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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】駆動装置及び駆動装置を備える撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20240909BHJP
   H02K 33/18 20060101ALI20240909BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20240909BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240909BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H02K33/18 B
H04N23/68
H04N23/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020043326
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021144164
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】大利 達也
(72)【発明者】
【氏名】三好 香織
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-095540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00-5/08
H02K 5/00-5/26
H02K 33/00-33/18
H04N 5/222-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定枠と、
前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、
前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部と、
を備える駆動装置において、
前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、
前記複数の磁石は、
前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、
前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、
前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、
前記第3の磁石の保磁力が前記第1の磁石の保磁力と前記第2の磁石の保磁力の少なくとも一方よりも高いことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1の磁石の残留磁束密度と前記第2の磁石の残留磁束密度の少なくとも一方が前記第3の磁石の残留磁束密度よりも高いことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記可動枠が熱源を保持し、前記第1の磁石が前記第3の磁石より前記熱源に近い側に配置され、前記第1の磁石の保磁力が前記第3の磁石の保磁力より高いことを特徴とする請求項1又は2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記熱源は撮像素子であることを特徴とする請求項3記載の駆動装置。
【請求項5】
固定枠と、
前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、
前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部と
を備える駆動装置において、
前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、
前記複数の磁石は、
前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、
前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、
前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、
前記第1の方向において、前記第3の磁石の長さが、前記第1及び第2の磁石の少なくとも一方の長さよりも短いことを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
固定枠と、
前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、
前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部と、
前記可動枠の位置を検知可能な、前記磁気回路と対面する磁界検出部と
を備える駆動装置において、
前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、
前記複数の磁石は、
前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、
前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、
前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、
前記第3の磁石は、前記第1及び第2の方向の夫々と直交する第3の方向に隣接するように配置される1対の磁石により構成され、
前記磁界検出部は、前記1対の磁石の境界上ではない位置に対向して配されることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
固定枠と、
前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、
前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部と、
前記可動枠の位置を検知可能な前記磁気回路と対面する磁界検出部とを備える駆動装置において、
前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、
前記複数の磁石は、
前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、
前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、
前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、
前記第1及び第2の方向の夫々と直交する第3の方向において、前記第3の磁石の長さが、前記第1及び第2の磁石の少なくとも一方の長さよりも短く、
前記磁界検出部を含む前記第3の方向と直交する断面には、前記第3の磁石を含まないことを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
前記第3の磁石は、前記第3の方向に並べて配置される1対の磁石により構成され、前記1対の磁石の間には空隙部が設けられ、
前記磁界検出部は、前記空隙部に対向して配置されることを特徴とする請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
固定枠と、
前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、
