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特許7551315撮像装置、撮像装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/68 20230101AFI20240909BHJP
   G02B 7/34 20210101ALI20240909BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20240909BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240909BHJP
   G03B 17/00 20210101ALI20240909BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20240909BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20240909BHJP
【FI】
H04N23/68
G02B7/34
G03B5/00 J
G03B5/00 L
G03B13/36
G03B17/00 Q
G03B17/14
H04N23/67 100
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020048978
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150815
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】古徳 宏美
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028358(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013200(WO,A1)
【文献】特開2012-088436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/68
G02B 7/34
G03B 5/00
G03B 13/36
G03B 17/00
G03B 17/14
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ装置が着脱可能な撮像装置であって、
前記レンズ装置の撮像光学系の光軸に対して交差する方向に移動可能な撮像素子と、
前記撮像光学系の異なる瞳部分領域をそれぞれ通過する光束の光電変換により得られる複数の像信号の位相差に基づいて焦点検出を行う焦点検出手段と、
防振制御の際に前記撮像素子の移動を制御する防振制御手段と、
前記撮像素子の前記防振制御の中心位置を決定する位置決定手段と、を有し、
前記位置決定手段は、前記レンズ装置から取得されたレンズ情報と、所定の焦点検出精度を確保することが可能な範囲に関する情報である前記中心位置の範囲に関する情報とに基づいて、前記中心位置を決定すること特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記中心位置の範囲に関する前記情報を記憶する記憶手段を更に有し、
前記位置決定手段は、前記レンズ情報と、前記記憶手段から読み出された前記中心位置の範囲に関する前記情報とに基づいて、前記中心位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記レンズ情報は、前記レンズ装置の製造誤差による光軸の設計値からのずれ量に関する情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記レンズ情報は、焦点距離に関する情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記レンズ情報は、被写体距離に関する情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記レンズ情報は、前記レンズ装置の姿勢に関する情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記焦点検出手段による焦点検出領域を設定する領域設定手段を更に有し、
