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特許7551290静電潜像現像用トナー及び電子写真画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】静電潜像現像用トナー及び電子写真画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20240909BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/08
G03G9/09
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019208356
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021081562
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-17
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】小原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】内野 哲
【合議体】
【審判長】橿本 英吾
【審判官】井口 猶二
【審判官】宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-95478(JP,A)
【文献】特開2019-28428(JP,A)
【文献】特開2005-257976(JP,A)
【文献】特開2003-177568(JP,A)
【文献】特開2006-284922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、白色顔料を含有するトナー粒子からなる静電潜像現像用トナーであって、水中で超音波分散処理したとき、前記トナー粒子が、下記条件(3)を満たし、真密度が、1.0~2.0g/cmの範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
条件():平均円形度が0.90~0.950の範囲内であり、粒径2.0μm以下の個数が30個数%以下である
【請求項2】
請求項1に記載の静電潜像現像用トナーを用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用トナー及び電子写真画像形成方法に関する。より詳しくは、本発明は、白色顔料を有する隠蔽性に優れた静電潜像現像用トナー及びそれを用いる電子写真画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成に用いられる静電潜像現像用トナー(以下「トナー」ともいう。)の分野では、市場からの様々な要求に応じて開発が行われている。特に、印刷に使用する記録媒体の種類が増えてきており、印刷機の記録媒体対応性についての市場からの要求が高い。
【0003】
例えば、色紙や黒紙、アルミ蒸着紙や透明のフィルムなどの特殊な記録媒体に印刷する場合、記録媒体の色特性が印刷に影響するために、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)などを示す有色トナーだけでは十分な発色を得ることができない。このため、最下層に白色顔料を含有するトナー(以下「白色トナー」ともいう。)像を形成することによって、記録媒体の色味を隠蔽する技術が提案されている。(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
白色トナーは、記録メディアの隠蔽性を確保するために、YMCKの4色のトナーと比べて、記録媒体上により多くのトナーを載せる使い方が一般的であり、そのために顔料の高充填化や白色トナーの載せ量を増やすことが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、白色顔料の高充填化や載せ量を多くして隠蔽性を高めると、トナー粒子表面に白色顔料、例えば酸化チタンが露出しやすくなり、また、トナー1粒子あたりの重さも重くなる。このため、クリーニング部への負荷が強くなり印字の先端部と後端部で隠蔽性が異なるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-311648号公報
【文献】特開2016-45418号公報
【文献】特開2007-33719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、白色顔料を有する隠蔽性に優れた静電潜像現像用トナー及びそれを用いる電子写真画像形成方法を提供することである。
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、印字の先端部と後端部で隠蔽性が異なる現象は、粒径が2.0μm以下の微小なトナー粒子がクリーニングできず、すり抜けを起こし感光体ドラム上に残ってしまい、このため画像上に微小な欠陥が生じ画像の隠蔽性を低下させてしまうためであることが判明した。さらに、このすり抜け量は、粒径が2.0μm以下の微小なトナー粒子の量だけでなくトナー粒子の円形度にも大きく関係することを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.少なくとも、白色顔料を含有するトナー粒子からなる静電潜像現像用トナーであって、水中で超音波分散処理したとき、前記トナー粒子が、下記条件(3)を満たし、真密度が、1.0~2.0g/cmの範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
条件():平均円形度が0.90~0.950の範囲内であり、粒径2.0μm以下の個数が30個数%以下である
【0012】
