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特許7551329マルチビーム描画機における露光スロットの持続時間の適合化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】マルチビーム描画機における露光スロットの持続時間の適合化
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240909BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240909BHJP
   H01J 37/04 20060101ALI20240909BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H01L21/30 541E
H01L21/30 541D
H01L21/30 541N
H01L21/30 541W
G03F7/20 504
H01J37/04 A
H01J37/305 B
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081246
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2020198427
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】19172550.6
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509316578
【氏名又は名称】アイエムエス ナノファブリケーション ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ゴットフリート ホーホライトナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ ナエタル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュペングラー
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-302506(JP,A)
【文献】特開2008-177603(JP,A)
【文献】特開2000-156342(JP,A)
【文献】特開昭62-031119(JP,A)
【文献】特表2012-527766(JP,A)
【文献】特開2016-171131(JP,A)
【文献】特開2010-219444(JP,A)
【文献】特開2009-237001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子の粒子ビーム(1b、50)を用いて、荷電粒子リソグラフィ装置においてターゲット(16)に所望のパターンを露光する方法であって、
該粒子ビーム(1b、50)は、ターゲット上の画像エリア内の複数のピクセル(px)を露光することによって該所望のパターンを描画するために該粒子ビーム(pb)が貫通通過する複数のブランキングアパーチャ(24、33、43)から構成されるアパーチャアレイ(26)を含むパターン規定装置(4)に指向されかつ照明し、
パターン規定装置では、複数のブランキングアパーチャ(24、33、43)の各々は、該所望のパターンに応じて、夫々の露光インターバル(Tu)中にターゲット上に対応するアパーチャ画像(b1、bi1)を露光するよう選択的に調節可能であり、
該所望のパターンの描画プロセス中に一連の露光インターバルが形成され、各露光インターバルにおいてブランキングアパーチャがターゲット(16)に結像されることによって、対応する複数のアパーチャ画像(b1、bi1)が形成され、但し、アパーチャ画像の位置は露光インターバル中ターゲットに対し相対的に固定された状態に維持されるが、露光インターバルと露光インターバルの間ではアパーチャ画像の位置はターゲットにわたってシフトされることによって、ターゲット上の該画像エリア内において複数のピクセルを露光し、但し、各露光インターバルは所定の持続時間を有する整数個の露光スロットを含み、
アパーチャ画像は公称幅(b)を有し、複数のアパーチャ画像はターゲット上で相互にオーバーラップし、そのため、各ピクセルは夫々のピクセルにおいてオーバーラップする複数のアパーチャ画像によって露光され、その結果、ピクセルにおいてオーバーラップするアパーチャ画像の露光スロットを寄与露光スロットと称すると、複数の寄与露光スロットの持続時間の合計である有効ピクセル露光時間にわたり夫々のピクセルの露光が行われ、
該方法は、同じセットの寄与露光スロット中に露光される画像エリア内の全てのピクセルを含むピクセルグループについて夫々実行される、以下のステップにより露光スロットの持続時間を適合化することを含み:
(i)該ピクセルグループ中のピクセルについての有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を、該ピクセルの露光が行われる時間の関数として決定すること、
(ii)該ピクセルのための寄与露光スロットを決定すること、
(iii)そのようにして決定された寄与露光スロットについての持続時間を、該寄与露光スロットの持続時間の合計が有効ピクセル露光時間の該所望の持続時間に近似する実際の有効露光時間となるよう、計算すること、
上記のステップ(複数)は異なるピクセルグループ毎に繰り返されること、
ステップ(iii)において、そのようにして計算された寄与露光スロットについての持続時間の各々は所定のセットの持続時間の1つの持続時間に対応すること、但し、そのようにして計算された寄与露光スロットについての持続時間の少なくとも1つは該寄与露光スロットについて選択される他の持続時間とは異なること
を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
露光スロットの持続時間の適合化は、夫々のグループのすべてのピクセルについてかつ所望のパターンに応じたピクセルの露光に拘わらず一様に実行されること
を特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記所定のセットの持続時間は離散スケールの持続時間を表し、該離散スケールは基底値(T)を含みかつ該基底値よりも少なくとも一桁だけより小さい時間増分(T)に対応する増分を有し、該基底値は画像エリアのすべてのピクセルについて一定である所定の公称露光スロット持続時間に対応すること
を特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記所定のセットの持続時間は離散スケールの持続時間を実現し、持続時間の連続する値と値の間の増分の大きさはブランキングアパーチャの制御回路のクロックサイクルの持続時間又はその整数倍に対応すること
を特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の方法において、
粒子ビームは荷電粒子リソグラフィ装置の測定装置(19)によってその強度についてモニタされ、夫々の露光スロットの露光の時間における強度の値が生成されること、及び、
ステップ(i)では、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を決定することは、該所望の持続時間を強度の値に対し反比例の関係でスケーリングすることを含むこと
を特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の方法において、
アパーチャ画像の公称幅(b)は、前記複数のピクセル内の隣接するピクセルとピクセルの位置の間の距離(e)よりも、1より大きいオーバーサンプリング係数(o)だけ、より大きいこと
を特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の方法において、
各露光インターバルは複数(g)の連続露光スロットを含み、該複数は2以上又は2の整数倍であること
を特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の方法において、
ステップ(iii)では、
で表される寄与露光スロットについての持続時間の各々は、
に応じ、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間τから出発し、基底値(T)に加算される所定の時間増分(T)の整数倍として計算されること、
ここで、記号
は通常の端数切り捨て演算(「床関数(floor)」)を表し、
は単位インターバル(0,1)にわたる値のセットを表すこと、
寄与露光スロットについての持続時間
の各々について、値のセット
からの夫々の値が使用されること
を特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
単位インターバル(0,1)にわたる疑似ランダムの数のセットであること
を特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、
は、ランダムな態様で再配置された、単位インターバル(0,1)における一定間隔の数のセットであること
を特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れかに記載の方法において、
ステップ(i)では、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を決定することは、露光の時間の関数として、かつ、ピクセルの位置とは実質的に無関係に実行されること
を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11の何れかに記載の方法において、
ステップ(ii)では、露光インターバル内の連続する寄与露光スロットが選択されること
を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~11の何れかに記載の方法において、
ステップ(ii)では、同じアパーチャ画像ないし同じ数のアパーチャ画像によって全てが露光される異なるピクセル要素に対応する寄与露光スロットが選択されること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年5月3日に出願された欧州特許出願第19172550.6号についてのパリ条約上の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【0002】
本発明は、ターゲット上にパターンを描画するための荷電粒子リソグラフィプロセス中における露光(タイム)スロットの持続時間の好適な適合化に関する。より具体的には、本発明は、荷電粒子の粒子ビームを用いて、荷電粒子リソグラフィ装置においてターゲットに所望のパターンを露光する方法であって、
該粒子ビームは、ターゲット上の画像エリア内の複数のピクセルを露光することによって該所望のパターンを描画するために該粒子ビームが貫通通過する複数のブランキングアパーチャから構成されるアパーチャアレイを含むパターン規定装置に指向されかつ照明し、
パターン規定装置では、複数のブランキングアパーチャの各々は、該所望のパターンに応じて、夫々の露光インターバル中にターゲット上に対応するアパーチャ画像を露光するよう選択的に調節可能であり、
