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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】圧縮機及びシールガス流量調整方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/10 20060101AFI20240909BHJP
   F16J 15/40 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
F04D29/10 A
F16J15/40 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019005754
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020112150
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】馬場 利秋
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】米倉 秀明
【審判官】北村 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-174106(JP,A)
【文献】特開平09-170592(JP,A)
【文献】特開2000-303990(JP,A)
【文献】特開2012-107609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/10
F16J 15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なロータ部と、
前記ロータ部と一体的に回転するシャフト部と、
前記シャフト部の周囲に配置され、前記ロータ部からのガスの漏洩を防止する軸封部と、
前記ロータ部の作動によって圧縮されたガスの一部をシールガスとして前記軸封部に供給するシールガス供給路と、
前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの質量流量又は標準状態における体積流量を検出する流量センサと、
前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの圧力を検出する圧力センサと、
前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの温度を検出する温度センサと、
前記シールガス供給路上において前記流量センサ、前記圧力センサおよび前記温度センサよりも上流側に位置し、前記シールガス供給路を通して前記軸封部に供給されるシールガスの流量を調整する弁部材と、
前記流量センサ、前記圧力センサ及び前記温度センサの検出値を用いて、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を導出する体積流量導出部と、
定格運転状態で設定された前記弁部材の開度を、前記体積流量導出部によって得られた前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1に基づいて、前記軸封部に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように調整する弁制御部と、を備え、
前記弁制御部は、前記体積流量導出部によって得られた体積流量FV1が下限値LFVよりも低ければ、前記弁部材の開度を大きくし、前記体積流量導出部によって得られた体積流量FV1が上限値HFVよりも高ければ、前記弁部材の開度を小さくする、
圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記流量センサは、標準状態における体積流量を検出するように構成され、
前記流量センサによって検出された標準状態における前記シールガスの前記体積流量の値から、前記シールガスの質量流量を求める質量流量導出部と、
前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力に基づき、予め用意された計算近似式又はデータベースを参照して、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの密度を求める密度導出部と、
をさらに備え、
前記体積流量導出部は、前記質量流量導出部によって求められた前記質量流量を、前記密度導出部によって求められた前記密度により除することにより、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求めるように構成されている、
圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の圧縮機において、
前記流量センサは、検出したガスの流量を標準状態における体積流量として出力するように構成され、
前記体積流量導出部は、前記流量センサから出力された標準状態における前記シールガスの前記体積流量を、PV/T=k(Pはガス圧力、Vはガス体積、Tはガスの絶対温度、kは定数)の関係を利用して、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求めるように構成されている、
圧縮機。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の圧縮機において、
前記圧力センサ及び前記温度センサは、繰り返し検出値を出力し、
前記圧力センサ又は前記温度センサの検出値が異常値と判断されたときに、入力された前記検出値を用いずに、前回の検出値を保持する値修正部を備えている圧縮機。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の圧縮機において、
前記ロータ部の前段に配置され回転可能な前段ロータ部と、
前記前段ロータ部と一体的に回転する前段シャフト部と、
前記前段シャフト部の周囲に配置された前段軸封部と、
シールガスを前記前段軸封部に供給する前段供給路と、
前記前段供給路を通して前記前段軸封部に供給されるシールガスの流量を調整する前段弁部材と、
前記前段供給路を流れる前記シールガスの質量流量又は標準状態における体積流量を検出する前段流量センサと、
前記前段供給路を流れる前記シールガスの圧力を検出する前段圧力センサと、
前記前段供給路を流れる前記シールガスの温度を検出する前段温度センサと、
前記前段流量センサ、前記前段圧力センサ及び前記前段温度センサの検出値を用いて、前記前段ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量を導出する前段体積流量導出部と、
定格運転状態で設定された前記前段弁部材の開度を、前記前段体積流量導出部によって得られた前記前段ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量に基づいて、前記前段軸封部に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように調整する前段弁制御部と、をさらに備え
前記前段弁制御部は、前記前段体積流量導出部によって得られた体積流量が下限値よりも低ければ、前記前段弁部材の開度を大きくし、前記前段体積流量導出部によって得られた体積流量が上限値よりも高ければ、前記前段弁部材の開度を小さくする、圧縮機。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の圧縮機において、
前記シールガス供給路に配置され、前記軸封部から前記ロータ部に向かってガスが流れることを制限する逆止弁をさらに備えている、圧縮機。
【請求項7】
請求項5に記載の圧縮機において、
前記前段供給路に配置され、前記前段軸封部から前記ロータ部に向かってガスが流れることを制限する前段逆止弁をさらに備えている、圧縮機。
【請求項8】
ロータ部のシャフト部に配置された軸封部に供給されるシールガスの流量を調整する方法であって、
前記ロータ部の作動によって圧縮されたガスの一部をシールガスとしてシールガス供給路を通して前記軸封部に供給し、
圧力センサによって、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの圧力を検出し、
温度センサによって、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの温度を検出し、
流量センサによって、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの質量流量又は標準状態における体積流量を検出し、
前記流量センサ、前記圧力センサ及び前記温度センサの検出値を用いて、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの体積流量FV1を求め、