前記位置決定手段は、前記レンズ情報と、前記中心位置の範囲に関する情報と、前記領域設定手段により設定された前記焦点検出領域に関する情報とに基づいて、前記中心位置を決定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記位置決定手段は、前記領域設定手段により設定された前記焦点検出領域と前記撮像素子との相対的な位置に基づいて、前記中心位置を決定することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記位置決定手段は、前記領域設定手段により設定された焦点検出領域の像高に基づいて、前記中心位置を決定することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記焦点検出手段による焦点検出動作を設定する動作設定手段を更に有し、
前記位置決定手段は、前記動作設定手段により決定された前記焦点検出動作に基づいて、前記中心位置を決定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
レンズ装置が着脱可能な撮像装置の制御方法であって、
前記レンズ装置の撮像光学系の異なる瞳部分領域をそれぞれ通過する光束の光電変換により得られる複数の像信号の位相差に基づいて焦点検出を行う焦点検出ステップと、
防振制御の際に、前記撮像光学系の光軸に対して交差する方向に移動可能な撮像素子の移動を制御する防振制御ステップと、
前記撮像素子の前記防振制御の中心位置を決定する決定ステップと、を有し、
前記決定ステップにおいて、前記レンズ装置から取得されたレンズ情報と、所定の焦点検出精度を確保することが可能な範囲に関する情報である前記中心位置の範囲に関する情報とに基づいて、前記中心位置を決定すること特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項12】
請求項1に記載の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像ブレ補正を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に加わる振れ等によって生じた撮影画像の振れを補正する振れ補正機能が提案されており、このような振れ補正機能を撮像装置に搭載することで、より良好に撮影することができる。撮像装置における振れ補正機能として、被写体像を撮像する撮像素子を撮像光学系の光軸に対してシフトさせることで像振れを低減するものがある。ただし、レンズ交換式カメラでは、装着された交換レンズのイメージサークル径が撮像素子のサイズに対して余裕がない場合や、イメージサークルの中心が交換レンズの製造誤差等により撮像素子の中心からずれている場合がある。このような場合、良好な防振を行うための十分なシフト量が得られない。
【0003】
特許文献1には、交換レンズのイメージサークルの中心位置の情報(レンズ光軸情報)をカメラに通信し、カメラにおいて撮像素子の中心とレンズ光軸とが一致するように撮像素子をシフトさせる方法が開示されている。この方法によれば、製造誤差等によるレンズ光軸のずれを解消することができ、振れ補正のために必要な撮像素子の移動量をある程度確保することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-087937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、レンズ光軸のずれを補正することは可能であるが、カメラに関する条件は考慮されていない。例えば、撮像素子の撮像面における位相差AFを実施する際には、レンズ装着のためのマウント部の中心との関係性を考慮する必要がある。この関係性を考慮せずにレンズ光軸のずれをそのまま補正すると、位相差AFの焦点検出精度が低下する可能性がある。その結果、撮影の際に被写体にピントが合わず、ユーザの意図と異なる画像が取得されてしまう場合がある。
【0006】
そこで本発明は、撮像面における位相差AFの焦点検出精度を確保しつつ、振れ補正のために必要な撮像素子の移動量を確保可能な撮像装置、撮像装置の制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての撮像装置は、レンズ装置が着脱可能な撮像装置であって、前記レンズ装置の撮像光学系の光軸に対して交差する方向に移動可能な撮像素子と、前記撮像光学系の異なる瞳部分領域をそれぞれ通過する光束の光電変換により得られる複数の像信号の位相差に基づいて焦点検出を行う焦点検出手段と、防振制御の際に前記撮像素子の移動を制御する防振制御手段と、前記撮像素子の前記防振制御の中心位置を決定する位置決定手段と、を有し、前記位置決定手段は、前記レンズ装置から取得されたレンズ情報と、所定の焦点検出精度を確保することが可能な範囲に関する情報である前記中心位置の範囲に関する情報とに基づいて、前記中心位置を決定する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像面における位相差AFの焦点検出精度を確保しつつ、振れ補正のために必要な撮像素子の移動量を確保可能な撮像装置、撮像装置の制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態における撮像システムのブロック図である。
