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特許7551298試薬キット、試薬保存方法、試薬混合方法及び分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】試薬キット、試薬保存方法、試薬混合方法及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/32 20060101AFI20240909BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20240909BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20240909BHJP
【FI】
B65D81/32 V
G01N1/38
B65D81/32 R
B65D81/32 T
B65D81/32 Q
C12Q1/6844 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020024580
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021127169
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 勇太
(72)【発明者】
【氏名】久島 大昌
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-176831(JP,A)
【文献】特開2017-100776(JP,A)
【文献】特開2008-239213(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1597462(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0104737(US,A1)
【文献】国際公開第2015/177004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/32
G01N 1/38
C12Q 1/6844
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタと、第1空間と、第2空間と、蓋とを有する容器と、
前記第1空間に収容された、液体の第1試薬を封入した封入部材と、
前記第2空間に収容された第2試薬とを含み、
前記第1空間は、その一端に開口部を有し、
前記第1空間と前記第2空間とは、前記フィルタで仕切られており、
前記蓋を閉めることによって、前記第1空間及び前記第2空間が密閉される、試薬キット。
【請求項2】
前記容器は、前記第1空間内で前記封入部材を前記フィルタに押し付けて破壊するプランジャ、又は前記フィルタの前記第1空間側に設けられた突起を更に備える請求項1に記載の試薬キット。
【請求項3】
前記第2空間と連通した第3空間を更に含む、請求項1又は2の何れか1項に記載の試薬キット。
【請求項4】
前記第1空間には、互いに異なる種類の第1試薬を含む複数の前記封入部材が収容されている、請求項1~3の何れか1項に記載の試薬キット。
【請求項5】
前記第1試薬及び/又は第2試薬は、核酸増幅法に用いられる試薬を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の試薬キット。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の試薬キットを保存して、前記第1試薬と、前記第2試薬とを分離して保存する方法。
【請求項7】
前記封入部材を破壊して、前記第1試薬を前記フィルタを介して前記第2空間に移動させ、前記第1試薬と前記第2試薬とを混合する混合工程を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の試薬キットを用いて前記第1試薬及び前記第2試薬を混合する試薬混合方法。
【請求項8】
前記混合工程は、前記容器を遠心すること、プランジャを用いて前記第1空間内で前記封入部材を前記フィルタに押し付けること、前記第1空間側に突起を備える前記フィルタを用いて前記突起に前記封入部材を押し付けること、及び/又は前記第1空間を前記容器の外側から押しつぶすことにより行われる、請求項7に記載の試薬混合方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の試薬キットを用いて試料中の核酸を検出する分析方法であって、
前記試薬キットを用意する工程、
前記封入部材を破壊して、前記第1試薬を前記フィルタを介して前記第2空間に移動させ、前記第1試薬と前記第2試薬とを混合する混合工程、
前記混合工程の前又は後に、前記蓋を開けて、前記第1空間の前記開口部から前記試料を前記第1空間に添加し、前記フィルタを介して前記試料を前記第2空間に移動させる試料添加工程、及び
前記混合工程及び前記試料添加工程の後、得られた試料混合物を核酸増幅条件で維持する核酸増幅工程を含み、
前記第1試薬及び/又は前記第2試薬は、核酸増幅法に用いられる試薬を含む、前記分析方法。
【請求項10】
請求項3に記載の前記試薬キットを用いて試料中の核酸を検出する分析方法であって、
前記試薬キットを用意する工程、