前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での前記体積流量FV1に基づいて、前記軸封部に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように、前記シールガス供給路において前記流量センサ、前記圧力センサおよび前記温度センサよりも上流側に配置された弁部材の開度であって定格運転状態で設定された前記開度を調整し、
前記求められた前記シールガスの体積流量FV1が下限値LFVよりも低ければ、前記弁部材の開度を大きくし、前記求められた前記シールガスの体積流量FV1が上限値HFVよりも高ければ、前記弁部材の開度を小さくする、シールガス流量調整方法。
【請求項9】
請求項8に記載のシールガス流量調整方法において、
前記流量センサから出力された標準状態における前記シールガスの前記体積流量の値から、前記シールガスの質量流量を求め、
前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力に基づき、予め用意された計算近似式又はデータベースを参照して、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの密度を求め、
前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での前記体積流量FV1を求めるに際し、前記求められた前記質量流量を、前記求められた前記密度により除することにより、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求める、シールガス流量調整方法。
【請求項10】
請求項8に記載のシールガス流量調整方法において、
前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での前記体積流量FV1を求めるに際し、前記流量センサから出力された標準状態における前記シールガスの前記体積流量を、PV/T=k(Pはガス圧力、Vはガス体積、Tはガスの絶対温度、kは定数)の関係を利用して、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求める、シールガス流量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機及びシールガス流量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機等の流体機械の回転軸とハウジングとの間の間隙をガスによって封止することが行われている。下記特許文献1では、軸封部に供給される封止ガスの圧力を検出する圧力センサと、封止ガスの温度を検出する温度センサとが設けられている。また、特許文献1には、圧縮機のプロセスガスで封止することも開示されている。下記特許文献2においても、圧縮機のプロセスガスをシールガスとして用いている。また、特許文献2においては、シールガスとして用いられるプロセスガスの温度を検出する温度センサと、同プロセスガスの圧力を検出する圧力センサと、同プロセスガスの流量を制御する流量制御デバイスと、が設けられている。
【0003】
特許文献2の流量制御デバイスは、例えば、計量オリフィスの前後で一定の差圧を維持することによって、通過するガスの体積を調節するデバイスによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-529674号公報
【文献】特開2013-210099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮機の回転軸の軸封止においては、シールガスラインに配置された流量計を用いて流量制御が行われる。この場合の制御目標値は、一般的に、標準状態における値(Nm/h)、すなわち標準状態における体積流量、または、質量流量とされる。このような流量制御では、通常、圧縮機の定格運転状態において適正なシールガス量となるように、シールガスの流量調整用の弁の開度が設定される。しかし、圧縮機が定格運転状態とは温度や圧力が異なる状態で運転される場合において、流量調整用の弁の開度が定格運転状態で設定された開度のままだと、軸封部におけるシールガス量に過不足が生じてしまう。その結果、適正なシールが実現されない。
【0006】
本発明の目的は、標準状態における体積流量でシールガスの流量制御を行う場合であっても、適正流量のシールガスを軸封部に供給できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、回転可能なロータ部と、前記ロータ部と一体的に回転するシャフト部と、前記シャフト部の周囲に配置され、前記ロータ部からのガスの漏洩を防止する軸封部と、前記ロータ部の作動によって圧縮されたガスの一部をシールガスとして前記軸封部に供給するシールガス供給路と、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの質量流量又は標準状態における体積流量を検出する流量センサと、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの圧力を検出する圧力センサと、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの温度を検出する温度センサと、前記シールガス供給路上において前記流量センサ、前記圧力センサおよび前記温度センサよりも上流側に位置し、前記シールガス供給路を通して前記軸封部に供給されるシールガスの流量を調整する弁部材と、前記流量センサ、前記圧力センサ及び前記温度センサの検出値を用いて、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を導出する体積流量導出部と、定格運転状態で設定された前記弁部材の開度を、前記体積流量導出部によって得られた前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1に基づいて、前記軸封部に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように調整する弁制御部と、を備え、前記弁制御部は、前記体積流量導出部によって得られた体積流量FV1が下限値LFVよりも低ければ、前記弁部材の開度を大きくし、前記体積流量導出部によって得られた体積流量FV1が上限値HFVよりも高ければ、前記弁部材の開度を小さくする、圧縮機である。
【0008】
本発明では、流量センサは、シールガスの質量流量又は標準状態における体積流量を検出する。体積流量導出部は、流量センサ、圧力センサ及び温度センサの検出値からロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を導出する。弁制御部は、導出された体積流量FV1に基づいて、軸封部に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように弁部材の開度を調整する。したがって、ロータ部の作動によって圧縮されたガスの圧力(吐出圧力)やガス温度が定格運転のときの吐出圧力や温度から乖離していたとしても、適正なシールガス流量を得ることができる。しかも、シールガス供給路上において、弁部材が、流量センサ、圧力センサおよび温度センサよりも上流側に位置するため、シールガスの体積流量、圧力及び温度をそれぞれ、軸封部により近い位置で検出することができる。しかも、流量センサが弁部材よりも下流側に位置しているので、弁部材によって流量が調整された後のシールガスの体積流量を検知することができ、より適正なシールガス量を得ることができる。
【0009】
ここで、仮に、弁制御部が、標準状態におけるガスの体積流量に基づいて、弁部材の開度を調整するとした場合について考えてみる。この場合において、ロータ部の作動によって吐出されたガスの圧力(吐出圧力)やガス温度が定格運転のときの吐出圧力や温度から乖離していた場合には、適正なシールガス流量が得られないことが起こり得る。これは、定格運転が行われているときのガスを体積流量が所定の体積流量になるように予め弁部材の開度が設定されるため、定格運転から乖離した場合には、検知されたガス流量を標準状態での体積流量として出力する流量センサの出力値が実際のガス体積流量の値からずれることに起因する。
【0010】
前記流量センサは、標準状態における体積流量を検出するように構成されてもよい。前記圧縮機は、前記流量センサによって検出された標準状態における前記シールガスの前記体積流量の値から、前記シールガスの質量流量を求める質量流量導出部と、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力に基づき、予め用意された計算近似式又はデータベースを参照して、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの密度を求める密度導出部と、をさらに備えてもよい。この場合、前記体積流量導出部は、前記質量流量導出部によって求められた前記質量流量を、前記密度導出部によって求められた前記密度により除することにより、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求めるように構成されていてもよい。
【0011】