前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部と、
前記可動枠の位置を検知可能な前記磁気回路と対面する磁界検出部とを備える駆動装置において、
前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、
前記複数の磁石は、
前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、
前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、
前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、
前記第1及び第2の方向の夫々と直交する第3の方向において、前記第3の磁石の長さが、前記第1及び第2の磁石の少なくとも一方の長さよりも短く、
前記磁界検出部を含まない前記第3の方向と直交する断面には、前記第3の磁石を含まず、
前記第1の磁石は、前記第1の方向からみてコの字形状を有し、
前記第2の磁石は、前記第1の方向からみて逆コの字形状を有し、
前記第3の磁石は、前記第1及び第2の磁石によって囲まれる中央部のくぼみに入り込むように配置され、
前記磁界検出部は、前記第3の磁石に対向して配置されることを特徴とする駆動装置。
【請求項10】
ブレ検出部と、
撮像素子と、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の駆動装置とを備え、
前記駆動装置が備える可動枠に前記撮像素子を保持した状態で、前記ブレ検出部によるブレ検出結果に応じて前記可動枠を移動させて防振を行うことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置及び駆動装置を備える撮像装置に関し、特に、ボイスコイルモータを用いて平面内で可動部を固定部に対して移動させる駆動装置及び駆動装置を備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面内で可動部を固定部に対して移動させる駆動装置が広く用いられている。この駆動装置における駆動力発生部の構成として、ボイスコイルモータ(VCM)方式と呼ばれる構成がある。この構成では、固定部と可動部の一方に磁石、他方にコイルを備え、磁石が形成する磁気回路中でコイルに通電することで可動部を駆動する駆動力を発生させる。
【0003】
このような駆動装置の一例として、撮像装置に搭載されるブレ補正機構が挙げられる。ブレ補正機構では可動部に撮像素子やブレ補正用レンズが搭載され、ブレ検出部で検出されたブレの検出量をもとに、そのブレを打ち消すように可動部が駆動される。
【0004】
VCM方式の駆動装置は、従来より省電力化、小型化などが課題となっており、かかる課題の解決のため、その駆動力発生における高効率化が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1では、固定部に磁石を備え、可動部にコイルを備えるVCM方式の駆動装置において、その磁石として、磁化方向の異なる第1~第3の磁石から構成される磁気回路を用いる構成が示されている。ここで、第1の磁石は、光軸と平行方向に磁化方向を持ち、第2の磁石は、第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ。また、第3の磁石は、第1及び第2の磁石の間に設けられ、コイル側から見たときに第1及び第2の磁石の極と同じ方向に極を持つ方向に磁化方向をもつ。このような構成をとることにより、コイル側に磁界を集中させ、駆動力発生における高効率化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-152785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の磁気回路では、第3の磁石は、第1及び第2の磁石から反発力を受け続ける結果、不可逆減磁してしまうおそれがある。このように第3の磁石が不可逆減磁すると、駆動装置の駆動力の低下等が発生し、信頼性の低下が懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、駆動力発生における高効率化と高い信頼性の確保を可能にした駆動装置及び駆動装置を備える撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る駆動装置は、固定枠と、前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部とを備える駆動装置において、前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、前記複数の磁石は、前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、前記第3の磁石の保磁力が前記第1の磁石の保磁力と前記第2の磁石の保磁力の少なくとも一方よりも高いことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る駆動装置は、固定枠と、前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部とを備える駆動装置において、前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、前記複数の磁石は、前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、前記第1の方向において、前記第3の磁石の長さが、前記第1及び第2の磁石の少なくとも一方の長さよりも短いことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に係る駆動装置は、固定枠と、前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部と、前記可動枠の位置を検知可能な、前記磁気回路と対面する磁界検出部とを備える駆動装置において、前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、前記複数の磁石は、前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、前記第3の磁石は、前記第1及び第2の方向の夫々と直交する第3の方向に隣接するように配置される1対の磁石により構成され、前記磁界検出部は、前記1対の磁石の境界上ではない位置に対向して配されることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に係る駆動装置は、固定枠と、前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部と、前記可動枠の位置を検知可能な前記磁気回路と対面する磁界検出部とを備える駆動装置において、前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、前記複数の磁石は、前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、前記第1及び第2の方向の夫々と直交する第3の方向において、前記第3の磁石の長さが、前記第1及び第2の磁石の少なくとも一方の長さよりも短く、前記磁界検出部を含む前記第3の方向と直交する断面には、前記第3の磁石を含まないことを特徴とする。
