(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】泡吐出容器
(51)【国際特許分類】
F04B 13/02 20060101AFI20240909BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20240909BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240909BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
F04B13/02
B65D47/34 110
B65D83/00 K
F04B9/14 B
(21)【出願番号】P 2019236584
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 瑛士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進
(72)【発明者】
【氏名】吉田 治
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】実用新案登録第2550699(JP,Y2)
【文献】特開2012-197081(JP,A)
【文献】実開平06-032346(JP,U)
【文献】特開2014-196116(JP,A)
【文献】特開2015-143128(JP,A)
【文献】特開平08-225441(JP,A)
【文献】特開2019-151360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 13/02; 9/14
B65D 83/00;47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性の液体を収容する容器の開口部にキャップが取り付けられるとともに、前記キャップに泡を吐出する吐出口を有するノズル部が上下動可能に保持され、前記ノズル部と共に上下動する空気ポンプと液体ポンプと、前記空気ポンプが気密状態に嵌合しかつ前記空気ポンプの上下動に伴って空気を前記吐出口に向けて押し出す空気シリンダと、前記液体ポンプが液密状態に嵌合しかつ前記液体ポンプの上下動に伴って前記液体を前記吐出口に向けて押し出す液体シリンダと、前記空気シリンダから押し出された空気と前記液体シリンダから押し出された前記液体とを混
合する混合室と、前記空気と混合した前記液体を発泡させるとともに、前記泡を微細化す
る多孔質体とが前記キャップの内部に設けられた泡吐出容器であって
、
前記発泡性の液体が、洗浄剤であって、粘度が4.5mPa・s以上かつ12mPa・s以下であり、
前記空気シリンダと前記液体シリンダとのそれぞれは、円筒状に構成されるとともに、前記空気シリンダの直径の自乗の前記液体シリンダの直径の自乗に対する比率が15.5以上かつ30.5以下であり、
前記ノズル部を押して前記空気シリンダから押し出される空気と前記液体シリンダから押し出される前記液体との体積比である発泡倍率が15.5以上かつ30.5以下であり、
前記吐出口から吐出される前記泡が、0.03g/cm
3から0.06g/cm
3の泡密度となるように構成され、
前記泡の外表面側の気泡の最大径が450μm以下で、かつ前記泡の外表面側の複数の気泡の平均径が200μm以下であることを特徴とする泡吐出容器。
【請求項2】
請求項1に記載の泡吐出容器であって、
前記多孔質体のメッシュサイズは、前記混合室側が#100、前記吐出口側が#200であることを特徴とする泡吐出容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の泡吐出容器であって、
前記吐出口の開口端の直前に、メッシュサイズが#305のネットが配置されていることを特徴とする泡吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部の液体を押し出す過程で液体と空気とを混合させて泡を作り、液体を泡の形で吐出させるように構成された容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗顔用洗剤のように人体の洗浄などに使用する洗剤は、洗浄力を高めるだけでなく、皮膚などに対する刺激を少なくするために、泡立てた状態で肌などの洗浄面に塗ることが行われている。この種の洗浄剤は、界面活性剤を成分として含んでいるから、手に付けて、あるいはタオルにつけて撹拌すれば(あるいは揉めば)自ずと泡立ち、特殊なネットあるいはスポンジを使用すれば、更にきめの細かい泡を作ることができる。
【0003】
しかしながら、液体から泡立てるとすれば、ネットやスポンジなどの道具が必要であるばかりか、撹拌したり揉んだりする操作が必要であり、簡便性や迅速性が劣るなどの難点がある。このような難点を解消する容器として、従来、液体として収容している洗浄剤を泡として吐出させることのできる洗浄用品が開発されており、その一例が特許文献1に記載されている。すなわち、特許文献1には、容器本体をスクイズすることにより、容器本体の内圧を高くして、内部の液体と空気とを気液混合部に送り出し、その気液混合部で混合させた液体と空気とによって泡を生成し、その泡を、気液混合部に設けた多孔質膜およびノズル部に設けた多孔質膜を介して吐出させるように構成された泡吐出容器が記載されている。その泡の密度は一般に0.03~0.25g/mlとなる、とされており、このような泡であれば、洗浄力、マッサージ性に優れるとされている。