該所望のパターンの描画プロセス中に一連の露光インターバルが形成され、各露光インターバルにおいてブランキングアパーチャがターゲットに結像されることによって、対応する複数のアパーチャ画像が形成され、但し、アパーチャ画像の位置は露光インターバル中ターゲットに対し相対的に固定された状態に維持されるが、露光インターバルと露光インターバルの間ではアパーチャ画像の位置はターゲットにわたってシフトされることによって、ターゲット上の該画像エリア内において複数のピクセルを露光し、但し、各露光インターバルは所定の持続時間を有する整数個の露光スロットを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
上記のタイプの方法及びそのような方法を採用する荷電粒子マルチビーム処理装置はよく知られている。とりわけ、本出願人は、荷電粒子光学系、パターン規定(PD:pattern definition)装置及びそれらにおいて採用されるマルチビーム描画方法に関する本出願人名義の幾つかの特許に記載されている荷電粒子マルチビーム装置を既に実現している。例えば、193nm液浸リソグラフィ用のフォトマスク(複数)、EUVリソグラフィ用のマスク(複数)及びインプリントリソグラフィ用のテンプレート(複数)(1×masks)の最先端の複合体の実現を可能にする50keV電子マルチビーム描画機が具現化されており、これは6″(6インチ)マスクブランク基板の露光のための、eMET(electron Mask Exposure Tool)又はMBMW(Multi-Beam Mask Writer)と称される。更に、PML2(Projection Mask-Less Lithography)とも称されるマルチビームシステムはシリコンウエハ基板上における電子ビーム直接描画(EBDW)の適用のために実現された。上記のタイプのマルチビーム処理装置は、以下においては、マルチビーム描画機、又は略してMBW、と称する。
【0004】
MBWの典型的な具体例として、本出願人は、基板における81.92μm×81.92μmの寸法のビームアレイフィールド内に512×512(=262,144)本のプログラマブルビームレットを含む20nmのトータルビームサイズを実現する50keV電子描画ツールを既に実現している。この描画ツールでは、典型的なタイプの基板は、電子ビーム感応性レジストで被覆された6″マスクブランク(これは6″×6″=152.4mm×152.4mmの面積と、例えば1″/4=6.35mmの厚みを有する)である。更に、マルチビーム描画はレジスト被覆150mmシリコンウエハに対しても同様に可能である。
【0005】
本発明による方法を実行するために好適なMBWの一例は本出願人の米国特許第6,768,125号に開示されている。該文献は、マルチビーム描画コンセプトを実現しかつプログラマブルアパーチャプレートシステム(APS)を荷電粒子の単一ソースから抽出される粒子ビームを構造化するためのパターン規定(PD)装置として使用する荷電粒子リソグラフィ及び処理方法を開示している。アパーチャプレートシステムは上下に積み重ねられた複数のプレートを含み、これらにはアパーチャアレイ手段とブランキング手段が含まれる。これらのプレートは、例えばケーシング内において、互いに対し規定された距離をなして一緒に配置される。アパーチャアレイ手段は、当該アパーチャを通過するビームレットの形状を規定する同一形状の複数のアパーチャを有し、該アパーチャ(複数)は複数のアパーチャジグザグラインから構成されるパターン規定フィールド内に配置されており、該アパーチャ(複数)は当該ライン内においては1つのアパーチャの幅の第1の整数倍だけ互いに離隔されており、かつ、隣接するライン間では当該整数倍幅の分数(数分の1:fraction)だけずらされている。ブランキング手段は、アパーチャアレイ手段のアパーチャ(複数)に対応する配置で配置された複数のブランキング開口を有し、とりわけ対応するブランキング開口ジグザグライン(複数)を有し、かつ、ビームレットがブロックされる(「ブランキングされる(blanked)」)か又は(開口が)ビームに対し透過性であるかについて制御を行う。パターン規定装置のアーキテクチャ及びオペレーションに関する米国特許第6,768,125号の教示は引照を以ってここに記載され、本開示の一部を構成するものとする。
【0006】
規則的なグリッドに配置された複数のアパーチャを有する簡単化されたアパーチャプレートシステム及び対応する露光技術の例は米国特許第8,222,621号において本出願人によって開示されている。
【0007】
更に、本出願人は、MBWと組み合わせて使用され得る種々の描画ストラテジを開示している。これらの発展は、米国特許第7,276,714号に記載されたオーバーラッピング露光スポット(複数)を介するオーバーサンプリング(「連結(インターロッキング)グリッド」)、米国特許第7,777,201号に記載された(機械的)スキャニング方向に沿う1本又は数本のビームレットが基板上にパターンを形成するピクセルの完全なセットを生成するために使用される新規な描画ストラテジ(「トロッティング(trotting)モード」)、及び米国特許第9,053,906号に記載された基板を横切るビームフィールドの2つ以上のパスが露光のために使用される「マルチパススキャニングストライプ露光」の使用を含む。
【0008】
MBWの可能な具現化の1つでは、ブランキング手段は、何れのアパーチャがビームに対し透過性であり、従ってターゲット上にパターンを形成するかを制御するASIC回路を有するブランキングチップ(chip)を含む。CMOS回路は、これはブランキング電極に取り付けられるメモリ及びレジスタを含むが、クロック制御され、例えば、本出願人の典型的なブランキングチップ設計製品(iteration)では例えば200MHzのクロックレートで動作する位相同期回路(「PLL(phase-locked loop)」)によって駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第6,768,125号
【文献】米国特許第8,222,621号
【文献】米国特許第7,276,714号
【文献】米国特許第7,777,201号
【文献】米国特許第9,053,906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
露光中に、ソース電流における小さな変動及び基板の異なるセクションに対するターゲット線量の変化(変動)があるため、これらの変動を補償する必要性が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一視点により、荷電粒子の粒子ビームを用いて、荷電粒子リソグラフィ装置においてターゲットに所望のパターンを露光する方法が提供される。該方法において、
該粒子ビームは、ターゲット上の画像エリア内の複数のピクセルを露光することによって該所望のパターンを描画するために該粒子ビームが貫通通過する複数のブランキングアパーチャから構成されるアパーチャアレイを含むパターン規定装置に指向されかつ照明し、
パターン規定装置では、複数のブランキングアパーチャの各々は、該所望のパターンに応じて、夫々の露光インターバル中にターゲット上に対応するアパーチャ画像を露光するよう選択的に調節可能であり、
該所望のパターンの描画プロセス中に一連の露光インターバルが形成され、各露光インターバルにおいてブランキングアパーチャがターゲットに結像されることによって、対応する複数のアパーチャ画像が形成され、但し、アパーチャ画像の位置は露光インターバル中ターゲットに対し相対的に固定された状態に維持されるが、露光インターバルと露光インターバルの間ではアパーチャ画像の位置はターゲットにわたってシフトされることによって、ターゲット上の該画像エリア内において複数のピクセルを露光し、但し、各露光インターバルは所定の持続時間を有する整数個の露光スロットを含み、
アパーチャ画像は公称幅を有し、複数のアパーチャ画像はターゲット上で相互にオーバーラップし、そのため、各ピクセルは夫々のピクセルにおいてオーバーラップする複数のアパーチャ画像によって露光され、その結果、ピクセルにおいてオーバーラップするアパーチャ画像の露光スロットを寄与露光スロットと称すると、複数の寄与露光スロットの持続時間の合計である有効ピクセル露光時間にわたり夫々のピクセルの露光が行われ、
該方法は、同じセットの寄与露光スロット中に露光される画像エリア内の全てのピクセルを含むピクセルグループについて夫々実行される、以下のステップにより露光スロットの持続時間を適合化することを含み:
(i)該ピクセルグループ中のピクセル(複数)についての有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を、該ピクセル(複数)の露光が行われる時間の関数として決定すること、
(ii)該ピクセル(複数)のための寄与露光スロットを決定すること、
(iii)そのようにして決定された寄与露光スロットについての持続時間を、該寄与露光スロットの持続時間の合計が有効ピクセル露光時間の該所望の持続時間に近似する実際の有効露光時間となるよう、計算すること、
上記のステップ(i)~(iii)は異なるピクセルグループ毎に繰り返されること、
ステップ(iii)において、そのようにして計算された寄与露光スロットについての持続時間の各々は所定のセットの持続時間の1つの持続時間に対応すること、但し、そのようにして計算された寄与露光スロットについての持続時間の少なくとも1つは該寄与露光スロットについて選択される他の持続時間とは異なることを特徴とする(形態1)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(形態1)上記本発明の一視点参照。
(形態2)形態1の方法において、露光スロットの持続時間の適合化は、夫々のグループのすべてのピクセルについてかつ所望のパターンに応じたピクセルの露光に拘わらず一様に実行されることが好ましい。
(形態3)形態1又は2の方法において、前記所定のセットの持続時間は離散スケールの持続時間を表し、該離散スケールは基底値を含みかつ該基底値よりも少なくとも一桁だけより小さい時間増分に対応する増分を有し、好ましくは該基底値は画像エリアのすべてのピクセルについて一定である所定の公称露光スロット持続時間に対応することが好ましい。
(形態4)形態1又は2の方法において、前記所定のセットの持続時間は離散スケールの持続時間を実現し、持続時間の連続する値と値の間の増分の大きさはブランキングアパーチャの制御回路のクロックサイクルの持続時間又はその整数倍に対応することが好ましい。
(形態5)形態1~4の何れかの方法において、
粒子ビームは荷電粒子リソグラフィ装置の測定装置によってその強度についてモニタされ、夫々の露光スロットの露光の時間における強度の値が生成されること、及び、
ステップ(i)では、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を決定することは、該所望の持続時間を強度の値に対し反比例の関係でスケーリングすることを含むことが好ましい。
(形態6)形態1~5の何れかの方法において、アパーチャ画像の公称幅は、前記複数のピクセル内の隣接するピクセルとピクセルの位置の間の距離よりも、1より大きいオーバーサンプリング係数だけ、より大きいことが好ましい。
(形態7)形態1~6の何れかに記載の方法において、各露光インターバルは複数の(a number of)連続露光スロット(slots)を含み、該複数は2以上であり、好ましくは2の整数倍であることが好ましい。
(形態8)形態1~7の何れかの方法において、ステップ(iii)では、
で表される寄与露光スロットについての持続時間の各々は、
に応じ、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間τから出発し、基底値(T)に加算される所定の時間増分(T)の整数倍として計算されること、
ここで、記号