.第1項に記載の静電潜像現像用トナーを用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記手段により、白色顔料を有する隠蔽性に優れた静電潜像現像用トナー及びそれを用いる電子写真画像形成方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0014】
印字の先端部と後端部で隠蔽性が異なる現象を引き起こす白色トナーは、超音波分散をかけることで、粒径2.0μm以下の微小のトナー粒子(以下「トナー微粒子」ともいう。)が増え、トナー製造時に狙いの粒径以外の微粒子が存在することがわかった。増加したトナー微粒子はストレスによってトナーから脱離されやすい微粒子と考えられる。
【0015】
白色トナーのクリーニング性の観点から見たとき、トナー粒子の平均円形度が高く、0.920以上の場合は、トナーの流動性が良好のため、クリーニング部分でのトナー蓄積によるドラムへのトナースペントが抑制できると考えられる。また、トナー粒子の平均円形度が0.970以下の場合には、真円に比べてトナー粒子がわずかにいびつになり、トナー自体の接触点が多く、トナーの凹凸部分に付着できるトナー微粒子の量が多くなり、クリーニングブレードでトナーをふき取ることができ、トナーすりぬけを抑制できるためであると推察している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも、白色顔料を含有するトナー粒子からなる静電潜像現像用トナーであって、水中で超音波分散処理したとき、前記トナー粒子が、前記条件(1)又は条件(2)を満たすことを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0017】
本発明の実施態様としては、前記水中で超音波分散処理したとき、前記トナー粒子が、前記条件(3)を満たすことが、トナーフィルミングの発生を抑制し、良好なクリーニング性を得ることができることから好ましい。
また、真密度が、1.30~2.20g/cmの範囲内であることが、高い隠蔽性が得られることから好ましい。
さらに、本発明の静電潜像現像用トナーを用いる電子写真画像形成方法であることが好ましい。
【0018】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「超~」の場合を除き、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0019】
本発明において、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子といい、トナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いることができる。
また、本発明において「(メタ)アクリル系樹脂」は、アクリル系樹脂又はメタアクリル系樹脂を意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタアクリル酸を意味する。
【0020】
《本発明の静電潜像現像用トナーの概要》
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも、白色顔料を含有するトナー粒子からなる静電潜像現像用トナーであって、水中で超音波分散処理したとき、前記トナー粒子が、下記条件(1)又は条件(2)を満たすことを特徴とする。
【0021】
条件(1):平均円形度が0.920~0.950の範囲内であり、粒径2.0μm以下の個数が30個数%以下である。
条件(2):平均円形度が0.950超~0.970の範囲内であり、粒径2.0μm以下の個数が15個数%以下である。
【0022】
このような構成により、白色顔料を有する隠蔽性に優れた静電潜像現像用トナー及びそれを用いる電子写真画像形成方法を提供することができる。
【0023】
トナー微粒子は、付着性が強いため通常はトナー表面に付着した状態で存在しているが、クリーニング中のストレスによってトナーから脱離すると考えられる。それらの脱離したトナー微粒子は、前記のようにトナー表面に白色顔料を多く露出しているため、帯電量が低く、かつ付着力が高いため感光体ドラムへ再転移され、クリーニングできずすりぬけを起こし、画像上に微小な欠陥が生じ画像の隠蔽性を低下させてしまうと推定された。
【0024】
さらに、この現象は、前述したように、トナー粒子の円形度とも関係し、超音波分散処理した後のトナーの平均円形度が0.920~0.950の範囲内の場合は、トナー微粒子が30個数%以下、又は平均円形度が0.950超~0.970の範囲内の場合は、15個数%以下であればトナーの凹凸部分に付着し、クリーニング中のストレスでも脱離されず、トナーと一緒に廃トナーへ運ばれるため、性能を満足できることが分かった。
【0025】
平均円形度が0.920~0.950の範囲内の場合、よりトナー微粒子が多くてもクリーニング中のストレスでも脱離し難いのは、トナー粒子の円形度の低い方がトナー自体の接触点が多く、トナーの凹凸部分に付着できるトナー微粒子の量が多いためであると推察している。
【0026】
この、超音波分散処理後のトナー粒子の平均円形度とトナー微粒子の含有量の関係は、トナー粒子が下記条件(3)を満たすことが、より好ましい。
条件(3):平均円形度が0.930~0.950の範囲内であり、粒径2.0μm以下の個数が30個数%以下である。
【0027】
[超音波分散処理]
本発明に係るトナー粒子の平均円形度と粒径2.0μm以下の個数%は、水中で超音波分散処理して得られる。具体的には、以下のようにして超音波分散処理し、平均円形度と、トナー微粒子の含有量(個数%)を測定する。
【0028】
(水中での超音波分散処理方法)
トナー3gを100mLのプラスチックカップ中で、ポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液40gに湿潤し、超音波式ホモジナイザー「US-1200」(日本製機社製)にて、超音波エネルギーを本体装置に附属の振動指示値を示す電流計の値が60μA(50W)を示すように調整し1分間印加する。