また、多孔質膜としてネットを使用すること、そのメッシュは50~500メッシュ、好ましくは150~400メッシュであることが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明は、容器本体の内部に充填する洗浄剤組成物を特定した発明であり、したがって特許文献1には成分を変えた洗浄剤組成物毎の洗浄力や均質の程度の評価結果が記載されている。この種の容器に詰められた洗浄剤は、特に洗顔や手洗いなど人体を洗う場合に使用するのが通常である。したがって、吐出した泡には、特許文献1に記載されているように洗浄力や均質性が求められるが、それだけでなく洗顔などの用途に供される場合には、肌での感触に影響する弾力や洗浄中に泡質を維持する安定性が製品品質に影響する。さらに、不純物を含んだ水を撹拌しても泡は発生するのであるから、清潔感あるいは高級感などの観点から、その種の泡とは異なる外観を呈することが必要である。言い換えれば、泡吐出容器の商品性は吐出する泡の外観を含む泡の質によっても左右される。従来では、例えば上記の特許文献1に記載されているように、泡の洗浄力や均質性に着目されていたが、実際の洗浄時における泡の弾力や泡質の安定性さらには外観など、泡吐出容器の商品性に影響する種々の特性については検討されておらず、泡吐出容器の商品性の向上のために未だ開発するべき余地が多分にあった。
【0006】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、泡質の持続性や外観を含む品質が良好な泡を吐出できる容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、発泡性の液体を収容する容器の開口部にキャップが取り付けられるとともに、前記キャップに泡を吐出する吐出口を有するノズル部が上下動可能に保持され、前記ノズル部と共に上下動する空気ポンプと液体ポンプと、前記空気ポンプが気密状態に嵌合しかつ前記空気ポンプの上下動に伴って空気を前記吐出口に向けて押し出す空気シリンダと、前記液体ポンプが液密状態に嵌合しかつ前記液体ポンプの上下動に伴って前記液体を前記吐出口に向けて押し出す液体シリンダと、前記空気シリンダから押し出された空気と前記液体シリンダから押し出された前記液体とを混合する混合室と、前記空気と混合した前記液体を発泡させるとともに、前記泡を微細化する多孔質体とが前記キャップの内部に設けられた泡吐出容器であって、前記発泡性の液体が、洗浄剤であって、粘度が4.5mPa・s以上かつ12mPa・s以下であり、前記空気シリンダと前記液体シリンダとのそれぞれは、円筒状に構成されるとともに、前記空気シリンダの直径の自乗の前記液体シリンダの直径の自乗に対する比率が15.5以上かつ30.5以下であり、前記ノズル部を押して前記空気シリンダから押し出される空気と前記液体シリンダから押し出される前記液体との体積比である発泡倍率が15.5以上かつ30.5以下であり、前記吐出口から吐出される前記泡が、0.03g/cm3から0.06g/cm3の泡密度となるように構成され、前記泡の外表面側の気泡の最大径が450μm以下で、かつ前記泡の外表面側の複数の気泡の平均径が200μm以下であることを特徴としている。
【0009】
またこの発明では、前記多孔質体のメッシュサイズは、前記混合室側が#100、前記吐出口側が#200であってよい。
【0010】
さらに、この発明では、前記吐出口の開口端の直前に、メッシュサイズが#305のネットが配置されていてよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、泡密度が0.06g/cm3以下の泡を吐出させるので、弾力および安定性に富む泡を得ることができる。したがって、その泡は、例えば肌などの洗浄面と掌や指との間に所定の厚さで拡がり、かつその状態を充分な時間の間維持するので、優れた洗浄感あるいは洗浄の満足感を得ることができる。また洗浄面に泡を付着させたまま放置し、その状態を維持する時間が長くなるので、泡を肌の洗浄面に付着させたままで、手で擦らずに化粧を落とすなどの効果が優れる。さらにはノズル部を押し下げて吐出させた泡で洗浄できるので、洗顔などの際の吐出操作が容易であるばかりか、泡を無駄に消費することを回避もしくは抑制することができる。結局、この発明によれば、このような泡を吐出できることにより、商品性に優れた泡吐出容器を得ることができる。
【0012】
また、この発明では、泡を構成している気泡の最大径が450μm以下、平均径が200μm以下であるので、上述したように弾力や安定性が優れるだけでなく、透明に膨らんで見える大きい気泡が散在しないので、まろやかでソフト感に富み、したがって清潔感あるいは高級感など、外観に優れた泡を得ることができ、これが要因で泡吐出容器の商品性を高めることができる。
【0013】
この発明では、泡となる液体と空気との体積比である発泡倍率を「16」以上かつ「30」以下としたので、弾力および安定性に優れ、また見た目がまろやかでソフト感に富んだ泡を吐出させることができ、したがって商品性に優れた泡吐出容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施形態に係るポンプ式吐出装置の一例を示す断面図である。
【
図2】ノズル体を上死点から容器側に僅かに押し下げた場合におけるポンプ式吐出装置の断面図である。
【
図3】ノズル体を上死点から容器側に僅かに押し下げた場合におけるポンプ式吐出装置の部分拡大図である。
【
図4】各ピストンが下死点に位置している場合におけるポンプ式吐出装置の断面図である。
【
図5】実施例1~3および比較例1~3についての泡密度および弾力、安定性(垂れ量)ならびに判定をまとめて示す図表である。
【