記封入部材を破壊して、前記第1試薬を前記フィルタを介して前記第2空間に移動させ、前記第1試薬と前記第2試薬とを混合する混合工程、
前記混合工程の前又は後に、前記第3空間に前記試料を収容し、前記第3空間を押しつぶして、前記試料を前記第2空間に移動させる試料添加工程、及び
前記混合工程及び前記試料添加工程の後、得られた試料混合物を核酸増幅条件で維持する核酸増幅工程を含み、
前記第1試薬及び/又は前記第2試薬は、核酸増幅法に用いられる試薬を含む、前記分析方法。
【請求項11】
前記核酸増幅工程中又はその後に、前記試料混合物から光学的信号を検出する検出工程を更に含む請求項9又は10に記載の分析方法。
【請求項12】
請求項1に記載の試薬キットの製造方法であって、
前記容器を用意する工程、
前記第1試薬を前記封入部材に封入する封入工程、
前記容器の前記第1空間に、前記第1試薬を含む前記封入部材を収容する第1収容工程、
前記第2空間に前記第2試薬を収容する第2収容工程、
前記蓋を閉めることによって前記容器を密閉し、試薬キットを得る密閉工程を含む、前記製造方法。
【請求項13】
請求項3に記載の試薬キットの製造方法であって、
前記容器を用意する工程、
前記第1試薬を前記封入部材に封入する封入工程、
前記容器の前記第1空間に、前記第1試薬を含む前記封入部材を収容する第1収容工程、
前記第2空間に前記第2試薬を収容する第2収容工程、
前記容器を密閉し、試薬キットを得る密閉工程を含む、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、試薬キット、試薬保存方法、試薬混合方法及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子生物学の分野は著しく発展しており、医療技術へも応用されている。その中で、生物学的試料中の核酸やタンパク質等の標的物質を遺伝子工学的又は免疫学的に検出する技術は、癌や感染症を発見する上で最も重要な手法の一つである。
【0003】
標的物質の検出には酵素、蛍光標識試薬又は抗体など多種類の試薬を使用する。このように複数の試薬や試料を取り扱う際、試薬の保存時における劣化防止、計量又はコンタミネーションの防止等のために煩雑な操作が必要である。また、試薬や試料の種類によっては人体に悪影響がある場合も少なくない。そのため、複数の試薬の取り扱いが必要である臨床現場、並びに製造業又は実験等において、試薬取り扱い操作の簡便化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2004-508541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、複数の試薬を密閉状態で分離して保存し、且つ密閉状態で簡単に混合することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る試薬キットは、フィルタと、フィルタで仕切られた第1空間と第2空間とを有する容器と、第1空間に収容された、液体の第1試薬を封入した封入部材と、第2空間に収容された第2試薬とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の試薬キットを示す分解斜視図である。
図2図2は、第1実施形態の試薬キットの製造方法を示すフローチャートである。
図3図3は、第1実施形態の試薬保存方法を示すフローチャートである。
図4図4は、第1実施形態の試薬混合方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態の試薬キットと、それを用いた混合工程を示す正面図である。
図6図6は、第2実施形態の試薬キットと、それを用いた混合工程を示す正面図である。
図7図7は、第2実施形態の試薬キットを示す正面図である。
図8図8は、第3実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第3実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、試薬キットを用いた検出工程を示す正面図である。
図11図11は、第4実施形態の試薬キットを示す平面図である。
図12図12は、第4実施形態の試薬キットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、試薬キット、試薬キットの製造方法、試薬キットを使用する試薬保存方法、試薬混合方法及び分析方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
実施形態の試薬キットは、フィルタと、フィルタで仕切られた第1空間と第2空間とを有する容器と、第1空間に収容された、液体の第1試薬を封入した封入部材、第2空間に収容された第2試薬とを含む。詳しくは後述するが、試薬キットの一使用例においては、封入部材を破壊してその中の第1試薬を第1空間に放出させ、第1試薬をフィルタを介して第2空間に移動させることにより、第1試薬と第2試薬とを混合する。
【0010】
(第1実施形態)
・試薬キット
図1に示すように、第1実施形態の試薬キット1は、容器2を備える。容器2は、例えば、フィルタカラム3と、閉鎖カラム4とを含む。
【0011】