この態様では、流量センサから出力された標準状態におけるシールガスの体積流量に、標準状態でのガス密度を乗ずることにより、シールガスの質量流量が求まる。一方、密度導出部は、ロータ部の回転時の温度及び圧力下でのシールガスの密度を求める。体積流量導出部は、質量流量導出部による導出結果及び密度導出部による導出結果を用いて、シールガスの体積流量FV1を導出する。したがって、この圧縮機では、ボイル・シャルルの法則を利用しないため、シールガスが実在気体である場合にも、適正なシールガス流量を得ることができる。また、シールガスを理想気体として扱うことができる場合にも適正なシールガス流量を得ることができる。
【0012】
前記圧縮機において、前記流量センサは、検出したガスの流量を標準状態における体積流量として出力するように構成されてもよい。前記体積流量導出部は、前記流量センサから出力された標準状態における前記シールガスの前記体積流量を、PV/T=k(Pはガス圧力、Vはガス体積、Tはガスの絶対温度、kは定数)の関係を利用して、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求めるように構成されていてもよい。
【0013】
この態様では、ガスの圧力等が変化した場合でもPV/Tの値が一定で変化しないというボイル・シャルルの法則を利用して、シールガスの体積流量FV1を求める。すなわち、ガスが理想気体である場合には、PV/Tの値が一定値となるため、この関係を利用して、標準状態におけるシールガスの体積流量からロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求めることができる。このため、シールガスを理想気体として扱うことができる場合において、ガスの密度に関する情報を用いなくても、適正なシールガス流量を得ることができる。
【0014】
前記圧縮機において、前記圧力センサ及び前記温度センサは、繰り返し検出値を出力してもよい。この場合、前記圧縮機は、前記圧力センサ又は前記温度センサの検出値が異常値と判断されたときに、入力された前記検出値を用いずに、前回の検出値を保持する値修正部を備えていてもよい。
【0015】
この態様では、圧力センサ又は温度センサの検出値が前回の検出値からかけ離れた異常値であった場合に、値修正部は、今回の検出値を用いるのではなく前回の検出値を保持する。したがって、圧力センサ又は温度センサの検出値がセンサの故障等によって突然、異常な値を出力した場合であっても、異常が検出される前の本来の値が値修正部によって出力される。したがって、体積流量導出部は、ガス圧力及びガス温度として正常な値を用いて、シールガスの体積流量を導出することができる。
【0016】
前記圧縮機は、前記ロータ部の前段に配置され回転可能な前段ロータ部と、前記前段ロータ部と一体的に回転する前段シャフト部と、前記前段シャフト部の周囲に配置された前段軸封部と、シールガスを前記前段軸封部に供給する前段供給路と、前記前段供給路を通して前記前段軸封部に供給されるシールガスの流量を調整する前段弁部材と、前記前段供給路を流れる前記シールガスの質量流量又は標準状態における体積流量を検出する前段流量センサと、前記前段供給路を流れる前記シールガスの圧力を検出する前段圧力センサと、前記前段供給路を流れる前記シールガスの温度を検出する前段温度センサと、前記前段流量センサ、前記前段圧力センサ及び前記前段温度センサの検出値を用いて、前記前段ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量を導出する前段体積流量導出部と、定格運転状態で設定された前記前段弁部材の開度を、前記前段体積流量導出部によって得られた前記前段ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量に基づいて、前記前段軸封部に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように調整する前段弁制御部と、をさらに備え、前記前段弁制御部は、前記前段体積流量導出部によって得られた体積流量が下限値よりも低ければ、前記前段弁部材の開度を大きくし、前記前段体積流量導出部によって得られた体積流量が上限値よりも高ければ、前記前段弁部材の開度を小さくしてもよい。
【0017】
この態様では、前段供給路を通して前段軸封部に供給されるシールガス流量がシールガス供給路を通して軸封部に供給されるシールガス流量と別個に制御される。このため、軸封部と前段軸部とにおいてそれぞれ適正なシールガス流量を得ることができる。
【0018】
前記流体機械において、前記流量センサ、前記圧力センサ及び前記温度センサは、前記シールガス供給路において、前記弁部材よりも下流側に配置されていてもよい。
【0019】
この態様では、シールガスの体積流量、圧力及び温度をそれぞれ、軸封部により近い位置で検出することができる。しかも、流量センサが弁部材よりも下流側に位置しているので、弁部材によって流量が調整された後のシールガスの体積流量を検知することができ、より適正なシールガス量を得ることができる。
【0020】
前記圧縮機は、前記シールガス供給路に配置され、前記軸封部から前記ロータ部に向かってガスが流れることを制限する逆止弁をさらに備えていてもよい。
【0021】
この態様では、シールガスの圧力が低下している場合であっても、軸封部からロータ部にシールガスが逆流することを防止することができる。したがって、軸封部でのガスシールを維持することができる。
【0022】
前記圧縮機は、前記前段供給路に配置され、前記前段軸封部から前記ロータ部に向かってガスが流れることを制限する前段逆止弁をさらに備えていてもよい。
【0023】
この態様では、シールガスの圧力が低下している場合であっても、前段軸封部から前段ロータ部にシールガスが逆流することを防止することができる。したがって、前段軸封部でのガスシールを維持することができる。
【0024】
本発明は、ロータ部のシャフト部に配置された軸封部に供給されるシールガスの流量を調整する方法であって、前記ロータ部の作動によって圧縮されたガスの一部をシールガスとしてシールガス供給路を通して前記軸封部に供給し、圧力センサによって、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの圧力を検出し、温度センサによって、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの温度を検出し、流量センサによって、前記シールガス供給路を流れる前記シールガスの質量流量又は標準状態における体積流量を検出し、前記流量センサ、前記圧力センサ及び前記温度センサの検出値を用いて、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの体積流量FV1を求め、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での前記体積流量FV1に基づいて、前記軸封部に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように、前記シールガス供給路において前記流量センサ、前記圧力センサおよび前記温度センサよりも上流側に配置された弁部材の開度であって定格運転状態で設定された前記開度を調整し、前記求められた前記シールガスの体積流量FV1が下限値LFVよりも低ければ、前記弁部材の開度を大きくし、前記求められた前記シールガスの体積流量FV1が上限値HFVよりも高ければ、前記弁部材の開度を小さくする、シールガス流量調整方法である。
【0025】
前記シールガス流量調整方法において、前記流量センサから出力された標準状態における前記シールガスの前記体積流量の値から、前記シールガスの質量流量を求め、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力に基づき、予め用意された計算近似式又はデータベースを参照して、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの密度を求め、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での前記体積流量FV1を求めるに際し、前記求められた前記質量流量を、前記求められた前記密度により除することにより、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求めてもよい。
【0026】
前記シールガス流量調整方法において、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での前記体積流量FV1を求めるに際し、前記流量センサから出力された標準状態における前記シールガスの前記体積流量を、PV/T=k(Pはガス圧力、Vはガス体積、Tはガスの絶対温度、kは定数)の関係を利用して、前記ロータ部の回転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量FV1を求めてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、標準状態における体積流量でシールガスの流量制御を行う場合であっても、適正流量のシールガスを軸封部に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態による圧縮機の概略図である。