図6】実施例1~3および比較例1~3における泡の外観および安定性の測定状態を示す写真(図面代用写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態に係る泡吐出容器は、内部に収容した発泡性の液体を、ノズル部を押し下げることによるポンプ作用で押し出す際に、空気を併せて押し出して両者を混合することにより発泡させ、その泡を微細化してノズル部から吐出させるように構成されている。
【0016】
図1は、この発明の実施形態に係る泡吐出容器の一例の主要部を示す断面図である。
図1に示す泡吐出容器1はポンプフォーマーあるいはポンプディスペンサと称されることがあり、容器2の内部に充填された液状の内容物と、空気とを混合することによって泡を形成し、その泡を吐出するように構成されている。すなわち、
図1に示す泡吐出容器1は容器2の口部3に着脱可能に装着されるキャップ4を備えている。口部3は容器2の胴部の上端側に形成された円筒状の開口部であり、口部3の外周面に雄ねじが形成されている。その雄ねじに嵌まり合う雌ねじがキャップ4に形成されている。つまり、キャップ4に口部3をねじ込むようになっている。
【0017】
キャップ4は、
図1に示すように、口部3の外径より大きい外径の外円筒部5と、外円筒部5の内側に外円筒部5と同心円上に設けられた内円筒部6とを備えている。内円筒部6はいわゆるボス部であって、その外径は口部3の内径より小さく、かつ軸線方向における長さが外円筒部5より短く設定されている。それらの外円筒部5の上端部と内円筒部6の上端部とは半径方向に延びる上面部7によって連結されている。すなわち、外円筒部5と内円筒部6と上面部7とは一体に形成されている。また、外円筒部5の内周面に上述した雌ねじが形成されている。上面部7の中心部には、内円筒部6の内径より小さい内径の開口部が形成されている。その開口部の周縁部に、
図1の上方に延びる円筒状のガイドステム部8が立設されている。そのガイドステム部8に泡吐出容器1をポンピングするノズル部9が軸線方向(
図1では上下方向)に動作可能に嵌合している。
【0018】
ノズル部9は、いわゆるノズルヘッドとして押し下げ力が加えられる天面部10と、泡を吐出する吐出口11と、当該吐出口11に連通する流路Pが形成されている円筒状の内筒部12と、内筒部12より大径であってかつ内筒部12と同心円上に形成された円筒状の外筒部13とを有している。ノズル部9の一部はノズル部9の軸心を中心とした半径方向で外側に延び出た筒状になっており、この部分が吐出口11となっている。内筒部12および外筒部13は、軸線方向でノズル部9の天面部10から
図1での下方に延びており、軸線方向における内筒部12の長さは外筒部13より長く設定されている。また、内筒部12の外径はガイドステム部8の内径より僅かに小さく設定されており、したがって、ガイドステム部8の内部に挿入できるようになっている。また、外筒部13の内径はガイドステム部8の外径より僅かに大きく設定されており、その内側にガイドステム部8を挿入できるようになっている。つまり、半径方向で内筒部12と外筒部13との間にガイドステム部8を挿入することにより、ノズル部9はガイドステム部8と各筒部12,13とによって案内されて軸線方向に移動するようになっている。また、内筒部12の外周面とガイドステム部8の内周面との間、および、ガイドステム部8の外周面と外筒部13の内周面との間には、僅かな隙間が形成されており、それらの隙間がそれぞれ空気流路となっている。それらの空気流路を介して後述する空気シリンダ内に空気が導入されるようになっている。
【0019】
図1に示す例では、内筒部12の内周面に、均質な泡を形成するネットホルダ14が嵌合されている。具体的には、ネットホルダ14は筒状の部材であって、軸線方向での両端部に図示しないネットなどの多孔質体がそれぞれ取り付けられている。したがって、その多孔質体を保持するネットホルダ14がこの発明の実施形態における微細化部となっている。また、内筒部12の内径は、軸線方向で中央部分を挟んで天面部10とは反対側の部分で僅かに大きくなっており、この内径が大きくなっている部分に上記のネットホルダ14が嵌合されている。そして、後述するように、空気と混合されることによって泡立てられた内容物がネットホルダ14を通過することによって、きめ細かく均質な泡になるように構成されている。
【0020】
キャップ4の内部にシリンダ15が配置されている。シリンダ15は、
図1に示すように、内円筒部6の外周側に嵌合してキャップ4に一体化されており、内円筒部6に嵌合している嵌合部に対してその下側の部分の内径が僅かに小さくなっている。また、シリンダ15の上端部には、半径方向で外側に延びる鍔16が形成されている。鍔16の外径は口部3の先端部の外径(口部3の開口部の外径)程度もしくはそれより僅かに大きい程度の外径である。そして、口部3の先端部(開口端)と鍔16の下面(
図1で鍔16の下面)との間に、気密性および液密性を担保するためにシール材17が挟み込まれている。これら鍔16とシール材17とは、口部3にキャップ4をネジによって取り付けることにより、キャップ4における上面部7と口部3の先端部との間に挟み付けられて、口部3を気密状態に封止するようになっている。
【0021】
シリンダ15の構成についてより具体的に説明すると、ここに示すシリンダ15には、空気をノズル部9に押し出す空気ポンプの空気シリンダ18と、内容物(発泡性の液体)をノズル部9に押し出す液体ポンプの液体シリンダ19とが一体に形成されている。空気シリンダ18は、シリンダ15のうち、軸線方向で上述した嵌合部の下側に形成された大径の部分であって、空気シリンダ18の上端側の一部に、容器2の内部に空気を取り入れるための第1吸気孔20が空気シリンダ18の板厚方向に貫通して形成されている。液体シリンダ19は、空気シリンダ18より小径の筒状に形成されており、かつ、空気シリンダ18と同心円上に形成されている。また、