は通常の端数切り捨て演算(「床関数(floor)」)を表し、
は単位インターバル(0,1)にわたる値のセットを表すこと、
寄与露光スロットについての持続時間
の各々について、値のセット
からの夫々の値が使用されることが好ましい。
(形態9)形態8の方法において、
単位インターバル(0,1)にわたる疑似ランダムの数のセットであることが好ましい。
(形態10)形態8の方法において、
は、好ましくはランダムな(無秩序混合的な:scrambling)態様で再配置された、単位インターバル(0,1)における一定間隔の数のセットであることが好ましい。
(形態11)形態1~10の何れかの方法において、ステップ(i)では、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を決定することは、露光の時間の関数として、かつ、ピクセルの位置とは実質的に無関係に実行されることが好ましい。
(形態12)形態1~11の何れかの方法において、ステップ(ii)では、露光インターバル内の連続する寄与露光スロット(slots)が選択されることが好ましい。
(形態13)形態1~11の何れかの方法において、ステップ(ii)では、同じアパーチャ画像ないし同じ数のアパーチャ画像によって全てが露光される異なるピクセル要素に対応する寄与露光スロット(slots)が選択されることが好ましい。

【0013】
本発明は、ターゲット上でのピクセル(複数)の露光中に、個別の露光インターバル、又はそのサブインターバル、の持続時間(duration)、これはスロット(slot)持続時間と称される、を適合化することによって、小さな全体的変動の問題を解決することを提案する。
【0014】
従って、本発明は、アパーチャ画像(複数)が公称幅を有し、アパーチャ画像(複数)がターゲット上で相互にオーバーラップし、そのため、各ピクセルが夫々のピクセルにおいてオーバーラップする複数のアパーチャ画像によって露光され、その結果―ピクセルにおいてオーバーラップするアパーチャ画像の露光(タイム)スロットを「寄与露光(タイム)スロット(contributing exposure slots)」と称すると―複数の寄与露光スロットの持続時間の合計である有効ピクセル露光時間中に夫々のピクセルの露光が行われる描画プロセスから出発し、以下のステップ(複数)に応じて露光スロット(複数)の持続時間を適合化することを含む方法に関し、該ステップ(複数)はピクセルグループ(a group of pixels)について夫々実行され、該ピクセルグループは同じセットの寄与露光スロット中に露光される画像エリア内の全てのピクセルを含む:
ステップ(i) 該ピクセル(複数)(即ち該ピクセルグループ内のピクセル(複数))についての有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を、該ピクセル(複数)の露光時間(即ち当該ピクセルの露光が実行される時間)の関数として決定すること、
ステップ(ii) 該ピクセル(複数)のための寄与露光スロット(複数)を決定すること、
ステップ(iii) そのようにして決定された寄与露光スロット(複数)についての持続時間(複数)を、該寄与露光スロット(複数)の持続時間の和が有効ピクセル露光時間の該所望の持続時間に近似する実際の有効露光時間となるよう、計算すること。
上記のステップ(複数)は異なるピクセルグループについて繰り返され、
ステップ(iii)において、持続時間は所定のセットの許容持続時間に応じて計算され、そのようにして計算された持続時間の少なくとも1つは該セットの露光スロットについて選択される他の持続時間とは異なる。
【0015】
露光(タイム)スロットの持続時間を適合化するこの種の方法は、一般的には、所望のパターンの何れがターゲットにおいて描画されるべきかについて、これは画像エリア内のピクセルをいわゆるグレー値に応じる異なるレベルの露光線量によって露光することを伴うが、考慮しないことに注意すべきである。(異なる)グレー値に応じたこれらの異なるピクセル露光は、所望のパターンを再生(再現)するよう、(異なる)ピクセルグループ(複数)の各々のピクセル(複数)に割り当てられる。これに対し、本発明による方法は、露光スロット(複数)の持続時間を、1つのグループのすべてのピクセルについて、即ち同じセットの寄与露光スロットの間に露光される画像エリア内のすべてのピクセルについて一様に(一律に)操作(ないし処理)する。換言すれば、露光スロットの持続時間を適合化する本方法は、所望のパターンに応じての(空間的に)異なる露光線量によるピクセル露光を考慮することなく(regardless of)、実行されることができる。
【0016】
露光スロット(複数)の持続時間はブランキング電極の制御回路によって制御されるため、持続時間は離散的刻み、例えば5ns(ナノ秒)(単一のクロックサイクルの持続時間)でのみ設定可能であるという制限があり得る。例えば、本出願人の最新のMBW製品(iterations)では、(最大のスループットを可能にする)最小スロット持続時間は400nsであり、そのため、この持続時間を調節する必要が生じるような場合、利用可能な精度は僅かに5/400=1.25%であり、これは、典型的なMBWの凡そ0.6nmの限界寸法(「CD(critical dimension)」)に跳躍的変化をもたらし得る。最小可能線量粒度(ないし精度:granularity)によるCDのこの変化は、例えばマスク製造における極めて重要な測定基準である限界寸法均一性(「CDU(critical dimension uniformity)」)に悪影響を及ぼし得る。本発明は、複数の寄与露光スロットを用いることによってこの粒度(ないし精度)の問題を回避するものであり、粒度を当該複数の露光スロットによって効果的に減少する。
【0017】
例えば、許容持続時間のセットは、(Tで表され得る)基底値を含む離散的インターバルを表し得る;許容持続時間のセット中の値(複数)は、規定された時間増分だけ互いに異なるであろう。例えば、許容持続時間の連続する(consecutive)値と値の間には一定の時間増分があり得るが、この場合、時間増分は基底値よりも少なくとも一桁だけより小さいことが好ましい。大抵の場合、インターバルは最小値と最大値の間にあるであろうが、インターバルの幅は該最小値及び該最大値よりも、好適には一桁以上だけ、より小さい。インターバルは持続時間の基底値をその中心とし得る。好適には、基底値は画像エリアのすべてのピクセルについて一定である所定の公称露光スロット持続時間に対応し得る。ブランキング制御回路のクロックサイクルが(1つの)露光インターバル/露光スロットの持続時間よりも相当により小さい具現化例によれば、許容持続時間のセットは、しばしば、所定の粒度に応じたスケールの持続時間(複数)(即ち後続(連続)する(subsequent)値(複数)が増分の所与の大きさに対応する所与の距離値で互いに離隔されている場合の離散値のセット)を実現するが、この場合、増分の大きさはブランキングアパーチャの制御回路のクロックサイクルの持続時間又はその整数倍に相当する。より一般的には、許容持続時間のセットは、許容持続時間のセットからの典型的な値よりも少なくとも一桁だけより小さい時間増分に対応する増分を有するスケールの持続時間(複数)を実現し得る。
【0018】
換言すれば、露光スロット(複数)は、一定の公称スロット持続時間値(スロット持続時間の典型的ないし標準的な値を表す持続時間の基底値)から、通常は公称スロット持続時間値と比べて小さい夫々の持続時間補正値だけずれた(異なる)夫々の持続時間を有する。持続時間補正値は、任意の好適な値を取り得るが、通常は、技術的具現化上の理由から、ブランキング制御回路のクロックサイクルのような最小時間増分の整数倍を取ることになる。
【0019】
本発明の1つの視点は粒子ビームの変化する強度の補償に関する。この場合、粒子ビームは荷電粒子リソグラフィ装置の測定装置によってその強度についてモニタされ、夫々の露光スロットの露光の時間における強度の値を生成することが可能であり、及び、ステップ(i)は、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間の決定に関し、該所望の持続時間を強度の値に対し反比例の関係でスケーリングすることを含むことができる。
【0020】
多くの実施形態では、アパーチャ画像(複数)のオーバーラップ(重なり合い)は、アパーチャ画像(複数)の位置ずれがアパーチャ画像(複数)のサイズよりもより大きいというオーバーサンプリング法(scheme)に起因する。従って、アパーチャ画像の公称幅は、前記複数のピクセル内の隣接するピクセルとピクセルの位置の間の距離よりも、1より大きいオーバーサンプリング係数(factor)(o)だけ、より大きいことが可能である。これにより、アパーチャ画像(複数)はターゲット上で互いにオーバーラップし、そのため、各ピクセルは夫々のピクセルにおいてオーバーラップする複数のアパーチャ画像によって露光される;オーバーラップするアパーチャ画像の数は例えばオーバーサンプリング係数の平方(即ちo)であるか、又は、その倍数、とりわけその整数倍であり得る。
【0021】
露光スロットの個数に関し、本発明の実施形態の典型的クラスでは、各露光インターバルは同じ個数(g)の連続する(consecutive)露光スロット(slots)を含み、該個数は2以上であり、好ましくは2の整数倍である。
【0022】
ステップ(iii)における寄与露光スロットの持続時間の計算は、多くの実施形態では、
で表される持続時間の各々が、
に応じ、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間τから出発し、基底値(T)に加算される所定の時間増分(T)の整数倍として計算されることによって行われる。
ここで、記号
は通常の端数切り捨て演算(整数に丸める「床関数(floor)」)を表し、
は単位インターバルにわたる値のセットを表し、
持続時間
の各々について、値のセット
からの夫々の値が使用される。例えば、
はインターバル(0,1)にわたる疑似ランダムの数のセットであり得る。或いは、
は、好ましくはランダムな(無秩序混合的な:scrambling)態様で再配置された、単位インターバルにおける一定間隔の数のセットであり得る。
【0023】
ステップ(i)における有効ピクセル露光時間の所望の持続時間の決定は、有利には、露光の時間の関数として、かつ、ピクセルの位置とは実質的に無関係に実行されることができる。これは、実行されるべき計算の量を、本発明による方法の補償効果(作用)の有効性を著しく損ねることなく、劇的に簡単化(減少)するであろう。
【0024】
ステップ(ii)における寄与スロットは、ピクセル要素(複数)及び露光プロセスによってそれら(ピクセル要素)に与えられる線量の効果的な処理を提供するために好適であると考えられるものとして選択されることができる。例えば、寄与露光スロットは、(1つの)露光インターバル内において連続的であるように選択されることができる。代替的に、寄与露光スロットは、同じアパーチャ画像ないし同じ数のアパーチャ画像によって全てが露光される異なるピクセル要素に対応するよう選択されることができる(図12参照)。
【0025】
以下に、本発明を更に説明するために、例示的かつ非限定的な実施形態が、図面に示されている通りに、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来技術のリソグラフィシステムの一例の縦断面図。
図2】従来技術のパターン規定システムの一例の縦断面図。
図3】ストライプを用いたターゲットの基本的な描画法。
図4】ターゲットに結像されるアパーチャの1つの例示的配置。
