(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
H05K1/02 A
H05K1/02 J
(21)【出願番号】P 2020034821
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175924(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0386229(US,A1)
【文献】特開2017-220559(JP,A)
【文献】特開2007-134473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 1/03
H01L 23/12 - 23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂層と、
前記第1樹脂層上に配置された可撓性の絶縁基材と、
前記絶縁基材上に配置された配線と、
前記絶縁基材及び前記配線を覆う第2樹脂層と、を備え、
前記絶縁基材及び前記配線は、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間に位置し、
前記絶縁基材は、前記配線が位置する複数の線部と、複数の前記線部に繋がった島状部と、を有し、
前記第2樹脂層は、前記複数の線部及び前記複数の島状部と重なる第1部分と、前記複数の線部の間に位置する第2部分と、を有し、
前記第2部分は、前記第1樹脂層と接しており、
前記第1樹脂層、前記第1部分、及び前記第2部分のうち少なくとも1つは形状記憶樹脂層であ
り、
前記第1部分は、前記第2部分とは異なる材料で形成されている、電子機器。
【請求項2】
前記第1樹脂層は、形状記憶樹脂層である、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第2部分は、形状記憶樹脂層であり、
前記第1部分は、伸縮樹脂層である、請求項
1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1部分の厚みは、前記第2部分の厚みより小さい、請求項1乃至
3の何れか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
第1樹脂層と、
前記第1樹脂層上に配置された可撓性の絶縁基材と、
前記絶縁基材上に配置された配線と、
前記絶縁基材及び前記配線を覆う第2樹脂層と、を備え、
前記絶縁基材及び前記配線は、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間に位置し、
前記絶縁基材は、前記配線が位置する複数の線部と、複数の前記線部に繋がった島状部と、を有し、
前記第2樹脂層は、前記複数の線部及び前記複数の島状部と重なる第1部分と、前記複数の線部の間に位置する第2部分と、を有し、
前記第2部分は、前記第1樹脂層と接しており、
前記第1樹脂層、前記第1部分、及び前記第2部分のうち少なくとも1つは形状記憶樹脂層であり、
前記第2部分は、形状記憶樹脂層であり、
前記第1部分は、伸縮樹脂層である、電子機器。
【請求項6】
前記第1樹脂層は、形状記憶樹脂層である、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1部分の厚みは、前記第2部分の厚みより小さい、請求項5又は6に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可撓性及び伸縮性を有したフレキシブル基板の利用が種々の分野で検討されている。一例を挙げると、マトリクス状に電気的素子が配列されたフレキシブル基板を電子機器の筐体や人体等の曲面に貼り付ける利用形態が考えられる。電気的素子としては、例えばタッチセンサや温度センサ等の各種センサや表示素子が適用され得る。
【0003】
フレキシブル基板においては、屈曲や伸縮による応力で配線が損傷しないように対策を講じる必要がある。このような対策としては、例えば、配線を支持する基材にハニカム形状の開口を設けることや、配線を蛇行した形状(ミアンダ形状)とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-198101号公報
【文献】特開2015-198102号公報
【文献】特開2017-118109号公報