図2】交換レンズのイメージサークルの中心が撮像素子の中心に対してずれていない場合の撮像素子のシフト可能量を示す図である。
図3】交換レンズのイメージサークルの中心が撮像素子の中心に対してずれている場合の撮像素子のシフト可能量を示す図である。
図4図3の場合に許容される撮像素子のシフト可能範囲を示す図である。
図5】交換レンズのイメージサークルの中心が撮像素子の中心に対してずれている場合に設定される撮像素子のシフト可能範囲を示す図である。
図6】第1の実施形態における焦点検出精度の保証状態での撮像素子の防振制御の中心位置を示す図である。
図7】第1の実施形態における防振制御処理を示すフローチャートである。
図8】第2の実施形態における撮像システムのブロック図である。
図9】第2の実施形態における実効焦点検出精度の保証状態での撮像素子の防振制御の中心位置を示す図である。
図10】第2の実施形態における防振制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態における撮像システム(カメラシステム)1000について説明する。撮像システム1000は、撮像装置(カメラ本体)100と、撮像装置100に着脱可能なレンズ装置(交換レンズ)200とを備えて構成される。撮像装置100は、スチルカメラやビデオカメラなどのいずれであってもよい。
【0013】
カメラ本体100において、撮像素子101は、レンズ装置200が有する撮像光学系210により形成された被写体像を撮像(光電変換)する。撮像素子101からの出力信号(撮像信号)は、画像処理部108に入力される。画像処理部108は、撮像信号に対して各種画像処理を行って画像データを生成する。画像データは、不図示のモニタに表示され、または、不図示の記録媒体に記録される。
【0014】
撮像素子101は、不図示のシフト機構により撮像光学系210の光軸OAに対して交差する方向に移動可能である。撮像素子101は、例えば、光軸OAに直交する平面内においてシフトすること、または、光軸OAを回転中心として光軸OAに直交する平面内において回転することが可能である。以下、撮像素子101を光軸OAに直交する平面内においてシフトさせる場合を中心として説明する。
【0015】
カメラ振れ検出部105は、ユーザの手振れなどにより生じたカメラ本体100の振れ(カメラ振れ)を検出し、カメラ振れを表すカメラ振れ検出信号をカメラマイコン102に出力する。カメラマイコン102は、撮像素子101の移動を制御する制御部としての機能を有する。カメラマイコン102は、カメラ振れ検出信号からカメラ振れによる像振れを低減(補正)するための撮像素子101のシフト量を算出し、算出したシフト量を含む防振指示をセンサ防振制御部(防振制御手段)103に出力する。センサ防振制御部103は、カメラマイコン102からの防振指示に応じてシフト機構に含まれるアクチュエータを制御することで、撮像素子101を前述のシフト量だけシフト駆動する。これにより、センサ防振(像振れ補正)が行われる。
【0016】
焦点検出部(焦点検出手段)104は、撮像素子101が撮影する被写体に対する焦点距離の検出処理を行う。焦点検出部104は、例えば、測距対象物に向かってパルス状の光を繰り返し発光し、測距対象物によって反射された反射光を受光して、受光した信号レベルから測距情報を算出するようなアクティブ方式と呼ばれる構成としてもよい。また焦点検出部104は、複数の光電変換素子からなるセンサアレイを備え、センサアレイ上に捉えた画像間の位相差などから測距対象物の測距情報を算出するようなパッシブ方式と呼ばれる構成としてもよい。本実施形態において、焦点検出部104は、レンズ装置200の撮像光学系の異なる瞳部分領域をそれぞれ通過する光束の光電変換により得られる複数の像信号の位相差に基づいて焦点検出を行う。
【0017】