フィルタカラム3は、円筒状の第1側壁部3aと、第1側壁部3aの一端の開口を塞ぐように設けられたフィルタ3bと、第1側壁部の3aの他端の開口である第1開口部3cと、第1開口部3cを囲む第1フランジ3dとを備える。フィルタカラム3は、例えば、フィルタ3bを底部とした有底円筒形状を有する。
【0012】
フィルタ3bは、例えば、固体を通過させず、気体及び液体を通過させる多孔質の膜である。フィルタ3bの材料は、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維又はナイロン繊維等からなる不織布等である。フィルタ3bの孔の孔径は、例えば、1~100μmであることが好ましい。このようなフィルタを用いることで、簡易的な卓上遠心機の遠心力g程度で封入部材を通過することが可能である。
【0013】
第1側壁部3aはフィルタ3bと同じ材料から構成されてもよく、第1側壁部3aとフィルタ3bとは、一枚の多孔質膜から一体に構成されてもよい。
【0014】
或いは、第1側壁部3aは、例えば、ポリプロピレン等の樹脂からなってもよい。その場合、フィルタ3bは、例えば、接着、熱融着又はOリング等により、第1側壁部3aの一端に固定されている。フィルタカラム3として、市販のスピンカラム等を用いてもよい。
【0015】
フィルタカラム3の内部には、第1試薬6を封入した封入部材5が収容されている。封入部材5は、例えば中空の球状である。
【0016】
封入部材5の材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、天然ゴム又は合成ゴム等であることが好ましい。封入部材5の大きさ及び厚さは、例えば、外からの物理的な刺激により破壊され得るが、それ以外の時は中空体の形態を維持できる強度を有するようにその材料にしたがって選択される。例えば、封入部材5の強度の測定は、後述する破壊手段、例えば、遠心、又は外側からの圧力等により、封入部材5が破壊されるか否かを調べることにより決定され得る。封入部材5の強度は、例えば、800~3000g程の遠心力で破壊される程度の強度を有することが好ましい。
【0017】
第1試薬6は液体である。第1試薬6の種類は限定されるものではなく、液体の試薬であれば何れのものも使用することができる。第1試薬6は、複数種の試薬を混合した組成物であってもよい。第1試薬6は、例えば、核酸増幅法に用いられる試薬を含む液体である。
【0018】
封入部材5の粒径は、使用するフィルタカラム3に収容可能な大きさであればよい。粒径は限定されるものではないが、例えば1~8mmとすることが好ましい。1つの封入部材5に封入する第1試薬6の量は、試薬キット1の用途や第1試薬6の種類や封入部材5の粒径に応じて選択されるものであり限定されるものではないが、例えば、1~200μLとすることが好ましい。
【0019】
フィルタカラム3には、第1試薬6を封入した封入部材5が複数個収容されてもよい。これらの封入部材5は互いに同じ種類の第1試薬6を含んでもよいし、互いに異なる種類の第1試薬6を含んでもよい。例えば、混合して保存することに適さない2つの液体試薬を別々の封入部材5に封入して、1つのフィルタカラム3に収容することが可能である。
【0020】
閉鎖カラム4は、円筒状の第2側壁部4aと、第2側壁部4aの一端の開口を塞ぐように設けられた底部4bと、第2側壁部4aの他端の開口である第2開口部4cと、第2開口部4cを囲む第2フランジ4dと、蓋4eを備える。第2側壁部4aは、底部4bに向けて縮径するテーパ部を有してもよい。蓋4eには、例えば第2側壁部4aの内径よりわずかに小さい直径を有する円盤状栓体4fを備え、それが閉鎖カラム4内に挿入されることで閉鎖カラム4を気密に塞ぐ。閉鎖カラム4として、マイクロチューブ、PCRチューブ等の市販のチューブを用いることができる。
【0021】
閉鎖カラム4には、第2試薬7が収容されている。第2試薬7は、液体であっても固体であってもよく、粉末状、ゲル状又はクリーム状等、何れの状態であってもよい。第2試薬7は例えば、乾燥した固体の試薬であることが好ましい。第2試薬7の種類は限定されるものではないが、例えば、核酸増幅法に用いられる試薬である。
【0022】
図1は便宜上蓋4eを開けた状態の試薬キット1を示すが、試薬キット1は、蓋4eが閉められ、容器2内が密閉された状態で提供されることが好ましい。蓋4eを閉めた状態の試薬キット1を容器2の長手方向と平行に切断した断面図を図5の(a)に示す。
【0023】
図5(a)に示すように、フィルタカラム3は、閉鎖カラム4の内部に吊下される。フィルタカラム3は、閉鎖カラム4から取り外すことも可能である。この構成により、容器2の内部空間は、フィルタカラム3の内部である第1空間8と、閉鎖カラム4の内部である第2空間9とにフィルタ3bを堺として仕切られている。
【0024】
更なる実施形態においては、第1側壁部3a及び第2側壁部4aは、円筒状でなくともよく、角筒状等であってもよい。
【0025】
・試薬キットの製造方法
実施形態の試薬キット1の製造方法は、例えば、図2の概略フローチャートに示す次の工程を含む:
液体である第1試薬6を封入部材5に封入する封入工程(S1)、
フィルタ3bで仕切られた第1空間8と第2空間9とを有する容器2の第1空間8に第1試薬6を含む封入部材5を収容する第1収容工程(S2)、
第2空間9に第2試薬7を収容する第2収容工程(S3)及び
容器を密閉して試薬キットを得る密閉工程(S4)。
【0026】
