2サンギア51と、ピニオンギア53と、第2キャリア55と、第2リングギア52と、を有する。
【0072】
図5に示すように、第2遊星歯車機構5の第2サンギア51は、モータシャフト20に外挿されている。モータシャフト20は、第2サンギア51の内周を回転軸X1方向に貫通している。モータシャフト20の外周と第2サンギア51との間にはニードルベアリングNBが介在している。第2サンギア51は、モータシャフト20に相対回転可能に支持されている。
【0073】
第2サンギア51は、ギアが外周に形成された歯部51aと、当該歯部51aから回転軸X1方向における第1遊星歯車機構4側に延びる筒状のシャフト部51bと、を有している。
【0074】
第2サンギア51のシャフト部51bの外周に、前記した第1遊星歯車機構4の第1リングギア42の連結部423がスプライン嵌合している。
【0075】
第2サンギア51の歯部51aには、ピニオンギア53が噛合している。ピニオンギア53は、回転軸X1周りの周方向に3つ設けられている(図9参照)。
ピニオンギア53は、第2リングギア52と噛合している。第2リングギア52は、回転軸X1を囲むリング状を成している。
【0076】
第2リングギア52の外周には、径方向外側に突出する複数の係合歯521が設けられている。複数の係合歯521は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
第2リングギア52は、外周に設けた係合歯521が、支持壁部151の内周に設けた歯部151cにスプライン嵌合している。これにより、第2リングギア52は、回転軸X1回りの回転が規制されている。支持壁部151を有する第4ケース部材15は、第2固定要素を構成する。
【0077】
ピニオンギア53の内径側をピニオン軸54が貫通している。ピニオンギア53は、ピニオン軸54に回転可能に支持されている。
【0078】
ピニオン軸54は、回転軸X1に平行な軸線X3に沿う向きで設けられている。ピニオン軸54は、軸線X3方向における両端部が、それぞれ側板部551、552の支持孔H3a、H4aに挿入されている。側板部551、552は、第2キャリア55を構成する一対のキャリアプレートである。
【0079】
一対の側板部551、552は、軸線X3方向に直交する方向で互いに平行に設けられている。モータ2側に位置する一方の側板部551は、他方の側板部552よりも回転軸X1側まで延びている。
【0080】
側板部551の内周面551c側の領域は、回転軸X1方向で第2サンギア51とオーバーラップする。回転軸X1方向における側板部551と第2サンギア51との間には、後記するスラストベアリングBe(第4軸受)が介在している。
【0081】
側板部551の内周面551c側の領域には、回転軸X1を囲む筒状の連結部553が設けられている。連結部553は、回転軸X1方向における側板部551のモータ2側の側面551aに設けられている。連結部553は、回転軸X1方向でモータ2側に延びている。連結部553の内周には、リダクションギア6がスプライン嵌合している。
【0082】
(リダクションギア6)
図6に示すように、リダクションギア6は、第3ケース部材14内に設けられている。リダクションギア6はモータシャフト20に外挿されている。リダクションギア6の内周とモータシャフト20の外周との間にはニードルベアリングNBが介在している。リダクションギア6は、モータシャフト20に相対回転可能に支持されている。
【0083】
リダクションギア6は、回転軸X1に沿う向きに設けられたシャフト部62と、ギアが外周に形成された歯部61と、を有している。シャフト部62は、回転軸X1を囲む筒状を成している。シャフト部62は、回転軸X1方向における一端62a側が第3ケース部材14のシャフト支持部145に支持されている。シャフト部62とシャフト支持部145の間にはベアリングB2が介在している。
【0084】
シャフト部62は、回転軸X1方向における他端62b側が第4ケース部材15のシャフト支持部155に支持されている。シャフト部62とシャフト支持部155の間にはベアリングB2が介在している。
【0085】
シャフト部62の他端62bは、回転軸X1方向で壁部150を横断して第4ケース部材15内に及んでいる。第2遊星歯車機構5の連結部553は、第4ケース部材15内でシャフト部62の他端62b側の外周にスプライン嵌合している。
【0086】
歯部61は、シャフト部62の外周に設けられている。歯部61とシャフト部62とは一体形成されている。歯部61は、シャフト部62におけるシャフト支持部145で支持された部分と、シャフト支持部155で支持された部分との間の領域に設けられている。歯部61は、回転軸X1の径方向に沿う直線Lnをシャフト部62の一端62a側から他端62b側に横断する範囲に設けられている。直線Lnは、シャフト部62におけるシャフト支持部145、155で支持された部分の略中間を通る直線である。
【0087】
リダクションギア6の歯部61は、第3ケース部材14内で、カウンタギア7と噛合している。
【0088】
(カウンタギア7)
カウンタギア7は、回転軸X1に平行な軸線X4に沿う向きに設けられたシャフト部72と、ギアが外周に形成された歯部71と、を有している。
【0089】
シャフト部72は、軸線X4方向における一端72a側(モータ2側)が第3ケース部材14の壁部140に支持され、他端72b側(第2遊星歯車機構5側)が第4ケース部材15の壁部150に支持されている。
【0090】
具体的には、シャフト部72の一端72a側は、壁部140に設けられた筒状の支持部148に支持されている。支持部148は、回転軸X1の径方向におけるシャフト支持部145の外径側に位置している。シャフト部72の一端72a側と支持部148との間にはベアリングB3が介在している。シャフト部72の他端72b側は、壁部150に設けられた筒状の支持部157に支持されている。支持部157は、回転軸X1の径方向におけるシャフト支持部155の外径側に位置している。シャフト部72の他端72b側と支持部157との間にはベアリングB3が介在している。