【0029】
[トナー微粒子の含有量]
2.0μm以下の微粒子(トナー微粒子)の含有量(個数%)は、「FPIA-3100」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
【0030】
具体的には、トナーを界面活性剤入り水溶液にてなじませた後、「FPIA-3100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある同一測定値が得られる。
投影面積換算直径から粒径を算出し、各粒子の粒径を足し合わせ、全体の粒子数に対して粒径2.0μm以下の割合(個数%)を評価する。
【0031】
[平均粒径]
また、トナー粒子の平均粒径は、上記「FPIA-3100」を用いる投影面積換算直径の測定から求めた算術平均で、4.0~10.0μmの範囲内であることが好ましく、4.0~7.0μmの範囲内であることがより好ましい。上記範囲内にあることにより、転写効率が高くなり、ハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0032】
[平均円形度]
平均円形度は、FPIA-3100(Sysmex社製)を用いて測定することができる。具体的には、トナーを界面活性剤入り水溶液にてなじませた後、「FPIA-3100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある同一測定値が得られる。
下記式にて定義された円形度から平均円形度を算出する。
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、全粒子数で割り算して算出した値である。
【0033】
[真密度]
本発明の静電潜像現像用トナーの真密度は、1.30~2.20g/cmの範囲内であることが好ましい。1.30g/cm以上であれば高い隠蔽性を確保することができ、2.20g/cm以下であれば、高帯電性を得られるため好ましい。また、1粒子あたりの重さと隠蔽性の観点から1.30~2.20g/cmの範囲内が好ましい。より好ましくは1.50~2.00g/cmの範囲内である。
トナーの真密度は、後述する静電潜像現像用トナーの製造方法において白色顔料の質量部等の条件を変更することにより制御することができる。
【0034】
(真密度の測定)
島津製作所-マイクロメリティックス社製 乾式密度計アキュピックII1340TC(気体置換法)を用い、トナー5gを10cmセルに採り、繰り返し5回以上測定し、その平均値を求めることにより測定することができる。
【0035】
《本発明の静電潜像現像用トナーの詳細》
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも、白色顔料を含有するトナー粒子からなる静電潜像現像用トナーであって、水中で超音波分散処理したとき、前記トナー粒子が、前記条件(1)又は条件(2)を満たすことを特徴とする。
本発明の静電荷像現像用トナーは、白色顔料、結着樹脂、及び離型剤を含有するトナー母体粒子を有し、さらに、必要に応じて荷電制御剤、又は外添剤を含有してもよい。
【0036】
[白色顔料]
白色顔料としては、無機顔料(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、チタンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイトなど)、有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子など)が含まれる。白色顔料は、隠蔽性の観点から無機顔料であることが好ましい。
【0037】
また、白色顔料の例には、中空樹脂粒子、中空シリカなどの中空構造を有する顔料も含まれる。白色顔料は、帯電性及び隠蔽性の観点からは、酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型など、いずれの結晶構造も使用できる。また、酸化チタンは、硫酸法、塩素法等の製造方法により得ることができる。
【0038】
[トナー母体粒子]
本発明に係るトナー母体粒子は、前記白色顔料を含有するものであれば、特に限定されず公知のものを使用できるが、特に、少なくとも結着樹脂を含有し、かつ、当該結着樹脂が少なくとも結晶性樹脂を含有することが好ましい。
【0039】
(結着樹脂)
本発明に係るトナー母体粒子に含有される結着樹脂としては、例えばトナー母体粒子が粉砕法、溶解懸濁法、乳化凝集法などによって製造される場合には、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、カーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフオン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明においては、トナーの帯電性の観点から、ビニル系樹脂を用いることが好ましい。
【0040】
(結晶性樹脂)
トナー母体粒子を構成する結着樹脂には、結晶性樹脂が含有されていることがトナー粒子を融けやすくし、記録媒体への定着時における省エネルギー化を達成する観点から好ましい。上記結晶性樹脂は、結晶性を有する樹脂である。その例には、結晶性ポリエステル系樹脂及び結晶性ビニル系樹脂が含まれる。中でも、結晶性ポリエステル系樹脂が好ましく、脂肪族系の結晶性ポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0041】
結晶性ポリエステル系樹脂は、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステルの重合法によって製造され得る。当該重合法の例には、直接重縮合及びエステル交換法が含まれ、当該重合法は、例えばモノマーの種類によって適宜に使い分けられる。