防振制御範囲情報部109は、撮像素子101内における位相差検出(撮像面における位相差AF)に利用するマイクロレンズの傾きやローパスフィルタの情報、および、レンズ装置200の光学的な設計情報に基づいて、防振制御範囲情報を決定する。防振制御範囲情報は、カメラマイコン102内の不図示のROMやRAMなどのメモリに保存される。カメラマイコン(制御部)102は、カメラ通信部106およびレンズ装置200内のレンズ通信部229を介して、レンズマイコン226と通信可能である。
【0018】
レンズ装置200において、撮像光学系210は、変倍レンズ201、絞り202、フォーカスレンズ203、および、防振レンズ(光学素子)204を有する。ズーム制御部221は、変倍レンズ201の位置(以下、ズーム位置という)を検出可能であり、カメラマイコン102からのズーム駆動指令に応じて変倍レンズ201を駆動することにより変倍を行う。
【0019】
フォーカス制御部223は、フォーカスレンズ203の位置(フォーカス位置)を検出可能であり、カメラマイコン102からのフォーカス駆動指令に応じてフォーカスレンズ203を駆動することにより焦点調節(フォーカシング)を行う。絞り制御部222は、絞り202の開口径(絞り位置)を検出可能であり、カメラマイコン102からの絞り駆動指令に応じて絞り202を駆動することにより光量調節を行う。絞り制御部222は、連続的に絞り位置を検出および制御してもよく、開放状態、2段(中間)、および1段(最小)のように不連続的に絞り位置を検出および制御してもよい。また、絞り202を駆動する駆動機構の駆動量を用いて絞り位置を検出してもよい。
【0020】
レンズマイコン226は、ズーム制御部221、絞り制御部222、および、フォーカス制御部223によりそれぞれ検出されたズーム位置、絞り位置、および、フォーカス位置をカメラマイコン102に送信する。なお、送信するズーム位置は、変倍レンズ201の位置の情報、または、ズーム位置に対応する焦点距離の情報のいずれでもよい。防振レンズ204は、防振に際して、不図示のシフト機構により光軸OAに対して直交する方向の成分を含む方向にシフト可能である。すなわち防振レンズ204は、光軸OAに直交する平面内でシフトし、または、光軸上の一点を回動中心として回動してもよい。
【0021】
レンズ振れ検出部228は、ユーザの手振れなどにより生じたレンズ装置200の振れ(レンズ振れ)を検出し、レンズ振れを表すレンズ振れ検出信号をレンズマイコン226に出力する。レンズマイコン226は、レンズ振れ検出信号を用いてレンズ振れによる像振れを低減(補正)するための防振レンズ204のシフト量を算出し、算出したシフト量を含む防振指示をレンズ防振制御部(制御部)224に出力する。
【0022】
レンズ防振制御部(レンズ防振部)224は、防振レンズ204の移動を制御する。具体的には、レンズ防振制御部224は、レンズマイコン226からの防振指示に応じてシフト機構に含まれるアクチュエータを制御することで、防振レンズ204を算出したシフト量だけ駆動する。これにより、レンズ防振が行われる。なお、防振レンズ204がシフト可能な範囲をレンズシフト可能範囲という。
【0023】
レンズマイコン226は、データ格納部(記憶部)227に格納されたイメージサークル情報などの情報を読み出し、撮像装置100にイメージサークル情報などを送信する送信部としての機能を有する。データ格納部227は、撮像光学系210のズーム範囲(焦点距離の可変範囲)、フォーカス範囲(合焦可能な距離範囲)、および、絞り値(F値)の可変範囲などの光学情報を格納している。またデータ格納部227は、撮像光学系210のイメージサークルに関する情報(イメージサークル情報)を格納している。ここでイメージサークル情報は、イメージサークルの位置を表す情報と、イメージサークルのサイズを表す情報とを含む。本実施形態において、データ格納部227は、イメージサークルの位置を表す情報としてイメージサークルの中心位置を表すイメージサークル中心情報を格納している。
【0024】
次に、図2を参照して、撮像光学系210のイメージサークル1の中心3が撮像素子101の中心8と一致している理想的な場合の撮像素子101のシフト可能量について説明する。なお、撮像素子の中心とは、撮像素子のうち、記録画像作成に用いる領域の中心のことを指すものとする。
【0025】
図2は、撮像光学系210のイメージサークル1の中心3が撮像素子101の中心8と一致している理想的な場合の撮像素子101のシフト可能量4を示している。撮像素子101の中心8は、通常、レンズ装着のためのマウント部の中心と一致するように設計されている。この場合、撮像素子101は、その対角方向のいずれかにシフトしても、シフト可能量4は最大となる。すなわち、撮像素子101の移動が可能な範囲であるセンサシフト可能範囲が最大となる。