本発明の請求項9に係る駆動装置は、固定枠と、前記固定枠に対して第1の方向に垂直な平面に移動可能に保持される可動枠と、前記固定枠及び前記可動枠の一方にコイルが他方に磁気回路が対面するように配置され、前記コイルに電流を流すことで前記可動枠を移動させる駆動部と、前記可動枠の位置を検知可能な前記磁気回路と対面する磁界検出部とを備える駆動装置において、前記磁気回路は前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶ複数の磁石を有し、前記複数の磁石は、前記第1の方向と平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石と、前記第1の方向と平行方向で前記第1の磁石と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石と、前記第1の磁石と前記第2の磁石の間に設けられ、前記コイルの側から見たときに前記第1及び第2の磁石の極と同じ極を持つ方向に磁化方向をもつ第3の磁石とを備え、前記第1及び第2の方向の夫々と直交する第3の方向において、前記第3の磁石の長さが、前記第1及び第2の磁石の少なくとも一方の長さよりも短く、前記磁界検出部を含まない前記第3の方向と直交する断面には、前記第3の磁石を含まず、前記第1の磁石は、前記第1の方向からみてコの字形状を有し、前記第2の磁石は、前記第1の方向からみて逆コの字形状を有し、前記第3の磁石は、前記第1及び第2の磁石によって囲まれる中央部のくぼみに入り込むように配置され、前記磁界検出部は、前記第3の磁石に対向して配置されることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項10に係る撮像装置は、ブレ検出部と、撮像素子と、前記駆動装置とを備え、前記駆動装置が備える可動枠に前記撮像素子を保持した状態で、前記ブレ検出部によるブレ検出結果に応じて前記可動枠を移動させて防振を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、駆動力発生における高効率化と高い信頼性の確保を可能にした駆動装置及び駆動装置を備える撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
図2図1におけるブレ補正機構の分解斜視図である。
図3】ブレ補正機構の正面図及び側面分解図である。
図4】ブレ補正機構における駆動力発生部の構成を示す図である。
図5図4における磁気回路部を構成する実施例1に係る第1~第3の磁石の保磁力と残留磁束密度の関係を示す図である。
図6】実施例1に係る第1~第3の磁石の夫々の、初期温度及び使用時温度での減磁曲線を示す図である。
図7】磁気回路部を構成する実施例2に係る第1~第3の磁石の形状を示す斜視図である。
図8】実施例2に係る第3の磁石の、初期温度及び使用時温度での減磁曲線を示す図である。
図9】実施例2における第3の磁石のパーミアンス係数を説明するために用いられる直方体形状の磁石の寸法を示す斜視図である。
図10図9の磁石の寸法比とパーミアンス係数の関係を示す図である。
図11】実施例2における第3の磁石の寸法を示す斜視図である。
図12】実施例3におけるブレ補正機構の磁気回路部及び磁界検出素子を駆動平面直交方向からみた上面模式図である。
図13】実施例4におけるブレ補正機構の磁気回路部及び磁界検出素子を駆動平面直交方向からみた上面模式図である。
図14図13のB-B’断面図及びC-C’断面図である。
図15】実施例5におけるブレ補正機構の磁気回路部及び磁界検出素子を駆動平面直交方向からみた上面模式図である。
図16図15のD-D’断面図及びE-E’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(実施例1)
まず、図1図4を参照して、本発明の実施例1に係る駆動装置としての第1及び第2のブレ補正機構20,40を備える撮像装置10について説明する。
【0018】
図1は、撮像装置10のブロック図である。
【0019】
図1において、撮像装置10は、カメラボディ(以降、単にボディと呼ぶ)10a、及び交換レンズ(以降、単にレンズと呼ぶ)10bを備える。
【0020】
ボディ10aは、被写体側に撮像面11aを有する撮像素子11と、フレーム部材13cと、カメラ制御手段14と、画像処理手段17とを備える。
【0021】
レンズ10bは、ブレ補正用レンズ12bを有する撮像光学系12を備える。また、撮像光学系12の光軸を光軸12aと表し、光軸12aに直交する(垂直な)平面を光軸直交平面12cと表す。
【0022】
また、撮像装置10は、そのフレーム部材として、マウント部材13a及びフレーム部材13cをボディ10a側に備え、マウント部材13bをレンズ10b側に備える。
【0023】
更に、撮像装置10は、ブレ補正制御手段15a、ブレ検出手段16a(ブレ検出部)、及び第1のブレ補正機構20をボディ10a側に備え、ブレ補正制御手段15b、ブレ検出手段16b、及び第2のブレ補正機構40をレンズ10b側に備える。
【0024】
撮像素子11は、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどにより構成され、ボディ10a内で撮像面11aを不図示の被写体側に向けて光軸12aに直交するように配置される。撮像素子11は撮像光学系12が結像させる不図示の被写体光束を撮像面11a上で光電変換することにより画像信号を生成する役割を果たす。撮像素子11が生成した画像信号は画像処理手段17で各種の処理がなされることにより画像データ化され、不図示のメモリ手段に保存される。
【0025】
撮像光学系12は、レンズ10b内の不図示のレンズ群により構成されており、被写体光束を撮像素子11の撮像面11a上に結像させる役割を果たす。撮像光学系12は後述するブレ補正用レンズ12bを含んでいる。
【0026】
レンズ10b内の撮像光学系12により光軸12aが形成されるため、撮像装置10においては、光軸12aに対して撮像素子11を正確に配置するために、レンズ10bと撮像素子11が共にボディ10a内のフレーム部材13cに対して接続される。この際、撮像素子11は第1のブレ補正機構20を介してフレーム部材13cに対して接続される。また、レンズ10bはレンズ10b側のマウント部材13bとボディ10a側のマウント部材13aを介してフレーム部材13cに対して接続される。
【0027】
カメラ制御手段14は不図示のメインIC内の演算手段であり、撮像装置10における各種の撮影に関わる動作やユーザの入力操作、表示操作等を制御する役割を果たす。以降の本実施例では、特別な断りが無い限り、他の各種の制御手段による制御動作や、検出手段による検出動作等はカメラ制御手段14が制御する。
【0028】
撮像素子11及びブレ補正用レンズ12bは、光軸直交平面12cで並進又は回転移動することによりブレ補正を行うブレ補正手段である。より具体的に説明すると、撮像装置10が撮影中に不図示の被写体に対して姿勢変化がある、すなわち、ブレが発生すると、撮像素子11の撮像面11a上における被写体光束の結像位置が変化することで画像にボヤケ等のブレによる影響が発生する。かかる姿勢変化が十分に小さい場合、上記結像位置の変化は撮像面11a内で一様であり、光軸直交平面12cにおける結像位置の並進又は回転移動とみなすことができる(像面ブレ)。よって、この像面ブレを打ち消すように、撮像素子11の光軸直交平面12c内での並進駆動又は光軸直交平面12cからの回転駆動の制御を第1のブレ補正機構20により行うことで本実施例ではブレ補正(防振)が行われる。また、ブレ補正用レンズ12bは光軸直交平面12cで並進移動することで光軸12aを屈折させることができる。よって、上記の像面ブレを打ち消すように、ブレ補正用レンズ12bの光軸直交平面12c内での並進駆動の制御を第2のブレ補正機構40により行うことで本実施例ではブレ補正が行われる。より詳細なブレ補正の原理及び制御については公知であり本発明の要部ではないため、説明を省略する。