以下、図1に示す試薬キット1の製造方法の一例について説明する。
【0027】
まず、第1試薬6と封入部材5の材料とを用意し、第1試薬6を封入部材5に封入する(封入工程(S1))。封入工程(S1)は、液体を中空体に封入する一般的な方法により行うことができる。例えば、はシート状の封入部材5の材料に第1試薬6を滴下し、第1試薬6を包む方法、またカプセル状に成形した封入部材5に第1試薬6を注入する方法等により製造することができる。
【0028】
封入工程(S1)は、例えば、化学的方法、物理化学的方法、機械的・物理学的方法等を用いて行われる。このような方法は、例えば、オリフィス法、振動ノズル法、Centrifugal extrusion法、界面無機反応法、等により行うことができる。
【0029】
次に、容器2を用意する。容器2のフィルタカラム3に所望の数の、第1試薬6を内包した封入部材5を収容する(第1収容工程(S2))。収容される封入部材5の数は、例えば、試薬キット1を用いる分析を1回行うのに必要な量の第1試薬6が含まれるように調節される。複数種類の第1試薬6をそれぞれ含む複数の封入部材5を収容する場合は、各試薬が所望の比率で含まれるようにそれぞれの個数が調節される。
【0030】
次に、容器2の閉鎖カラム4(第2空間9)に第2試薬7を収容する(第2収容工程(S3))。第2試薬7の収容は、第2試薬7の種類に応じた方法により行われればよい。
【0031】
次いで、フィルタカラム3をフィルタ3b側から閉鎖カラム4の内部に挿入し、閉鎖カラム4内に吊下する。例えば、フィルタカラム3の全体が閉鎖カラム4内に挿入される。フィルタ3bは、閉鎖カラム4の底部4bと第2開口部4cとの中間付近に位置するように固定される。
【0032】
例えば、閉鎖カラム4の第2フランジ4dがフィルタカラム3の第1フランジ3dの押し込みにより変形し、その反発力によりフィルタカラム3が所望の位置に固定される。又は、フィルタカラム3の第1側壁部3aと閉鎖カラム4の第2側壁部4aとの間の反発力によりフィルタカラム3が固定されてもよい。或いは、フィルタカラム3の第1開口部3cを第2開口部4c内側に接着することによってフィルタカラム3を固定してもよい。
【0033】
次に蓋4eを閉めて、容器2の第1空間8及び第2空間9との両方を密閉する(密閉工程(S4))。
【0034】
更なる実施形態においては、蓋4eは、内周面に雄ねじが加工されたキャップ形状であってもよい。その場合、少なくとも第2フランジ4dの外側は雌ねじが加工されている。例えば、フィルタカラム3を挿入した時、第2フランジ4d上に第1フランジ3dが重なって、フィルタカラム3が閉鎖カラム4内に落下することなく吊下される。次に、キャップ形状の蓋4eを第1フランジ3d上にかぶせる。このとき蓋4eは、第2フランジ4dと重なる程度の深さを有する。そして、蓋4eを回転することにより、蓋4eと第2フランジ4dとのねじがかみ合って閉鎖カラム4が密閉される。蓋4eは、円盤状栓体4fを更に備え、フィルタカラム3内に挿入されてもよい。
【0035】
以上の工程により試薬キット1が得られる。封入工程(S1)から密閉工程(S4)までの間、各手順は無菌的に行われることが好ましい。上記各手順は、装置により自動的に行われてもよい。
【0036】
・試薬保存方法
実施形態によれば、試薬キット1を用いて第1試薬及び第2試薬を分離して保存する方法も提供される。実施形態に従う試薬保存方法は、例えば、図3に示すように、封入工程(S1)~密閉工程(S4)によって試薬キット1を製造した後、試薬キット1を保存する保存工程(S5)を更に含む。
【0037】
保存工程(S5)は、例えば常温以下で行われてもよい。常温とは、例えば、5~35℃である。保存工程(S5)は、冷蔵温度での保存を含んでもよく、例えば1~35℃で行われることがより好ましい。温度条件は、第1試薬6及び第2試薬7の種類や状態に応じて、試薬がその機能を失わない状態で保存される条件であることが好ましい。例えば、第1試薬6及び第2試薬7に防腐剤を添加すること、又は状態を保存が容易な状態としておくことで適切な温度条件の範囲が広がり得る。例えば、第2試薬7は凍結乾燥した固体とすることが好ましい。
【0038】
第1実施形態の試薬キット1及び試薬保存方法によれば、1つの容器2中において第1試薬及び第2試薬を分離した状態で、密閉して保存することができる。密閉することにより、保存条件が緩和され得る。そのため、例えば併存させることが困難な複数の試薬をそれぞれ劣化させることなく一度に常温等で保存することができ、試薬の管理が簡便である。併存させることが困難な複数の試薬とは、例えば、異なる状態の試薬、例えば、液体(第1試薬6)及び固体(第2試薬7)等である。
【0039】
・試薬混合方法
更なる実施形態によれば、試薬キット1を用いた試薬混合方法が提供される。試薬混合方法は、図4に示すように、試薬キットを用意する用意工程(S6)と、封入部材5を破壊して第1試薬6を第1空間8内に放出させ、フィルタ3bを介して第1試薬6を第2空間9に移動させ、第1試薬6と第2試薬7とを混合する混合工程(S7)とを含む。
【0040】
まず、用意工程(S6)において、上記の何れかの試薬キットを用意する。試薬キット1は、他者が製造したものを使用してもよいし、自ら製造してもよい。
【0041】
次に、混合工程(S7)を行う。混合工程(S7)は、例えば、封入部材5に外的刺激を与えることにより行われる。外的刺激とは、例えば、遠心力、及び/又は圧力等である。