【0091】
歯部71は、シャフト部72の外周に設けられている。歯部71とシャフト部72とは一体形成されている。歯部71は、シャフト部72における支持部148で支持された部分と、支持部157で支持された部分との間の領域に設けられている。歯部71は、前記した直線Lnをシャフト部72の一端72a側から他端72b側に横断する範囲に設けられている。直線Lnは、シャフト部72における支持部148、157で支持された部分の略中間を通る。
【0092】
図10に示すように、軸線X4方向から見て、カウンタギア7は、軸線X4よりも車両後方側でリダクションギア6と噛合している。また、軸線X4方向から見て、カウンタギア7は、軸線X4よりも車両前方側で差動歯車機構8のファイナルギア81と噛合している。また、カウンタギア7は、軸線X4よりも鉛直線VL方向下側の領域で、リダクションギア6およびファイナルギア81とそれぞれ噛合している。
【0093】
(差動歯車機構8)
図7に示すように、差動歯車機構8のファイナルギア81(入力ギア)は、図示しないボルトによって、デフケース80に固定されている。デフケース80は、カウンタギア7の軸線X4回りの回転に連動して、ファイナルギア81と共に軸線X5回りに回転する。
【0094】
デフケース80は、シャフト82と、かさ歯車83、83と、サイドギア84A、84Bとを、内部に収納する。
デフケース80では、軸線X5方向(図中、車両左右方向)の両側部に、筒状の支持部801、802が設けられている。支持部801、802は、軸線X5に沿う向きに設けられている。支持部801、802は、シャフト82から互いに離れる方向に延びている。
【0095】
デフケース80の支持部801、802には、ベアリングB5、B5が外挿されている。支持部801、802に外挿されたベアリングB5、B5は、アクスルケース17のハウジング部171で保持されている。
【0096】
支持部801、802には、アクスルケース17の円筒部172A、172Bを貫通したドライブシャフトDA、DBが、軸線X5方向からそれぞれ挿入されている。
デフケース80の内部では、ドライブシャフトDA、DBの先端部の外周に、サイドギア84A、84Bがスプライン嵌合している。
【0097】
デフケース80内においてシャフト82には、かさ歯車83、83が外挿して回転可能に支持されている。かさ歯車83、83は、軸線X5を挟んで互いの歯部を対向させた状態で配置されている。
【0098】
デフケース80内において、軸線X5方向におけるかさ歯車83、83の両側には、サイドギア84A、84Bが位置している。
サイドギア84A、84Bは、互いの歯部を軸線X5方向で対向させた状態で配置されている。かさ歯車83、83とサイドギア84A、84Bとは、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0099】
図1に示すように、動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、歯車機構3と、差動歯車機構8と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。
【0100】
図2に示すように、モータ2が駆動されて、ロータコア21が回転軸X1回りに回転すると、ロータコア21と一体にモータシャフト20が回転する。
図8に示すように、モータシャフト20の回転は、第1遊星歯車機構4の第1サンギア41に入力される。車両の前進走行時において、第1サンギア41は、回転軸X1回りの反時計回り方向CCWに回転する(図中、太矢印方向)。
【0101】
入力軸であるモータシャフト20は、第1サンギア41及び第2サンギア51の内周を貫通している。モータシャフト20の一端20a側は、ロータコア21の回転が入力される入力部として機能する。モータシャフト20の他端20b側は、ロータコア21の回転を第1遊星歯車機構4に出力する出力部として機能する。このように、モータシャフト20は、入力軸と出力軸とを一体に形成したものであるといえる。
【0102】
図11図12は、各変速段でのクラッチ35とセレクタブルワンウェイクラッチ36の締結状態を示す締結表を説明する図である。図11では、締結状態となるものを丸印で示してある。
図11に示すように、モータ2の出力回転は、クラッチ35とセレクタブルワンウェイクラッチ36の締結/非締結を切り替えることによって、一速又は二速に切り替えられる。
(i)一速では、クラッチ35を開放状態とし、セレクタブルワンウェイクラッチ36を締結状態とする。セレクタブルワンウェイクラッチ36を締結状態とすると、クラッチドラム352が第5ケース部材16に相対回転不能に固定される。クラッチドラム352に接続されている第1キャリア45もまた、第5ケース部材16に対して相対回転不能となる。すなわち、第5ケース部材16は、第1固定要素を構成する。なお、セレクタブルワンウェイクラッチ36を係合状態として、クラッチドラム352が回転軸X1回りの反時計回り方向CCW(図8参照)に回転することを規制してもよい。
(ii)二速は、クラッチ35を締結状態とし、セレクタブルワンウェイクラッチ36を開放状態とする。クラッチ35が締結されると、クラッチハブ351とクラッチドラム352とが相対回転不能に固定される。これにより、第1サンギア41と第1キャリア45とが相対回転不能に固定される。なお、セレクタブルワンウェイクラッチ36は、図12に示すように、一速から二速へ切り替える途中で係合状態(ワンウェイクラッチ状態)を経由する。これにより、一速から二速への変速が、速やかに行われるようになっている。
【0103】
図8に示すように、一速では、第1遊星歯車機構4の第1キャリア45は、回転軸X1回りの回転が規制される。これにより、内側ピニオンギア43Aと外側ピニオンギア43Bの回転軸X1周りの公転が規制される。
【0104】