【0042】
上記結晶性ポリエステル系樹脂は、例えば、180~230℃の重合温度で製造することができる。必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合で発生する水やアルコールを除去しながらモノマーを反応させる。モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、例えば、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合すべき酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるとよい。
また、その他の結着樹脂を含んでいてもよく、その例には、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂及びポリエステル系樹脂、一部が変性された変性ポリエステル樹脂などが含まれる。
【0043】
上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂は、ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物のラジカル重合体の分子構造を有し、例えば、当該化合物のラジカル重合によって合成することが可能である。上記化合物は、1種でもそれ以上でもよく、その例には、スチレン及びその誘導体及び(メタ)アクリル酸及びその誘導体が含まれる。
【0044】
上記スチレン及びその誘導体の例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロロスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン及び3,4-ジクロロスチレンが含まれる。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸及びその誘導体の例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、β-ヒドロキシアクリル酸エチル、γ-アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルが含まれる。
【0046】
上記ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合重合生成物の分子構造を有し、例えば、これらの縮合重合によって合成することが可能である。
【0047】
上記多価カルボン酸は1種でもそれ以上でもよい。当該多価カルボン酸の例には、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、これらの無水物及びこれらの低級アルキルエステル、が含まれる。上記二重結合を有するジカルボン酸は、二重結合を介してラジカル的に架橋結合するため、トナー粒子における定着時のホットオフセットを防ぐ観点から好適である。
【0048】
上記脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸及び1,18-オクタデカンジカルボン酸が含まれる。
【0049】
上記芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸及びメサコニン酸が含まれる。
【0050】
上記二重結合を有するジカルボン酸の例には、マレイン酸、フマル酸、3-ヘキセンジオイック酸及び3-オクテンジオイック酸が含まれる。中でも、コストの観点から、フマル酸又はマレイン酸が好ましい。
【0051】
上記3価以上のカルボン酸の例には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸及び1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、が含まれる。
上記多価アルコールは、1種でもそれ以上でもよい。当該多価アルコールの例には、脂肪族ジオール及び3価以上のアルコールが含まれる。中でも、脂肪族ジオールが後述の結晶性ポリエステル系樹脂を得る観点から好ましく、特に、主鎖部分の炭素数が7~20である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。
【0052】
当該脂肪族ジオールが上記直鎖型脂肪族ジオールであると、ポリエステルの結晶性が維持され、当該ポリエステルの溶融温度の降下が抑えられる。このため、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び低温定着性に優れる上記二成分現像剤を得る観点から好ましい。また、上記直鎖型脂肪族ジオールの主鎖部分の炭素数が7~20であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させるときの生成物の融点が低く抑えられ、かつ低温定着が実現される観点から好ましい。また、実用上、材料を入手しやすい。これらの観点から、当該主鎖部分の炭素数は、7~14であることがより好ましい。
【0053】
上記結晶性ポリエステル系樹脂の合成に好適に用いられる脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール及び1,14-エイコサンデカンジオールが含まれる。中でも、入手容易性の観点から、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール又は1,10-デカンジオールが好ましい。
【0054】
上記3価以上のアルコールとの例には、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールが含まれる。
【0055】