【0029】
ブレ補正手段である撮像素子11とブレ補正用レンズ12bは夫々、第1及び第2のブレ補正機構20,40により、光軸12a上で光軸直交平面12cの一定範囲内で移動可能に保持され、移動制御される。なお、一般にこれらの移動可能範囲が広い程、補正可能な上記の像面ブレ量が大きくなるため、より多くの撮影シーンでブレ補正をしやすくなるが、同時にボディ10aやレンズ10bが大型化する。よって、これらの移動可能範囲は、その必要量や、ボディ10aやレンズ10bとしての適切なサイズに応じて設定される。
【0030】
第1のブレ補正機構20は、詳細な構造は後程図示及び説明するが、図1では不図示の固定部と可動部、及び複数の駆動力発生部を有する。この固定部は可動部を三自由度で支持することで、固定部に対して可動部を相対的に、その駆動平面内で並進させ且つその駆動平面から回転させる。そして、固定部がフレーム部材13cに対して固定され、可動部が撮像素子11を保持することで、撮像素子11の光軸直交平面12c内での並進及び光軸直交平面12cからの回転を可能とする。すなわち、第1のブレ補正機構20は三軸駆動制御可能な駆動装置いわゆるXYθステージを構成する。
【0031】
第2のブレ補正機構40は、第1のブレ補正機構20と同様に、図1では不図示の固定部と可動部、及び複数の駆動力発生部を有する。この固定部は可動部を二自由度で支持することで、固定部に対して可動部を相対的に、その駆動平面内で並進させる。そして、固定部がレンズ10bの筐体及びマウント部材13b,13aを介してフレーム部材13cに対して固定され、可動部がブレ補正用レンズ12bを保持することで、ブレ補正用レンズ12bの光軸直交平面12c内での並進を可能とする。すなわち、第2のブレ補正機構40は二軸駆動制御可能な駆動装置、いわゆるXYステージを構成する。
【0032】
すなわち、ボディ10a側では、ブレ補正制御手段15aが第1のブレ補正機構20を駆動制御することで撮像素子11を移動制御してブレ補正を行う。一方、レンズ10b側では、ブレ補正制御手段15bが第2のブレ補正機構40を駆動制御することでブレ補正用レンズ12bを移動制御してブレ補正を行う。この際、撮像素子11及びブレ補正用レンズ12bの移動目標値は、共に撮像装置10のブレ情報を元に算出するが、このブレ情報はボディ10a側のブレ検出手段16a及びレンズ10b側のブレ検出手段16bによるブレ検出結果から生成される。
【0033】
ブレ検出手段16a,16bは、撮像装置10の各方向の角度変化量や移動量に関する情報、すなわち、撮像装置10の光軸直交平面12cに対する角度変化量や、撮像装置10の光軸直交平面12c内での移動量に関する情報を検出する。例えば、ブレ検出手段16a,16bは、共にジャイロセンサや加速度センサ等により構成され、撮像装置10の各方向の角速度や加速度を、上記撮像装置10の各方向の角度変化量や移動量に関する情報として検出する。よって、ボディ10a側のブレ補正制御手段15a及び交換レンズ10b側のブレ補正制御手段15bはこの角速度や加速度を積分することで、ブレ情報としての上記撮像装置10の各方向の角度変化量や移動量を算出することができる。ブレ補正制御手段15a,15bは、夫々この算出したブレ情報に基づき撮像素子11及びブレ補正用レンズ12bの移動目標値を算出し、第1のブレ補正機構20及び第2のブレ補正機構40の駆動制御を行う。
【0034】
なお、撮像装置10は第1及び第2のブレ補正機構20,40のどちらか一方のみ備える構成でもよい。この場合、ボディ10a及び交換レンズ10bのうちブレ補正機構を有さない側のブレ補正手段(すなわち、撮像素子11又はブレ補正用レンズ12b)は光軸12aに対して固定的に配置する。
【0035】
以上、第1及び第2のブレ補正機構20,40を備える撮像装置10の構成について説明した。続いて、本発明の要部であるXYθステージであるボディ10a側の第1のブレ補正機構(以降、単にブレ補正機構と呼ぶ)20の構成について詳細に説明する。なお、XYステージであるレンズ10b側の第2のブレ補正機構40については、構成の説明は前者に包括されるため、本発明では詳細な図示及び説明を省略する。
【0036】
図2は、ブレ補正機構20の分解斜投影図である。また、図3は、ブレ補正機構20の正面図及び側面分解図である。図3(a)は正面図を示し、図3(b)は側面分解図を示す。なお、図3(a)の正面図は図2で示した一部の部品を非表示としている。
【0037】
図2図3において、ブレ補正機構20は、固定部20a及び可動部20bを備える。
【0038】
また、固定部20a及び可動部20bの夫々の一部が第1~第3の駆動力発生部20c1~20c3を構成する。以下、これらを総称する場合、駆動力発生部20cという。具体的には、第1~第3の駆動力発生部20c1~20c3は、固定部20a側の部分として磁気回路部20d1~20d3を夫々有し、可動部20b側の部分としてコイル部20e1~20e3を夫々有する。以下、これらを総称する場合、磁気回路部20d及びコイル部20eと夫々いう。
【0039】
磁気回路部20d1~20d3は夫々、第1~第3の磁石24_11~24_33を有する。以下、これらを総称して磁石24と定義する。例えば、磁気回路部20d2は第3の磁石24_23を有する。また、コイル部20e1~20e3は夫々、第1~第3のコイル25_1~25_3を有する。以下、これらを総称してコイル25と定義する。
【0040】
固定部20aは、さらに、第1の固定枠21と、単数または複数の部材から構成される第2の固定枠22と、第3の固定枠31とを備える。可動部20bは、さらに、可動枠23と、磁界検出素子29と、被吸引部材としての薄鋼板32とを備える。また、可動部20bと固定部20aの間にはボール30が配置される。
【0041】
図2図3の各々には、固定部20aが可動部20bを並進及び回転移動させる駆動平面20f、及び駆動平面20fと直交する駆動平面直交方向20gが夫々示されている。上述のブレ補正を行うため、撮像装置10におけるブレ補正機構20は、その初期状態(基準位置)において、駆動平面20fを光軸直交平面12cと平行とし、且つ駆動平面直交方向20gを光軸12aの方向と平行とする。
【0042】
ブレ補正機構20の各部材は、駆動平面直交方向20gにおいて、被写体側から第3の固定枠31、薄鋼板32、FPC33、可動枠23、コイル25、ボール30、第1の固定枠21、磁石ホルダ26、磁石24、第2の固定枠22の順に並ぶ。また、磁界検出素子29は、空芯コイルであるコイル25の軸心部に配置される。
【0043】
薄鋼板32、FPC33、コイル25、及び磁界検出素子29は夫々、可動枠23に対して固定されて可動部20bの一部を構成する。第3の固定枠31、磁石24、磁石ホルダ26、第2の固定枠22は第1の固定枠21に対して固定されて固定部20aの一部を構成する。
【0044】
撮像素子11は、その初期状態において、撮像面11aが駆動平面20fと平行になるような姿勢で可動枠23に対して固定される。
【0045】