【0026】
次に、図3を参照して、図2に示される理想的なイメージサークル1に対して、交換レンズの製造誤差によりイメージサークル5(の中心3′)が撮像素子101(の中心8)に対して右下側にずれた状態を説明する。図3は、理想的なイメージサークル1に対して、交換レンズの製造誤差によりイメージサークル5(の中心3′)が撮像素子101(の中心8)に対して右下側にずれた状態を示している。この状態では、撮像素子101を左上方向や左下方向にシフトする際に、図2の状態に対してシフト可能量6が減少する。図3の状態で、左上方向や左下方向に図2に示されるシフト可能量4と同じシフト量だけ撮像素子101をシフトさせた場合、撮像素子101の左上部部分や左下部分がイメージサークルの外に逸脱する。これにより、撮像信号により形成される画像の左上隅部や左下隅部が黒くなり、画像としての品位が低下する。
【0027】
レンズ装置200の製造誤差は、撮像光学系210を構成する光学要素の光軸OAからの偏芯(設計値からのずれ量)により生じるため、レンズ装置200ごとの偏芯方向に応じていずれの方向にも生じ得る。このため、どのような種類のレンズ装置200がカメラ本体100に装着されても、撮像素子101がイメージサークルを逸脱しないようにする必要がある。このためには、図4に示されるように本来のイメージサークル1内において製造誤差によりシフトしたイメージサークル5をはみ出ない実効イメージサークル7を定義する必要がある。図4は、図3の場合に許容される撮像素子のシフト可能範囲(センサシフト可能範囲)を示す図である。すなわち、実効イメージサークル7内をセンサシフト可能範囲として設定する必要がある。しかし、これでは撮像素子101のシフト可能量がいずれの方向でも減少し、十分なセンサ防振を行うことができない。
【0028】
実効イメージサークル7を大きくするため、設計段階でのイメージサークル1を大きくすると、レンズ装置200が大型化するため、好ましくない。このため本実施形態のレンズ装置200には、予めイメージサークル情報がデータ格納部227に格納、すなわち記憶(用意)されている。イメージサークル情報は、例えば、レンズ装置200の製造時においてレンズ装置200の個体ごとの測定により得られる。例えば、図3に示される本来のイメージサークル1の中心位置3に対する実際のイメージサークル5の中心位置3′のずれ量とずれ方向を個々のレンズ装置に関して測定する。そして、測定により得られたずれ量とずれ方向を表す製造誤差ベクトル情報を、実際のイメージサークル5の中心位置を表すイメージサークル中心情報としてデータ格納部227に格納、すなわち記憶(用意)する。レンズマイコン226は、イメージサークル情報をカメラマイコン102に送信する。カメラマイコン102は、受信したイメージサークル情報を用いて、センサシフト可能範囲を設定する。
【0029】
すなわちカメラマイコン102は、受信したイメージサークル中心情報を用いて、図5に示されるように、防振制御の際の移動の原点となる撮像素子101のセンサシフト初期位置9を決定する位置決定手段として機能する。撮像素子101がセンサシフト初期位置に位置するときの撮像素子101の中心8の位置を、防振制御の中心位置と呼ぶ。言い換えると、防振制御の中心位置とは、防振制御量が0のときの撮像素子の位置である。図5は、レンズ装置200のイメージサークルの中心が撮像素子101の中心に対してずれている場合に設定される撮像素子101のシフト可能範囲を示す図である。このときカメラマイコン102は、撮像素子101の中心8′が実際のイメージサークル5の中心3′に近づくようにセンサシフト初期位置9を設定する。センサシフト初期位置9を中心3′と一致させ、設定後のセンサシフト初期位置9から撮像素子101をシフトさせることで、図2に示される理想状態と同程度のシフト可能量10を確保することができる。
【0030】
またイメージサークル5の中心3′は、撮像光学系210の光学状態としてのズーム位置、フォーカス位置、および、姿勢位置に応じて変化する。このため、ズーム位置やフォーカス位置が変化した場合、撮像素子101の中心8′が実際のイメージサークル5の中心3′と一致するように撮像素子101をセンサシフト初期位置9に移動させ、防振制御の中心位置(第一の中心位置)とする。
【0031】