図2】前記圧縮機でのシールガスの流量調整方法を説明する図である。
図3】第1実施形態の変形例による圧縮機の概略図である。
図4】第2実施形態の圧縮機でのシールガスの流量調整方法を説明する図である。
図5】第3本実施形態による圧縮機の概略図である。
図6】第3実施形態の圧縮機でのシールガスの流量調整方法を説明する図である。
図7】第1~第3実施形態の変形例による圧縮機の概略図である。
図8】第4実施形態によるタービンの一部を概略的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
第1実施形態では、流体を圧縮する圧縮機として構成された流体機械について説明する。図1は、第1実施形態に係る圧縮機10の概略図である。図1に示すように、圧縮機10は、第1ロータ部11と、第2ロータ部12と、第3ロータ部13と、第1ロータ部11に接続された第1シャフト部14と、第2ロータ部12に接続された第2シャフト部15と、第3ロータ部13に接続された第3シャフト部16と、を備えている。また圧縮機10は、第1~第3シャフト部14~16を駆動するための動力を発生する電動機19と、電動機19の動力を第1~第3シャフト部14~16に伝えるための伝動機構20と、を備えている。
【0031】
伝動機構20は、電動機19に接続された伝動軸20aと、伝動軸20aに固定されたブルギア20bと、ブルギア20bに噛み合う第1ピニオンギア20cと、ブルギア20bに噛み合う第2ピニオンギア20dと、を備えている。第1ピニオンギア20cには、第1シャフト部14及び第2シャフト部15が結合している。第2ピニオンギア20dには、第3シャフト部16が結合している。したがって、電動機19が作動すると、伝動機構20を介して第1シャフト部14、第2シャフト部15及び第3シャフト部16が回転する。これにより、第1ロータ部11、第2ロータ部12及び第3ロータ部13も回転する。
【0032】
第1ロータ部11、第2ロータ部12及び第3ロータ部13は、いずれもガスを圧縮するためのものであり、共通のハウジング22に収められている。第1ロータ部11とハウジング22との間の空間が第1圧縮空間22aとなる。第2ロータ部12とハウジング22との間の空間が第2圧縮空間22bとなる。第3ロータ部13とハウジング22との間の空間が第3圧縮空間22cとなる。
【0033】
第1ロータ部11は、本実施形態ではインペラによって構成されている。すなわち、第1ロータ部11は遠心圧縮機の構成要素となっている。第1ロータ部11が回転することにより、圧縮機10の外部から吸入したガスが圧縮される。すなわち、ハウジング22には、第1圧縮空間にガスを吸入する吸入路22dが形成されている。
【0034】
第2ロータ部12も本実施形態ではインペラによって構成されている。すなわち、第2ロータ部12は遠心圧縮機の構成要素となっている。第2ロータ部12が回転することにより、第1ロータ部11によって圧縮されたガスがさらに圧縮される。すなわち、ハウジング22には、第1圧縮空間22aから吐出されたガスを第2圧縮空間22bに導入させる第1接続路22eが形成されている。
【0035】
第3ロータ部13も本実施形態ではインペラによって構成されている。すなわち、第3ロータ部13は遠心圧縮機の構成要素となっている。第3ロータ部13が回転することにより、第2ロータ部12によって圧縮されたガスをさらに圧縮する。すなわち、ハウジング22には、第2圧縮空間22bから吐出されたガスを第3圧縮空間22cに導入させる第2接続路22fが形成されている。第3ロータ部13の作動によって圧縮されたガスは、圧縮機10の外部に排出される。すなわち、ハウジング22には、圧縮されたガス排出路22gが形成されている。
【0036】
なお、本実施形態では、第1~第3ロータ部13がインペラによって構成された例を示すが、これに限られない。例えば、第1~第3ロータ部13は、回転することによってガスを圧縮することができる構成であれば、スクリュー等の他のタイプのロータによって構成されていてもよい。
【0037】
第1シャフト部14は第1ロータ部11の背面に接続されており、第1シャフト部14には第1軸封部24が配置されている。遠心圧縮機10では、インペラによって圧縮されたガスの一部がインペラの背面側を通って圧縮空間から漏れ出る可能性があるため、ガスの漏出を抑制するために軸封部が設けられている。同様に、第2ロータ部12の背面に接続された第2シャフト部15には第2軸封部25が配置され、第3ロータ部13の背面に接続された第3シャフト部16には第3軸封部26が配置されている。なお、第1シャフト部14は第1ロータ部11の背面に接続される構成に限られるものではなく、第1シャフト部14は第1ロータ部11を回転させることができるように第1ロータ部11に接続されていればよい。第2シャフト部15及び第3シャフト部16についても同様である。
【0038】
第1軸封部24は、第1シャフト部14の外周面との間に封止室を形成するように第1シャフト部14の周囲に設けられている。第1軸封部24は、例えばラビリンスシールによって構成されているが、第1シャフト部14の周囲に軸封室を形成するシールであれば、その他のタイプのシールによって構成されていてもよい。封止室には、後述するように、第3ロータ部13で圧縮されたガスの一部が導入される。すなわち、第3圧縮空間から吐出されたガスの一部がシールガスとして用いられる。第2軸封部25及び第3軸封部26も第1軸封部24と同様の構成を有している。なお、軸封部24,25,26は、ラビリンスシールに代え、ドライガスシール又はカーボンパッキンシールによって構成されていてもよい。
【0039】
第3ロータ部13から見れば、第2ロータ部12は前段ロータ部として機能し、第2ロータ部12から見れば、第1ロータ部11は前段ロータ部として機能する。第2ロータ部12が前段ロータ部として機能する場合、第2シャフト部15は前段シャフト部として機能し、第2軸封部25は前段軸封部として機能する。第1ロータ部11が前段ロータ部として機能する場合、第1シャフト部14は前段シャフト部として機能し、第1軸封部24は前段軸封部として機能する。
【0040】
圧縮機10は、第1軸封部24にシールガスを供給するための第1シールガス供給部と、第2軸封部25にシールガスを供給するための第2シールガス供給部と、第3軸封部26にシールガスを供給するための第3シールガス供給部と、を備えている。
【0041】
第1シールガス供給部は、ガス排出路22gから分岐する主流路23に接続されたガス供給路(第1ガス供給路)28を備えている。第1ガス供給路28には、第3ロータ部13によって圧縮されたガスの一部(シールガス)が流れる。第1ガス供給路28は、第1軸封部24にシールガスを供給するシールガス供給路又は前段供給路として機能する。なお、第1ガス供給路28は、主流路23に接続されるのではなく、ガス排出路22gに接続されていてもよい。
【0042】
第1ガス供給路28には、流量調整弁(第1調整弁)29と逆止弁(第1逆止弁)30とが配置されている。第1調整弁29は、開度調整可能な弁によって構成されており、第1ガス供給路28において第1軸封部24に向けて流れるシールガスの流量を調整する。第1逆止弁30は、ガス排出路22gから第1軸封部24に向かうシールガスの流れを許容する一方で、第1軸封部24からガス排出路22gに向かうシールガスの流れを阻止する。なお、第1ガス供給路28は、第3ロータ部13によって圧縮されたガスの一部をシールガスとして用いるのではなく、第1ロータ部11によって圧縮されたガスの一部をシールガスとして用いる構成であってもよい。この場合、第1ガス供給路28は、第1接続路22eから分岐していてもよい。つまり、各圧縮段からのガスをその圧縮段の軸封部のシールガスとして用いてもよい。また、第1ガス供給路28は、第2ロータ部12によって圧縮されたガスの一部をシールガスとして用いる構成であってもよい。
【0043】
第2シールガス供給部は、主流路23に接続されたガス供給路(第2ガス供給路)32を備えている。第2ガス供給路32には、第3ロータ部13によって圧縮されたガスの一部(シールガス)が流れる。第2ガス供給路32は、第2軸封部25にシールガスを供給するシールガス供給路又は前段供給路として機能する。なお、第2ガス供給路32は、主流路23に接続されるのではなく、ガス排出路22gに接続されていてもよい。
【0044】
第2ガス供給路32には、流量調整弁(第2調整弁)33と逆止弁(第2逆止弁)34とが配置されている。第2調整弁33は、開度調整可能な弁によって構成されており、第2ガス供給路32において第2軸封部25に向けて流れるシールガスの流量を調整する。第2逆止弁34は、ガス排出路22gから第2軸封部25に向かうシールガスの流れを許容する一方で、第2軸封部25からガス排出路22gに向かうシールガスの流れを阻止する。なお、第2ガス供給路32は、第1ガス供給路28に接続されるのではなく、ガス排出路22gから分岐するようにガス排出路22gに接続されていてもよい。また、第2ガス供給路32は、第3ロータ部13によって圧縮されたガスの一部をシールガスとして用いるのではなく、第2ロータ部12によって圧縮されたガスの一部をシールガスとして用いる構成であってもよい。この場合、第2ガス供給路32は、第2接続路22fから分岐していてもよい。つまり、各圧縮段からのガスをその圧縮段の軸封部のシールガスとして用いてもよい。