図5A】露光されるべき1つの例示的パターンのピクセルマップの一例。
図5B】露光されるべき1つの例示的パターンのピクセルマップの一例。
図6A】M=2、N=2のアパーチャの配置例。
図6B】「ダブルグリッド」配置におけるピクセルのオーバーサンプリングの一例。
図7A】1つのストライプの露光の一例。
図7B】グレーレベルの露光の一例。
図8A】3つの異なるグリッド配置(grid placements)の第1の例、即ち「ダブルグリッド(Double Grid)」。
図8B】3つの異なるグリッド配置の第2の例、即ち「クワッドグリッド(Quad Grid)」。
図8C】3つの異なるグリッド配置の第2の例、即ち「ダブルセンターグリッド(Double-Centered Grid)」。
図9A】2つのパスの例についてのオーバーラッピングストライプ(「マルチパス(multi-pass)」)法、即ち所謂「ダブルパス(double-pass)」モード。
図9B】2つのパスの例についてのオーバーラッピングストライプ(「マルチパス(multi-pass)」)法、即ち所謂「ダブルパス(double-pass)」モード。
図10】「ダブルグリッド」と(単純化した一例としての)MX=3、MY=2のアパーチャアレイを用いた露光法の一例。
図11】確率的丸めによるスロット持続時間計算の第1の具体化例。(A)は相応のピクセル要素(複数)の位置における4o=16の露光スロットの持続時間を示す。(B)は乱数として得られたオフセット値の配列(アレイ)の例を示す。(C)はそのようにして得られた算出スロット持続時間を示す。
図12】オフセット(複数)の規則的配列(ordered array)を用いたスロット持続時間計算の第2の具体化例。(A)は相応のピクセル要素(複数)の位置における露光スロットの持続時間を示す。(B)はディザー行列(dither matrix)によって得られたオフセット値の配列の例を示す。(C)はそのようにして得られた算出スロット持続時間を示す。
図13】ダブルパス露光プロセスに関するスロット持続時間計算の他の具体化例。
図14】コントローラオペレーション及びパターンデータのロードシーケンスの時系列の一例。
図15A】DAPの1つの例示的回路配置のブロック図。
図15B図15Aの回路中のRAMメモリの一例のブロック図。
図16図15Aの回路中のブランキングプレートの半列のアパーチャのデータ供給回路の一例のブロック図。
【実施例
【0027】
以下に与える本発明の例示的実施形態(実施例)の詳細な説明は本発明の基本的コンセプト及び更なる有利な発展形態を開示する。本発明の特定の適用に好適であると考えられるものとして本書において説明される実施形態(複数)の幾つか又はすべてが任意に組み合わせられることは、当業者には明らかであろう。本開示全体を通して、「有利な」、「例示的な」又は「好ましい」のような用語は、本発明又はその一実施形態にとりわけ好適である(但し本質的ではない)要素又は寸法を示しており、明示的に要求されている(不可欠とされている)場合を除き、当業者によって好適であると考えられる限りにおいて修正されることができる。本発明は、以下において説明される、本発明の例示的説明目的かつ単なる現時点における好適な具現化のために与えられている例示的実施形態には限定されないことは明らかであろう。
【0028】
リソグラフィ装置
【0029】
図1に、本発明の好ましい一実施形態を採用するのに適したリソグラフィ装置の一例の概要を示す。以下では、本発明の開示に必要とされる詳細のみを記載する;理解を容易にするために、各構成要素は図1において寸法通りには示されていない。リソグラフィ装置1の主要構成要素は、この例において図1の紙面上下方向下側に向かうリソグラフィビームlb、pbの方向の順に、照明システム3、パターン規定(画定)(PD:pattern definition)システム4、投影システム5及び基板16を有するターゲットステーション6である。装置1全体は、該装置の光軸cwに沿って荷電粒子のビームlb、pbが邪魔されない伝播を保証するために、高真空度に保持されている真空ハウジング2内に収容されている。荷電粒子光学システム3、5は、静電レンズ及び/又は磁気レンズを用いて実現されている。
【0030】
照明システム3は、例えば、電子銃7と、抽出システム8と、集光レンズシステム9とを含む。尤も、電子の代わりに、一般的に他の帯電粒子も同様に使用できることに留意すべきである。これらは、例えば、電子の他に、水素イオン又はより重いイオン、荷電原子クラスタ、または荷電分子であり得る。
【0031】
抽出システム8は、粒子を典型的には数keV、例えば5keVの定められたエネルギーに加速する。ソース7から放射された粒子は、集光レンズシステム9によって、リソグラフィビームlbとして使用される実質的にテレセントリックな幅の広い粒子ビーム50に成形される。次に、リソグラフィビームlbは、複数の開口部(アパーチャとも呼ばれる)を有する複数のプレートを含むPDシステム4を照射する。PDシステム4は、リソグラフィビームlbの経路上の特定の位置に保持されるため、リソグラフィビームlbは、複数のアパーチャ及び/又は開口部を照射し、複数のビームレットに分割される。
【0032】
これらのアパーチャ/開口部の一部は、自身を貫通して通過するビームの部分すなわちビームレット51をターゲットに到達させるという意味で入射ビームに対し透過性であるよう、「スイッチオン」されるないし「開状態(open)」にされる;他のアパーチャ/開口部は「スイッチオフ」されるないし「閉状態(closed)」にされる、即ち、対応するビームレット52はターゲットに到達できず、従って、実質的にこれらのアパーチャ/開口部はビームに対して非透過性(不透明)となる。かくして、リソグラフィビームlbは、PDシステム4から出射するパターン化ビームpbに構造化される。スイッチオンされたアパーチャのパターン-リソグラフィビームlbに対して透過性であるPDシステム4の唯一の部分-は、荷電粒子感応性レジスト17で被覆された基板16に露光されるべきパターンに応じて選択される。なお、アパーチャ/開口部の「スイッチオン/オフ」は、通常、PDシステム4のプレートの1つに設けられた適切なタイプの偏向手段によって実現される。即ち、「スイッチオフ」されたビームレット52は、(十分であるが非常に小さい角度で)その経路から偏向され、そのため、ターゲットに到達できないが、リソグラフィ装置の何れかの部分において、例えば吸収板11において専ら吸収される。
【0033】
パターン化ビームpbによって表されるパターンは、その後、光電磁気式の(electro-magneto-optical)投影システム5によって基板16上に投影され、そこでビームは「スイッチオン」されたアパーチャ及び/又は開口部の画像を形成する。投影システム5は、2つのクロスオーバーc1とc2を介して、例えば200:1の縮小を実行する。基板16は、例えば、粒子感応性レジスト層17で被覆された6”(インチ)マスクブランクまたはシリコンウエハである。基板は、チャック15によって保持され、ターゲットステーション6の基板ステージ14によって位置決めされる。
【0034】
露光されるべきパターンに関する情報は、電子パターン情報処理システム18によって実現されるデータパスによってPDシステム4に供給される。データパスの更なる詳細については、本出願人の米国特許第9,653,263B2号(「データパス(Datapath)」のセクション)に見出すことができる。
【0035】
図1に示す実施形態において、投影システム5は、好ましくは静電レンズ及び/又は電磁レンズを含み、場合によっては更なる偏向手段も含む、複数の連続的に配置される光電磁気式の投射ステージ10a、10b、10cから構成される。これらのレンズおよび手段は、これらの使用は先行技術において周知であるため、象徴的形状でのみ示されている。投影システム5は、クロスオーバーc1、c2を介する縮小イメージングを用いる。双方のステージの縮小係数(倍率)は、全体として数百倍、例えば200:1の縮小が結果として得られるように選択される。このオーダーの縮小は、PDデバイスにおける小型化という問題を軽減するために、リソグラフィ設備には特に適している。
【0036】
投影システム5全体は、色収差および幾何収差に関してレンズ及び/又は偏向手段を大幅に補償するように構成されている。画像を全体として横方向に、すなわち光軸cwに対し直角な方向に沿ってシフトする手段として、偏向手段12a、12b及び12cが、集光レンズ[照明システム]3及び投影システム5に設けられている。偏向手段は、例えば、ソース抽出システム8の付近ないし図1に偏向手段12bで示されているような2つのクロスオーバーの内の1つの付近に、又は、図1にステージ偏向手段12cで示されているような相応のプロジェクタの最終レンズ10cの下流に位置付けられた多極(マルチポール)電極システムとして実現可能である。この装置では、多極電極配置は、ステージ運動に対する画像のシフト及び荷電粒子光学アライメントシステムと連動した結像システムの補正の両方のための偏向手段として使用される。これらの偏向手段10a、10b、10cはストップ(stopping)プレート11と連動して使用されるPDシステム4の偏向アレイ手段と混同されるべきではない。というのは、後者はパターン化ビームpbの選択されたビームレットを「オン」または「オフ」にスイッチするために使用されるものであるのに対し、前者は、粒子ビームを全体として取り扱うに過ぎないからである。また、軸線方向の磁界をもたらすソレノイド13を用いてプログラマブルビームの束を回転させる可能性もある。
【0037】
図2の断面詳細図は、PDシステム4の1つの好適な実施形態を示す。このPDシステム4は、連続配置構成で積み重ねられた3つのプレート、すなわち「アパーチャアレイプレート(Aperture Array Plate)」(AAP)20と、「偏向アレイプレート(Deflection Array Plate)」(DAP)30と、「フィールド境界アレイプレート(Field-boundary Array Plate)」(FAP)40とを含む。なお、ここで留意すべきことは、用語「プレート」はそれぞれの装置の全体的な形状に関するものであって、1つのプレートが単一のプレート部品として実現されることを、通常はこれが具体化の好ましい態様であるが、必ずしも示すものではない;それでもなお、特定の実施形態では、アパーチャアレイプレートのような1つの「プレート」は、複数のサブプレートから構成されることも可能である。プレートは、Z方向(図2の紙面上下方向の軸)に沿って、或る相互距離をなして互いに対し平行に配置されることが好ましい。
【0038】
AAP20の平坦な上面は、荷電粒子集光器光学系/照明システム3に対する定められた電位界面を形成する。AAPは、例えば、肉薄の中央部分22を有する(およそ1mmの厚さの)シリコンウエハ21の方形または矩形片から作製することができる。プレートは導電性保護層23によって被覆されてよい。この導電性保護層23は(米国特許第6,858,118号に示すような)水素イオンまたはヘリウムイオンを使用する場合とりわけ有利であろう。電子または重イオン(例えばアルゴンまたはキセノン)を使用する場合、層23とバルク部分21、22との間に界面が存在しないようにするために、層23は、21および22のそれぞれの表面部分によってもたらされるシリコンから作製されてもよい。
【0039】