上記結着樹脂を合成する際のモノマー成分には、得られる樹脂の分子量を調整するための連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤は、1種でもそれ以上でもよく、本実施形態の効果を奏する範囲内において、上記の目的を達成可能な量で用いられる。当該連鎖移動剤の例には、2-クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン及びスチレンダイマーが含まれる。
【0056】
(離型剤)
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0057】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1~10質量部の範囲内である。
【0058】
(荷電制御剤他)
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤及び負帯電制御剤を用いることができる。
例えば、アゾ系金属錯体、サルチル酸若しくはアルキルサルチル酸の金属錯体又は金属塩を用いることが好ましい。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.01~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1~10質量部の範囲内である。
また、トナーは低分子量プロピレン、低分子量ポリエチレン、ワックス等のオフセット防止剤等、公知のその他の成分を含むこともできる。
【0059】
[外添剤]
トナーとしての帯電性能、流動性又はクリーニング性を向上させる観点から、トナー母体粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子や滑材を外添剤として添加することできる。
【0060】
外添剤として使用される無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウムなどを含有する微粒子を好ましいものとして挙げられる。必要に応じてこれらの微粒子は疎水化処理されていても良い。
【0061】
有機微粒子としては、数平均一次粒径が10~2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
【0062】
滑材は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものであって、滑材としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用しても良い。
【0063】
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
【0064】
《静電荷像現像用トナーの製造方法》
本発明の静電荷像現像用トナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
これらの中でも、顔料を高充填化しやすい製造性という観点から、混錬粉砕法であることが好ましい。
【0065】
[混練粉砕法]
混練粉砕法は、白色顔料等の各材料を混合した後、ニーダー、押し出し機などを用いて上記材料を溶融混練して、得られた溶融混練物を粗粉砕した後、ジェットミル等で粉砕し、風力分級機により、目的とする粒径のトナー粒子を得る方法である。
混練粉砕法は、より詳細には、白色顔料及び結着樹脂を含むトナー形成材料を混練する混練工程と、混練物を粉砕する粉砕工程とに分けられる。必要に応じて、混練工程により形成された混練物を冷却する冷却工程等、他の工程を有してもよい。
【0066】
トナー粒子は、結着樹脂、白色顔料、必要に応じて添加される離型剤等の内添剤を二軸押し出し機等で混練・溶融により分散させた後、微粉砕手段により粉砕・分級し、熱気流下でそのトナー粒子表面が熱処理され、さらに、必要に応じ外添剤や荷電調整剤を、添加・混合して得られるものである。熱処理することによりトナー粒子の円形度を制御することができる。例えば熱処理として熱風との接触時間等を調整して所望の円形度の粒子を得ることができる。この工程を「円形化工程」ともいう。
【0067】
[乳化凝集法]
乳化凝集法とは、界面活性剤や分散安定剤によって分散された結着樹脂の粒子(以下、「結着樹脂粒子」ともいう)の分散液を、必要に応じて、白色顔料の粒子(以下、「白色顔料粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望のトナー粒径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
本発明に係るトナーの好ましい製造方法として、乳化凝集法を用いてコア-シェル構造を有するトナー粒子を得る場合の一例を以下に示す。
【0068】
(1)水系媒体中に白色顔料粒子が分散されてなる白色顔料粒子分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる樹脂粒子分散液(コア用/シェル用樹脂粒子分散液)を調製する工程
(3)白色顔料粒子分散液とコア用樹脂粒子分散液とを混合して凝集用樹脂粒子分散液を得て、凝集剤の存在下で白色顔料粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(4)コア粒子を含む分散液中に、シェル層用の結着樹脂粒子を含むシェル用樹脂粒子分散液を添加して、コア粒子表面にシェル層用の粒子を凝集、融着させてコア-シェル構造のトナー母体粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(5)この工程は、必要に応じて行われるものであって、当該熟成工程においては、凝集・融着工程によって得られた会合粒子を熱エネルギーにより所望の形状になるまで熟成させてトナー粒子を形成させる熟成処理が行われる。
熟成処理は、具体的には、会合粒子が分散された系を加熱撹拌し、会合粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間などを調整することにより、行われる。