図1に示すように、液体シリンダ19の一部は半径方向で空気シリンダ18の内側に形成されている。つまり、液体シリンダ19と空気シリンダ18とは軸線方向に僅かにずれて形成されており、それらの少なくとも一部が半径方向に互いに重なっている。なお、ここに示す例では、液体シリンダ19は空気シリンダ18に連続して形成されている。それらのシリンダ18,19の境界部分は、
図1に示すように、空気シリンダ18の底部を
図1での上方に突出するように湾曲して形成した凸曲面状の部分であり、その境界部分に後述する液体ピストンの鍔が接触することによって、ノズル部9および各ピストンのそれ以上の移動(押し込み)が阻止される。この位置が各ピストンを容器2側に押し込んだ場合におけるノズル部9および各ピストンのストロークエンドすなわち下死点である。なお、
図1に示す例は、ノズル部9が上死点にある状態を示している。
【0022】
上記の空気シリンダ18の内周面に気密状態を維持して軸線方向(
図1での上下方向)に摺動する空気ピストン21が嵌合されている。これらの空気シリンダ18と空気ピストン21とによって上述した空気ポンプが構成されている。その空気ピストン21は空気シリンダ18の内部を
図1での上下に区画するピストンヘッド22と、ピストンヘッド22と一体となっていて空気シリンダ18の内周面に接触する摺動部23とを有している。ピストンヘッド22によって区画された2つの内部のうち、
図1でピストンヘッド22の下側の内部が空気室24となっている。摺動部23は、
図1に示す例では、円筒状に形成されており、その円筒状部分の上下二箇所で空気シリンダ18の内周面に気密性を維持して摺動可能に接触するように構成されている。そして、摺動部23は軸線方向に往復動することによって上述した第1吸気孔20を開閉するようになっている。
【0023】
半径方向でピストンヘッド22における所定の半径位置には、ピストンヘッド22を板厚方向に貫通して形成され、空気室24の内部に空気を導入する第2吸気孔25が形成されている。また、半径方向でピストンヘッド22の第2吸気孔25より内側部分には、空気室24の内圧に応じて空気室24と容器2の外部とを連通し、また、空気室24と後述する混合室とを連通する成形弁26が取り付けられている。
【0024】
上記の成形弁26は、ピストンヘッド22に形成された凹部に嵌め込まれる円筒状の軸部と、凹部から露出している軸部の端部から半径方向で外側に延びる環状の外側弁部と、凹部から露出している軸部の端部から半径方向で内側に延びる環状の内側弁部とを備えている。外側弁部は空気室24の内圧が容器2の外部の圧力より増大した場合に第2吸気孔25を閉じ、空気室24の内圧が容器2の外部の圧力より低減した場合に第2吸気孔25を開くように、空気室24の内側から第2吸気孔25を覆っている。つまり、この外側弁部によって空気室24に対して外気を導入したり遮断したりする空気吸入弁27が構成されている。内側弁部は前記内圧が容器2の外部の圧力より高い場合に空気室24と混合室とを連通し、前記内圧が容器2の外部の圧力より低下した場合に空気室24と混合室との連通状態を遮断するように、後述する液体ピストンの鍔に接触している。つまり、その内側弁部によって混合室に対して空気室24の空気を供給し、あるいは押し出す空気排出弁28が構成されている。
【0025】
また、半径方向でピストンヘッド22の中心部には、容器2とは反対側(
図1での上側)に延びている円筒部29が一体に形成されている。円筒部29の一方の端部(
図1での上端部)に、前述したノズル部9に形成されている内筒部12が嵌合すると共に、ネットホルダ14の下端部が嵌合している。
図1に示す例では、円筒部29の一方の端部の外周面に凸条部が形成されると共に、内筒部12の内周面に凸条部に嵌まり合う凹溝部が形成されている。これら凸条部と凹溝部との嵌め合いにより、円筒部29と内筒部12とが強固に連結されている。なお、円筒部29と内筒部12とは、ネジ嵌合やしまり嵌め(とまり嵌め)などの手段で連結してもよい。
【0026】
円筒部29の一方の端部の内径は、ネットホルダ14の下端部の外径より僅かに大きく形成されている。また、円筒部29の一方の端部のうち、上述した内径の大きい部分の下側の内周面に、半径方向で内側に突出した突起部30が複数形成されている。その突起部30は流路P内でのネットホルダ14の位置を規定するとともに、ノズル部9が押し込まれた場合に後述する軸状部材の一端部に接触して軸状部材を押し動かするものである。さらに、突起部30は流路P内での内容物の流動を特には阻害しないために、その内径はネットホルダ14の内径程度に設定されている。そして、
図1に示すように、ネットホルダ14の下端部は上述した円筒部29の一方の端部のうち、内径の大きい部分と突起部30とによって形成された嵌合部に嵌まり合うようになっている。こうして空気ピストン21とノズル部9とは一体化され、それらの間の流路P内にネットホルダ14が保持されている。したがって、ノズル部9における天面部10を容器2側に押圧してノズル部9を押し下げると、空気ピストン21はノズル部9と共に容器2側に移動し、空気シリンダ18と空気ピストン21とによって区画された空気室24の容積あるいは空気室24の実質的な内容積が減少させられる。そして、空気室24の内部が加圧され、空気室24の内部の空気が空気室24から押し出される。また、突起部30は、容器2側に押し下げられた場合に、軸状部材の弁体の上端部に接触して容器2側に軸状部材を押し下げるようになっている。
【0027】
円筒部29の他方の端部(
図1での下端部)に、液体ポンプの液体ピストン31が嵌合されている。液体ピストン31は