AAP20は、肉薄部分22を横断する開口部によって形成される複数のアパーチャ24を備える。アパーチャ24は、肉薄部分22に設けられた(1つの)アパーチャエリア内に所定の配置で配置され、かくしてアパーチャアレイ26を形成する。アパーチャアレイ26におけるアパーチャの配置は、例えば、千鳥(ジグザグ)配置又は規則的な矩形もしくは方形アレイ(図4参照)であってよい。図示の実施形態では、アパーチャ24は、層23に形成された直線的プロファイルと、開口部の下方開口25がアパーチャ24の主要部分よりも幅が広くなるようなAAP20のバルク層における「下流側拡開(ないし末広がり:retrograde)」プロファイルとを有するように構成されている。直線的プロファイルおよび下流側拡開プロファイルは両方とも、反応性イオンエッチングのような従来技術の構造化技法によって形成可能である。下流側拡開プロファイルは、開口部を通過するビームのミラー荷電効果(mirror charging effects)を大きく低減する。
【0040】
DAP30は、複数の開口部33を備えたプレートであり、開口部33の位置はAAP20におけるアパーチャ24の位置に対応し、更に、開口部33は当該開口部33を貫通通過する個別ビームレットを選択的にそれぞれの経路から偏向するよう構成された電極35、38が設けられている。DAP30は、例えば、ASIC回路を有するCMOSウエハの後処理を行うことによって形成可能である。DAP30は、例えば、方形または矩形の形状を有する1片のCMOSウエハで作成され、肉薄化されている(但し肉薄部22の厚さと比較すると適切により厚くなっていてもよい。)中央部分32を保持するフレームを形成する肉厚部分31を含む。中央部分32におけるアパーチャ開口部33は、24と比較して(例えば、各側部でおよそ2μmだけ)より幅が広い。CMOS電子回路34は、MEMS技術によって提供される電極35、38を制御するよう設けられている。各開口部33に隣接して、「接地(ground)」電極35及び偏向電極38が設けられている。接地電極(複数)35は電気的に相互接続され、共通の接地電位に接続されると共に、荷電を防ぐための下流側拡開部分36と、CMOS回路に対する不所望なショートカット(ないし短絡)を防止するための絶縁部分37とを備える。接地電極35は、シリコンバルク部31および32と同じ電位のCMOS回路34の電極部分に接続されてもよい。
【0041】
偏向電極38は静電位が選択的に印加されるように構成されている;そのような静電位が電極38に印加されると、電極38は対応するビームレットに対し偏向を引き起こし、以って、当該ビームレットを公称経路から偏向させる電界を生成する。電極38は、同様に、荷電を回避するために下流側拡開部分39を有していてもよい。電極38の各々は、その下側(根元側)部分において、CMOS回路34内の対応するコンタクト部位に接続される。
【0042】
接地電極35の高さは、ビームレット間のクロストーク効果を抑制するために、偏向電極38の高さより大きい。
【0043】
図2に示されるDAP30を有するPDシステム4の配置はいくつかの可能性の内の1つに過ぎない。(不図示の)変形形態では、DAPの接地電極35及び偏向電極38は、下流側ではなく寧ろ上流側に(紙面上方を向く側に)配向されてもよい。さらに、例えば埋込型の接地電極および偏向電極を有するDAP構成は当業者によって案出可能である(米国特許第8,198,601B2号のような本出願人名義の他の特許を参照)。
【0044】
FAPとして機能する第3のプレート40は、下流側で縮小を行う荷電粒子投影光学系5の第1のレンズ部分に面する(指向する)フラットな面を有し、従って、投影光学系の第1のレンズ10aに対する規定された電位界面を提供する。FAP40の肉厚部分41は、シリコンウエハの一部から作製される方形または矩形フレームであり、肉薄の中央部分42を有する。FAP40は、AAP20およびDAP30の開口部24、33に対応するが、それらと比べて幅がより大きい複数の開口部43を備える。
【0045】
PDシステム4、特にその第1のプレートであるAAP20は、幅広の荷電粒子ビーム50(本書において、「幅広の(broad)」ビームとは、ビームがAAPに形成されたアパーチャアレイの全エリアをカバーするために十分に幅が広いことを意味する)によって照射され、そのため、該ビーム50は、アパーチャ24を貫通通過すると、何千ものマイクロメートルサイズのビームレット51に分割される。ビームレット51は、DAP及びFAPを妨げられることなく(何の支障もなく)横断することになる。
【0046】
既述のように、偏向電極38がCMOS電子回路によって電力供給されるときはいつでも、偏向電極と対応する接地電極との間に電界が生成されることになり、その結果、そこを通過する対応するビームレット52に対し小さいが十分な偏向がもたらされる(図2)。偏向されたビームレットは、開口部33および43のそれぞれが十分に幅広に作成されているため、DAP及びFAPを妨げられることなく横断することができる。尤も、偏向されたビームレット52は、サブカラムのストッププレート11においてフィルター除去される(図1)。したがって、DAPによる影響を受けないビームレットのみが基板に到達することになる。
【0047】
縮小荷電粒子光学系5の縮小率は、PDデバイス4におけるビームレットの寸法及びそれらのビームレットの相互間の距離並びにターゲットにおける構造の所望の寸法を考慮して適切に選択される。これにより、PDシステムにおいてはマイクロメートルサイズのビームレットが考慮される一方で、基板にはナノメートルサイズのビームレットが投影される。
【0048】
AAPによって形成される(影響を受けていない)ビームレット51の束は、投影荷電粒子光学系の所定の縮小率Rによって基板に投影される。それゆえ、基板において、幅BX=AX/R及びBY=AY/Rをそれぞれ有する「ビームアレイフィールド」(BAF)が投影される。ここでAX及びAYはそれぞれX方向およびY方向に沿ったアパーチャアレイフィールドのサイズを示す。基板におけるビームレット(すなわちアパーチャ画像)の公称幅は、それぞれbX=aX/R及びbY=aY/Rで与えられる。ここでaX及びaYは、夫々、DAP30のレベル(高さ)においてX方向およびY方向に沿って測定されるビームレット51のサイズを示す。従って、ターゲット上に形成される単一のアパーチャ画像のサイズは、bX×bYである。
【0049】
なお、図2に描写された個別ビームレット51、52は、2次元のX-Yアレイに配置された、一層より多くの数の、典型的には何千ものビームレットを表すことに留意すべきである。本出願人は、例えば、イオンについてR=200の縮小率を有するマルチビーム荷電粒子光学系並びに何千本もの(例えば、262,144本の)プログラマブルビームレットを有する電子マルチビームカラムを既に実現している。本出願人は、基板においておよそ82μm×82μmのBAFを有するそのようなカラムも既に実現している。これらの例は、例示の目的で述べられたものであり、限定的な例として解釈されるべきではない。
【0050】
パターンの描画
【0051】
図3を参照すると、PDシステム4によって規定されるパターン画像pmはターゲット16上に生成される。荷電粒子感応性レジスト層17によって被覆されたターゲット表面は、露光されるべき1つ以上のエリアr1を含むことになる。一般的に、ターゲット上で露光されるパターン画像pmはパターン化されるべきエリアr1の幅より通常は十分により小さい有限サイズy0を有する。従って、走査ストライプ露光法が使用されるが、この場合、ターゲットは、ターゲット上でビームの位置が不断に変更されるよう、入射ビーム下で移動される。即ち、ビームはターゲット表面上で効果的にスキャンされる。本発明の目的のためには、ターゲット上におけるパターン画像pmの相対運動のみが重要であることを強調しておく。この相対移動によって、パターン画像pmは、幅y0の一連のストライプs1、s2、s3、・・・sn(露光ストライプ)を形成するよう、エリアr1上で移動される。完全なセットのストライプは基板表面の全エリアをカバーする。走査方向sdは、一定(一方向)であってもよく、或いは、ストライプごとに交互に変化されても(隣り合うストライプ間で方向が逆であっても)よい。
【0052】
図5Aは、10×18=180ピクセルのサイズの結像パターンpsの簡単な一例を示す。ここで、露光エリアの幾つかのピクセルp100は100%のグレーレベル401に露光され、他の幾つかピクセルp50は完全なグレーレベルの50%のみに露光される(402参照)。残りのピクセルは0%線量403に露光される(全く露光されない)。図5Bは、50%レベルを実現する仕方を示す:各ピクセルは数回露光され、0%から100%の間のグレーレベルを有するピクセルについては、グレーレベルは、活性化されるピクセルに対応する露光回数を相応に選択することによって実現される;グレーレベルは、活性化された露光を分子、露光総数を分母とする分数である。この例では、50%レベルは、4回のうち2回を選択することにより実現される。当然ながら、本発明の現実的な応用においては、標準画像のピクセル数は一層より多くなるであろう。しかしながら、図5A及び図5Bでは、理解の容易化のため、ピクセルの数は180個のみとしている。なお、一般的に、さらに多くの段階のグレーレベルが0%から100%のスケール内において使用されるであろう。
【0053】
かくして、パターン画像pm(図3)は、露光されるべき所望のパターンに応じた線量値で露光される複数のパターンピクセルpxから構成される。なお、PDシステムのアパーチャフィールドには有限の数のアパーチャしか存在しないため、同時に露光することができるのは1つのサブセットのピクセルpxのみである。スイッチオンされるアパーチャのパターンは、基板に露光されるべきパターンに応じて選択される。かくして、実際のパターンでは、すべてのピクセルが完全な線量で露光されるのではなく、ピクセルの一部は実際のパターンに応じて「スイッチオフ」されることになる;各ピクセルごとに(又は、換言すれば、該ピクセルをカバーする各ビームレットごとに)、露光線量は、ターゲット上に露光または構造化されるべきパターンに応じて、該ピクセルが「スイッチオン」されるか「スイッチオフ」されるかにより、ピクセル露光サイクル毎に変化されることができる。
【0054】
基板16が連続的に動かされる間に、ターゲット上のパターンピクセルpxに対応する同じ画像要素は、一連のアパーチャの画像によって何度もカバーされてもよい。同時に、PDシステムにおけるパターンは、PDシステムのアパーチャを介して、段階的にシフトされる。したがって、ターゲット上のある場所の1つのピクセルについて考えると、すべてのアパーチャがそのピクセルをカバーする場合にそれらのアパーチャがスイッチオンされるとすれば、その結果、最大露光線量レベル即ち100%に相当する「ホワイト」シェード(shade)が生じることになる。「ホワイト」シェードに加えて、最小露光線量レベル(「ブラック」)と最大露光線量レベル(「ホワイト」)との間に補間(内挿)されるであろうより低い線量レベル(「グレーシェード」とも称される。)に従ってターゲットにおけるピクセルを露光することも可能である。グレーシェードは、例えば、1つのピクセルの描画に関与し得るアパーチャのサブセットのみをスイッチオンすることによって実現可能である;例えば、16個のアパーチャのうちの4個は25%のグレーレベルを与えることになるであろう。もう1つのアプローチは、関与するアパーチャについてブランキングされない(unblanked)露光の持続時間を低減させることである。従って、1つのアパーチャ画像の露光持続時間は、グレースケールコード、例えば、整数によって制御される。露光されるアパーチャ画像は、ゼロと最大露光持続時間及び線量レベルに対応する所与の数のグレーシェードのうちの1つの現れである。グレースケールは、通常、1セットのグレー値、例えば、nをグレー値の数、iを整数(「グレーインデックス」、0≦i≦n)として、0,1/(n-1)...,i/(n-1),..,1を定義する。尤も、一般的には、グレー値(複数)は等間隔である必要はなく、0と1の間の非減少(non-decreasing)数列を形成する。