【文献】特開2017-113088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態の目的は、形状記憶樹脂層を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に配置された可撓性の絶縁基材と、前記絶縁基材上に配置された配線と、前記絶縁基材及び前記配線を覆う第2樹脂層と、を備え、前記絶縁基材及び前記配線は、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との間に位置し、前記絶縁基材は、前記配線が位置する複数の線部と、複数の前記線部に繋がった島状部と、を有し、前記第2樹脂層は、前記複数の線部及び前記複数の島状部と重なる第1部分と、前記複数の線部の間に位置する第2部分と、を有し、前記第2部分は、前記第1樹脂層と接しており、前記第1樹脂層、前記第1部分、及び前記第2部分のうち少なくとも1つは形状記憶樹脂層である、電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るフレキシブル基板の概略的な平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したフレキシブル基板の一部を拡大した平面図である。
【
図3】
図3は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、物体に対するフレキシブル基板の着脱を示す図である。
【
図6】
図6は、
図2においてI-Jで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、フレキシブル基板の第1変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、フレキシブル基板の第2変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、フレキシブル基板の第3変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、フレキシブル基板の第4変形例を示す図である。
【
図11】
図11は、フレキシブル基板の第5変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
本実施形態においては、電子機器の一例として、フレキシブル基板100を開示する。
図1は、本実施形態に係るフレキシブル基板100の概略的な平面図である。
本実施形態においては、図示したように第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3を定義する。第1方向D1及び第2方向D2は、フレキシブル基板100の主面と平行であり、互いに交わる方向である。第3方向D3は、第1方向D1、第2方向D2に対して垂直な方向であり、フレキシブル基板100の厚さ方向に相当する。第1方向D1と第2方向D2は、本実施形態では垂直に交わるが、垂直以外の角度で交わってもよい。本明細書において、第3方向D3を示す矢印の先端に向かう方向を「上」と称し、矢印の先端から逆に向かう方向を「下」と称する。また、第3方向D3を示す矢印の先端側にフレキシブル基板100を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向D1及び第2方向D2で規定されるD1-D2平面に向かって見ることを平面視という。
【0010】
フレキシブル基板100は、複数の走査線1、複数の信号線2、複数の電気的素子3、第1形状記憶樹脂層81、走査線ドライバDR1、信号線ドライバDR2を有している。走査線1、信号線2、電気的素子3、走査線ドライバDR1、信号線ドライバDR2は、第1形状記憶樹脂層81の上に位置している。複数の走査線1は、それぞれ第1方向D1に延出し第2方向D2に並んでいる。複数の走査線1は、それぞれ走査線ドライバDR1に接続されている。複数の信号線2は、それぞれ第2方向D2に延出し第1方向D1に並んでいる。複数の信号線2は、それぞれ信号線ドライバDR2に接続されている。複数の電気的素子3は、それぞれ走査線1と信号線2との交差部に位置し、走査線1及び信号線2と電気的に接続されている。なお、電気的素子3の機能の詳細については後述する。
【0011】
図2は、
図1に示したフレキシブル基板100の一部を拡大した平面図である。