図1に示すように、軸線方向に延びる筒状に形成されており、その一方の端部(
図1での上端部)が円筒部29の他方の端部に嵌合されている。具体的には、円筒部29の他方の端部に液体ピストン31の一方の端部が嵌まり合う軸線方向に窪んだ凹部が形成されている。その凹部の内径は液体ピストン31の一方の端部が嵌まり合う程度の内径に設定されている。また、それらの凹部と液体ピストン31の一方の端部との間には、図示しない空気流路が形成されている。軸線方向で円筒部29の他方の端部と液体ピストン31との嵌合部と、円筒部29の内部に嵌合されたネットホルダ14との間の空間が、空気と液状の内容物とが混合される混合室32となっている。上述した空気流路の一方の端部は上述した円筒部29内の流路Pに連通し、他方の端部は液体ピストン31と空気ピストン21とによって区画された空間に連通している。
【0028】
液体ピストン31の外周面には、半径方向で外側に突出する鍔33が形成されている。その鍔33は上述したように、空気ピストン21および液体ピストン31の下限位置を規制する。また、
図1に示すように、ノズル部9が上死点にある状態では、鍔33の上面に空気排出弁28が接触している。液体ピストン31の他方の端部は、液密状態を維持して軸線方向(
図1での上下方向)に摺動するように、液体シリンダ19の内周面に嵌合されている。したがって、液体シリンダ19と液体ピストン31とによって上述した液体ポンプが構成され、液体シリンダ19と液体ピストン31とによって形成される筒状の空間が液体室34となっている。上述したように、ノズル部9における天面部10を容器2側に押圧してノズル部9を押し下げると、液体ピストン31は空気ピストン21と共に容器2側に移動し、上記の液体室34の容積あるいは液体室34の実質的な内容積が減少させられる。そして、液体室34の内部が加圧され、液体室34の内部の液体が液体室34から押し出されるようになっている。
【0029】
上記の空気室24と液体室34とは、押し出される空気と発泡性の液体(内容物)との容積比が16以上かつ30以下となるように構成されている。これを吐出させる泡の発泡倍率を16から30の範囲にするための構造であり、また泡密度を0.03g/cm3以上0.06g/cm3以下とするための構造であり、空気シリンダ18の内径DAと液体シリンダ19の内径DLとで表せば、
16≦DA2/DL2≦30
である。ここで、空気シリンダ18の内径DAは、空気ピストン21が摺動する箇所の平均内径(直径)であり、同様に、液体シリンダ19の内径DLは液体ピストン31が摺動する箇所の平均内径(直径)である。なお、下限値「16」および上限値「30」は、測定誤差などを考慮して小数点以下の数値を丸めた値であり、したがってこれらの上下限値を「1」未満の値で超えるものを排除するものではない。
【0030】
また、液体室34の内部には、ノズル部9および各ピストンを容器2側に押し下げる力を解除した場合に、これらノズル部9および各ピストンを元の位置に復帰移動させる復帰機構と、ノズル部9のポンピングに応じて液体室34を容器2の内部に連通し、また、液体室34を混合室32および流路Pに連通する弁機構とが配置されている。先ず、復帰機構について説明すると、復帰機構は、ここに示す実施形態では、コイルスプリング(以下、単にスプリングと記す。)35によってノズル部9および各ピストン21,31を復帰移動させるように構成されている。前述した液体ピストン31の他方の端部にスプリング35の一端部を嵌合させるばね受け部が形成され、これと同様のばね受け部が液体シリンダ19の底部内周部に設けられている。スプリング35は、これらのばね受け部の間に圧縮した状態で配置されている。したがって液体ピストン31には、容器2側とは反対側(
図1の上側)に押し上げる弾性力が常時作用している。
【0031】
また、弁機構について説明すると、液体シリンダ19の中心軸線に沿って軸状部材36が配置されている。軸状部材36の一端部(
図1での上端部)は、液体ピストン31の一方の端部から突出している。その軸状部材36の一端部には弁体37が一体に形成されている。この弁体37は、軸状部材36の一端部側に向けて外径が次第に増大するテーパー状の部分である。これに対して、液体ピストン31の一方の端部には、半径方向で内側に向けてつまり流路Pの中心側に向けて凸となった環状凸部が形成されている。その環状凸部は、弁体37よりも容器2側に位置しており、その最小内径は、弁体37の外径より小さいことにより弁体37のテーパー面に係合するように設定されている。また環状凸部の上面(弁体37のテーパー面を向く面)は、内径が上側で次第に大きくなるテーパー状に形成されている。したがって、この環状凸部は、弁体37に
図1の下側から接触して流路Pおよび液体室34を液密状態に閉じるように構成されている。すなわち、その環状凸部が弁座部38となっている。
【0032】
軸状部材36の弁体37とは反対側の他方の端部(
図1での下側の端部)は、
図1に示す例では、下向きの矢じり形状もしくは断面三角形状になっている。当該他方の端部は液体シリンダ19の底部に設けられている筒状の係止体39の内部に挿入され、また、係止体39の内周面に接触し、かつ、その状態で係止体39の内周面を摺動するようになっている。より具体的には、軸状部材36の下端部の外径は、係止体39の内周面の内径より僅かに大きく設定されており、その外径を小さくするように弾性変形させられて係止体39の内部に挿入されている。つまり、軸状部材36の他方の端部では、その外周面を係止体39の内周面に接触させるように弾性力が生じており、軸状部材36を軸線方向に移動させる荷重が軸状部材36に特には作用していない状態では、その弾性力や係止体39の内周面と軸状部材36の他方の端部との間の摩擦力によって軸線方向への移動が阻止されている。つまり、軸状部材36の他方の端部が係止体39に対する係合部40となっている。