従って、第1サンギア41と噛合する内側ピニオンギア43Aは、回転軸X1周りの公転が規制された状態で、軸線X2a回りの時計回り方向CWに自転する(図中、細矢印方向)。内側ピニオンギア43Aと噛合する外側ピニオンギア43Bは、回転軸X1周りの公転が規制された状態で、軸線X2b回りの反時計回り方向CCWに自転する(図中、細矢印方向)。外側ピニオンギア43Bと噛合する第1リングギア42は、回転軸X1回りの反時計回り方向CCWに回転する(図中、白抜き矢印方向)。
【0105】
なお、二速では、第1サンギア41と第1キャリア45とが相対回転不能に固定される。これにより、第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42は、回転軸X1回りに一体に回転する。すなわち、一速および二速において、第1サンギア41に入力されたモータシャフト20の回転は、回転方向が変わることなく第1リングギア42から出力される。
【0106】
図4に示すように、第1リングギア42の連結部423は、当該連結部423の内周において、第2遊星歯車機構5の第2サンギア51とスプライン嵌合している。
よって、図9に示すように、第1リングギア42の回転に伴って、第2遊星歯車機構5の第2サンギア51もまた、回転軸X1回りの反時計回り方向CCWに回転する(図中、太矢印方向)。
【0107】
図9に示すように、第2サンギア51には、ピニオンギア53が噛合している。第2サンギア51が回転軸X1回りの反時計回り方向CCWに回転すると、ピニオンギア53は、軸線X3回りの時計回り方向CWに自転する(図中、細矢印方向)。
【0108】
ピニオンギア53と噛合する第2リングギア52は、第4ケース部材15の支持壁部151に相対回転不能に固定されている。従って、ピニオンギア53は、軸線X3回りの時計回り方向CWに自転しながら、回転軸X1周りの反時計回り方向CCWに公転する(図中、白抜き矢印方向)。ピニオンギア53を支持する第2キャリア55(側板部551、552)もまた、回転軸X1周りの反時計回り方向CCWに回転する。
【0109】
図6に示すように、第2キャリア55の連結部553は、当該連結部553の内周において、リダクションギア6のシャフト部62とスプライン嵌合している。
よって、図10に示すように、第2キャリア55の回転に伴って、リダクションギア6もまた、回転軸X1回りの反時計回り方向CCWに回転する。
【0110】
図10に示すように、リダクションギア6の歯部61は、カウンタギア7の歯部71と噛合している。よって、カウンタギア7は、軸線X4回りの時計回り方向CWに回転する。カウンタギア7の歯部71は、差動歯車機構8のファイナルギア81とも噛合している。よって、ファイナルギア81は、軸線X5回りの反時計回り方向CCWに回転する。
【0111】
図7に示すように、ファイナルギア81の軸線X5回りの反時計回り方向CCWの回転は、かさ歯車83、83及びサイドギア84A、85Bを介して、ドライブシャフトDA、DBに伝達される。ドライブシャフトDA、DBは、ファイナルギア81と同じ方向に回転する。左右の駆動輪K、K(図1参照)もまた、ドライブシャフトDA、DBから伝達された回転駆動力で軸線X5回りに回転する。これにより、車両は前進走行する。
【0112】
ここで、図2に示すように、モータシャフト20は、回転軸X1方向における一端20a側がベアリングB1で支持され、他端20b側がニードルベアリングNBで支持されている。モータシャフト20の一端20a側は、ベアリングB1に圧入されている。モータシャフト20の他端20b側は、ニードルベアリングNBに挿入されている。
【0113】
モータシャフト20の一端20a側は、ベアリングB1に圧入されているため、回転軸X1の径方向において、モータシャフト20の外周とベアリングB1の内周との間に隙間はない。一方、モータシャフト20の他端20b側は、ニードルベアリングNBに挿入されているため、回転軸X1の径方向において、モータシャフト20の外周とニードルベアリングNBとの間に隙間がある。よって、モータシャフト20は、一端20a側よりも他端20b側が径方向に振れやすい。モータシャフト20の他端20b側が径方向に振れることで、モータシャフト20に軸倒れが生じる結果、水平方向に沿う回転軸X1に対して僅かに傾いた回転軸X1’に沿う向きとなることがある(図13参照)。
【0114】
ここで、第1遊星歯車機構4や第2遊星歯車機構5において、それぞれの歯部の噛合い方向における接触幅W(図4の拡大図参照)は、回転軸X1方向の全長に亘って均等であることが好ましい。しかしながら、モータシャフト20の軸倒れによって歯部が傾くと、当該歯部同士の噛み合い位置がずれて、噛合い方向における接触幅が均等ではなくなることがある。そうすると、噛合い時に歯部にかかる応力が局所的となり、歯部の摩耗が局所的に進む。これにより、第1遊星歯車機構4や第2遊星歯車機構5の耐久性の低下につながる。
【0115】
本発明では、第1遊星歯車機構4と第2遊星歯車機構5の内周に一本のモータシャフト20を貫通させることで、軸倒れに追従して第1遊星歯車機構4と第2遊星歯車機構5とが同じ方向に傾くようになっており、噛合い方向における接触幅が均等になるようにしている。
【0116】
さらに、モータシャフト20の軸倒れに追従して第1遊星歯車機構4と第2遊星歯車機構5とが同じ方向に傾くことを促進するために、第1遊星歯車機構4と第2遊星歯車機構5の各構成要素(サンギア、キャリア、リングギア)の間にスラストベアリングBb~Beをそれぞれ介在させている(図4図5参照)。
【0117】
以下、スラストベアリングBb~Beの配置について説明する。
(スラストベアリングBb)
図4に示すように、第1遊星歯車機構4には、回転軸X1方向で第1キャリア45と第1サンギア41との間に、スラストベアリングBb(第3軸受)が設けられている。図4の拡大図に示すように、スラストベアリングBbは、第1キャリア45の側板部451に設けられた凹部456で支持されている。凹部456は、側板部451における第1サンギア41側の側面451bと内周面451cとに跨って開口している。凹部456は、回転軸X1を囲む内周面456aと、回転軸X1に直交する底面456bと、を有する。