【0042】
例えば、図1の試薬キット1を用いる場合、遠心処理を行うことで外的刺激を与えることができる。例えば、図5の(a)に示す試薬キット1を遠心処理すると、図5の(b)に示すように、遠心力gにより、封入部材5が破壊されて第1試薬6が封入部材5外に放出され、更にフィルタ3bを介して第2空間9に移動する。その結果、第1試薬6は第2空間9で第2試薬7と混合され、混合物10が得られる。一方で破壊された封入部材5は固体であるためフィルタ3bを通過せず第1空間8に残る。
【0043】
遠心処理は、例えば試薬キット1を遠心装置にセットし、遠心することで行われる。遠心処理は、封入部材5が破壊される程度の遠心力g、例えば、800~3000gで行われることが好ましい。ここで、遠心力gとは、相対遠心力(Relative Centrifugal force:RCF)であり、遠心の回転半径rと回転数rpmによって決定されるものである。
【0044】
混合工程(S7)の後、更に混合物10の撹拌を行ってもよい。撹拌は、例えば、ボルテックス、転倒混和又はスピンダウンなどにより行うことができる。
【0045】
混合工程(S7)及び必要に応じて撹拌は、例えば、容器2の蓋4eを閉じた状態、即ち、密閉した状態のままで行うことができる。
【0046】
以上に説明した試薬混合方法によれば、遠心処理等の簡単な操作で、密閉状態で第1試薬6と第2試薬7とを混合することができる。また、実施形態の試薬キット1によれば試薬が計量されて含まれているため、試薬を計量し、分注する手間が省略され、混合の操作がより簡単となる。加えて、遠心を用いることで容器に空気を排出する穴を設ける必要が無いため、容器の密閉性をより高めることができる。
【0047】
更に、遠心処理を行うことにより試薬全体に遠心力gが掛かり、第1側壁部3a等に付着した第1試薬6や第2側壁部4a等に付着した第2試薬7も底部4bの方向に移動するため、混合物に混ざらずに残留する試薬の量を減らすことができる。したがって、意図した組成の混合物を得ることができる。
【0048】
特に、異なる状態の試薬、例えば、液体である第1試薬及び固体である第2試薬等を同じ容器2内で劣化を防止して安定して保存することができ、且つそれらを簡単に混合することができるため、劣化が少なく状態の良好な混合物10を簡単に得ることができる。
【0049】
更なる実施形態においては、容器はフィルタで仕切られた第1空間と第2空間とを有するものであればよく、必ずしも図1のようにフィルタカラム3及び閉鎖カラム4を備えるものでなくともよい。例えば、フィルタで仕切られた第1空間と第2空間を備える可撓性の容器を用いて、第1空間を外側から押しつぶして圧縮することにより混合工程を行ってもよい。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態において、容器2が、封入部材5を破壊して第1試薬6をフィルタ3bを介して第2空間9に移動させる手段を更に備える試薬キットが提供される。
【0051】
当該手段は、例えばプランジャである。図6の(a)に示すように、試薬キット11は、容器2の蓋4eにプランジャ12を備える。プランジャ12は、棒状の軸部13と、軸部13の一端に取り付けられた加圧子14と、軸部13の他端に取り付けられた押圧子15を備える。軸部13は蓋4eの面方向に対して垂直に蓋4eを貫通しており、加圧子14が容器2の外側に配置され、押圧子15が第1空間8内に配置されている。加圧子14及び押圧子15は、例えば円盤状である。押圧子15の面方向の直径は、第1側壁部3aの内径と略同一であることが好ましい。
【0052】
プランジャ12は、軸部13の長手方向に上下運動可能に取り付けられている。試薬キット11の製造時は、プランジャ12は押圧子15とフィルタ3bとの間に第1試薬6を含む封入部材5が存在できる程度の間隙が設けられるように設置される。その他の構成は、第1実施形態の試薬キット1と同様である。
【0053】
試薬キット11を用いた試薬保存方法においては、プランジャ12が製造時の位置から動かないように保存される。
【0054】
試薬キット11を用いた試薬混合方法においては、混合工程(S7)では、図6の(b)に示すように、プランジャ12の加圧子14をフィルタ3bの方向に押す。それによって押圧子15が封入部材5をフィルタ3bに押し付ける。その結果、封入部材5が破壊され、且つフィルタ3bを介して第1試薬6が第2空間9へと移動する。
【0055】
試薬キット11によれば、遠心機を用いることなく、プランジャ12を押すという簡単な手順により試薬を混合することが可能である。そのため、地域や設備状況に関わらず、混合物10を得ることが可能である。
【0056】
更なる実施形態において、上記手段はフィルタに備えられた突起である。図7に示すように試薬キット21は、フィルタ3bの第1空間8側に突起22を有する。突起22の先は尖っている。
【0057】
突起22の寸法及び密度は、封入部材5の材料及び強度に従って選択される。突起22は、封入部材5が触れただけでは封入部材5を破壊せず、フィルタ3bに押し付けられたときに封入部材5を破壊させる構造であればよい。
【0058】
突起22を有するフィルタ3bは、例えば、一辺0.2~1mm程のプラスチック製の三角錐体をフィルタにコートすることにより製造することができる。或いは、市販の突起を有するフィルタを用いてもよい。