可動枠23は、第1の固定枠21上のボール30により支持される。また、可動枠23がボール30により支持される方向で、可動枠23に固定される薄鋼板32(被吸引部材)は、第1の固定枠21に固定される磁石24により吸引されることで、可動枠23を駆動平面20f上に付勢する。これにより、ブレ補正機構20は、その駆動中の固定部20aに対する可動部20bの浮き上がり等を抑えた状態で、可動部20bの駆動平面20f内での並進及び駆動平面20fからの回転移動が可能となる。更に、上述したように駆動平面20f及び駆動平面直交方向20gは夫々、光軸直交平面12c及び光軸12aの方向と平行である。このため、ブレ補正機構20は、撮像素子11の撮像面11aを、光軸直交平面12c内で並進させたり、光軸直交平面12cから回転移動させたりすることで、撮像装置10のブレ補正を行うことができる。
【0046】
以下、ブレ補正機構20が、駆動力発生部20cにより、可動部20bの駆動平面20f内での並進及び駆動平面20fからの回転移動を制御する方法について説明する。
【0047】
ここで、まず、撮像装置10における方向の定義を行う。撮像装置10の光軸12aの方向を直交XYZ座標系におけるZ軸方向(不図示の被写体の方向が正)と定義する。更に、撮像装置10の正立姿勢における水平方向と鉛直方向を、夫々X軸方向(図2向かって右側から左手側へ向かう方向が正)とY軸方向(図2向かって下から上へ向かう方向が正)と定義する。
【0048】
駆動力発生部20cは、第1~第3の駆動力発生部20c1~20c3から構成される。第1の駆動力発生部20c1では後述する方法でX軸方向に駆動力を発生させる。また、第2及び第3の駆動力発生部20c2,20c3は、光軸直交平面12c内で略平行であって、且つ第1の駆動力発生部20c1に対して略直交方向となるように回転させて配置することで、Y軸方向に駆動力を発生させる。これにより、第2及び第3の駆動力発生部20c2,20c3の組の駆動力の発生方向を略平行とする一方、第1及び第2の駆動力発生部20c1,20c2の組及び第1及び第3の駆動力発生部20c1,20c3の組の駆動力の発生方向を略直交とする。以上により、駆動力の発生方向が略直交となる組で並進2軸(X,Y軸方向)の駆動制御が可能になり、駆動力の発生方向が略平行となる組で回転1軸(θ方向)の駆動制御が可能になり、3軸の駆動制御を行うことができる。
【0049】
次に、駆動力発生部20cにおける駆動力の発生方法について図4を用いて説明する。
【0050】
図4は、第1の駆動力発生部20c1の構成を示す図である。図4(a)はZ軸正方向正面図を示し、図4(b)は図4(a)のA-A’断面図を示す。なお、本実施例では、第1の駆動力発生部20c1について説明するが、第2の駆動力発生部20c2、第3の駆動力発生部20c3も同様の構成である。
【0051】
駆動力発生部20c(駆動部)はボイスコイルモータ(VCM)方式と呼ばれる構成を備えている。この構成では、固定部20aと可動部20bの一方に磁気回路部20d1を、他方にコイル部20eを対面するように配置し、磁気回路部20dが形成する磁気回路中でコイル部20eに電流を流すことで駆動力を発生する。更に、本実施例では特に固定部20a側に磁気回路部20dを、可動部20b側にコイル部20eを配置したムービングコイル方式を取っている。一般に、ボイスコイルモータ方式で使用する磁石(の組み合わせ)とコイルにおいては、コイルの方が総重量を軽量にすることができるため、ムービングコイル方式をとることで、より高効率化や高応答化しやすいという特徴がある。ただし、本発明の構成は磁気回路部20dとコイル部20eの配置を逆にしたムービングマグネット方式に対しても適用しても構わない。
【0052】
駆動力発生部20cでは高効率化のため、第1のコイル25_1(以下単にコイル25という)は駆動平面直交方向20g(Z軸方向)でなるべく磁石24に近づけて配置される。更に、第3の固定枠31及び第2の固定枠22は例えば電磁鋼板や鉄板等の第1の固定枠21(図2)よりも透磁率が高い板金材料により構成され、ヨークとして磁石24による磁束の周囲への漏れを防ぐ役割を果たす。また、磁気エネルギーを高めるために、磁石24はネオジム磁石を使用することが望ましい。
【0053】
本実施例では、磁気回路部20dは、ハルバッハ配列の概念を利用した磁気回路(以降、便宜的にハルバッハ磁気回路と呼ぶ)を形成する。続いて、ハルバッハ磁気回路の特徴について説明する。本実施例の磁気回路部20dは、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の間に1対の磁石により構成される第3の磁石24_13を配置するハルバッハ磁気回路を形成する。第1の磁石24_11の磁化方向は駆動平面直交方向20gとし、第2の磁石24_12の磁化方向は第1の磁石24_11の磁化方向と反対方向とする。第3の磁石24_13の磁化方向は、駆動平面直交方向20gにおいてコイル25側から見たとき、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の極と同じ極を持つ方向に配置する。
【0054】
駆動平面直交方向20gにおいて、コイル25の上及び第1~第3の磁石24_11~24_13の下に各々、磁束の漏れを防ぐヨークである第3の固定枠31と第2の固定枠22を配置する。これにより、第1の磁石24_11からコイル25に向かう方向に出た磁束は第3の固定枠31を経由して第2の磁石24_12に入る。一方、第1の磁石24_11からコイル25と反対方向に出た磁束は第2の固定枠22を経由して第1の磁石24_11に戻る。この状態でコイル25に通電すると、コイル25はX軸方向に可動部20bを駆動する駆動力を発生する。
【0055】
また、コイル25の空隙部に、磁界検出素子29(磁界検出部)を配置することで、上記通電により発生した駆動力に基づくコイル25のX軸方向の位置変化が高感度に検知可能となる。
【0056】
ハルバッハ磁気回路を形成する磁気回路部20dでは、第3の磁石24_13により、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の間での駆動平面直交方向20gにおけるコイル25側とその反対側(第2の固定枠22側)への磁束漏れが低減される。このため、コイル25側の磁束密度が向上し、また、その磁束密度のうち、磁界検出素子29により検出されるZ軸方向の成分の磁束密度の直線性が向上する。以上の構成により、ハルバッハ磁気回路を形成する磁気回路部20dでは、駆動力の発生効率、位置検出精度を共に高めることができる。
【0057】
ところが、ハルバッハ磁気回路を形成する磁気回路部20dでは、第3の磁石24_13と第1の磁石24_11、また、第3の磁石24_13と第2の磁石24_12が夫々上側(コイル25側)において互いに反発しあう不安定な配置となっている。このように互いに反発力を受ける環境においては、第1~第3の磁石24_11~24_13は、その磁力が低下し、元の磁力に戻ることが出来ない不可逆減磁が発生するおそれがある。
【0058】
第1~第3の磁石24_11~24_13は何れも隣接する磁石から反発力を受けるが、特に、第3の磁石24_13は、隣接する両側の磁石から反発力を受け続ける。すなわち、第3の磁石24_13の位置は、第1及び第2の磁石24_11,24_12の位置に比べて不可逆減磁が発生しやすい位置である。
【0059】
磁石24のいずれかに不可逆減磁が発生すると、磁気回路部20dの磁気エネルギーが低下することで、駆動力の低下や磁界検出素子29の検出値のズレによる位置精度の低下などが発生し、駆動力発生部20cの信頼性の低下が懸念される。
【0060】
以下、駆動力発生における高効率化と高い信頼性を確保することを可能にした、本実施例に係る駆動装置としてのブレ補正機構20、特にこれに含まれる駆動力発生部20cの磁気回路部20dについて説明する。
【0061】