【0055】
図4は、基本的レイアウトによるPDデバイスのアパーチャフィールドにおけるアパーチャの好ましい一配置を示し、更に、以下で用いるいくつかの量及び略語を示す。濃い(黒い)シェードで示された、ターゲット上に投影されるアパーチャ画像b1の配置が示されている。主軸XおよびYは、それぞれ、ターゲット運動の進行方向(走査方向sd)及び垂直方向に対応する。各アパーチャ画像は、方向X及びYにそれぞれ沿った幅bX及びbYを有する。アパーチャはそれぞれMX個およびMY個のアパーチャを有する行および列に沿って配置され、1つの行および1つの列において隣り合うアパーチャ間のオフセットはそれぞれNX・bX及びNY・bYである。その結果、各アパーチャ画像には、NX・bX・NY・bYの面積を有する概念上の(仮想の)セルC1が属し、アパーチャ配置は、矩形状に配置されたMX・MY個のセルを含有する。以下では、これらのセルC1を「露光セル」と称する。ターゲット上に投影される完全なアパーチャ配置は、BX(=MX・NX・bX)×BY(=MY・NY・bY)の寸法を有する。以下の説明において、矩形グリッドの特殊なケースとして正方形グリッドを想定し、b=bX=bY、M=MX=MY、N=NX=NYと設定し、Mは整数とするが、以下のさらなる説明はすべて何ら一般化を制限するものではない。かくして、1つの「露光セル」はターゲット基板上でN・b×N・bのサイズを有する。
【0056】
隣り合う2つの露光位置間のピッチは以下においてeで表す。一般的に、距離eは、1つのアパーチャ画像の公称幅bと異なり得る。最も単純な場合では、b=eであり、これは、2×2露光セルC3の配置の例についての図6Aに示されており、1つのアパーチャ画像bi0は1ピクセル(の公称位置)をカバーする。図6Bに(及び米国特許第8,222,621号及び米国特許第7,276,714号の教示に沿って)示されている他の興味深い例では、eはアパーチャ画像の幅bの分数b/oとすることができる。ここで、o>1は整数であるのが好ましく(但し必須ではない)、オーバーサンプリング率とも称される。この場合、アパーチャ画像は、様々な露光の過程において、空間的にオーバーラップし(重なり合い)、それにより、生成されるべきパターンのより高解像度の配置(placement)が可能になる。その後、(1つの)アパーチャの各画像は、一度に、複数のピクセル即ちo個のピクセルをカバーすることになる。ターゲットに結像されるアパーチャフィールドの全エリアは(NMo)個のピクセルを含むことになる。アパーチャ画像の配置の観点からすれば、このオーバーサンプリングは、ターゲットエリアを単にカバーするのに必要になるものとは異なる(間隔がより細かいため)いわゆる配置グリッド(placement grid)に対応する。
【0057】
図6Bは「ダブルグリッド」と称される配置グリッドと組み合わせたo=2のオーバーサンプリングの一例を示す。即ち、o=2、N=2のパラメータを持つ露光セルC4を有するアパーチャアレイの画像である。従って、各公称位置(図6Bにおける小さな方形フィールド)上に、4つのアパーチャ画像bi1(破線)がプリントされているが、これらは、規則的な(regular)グリッド上でX方向及びY方向の両方においてピッチeだけオフセットされている。アパーチャ画像のサイズは依然として同じ値bであるのに対し、配置グリッドのピッチeは、この場合、b/o=b/2である。従前の公称位置に対するオフセット(配置グリッドのオフセット)もb/2のサイズである。同時に、各ピクセルの線量及び/又はグレーシェードは、対応するピクセルをカバーするアパーチャ画像に適切なグレー値を選択することによって、適合化(低減)可能である。その結果、サイズaのエリアがプリントされるが、配置グリッドはより精細であるため、配置精度が向上される。図6B図6Aを直接比較することにより、アパーチャ画像の位置は、配置グリッド上で従前よりも2倍(一般的にはo倍)の精細度で配置される一方、アパーチャ画像自体はオーバーラップしている(重なり合っている)ことが分かる。ここで、露光セルC4は、描画プロセス中に取り扱われるべき(No)の位置(即ち「ピクセル」)を、従って、oの倍数だけ、従前よりもより多くのピクセルを含む。これに応じて、アパーチャ画像のサイズb×bを有するエリアbi1は、図6Bにおけるo=2であるオーバーサンプリング(「ダブルグリッド」とも称される)の場合、o=4ピクセルに関連付けられる。勿論、oは他の任意の整数値、特に4(「クワッドグリッド」、不図示)又は8も取り得る。また、パラメータoは、米国特許第9,653,263号に示されている「ダブルセンターグリッド(Double-Centered Grid)」の場合に対応して、21/2=1.414又は23/2=2.828のような1より大きい非整数値であってもよい。
【0058】
なお、連結(interlocking)グリッド(o>1)の場合、「ディザリング(dithering)」によって、線量分布を均一に維持しつつ、グレーシェードの数を増加することが可能であることに留意することは重要である。その理由は、グレーシェード(複数)はいずれの公称グリッドに対しても等しいからである。これは、ダブル連結グリッドでは、実現可能な有効線量レベルの数は非連結グリッドの場合より4倍より多いことを意味する。一般的にいえば、オーバーサンプリングされる露光グリッド(即ちo>1)は、何れも、X及びY方向にb/oの距離だけシフトされるo個までの公称グリッドからなる。従って、ある線量レベルから次の線量レベルへのステップ(刻み)はo段階のサブステップに分割することができるが、この場合、これらのo個のグリッドの1つのみの線量レベルが増大される;これは、全てのサブグリッドが公称レベルを露光するまで、他のグリッドに対し繰り返すことができる。当業者であれば分かる通り、基板におけるビーム形状は、アパーチャプレートの機械ブラー(blur)と縮小されたアパーチャ形状の畳み込みである。幅bを露光グリッド定数eの自然数倍に設定することにより、換言すればo=b/eを整数とすることにより、基板上における均一な線量分布を得ることができる。そうでない場合、線量分布は、エイリアシング(aliasing)効果のために、露光グリッドの周期性による最小値と最大値を有するであろう。多数のグレーシェードは、より優れた特徴配置を可能にする。従って、グレーレベルの増加は、ピクセル位置ごとのグレーシェードが特定の数に限られている場合、重要な意味を持つ。
【0059】
図7Aに、本発明によって使用されることが好ましい走査ストライプ露光に好適なピクセルの露光スキームを示す。図示されているのは一連のフレームであり、時間は(紙面)頂部(より早い)から(紙面)底部(より遅い)に進行する。本図におけるパラメータ値はo=1,N=2であり、MX=8及びMY=6の矩形ビームアレイが想定されている。ターゲットは常に(紙面)左側に動くのに対し、ビーム偏向は、図の紙面左側に示されているような鋸波関数で制御される。長さT1の各時間インターバル中は、ビーム画像は(「配置グリッド」の位置に対応する)ターゲット上のある位置に固定されたままである。従って、ビーム画像は、配置グリッドシーケンスp11、p21、p31を通過するように示されている。配置グリッドの1サイクルは、ターゲット運動vによって、時間インターバルL/v=NMb/v以内に露光される。各配置グリッドにおける露光の時間T1は、L=vT1=L/p=NMb/pで与えられる「露光長さ」と称される長さに対応する。ここで、pは1つのセル内の露光位置の数を表す(通常の(regular)オーバーサンプリングされるグリッドではp=No)。
【0060】
ビームレットは、ターゲットと共に1セットの画像要素の露光中に、Lの距離にわたって移動される。換言すれば、すべてのビームレットは、時間インターバルT1の間、基板の表面に対して固定された位置を維持する。距離Lに沿ってターゲットと共にビームレットを移動させた後、ビームレットは即座に(極めて短時間内に)再配置されて、次の配置グリッドの画像要素の露光を開始する。配置グリッドサイクルの位置p11・・・p31を介する1つの完全なサイクルの後、シーケンスは、X方向(走査方向)に平行な縦方向オフセットL=bNMを付加して、新たに開始される。ストライプの始まりと終わりにおいては、この露光方法は連続的なカバーをもたらさないこともあり得るため、完全には充填されない長さLのマージンがあってもよい。
【0061】
なお、図7Aでは、実際のパターンに応じて個々のアパーチャを開閉するために必要な時間は無視されている。実際には、DAPの偏向装置及び偏向多極システムは、再配置及び過渡的振動のフェードアウト(減衰)後にアパーチャの状態を安定化(整定)するために、所定の整定(安定化)時間インターバルTを必要とする。整定時間インターバルTは、ピクセル露光サイクルT1の(極めて)小さい一部分である。従って、完全なピクセル露光サイクルT1よりも寧ろ、専ら利用可能時間Tu=T1-Tがピクセルの露光のために使用される。時間インターバルTuは、その時間内に適切な線量がそれぞれのピクセルに供給されることを保証するピクセル露光期間である。
【0062】
利用可能露光時間Tuは、処理可能なグレーシェードの数に対応するg個のタイムスロット(時間枠)に分割される。gの値の一例はg=16(4ビット)である。ピクセル露光は、Tu以内に使用されるタイムスロットの合計である、所望のグレーシェードに応じて活性化される。時間Tu以内に1つのピクセルに適用される線量がg段階のグレーレベルにデジタル化されれば、一般的(general)ブランキングセルを時間Tuの間にg回リロードすることが可能である。ブランキングアレイにおける各ブランキングセルは、露光期間Tuの間にその個別のグレーシェードを受け取る。
【0063】
図7Bは、g=5として単純化した一例における、異なるグレーシェードを有する2つのピクセルの露光を示す。整定時間インターバルTの相対的サイズは著しく誇張して示されている。g=5に応じて、利用可能時間インターバルTuの各々に5つのタイムスロットがある。第1ピクセルp71は、100%のグレーシェード(即ち「ブラック」)で露光され、第2ピクセルp72は40%のグレーシェードで露光される。ピクセルp72では、対応するブランキング電極の2つのタイムスロットがグレーにシェードされた1つのピクセルを生成するが、それは、この例では40%は5つのうちの2つを有するグレーシェードに対応するためであり、かくして、それらのうちの2つが、任意の順序で、スイッチオンに設定される。一方、ピクセルp71では、それぞれのブランキング電極は、5つの全てのタイムスロットの間、活性化され、その結果、Tuの間に適用され得る最大線量を有する黒色のピクセルが生成される。
【0064】
ダブルグリッド及びクワッドグリッドにおける特徴の露光
【0065】
図8A図8Cを参照すると、アパーチャ画像bi0、bi1(図6A図6B)に対応する各露光スポットp0は、以下においてより詳細に説明するように、離散的な線量レベルで露光される。図8A図8Cは、特別に重要ないくつかのオーバーラップ構成を示す。
【0066】
図8Aは、図6Bついて上述したような「ダブルグリッド」マルチビーム露光を示し、この場合、露光スポットと露光スポットの間のオーバーラップはX方向及びY方向においてビームスポットサイズの半分である。この場合、物理的グリッドサイズp1は、(露光)スポットp0の線形サイズの半分である。
【0067】
図8Bは、「クワッドグリッド」マルチビーム露光を示し、この場合、スポットとスポットの間のオーバーラップはX方向及びY方向においてビームスポットサイズの1/4である。この場合、物理的グリッドサイズp2はスポットサイズ幅の4分の1である。