【0059】
突起22を備える試薬キット11を用いた試薬混合方法においては、封入部材5を突起22の方向に移動させて突起22に突き刺すことにより封入部材5が破裂する。例えば、遠心処理又は第2実施形態のプランジャ12を用いることにより封入部材5を突起22の方向に移動させることができる。突起22を用いることによって、より弱い外的刺激で封入部材5を破裂させることが可能である。
【0060】
(第3実施形態)
第3実施形態において、試薬キットは試料中の核酸を増幅及び検出する分析方法に用いられる。
【0061】
第3実施形態に係る試薬キットにおいて、第1試薬6及び第2試薬7の少なくとも一方は、核酸増幅法に用いられる試薬を含む。核酸増幅法は、例えば、PCR法などの温度変化を伴う方法、LAMP法等の等温増幅方法を含む。又は増幅の前に逆転写反応を行ってもよい。
【0062】
核酸増幅に用いられる試薬は、例えば、例えば、増幅酵素(ポリメラーゼ)、逆転写酵素、プライマーセット、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、塩、界面活性剤、増粘剤、pH調製用緩衝剤、イオン等又はこれらの組み合わせ等を含む。試薬の組み合わせ及び濃度は、用いられる核酸増幅法に応じて選択される。
【0063】
例えば、液体であることが好ましい試薬は第1試薬6中に含まれ、固体で提供されてもよい試薬は第2試薬7中に含まれることが好ましい。一実施形態においては、第2試薬7は乾燥された酵素、dNTP、プライマーを含み、第1試薬6は、他の試薬を含む。しかし、各試薬の組成はこれに限定されるものではない。例えば、第1試薬6と第2試薬7とを併せたものに増幅に必要な試薬が一通り含まれることが好ましい。
【0064】
容器は、第1実施形態、第2実施形態、又は後述する第4実施形態の何れのものを用いてもよい。
【0065】
図8に示すように、第3実施形態に係る分析方法は次の工程を含む:
試薬キットを用意する用意工程(S6)、
封入部材5を破壊して、第1試薬6をフィルタを介して第2空間に移動させ、第1試薬と第2試薬とを混合する混合工程(S7)、
混合工程の前又は後に、容器に試料を添加する試料添加工程(S8)、及び
混合工程及び試料添加工程の後、得られた試料混合物を核酸増幅条件で維持する核酸増幅工程(S9)。
【0066】
混合工程(S7)は、上記に説明した何れかの方法で行うことができる。例えば、混合工程により得られる混合物10は、試料の添加を行えば核酸増幅を行うことができる組成を有する。
【0067】
試料添加工程(S8)において添加される試料は、例えば、核酸を含み得る分析対象であり、例えば、生体から得られる体液であることが好ましい。体液は、例えば、血液、血清、血球、血漿、間質液、尿、便、汗、唾液、口腔内粘膜、喀痰、リンパ液、髄液、涙液、母乳、羊水、精液、細胞の抽出液、胸水等である。或いは、試料は、細胞、組織、微生物、例えば、細菌、菌類若しくはウイルスであってもよく、これらを含む溶液、これらを培養したもの又はその培養上清等であってもよい。生体は、例えば、哺乳動物であり、ヒトであることが好ましい。或いは、生体は、鳥類、爬虫類、両生類又は魚類等であってもよい。
【0068】
試料は、土壌、河川水、海水又は上下水等の環境由来の試料、飲料又は食物由来の試料等であってもよい。或いは、試料は、人工的に合成した核酸を含む液体等であってもよい。
【0069】
試料の採取方法は、試料の種類に従って選択される一般的な方法を用いればよい。採取された試料は、そのまま用いられてもよいし、ホモジナイズ、希釈若しくは濃縮、薬剤添加又は核酸抽出等の処理を施したものであってもよい。
【0070】
試料は、例えば、混合工程(S7)の前に第1空間8又は第2空間9に添加される。第1空間8に添加することにより、混合工程(S7)で試料の濾過も同時に行うことができる。或いは、試料は、混合工程(S7)の後に混合物10に添加してもよい。
【0071】
添加は、試料の種類に応じた一般的な方法により行われればよく、例えば、ピペット、スポイト又はシリンジ等を用いて行われる。例えば、無菌的に容器2の蓋4eを開けて容器2内に試料を添加し、その後、蓋4eを閉めて容器2を再び密閉してもよい。又は後述する第4実施形態に従う試薬キット31を用いて密閉系で試料の添加を行うことも可能である。
【0072】
次に、得られた試料混合物を核酸増幅条件に維持する(核酸増幅工程(S9))。核酸増幅条件とは、例えば、核酸増幅反応が生じる温度条件である。PCR法等の温度変化を伴う増幅法を用いる場合は、サーマルサイクラー等に容器2を設置して、試料混合物を適切な温度サイクルに供する。LAMP法等の等温増幅法を用いる場合は、インキュベータ等に容器2を設置して適切な温度で維持する。
【0073】
本分析方法によれば、実施形態の試薬キットを用いるため、核酸増幅を行うことのできる混合物を簡単且つコンタミネーションを防止して調製することができる。また、核酸増幅工程は容器2に試料混合物が収容された状態のまま行うことができ、簡単に核酸増幅を行うことができる。
【0074】
更なる実施形態によれば、分析方法は、図9に示すように、核酸増幅工程(S9)中又はその後に、試料混合物から光学的信号を検出する検出工程(S10)を含む。
【0075】