一方、防振制御の中心位置を第一の中心位置に設定した状態で最大可動分の防振動作を行うと、レンズ装着のためのマウント部の中心でもある、撮像素子101の設計中心8から撮像素子101は大きくずれてしまう。この場合、レンズ装置200の光学設計や撮像素子101内のマイクロレンズ設計によっては、撮像面における位相差AFのために利用する撮像素子101の周辺部の光束が低下する。その結果、撮像素子101の周辺部の焦点検出精度が低下する。このため、防振しつつ被写体に焦点を合わせようとする際に、被写体を撮像素子101の周辺部で捉えて撮影しようとするシーンが多くなり、この場合、焦点検出精度が低下した状態で撮影が行われてしまう。そのため、ユーザが意図しない、焦点の合わない撮影画像が取得されることがある。
【0032】
そこで本実施形態のカメラマイコン102は、防振制御範囲情報と、製造誤差ベクトル情報とを比較および判定する。防振制御範囲情報は、レンズ装置200の光学設計情報および撮像素子101の設計情報(マウント中心位置の情報を含む)に基づいて事前に算出される。製造誤差ベクトル情報は、カメラ本体100がレンズ装置200から取得する。防振制御範囲情報は、防振制御の中心位置としても焦点検出の精度が保証できる範囲に関する情報であり、防振制御範囲情報部109により決定される。なお本実施形態では、マウント部の中心を中心とする円で規定される。
製造誤差ベクトル情報は、レンズ情報として、カメラマイコン102がレンズ装置200から取得する。そしてカメラマイコン102は、防振制御範囲情報と製造誤差ベクトル情報とに基づいて、焦点検出精度を保証可能な撮像素子101の中心位置(第二の中心位置)を防振制御の中心位置とする。
【0033】
図6は、焦点検出精度の保証状態での撮像素子101の防振制御の中心位置を示す図である。図6(a)に示されるように、防振制御範囲11が決定された場合、実際のイメージサークル5の中心3′まで撮像素子101の中心をシフトするだけであれば、センサシフト初期位置9の位置において焦点検出を高精度に行うことができる。一方、防振制御のために、撮像素子101をセンサシフト初期位置9の位置からセンサシフト最大位置9’までシフトしてしまうと、撮像素子周辺部の焦点検出精度が低下してしまう。そのため、実際のイメージサークル5の中心3’まで移動させず、その手前にある焦点検出保証中心3’’を中心とするセンサシフト初期位置9’’へ撮像素子101をシフトさせ、焦点検出保証中心3’’を第二の中心位置として防振制御の中心位置とする。それにより、防振性能と焦点検出精度とのバランスがとれた制御が可能となる。
【0034】
なお、図6(b)に示されるように、防振制御範囲11’が実際のイメージサークル5よりも大きい場合、焦点検出精度の低下がない。このため、防振制御の中心位置をそのまま第一の中心位置(実際のイメージサークルの中心と撮像素子の中心とが一致する位置)に設定する。
【0035】
本実施形態では、防振制御範囲11は撮像素子101の中心8を中心とした円で規定しているが、これに限定されるものではない。例えば、矩形によって規定しても構わない。
【0036】
次に、図7を参照して、本実施形態におけるカメラマイコン102の処理(防振制御処理)について説明する。図7は、本実施形態における撮像面位相差AF中に防振制御が行われる場合における、防振制御の中心位置設定処理を示すフローチャートである。
【0037】
カメラ本体100の電源が入り、防振制御が開始すると、まずカメラマイコン102は、ステップS701において、レンズ情報を取得する。本実施形態の場合、カメラマイコン102は、イメージサークル情報、レンズ装置200の焦点距離情報、および、被写体距離情報を取得して、後述するステップS703の制御中心位置の算出処理に利用する。
【0038】
続いてステップS702において、カメラマイコン102は、防振制御中心位置を焦点検出保証中心に設定するか否かを判定する(焦点検出保証判定を行う)。本実施形態において、カメラマイコン102は、レンズ装置200から取得した製造誤差による中心移動量と、事前にレンズ光学設計情報および撮像素子設計情報に基づいて算出された防振制御範囲情報(防振制御範囲情報部109)の情報とを比較し判定する。レンズ装置200から取得した製造誤差による中心移動量が防振制御範囲情報部109の情報(防振制御範囲情報)よりも大きい場合、ステップS703へ進む。一方、レンズ装置200から取得した製造誤差による中心移動量が防振制御範囲情報部109の情報よりも小さい場合、ステップS704へ進む。
【0039】
ステップS703において、カメラマイコン102は、撮像素子101の防振制御の中心位置を第二の中心位置に設定する。例えば、防振制御範囲をセンサ中心(撮像素子101の中心)を中心とした円形であると規定し、その半径をrとする。ここで、レンズ装置200から取得した製造誤差などによる中心移動量を(x,y)とすると、第二の中心位置(x’,y’)は、以下の式(1)のように設定してもよい。