【0045】
第3シールガス供給部は、主流路23に接続されたガス供給路(第3ガス供給路)36を備えている。第3ガス供給路36には、第3ロータ部13で圧縮された後のガスの一部(シールガス)が流れる。第3ガス供給路36は、第3軸封部26にシールガスを供給するシールガス供給路として機能する。なお、第3ガス供給路36は、主流路23に接続されるのではなく、ガス排出路22gに接続されていてもよい。
【0046】
第3ガス供給路36には、流量調整弁(第3調整弁)37と逆止弁(第3逆止弁)38とが配置されている。第3調整弁37は、開度調整可能な弁によって構成されており、第3ガス供給路36において第3軸封部26に向けて流れるシールガスの流量を調整する。第3逆止弁38は、ガス排出路22gから第3軸封部26に向かうシールガスの流れを許容する一方で、第3軸封部26からガス排出路22gに向かうシールガスの流れを阻止する。なお、第3ガス供給路36は、第2ガス供給路32に接続されるのではなく、ガス排出路22gから分岐するようにガス排出路22gに接続されていてもよく、あるいは第1ガス供給路28から分岐するように第1ガス供給路28に接続されていてもよい。
【0047】
第3ガス供給路36は、軸封部にシールガスを供給するシールガス供給路として機能する。この場合、第2ガス供給路32又は第1ガス供給路28は、前段軸封部にシールガスを供給する前段供給路として機能する。第3調整弁37は弁部材として機能し、第2調整弁33又は第1調整弁29は前段弁部材として機能する。第2逆止弁34又は第1逆止弁30は、前段供給部が有する前段逆止弁として機能する。また、第2ガス供給路32を、軸封部にシールガスを供給するシールガス供給路として見た場合には、第1ガス供給路28は前段軸封部にシールガスを供給する前段供給路に該当する。この場合、第2調整弁33は弁部材となり、第1調整弁29は前段弁部材に該当する。第1逆止弁30は、前段供給部が有する前段逆止弁となる。また、第1ガス供給路32をシールガス供給路と見ることもできる。この場合、第1調整弁29は弁部材として機能する。
【0048】
第1ガス供給路28には、第1ガス供給路28を流れるガスの圧力を検出する圧力センサ(第1圧力センサ)41と、当該ガスの温度を検出する温度センサ(第1温度センサ)42と、当該ガスの流量を検知する流量センサ(第1流量センサ)43と、が配置されている。第1圧力センサ41は、検出した圧力を示す信号を出力する。第1温度センサ42は検出した温度を示す信号を出力する。第1流量センサ43は、検知したガス流量を標準状態における体積流量の値で示す信号を出力する。例えば、第1流量センサ43は、オリフィス式の流量計、ベンチュリ式の流量計、渦電流式の流量計、カルマン渦式の流量計、熱式の流量計等によって構成されてもよい。
【0049】
第1圧力センサ41、第1温度センサ42及び第1流量センサ43は、何れも第1ガス供給路28において、第1調整弁29よりも下流側に配置されている。なお、第1圧力センサ41、第1温度センサ42及び第1流量センサ43の配置順は任意である。
【0050】
第2ガス供給路32には、第2ガス供給路32を流れるガスの圧力を検出する圧力センサ(第2圧力センサ)45と、当該ガスの温度を検出する温度センサ(第2温度センサ)46と、当該ガスの流量を検知する流量センサ(第2流量センサ)47と、が配置されている。第3ガス供給路36には、第3ガス供給路36を流れるガスの圧力を検出する圧力センサ(第3圧力センサ)49と、当該ガスの温度を検出する温度センサ(第3温度センサ)50と、当該ガスの流量を検知する流量センサ(第3流量センサ)51と、が配置されている。第2圧力センサ45及び第3圧力センサ49は第1圧力センサ41と同様の構成である。第2温度センサ46及び第3温度センサ50は第1温度センサ42と同様の構成である。第2流量センサ47及び第3流量センサ51は第1流量センサ43と同様の構成である。
【0051】
第2圧力センサ45、第2温度センサ46及び第2流量センサ47は、何れも第2供給路において、第2調整弁33よりも下流側に配置されている。また、第3圧力センサ49、第3温度センサ50及び第3流量センサ51は、何れも第3供給路において、第3調整弁37よりも下流側に配置されている。
【0052】
第3圧力センサ49から見ると、第1圧力センサ41又は第2圧力センサ45は、前段供給部を流れるシールガスの圧力を検出する前段圧力センサとして機能する。また、第3温度センサ50から見ると、第1温度センサ42又は第2温度センサ46は、前段供給部を流れる前記シールガスの温度を検出する前段温度センサとして機能する。また、第3流量センサ51から見ると、第1流量センサ43又は第2流量センサ47は、前段供給部を流れるシールガスの流量を検知する前段流量センサとして機能する。なお、第1圧力センサ41は第2圧力センサ45に対しても前段圧力センサとして機能し、第1温度センサ42は第2温度センサ46に対しても前段温度センサとして機能し、第1流量センサ43は第2流量センサ47に対しても前段流量センサとして機能する。
【0053】
第1圧力センサ41、第1温度センサ42及び第1流量センサ43から出力された信号は、第1コントローラ55に入力される。第1コントローラ55は、第1ガス供給路28を通して第1軸封部24に供給するシールガスの流量を調整するための制御を行う。第2圧力センサ45、第2温度センサ46及び第2流量センサ47から出力された信号は、第2コントローラ56に入力される。第2コントローラ56は、第2ガス供給路32を通して第2軸封部25に供給するシールガスの流量を調整するための制御を行う。第3圧力センサ49、第3温度センサ50及び第3流量センサ51から出力された信号は、第3コントローラ57に入力される。第3コントローラ57は、第3ガス供給路36を通して第3軸封部26に供給するシールガスの流量を調整するための制御を行う。なお、第1コントローラ55、第2コントローラ56及び第3コントローラ57は、別個に構成されている必要はなく、1つのコントローラとして構成されてもよい。
【0054】
第1コントローラ55は、記憶部(メモリーデバイス)、演算部(CPU等)を備えた構成であって、記憶部に記録されたプログラムを実行することにより、所定の機能を発揮する。記憶部には、ガス温度及びガス圧力に応じてガス密度を抽出できるように、ガスの温度、圧力及び密度の関係を示す計算近似式又はデータベースが記憶されている。
【0055】
第1コントローラ55が発揮する機能には、質量流量導出部55a、密度導出部55b、体積流量導出部55c及び弁制御部55dが含まれる。
【0056】
質量流量導出部55aは、第1流量センサ43から出力された標準状態におけるガスの体積流量の値を質量流量の値に換算する。具体的には、標準状態におけるガスの体積流量に、標準状態におけるガスの密度(既知)を乗ずることにより、ガスの質量流量を求めることができる。なお、質量流量の値は、標準状態でも、圧縮機10の運転時のガス温度及びガス圧力でも同じである。
【0057】
密度導出部55bは、第1圧力センサ41の検出値及び第1温度センサ42の検出値を参照し、記憶部に記憶された計算近似式又はデータベースを用いて、圧縮機10の運転時でのガス圧力及びガス温度におけるガスの密度を抽出する。
【0058】
体積流量導出部55cは、質量流量導出部55aによって求められたガスの質量流量を、密度導出部55bによって求められたガス密度によって除することにより、圧縮機10の運転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの体積流量を求める。
【0059】
弁制御部55dは、体積流量導出部55cによって導出されたガスの体積流量に基づいて、第1軸封部24に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように第1調整弁29の開度を調整する。弁制御部55dは、第1調整弁29(前段弁部材)の開度を調整する前段弁制御部として機能する。
【0060】
第2コントローラ56は、第2圧力センサ45、第2温度センサ46及び第2流量センサ47から出力された信号を用いて、第2調整弁33の開度を調整する制御を行う点で第1コントローラ55の構成と異なるが、質量流量導出部56a、密度導出部56b、体積流量導出部56c及び弁制御部56dが含まれる点で第1コントローラ55と同様の機能を有する。また第3コントローラ57についても、第2コントローラ56と同様、質量流量導出部57a、密度導出部57b、体積流量導出部57c及び弁制御部57dが含まれる点で第1コントローラ55と同様の機能を有する。ここでは、第2コントローラ56及び第3コントローラ57についての詳細な説明は省略する。
【0061】
ここで、本実施形態による圧縮機10での、圧縮機10の軸封部24,25,26に供給するシールガスの流量を調整する方法について、図2を参照しつつ説明する。
【0062】