検出工程(S10)は、試料混合物が容器2に収容されている状態のままで行うことができる。この場合、容器2の第2空間9に対応する部分、例えば、閉鎖カラム4の第2側壁部4aの材料は、光透過性材料である。光透過性材料は、例えば、ポリプロピレン等である。この構成により、容器2の外側から光の照射し、容器2の外側で光学的信号の検出を行うことができる。
【0076】
光学的信号は、例えば蛍光である。この場合、増幅産物の増加に伴って蛍光を生じる色素を第1試薬6若しくは第2試薬7中に含ませておくか、又は核酸増幅工程(S9)の前までに試料混合物に添加してもよい。或いは、光学的信号は、例えば濁度若しくは吸光度(例えば、混合物10に光を照射した際の吸収、散乱、反射強度)であってもよい。
【0077】
検出工程(S10)は、図10に示すように、例えば容器2の外側に設置された光源23と光学センサ24とを用いて行われる。
【0078】
光源23は、第2空間9内の混合物10に光を照射するように配置される。光源23は、例えば、LED等である。光学的信号が蛍光である場合は、光源23は蛍光の励起光を照射する。
【0079】
光学センサ24は、例えば、底部4bと対向して配置される。しかしながら、光学センサ24の位置は、第2空間9に収容された混合物10からの光学的信号を検出できる位置であれば何れの配置であってもよい。光学センサ24は、光学的信号の有無又は量を検出できる一般的なセンサ、例えば、蛍光センサ、分光光度計等である。
【0080】
このような構成により、試料混合物中で生成された増幅産物からの光学的信号を得ることができる。例えば、増幅産物の増加にしたがって光学的信号は増加又は減少する。又は増幅産物の増加にしたがって光学的信号が得られる時間が早くなる。したがって、光学的信号の有無若しくは量、又は信号が得られるまでの時間から、標的核酸の有無又は量を判定してもよい。
【0081】
このような構成により、実施形態の分析方法によれば混合物10を含む容器2に試料を添加するという簡単な手順で、容器2をそのまま用いて第2空間9中に存在する標的核酸を増幅し、且つ検出することができる。
【0082】
或いは、混合工程(S7)、添加工程(S8)、核酸増幅工程(S9)及び検出工程(S10)の何れかの工程を容器2を用いて行い、その後は混合物を別の容器に移し替えて、後の工程を行ってもよい。この場合においては実施形態に係る試薬キットを用いて混合工程(S7)が行われるため、簡単に核酸増幅試薬を含む混合物を得ることができる。
【0083】
更なる実施形態においては、第1試薬6及び第2試薬7に核酸増幅に必要な試薬の全てが含まれていなくともよい。例えば、核酸増幅工程(S9)の前までに更なる必要な試薬を添加してもよい。
【0084】
(第4実施形態)
第4実施形態において、第3空間を更に備える試薬キットが提供される。図11の(a)に示すように、第4実施形態に係る試薬キット31の容器32は、筒状の第2収容部34と、第2収容部34の一端と連通する第1収容部33と、第2収容部34の他端と連通する第3収容部35とを備える。第2収容部34の前記一端側には、その内空断面を塞ぐようにフィルタ37が配置されている。第1収容部33と第3収容部35とは、ポリエチレンやポリ塩化ビニル等の可撓性の材料からなる。
【0085】
試薬キット31においては、第1収容部33内が第1空間8であり、第2収容部34内が第2空間9であり、第3収容部35内が第3空間36である。第1空間8と第2空間9とは、フィルタ37で仕切られている。
【0086】
第1収容部33には第1試薬6を含む封入部材5が収容されている。第2収容部34の内部には第2試薬7が収容されている。第3収容部35には、例えば試薬等は収容されていない。第3収容部35には、例えば注入口38が設けられており、後でそこから、例えば、試料をシリンジやピペット等により注入することができる。注入口38は、例えば第3空間36を密閉する図示しない蓋を備える。
【0087】
第4実施形態に従う試薬キット31を用いた試薬混合方法においては、例えば、図11の(b)に示すように第1収容部33の外側から圧力Nをかけて第1収容部33を圧縮する。圧縮は、例えば、第2収容部34の長手方向(以下、「縦方向」と称する)に、第2収容部34へ向かう方向に圧力Nを加えることにより行われることが好ましい。それにより封入部材5から第1試薬6が放出されて第2収容部34内に移動する。
【0088】
第1収容部33の圧縮の前又は後に、第3収容部35に試料を注入する。試料は、例えば、上記したものである。
【0089】
次に、第3収容部35を圧縮する。圧縮は、例えば、第3収容部35に、縦方向に第2収容部34へ向かう方向で圧力Nを加えることで行われることが好ましい。それにより第3収容部35内の試料も第2収容部34内に移動する。
【0090】
圧縮時に容器32から空気を抜く排気口が容器32の何れかの位置に設けられていてもよい。排気口は、例えば逆止弁構造を有し、外気を容器32内に入れない構造となっている。
【0091】
上記両収容部の圧縮の結果、第2収容部34内で第1試薬6と、第2試薬7と、試料とを混合することができる。
【0092】
試薬キット31も第3実施形態のように核酸増幅方法に用いることも可能である。その場合、第1試薬6及び/又は第2試薬7は、核酸増幅試薬を含む。例えば、上記の混合の後、容器32を加熱することで核酸増幅を行うことができる。
【0093】