【0040】
【数1】
【0041】
ステップS704において、カメラマイコン102は、撮像素子101の防振制御の中心位置を第一の中心位置に設定する。この場合、防振制御の中心位置は単に(x,y)として設定してもよい。
【0042】
続いてステップS705において、カメラマイコン102は、防振処理を継続するか否かを判定する。防振処理を継続する場合、ステップS701に戻り、ステップS703、またはステップS704で設定した中心位置を用いた防振制御と並行して、再度中心位置設定の処理(S701~S704)を行う。一方、ステップS705にて防振処理を終了する場合、本フローを終了する。
【0043】
なお、防振制御の中心位置設定処理は、撮像面位相差AFの位相差信号取得と防振制御とが同時に行われるタイミングがある場合に行われるものである。マニュアルフォーカス(MF)が設定されているなど、撮像面位相差AFを行わない場合や、撮像素子を移動させる防振制御を記録画像の露光期間中のみ行う場合には、上述のような防振制御により撮像素子周辺部の焦点検出精度が低下するという課題が生じない。よって、第一中心位置を防振制御の中心位置として設定してよく、防振制御範囲を取得しなくてもよい。
【0044】
以上のように、本実施形態において、撮像素子101の防振制御の中心位置を決定する位置決定手段(カメラマイコン102)は、レンズ装置200から取得されたレンズ情報と、中心位置の範囲に関する情報とに基づいて、中心位置を決定する。好ましくは、撮像装置100は、中心位置の範囲に関する情報を記憶する記憶手段(カメラマイコン102の内部メモリ)を有する。位置決定手段は、レンズ情報と、記憶手段から読み出された中心位置の範囲に関する情報とに基づいて、中心位置を決定する。また好ましくは、中心位置の範囲に関する情報は、所定の焦点検出精度を確保することが可能な範囲に関する情報である。また好ましくは、レンズ情報は、レンズ装置の製造誤差による光軸OAの設計値からのずれ量に関する情報、焦点距離に関する情報、被写体距離に関する情報、または、レンズ装置の姿勢(位置)に関する情報である。
【0045】
本実施形態によれば、撮像素子101の撮像面における位相差AFの焦点検出精度を確保しつつ、振れ補正のために必要な撮像素子101の移動量を確保することにより、ユーザが意図する撮影画像を取得することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、いかなるシーンにおいても焦点検出精度を確保すべく、撮像素子101の全領域において焦点検出の性能が低下しないような防振制御中心位置を決定する。しかしながら、実際のシーンでは、例えばカメラ本体100のオートフォーカス枠設定(AF枠設定)を撮像素子101の中心から像高2割の設定にするなどの設定も可能である。この場合、残りの8割の像高における焦点検出精度を保証することは不要である。このため、その焦点検出に利用しない分のセンササイズを防振制御のためのセンサシフト可動量として利用することで、より焦点検出と防振性能のバランスのとれた設定が可能となる。そこで本実施形態では、図8乃至図10を参照して、AF枠設定に応じて防振制御中心位置を決定する方法について説明する。なお本実施形態では、第1の実施形態と同様の構成や処理に関する説明は省略する。
【0047】
図8は、本実施形態における撮像装置100aとレンズ装置200とを備えて構成される撮像システム1000aのブロック図である。本実施形態の撮像システム1000aは、焦点検出領域設定部801を備えた撮像装置100aを有する点で、第1の実施形態の撮像システム1000と異なる。焦点検出領域設定部801は、カメラマイコン102により決定されたAF枠(焦点検出領域)に関する情報を格納する。カメラマイコン102は、例えば、ユーザが設定した情報に基づいて、カメラマイコン102内の不図示のROMやRAMなどのメモリに保存されているAF枠を設定し、AF動作(焦点検出動作)を実施する。
【0048】