(6)トナー母体粒子の分散液(トナー母体粒子分散液)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程(洗浄工程)
(7)トナー母体粒子を乾燥する工程(乾燥工程)
(8)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程(外添剤処理工程)。
コア-シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂粒子と白色顔料粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。しかしながら、例えば、上記(4)の工程において、シェル用樹脂粒子分散液を添加せずに、単層の粒子から形成されるトナー粒子も同様に製造することができる。
【0069】
[静電潜像現像用二成分現像剤]
本発明の静電荷像現像用トナーは、非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアを含有する静電潜像現像用二成分現像剤に好適に採用できる。
【0070】
(キャリア)
キャリア粒子は、磁性体により構成される。当該キャリア粒子の例には、当該磁性体からなる芯材粒子と、その表面を被覆する被覆材の層とを有する被覆型キャリア粒子及び樹脂中に磁性体の微粉末が分散されてなる樹脂分散型のキャリア粒子、が含まれる。上記キャリア粒子は、感光体へのキャリア粒子の付着を抑制する観点から、上記被覆型キャリア粒子であることが好ましい。
【0071】
(キャリアコア(芯材粒子))
芯材粒子は、磁性体、例えば、磁場によってその方向に強く磁化する物質、によって構成される。当該磁性体は、1種でもそれ以上でもよく、その例には、鉄、ニッケル及びコバルトなどの強磁性を示す金属、これらの金属を含む合金若しくは化合物及び熱処理することにより強磁性を示す合金、が含まれる。
【0072】
上記強磁性を示す金属又はそれを含む化合物の例には、鉄、下記式(a)で表されるフェライト及び下記式(b)で表されるマグネタイト、が含まれる。式(a)、式(b)中のMは、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd及びLiの群から選ばれる一以上の1価又は2価の金属を表す。
【0073】
式(a):MO・Fe
式(b):MFe
また、上記熱処理することにより強磁性を示す合金の例には、マンガン-銅-アルミニウム及びマンガン-銅-スズなどのホイスラー合金及び二酸化クロム、が含まれる。
【0074】
上記芯材粒子は、各種のフェライトであることが好ましい。これは、被覆型キャリア粒子の比重は、芯材粒子を構成する金属の比重よりも小さくなることから、現像器内における撹拌の衝撃力をより小さくすることができるためである。
【0075】
(キャリアコート樹脂)
上記キャリアコート樹脂(被覆材)は、1種でもそれ以上でもよい。被覆材には、キャリア粒子の芯材粒子の被覆に利用される公知の樹脂を用いることができる。当該被覆材は、シクロアルキル基を有する樹脂であることが、キャリア粒子の水分吸着性を低減させる観点及び被覆層の芯材粒子との密着性を高める観点、から好ましい。当該シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基及びシクロデシル基が含まれる。
【0076】
中でも、シクロヘキシル基又はシクロペンチル基が好ましく、被覆層とフェライト粒子との密着性の観点からシクロヘキシル基がより好ましい。樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば10000~800000であり、より好ましくは100000~750000である。当該樹脂における上記シクロアルキル基の含有量は、例えば10~90質量%である。上記樹脂中の当該シクロアルキル基の含有量は、例えば、熱分解-ガスクロマトグラフ/質量分析(P-GC/MS)やH-NMR等によって求めることが可能である。
【0077】
[二成分現像剤]
二成分現像剤は、トナー粒子の含有量(トナー濃度)が4.0~8.0質量%となるように、トナー粒子とキャリア粒子とを適宜に混合することによって、上記の二成分現像剤を構成することができる。
当該混合に用いられる混合装置の例には、ナウターミキサー、Wコーン及びV型混合機が含まれる。
【0078】
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。一般的な電子写真方式による画像形成方法に好適に用いることできる。
【0079】
例えば、像担持体上に静電的に形成された静電潜像を、現像装置において現像剤を摩擦帯電部材によって帯電させることにより顕在化させて白色トナー像を得て、このトナー像を記録媒体上に転写する。その後、記録媒体上に転写された白色トナー像を接触加熱方式の定着処理によって記録材に定着させることにより、白色の可視画像が得られる。
【0080】
定着方法の例には、いわゆる接触加熱方式が含まれる。接触加熱方式の例には、熱圧定着方式と、熱ロール定着方式と、固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式とが含まれる。
【0081】
熱ロール定着方式の定着方法では、通常、表面にフッ素樹脂などが被覆された鉄やアルミニウムなどよりなる金属シリンダー内部に熱源が備えられた上ローラと、シリコーンゴムなどで形成された下ローラとから構成された定着装置を使用する。熱源としては、線状のヒータが用いられ、このヒータによって上ローラの表面温度が120~200℃程度に加熱される。上ローラ及び下ローラ間には圧力が加えられており、この圧力によって下ローラが変形されることにより、ニップが形成される。
【0082】