第2収容部34を光透過性材料とすることにより、混合物10からの光学的信号の検出が可能となる。検出においては、例えば光源23を用いて第2収容部34の一方の側面に光を照射し、他方の側面側に設置された光学センサ24で光学的信号を検出する。
【0094】
例えば上記圧縮、検出、及び/又は試薬キット31の温度管理等は、装置によって自動的に行われてもよい。例えば、そのような装置は、試薬キット31を設置する試薬キット取付部を備える。試薬キット取付部は、第1収容部33と第3収容部35とをそれぞれ圧縮する2つの押圧子、第2収容部34の温度管理を行うヒーター、第2収容部34に光を照射する光源23、第2収容部34からの光学的信号を検出する光学センサ24、これらを制御するためのパラメータやプログラム、光学的信号の検出結果等を記憶する記憶部、及び記憶部のパラメータやプログラムに従ってこれらを制御し、光学的信号の情報処理等を行うプロセッサ等を備える。
【0095】
上記圧縮の方向は、縦方向でなくともよい。図12の(a)は図11の(a)に示す試薬キット31の側面図である。例えば図12の(b)に示すように、第1収容部33及び第3収容部35を側方、即ち、横方向から圧縮してもよい。
【0096】
更なる実施形態においては、第3収容部35には試料ではなく第3試薬が収容されてもよい。また、第2収容部34と連通する更なる複数の収容部(空間)が設けられてもよい。
【0097】
また、更なる実施形態においては、第1及び第2実施形態の何れかの容器に第2空間9と連通する第3空間を設けてもよく、更に、必要に応じて第2空間9と連通する他の複数の空間を設けてもよい。
【0098】
このような第3空間36を有する試薬キット31によれば、試料を密閉状態で添加することが可能である。
【0099】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、複数の試薬を密閉状態で分離して保存し、且つ密閉状態で簡単に混合することができる。
【0100】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
フィルタと、前記フィルタで仕切られた第1空間と第2空間とを有する容器と、
前記第1空間に収容された、液体の第1試薬を封入した封入部材と、
前記第2空間に収容された第2試薬とを含む、試薬キット。
[2]
前記容器は、前記第1空間内で前記封入部材を前記フィルタに押し付けて破壊するプランジャ、又は前記フィルタの前記第1空間側に設けられた突起を更に備える[1]に記載の試薬キット。
[3]
前記第1空間には、互いに異なる種類の第1試薬を含む複数の前記封入部材が収容されている、[1]又は[2]に記載の試薬キット。
[4]
前記第1試薬及び/又は第2試薬は、核酸増幅法に用いられる試薬を含む、[1]~[3]の何れか1つに記載の試薬キット。
[5]
前記第2空間と連通した第3空間を更に含む、[1]~[4]の何れか1つに記載の試薬キット。
[6]
液体である第1試薬と、第2試薬とを分離して保存する方法であって、
前記第1試薬を封入部材に封入する封入工程、
フィルタで仕切られた第1空間と第2空間とを有する容器の前記第1空間に、前記第1試薬を含む前記封入部材を収容する第1収容工程、
前記第2空間に前記第2試薬を収容する第2収容工程、
前記容器を密閉し、試薬キットを得る密閉工程、及び
前記試薬キットを保存する保存工程を含む、試薬保存方法。
[7]
第1試薬及び第2試薬を混合する方法であって、
フィルタで仕切られた第1空間と第2空間を含む容器の前記第1空間に収容された、液体の第1試薬を封入した封入部材と、前記第2空間に収容された第2試薬とを含む試薬キットを用意する工程、及び
前記封入部材を破壊して、前記第1試薬を前記フィルタを介して前記第2空間に移動させ、前記第1試薬と前記第2試薬とを混合する混合工程を含む試薬混合方法。
[8]
前記混合工程は、前記容器を遠心すること、プランジャを用いて前記第1空間内で前記封入部材を前記フィルタに押し付けること、前記第1空間側に突起を備える前記フィルタを用いて前記突起に前記封入部材を押し付けること、及び/又は前記第1空間を前記容器の外側から押しつぶすことにより行われる、[7]に記載の方法。
[9]
試料中の核酸を検出する分析方法であって、
フィルタで仕切られた第1空間と第2空間を含む容器の前記第1空間に収容された、液体の第1試薬を封入した封入部材と、前記第2空間に収容された第2試薬とを含む試薬キットを用意する工程、
前記封入部材を破壊して、前記第1試薬を前記フィルタを介して前記第2空間に移動させ、前記第1試薬と前記第2試薬とを混合する混合工程、
前記混合工程の前又は後に、前記容器に前記試料を添加する試料添加工程、及び
前記混合工程及び前記試料添加工程の後、得られた試料混合物を核酸増幅条件で維持する核酸増幅工程を含み、
前記第1試薬及び/又は前記第2試薬は、核酸増幅法に用いられる試薬を含む、分析方法。
[10]
前記核酸増幅工程中又はその後に、前記試料混合物から光学的信号を検出する検出工程を更に含む[9]に記載の方法。
【符号の説明】
【0101】
1、11、21、31…試薬キット、2、32…容器、3b、37…フィルタ、
5…封入部材、6…第1試薬、7…第2試薬、8…第1空間、9…第2空間、
10…混合物、12…プランジャ、22…突起、36…第3空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12