【0033】
係止体39の一端部(
図1での上端部)の内周部は、上記の矢じり形状あるいは断面三角形状に形成されており、軸状部材36の係合部40に生じている顎の部分に引っ掛かる鉤部41となっている。これにより、係止体39に対して軸状部材36が抜け止めされ、ノズル部9および各ピストン21,31のそれ以上の移動が阻止される。この位置が、各ピストン21,31が元の位置に復帰移動させられた場合におけるノズル部9および各ピストン21,31のストロークエンドすなわち上死点である。軸線方向で係止体39の下側の側面には、液状の内容物の流路となる開口溝42が円周方向に一定の間隔で複数形成されている。係止体39の内側は以下に説明するように容器2の内部に連通しているため、係止体39の内側から開口溝42を介してその外側の液体室34に内容物が流動するようになっている。
【0034】
液体シリンダ19の底部には、容器2の内部から液体室34の内部に内容物を吸い上げて充填する場合に開となり、液体室34から内容物を押し出す場合に閉となる逆止弁が設けられている。上記の逆止弁は、ここに示す例では、ボール弁43によって構成されており、液体シリンダ19の底部に、内径が上側で次第に大きくなるテーパー状の弁座部44が形成されている。その弁座部44のテーパー面に対して軸線方向で弁座部44の上側から接触するようにボール45が配置されている。さらに、液体シリンダ19の底部には、容器2の内部に充填されている内容物を液体室34の内部に導入するためのチューブ46が連結されている。そのチューブ46の先端部は容器2の図示しない底部付近にまで延びている。
【0035】
次に、この発明に係る泡吐出容器1の作用について説明する。ノズル部9に対して、当該ノズル部9を押し下げる力が特には作用していない場合には、
図1に示すように、ノズル部9は上死点にある。
図1に示す状態では、各ピストン21,31はスプリング35の弾性力によって各シリンダ18,19内の上方(
図1での上方)に押し上げられている。そのため、軸状部材36の弁体37に液体ピストン31の一方の端部に形成された弁座部38が押し付けられており、液体室34と、混合室32および流路Pとの連通は遮断されている。また、軸状部材36の係合部40は係止体39の鉤部41に引っ掛かって係止体39に対して抜け止めされている。ボール弁43のボール45は液体室34内の内容物によってあるいは自重によって弁座部44に接触しており、液体室34と容器2の内部との連通は遮断されている。さらに、空気シリンダ18に形成されている第1吸気孔20は空気ピストン21の摺動部23によって閉じられている。そして、空気ピストン21が軸線方向に移動しないことにより、空気室24の容積は特には変化しないので、空気吸入弁27によって第2吸気孔25は覆った状態に維持され、また、空気排出弁28は液体ピストン31の鍔33に接触した状態に維持される。つまり、空気吸入弁27および空気排出弁28は共に閉じている。
【0036】
図1に示す状態からノズル部9を僅かに押し下げると、その押し下げ力を受けて各ピストン21,31が容器2側に押し下げられる。
図2に、ノズル部9を容器2側に僅かに押し下げた状態を示してある。
図2に示すように、軸状部材36の係合部40は係止体39の内周面に上述した弾性力や摩擦力などによって押し付けられている。また、その時点では、上記の弾性力や摩擦力以外の力は軸状部材36に対して特には作用していない。そのため、
図2に示す状態では、軸状部材36は係止体39に固定され、軸状部材36は各シリンダ18,19に対して停止した状態を維持する。また、軸状部材36は液体ピストン31に対しては相対移動する。このように軸状部材36と液体ピストン31とが相対移動する状態は、空気ピストン21が更に押し下げられて円筒部29の内周面に形成された突起部30が軸状部材36の弁体37に接触するまで、液体ピストン31が容器2側に移動するまで生じる。
【0037】
また、
図3に、ノズル部9を僅かに押し下げた場合における泡吐出容器1の部分拡大図を示してある。上述したように液体ピストン31が押し下げられると、
図3に示すように、軸状部材36の弁体37から液体ピストン31の弁座部38が離隔する。これにより軸状部材36と弁座部38との間に隙間が生じて液体室34と混合室32とが連通する。液体ピストン31が押し下げられた分、スプリング35が収縮すると共に、液体室34の内容積が減少し、それによって液体室34の内圧が増大する。そして、ボール弁43のボール45が弁座部44に更に押し付けられ、液体室34と容器2の内部との連通は遮断された状態を維持し、液体室34の内部に充填されている内容物が軸状部材36と弁座部38との間の隙間を流動して混合室32に更に押し出される。
【0038】
容器2側に空気ピストン21が押し下げられると、摺動部23が第1吸気孔20の下側に移動し、ピストンヘッド22の上側の空間が第1吸気孔20を介して容器2の外部に連通する。また、各ピストン21,31が押し下げられた分、空気室24の内容積が減少する。これにより空気室24の内圧が増大するため、第2吸気孔25に空気吸入弁27が押し付けられる。一方、空気排出弁28は液体ピストン31の鍔33から離隔させられる。その結果、空気室24の内部の空気が空気排出弁28から流出し、また円筒部29と液体ピストン31との嵌合部に形成された空気流路を流動して混合室32に押し出される。
【0039】