【0068】
図8Cは、別のグリッドレイアウトを示す。この場合、ダブルグリッドオーバーラッピングビーム露光に加えて、中間にある中心点(複数)においてビーム露光が行われる。従って、物理的グリッドサイズp3は、線形スポットサイズの1/23/2(即ち√2/4)である。このマルチビーム露光モードは「ダブルセンターグリッド」と称される。
【0069】
本出願人は、米国特許第9,053,906号においてエラー低減のためのオーバーラッピングストライプ(「マルチパス(multi-pass)」)法について説明した。そのような方法の一例(「ダブルパス(double-pass)」)が図9A及び図9Bに示されており、これらは、2つのパスps1、ps2において露光されるべきターゲットの例示的サブエリアを示す。第1のパスps1では、ストライプs11、s12、s13は順序通りに露光され、従って、部分グリッドG1に属するピクセルが露光される(これらのストライプの各々の内部のピクセルの数は図9A及び図9Bでは見易さの目的として減少されているが、本発明の典型的な実施形態ではより多いであろう)。図9Aにおいて、文字A、C、Eは夫々ストライプs11、s12、s13によって露光可能なピクセルを表している。1つのパスのストライプs11~s13は、ターゲット上のエリアにわたって連続グリッドが生成されるよう、並置されることが好ましい。このようにして、夫々個別幅y0を有するこれらのストライプは、Y方向に沿って(即ち走査方向sdにわたって)露光されるべきエリアRrの全幅Ryをカバーする。ストライプs11~s13は図示のエリアの何れの側方へ延伸してもよく、第1のパスps1は、ストライプs13が画像化されたのち、更なるストライプ(不図示)に続いてもよい。第1のパスps1のすべてのストライプが完了した後、図9Bに示されているように、他のパスps2のストライプ(複数)が実行される。ストライプs21、s22は第2の部分グリッドG2の内部に形成されるピクセルを露光する。図9Bは、夫々文字B及びDで表されているピクセルを露光する2つのストライプs21及びs22を示している。従って、各パスps1、ps2は、夫々のパス中に露光可能なパターンピクセルの部分グリッドG1、G2の一方に関連付けられている。まとめると、グリッドG1、G2のピクセルは組み合わさって、露光されるべき領域における完全な複数のパターンピクセルを構成する。換言すれば、第2のパスps2は第1のパスps1において残された(省かれた)ピクセルを露光し、その反対も同様である。Y軸に関し、異なるパスの露光ストライプは、好ましくは一定の態様で、互いにオーバーラップし(重なり合い)、オーバーラップするストライプ、例えばストライプs11とs21は、(走査方向と同一の、ストライプの配向(延伸方向)を横切る方向である)Y方向に沿って縦オフセットY1だけずれている。ストライプs11の最初の半分を露光するために、そして全幅Ryのこの部分をカバーするためにも、(ピクセルパターンには示されていない)付加的な「エッジストライプ(edge stripe)」s20が実行されてもよく、この場合ピクセル(複数)の上半分だけが露光され、他方、該ピクセル(複数)の下半分はストライプs20の全長に沿ってスイッチオフ状態に維持される。このアプローチは直接的に3つ以上のパスに一般化される。例えば、「クワッドパス」描画法の場合、4つのパスにおいて描画される4つの部分グリッドが組み合わされて、完全な複数のパターンピクセルを形成する。露光ストライプ及び部分グリッドによるピクセルの露光に関する更なる詳細については、本出願人の米国特許第9,799,487号に記載されている。
【0070】
偏向アレイプレートのアーキテクチャ
【0071】
以下に、上記のような描画プロセスを確立可能にするDAP30の電子回路のアーキテクチャの1つの好適な具現化例を示す。そのようなDAP電子回路60の全体ブロック図の一例を図15Aに示す。ブランキング可能な開口部(複数)は、MY=2R行で、各行がMX=C個のアパーチャを有する、アパーチャフィールド61に配置されている。従って、ブランカ(blanker)セル(複数)は、行に対し直角に(図15Aの紙面上下方向に;行の方向は紙面左右方向)延在するC個のセル列とみなすことができる。ブランカセルは、例えば高ビット密度を可能にするデュアルポートスタティックRAMブロックである2つのAPSメモリアレイ62N、62S(N及びSはこの場合夫々「north(ノース)」及び「south(サウス)」の略語である。)を使用する列方向(column-wise)方式で取り扱われる。
【0072】
メモリ(複数)はDAPの外部インターフェース63からリード・ライトモードでアクセス可能である。制御論理回路64は外部インターフェース63を介して受け取る命令及びデータを解釈し、それに応じてメモリアレイ62N、62Sのアドレス指定65を実行し、アパーチャフィールド61内のブランカセルのための制御信号66(クロック、イネーブル等)を提供する。ノースRAMデータはデータ及び制御信号を上側のR個のブランカ行へ供給し、サウスRAMは下側のR個のブランカ行に接続されている。
【0073】
同図に示した実施形態では、メモリアレイ62N、62Sは個別メモリユニット(複数)によって実現される複数のメモリブロック67によって構成されている。これらのブロック67の各々はデュアルポートRAM(DPRAM)として実現されている。そのようなDPRAMはASICメーカーのライブラリの標準的なライブラリ要素である。他の実施形態では、DAP電子回路60のメモリは他の態様で、例えば(アレイ62N、62Sに相当する)2つのメモリバンク又はただ1つのメモリで構成可能であること、或いは複数のメモリブロック67は夫々メモリユニットによって該メモリユニットの記憶容量に応じて具現化可能であることは、明らかであろう。
【0074】
図15Bを参照すると、各メモリブロック67のRAMは、ASIC内における超高記憶密度を可能にするスタティック(static)記憶要素から構築されている。各RAMブロックの完全なRAMは、ポートA(Port A)及びポートB(Port B)と称される2つのポートを介してアドレス可能であり、各ポートは、以下に詳細に説明するように、アドレス(Address)バス、データ(Data)バス及び付加的制御(Control)信号を含む夫々のアクセス手段を介してアクセス可能である。2つのポートは2つの異なる位置(locations)からの情報の同時アクセスを可能にする。なお、データ幅及びアドレス幅は必ずしも両側において同一である必要はなく、メモリは―例えば―ポートAでは8ビット、ポートBでは32ビットで構成可能である。
【0075】
図16は、本発明の好ましい一実施形態による、1つのブランカ列の上側(ノース)半分に対応する、シングル半列HC1の構成の一例を示す。ブランカセル(複数)はBlanker0、...、BL(R-1)で表され、小さな方形(アパーチャ)を含む方形エリアとしてシンボル表示されている。列の下半分は対称的に(アパーチャフィールド61の紙面左右方向の中心軸について鏡像対称的に)構成されており、更なる列(複数)は図示の列の紙面左右両側に単純に付加されている。ブランカ情報はポートAを介してDPRAM67へ記憶され、その後、ポートBを介して個々のブランカセルへ、制御信号データとして制御ライン84を介して伝送される。各ブランカセルには、DPRAMから供給されるカレントデータを記憶するよう1ビットメモリ(例えばフリップフロップ)が備えられている。
【0076】
図16のレイアウトでは、制御ラインデータの幅bwは2ビット(bw=2)であるが、任意の他の数であることも可能である。bwの整数倍となるように数Rを選択することは有益である。bwのより大きな値は、完全な一列のより短いリロード時間を可能にする。個々のブランカセルは、正確な時点においてイネーブル行信号er0、er2、...er(R-2)によって、DPRAMから提供される情報を記憶するようイネーブルされる。ここで、各イネーブル行信号はbwセルのグループをアクティベートする。一度にアクティブであるのは1つのイネーブル行信号のみであり、そのため、制御ライン84上のデータは1つの正しいブランカセルグループへロードされる;その後、次のブランカセルグループがロードされる等される。例えば、R=128かつbw=8であれば、1つの列は128/8=16クロックサイクル以内にリロードされる。200MHz設計では、これは80ns(ナノ秒)の時間に関連(相当)する。イネーブル行信号er0、er2、...er(R-2)の共通の周期は、所与のブランカ状態が適用されるクロックサイクル数を制御する。この周期は、半列を完全にリロードするために必要なクロックサイクル数よりもより大きいことを要する。
【0077】
ブランカセルの「インターリーブ(interleaved)」リローディングを可能にするのに十分なメモリを備えることが好ましい:DPRAMのメモリは2つのアドレスエリアA0及びA1に分割されるため、一方のアドレスエリアA0をポートAを介してリロードし、同時に他方のアドレスエリアA1に記憶されたデータをブランカセルへロードすることが可能になる。次のピクセル露光サイクルにおいて(メモリ)バンクが切り換えられ、A1はポートAを介してリロードされ、他方、A0はブランカセルへロードされる。
【0078】
効率的な描画アルゴリズムのために及び検査目的のためには、すべてのブランカセルを同時にブランキングモード(スイッチオフされたアパーチャ)へ切り換えることを可能にするスタティックデータ設定を制御ライン84へ提供することは有益である。これは、マスクアウト(mask-out)信号によってアクティベートされる「マスク」ブロック83によって行われる。マスクアウト信号が設定されると、図示の半行[半列]のすべてのブランカセルのデータは1に設定されるのに対し、通常動作モードではマスクブロック83はポートBから来るデータに対して透過性である。
【0079】
更に、アパーチャフィールドのすべてのアパーチャを、例えばすべての(半)列のすべてのマスクアウト及びイネーブル行信号をアクティベートする信号として、同時に切り換えることを可能にするグローバルブランカイネーブル信号を任意的に実現することも可能である。
【0080】
本レイアウトは、「グレーレベル」即ち無露光(最小線量、0%)と完全露光(ピクセルにおける最大線量、100%;US 2005/0242303 A1も参照)の間の露光線量の具現化も可能にする。グレーレベルは、0からg-1の離散的ステップ(刻み)として実現される。ここでgは100%レベルを表す整数である。実現可能なグレーレベルの数gは本レイアウトでは以下のように実現され得る。
【0081】