電動機19が作動すると、第1ロータ部11、第2ロータ部12及び第3ロータ部13が作動する。ハウジング22内に流入したガスは第1圧縮空間22aにおいて圧縮され、その後、第2圧縮空間22bで圧縮された後、さらに第3圧縮空間22cで圧縮され、ガス排出路22gを通してハウジング22の外部に吐出される。ガス排出路22gを流れるガスの一部は、シールガスとして、第1ガス供給路28を通して第1軸封部24に供給され、第2ガス供給路32を通して第2軸封部25に供給され、第3ガス供給路36を通して第3軸封部26に供給される。
【0063】
第1ガス供給路28を流れるガスの圧力が第1圧力センサ41によって検出され、第2ガス供給路32を流れるガスの圧力が第2圧力センサ45によって検出され、第3ガス供給路36を流れるガスの圧力が第3圧力センサ49によって検出される(ステップST1)。また、第1ガス供給路28を流れるガスの温度が第1温度センサ42によって検出され、第2ガス供給路32を流れるガスの温度が第2温度センサ46によって検出され、第3ガス供給路36を流れるガスの温度が第3温度センサ50によって検出される(ステップST2)。また、第1ガス供給路28のガスの流量が第1流量センサ43によって検知され、第2ガス供給路32のガスの流量が第2流量センサ47によって検知され、第3ガス供給路36のガスの流量が第3流量センサ51によって検知される(ステップST3)。第1~第3流量センサ51は、検知した流量を標準状態における体積流量として出力する。各センサから出力された信号は、第1~第3コントローラ55,56,57の何れかに入力される。
【0064】
第1コントローラ55では、第1流量センサ43から出力された標準状態におけるシールガスの体積流量を、第1圧力センサ41及び第1温度センサ42によって検出された圧力及び温度に基づいて、圧縮機10の運転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量に換算する。まず、第1コントローラ55の質量流量導出部55aは、第1流量センサ43の検出値(すなわち、標準状態におけるガスの体積流量の値)FV0に標準状態におけるガスの密度D0を乗ずることにより、ガスの質量流量FM0を算出する(ステップST4)。
【0065】
一方、第1コントローラ55の密度導出部55bは、第1圧力センサ41の検出値及び第1温度センサ42の検出値と、記憶部に記憶された計算近似式又はデータベースとを用いて、圧縮機10の運転時でのガス圧力及びガス温度におけるガス密度D1を抽出する(ステップST5)。
【0066】
次に、第1コントローラ55の体積流量導出部55cは、ガスの質量流量FM0を抽出されたガス密度D1で除することにより、圧縮機10の運転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの体積流量FV1を求める(ステップST6)。
【0067】
次に、第1コントローラ55の弁制御部55dは、シールガスの体積流量FV1に基づいて、第1軸封部24に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内となるように、第1調整弁29の開度を調整する。具体的には、弁制御部55dは、算出された体積流量FV1が、予め設定された体積流量の下限値LFV以上であり且つ予め設定された体積流量の上限値HFV以下であるかを判断する(ステップST7)。算出された体積流量FV1が下限値LFVよりも低ければ、第1調整弁29の開度を大きくし、算出された体積流量FV1が上限値HFVよりも高ければ、第1調整弁29の開度を小さくする(ステップST8)。一方、算出された体積流量FV1が下限値LFVから上限値HFVの範囲内であれば、第1調整弁29の開度を維持する(ステップST9)。これにより、第1軸封部24に供給されるシールガスの流量が一定の範囲内に調整される。
【0068】
第2コントローラ56では、第1コントローラ55による第1調整弁29の開度の調整と実質的に同じ制御により、第2調整弁33の開度を調整する制御が行われる。また、第3コントローラ57でも、第1コントローラ55による第1調整弁29の開度の調整と実質的に同じ制御により、第3調整弁37の開度を調整する制御が行われる。すなわち、第1調整弁29の開度調整と、第2調整弁33の開度調整と、第3調整弁37の開度調整とは、互いに独立して行われる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、第3コントローラ57の体積流量導出部57cが、第3流量センサ51から出力された標準状態におけるシールガスの体積流量を、第3圧力センサ49及び第3温度センサ50によって測定された圧力及び温度に基づいて、圧縮機10の運転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量に換算する。そして、弁制御部57dは、この換算された体積流量に基づいて、第3調整弁37の開度を調整する。したがって、第3ロータ部13の作動によって圧縮されたガスの圧力(吐出圧力)やガス温度が定格運転のときの吐出圧力や温度から乖離していたとしても、適正なシールガス量を得ることができる。体積流量導出部57cの前段体積流量導出部である第2コントローラ56の体積流量導出部56cにおいても、第2流量センサ47、第2圧力センサ45及び第2温度センサ46の検出値に基づいて運転時のガス温度及びガス圧力での体積流量を導出する。この換算された体積流量に基づいて弁制御部56dは第2調整弁33の開度を調整する。体積流量導出部57cの前段体積流量導出部である体積流量導出部55cにおいても、運転時のガス温度及びガス圧力での体積流量に換算し、この換算された体積流量に基づいて弁制御部55dは第1調整弁29の開度を調整する。なお、第1コントローラ55の体積流量導出部55cは、第2コントローラ56の体積流量導出部56cに対しても前段体積流量導出部として機能する。
【0070】
第1~第3軸封部24~26に供給するシールガスの体積流量を調整する場合において、第1~第3軸封部24~26がラビリンスシールで構成されている場合には、ラビリンス部を通過するシールガスの流速を調整することができる。このため、体積流量を所定範囲に収めるように調整することにより、ラビリンス部におけるシールガスの通過流速を一定の範囲内に保つことが可能となり、その結果、適正なガスシールを実現することができる。ラビリンスシール以外のシールでも同様である。
【0071】
また本実施形態では、第1~第3流量センサ43、47,51から出力された標準状態下でのガスの体積流量を一旦、質量流量に換算することにより、運転状態での体積流量を求めるようにしている。このため、シールガスが実在気体である場合に限らず、シールガスが理想気体であると仮定できる場合にも、適正なシールガス量を得ることができる。
【0072】
また本実施形態では、第2ガス供給路32を通して第2軸封部25に供給されるシールガス量が第3ガス供給路36を通して第3軸封部26に供給されるシールガス量と別個に制御される。また、第1ガス供給路28を通して第1軸封部24に供給されるシールガス量が第3ガス供給路36を通して第3軸封部26に供給されるシールガス量と別個に制御される。このため、各軸封部24,25,26においてそれぞれ適正なシールガス量を得ることができる。
【0073】
また本実施形態では、第3流量センサ51、第3圧力センサ49及び第3温度センサ50が第3ガス供給路36において、第3調整弁37よりも下流側に配置されている。このため、シールガスの体積流量、圧力及び温度をそれぞれ、第3軸封部26により近い位置で検出することができる。しかも、第3流量センサ51が第3調整弁37よりも下流側に位置しているので、第3調整弁37によって流量が調整された後のシールガスの体積流量を検知することができ、より適正なシールガス量を得ることができる。
【0074】
また本実施形態では、第3ガス供給路36に第3逆止弁38が配置されているので、第3ロータ部13で圧縮されたガスの圧力が低下している場合であっても、第3軸封部26から第3ロータ部13にガスが逆流することを防止することができる。したがって、第3軸封部26でのガスシールを維持することができる。
【0075】
本実施形態では、センサの検出値に基づいてシールガスの供給量を自動的に調整している。これに対し、手動弁の開度設定によりシールガスの流量が調節されている構成の場合には、圧縮機10の吐出圧力が定格運転のときよりも低い場合や、吐出温度が定格運転のときよりも高い場合において、シールガスの流量が適正量よりも少なくなる。逆に、吐出圧力が高い場合には過剰にシールガスを流す恐れがある。つまり、シールガスとして吐出ガスが使用される場合には、吐出圧力や吐出温度が変動するとシールガスの流量も変動してしまう。例えば圧縮機が起動してから昇圧して、最終的に高圧のガスを吐出する定格運転に至るような場合には、シールガス供給路を流れるガスの圧力はこの過程で変化している。そのため、予め定格運転の状態で調整されていた手動弁の開度そのままでは、適正なシールガス量を常時供給することができない。
【0076】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0077】