本実施例によるハルバッハ磁気回路を形成する磁気回路部20dについて、図5図6を参照して説明する。図5は、磁気回路部20dを構成する第1~第3の磁石24_11~24_13の保磁力Hcjと残留磁束密度Brの関係を示す図である。図6は、横軸を磁界の強さ-H、縦軸を磁束密度Bとする、第1~第3の磁石24_11~24_13の夫々の減磁曲線を示す図である。具体的には、図6(a)は、第1の磁石24_11の減磁曲線を示し、図6(b)は、第2の磁石24_12の減磁曲線を示し、図6(c)は、第3の磁石24_13の減磁曲線を示す。
【0062】
図5図6において、第1~第3の磁石24_11~24_13の夫々の、保磁力Hcjn、残留磁束密度Brn、及びパーミアンス係数Pcnを示す。尚、夫々の末尾の数字nは、第1~第3の磁石24_11~24_13の夫々付番の末尾の数字に対応する。例えば、第1の磁石24_11の残留磁束密度の符号はBr1と表し、第3の磁石24_13の保磁力の符号はHcj3と表す。また同様に、図5において、残留磁束密度Brnと保磁力Hcjnを結ぶ点をBHnで表す。例えば、第3の磁石24_13の残留磁束密度Br3と保磁力Hcj3を結ぶ点をBH3と表す。
【0063】
また、図6に示すT0は、第1~第3の磁石24_11~24_13の夫々の初期温度を示す。さらに、図6に示すT1、T2、T3は夫々、撮像装置10の使用時の第1~第3の磁石24_11~24_13の温度(以下、使用時温度という)であって、その末尾の番号は各磁石の番号の末尾の数字を表す。例えば、第2の磁石24_12の使用時温度をT2と表す。
【0064】
磁石は一般に保磁力Hcjが高いほど不可逆減磁が発生しにくく、残留磁束密度Brが高いほど、高い磁力を発生させることが出来るという性質を持つ。ところが、図5に示すように、保磁力Hcjと残留磁束密度Brは一般的に反比例関係にある。すなわち、不可逆減磁を発生させないように保磁力Hcjを高めると、残留磁束密度Brが低くなる。このように残留磁束密度Brが低くなると、磁力が低くなり、駆動力の低下が懸念される。
【0065】
そこで、本実施例では、第3の磁石24_13の保磁力Hcj3を、第1の磁石24_11の保磁力Hcj1と第2の磁石24_12の保磁力Hcj2よりも高くしている。上述したように、第3の磁石24_13の位置は、第1及び第2の磁石24_11,24_12の位置に比べて不可逆減磁が発生しやすい位置であるためである。これにより、第3の磁石24_13における不可逆減磁の発生を抑える。
【0066】
一方、第1の磁石24_11の残留磁束密度Br1と第2の磁石24_12の残留磁束密度Br2を第3の磁石24_13の残留磁束密度Br3よりも大きくすることで、ハルバッハ磁気回路を形成する磁気回路部20dの磁力を高く保つ。
【0067】
例えば、第1~第3の磁石24_11~24_13がすべてネオジム磁石である場合、上記関係が満たされるような残留磁束密度及び保磁力を有するグレードのネオジム磁石を夫々選択するようにすればよい。
【0068】
また、上述したように磁石24はネオジム磁石を採用することが望ましいが、ネオジム磁石は高温になるほど、不可逆減磁が発生しやすいという性質を持つ。一般に、撮像装置の主要な発熱源の一つとして撮像素子が挙げられるが、近年、撮像装置の動画性能の向上などにより、撮像素子の発熱量が増加している。本実施例においても、撮像素子11から発生した熱は撮像素子11に近い部品から伝わっていくため、磁石24に着目すると、第2の磁石24_12、第3の磁石24_13、第1の磁石24_11の順に熱が伝わっていく。そのため、第2の磁石24_12の使用時温度T2、第3の磁石24_13の使用時温度T3、第1の磁石24_11の使用時温度T1の順に温度が高くなりやすいという傾向がある。そこで、図6に示すように第2の磁石24_12の保磁力Hcj2を第1の磁石24_11の保磁力Hcj1より高くすることで、撮像素子11の発熱による不可逆減磁の発生を抑える磁気回路部20dを実現している。
【0069】
なお、本実施例では、撮像装置10の使用時の温度上昇による影響よりも、磁気回路部20dの中央に位置する第3の磁石24_13がその両側にある第1及び第2の磁石24_11, 24_12から受ける反発力の影響の大きい場合を想定している。このため、第3の磁石24_13の保磁力Hcj3を第2の磁石24_12の保磁力Hcj2よりも高くする構成としたが、本発明はかかる構成に限定されない。
【0070】
例えば、撮像装置10の使用時の温度上昇による影響が、磁気回路部20dの中央に位置する第3の磁石24_13がその両側にある第1及び第2の磁石24_11, 24_12から受ける反発力の影響よりも大きい場合も想定される。かかる場合は、第2の磁石24_12の保磁力Hcj2を第3の磁石24_13の保磁力Hcj3よりも高くすることが望ましい。尚、その場合でも、第3の磁石24_13の保磁力Hcj3は第1の磁石24_11の保磁力Hcj1よりも高くすることが望ましい。一方、第1の磁石24_11の残留磁束密度Br1を第2の磁石24_12の残留磁束密度Br2と第3の磁石24_13の残留磁束密度Br3よりも大きくすることで、ハルバッハ磁気回路を形成する磁気回路部20dの磁力を高く保つことが望ましい。
【0071】
以上のように、本実施例では、第3の磁石24_13の保磁力Hcj3を第1の磁石24_11の保磁力Hcj1と第2の磁石24_12の保磁力Hcj2の少なくとも一方よりも高くする。また、第1の磁石24_11の残留磁束密度Br1と第2の磁石24_12の残留磁束密度Br2の少なくとも一方を第3の磁石24_13の残留磁束密度Br3よりも高くする。
【0072】
以上の構成により、駆動力発生における高効率化と高い信頼性を確保することを可能にした駆動装置としてのブレ補正機構20を実現する。
【0073】
(実施例2)
本発明の実施例2に係る磁気回路部20d1~20d3について図7図9を用いて説明する。ここで、実施例1との差は、磁気回路部20d1~20d3の磁石24の構成のみであるので、以下に磁石24の構成を詳細に説明し、それ以外の部材の説明は割愛する。
【0074】
図7は、本実施例における磁気回路部20d1~20d3の磁石24の形状を示す斜視図である。尚、本実施例の磁気回路部20d1~20d3はすべて同様の構成でよいため、磁気回路部20d1の1つのみを説明し、他は割愛する。また、本実施例では、磁気回路部20d1を構成する全ての磁石24は同じ材質により構成される。
【0075】
図7に示すように、本実施例の磁気回路部20d1は、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12とその間に挟まれた第3の磁石124_13から構成される。
【0076】
図2に示すように、実施例1の第3の磁石24_13のY軸方向の長さ、すなわち磁路長さ(第3の方向)とZ軸方向の長さ(駆動平面直交方向20g:第1の方向)とは、夫々第1の磁石24_11と第2の磁石24_12と同じ長さに構成されている。これに対し、本実施例の第3の磁石124_13の磁路長さ及びZ軸方向の長さは、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12よりも短く構成されている。この理由について次に詳細に説明する。
【0077】
図8は、横軸を磁界の強さ-H、縦軸を磁束密度Bとする、第3の磁石124_13の、初期温度T0及び使用時温度T4での減磁曲線800,801を示す。
【0078】
図8では、第3の磁石124_13の、保磁力Hcj4、残留磁束密度Br4、及びパーミアンス係数Pc4-bの場合の減磁曲線800,801上の動作点OT0,OT4で表す。また、本実施例の比較例として、パーミアンス係数Pc4-bより小さい、パーミアンス係数Pc4-aの場合の減磁曲線800,801上の動作点O’T0,O’T4を示す。尚、ここでの比較例は、第3の磁石124_13と同じ材質の直方体形状を有し、後述する図9に示す寸法比がLx:Ly:Lz=1:2:10である磁石である。