ところで、液体室34内の内容物は軸状部材36の軸状部分と弁座部38との隙間、および、円筒部29と弁体37との間の隙間が狭いことにより流速が増大された状態で混合室32に供給される。空気室24から押し出された空気は、上述した空気流路が狭いことにより流速が増大された状態で混合室32に供給される。したがって、混合室32では、空気と液状の内容物とが混合しつつ撹拌された状態となって泡が形成される。
【0040】
図2や
図3に示す状態からノズル部9を更に押し下げると、軸状部材36の弁体37に突起部30が接触する。そして、弁体37に突起部30が接触している状態で、更にノズル部9を押し下げると、各ピストン21,31によって軸状部材36が容器2側に押し下げられる。つまり、各ピストン21,31と一体となって軸状部材36が移動する。なお、この状態では、軸状部材36は各シリンダ18,19に対して相対移動する。軸状部材36の係合部40は係止体39の内周面に押し付けられた状態で容器2側に摺動する。こうして、空気室24の内容積は更に減少し、その内部に充填されていた空気は空気室24から混合室32に押し出される。これと同様に、液体室34の内部の内容物は液体室34から混合室32に押し出される。混合室32では、上述したように空気と内容物とが混合しつつ撹拌されて泡が形成され、その泡は空気室24および液体室34から押し出されてくる空気および内容物によって混合室32からネットホルダ14に向かって押し出される。そして、上述した泡はネットホルダ14を通過することによって、きめ細かく均質にされ、その状態で流路Pを流動して吐出口11から外部に吐出される。
【0041】
上記のようにして各ピストン21,31が容器2側に移動して空気シリンダ18と液体シリンダ19の境界部分に液体ピストン31の鍔33が接触すると、ノズル部9および各ピストン21,31のそれ以上の移動(押し込み)が阻止される。この位置がノズル部9および各ピストン21,31の下死点側のストロークエンドであり、この状態を
図4に示してある。そして内容物が吐出されて空気室24および液体室34の内部の圧力が下がり、外部の圧力と平衡になると、内容物の吐出が止まる。
【0042】
この発明の実施形態での泡吐出容器1では、上述したようにして吐出される泡が、0.03g/cm3~0.06g/cm3の密度の泡である。このような泡を吐出できる構成としたのは、以下に述べる理由からである。
【0043】
発泡倍率が異なるように、発泡倍率を異ならせた複数種類の泡吐出容器(実施例1~3、比較例1~3)を作成し、市販の洗顔料(花王株式会社製のビオレマシュマロホイップ(登録商標)(粘度:12mPa・s))を試料として泡を吐出させた。各泡吐出容器の基本的な構造は、上述した実施形態で説明した構造と同様であり、空気シリンダと液体シリンダとの内径を異ならせることにより発泡倍率を異ならせた。なお、ネットホルダに取り付けた多孔質体のメッシュサイズは、混合室側が#100、吐出口側が#200とした。
【0044】
各泡吐出容器で得られた泡について、泡密度(g/cm3)、弾力、安定性、ならびに外観を測定あるいは評価した。泡密度は、内容積を測定してある所定の容器に泡を摺り切り一杯まで入れ、その重さを測って算出した。弾力は、その容器に摺り切り一杯まで入れた泡に、2g程度の重さの金属円板を載せ、底まで沈降するのに要する時間を計測し、その時間を弾力とした。なお、深さは約5cmである。安定性は、人体の肌を模したバイオスキンプレートに泡を吐出し、これを垂直に立て、5分間の間に垂れた長さを測定し、その長さを安定性とした。また、外観は、目視により評価した。
【実施例1】
【0045】
空気シリンダの径(内周面の直径。以下、同じ)を29.5mm、液体シリンダの径を7.4mmとした。したがって、シリンダ径の比は、「3.99:1」(約4.0:1)であり、発泡倍率は、「15.89」(約16)である。得られた泡の密度(泡密度)は0.06g/cm
3であった。約2gの金属円板が底にまで沈降するのに要した時間すなわち弾力は11分20秒であった。さらに垂直に立てたバイオスキンプレートの表面を5分間の間に垂れ下がる長さすなわち安定性は3.0cmであった。外観について、目視で認識できるほどに大きい気泡は認められず、全体としてまろやかな外観を呈し、良好であった。したがって、泡の判定は良好「○」であった。また、結果を
図5に図表としてまとめて示してある。なお、以下に述べる実施例2,3および比較例1~3についての結果も、
図5に図表としてまとめて示してある。なお、その泡の外観および安定性の測定の状態を、
図6に実施例2,3および比較例1~3での外観および安定性の測定状態と併せて、図面代用写真として示してある。
【実施例2】
【0046】
空気シリンダの径を29.5mm、液体シリンダの径を6.1mmとした。したがって、シリンダ径の比は、「4.84:1」(約4.8:1)であり、発泡倍率は、「23.39」(約23)である。得られた泡の密度(泡密度)は0.04g/cm
3であった。弾力は14分20秒であった。安定性は1.5cmであり、実施例1よりも高い安定性を示した。外観について、目視で認識できるほどに大きい気泡は認められず、全体としてまろやかな外観を呈し、良好であった。したがって、泡の判定は良好「○」であった。その泡の外観および安定性の測定の状態は
図6に示すとおりであった。
【0047】
なお、気泡の大きさは、最大径が372.6μm、最小径が40.7μm、平均径が171.6μmであった。気泡の径は、倍率が200のマイクロスコープで、泡の外表面側の主立った箇所の気泡径を観察して測定した。平均径は、主立った10個の気泡の平均値として求めた。また、吐出口の開口端の直前に更に細かい(#305)のネットを配置したところ、気泡の最大径および平均値が更に小さくなり、これに対して最小径は僅か小さくなるものの、大きくは異ならなかった。
【実施例3】