図3に示すように、例えば、第1コントローラ55の機能には、値修正部55eが含まれていてもよい。同様に、第2コントローラ56及び第3コントローラ57にも値修正部56e、57eが含まれていてもよい。
【0078】
値修正部55eは、第1圧力センサ41及び第1温度センサ42の検出値が異常値と判断されるような値の場合に、正常値に修正する。具体的に、第1圧力センサ41及び第1温度センサ42は、所定時間毎に繰り返し検出値を示す信号を出力する。このため、値修正55eは、第1圧力センサ41及び第1温度センサ42から信号が入力されるとその入力された信号が示す検出値を保持する。
【0079】
値修正部55eは、入力された第1圧力センサ41の検出値が前回の検出値から予め設定された閾値以上かけ離れていなければ、入力された信号が示す検出値を保持する。一方、値修正部55eは、入力された第1圧力センサ41の検出値が前回の検出値から予め設定された閾値以上かけ離れていた場合には、今回の検出値を保持するのではなく前回の検出値を保持したままにする。そして、値修正部55eは、保持されている検出値を出力する。
【0080】
質量流量導出部55a及び密度導出部55bは、値修正部55eから出力された検出値を、センサの検出値として採用する。なお、第2コントローラ56及び第3コントローラ57の値修正部56e、57eについても同様である。
【0081】
この変形例では、圧力センサ41,45,49又は温度センサ42,46,50の検出値がセンサの故障等によって突然、異常な値を出力した場合であっても、本来の値が値修正部55e,56e,57eによって出力される。したがって、体積流量導出部55c,56c,57cは、ガス圧力及びガス温度として正常な値から得られる値を用いて、体積流量を導出することができる。
【0082】
前記実施形態では、コントローラ55,56,57に記憶されたシールガスの密度を用いて、流量センサ43,47,51によって検知されたガスの体積流量を一旦、質量流量に換算している。代替的に、第2実施形態として、質量流量に換算することなく、圧縮機10の運転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量を導出する形態が説明される。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行う。
【0083】
第2実施形態では、第1コントローラ55の体積流量導出部55cは、第1圧力センサ41から出力されたガス圧力の値及び第1温度センサ42から出力されたガス温度の値を参照する。体積流量導出部55cは、第1流量センサ43から出力された標準状態におけるガスの体積流量の値から、参照したガス圧力及びガス温度での体積流量を算出する。このとき、体積流量導出部55cは、第1温度センサ42から出力された温度(℃)の値を、絶対温度(K)の値に変換して参照する。また、体積流量導出部55cは、ボイル・シャルルの法則;PV/T=k(Pはガス圧力、Vはガス体積、Tはガスの絶対温度、kは定数)を利用して、第1流量センサ43による出力値FV0から、第1圧力センサ41による検出圧力P1及び第1温度センサ42による検出温度の絶対温度T1でのガス体積流量FV1を求める。第1流量センサ43による出力値FV0が、標準状態におけるガス体積流量であるため、標準状態におけるガス圧力P0及び標準状態における絶対温度T0を用いて、圧力P1及び温度T1でのガス体積流量FV1が求まる。なお、標準状態におけるガス圧力P0及び標準状態における絶対温度T0は既知である。
【0084】
そして、弁制御部55dは、体積流量導出部55cによって導出されたガスの体積流量FV1に基づいて、第1調整弁29の開度を調整する。なお、第1コントローラ55の機能には、質量流量導出部55a及び密度導出部55bが含まれていない。
【0085】
第2コントローラ56及び第3コントローラ57についても同様に構成されている。この場合でも、第1コントローラ55、第2コントローラ56及び第3コントローラ57は別個に構成されていてもよく、あるいは1つのコントローラとして構成されていてもよい。
【0086】
ここで、第2実施形態による圧縮機10での、圧縮機10の軸封部24,25,26に供給するシールガスの流量を調整する方法について、図4を参照しつつ説明する。
【0087】
第1~第3圧力センサ41,45,49によってガス圧力が検出され(ステップST1)、第1~第3温度センサ42,46,50によってガス温度が検出され(ステップST2)、第1~第3流量センサ43,47,51によってガス流量が検出される(ステップST3)。第1~第3コントローラ55,56,57において、体積流量導出部55c,56,57cは、第1~第3温度センサ42,46,50から出力された温度(℃)の値を、絶対温度(K)の値に変換して参照する。体積流量導出部55c,56,57cは、ボイル・シャルルの法則を利用して、流量センサ43、47,51による出力値FV0から、圧力センサ41,45,49による検出圧力P1及び温度センサ42,46,50による検出温度の絶対温度T1でのガス体積流量FV1を求める(ステップST10)。そして、算出された体積流量FV1が上限値HFV及び下限値LFVで規定される予め設定された範囲内に収まっているか判断され(ステップST7)、範囲内に収まっていなければ、第1~第3調整弁29,33,37の開度が調整され(ステップST8)、範囲内に収まっていれば、開度は維持される(ステップST9)。
【0088】
第1実施形態及び第2実施形態では、流量センサ43,47,51がシールガスの標準状態における体積流量を検出する構成である。これに対し、第3実施形態では、流量センサ43,47,51がシールガスの質量流量を検出する構成である。例えば、第1流量センサ43は、コリオリ流量計、オリフィス式の流量計、ベンチュリ式の流量計、渦電流式の流量計、カルマン渦式の流量計、熱式の流量計等によって構成され得る。
【0089】
図5に示すように、第3実施形態の第1コントローラ55の機能には、密度導出部55b、体積流量導出部55c及び弁制御部55dが含まれ、質量流量導出部55aは含まれていない。なお、第2コントローラ56及び第3コントローラ57についても同様である。第2コントローラ56及び第3コントローラ57の制御動作は、第1コントローラ55と同様であるので、ここでは、第1コントローラ55の機能についてのみ説明する。
【0090】
体積流量導出部55cは、流量センサの検出値(ガスの質量流量)を、密度導出部55bによって求められたガス密度によって除することにより、圧縮機10の運転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの体積流量を求める。
【0091】
ここで、第3実施形態による圧縮機10での、圧縮機10の軸封部24,25,26に供給するシールガスの流量を調整する方法について、図6を参照しつつ説明する。
【0092】
第1~第3圧力センサ41,45,49によってガス圧力が検出され(ステップST1)、第1~第3温度センサ42,46,50によってガス温度が検出され(ステップST2)、第1~第3流量センサ43,47,51によってガス流量が検出される(ステップST3)。第1コントローラ55において、体積流量導出部55cは、流量センサの検出値(ガスの質量流量)を、密度導出部55bによって求められたガス密度によって除することにより、第1圧力センサ41による検出圧力P1及び第1温度センサ42による検出温度の絶対温度T1でのガス体積流量FV1を求める(ステップST11)。そして、算出された体積流量FV1が上限値HFV及び下限値LFVで規定される予め設定された範囲内に収まっているか判断され(ステップST7)、範囲内に収まっていなければ、第1調整弁29の開度が調整され(ステップST8)、範囲内に収まっていれば、開度は維持される(ステップST9)。なお、第2コントローラ56では、第2圧力センサ45、第2温度センサ46及び第2流量センサ47による検出値が用いられるが、基本的には、第1コントローラ55と同様の演算が行われる。また、第3コントローラ57では、第3圧力センサ49、第3温度センサ50及び第3流量センサ51による検出値が用いられるが、基本的には、第1コントローラ55と同様の演算が行われる。
【0093】
なお、第3実施形態において、第1流量センサ43によって検出されたシールガスの質量流量を標準状態におけるシールガスの密度(既知)で除することにより、標準状態におけるシールガスの体積流量FV0を算出する換算部が含まれていてもよい。この場合、換算部によって得られた標準状態における体積流量FV0と、第1圧力センサ41から出力されたガス圧力P1と、第1温度センサ42から出力されたガス温度T1とに基づいて、検出されたガス圧力及びガス温度での体積流量が算出される。このとき、体積流量導出部55cは、第1温度センサ42から出力された温度(℃)の値を、絶対温度(K)の値に変換して参照する。また、体積流量導出部55cは、ボイル・シャルルの法則を利用して、第1圧力センサ41による検出圧力P1及び第1温度センサ42による検出温度の絶対温度T1でのガス体積流量FV1を求める。換算部によって得られた体積流量FV0は標準状態におけるガス体積流量であるため、標準状態におけるガス圧力P0及び標準状態における絶対温度T0を用いて、圧力P1及び温度T1でのガス体積流量FV1が求められる。なお、標準状態におけるガス圧力P0及び標準状態における絶対温度T0は既知である。