【0118】
スラストベアリングBbのアウタレースBb1は、内周面456aに内嵌すると共に、回転軸X1方向で底面456bに当接している。スラストベアリングBbのインナレースBb2は、回転軸X1方向で第1サンギア41の歯部41aの側面41a1に当接している。
【0119】
(スラストベアリングBc)
図4に示すように、第1遊星歯車機構4には、回転軸X1方向で第1リングギア42と第1キャリア45との間に、スラストベアリングBc(第1軸受)が設けられている。第1リングギア42の円板部422は、内周面422c側の領域が外径側(周壁部421側)よりも回転軸X1方向で第2遊星歯車機構5側にオフセットしている。図4の拡大図に示すように、円板部422は、回転軸X1方向における他方の側面422bから第2遊星歯車機構5側に窪む凹部426を有する。凹部426は、円板部422の他方の側面422bと内周面422cとに跨って開口している。
【0120】
スラストベアリングBcは、凹部426で支持されている。凹部426は、回転軸X1を囲む内周面426aと、回転軸X1に直交する底面426bと、を有する。スラストベアリングBcのアウタレースBc1は、内周面426aに内嵌すると共に、回転軸X1方向で底面426bに当接している。スラストベアリングBcのインナレースBc2には、側板部451における第1サンギア41と反対側の側面451aが、回転軸X1方向で当接している。
【0121】
(スラストベアリングBd)
図4に示すように、第1遊星歯車機構4には、回転軸X1方向で第1リングギア42と第2遊星歯車機構5の第2キャリア55との間に、スラストベアリングBd(第2軸受)が設けられている。図4の拡大図に示すように、円板部422は、回転軸X1方向における一方の側面422aから第2遊星歯車機構5側に突出する凸部425を有する。凸部425は、円板部422の一方の側面422aと内周面422cとに跨って設けられている。
【0122】
スラストベアリングBdは、凸部425に外嵌されている。スラストベアリングBdのインナレースBd2は、凸部425の外周面425aに外嵌すると共に、円板部422の一方の側面422aに当接している。スラストベアリングBdのアウタレースBd1には、第2キャリア55の側板部552における円板部422との対向面552a(図5参照)が、回転軸X1方向で当接している。
【0123】
ここで、凹部426の内周面426aの半径R1は、凸部425の外周面425aの半径R2よりも小さい(R1<R2)。凹部426の内周面426aには、スラストベアリングBcのアウタレースBc1が内嵌される。凸部425の外周面425aには、スラストベアリングBdのインナレースBd2が外嵌される。
【0124】
回転軸X1方向においては、スラストベアリングBc、Bdは、互いにオーバーラップしない位置関係となる。すなわち、スラストベアリングBc(第1軸受)とスラストベアリングBd(第2軸受)とは、回転軸X1の径方向(入力軸の径方向)に互いにオフセットして配置されている。
【0125】
(スラストベアリングBe)
図5に示すように、第2遊星歯車機構5には、回転軸X1方向で第2サンギア51と第2キャリア55との間に、スラストベアリングBe(第4軸受)が設けられている。図5の拡大図に示すように、スラストベアリングBeは、第2キャリア55の側板部551に設けられた凹部556で支持されている。凹部556は、側板部551における第2サンギア51側の側面551bと内周面551cとに跨って開口している。凹部556は、回転軸X1を囲む内周面556aと、回転軸X1に直交する底面556bと、を有する。
【0126】
スラストベアリングBeのアウタレースBe1は、内周面556aに内嵌すると共に、回転軸X1方向で底面556bに当接している。スラストベアリングBeのインナレースBe2には、回転軸X1方向で第2サンギア51の歯部51aの側面51a1が当接している。
【0127】
かかる構成の動力伝達装置1の作用効果を説明する。
図13は、モータシャフト20の軸倒れを説明する図である。なお、図13では、軸倒れによるモータシャフト20、第1遊星歯車機構4及び第2遊星歯車機構5の傾きを誇張して記載してある。
【0128】
図13に示すように、軸倒れが生じると、モータシャフト20は、回転軸X1から角度Δθだけ傾いた回転軸X1’回りに回転する場合がある。
モータシャフト20の外周には、第1遊星歯車機構4の第1サンギア41がスプライン嵌合している。また、モータシャフト20の外周には、第2遊星歯車機構5の第2サンギア51が設けられている。
【0129】
軸倒れが生じると、モータシャフト20に支持されている第1サンギア41と第2サンギア51もまた、それぞれ回転軸X1’に沿う向きに傾く。第1サンギア41では、歯部41aの歯面41a2が、回転軸X1’に平行な直線Lp1に沿う向きとなる。第2サンギア51では、歯部51aの歯面51a2と、シャフト部51bの歯面51b2が、それぞれ回転軸X1’に平行な直線Lp2、Lp3方向に沿う向きとなる。
【0130】
第2サンギア51のシャフト部51bの外周には、第1リングギア42の連結部423がスプライン嵌合している。従って、連結部423は、直線Lp2に沿う向きに傾く。連結部423に接続された第1リングギア42の円板部422は、直線Lp2に直交する向きに傾く。円板部422に連結された周壁部421は、歯面421bが直線Lp2に平行な直線Lp4に沿う向きとなる。この状態で第1リングギア42の周壁部421は、回転軸X1’回りに回転する。
【0131】
ここで、外側ピニオンギア43Bと内側ピニオンギア43Aは、回転軸X1’の径方向で第1サンギア41と第1リングギア42との間に位置している。直線Lp1、Lp4および回転軸X1’は互いに平行である。
【0132】
内側ピニオンギア43Aは、第1サンギア41の歯部41aと噛合する。内側ピニオンギア43Aは、第1サンギア41に追従して直線Lp1方向に沿う向きに傾く。外側ピニオンギア43Bは、第1リングギア42の周壁部421と噛合する。外側ピニオンギア43Bは、第1リングギア42に追従して直線Lp4方向に沿う向きに傾く。内側ピニオンギア43Aと外側ピニオンギア43Bの互いの噛合部は、直線Lp1、Lp4に平行な直線Lp5に沿う向きとなる。ピニオン軸44A、44Bの軸線X2a’、X2b’もまた、回転軸X1’に平行になる。