図9(a)は、撮像素子101に対しユーザが設定したAF枠としてAF枠20を設定した例である。この場合、焦点検出精度としては、AF枠20の範囲内でのみ保証すればよいため、AF枠20から撮像素子101の端までの距離21は、防振制御の可動量として利用しても構わない。このため、図9(b)に示されるように、本来、防振制御範囲11で規定された領域に対し、さらにAF枠20から撮像素子101の端までの距離21の量を拡大させた実効防振制御範囲11’’を算出することが好ましい。これにより、第1の実施形態において設定した防振制御範囲11を拡大することが可能となる。なお本実施形態において、AF枠設定を撮像素子101に対する割合としてユーザが指定する例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、撮像装置100aのメニュー設定に応じて、カメラマイコン102が自動でAF枠設定を算出して設定するように構成してもよい。
【0049】
次に、図10を参照して、本実施形態においてカメラマイコン102が行う処理(防振制御処理)について説明する。図10は、本実施形態における撮像面位相差AF中に防振制御が行われる場合における、防振制御の中心位置設定処理を示すフローチャートである。なお図10において、図7と同様の処理は同じステップ番号で示している。
【0050】
カメラマイコン102は、ステップS701にてレンズ情報を取得した後、ステップS1001において、カメラマイコン102は、撮像装置100aで設定されているAF枠情報を取得する。続いてステップS1002において、カメラマイコン102は、ステップS1001にて取得したAF枠情報に基づいて、焦点検出保証範囲(実効防振制御範囲)を算出する。本実施形態において、カメラマイコン102は、事前にレンズ光学設計情報およびセンサ設計情報に基づいて算出した防振制御範囲情報から実効防振制御範囲情報を算出する。実行防振制御範囲情報は、ステップS1001にて取得したAF枠範囲と撮像素子101の有効画素サイズとに基づいて算出される。例えば、ユーザがAF枠設定範囲として、撮像素子101の中心から像高a%と設定した場合、実効防振制御可能範囲r’は、以下の式(2)のように算出することができる。
【0051】
【数2】
【0052】
続いてステップS1003において、カメラマイコン102は、焦点検出を優先させるか否かを判定する(焦点検出優先判定)。この判定は、ユーザによる設定または所定の条件に基づく自動設定のいずれでもよい。焦点検出を優先させない場合、ステップS704へ進む。
【0053】
一方、焦点検出を優先させる場合、ステップS703へ進む。以降の防振制御設定処理における防振制御範囲情報として、実効防振制御可能範囲r’を用いることで、より防振性能と焦点検出精度とのバランスがとれた制御が可能となる。なお本実施形態では、ユーザが設定するAF枠設定情報として像高を指定する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、AF枠設定情報として被写体追尾設定のように、移動するAF枠設定とした場合、実効防振制御範囲情報を算出することなく、防振制御範囲情報を利用して防振制御中心位置を設定してもよい。
【0054】
以上のように、本実施形態の撮像装置100aは、焦点検出手段(焦点検出部104)による焦点検出領域(AF枠)を設定する領域設定手段(焦点検出領域設定部801)を有する。位置決定手段は、レンズ情報と、中心位置の範囲に関する情報と、領域設定手段により設定された焦点検出領域に関する情報とに基づいて、中心位置を決定する。好ましくは、位置決定手段は、領域設定手段により設定された焦点検出領域と撮像素子との相対的な位置に基づいて、中心位置を決定する。また好ましくは、位置決定手段は、領域設定手段により設定された焦点検出領域の像高に基づいて、中心位置を決定する。
【0055】
本実施形態によれば、撮像面での位相差AFの焦点検出精度を確保しつつ、より振れ補正のために必要な撮像素子の移動量を確保することで、ユーザが意図する撮影画像を取得することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0057】
各実施形態によれば、撮像面における位相差AFの焦点検出精度を確保しつつ、振れ補正のために必要な撮像素子の移動量を確保可能な撮像装置、撮像装置の制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0059】
例えば、撮像装置は、焦点検出手段による焦点検出動作を設定する動作設定手段を有し、位置決定手段は、動作設定手段により決定された焦点検出動作に基づいて中心位置を決定してもよい。
【符号の説明】
【0060】
100 撮像装置
101 撮像素子
102 カメラマイコン(位置決定手段)
103 センサ防振制御部(防振制御手段)
104 焦点検出部(焦点検出手段)
200 レンズ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10