【0079】
ここで、動作点の夫々の下付きの数字は、その動作点を含む減磁曲線が測定されたときの第3の磁石124_13及び比較例の磁石の温度を表す。例えば、パーミアンス係数Pc4-bの場合の初期温度T0における減磁曲線800上の動作点の符号はOT0と表す。
【0080】
図8に示すように、パーミアンス係数が変わると動作点が変化することがわかる。例えば、使用時温度T4の減磁曲線801上には、パーミアンス係数Pc4-b(第3の磁石124_13)の動作点OT4とパーミアンス係数Pc4-a(比較例)の動作点O’T4が存在する。これを比較すると、動作点OT4上の磁界の強さ-Hの絶対値、すなわち反磁場の大きさは、動作点O’T4上の反磁場の大きさより小さい。すなわち、不可逆減磁が発生しにくくなる。
【0081】
図9は、第3の磁石124_13のパーミアンス係数Pc4-bを説明するために用いられる直方体形状の磁石の寸法を示す斜視図であり、図10は、図9の磁石における寸法比とパーミアンス係数の関係を示す図である。また図11は、第3の磁石124_13の寸法を示す斜視図である。
【0082】
図9に示すように、直方体形状をした磁石の着磁方向の長さ(第2の方向)をLx、磁路断面におけるLxと直交する方向の長さをLy、磁路長さをLzとする。このときのLx/Lyを横軸に、パーミアンス係数を縦軸にし、Lz/Lyの値を曲線で示したものが図10である。例えば、図8の比較例の磁石は、Ly/Lxの値が2であって、Lz/Lxの値が10であるため、バーミアンス係数は0.5程度であることがわかる。
【0083】
前述のとおり、第3の磁石124_13において不可逆減磁をおきにくくするにはそのパーミアンス係数は大きい必要がある。より厳密には、撮像装置10の使用時における第3の磁石124_13の温度T4における減磁曲線801(図8)の屈曲点よりその動作点が上側になるようなパーミアンス係数である必要がある。なぜなら動作点が減磁曲線の屈曲点より下側となると、温度が撮像装置10の使用時の温度T4から初期温度T0に戻っても残留磁束密度が戻りきらず減磁してしまうためである。
【0084】
例えば、比較例のようにパーミアンス係数Pc4-aである場合、撮像装置10の使用時においてはその動作点O’T4は、減磁曲線801の下側となるため望ましくない。これに対して、本実施例の第3の磁石124_13のようにパーミアンス係数Pc4-bである場合、撮像装置10の使用時においてはその動作点OT4は、減磁曲線801の上側となるため望ましい。
【0085】
また、パーミアンス係数を大きくするためには、図10から明らかなように、Ly/Lxの値を小さくする、もしくはLz/Lxの値を小さくするとよい。磁気回路部20d1の効率がよくなるように、これを構成する磁石24の夫々の、第3の磁石124_13の着磁方向(第2の方向)における長さを決定しようとすると、第3の磁石124_13の着磁方向長さ124_13Lxの最適値は自ずと決まる。一方、Lxをその最適値に固定した状態で、Ly/LxもしくはLz/Lxを小さくするには、LyかLzもしくはその両者を小さく(短く)する必要がある。
【0086】
そこで本実施例においては、第3の磁石124_13の磁路長さ124_13Lzを第1の磁石24_11及び第2の磁石24_12の磁路長さよりも短くした。さらに、第3の磁石124_13の磁路断面における着磁方向と直交する方向(駆動平面直交方向20g)においても、第3の磁石124_13の長さ124_13Lyを、第1の磁石24_11及び第2の磁石24_12のその方向における長さよりも短くした。
【0087】
これによって本実施例の第3の磁石124_13のパーミアンス係数Pc4-bが、その比較例のパーミアンス係数Pc4-aより大きくなり、さらには動作点OT4が温度T4時における減磁曲線801の屈曲点を超える。このため、不可逆減磁がより起きにくい構成とすることができる。
【0088】
以上本実施例では、磁路長さの方向及び駆動平面直交方向20gにおいて、第1及び第2の磁石24_11,24_12の寸法に比べて、第3の磁石124_13の寸法を短くしたがこれに限定されない。例えば、磁路長さの方向及び駆動平面直交方向20gのどちらか片方の方向の寸法のみ短くしてもよい。
【0089】
(実施例3)
上述の実施例2では、第3の磁石124_13の寸法を、第1及び第2の磁石24_11,24_12より小さくしたことで、同一寸法の場合に比べて、駆動装置としてのブレ補正機構20の若干の駆動力(推力)の低下が見込まれる。これに対し、本実施例では、実施例1の第3の磁石24_13に対応する磁石のパーミアンス係数を第3の磁石24_13のパーミアンス係数より大きくし、且つ実施例2よりブレ補正機構20の駆動力を向上させる。ここで、実施例1との差は、磁気回路部20d1~20d3の磁石24の構成、及び磁界検出素子29の配置のみであるので、それ以外の部材の説明は割愛する。
【0090】
本実施例に係る磁気回路部20d1~d3及びこれらに対向する磁界検出素子29について図12を用いて説明する。尚、本実施例の磁気回路部20d1~20d3はすべて同様の構成でよいため、磁気回路部20d1の1つのみを説明し、他は割愛する。また、本実施例も実施例2と同様、磁気回路部20d1を構成する全ての磁石24は同じ材質(図8に示す保磁力Hcj4、残留磁束密度Br4を有する磁石)により構成される。
【0091】
図12は、本実施例における磁気回路部20d1及び磁界検出素子29を駆動平面直交方向20g(第1の方向)からみた上面模式図である。
【0092】
図12に示すように、本実施例の磁気回路部20d1は、第1及び第2の磁石24_11,24_12の間に、第3の磁石24_13と同様に着磁された第3の磁石224_13a,224_13bが磁路長さの方向(第3の方向)に隣接するように配置される。また磁界検出素子29は、この2つの第3の磁石224_13a,224_13bの境界上ではない位置に対向して配される。これは磁界検出素子29による磁界検出を精度よく行い、ひいては精度のよい位置検出が可能とするためである。
【0093】
駆動平面直交方向20g(第1の方向)において、第3の磁石224_13a,224_13bの夫々は、同一の寸法(長さ224_13Ly)であり、第1の磁石24_11及び第2の磁石24_12の略半分の寸法である。すなわち、駆動平面直交方向20g(第1の方向)において、第3の磁石224_13a,224_13bの夫々の寸法は、実施例1の第3の磁石24_13の略半分の寸法である。これにより、第3の磁石224_13a,224_13bを第3の磁石24_13より大きいパーミアンス係数とし、不可逆減磁が起こりにくくさせることが可能となる。本実施例ではさらに、パーミアンス係数を高めながら、駆動装置としてのブレ補正機構20の駆動力を向上させるため、磁路長さの方向(第3の方向)に第3の磁石224_13a,224_13bを並べた形態としている。本実施例では、第3の磁石224_13a,224_13bを夫々の磁路長さを、実施例1の第3の磁石24_13の略半分にしてパーミアンス係数を大きくしている。
【0094】
尚、駆動平面直交方向20g(第1の方向)において、第3の磁石224_13a,224_13bの夫々の寸法(長さ224_13Ly)は、第1の磁石24_11や第2の磁石24_12の寸法の略半分としたが、この限りではない。例えば、第3の磁石224_13a,224_13bを全体として、実施例1の第3の磁石24_13と同一寸法とすべく、夫々の長さ224_13Lyをその倍の寸法に変更してもよい。
【0095】
(実施例4)