【0133】
そうすると、ピニオン軸44A、44Bを支持する一対の側板部451、452は、第1サンギア41や第1リングギア42に固定されていないため、軸線X2a’、X2b’に直交する向きに傾く。すなわち、側板部451、452を有する第1キャリア45は、第1サンギア41と第1リングギア42と第1キャリア45と同じ向きに傾く。よって、第1遊星歯車機構4は、全体としてモータシャフト20と同じ向きに傾く。
【0134】
図13に示すように、第1リングギア42の円板部422と第1キャリア45の側板部451との間には、スラストベアリングBcが介在している。
図13に示すように、円板部422の外径側が第2遊星歯車機構5から離れる向き(図中、矢印E方向)に傾くと、スラストベアリングBcも同じ向きに傾く。傾いたスラストベアリングBcは、第1キャリア45の側板部451を押圧する(図中、矢印A方向)。
そうすると、第1キャリア45もまた、外径側が第2遊星歯車機構5から離れる向き(図中、矢印E方向)に回転するモーメントが発生する。
【0135】
これにより、第1キャリア45は、第1リングギア42と連動して同じ向きで傾くことが促進される。すなわち、第1遊星歯車機構4の3つのメンバである第1サンギア41、第1キャリア45および第1リングギア42が連動して回転軸X1’の軸の傾きと同じ側に傾きやすくなっている。これにより、第1遊星歯車機構4内の噛合い位置のズレを低減でき、第1遊星歯車機構4の耐久性を向上している。
【0136】
また、第2遊星歯車機構5では、第2サンギア51の歯部51aに、ピニオンギア53が噛合している。ピニオンギア53は、ピニオン軸54を介して第2キャリア55で支持されている。
【0137】
図13に示すように、第2キャリア55の側板部552と第1リングギア42の円板部422との間には、スラストベアリングBdが介在している。
図13に示すように、円板部422の外径側が第2遊星歯車機構5から離れる向き(図中、矢印E方向)に傾くと、スラストベアリングBdも同じ向きに傾く。傾いたスラストベアリングBdは、第2キャリア55の側板部552を押圧する(図中、矢印B方向)。そうすると、第2キャリア55には、外径側が第1遊星歯車機構4に近づく向きに傾く(図中、矢印F方向)に回転するモーメントが発生する。
【0138】
これにより、第2キャリア55の側板部552は、第1リングギア42と連動して同じ向きに傾くことが促進される。側板部552の傾きに合わせて、ピニオン軸54と側板部551も同じ向きに傾く。すなわち、第1リングギア42の傾きに合わせて第2キャリア55が傾くことで、第2キャリア55は、最終的に第2サンギア51と同じ向きに傾くようになっている。なお、第2リングギア52は、第4ケース部材15(図5参照)に設けられているため、回転軸X1に沿う向きを維持している。
【0139】
ピニオン軸54の軸線X3’は、回転軸X1’と平行になる。これにより、ピニオン軸54に支持されたピニオンギア53は、第2サンギア51の歯部51aと直線Lp3方向に沿う向きで噛合する。
【0140】
すなわち、第2遊星歯車機構5の2つのメンバである第2サンギア51と第2キャリア55が連動して同じ向きに傾くので、第2遊星歯車機構5内の噛合い位置のズレを低減でき、第2遊星歯車機構5の耐久性を向上している。
【0141】
ここで、第1遊星歯車機構4の第1サンギア41の傾きは、モータシャフト20を介して第2遊星歯車機構5の第2サンギア51の傾きに連動する。また、第1遊星歯車機構4の第1リングギア42の傾きは、連結部423を介して第2遊星歯車機構5の第2サンギア51に傾きに連動する。一方で、第1遊星歯車機構4の第1キャリア45は、第2遊星歯車機構5に接続する構成を有さないため、第2遊星歯車機構5の傾きに連動しにくい。
【0142】
第1サンギア41の歯部41aと第1キャリア45の側板部451との間には、スラストベアリングBbが介在している。第1サンギア41が傾くと、当該第1サンギア41は、スラストベアリングBbを押圧する。スラストベアリングBbは、第1サンギア41から受けた押圧力を第1キャリア45の側板部451に伝達する(図中、矢印C方向)。そうすると、第1キャリア45には、外径側が第2遊星歯車機構5から離れる向き(図中、矢印E方向)に回転するモーメントが発生する。これにより、第1キャリア45は、第1サンギア41と連動して同じ向きに傾くことが促進される。
【0143】
すなわち、第1遊星歯車機構4内の3つのメンバである第1サンギア41、第1リングギア42および第1キャリア45が連動して同じ向きに傾くので、第1遊星歯車機構4内の噛合い位置のズレを低減でき、第1遊星歯車機構4の耐久性を向上することができる。
【0144】
また、第2サンギア51の歯部51aと第2キャリア55の側板部551の間には、スラストベアリングBeが介在している。第2サンギア51が傾くと、スラストベアリングBeを押圧する。スラストベアリングBeは、第2サンギア51から受けた押圧力を第2キャリア55の側板部551に伝達する(図中、矢印D方向)。そうすると、第2キャリア55には、外径側が第1遊星歯車機構4に近づく向きに傾く(図中、矢印F方向)に回転するモーメントが発生する。
【0145】
これにより、第2キャリア55の側板部551は、第2サンギア51と連動して同じ向きに傾くことが促進される。すなわち、第2遊星歯車機構5内の2つのメンバが連動して傾くので、第2遊星歯車機構5内の噛合い位置のズレを低減でき、第2遊星歯車機構5の耐久性を向上することができる。
【0146】
以下に、本発明のある態様における動力伝達装置1の例を列挙する。
(1、10)動力伝達装置1(装置)は、
駆動力が入力されるモータシャフト20(入力軸)と、
モータシャフト20の下流に配置された第1遊星歯車機構4と、