【0094】
なお、前記第1~第3実施形態及びその変形例では、第1シールガス供給部、第2シールガス供給部及び第3シールガス供給部として、それぞれ第3ロータ部13によって圧縮されたガスの一部をシールガスとして供給する構成としているが、これに限られない。例えば、シールガス供給部は、圧縮機10の外部のガス供給源からシールガスを供給する構成であってもよい。
【0095】
前記第1~第3実施形態及びその変形例では、3つのロータ部を備えた構成であるが、これに限られない。1つ、2つ又は4つ以上のロータ部を備えた構成であってもよい。例えば、圧縮機10が1つのロータ部を備えている構成では、当該ロータ部によって圧縮されたガスの一部がシールガスとして軸封部に供給される。この場合、第2、第3ガス供給部及び第2、第3コントローラ56,57は省略される。したがって、分岐することなくガス排出路22gと軸封部とを接続する流路が、シールガス供給路となる。
【0096】
前記第1~第3実施形態及びその変形例では、流量センサ43、47,51、圧力センサ41,45,49及び温度センサ42,46,50がガス供給路28,32,36において、調整弁29,33,37よりも下流側に配置されているが、これに限られるものではない。各センサが調整弁29,33,37よりも上流側に配置されていてもよい。
【0097】
前記第1~第3実施形態及びその変形例では、第1~第3ガス供給路28,32,36にそれぞれ逆止弁30,34,38が配置されているが、何れかの逆止弁が省略されていてもよい。
【0098】
前記第1~第3実施形態及びその変形例では、第1調整弁29、第2調整弁33及び第3調整弁37の何れもが、センサの検出値に応じて弁開度を自動的に調整する流量調整弁によって構成されているが、この構成に限られない。例えば、第3調整弁37がセンサ49,50の検出値に応じて弁開度を自動的に調整する流量調整弁によって構成される一方で、第1調整弁29及び第2調整弁33が手動弁によって構成されていてもよい。この場合、図7に示すように、第3調整弁37は、第3ガス供給路36ではなく主流路23に配置される。第3コントローラ57は、センサ49,50の検出値を用いて、3段目のシールガス流量が所定範囲内に収まるように第3調整弁37を制御する。一方、第1調整弁29及び第2調整弁33は一定開度とする。これにより、1段目及び2段目のシールガス流量が所定範囲内に収まる。この場合、第1圧力センサ41、第1温度センサ42、第2圧力センサ45、第2温度センサ46、第1コントローラ55及び第2コントローラ56が省略される構成となる。
【0099】
この構成において、第1調整弁29に代えて、シールガス流量を減少させる絞り等の抵抗部が配置されてもよく、あるいは、第2調整弁33に代えて、シールガス流量を減少させる絞り等の抵抗部が配置されてもよい。
【0100】
また、この構成において、第3圧力センサ49及び第3温度センサ50が省略されるとともに第1圧力センサ41及び第1温度センサ42が設けられてもよい。この場合、第3コントローラ57は、これらセンサ41,42の検出値を用いて、3段目のシールガス流量が所定範囲内に収まるように第3調整弁37を制御する。また、第1圧力センサ41及び第1温度センサ42に代えて第2圧力センサ45、第2温度センサ46が設けられ、第3コントローラ57は、これらセンサ45,46の検出値を用いて第3調整弁37を制御してもよい。
【0101】
また、第1調整弁29及び第2調整弁33が手動弁によって構成される構成において、第1圧力センサ41、第1温度センサ42、第2圧力センサ45、第2温度センサ46、第3圧力センサ49及び第3温度センサ50のうち、1組の温度センサ及び圧力センサの検出値のいずれかを用いて、第3調整弁37が制御されてもよい。
【0102】
前記第1~第3実施形態及びその変形例では、シールガスが供給されるシャフト部14~16に接続されたロータ部11~13が圧縮機構のロータ部として構成されている。これに対し、第4実施形態では、シールガスが供給されるシャフト部に接続されたロータ部がタービンのロータ部として構成されている。
【0103】
具体的に、第4実施形態では、図8に示すように、第3ロータ部13に接続された第3シャフト部16には、ロータ部(第4ロータ部)17がさらに接続されている。この第4ロータ部17は、蒸気によって駆動されるタービンを構成している。すなわち、第4ロータ部17は、羽根車によって構成されていて、第4ロータ部17とハウジング22との間の空間は作動空間22hとなる。ハウジング22の作動空間22h内に導入された蒸気によって第4ロータ部17が回転することにより、第3ロータ部13の回転が補助される。第3シャフト部16は第4ロータ部17と一体的に回転する。
【0104】
第3シャフト部16には軸封部(第4軸封部)27が配置されている。軸封部27は、第3シャフト部16の外周面との間に封止室を形成するように第3シャフト部16の周囲に設けられている。
【0105】
軸封部27にシールガスを供給するシールガス供給部は、主流路23に接続されたガス供給路60を備えている。なお、ガス供給路60は、主流路23から分岐するのではなく、別個のガス供給源からガスを供給する構成であってもよい。また、ガス供給路60は、ガス排出路22gに接続されていてもよい。
【0106】
ガス供給路60には、開度調整可能な弁によって構成された流量調整弁(調整弁)61と逆止弁62とが配置されている。ガス供給路60には、ガス供給路60を流れるガスの圧力を検出する圧力センサ63と、当該ガスの温度を検出する温度センサ64と、当該ガスの流量を検知する流量センサ65と、が配置されている。流量センサ65は、第1実施形態の第1流量センサ43と同様に、標準状態におけるガスの体積流量を検知するように構成されている。なお、この構成に代え、流量センサ65は、第3実施形態の第1流量センサ43と同様に、ガスの質量流量を検知するように構成されていてもよい。
【0107】
第4実施形態では、ガス供給路60を通して軸封部27に供給するシールガスの流量を調整するための制御を行うコントローラ(第4コントローラ)66が設けられている。コントローラ66が発揮する機能には、質量流量導出部66a、密度導出部66b、体積流量導出部66c及び弁制御部66dが含まれる。質量流量導出部66aは、流量センサ65の検出値を用いる点で第1コントローラ55の質量流量導出部55aと異なるが、実質的には、質量流量導出部55aと同様の機能を有する。密度導出部66bは、圧力センサ63及び温度センサ64の検出値を用いる点で第1コントローラ55の密度導出部55bと異なるが、実質的には、密度導出部55bと同様の機能を有する。体積流量導出部66cは、質量流量導出部66a及び密度導出部66bの算出値を用いる点で第1コントローラ55の体積流量導出部55cと異なるが、実質的には、体積流量導出部55cと同様の機能を有する。弁制御部66dは、体積流量導出部66aの算出値を用いて流量調整弁61を制御する点で第1コントローラ55の弁制御部55dと異なるが、実質的には、弁制御部55dと同様の機能を有する。なお、コントローラ66は、この構成に限られるものではなく、値修正部を有していてもよい。また、コントローラ66は、第2実施形態と同様に、質量流量に換算することなく、圧縮機10の運転時におけるガス温度及びガス圧力での体積流量を導出する制御を行う構成であってもよい。また、流量センサ65が質量流量を検出する構成の場合、コントローラ66は、第3実施形態と同様に、流量センサ43,47,51の検出値(ガスの質量流量)と、圧力センサ41,45,49及び温度センサ42,46,50の検出値から得られるガス密度とを用いて、圧縮機10の運転時におけるガス温度及びガス圧力でのシールガスの体積流量を求める構成であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
10 圧縮機
11 第1ロータ部
12 第2ロータ部
13 第3ロータ部
14 第1シャフト部
15 第2シャフト部
16 第3シャフト部
19 電動機
23 主流路
24 第1軸封部
25 第2軸封部
26 第3軸封部
28 第1ガス供給路
29 第1調整弁
30 第1逆止弁
32 第2ガス供給路
33 第2調整弁
34 第2逆止弁
36 第3ガス供給路
37 第3調整弁
38 第3逆止弁
41 第1圧力センサ
42 第1温度センサ
43 第1流量センサ
45 第2圧力センサ
46 第2温度センサ
47 第2流量センサ
49 第3圧力センサ
50 第3温度センサ
51 第3流量センサ
55 第1コントローラ
55a 質量流量導出部
55b 密度導出部
55c 体積流量導出部
55d 弁制御部
56 第2コントローラ
56a 質量流量導出部
56b 密度導出部
56c 体積流量導出部
56d 弁制御部
57 第3コントローラ
57a 質量流量導出部
57b 密度導出部
57c 体積流量導出部
57d 弁制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8