フレキシブル基板100は、上記に加えて、走査線1及び信号線2を支持する絶縁基材4を備えている。
【0012】
絶縁基材4は、平面視において、第1方向D1に延出し第2方向D2に並んで配置された複数の第1部分(線部)PT1と、第2方向D2に延出し第1方向D1に並んで配置された複数の第2部分(線部)PT2と、第1部分PT1と第2部分PT2との交差部に設けられた複数の島状部ILと、を有している。平面視において、第1部分PT1及び第2部分PT2は、それぞれ波状に形成されている。島状部ILは、第1部分PT1と第2部分PT2に繋がっている。絶縁基材4は、可撓性を有し、例えばポリイミドで形成することができるが、この例に限られない。
【0013】
走査線1は、絶縁基材4の第1部分PT1上に配置され、波状に配置されている。信号線2は、絶縁基材4の第2部分PT2上に配置され、波状に配置されている。走査線1及び信号線2は、フレキシブル基板100が備える配線の一例である。走査線1及び信号線2は、例えば金属材料や透明導電材料で形成することができ、単層構造であってもよいし積層構造であってもよい。フレキシブル基板100は、走査線1及び信号線2の他に、電気的素子3に給電する電源線などの他種の配線を備えてもよい。
【0014】
走査線1は、実線で示す第1部分11と、破線で示す第2部分12と、を有している。第2部分12は、電気的素子3と重畳している。第1部分11と第2部分12は、互いに異なる層に配置されており、コンタクトホールCH1、CH2を通じて電気的に接続されている。
【0015】
走査線1は、電気的素子3に走査信号を供給する。例えば電気的素子3がセンサのような信号の出力を伴うものである場合、信号線2には電気的素子3からの出力信号が供給される。また、例えば電気的素子3が発光素子やアクチュエータのように入力される信号に応じて作動するものである場合、信号線2には駆動信号が供給される。走査信号の供給源、駆動信号の供給源又は出力信号を処理するプロセッサなどを含むコントローラは、フレキシブル基板100に設けられてもよいし、フレキシブル基板100に接続される機器に設けられてもよい。
【0016】
電気的素子3は、島状部IL上に位置している。電気的素子3は島状部ILよりも小さく、
図2においては電気的素子3の縁から島状部ILがはみ出ている。例えば電気的素子3は、センサ、半導体素子、又はアクチュエータなどである。例えばセンサとしては、可視光や近赤外光を受光する光学センサ、温度センサ、圧力センサ、又はタッチセンサなどを適用できる。例えば半導体素子としては、発光素子、受光素子、ダイオード、又はトランジスタなどを適用できる。電気的素子3が発光素子である場合、可撓性及び伸縮性を有するフレキシブルディスプレイを実現できる。発光素子としては、例えばミニLEDやマイクロLEDといった100μm前後の大きさを有する発光ダイオードや有機エレクトロルミネッセンス素子を適用することができる。電気的素子3がアクチュエータである場合、例えば圧電素子を適用できる。なお、電気的素子3は、ここで例示したものに限られず、その他にも種々の機能を有する素子を適用し得る。電気的素子3は、コンデンサや抵抗などであってもよい。また、電気的素子3の配置位置や形状は
図2に示した例に限らない。
【0017】
本実施形態においては、絶縁基材4の第1部分PT1及び第2部分PT2、走査線1、信号線2、後述する第1有機絶縁層5及び第2有機絶縁層6を総称して線部LPとし、絶縁基材4の島状部IL、後述する無機絶縁層19、電気的素子3を総称して島状部IPとする。線部LP及び島状部IPは、第1形状記憶樹脂層81の上に位置している。線部LPは、平面視において、第1方向D1に延出し第2方向D2に並んで配置された複数の波型の第1線部LP1と、第2方向D2に延出し第1方向D1に並んで配置された複数の波型の第2線部LP2と、を含んでいる。第1線部LP1と第2線部LP2の交差部に島状部IPが位置している。第1線部LP1は、上記した絶縁基材4の第1部分PT1と、走査線1と、を含んでいる。第2線部LP2は、絶縁基材4の第2部分PT2と、信号線2と、を含んでいる。また、隣り合う2つの第1線部LP1と、隣り合う2つの第2線部LP2とによって囲まれた領域には、絶縁基材4が形成されておらず、開口OPが形成されている。換言すると、開口OPは、隣り合う2つの第1部分PT1と、隣り合う2つの第2部分PT2とによって囲まれた領域ということもできる。開口OPは、第1方向D1及び第2方向D2にマトリクス状に並んでいる。