記録媒体(記録材、記録紙、記録用紙などともいう)は、市販品などでよく、例えば、画像形成装置などによる公知の画像形成方法により形成したトナー画像を保持するものであればよい。使用できる記録媒体の例には、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、コート紙などの塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布、アルミ蒸着フィルム、PETフィルム及び合成紙が含まれる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0084】
《トナーの調製》
[トナー母体粒子の調製]
<トナー母体粒子1の調製>
結着樹脂:スチレン・n-ブチルアクリレート共重合体(Mw:51000、Mn:4000、Mw/Mn:26) 100質量部
白色顔料:酸化チタンET-500W(石原産業(株)社製) 60質量部
離型剤:パラフィンワックス(HNP-9:日本精蝋(株)製) 10質量部
を混合した。連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。
【0085】
連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度75r/min(32.97m/min)、低回転側ロール(バックロール)周速度50r/min(21.98m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は10kg/時間、平均滞留時間は約6分間であった。
【0086】
得られた混練物を冷却ロールで圧延しながら20℃以下に冷却し、冷却された溶融混練物をロートプレックス(東亜機械社製)で3mmに粗粉砕し、その後、流動槽式ジェットミル「AFG-400」(アルピネ社製)で粉砕し、ローター式分級機「TTSP」(アルピネ社製)を用い、後述する外添剤を加えたトナー粒子の平均粒径が7.0μmとなるように分級した。
【0087】
その後、円形化工程において、熱風球形化装置サーフュージングシステムSFS-3型:日本ニューマチック工業社製)を使用し、トナー粒子の平均円形度が0.937となるように入口温度200℃、熱風との接触時間0.01秒の条件で熱風処理して、トナー母体粒子1を得た。
【0088】
<トナー母体粒子2~12及び15~20の調製>
トナー母体粒子1の調製において、白色顔料の質量部と、円形化工程における熱風処理の入り口温度と熱風との接触時間を表Iのように変えて、また、トナー粒子の平均粒径が7.0μmとなるように分級し、トナー母体粒子1の調製と同様にして、トナー母体粒子2~12及び15~20を調製した。
【0089】
<トナー母体粒子13の調製>
(樹脂粒子分散液の調製)
まず、以下のようにして樹脂粒子分散液を調製した。
【0090】
スチレン 308質量部
n-ブチルアクリレート 100質量部
アクリル酸 4質量部
ドデカンチオール 3質量部
プロパンジオールジアクリレート 1.5質量部
上記成分を混合し、溶解した混合物を、アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)4部をイオン交換水550部に溶解した水溶液に投入して、フラスコ中で乳化した後、10分間混合しながら、これに過硫酸アンモニウム6部をイオン交換水350部に溶解した水溶液を投入し、窒素置換を行った後、フラスコ内を撹拌しながら内容物が75℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。
【0091】
こうして、平均粒径が195nm、重量平均分子量(Mw)が41000の樹脂粒子を分散させてなる、スチレンアクリル樹脂分散液(樹脂粒子濃度:40質量%)の樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0092】
(白色顔料粒子分散液の調製)
白色顔料(酸化チタンET-500W(石原産業(株)製)) 30質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) 0.3質量部
イオン交換水 100質量部
を用意し、イオン交換水に0.1mol/Lの塩化水素水溶液を加えてpHを4.5に調整した後に、白色顔料とアニオン性界面活性剤を加え、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて5分間分散して白色顔料粒子分散液(1)を得た。
【0093】
(離型剤粒子分散液の調製)
パラフィンワックス(HNP-9:日本精蝋(株)製) 100質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) 1.5質量部
イオン交換水 400質量部
以上の成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて20分間分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤が分散された離型剤粒子分散液(1)を調製した。
【0094】
(トナー母体粒子13の調製)
樹脂粒子分散液(1) 250質量部
離型剤粒子分散液(1) 25質量部
白色顔料粒子分散液(1) 175質量部
アニオン性界面活性剤(TeycaPower) 1.0質量部
イオン交換水 100質量部
【0095】
上記原料を円筒ステンレス容器に入れ、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用い、ホモジナイザーの回転数を4000rpmにして、せん断力を加えながら5分間分散して混合した。次いで、ポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液1.5部を徐々に滴下して、ホモジナイザーの回転数を5000rpmにして撹拌しながら0.5℃/minの速度で昇温し「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて適宜凝集粒子の粒径を測定した。後述する外添剤を加えたトナー粒子の平均粒子径が7.0μmとなるように加温時間を調整して、その後、3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸4ナトリウム水溶液(40%水溶液)2質量部を加えて粒径成長を停止した。さらに、内温を85℃まで昇温し「FPIA-3100」(Sysmex社製)を用いて、トナー粒子の平均円形度が0.968になるように加温時間を調整した。その後10℃/minの速度で室温まで冷却し、この反応液を、濾過、洗浄を繰り返した後、乾燥することにより、トナー母体粒子13を得た。