【0048】
空気シリンダの径を29.5mm、液体シリンダの径を5.4mmとした。したがって、シリンダ径の比は、「5.46:1」(約5.5:1)であり、発泡倍率は、「29.84」(約30)である。得られた泡の密度(泡密度)は0.03g/cm
3であった。弾力は14分15秒であった。安定性は1.5cmであり、実施例1よりも高い安定性を示した。外観について、目視で認識できるほどに大きい気泡は認められず、全体としてまろやかな外観を呈し、良好であった。したがって、泡の判定は良好「○」であった。その泡の外観および安定性の測定の状態は
図6に示すとおりであった。
【比較例1】
【0049】
空気シリンダの径を29.5mm、液体シリンダの径を8.4mmとした。したがって、シリンダ径の比は、「3.51:1」(約3.5:1)であり、発泡倍率は、「12.33」(約12)である。得られた泡の密度(泡密度)は0.08g/cm
3であった。弾力は9分19秒であり、金属円板が早く沈降し、各実施例での泡より柔らかい(弾力が小さく)ことが認められた。安定性は10cmであり、
図6に示すように、各実施例での泡より早期に泡が崩れて液体となって垂れ、安定性が低いことが認められた。外観について、目視で認識できるほどに大きい気泡は認められず、全体としてまろやかな外観を呈し、良好であった。したがって、泡の判定は不可「×」であった。
【比較例2】
【0050】
空気シリンダの径を29.5mm、液体シリンダの径を4.6mmとした。したがって、シリンダ径の比は、「6.41:1」(約6.4:1)であり、発泡倍率は、「41.13」(約41)である。得られた泡の密度(泡密度)は0.02g/cm
3であった。弾力は12分20秒であり、実施例1での泡と同程度の弾力を有していることが認められた。さらに安定性は0.5cmであり、
図6に示すように、いわゆる形崩れしない堅い泡となっていた。また、外観は、気泡であることが目視で判る透明で大きい気泡が混じっており、そのため輪郭が全体としてゴツゴツした感じであり、まろやかさあるいは滑らかさに欠ける外観を呈し、クリーミーあるいはソフトとは言い難いものであった。したがって、泡の判定は不可「×」であった。
【比較例3】
【0051】
空気シリンダの径を29.5mm、液体シリンダの径を4.2mmとした。したがって、シリンダ径の比は、「7.02:1」(約7.0:1)であり、発泡倍率は、「49.33」(約50)である。得られた泡の密度(泡密度)は0.02g/cm
3であった。弾力は9分50秒であり、比較例1での泡と同程度の低い弾力であること、したがって発泡倍率をある程度以上に高くすると弾力が低下することが認められた。さらに安定性は0.5cmであり、
図6に示すように、いわゆる形崩れしない硬い泡となっていた。また、外観は、気泡であることが目視で判る透明で大きい気泡が混じっており、そのため輪郭が全体としてゴツゴツした感じであり、まろやかさあるいは滑らかさに欠ける外観を呈し、クリーミーあるいはソフトとは言い難いものであった。したがって、泡の判定は不可「×」であった。
【0052】
以上の実施例1~3および比較例1~3の結果に基づき、この発明の実施形態の泡吐出容器1は、吐出する泡の密度が0.03g/cm3以上で0.06g/cm3以下となる構造の容器とした。また、発泡性液体および空気をシリンダから押し出して泡を生成させる構成の場合、その押し出す発泡性液体と空気との体積比すなわち発泡倍率が、誤差を含まずに15.5以上で30.5以下、誤差に近い小数点以下の数値を丸めて16以上で30以下となるように構成された容器とした。さらに、液体ピストンと空気ピストンとが一体となってストロークするように構成した場合には、液体ピストンが挿入されている液体シリンダの内径と空気ピストンが挿入されている空気ピストンの内径とで、押し出される発泡性液体の体積と空気の体積との比率が決まるので、この発明の実施形態における泡吐出容器1は、空気シリンダの自乗の液体シリンダの直径の自乗に対する比率が、誤差を含まずに15.5以上で30.5以下、誤差などの小数点以下の数値を丸めて16以上で30以下となるように構成された容器とした。なお、気泡の大きさは外観に大きく影響することが上述した比較例2および3の結果から認められるので、この発明の実施形態における泡吐出容器は、気泡の最大径が450μm以下で、気泡の平均径が200μm以下となる構成の容器とした。
【0053】
なお、上述した実施例および比較例では、花王株式会社製のビオレマシュマロホイップ(登録商標)(粘度:12mPa・s)を試料としたが、この発明に係る泡吐出容器では、他の市販の洗浄剤(例えば、ロート製薬(株)製「極潤」(登録商標)(粘度:7.3mPa・s)、常盤薬品工業(株)製「なめらか本舗」(登録商標)(粘度:4.5mPa・s))であっても上記の実施例と同様もしくは近似した結果を得ることができた。
【0054】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上述した実施形態に限定されないのであって、この発明の泡吐出容器は、発泡性液体と空気とを同時に押し出して混合させることにより泡を発生させ、その泡を微細化部で微細化して吐出する構成であればよく、そのための具体的な機構は上記の実施形態で示したものに限られず、実用にあたって適宜に変更した構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 泡吐出容器
2 容器
4 キャップ
9 ノズル部
11 吐出口
14 ネットホルダ
18 空気シリンダ
19 液体シリンダ
21 空気ピストン
24 空気室
31 液体ピストン
32 混合室
34 液体室
DA (空気シリンダの)内径
DL (液体シリンダの)内径