【0018】
図3は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
フレキシブル基板100は、上述の要素の他に、第1有機絶縁層5と、第2有機絶縁層6と、第2形状記憶樹脂層82と、をさらに備えている。
【0019】
第1形状記憶樹脂層(第1樹脂層)81は、外面81Aと、外面81Aの反対側の内面81Bと、を有している。第1線部LP1は、内面81Bに位置している。第1線部LP1は、第1側面SS1と、第1側面SS1とは反対側の第2側面SS2と、上面USと、を有している。
【0020】
絶縁基材4の第1部分PT1は、第1形状記憶樹脂層81の内面81B上に位置している。第1有機絶縁層5は、絶縁基材4を覆っている。走査線1は、第1有機絶縁層5の上に位置している。第2有機絶縁層6は、第1有機絶縁層5及び走査線1を覆っている。第1有機絶縁層5及び第2有機絶縁層6は、何れも有機材料で形成されている。
【0021】
第2形状記憶樹脂層(第2樹脂層)82は、外面82Aと、外面82Aの反対側の内面82Bと、を有している。第2形状記憶樹脂層82は、第1線部LP1の第1側面SS1、第2側面SS2、上面USを覆っている。すなわち、第2形状記憶樹脂層82は、走査線1、絶縁基材4、第1有機絶縁層5及び第2有機絶縁層6を覆っている。第2形状記憶樹脂層82は、第1線部LP1のうち、絶縁基材4、第1有機絶縁層5、第2有機絶縁層6に接している。また、第2形状記憶樹脂層82の内面82Bは、開口OPにおいて第1形状記憶樹脂層81の内面81Bに接している。第1形状記憶樹脂層81、絶縁基材4、走査線1、第2形状記憶樹脂層82は、第3方向D3に重なっている。また、絶縁基材4及び走査線1は、第1形状記憶樹脂層81と第2形状記憶樹脂層82との間に位置する。
第2形状記憶樹脂層82のうち、複数の第1部分PT1及び第2部分PT2、及び、複数の島状部ILと重なる部分を第1部分821とし、複数の第1部分PT1及び第2部分PT2の間に位置する部分、すなわち、開口OPと重なる部分を第2部分822とする。第2部分822は、第1形状記憶樹脂層81と接している。
【0022】
第1形状記憶樹脂層81及び第2形状記憶樹脂層82は、形状記憶樹脂によって形成されている。形状記憶樹脂は、例えば、スマートポリマーと称することもできる。スマートポリマーは、温度、磁力、光などの外部の環境変化に応じて性質が変化するポリマーである。本実施形態の第1形状記憶樹脂層81及び第2形状記憶樹脂層82は、外部から温度、磁力、光などの刺激を与えることで変形するスマートポリマーを用いて形成されている。
【0023】
第1形状記憶樹脂層81及び第2形状記憶樹脂層82は、粘着力を有しており、外面81Aもしくは外面82Aを物体に貼り付けることができる。なお、フレキシブル基板100は、外面81Aもしくは外面82Aに形成された粘着層を有していても良い。
【0024】
図4は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
第2線部LP2は、第1形状記憶樹脂層81の内面81Bに位置している。第2線部LP2は、第1側面SS1と、第1側面SS1とは反対側の第2側面SS2と、上面USと、を有している。
【0025】
絶縁基材4の第2部分PT2は、第1形状記憶樹脂層81の内面81B上に位置している。第1有機絶縁層5は、絶縁基材4を覆っている。第2有機絶縁層6は、第1有機絶縁層5を覆っている。信号線2は、第2有機絶縁層6の上に位置している。第2形状記憶樹脂層82は、第2線部LP2の第1側面SS1、第2側面SS2、上面USを覆い、開口OPにおいて第1形状記憶樹脂層81の内面81Bに接している。すなわち、第2形状記憶樹脂層82は、絶縁基材4、第1有機絶縁層5及び第2有機絶縁層6、信号線2を覆い、それぞれに接している。第1形状記憶樹脂層81、絶縁基材4、信号線2、第2形状記憶樹脂層82は、第3方向D3に重なっている。また、絶縁基材4及び信号線2は、第1形状記憶樹脂層81と第2形状記憶樹脂層82との間に位置する。
【0026】
なお、
図3及び