【0096】
<トナー母体粒子14の調製>
トナー母体粒子13の調製において、白色顔料粒子分散液(1)を175質量部から210質量部に変えてトナー母体粒子13の調製と同様にしてトナー母体粒子14を調製した。
【0097】
[外添工程]
上記のようにして作製したトナー母体粒子1について、トナー母体粒子100質量部に、外添剤として小径シリカ微粒子「RX-200」(ヒュームドシリカ、HMDS(hexamethyldisilazane)処理済、個数平均粒径12nm、日本アエロジル社製)を0.8質量部添加し、ヘンシェルミキサー型式「FM20C/I」(日本コークス工業(株)製)に添加し、羽根先端周速が60m/sとなるようにして混合速度(回転数)を設定して1分間撹拌し、その後回転数を40m/sで19分間撹拌し、トナー1を作製した。
トナー2~20については、羽根先端周速を、60m/sから表Iに示した混合速度となるように変えてそれぞれ作製した。
【0098】
なお、外添混合時の品温は40℃±1℃となるように設定し、41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に冷却水を5L/分の流量で冷却水を流し、39℃になった場合は、1L/分となるように冷却水を流すことでヘンシェルミキサー内部の温度制御を実施した。
【0099】
[トナーの諸特性の測定]
作製したトナー1~20の各々について、平均円形度、超音波(US)分散後のトナー粒子の2.0μm以下の個数(個数%)、トナー粒子の平均粒径及びトナーの真密度を前述した方法で測定した。
以上、トナーの詳細を表Iに示す。
以下、表1、表2において、トナーNo.3~9,11,13及び14の備考欄の「本発明」を「参考例」と読み替える。
【0100】
【表1】
【0101】
《評価》
上記作製したトナー1~20の各々について隠蔽性と、クリーニング性の評価としてさらに感光体上のトナーフィルミング及び最大画像濃度差の評価を行った。
【0102】
<隠蔽性>
画像形成装置「bizhub PRESSPRO C1100」(コニカミノルタ社製)を白色トナー出力用に改造したものを用いて、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、縦帯画像をA3横送りでテンカラー152(g/m)に単位面積あたりの単色トナー量を10g/mになるようにコピーテストを行った。
【0103】
出力したベタ画像の先端と後端部分の画像を反射濃度計「FD-7」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定し、CIE1976(L)表色系における、L値により、隠蔽性(白色度)を評価し、その差分を求めた。◎、○又は△であれば実用上問題ないため、合格と判定する。
【0104】
◎:先端と後端のLの差分が5以下
○:先端と後端のLの差分が5よりも高く10以下
△:先端と後端のLの差分が10よりも高く15以下
×:先端と後端のLの差分が15よりも高い
【0105】
<感光体上のトナーフィルミング>
上記画像形成装置を用いて、印字率5%相当の文字チャートを10万枚出力した後に、感光体表面を目視観察及びハーフトーン画像出力して、下記評価基準に基づき感光体上のトナーフィルミングを評価した。◎又は○であれば実用上問題ないため、合格と判定する。
【0106】
◎:ハーフトーン画像に感光体軸方向の画像スジ欠陥が見られない
○:ハーフトーン画像に感光体軸方向長さ1cm未満、通紙方向幅1mm未満の軸方向の画像スジ欠陥が1~4個視認される
×:ハーフトーン画像に感光体軸方向長さ1cm未満、通紙方向幅1mm未満の感光体軸方向の画像スジ欠陥が5個以上視認される。
表Iでは、感光体軸方向長さ1cm未満、通紙方向幅1mm未満の感光体軸方向の画像スジ欠陥の数を示した。
【0107】
<最大画像濃度差>
A4の上質紙(65g/m)上に、幅3cmの縦帯状ベタ画像が5本あるテスト画像を10万枚連続印刷(耐久印刷)し、耐久印刷後の評価装置で全面ベタ画像を出力した。出力したベタ画像部において、耐久時の帯部に相当する部分5点と、非帯部に相当する部分1点の、計6点をマクベス社製反射濃度計「RD-918」を用いてそれぞれ画像濃度を計測した。そして、以下の式により最大画像濃度差を算出した。
【0108】
最大画像濃度差=(「耐久時の帯部に相当する部分5点の画像濃度のうち最も画像濃度が大きい点における画像濃度」-「非帯部に相当する部分の画像濃度」)
そして、算出した最大画像濃度差に基づいて、下記基準により、0.12以下を実用可能と判断して、合格とした。
【0109】
ここで、最大画像濃度差が小さい場合には、クリーニング性が高く、トナーの擦り抜けに起因した画像不良の発生が少ないと考えることができる。最大画像濃度差が0.12以下あれば実用上問題ないため、合格と判定する。表では最大画像濃度差で示した。
【0110】
◎:最大画像濃度差が0.03以下
○:最大画像濃度差が0.03より大きく0.08以下
△:最大画像濃度差が0.08より大きく0.12以下
×:最大画像濃度差が0.12より大きい
【0111】
【表2】
【0112】
表IIより、本発明のトナーを用いた場合、比較例に比べ出力画像の先端と後端の隠蔽性(L)の差が少ないことが分かる。また、本発明のトナーを用いた場合、トナーフィルミング及び最大画像濃度差も少なく、クリーニング性にも優れていること分かる。