第1遊星歯車機構4の下流に配置された第2遊星歯車機構5と、
第2遊星歯車機構5の下流に配置されたリダクションギア6(出力軸)と、を有する。
第1遊星歯車機構4は、第1サンギア41を有する。
第1遊星歯車機構4は、セレクタブルワンウェイクラッチ36(第1締結要素)を介して第5ケース部材16(第1固定要素)と接続される第1キャリア45を有する。
第1遊星歯車機構4は、第1リングギア42を有する。
第2遊星歯車機構5は、第1リングギア42と接続される第2サンギア51を有する。
第2遊星歯車機構5は、リダクションギア6と接続される第2キャリア55を有する。
第2遊星歯車機構5は、第4ケース部材15(第2固定要素)と接続される第2リングギア52を有する。
第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42のうちの一要素である第1キャリア45は、クラッチ35(第2締結要素)を介して、第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42のうちの他の一要素である第1サンギア41と接続される。
第1サンギア41は、スプライン嵌合によりモータシャフト20に接続されている。
第2サンギア51は、ニードルベアリングNBを介してモータシャフト20に支持されている。
第1遊星歯車機構4は、ダブルピニオン式遊星歯車機構である。
第2遊星歯車機構5は、シングルピニオン式遊星歯車機構である。
【0147】
このように構成すると、レイアウト性が向上する動力伝達装置1を提供することができる。例えば、モータ2の出力回転を、第1遊星歯車機構4の第1キャリア45又は第1リングギア42へ入力する場合、モータシャフト20と第1キャリア45又は第1リングギア42に延びる部位を設ける必要が生じる。当該部位は、第1サンギア41の脇(第1サンギア41と回転軸X方向にオーバーラップする空間)を横切るように配置される。この部位を配置するための空間を設ける分、動力伝達装置1全体の軸方向の寸法が増大する。
そこで、上記のように構成して、モータ2の出力回転を、第1遊星歯車機構4の第1サンギア41へ入力することにより、モータシャフト20と第1遊星歯車機構4との間に別途部位を設ける必要がなくなる。そのため、動力伝達装置1の寸法が増大することを低減できる。これにより、動力伝達装置1の車両へのレイアウト性を向上することが可能となる。
【0148】
更に、第1遊星歯車機構4及び第2遊星歯車機構5への双方の回転の入力を、第1サンギア41および第2サンギア51とし、且つ第2サンギア51をモータシャフト20により支持される構成としている。これにより、モータシャフト20の軸倒れにともない第1サンギア41及び第2サンギア51の双方が、同じ方向に傾きやすくなるようになる。よって、第1遊星歯車機構4においてギアの傾き方向の相違に伴うギアの噛合い位置のズレを低減でき、第1遊星歯車機構4の耐久性向上に寄与することになる。
例えば、第1サンギア41は、モータシャフト20にスプライン嵌合されており、モータシャフト20の傾きの影響を受けやすい。第2サンギア51もまた、ニードルベアリングNBを介してモータシャフト20に支持されており、モータシャフト20の傾きの影響を受けやすい。そして、第2サンギア51は、第1リングギア42と接続されている。
よって、第1リングギア42は、第2サンギア51と同じ方向に傾きやすくなる。そうすると、第1遊星歯車機構4のうちの2要素である第1サンギア41と第1リングギア42が同じ方向に傾きやすくなるので、残る1要素の第1キャリア45も同じ方向に傾きやすくなる。つまり、第1遊星歯車機構4の3要素(第1サンギア41、第1リングギア42、第1キャリア45)全てが同じ方向に傾きやすくなる。よって、第1遊星歯車機構4においてギアの傾き方向の相違に伴うギアの噛合い位置のズレを低減でき、第1遊星歯車機構4の耐久性向上に寄与することになる。
【0149】
ところで、第1遊星歯車機構4及び第2遊星歯車機構5の双方をサンギア入力とするにあたり、第1遊星歯車機構4及び第2遊星歯車機構5の形式及び接続は充分に検討される必要がある。本発明のある態様では、第5ケース部材16(第1固定要素)と接続されるセレクタブルワンウェイクラッチ36(第1締結要素)のレイアウトの自由度を確保するために、セレクタブルワンウェイクラッチ36を第1キャリア45と接続させている(図2参照)。
ここで、第1キャリア45は第1リングギア42よりも小径である。例えばセレクタブルワンウェイクラッチ36を第1リングギア42と接続させる場合、セレクタブルワンウェイクラッチ36は、第1リングギア42の外周を囲むように配置される。そうすると、セレクタブルワンウェイクラッチ36は、第1キャリア45と接続する場合より径方向に大型化する。そうすると、第1遊星歯車機構4の回転による撹拌抵抗が増加することになる。これに対して、セレクタブルワンウェイクラッチ36を第1キャリア45と接続させることで、モータシャフト20(回転軸の軸中心側)に近い側におくことができる。すなわち、第1遊星歯車機構4が回転しても攪拌抵抗が増加することを低減できる。
このように、本発明のある態様では、セレクタブルワンウェイクラッチ36の位置を回転軸X1の内径側にずらすことにより、第1遊星歯車機構4の撹拌抵抗を低減できる選択肢をとることができるようになるなど、セレクタブルワンウェイクラッチ36のレイアウトの自由度が確保されている。
また、セレクタブルワンウェイクラッチ36は、ギアの噛合いで締結するため、例えば第1締結要素としてバンドブレーキや多板クラッチを用いた場合のような引きずり抵抗も発生しないため、フリクションを低減できる。また、セレクタブルワンウェイクラッチ36は、係合状態(ワンウェイクラッチ状態)を設定できるため、例えばバンドブレーキ等と比較して、変速速度が速く、変速の制御性も向上する。
【0150】