図4に示した例では、第1線部LP1及び第2線部LP2が第1形状記憶樹脂層81及び第2形状記憶樹脂層82に覆われる例を示したが、第1形状記憶樹脂層81の代わりに伸縮樹脂が用いられ第2形状記憶樹脂層82に形状記憶樹脂が用いられる構成であっても良いし、第1形状記憶樹脂層81に形状記憶樹脂が用いられ第2形状記憶樹脂層82の代わりに伸縮樹脂が用いられる構成であっても良い。
また、本実施形態において、第1線部LP1及び第2線部LP2より下側の樹脂層を第1樹脂層とし、第1線部LP1及び第2線部LP2より上側の樹脂層を第2樹脂層とする。上記実施形態では、第1樹脂層(第1形状記憶樹脂層81)は、形状記憶樹脂層であり、第2樹脂層(第2形状記憶樹脂層82)の第1部分821及び第2部分822も形状記憶樹脂層である。つまり、第1部分821は、第2部分822と同じ材料で形成されている。第1部分821及び第2部分822は、一体的に形成された形状記憶樹脂層である。また、第1部分821の厚みT1は、第2部分822の厚みT2より小さい。
【0027】
図5は、物体101に対するフレキシブル基板100の着脱を示す図である。
まず、
図5(a)に示すように、フレキシブル基板100は、例えば、平坦な矩形状の基本形状を有している。このとき、形状記憶樹脂層の温度は、温度Aであり、形状記憶樹脂層は、温度Aにおいてエネルギー的に安定している。すなわち、形状記憶樹脂層は、温度Aで固まるように設定されている。
【0028】
図5(b)に示すように、温度Bにおいて、形状記憶樹脂層が柔らかくなり、フレキシブル基板100を変形させることが可能となる。このとき、温度Bは、温度Aより高い。温度Bにおいて、フレキシブル基板100を所望の形状に変形させる。このとき、形状記憶樹脂層はエネルギー的に不安定であるため、フレキシブル基板100には
図5(a)に示した基本形状に戻る力が生じている。
【0029】
図5(c)に示すように、温度Bの状態でフレキシブル基板100を変形させ、物体101に貼り付ける。フレキシブル基板100は、物体101の形状に沿った形状に変形される。図示した例では、フレキシブル基板100は、物体101の曲面に貼付されるため、物体101の曲面に沿った形状に変形される。フレキシブル基板100が物体101に貼り付けられた後、形状記憶樹脂層が温度Aに下がると、形状記憶樹脂層が固まり、フレキシブル基板100が変形した状態が維持される。
【0030】
図5(d)に示すように、物体101の温度が上昇し温度Bに達すると、形状記憶樹脂層が柔らかくなり、エネルギー的に安定した基本形状に戻る。形状記憶樹脂層が基本形状に戻ることにより、フレキシブル基板100は物体101から剥がれ落ちる。なお、形状記憶樹脂層の変形量は、例えば、ガラス転移温度、ポリマー間の架橋反応によって調整される。
【0031】
本実施形態によれば、フレキシブル基板100は、形状記憶樹脂層を備えている。そのため、特定の温度以上においてフレキシブル基板100を変形させ、特定の温度以下においてフレキシブル基板100を変形した状態で固めることができる。また、特定の温度以上において、フレキシブル基板100を変形した状態から基本形状に戻すことができる。よって、上記したように物体101の温度が特定の温度以上に上昇した場合に、フレキシブル基板100は物体101から剥離され、フレキシブル基板100が過熱されるのを抑制することができる。つまり、フレキシブル基板100が過熱されることにより、機能的なダメージが生じるのを抑制することができる。
また、フレキシブル基板100を物体101に対して繰り返し着脱することが可能である。フレキシブル基板100が物体101から剥離された後に、再び変形させることで貼り付けを行うことができる。
なお、図示した例では、形状記憶樹脂層が温度によって変形する場合を示したが、フレキシブル基板100は、磁力や光などによって変形する形状記憶樹脂層を備えていても良い。
【0032】
図6は、
図2においてI-Jで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
電気的素子3は、絶縁基材4の島状部ILの上に配置されている。電気的素子3と島状部ILとの間には、無機絶縁層19(パッシベーション層)が配置されている。無機絶縁層19は、平面視においては電気的素子3(あるいは島状部IL)と重畳する島状に形成されている。第1部分11は、第1有機絶縁層5の上に配置され、第2有機絶縁層6によって覆われている。第2部分12は、無機絶縁層19の上に配置され、電気的素子3と電気的に接続されている。
図6に示す例においては、第2部分12の両端部が第1有機絶縁層5に覆われている。