実施例3と同様、本実施例では、実施例1の第3の磁石24_13に対応する磁石のパーミアンス係数を第3の磁石24_13のパーミアンス係数より大きくし、且つ実施例2よりブレ補正機構20の駆動力を向上させる。ここで、実施例1との差は、磁気回路部20d1~20d3の磁石24の構成、及び磁界検出素子29の配置のみであるので、それ以外の部材の説明は割愛する。
【0096】
本実施例に係る磁気回路部20d1~d3及びこれらに対向する磁界検出素子29について図13図14を用いて説明する。尚、本実施例の磁気回路部20d1~20d3はすべて同様の構成でよいため、磁気回路部20d1の1つのみを説明し、他は割愛する。また、本実施例も実施例2,3と同様、磁気回路部20d1を構成する全ての磁石24は同じ材質(図8に示す保磁力Hcj4、残留磁束密度Br4を有する磁石)により構成される。
【0097】
図13は、本実施例における磁気回路部20d1及び磁界検出素子29を駆動平面直交方向20g(第1の方向)から見た上面模式図である。また図14は、図13のB-B’断面図及びC-C’断面図である。
【0098】
図13に示す第1の磁石324_11は、第1の磁石24_11と同方向に着磁されており、駆動平面直交方向20g(第1の方向)から見てコの字形状を有する。同様に、第2の磁石324_12は、第2の磁石24_12と同方向に着磁されており、駆動平面直交方向20g(第1の方向)から見て逆コの字形状を有する。さらに第3の磁石324_13は、第3の磁石24_13と同方向に着磁されており、第1の磁石324_11及び第2の磁石324_12によって囲まれる中央部のくぼみに入り込むように配置される。また磁界検出素子29は、第3の磁石324_13と対向して配される。この磁界検出素子29の配置については図14を用いて後述する。
【0099】
また、磁路長さの方向(第3の方向)において、第3の磁石324_13の寸法(長さ324_13Lz)を、第1及び第2の磁石324_11,324_12の寸法(長さ324_12Lz)より短くする。すなわち、磁路長さの方向(第3の方向)において、第3の磁石324_13の寸法(長さ324_13Lz)を、実施例1の第3の磁石24_13より短くする。これにより、第3の磁石324_13を第3の磁石24_13より大きいパーミアンス係数とし、不可逆減磁が起こりにくくさせることが可能となる。さらに、本実施例では、実施例2とは異なり、第1及び第2の磁石324_11,324_12の形状を、磁路長さの方向(第3の方向)における第3の磁石324_13との長さの差にあたる部分を埋めるような形状としている。これにより、駆動装置としてのブレ補正機構20の駆動力を確保している。
【0100】
図14から明らかなように、磁界検出素子29を通るC-C’断面においては第3の磁石324_13が存在するが、それ以外の断面、例えばB-B’断面においては第3の磁石324_13が存在しないような構成となっている。
【0101】
このように、磁界検出素子29は、磁気回路部20d1のうちハルバッハ磁気回路を形成している部分に対向して配される。これにより、磁界検出素子29は、磁界検出を精度よく行うことが可能となり、ひいては精度のよい位置検出が可能となる。
【0102】
(実施例5)
実施例3,4と同様、本実施例では、実施例1の第3の磁石24_13に対応する磁石のパーミアンス係数を第3の磁石24_13のパーミアンス係数より大きくし、且つ実施例2よりブレ補正機構20の駆動力を向上させる。ここで、実施例1との差は、磁気回路部20d1~20d3の磁石24の構成、及び磁界検出素子29の配置のみであるので、それ以外の部材の説明は割愛する。
【0103】
本実施例に係る磁気回路部20d1~d3及びこれらに対向する磁界検出素子29について図15図16を用いて説明する。尚、本実施例の磁気回路部20d1~20d3はすべて同様の構成でよいため、磁気回路部20d1の1つのみを説明し、他は割愛する。また、本実施例も実施例2~4と同様、磁気回路部20d1を構成する全ての磁石24は同じ材質(図8に示す保磁力Hcj4、残留磁束密度Br4を有する磁石)により構成される。
【0104】
図15は、本実施例における磁気回路部20d1及び磁界検出素子29を駆動平面直交方向20g(第1の方向)から見た上面模式図である。また図16は、図15のD-D’断面図及びE-E’断面図である。
【0105】
図15に示すように、本実施例の磁気回路部20d1は、第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の間に、第3の磁石24_13と同様に着磁された第3の磁石424_13a,424_13bが夫々の磁路長さの方向(第3の方向)に並べて配置される。また、第3の磁石424_13a,424_13bの間には斜線で示す空隙部424_13cが設けられる。磁界検出素子29は、この空隙部424_13cに対向して配される。
【0106】
すなわち、図16から明らかなように、磁界検出素子29を通るE-E’断面において第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の間には第3の磁石424_13a,424_13bはいずれも存在しない。一方、それ以外の断面、例えばD-D’断面においては第1の磁石24_11と第2の磁石24_12の間には第3の磁石424_13aが存在するような構成となっている。かかる構成とした場合、E-E’断面での磁束ピーク位置は、D-D’断面での磁束ピーク位置より外側に移動し、その分、磁界検出素子29による位置検出ストロークを伸ばすことができる。
【0107】
さらには、磁気回路部20d1のうち、磁界検出素子29と対向しない部分においては、第1及び第2の磁石24_11,24_12の間に第3の磁石424_13a,424_13bを配してハルバッハ磁気回路を形成する。これにより、磁気回路部20d1の効率を向上させ、駆動装置としてのブレ補正機構20の駆動力を確保している。
【0108】
また、第3の磁石424_13a,424_13bの夫々の磁路長さを、実施例1の第3の磁石24_13の磁路長さより短くする。これによって、第3の磁石424_13a,424_13bを実施例1の第3の磁石24_13より大きいパーミアンス係数とし、不可逆減磁を起きにくくさせることが可能となる。
【0109】
尚、実施例2~5では、磁気回路部20d1を構成する磁石24を全て同じ材質により構成したが、これに限定されない。例えば、実施例1と同様の関係が満たされるような残留磁束密度及び保磁力を有するグレードのネオジム磁石を、磁気回路部20d1を構成する磁石24の夫々として選択するようにしてもよい。
【0110】
また、実施例1~5では、第1の駆動力発生部20c1の構成のみを説明したが、第2の駆動力発生部20c2や第3の駆動力発生部20c3も同様の構成をとる。さらには、第1の駆動力発生部20c1と第2の駆動力発生部20c2と第3の駆動力発生部20c3夫々の複数の磁石の構成が同じようになっている必要はない。例えば、第1の駆動力発生部20c1が実施例1の構成、第2の駆動力発生部20c2が実施例2の構成、第3の駆動力発生部20c3が実施例3の構成など、さまざまな組み合わせを用いてもよい。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
20 ブレ補正機構
20a 固定部
20b 可動部
20c 駆動力発生部
20d 磁気回路部
20e コイル部
21 第1の固定枠
23 可動枠
24 磁石
25 コイル
29 磁界検出素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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