ここで、セレクタブルワンウェイクラッチ36を第1キャリア45と接続させると、第1遊星歯車機構4の出力は第1リングギア42となる。そうした場合に、第1遊星歯車機構4の形式がシングルピニオンタイプであると一速と二速との切り替え時に、モータ2の回転方向を正転と逆転とで切り替える必要が生じる。そこで、第1遊星歯車機構4の形式をダブルピニオンタイプとすることにより、一速と二速とで切り替えても、モータ2の回転方向は、同じ回転方向(例えば正転のまま)に揃えることができるようになる。
【0151】
第2遊星歯車機構5は入力が第2サンギア51である。よって、出力は第2キャリア55と第2リングギア52の双方から選択することができる。例えば出力を第2リングギア52とすると、第2キャリア55は固定されることになる。この場合、第2キャリア55と第4ケース部材15の支持壁部151(固定要素)とを接続させるための部位を設ける必要が生じる。当該部位は、第2リングギア52の脇(第2リングギア52と軸方向にオーバーラップする空間)を横切って支持壁部151に接続されることになる。この部位を配置するための空間を設ける分だけ、動力伝達装置1全体の軸方向の寸法が増大する。
そこで、第2遊星歯車機構5の出力を第2キャリア55出力とすることにより、別途部位を配置するための空間を設ける必要がなくなる。そのため、動力伝達装置1の寸法が増大することを低減できる。これにより、動力伝達装置1の車両へのレイアウト性を向上することが可能となる。
【0152】
第2遊星歯車機構5が第2サンギア51入力且つ第2キャリア55出力の場合において、シングルピニオン式遊星歯車機構とダブルピニオン式遊星歯車機構とを比較すると、シングルピニオン式遊星歯車機構の方が減速比を大きくとりやすい。そこで、第2遊星歯車機構5は、シングルピニオン式遊星歯車機構とすることが好ましい。
【0153】
このように、本発明の一態様は、第1遊星歯車機構4及び第2遊星歯車機構5の双方をサンギア入力とすることを前提として、種々の課題を解決すべく、その接続関係及び遊星歯車機構のタイプの選択について緻密に設計された態様であるといえる。
【0154】
なお、本実施形態では、第1固定要素が第5ケース部材16であり、第2固定要素が第4ケース部材15であり、これら第5ケース部材16と第4ケース部材15が別体である場合を例示したが、この態様に限定されない。第1固定要素と第2固定要素は、一体に形成されていても良い。
【0155】
(2)モータシャフト20の回転軸X1方向において、第1リングギア42と第1キャリア45との間にスラストベアリングBc(第1軸受)が配置される。
【0156】
第1リングギア42は、第2サンギア51と連動して傾く。第2サンギア51は、第1サンギア41と連動して傾く。すなわち、第1リングギア42と第2サンギア51と第1サンギア41とは、連動して傾く。
そこで、上記のように構成して、第1リングギア42と第1キャリア45との間にスラストベアリングBcを設けることにより、第1キャリア45が第1リングギア42と連動して傾く。したがって、第1遊星歯車機構4内の3つのメンバである第1サンギア41と第1リングギア42と第1キャリア45とが回転軸X1の傾きと連動して同じ側に傾くように連動する。これにより、第1遊星歯車機構4内の噛合い位置のズレを低減でき、第1遊星歯車機構4の耐久性を向上することができる。
【0157】
(3)モータシャフト20の回転軸X1方向において、第1リングギア42と第2キャリア55との間にスラストベアリングBd(第2軸受)が配置される。
【0158】
第1リングギア42は、第2サンギア51と連動して傾く。第2サンギア51は、第1サンギア41と連動して傾く。すなわち、第1サンギア41と第1リングギア42と第2サンギア51とは、連動して傾く。
そこで、上記のように構成して、第1リングギア42と第2キャリア55との間にスラストベアリングBdを設けることにより、第2キャリア55が第1リングギア42と連動して傾く。従って、第2キャリア55は第2サンギア51と連動して傾く。すなわち、第2遊星歯車機構5内の2つのメンバである第2サンギア51と第2キャリア55が連動して同じ向きに傾く。これにより、第2遊星歯車機構5内の噛合い位置のズレを低減でき、第2遊星歯車機構5の耐久性を向上することができる。
【0159】
(4)モータシャフト20の回転軸X1方向において、第1リングギア42と第1キャリア45との間にスラストベアリングBcが配置されている。
モータシャフト20の回転軸X1方向において、第1リングギア42と第2キャリア55との間にスラストベアリングBdが配置されている。
スラストベアリングBcとスラストベアリングBdとは、モータシャフト20の回転軸X1の径方向に互いにオフセットして配置されている。
【0160】
円板部422の一方の側面422aと他方の側面422bのそれぞれに一対のスラストベアリングBc、Bdを配置するにあたり、例えばこれら一対のスラストベアリングBc、Bdを回転軸X1方向にオーバーラップさせる(重ねる)ことも考えられる。しかしながら、円板部422の剛性強度確保の観点から、円板部422の厚みも所定量確保することが考えられる。そうすると、動力伝達装置1全体の軸方向長が長くなる。
そこで、上記のように構成して、一対のスラストベアリングBc、Bdを回転軸X1方向の径方向にオフセットして配置して、回転軸X1でオーバーラップしない(重ねない)ようにすることにより、第1遊星歯車機構4全体の軸方向長が長くなることを低減している。
【0161】
(5)モータシャフト20の回転軸X1方向において、第1キャリア45と、第1サンギア41との間にスラストベアリングBb(第3軸受)が配置される。
【0162】
第1リングギア42は、第2サンギア51と連動して傾く。第2サンギア51は、第1サンギア41と連動して傾く。すなわち、第1サンギア41と第1リングギア42と第2サンギア51とは、連動して傾く。
ここで、第1遊星歯車機構4の第1キャリア45は、第2遊星歯車機構5に接続する構成を有さないため、第2遊星歯車機構5の傾きに連動しにくい。