【0033】
コンタクトホールCH1及びCH2は、第1有機絶縁層5に設けられている。第1部分11は、コンタクトホールCH1及びCH2に配置された接続部材CM1及びCM2を介して第2部分12と電気的に接続されている。接続部材CM1及びCM2は、第1部分11の一部であってもよいし、第1部分11とは別途に設けられてもよい。
【0034】
このように、電気的素子3と絶縁基材4との間には島状の無機絶縁層19が配置されている。この無機絶縁層19は、電気的素子3や走査線1の第2部分12への水分等の侵入を抑制する保護膜として機能する。このため、フレキシブル基板100の信頼性が向上する。また、一般的に無機膜は有機膜に比べてクラックが生じやすいが、走査線1の第1部分11の下方には無機絶縁層19が設けられていないため、第1部分11での断線が抑制される。図示しない信号線についても同様である。さらに、無機絶縁層19がフレキシブル基板100の全体に設けられている場合と比較して、フレキシブル基板100の伸縮性及び可撓性が阻害されにくくなる。
【0035】
また、走査線1において、電気的素子3と重畳する第2部分12が第1部分11とは異なる層に配置されているため、電気的素子3の近傍における設計の自由度が向上する。また、コンタクトホールCH1及びCH2は、無機絶縁層19の上方に設けられているため、第1部分11と第2部分12との接続位置での接続不良が抑制される。さらに、電気的素子3の下方には、絶縁基材4の島状部ILが配置されている。これにより、電気的素子3を良好に支持できる。
【0036】
島状部ILは、第1形状記憶樹脂層81の内面81Bに位置している。第2形状記憶樹脂層82は、電気的素子3を覆っている。第1形状記憶樹脂層81、島状部IL、電気的素子3、第2形状記憶樹脂層82は、第3方向D3に重なっている。
【0037】
図7は、フレキシブル基板100の第1変形例を示す図である。
図7に示す構成は、
図3及び
図4に示した構成と比較して、第2形状記憶樹脂層82と同層に伸縮樹脂部102が形成されている点で相異している。
図7(a)は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
図7(b)は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
【0038】
第2形状記憶樹脂層82は、開口OPにおいて、第1形状記憶樹脂層81と重なっている。伸縮樹脂部102は、第3方向D3において第1形状記憶樹脂層81と重なっている。また、
図7(a)に示す例では、伸縮樹脂部102は、絶縁基材4の第1部分PT1及び走査線1と重なり、第2有機絶縁層6、第2形状記憶樹脂層82に接している。
図7(b)に示す例では、伸縮樹脂部102は、絶縁基材4の第2部分PT2及び信号線2と重なり、第2有機絶縁層6、第2形状記憶樹脂層82、信号線2に接している。伸縮樹脂部102は、例えば、可撓性を有する有機材料で形成されている。また、伸縮樹脂部102は、第2形状記憶樹脂層82と同層に位置しているため、第3方向D3において第2形状記憶樹脂層82とは重なっていない。
【0039】
このように、第1形状記憶樹脂層81及び第2形状記憶樹脂層82がフレキシブル基板100の略全体に形成され、第1形状記憶樹脂層81及び第2形状記憶樹脂層82と同層の一部に伸縮樹脂部102が形成されていても良い。図示した例では、第2形状記憶樹脂層82と同層に伸縮樹脂部102が位置しているが、第1形状記憶樹脂層81と同層に伸縮樹脂部102が形成されていても良いし、第1形状記憶樹脂層81及び第2形状記憶樹脂層82の両方の同層に伸縮樹脂部102が形成されていても良い。
上記第1変形例では、第1樹脂層(第1形状記憶樹脂層81)は、形状記憶樹脂層であり、第2樹脂層の第1部分821は、伸縮樹脂層であり、第2部分822は、形状記憶樹脂層である。つまり、第1部分821は、第2部分822とは異なる材料で形成されている。
【0040】
図8は、フレキシブル基板100の第2変形例を示す図である。
図8に示す構成は、
図3及び
図4に示した構成と比較して、第1線部LP1及び第2線部LP2が第1伸縮樹脂層91及び第2伸縮樹脂層92によって囲まれている点で相異している。
図8(a)は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
図8(b)は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
【0041】
フレキシブル基板100は、第1伸縮樹脂層91及び第2伸縮樹脂層92を備えている。第1伸縮樹脂層91は、
図3及び
図4に示した第1形状記憶樹脂層81の位置に形成されている。第1伸縮樹脂層91は、外面91Aと、外面91Aの反対側の内面91Bと、を有している。第1伸縮樹脂層91は、第1形状記憶樹脂層81とは異なる材料を用いて形成されている。第1伸縮樹脂層91は、絶縁基材4及び第2伸縮樹脂層92の下面に有機材料を塗布して形成されてもよいし、フィルム状あるいは板状に形成され接着層を介して貼り付けられてもよい。
【0042】
第2伸縮樹脂層92は、
図3及び
図4に示した第2形状記憶樹脂層82の位置に形成されている。第2伸縮樹脂層92は、内面91Bと対向する内面92Bと、内面92Bの反対側の外面92Aと、を有している。第2伸縮樹脂層92の内面92Bは、第1伸縮樹脂層91の内面91Bに接している。第2伸縮樹脂層92は、第2形状記憶樹脂層82とは異なる材料を用いて形成されている。第2伸縮樹脂層92は、ポリ-p-キシリレン(PPX: poly-para-xylylenes)構造体、例えばパリレン(登録商標)で形成されている。
【0043】
絶縁基材4は、第1伸縮樹脂層91と第2伸縮樹脂層92との間に位置している。第3形状記憶樹脂層83は、第2伸縮樹脂層92の外面92Aに位置している。第3形状記憶樹脂層83は、開口OP、第1部分PT1、第2部分PT2、走査線1、信号線2に重なっている。
【0044】
図9は、フレキシブル基板100の第3変形例を示す図である。
図9に示す構成は、
図8に示した構成と比較して、第3形状記憶樹脂層83が第1伸縮樹脂層91の外面91Aに形成されている点で相異している。
図9(a)は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
図9(b)は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
【0045】
第3形状記憶樹脂層83は、開口OP、第1部分PT1、第2部分PT2、走査線1、信号線2に重なっている。
図8及び
図9に示すように、第1伸縮樹脂層91の外面91A及び第2伸縮樹脂層92の外面92Aのどちらか一方、もしくは両方に、第3形状記憶樹脂層83が形成されていても良い。
【0046】
図10は、フレキシブル基板100の第4変形例を示す図である。
図10は、
図2に示した電気的素子3が発光素子L1、L2、L3である場合を示している。
フレキシブル基板100は、赤色(R)の発光素子L1、緑色(G)の発光素子L2、青色(B)の発光素子L3を備えている。それぞれの島状部IL上には、発光素子L1、L2、L3のうち何れか1つの発光素子が配置されている。発光素子L1、L2、L3は、ミニLEDやマイクロLEDといった100μm前後の大きさを有するLEDである。このように、フレキシブル基板100が発光素子L1、L2、L3を有することで、可撓性及び伸縮性を有するフレキシブルディスプレイを実現することができる。
【0047】
図11は、フレキシブル基板100の第5変形例を示す図である。
図11に示す構成は、
図10に示した構成と比較して、1つの島状部ILに3つの発光素子L1、L2、L3が配置されている点で相異している。
発光素子L1、L2、L3は、例えば、赤色、緑色、青色の発光素子の何れかである。または、発光素子L1、L2、L3は、互いに同色の発光素子であってもよい。図示した例では、1つの島状部ILに3つの発光素子L1、L2、L3が配置されているが、この例に限らず、1つの島状部ILに2つの発光素子が配置されていても良いし、4つ以上の発光素子が配置されていてもよい。また、発光素子L1、L2、L3の並びや向きは図示した例に限られない。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、形状記憶樹脂層を備える電子機器を得ることができる。
【0049】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
100…フレキシブル基板、4…絶縁基材、
1…走査線、2…信号線、81…第1形状記憶樹脂層、82…第2形状記憶樹脂層、
102…伸縮樹脂部、91…第1伸縮樹脂層、92…第2伸縮樹脂層。