そこで、上記のように構成して、第1キャリア45と第1サンギア41との間にスラストベアリングBbを設けることにより、第1キャリア45が第1サンギア41と連動して傾く。すなわち、第1遊星歯車機構4内の3つのメンバである第1サンギア41と第1リングギア42と第1キャリア45とが連動して同じ向きに傾く。これにより、第1遊星歯車機構4内の噛合い位置のズレを低減でき、第1遊星歯車機構4の耐久性を向上することができる。
【0163】
(6、7)モータシャフト20の回転軸X1方向において、第2サンギア51と、第2キャリア55との間にスラストベアリングBe(第4軸受)が配置される。
【0164】
このように構成すると、第2キャリア55が第2サンギア51に連動して傾く。よって、第2遊星歯車機構内の2つのメンバである第2サンギア51と第2キャリア55とが連動して同じ向きに傾く。これにより、第2遊星歯車機構5内の噛合い位置のズレを低減でき、第2遊星歯車機構5の耐久性を向上することができる。
【0165】
(8)動力伝達装置1は、モータシャフト20に駆動力を供給するモータ2(動力源)を有する。
第2遊星歯車機構5は、モータシャフト20の回転軸X1方向において、モータ2と第1遊星歯車機構4との間に配置されている。
【0166】
このように構成すると、モータ2の出力回転は、ロータコア21が設けられたモータシャフト20の一端20a側に入力されると共に、第1遊星歯車機構4が設けられた他端20bに出力される。第1遊星歯車機構4に出力された出力回転は、モータ2と第1遊星歯車機構4の間に配置された第2遊星歯車機構5に伝達される。第2遊星歯車機構5に伝達された出力回転は、モータ2と第2遊星歯車機構5の間に配置されたリダクションギア6を介してカウンタギア7から差動歯車機構8へ伝達される。
すなわち、動力伝達装置1における出力回転の伝達経路は、モータシャフト20の一端20a側から他端20b側まで行ったのち、一端20a側へ折り返すとともに、モータシャフト20の一端20aと他端20bの間の領域から出力される。これにより、カウンタギア7と噛み合う差動歯車機構8を、回転軸X1方向においてモータ2動力源に近付けて配置することが容易となる。これにより、動力伝達装置1の回転軸X1方向の寸法が大型化することを低減できる。
【0167】
(9)モータシャフト20は、第1サンギア41及び第2サンギア51の内周を貫通すると共に、モータ2の出力軸と一体に形成されている。
【0168】
ここで、モータシャフトは、複数の軸部材を繋ぎ合わせて構成することも考えられる。例えば、ロータコア21に接続される第1軸部材と、第1遊星歯車機構4の第1サンギア41に接続される第2軸部材とを有し、これら第1軸部材と第2軸部材とを回転軸X1方向で接続することが考えられる。しかしながら、複数の軸部材を繋ぎ合わせることは、部品点数の増加や、軸部材同士の心合わせをする工程が必要となるため、製造コストが増大する。複数の部材を繋ぎ合わせるため、軸が振れやすくなる。
そこで、上記のように構成して、1本のモータシャフト20でロータコア21の回転の入力と、第1遊星歯車機構4への回転の出力とを行うことで、軸の支持構造を減らすことが可能となる。これにより、部品点数削減による小型軽量化、製造コスト低減を実現できる。
【0169】
(変形例1、2)
本実施形態では、第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42のうちの一要素である第1キャリア45が、クラッチ35(第2締結要素)を介して、第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42のうちの他の一要素である第1サンギア41と接続される場合を例示した(図1参照)。しかしながら、この態様に限定されない。例えば、以下のようにしても良い。
【0170】
図14は、変形例1にかかる動力伝達装置1Aを説明するスケルトン図である。
図14に示すように、変形例1にかかる動力伝達装置1Aでは、第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42のうちの一要素である第1サンギア41は、クラッチ35(第2締結要素)を介して、第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42のうちの他の一要素である第1リングギア42と接続される。
【0171】
図15は、変形例2にかかる動力伝達装置1Bを説明するスケルトン図である。
図15に示すように、変形例2にかかる動力伝達装置1Bでは、第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42のうちの一要素である第1キャリア45は、クラッチ35(第2締結要素)を介して、第1サンギア41と第1キャリア45と第1リングギア42のうちの他の一要素である第1リングギア42と接続される。
【0172】
これらのようにすることによっても、レイアウト性が向上する動力伝達装置1A、1Bを提供することができる。
【0173】
なお、本実施形態では、装置の一例として、車両用の動力伝達装置を例示したが、この態様に限定されない。遊星歯車機構を備える装置であれば、車両以外にも適用することができる。
【0174】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0175】
1 :動力伝達装置(装置)
2 :モータ(動力源)
4 :第1遊星歯車機構
5 :第2遊星歯車機構
6 :リダクションギア(出力軸)
15 :第4ケース部材(第2固定要素)
16 :第5ケース部材(第1固定要素)
20 :モータシャフト(入力軸)
35 :クラッチ(第2締結要素)
36 :セレクタブルワンウェイクラッチ(第1締結要素)
41 :第1サンギア
42 :第1リングギア
45 :第1キャリア
51 :第2サンギア
52 :第2リングギア
55 :第2キャリア
Bb :スラストベアリング(第3軸受)
Bc :スラストベアリング(第1軸受)
Bd :スラストベアリング(第2軸受)
Be :スラストベアリング(第4軸受)
X1 :回転軸(入力軸の軸方向)
図1
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