図14は、8つのグレーレベル(g=8、3ビット)によるコントローラオペレーションについてのタイムチャートを示し、時間は横軸に沿って進行するように示されている。概念上、時間Tuはg個のタイムスロットに分割されており、これらのタイムスロットの幾つかの間に、ピクセルは所望のグレーレベルに応じてアクティベートされる。例えば、グレーレベルが8のうちの5の場合、各Tuには8つのタイムスロットがあり、そのうちの5つがスイッチオンに設定される。時間Tu以内に1つのピクセルに適用される線量がg個のグレーレベルにデジタル化されるとすれば、ブランキングセルはTu以内にg回リロードされる。ブランカセルグループ(複数)はイネーブル行識別子によって連続的に標識されており、グレーレベル成分はg0~g7によって標識されている。ブランカセルの完全なローディングサイクルは、1つの「使用可能」サイクル時間Tu以内になされる。データは、(タイムスロットに対応する)g個の連続的時間においてブランカセルへロードされ、図14に示したような夫々のタイムスロットの開始時にアクティベートされる;同時に、次の露光サイクルのための次のデータのセットがロードされる(図14では二重矢印t2によって示されている)。なお、ローディング時間(複数)は、図14に示されているように、異なるブランカセルグループ間でずらされている(互い違いにされている)。Tuの最終部分においては、各ブランカセルグループは、最後のグレーレベルスロットg7が終了した後、スイッチオフされる;これは、図16に示されているようなマスクアウト信号によって制御されるマスクブロック83によって好都合に達成される。スイッチオフ状態は、次の露光サイクルの第1のグレーレベルスロットg0がロード及びアクティベートされるまで続く。図示のタイムチャートは、APSによる最適線量調製を提供する。(本発明の「スロット持続時間」に相当する)所与のグレーレベルスロットの持続時間τ及び最大露光時間τ・g(従って最小線量及び最大線量も)を制御するために、半列HC1、...、HC(MX)の完全なリロード後の待機時間は、言い換えれば、個々のイネーブル行信号の連続的なアクティベーションの間のインターバル(時間間隔)は、調節可能である。なお、スロット持続時間は、通常は露光中にクロック速度を適合化することは可能ではないので、クロックサイクルに設定されることができるのみである。
【0082】
グレーレベルの生成、相応の回路及びコード法についてのより多くの情報は米国特許第7,777,201号に見出すことができる。ここで説明した実施形態の例は、これは本発明によるスロット露光適合化がグレーレベルスロットの持続時間の適合化に使用されるものであるが、本発明の1つの適用例に過ぎないことに留意することは重要である。他の実施形態では、本発明は、本発明による露光スロットの役割(ないし機能)を有する他の時間インターバルによって、例えば全露光時間Tu又はそのサブインターバルによって具現化可能であることは当業者には明らかであろう。
【0083】
スロット持続時間の適合化
【0084】
最大ターゲット線量D(x,y)、これは基板上の所与の位置(x,y)にある孤立特徴に対するものであるが、抵抗材料のばらつき、局所的レイアウトのような種々の要因に基づき公称値付近で変化し得ることは従来技術においてよく知られている。ここで、典型的な公称線量値の一例は100μC/cmであり、その典型的変化幅は±10%である。公称線量のこの変化は、例えば後方散乱電子によるフォギング(効果)や(エッチローディング(etch loading)効果)のようなマスク処理(processing)効果の補償のために好適であり得る。上記の効果は、しばしば、長距離で、例えば数ミリメートルのオーダーで作用し、従って、これらの効果は(例えば対応するアパーチャがオープンの場合にグレーレベルスロットの数を調節することによって実現され得る)近接効果補正によっては容易に捕捉されない。更に、本発明の典型的な具現化例では、電子銃7によって放出される電流密度J(その典型的な値はMBWの現行の具現化例では基板において1A/cmである)は露光中に一時的に変動する。公称露光線量を一定に維持するために、電子銃電流の時間(依存)変化は、例えば抽出システムの適切な位置に又は(図1に示されているように)ターゲットの直前に配置されるファラデーカップ19によってモニタされることができ、この位置に、ビームは、好ましくは描画サイクル間の非描画時間インターバル中に、周期的インターバルで指向される。これらの量から、所与のビームフィールド位置(x,y)における(スロット持続時間とも称される)露光スロットの持続時間τ=Tu/g及び時間tを用いて、(1つのピクセル要素についての)最大ターゲット線量の値はτ・g・o・J(t)=D(x,y)によって計算することができる。ここで、J(t)はターゲットの位置及び夫々の露光時間(時点)におけるビームの電流密度である。(測定された)電流密度J(t)と実際の描画プロセスのために必要とされるような最大ターゲット線量D(x,y)との間にミスマッチがあることが見出される場合、補正が必要になる。しかしながら、電流密度Jを補正する代わりに、本発明は、露光中にスロット持続時間τを調節することを提案し、更に、スロット持続時間のそのような調節を実行するための方法を提案する。
【0085】
スロット持続時間は、単一露光インターバルTuの各々又は各露光スロットについて、即ち、アパーチャフィールドの各位置決め後に、ブランキングチップ回路におけるイネーブル行信号er0、er2、...er(R-2)の連続するアクティベーション間の待機時間を調節することによって、変化されることができる。尤も、技術上の制約により、これは単一クロックサイクルの刻みでのみ可能である。例えば、スロット持続時間が単一クロックサイクルの付加又は除外(省略)によって調節されるケースでは、(本出願人のMBWの具現化の1つにおけるように)クロックサイクル時間が5ns、最小スロット持続時間値が400nsであるとすると、単一クロックサイクルによる再調節は、(5/400)の±1/2=±0.625%までの線量エラーに相当するであろうが、これは典型的には凡そ±0.25nmの限界寸法(「CD」)のエラーをもたらす。本発明の一視点によれば、この効果の補正は、所望の公称線量値に可及的に近接する線量値の再生(再現)を可能にする結果持続時間(「実際有効露光時間」)が得られるよう、スロット持続時間値に対し適切な調節を実行するが、これはMBWの多くの具現化例はそれらのビームレットを冗長的な態様で適用するという事実を利用している。
【0086】
以下に、図10に示した露光法に基づく該効果の一例を示す。この例では、露光エリアは「ダブルグリッド」配置(即ちo=2)を用いるアパーチャアレイによって照射される。ここで、図10は、(通常は遥かにより大きい)アパーチャフィールド内の3×2の露光セルの詳細のみを示している。図10は、(1つの)露光プロセスの4つ(o=4)の連続するショット181、182、183、184を説明する4つの部分図(frames)を含んでいる。この設定では、要素180のような、露光エリアの各部(「オーバーラッピングエリア」)は、図10の4つの部分図において異なるハッチングで示されている、o=4ショット(アパーチャアレイの配置)で露光される。ここで、図10は本発明のより良好な理解のための単純化された一例を示していることに留意すべきである。より一般的な例では、米国特許第7,276,714号に記載されているようなトロッティング(trotting)モードも利用可能であるが、この場合、ビームレットアレイはショットとショットの間に「露光セル(exposure cells)」を切替え(switch)できる、即ち、描画方向において複数のアパーチャピッチNX・bXを露光位置へと遠ざけるよう動かすことができる。ショット181~184のスロット持続時間は、アパーチャがオープン(即ち基礎となるピクセルのグレーレベル)に維持される露光サイクルの数に関わらず(regardless of)、オーバーラッピングエリア180が受け取り得る最小及び最大露光線量を決定する。ショット181、...、184がスロット持続時間τ1、...、τ4に割り当てられる例では、要素180は、
即ちこの要素に描画する4つのショットの時間の平均である有効スロット持続時間で露光される。「ナイーブな」丸め(rounding)を使用する場合の最悪の場合の丸め挙動は、例えば、ショット181、...、184の公称スロット持続時間がτ1=τ2=τ3=τ4=K+(1/2)クロックサイクルである場合に起きる。この場合、丸められたスロット持続時間は
であり、オーバーラッピングエリア180においてその結果得られるスロット持続時間はK+1クロックサイクルであるが、これに対し、公称スロット持続時間はK+(1/2)である。上述のように、これは、Kが最小であるとすると、凡そ0.63%の最大線量エラーに相当する。
【0087】
スロット持続時間計算の第1の具現化例では、隣接するショット(即ちビームレットアレイの配置グリッド)のスロット持続時間は、これらの期待値がターゲットスロット持続時間に相当するように確率的切り上げ又は切り下げすることによって計算される。大数の法則により、大きな連結係数(interlocking factor)oが使用される場合、期待公称値に近い、ターゲット上の所与のエリアに適用される実際スロット持続時間(即ち当該エリアを描画するビームレットの平均スロット持続時間)を維持することはより容易になる。換言すれば、(クロックサイクル(複数)で表現される)1つのショットの値は確率pで切り上げられる。ここで、pは、公称スロット持続時間τを1つのクロックサイクルの持続時間で割った商の小数部分である;整数部分は基底値Tに相当するが、これは例えばクロックサイクル持続時間の次に小さい整数倍(即ち公称時間τを1つのクロックサイクルの持続時間で割って得られる整数値)である。一様に分散された乱数
即ち
を使用することにより、夫々の要素についての近似スロット持続時間についてのこの挙動は
によって得られる。ここで
は、クロックサイクル持続時間の倍数に関する端数切り捨て演算(「床関数(floor)」)を表し、そのようにして得られる
値の集合体(ensemble)は組み合わされて有効ピクセル露光時間
(ここで記号Σはピクセル要素に寄与する露光スロットの数の合計を表す。)となり、これは、関係する露光スロットの数で除算されて、スロット持続時間τの所望の平均値を再生(再現)する。
【0088】
図11に一例を示す。露光エリアの例示的一領域190は図11の(A)に示されているように「クワッドグリッド」露光モードで4・4=16本のオーバーサンプリングビームレットを含む。個々のショットの所望スロット持続時間191は、例えば、64.16~64.52クロックサイクルの間で変化し、これにより、ビームレット(複数)のオーバーサンプリングエリアに適用される64.37の近似スロット持続時間192が得られる。各ショットについてのスロット持続時間が標準的な方法で丸められるものとすれば、(領域190内の値の1つのみが64.5以上であるので)ただ1つのシングルショットが65クロックサイクルの(1つの)スロット持続時間に割り当てられ、0.47%のエラーに相当する64.06の平均クロックサイクル時間が得られるであろう。これに対し、確率的丸め(probabilistic rounding)を用いる本発明のこの実施形態によれば、ショット(複数)は、例えば、図11の(C)に示されているようなオーバーラッピングエリアに適用される64.31クロックサイクルのスロット持続時間194を生成するためのオフセット値(複数)として使用される、図11の(B)に示されているような4・4=16個の乱数qに基づく近似スロット持続時間(複数)に割り当てられる。この結果として得られる時間は、僅か0.09%のエラーに相当し、従って、所望の公称値に極めて近接する。
【0089】
スロット持続時間計算の他の一具現化はオフセット値の規則的配置(regular arrangement)を実行し得る図12このタイプの具現化の一例を示すが、これは、数1、...、Nの置換(permutation)を使用するか又は使用するよう計算される閾値rを含む丸め閾マップ(図12の(B))を採用する。閾マップの偶発的相関と、結果として生じる(描画中にグレーレベル時間を変化する)スロット持続時間値の修正の必要性とを回避するために、ランダム置換(random permutation)が好ましいであろう。理想的には、ターゲット上の所与の一エリアを描画する際に計算値の好適な丸め挙動を保証(確保)するためには、N=o(oは連結係数を表す。)である。(クロックサイクルにおける)公称スロット持続時間τ及び指数m、n(即ちy方向に第mショット及びx方向に第nショット)に対応する近似スロット持続時間

によって達成され、夫々の閾値r(この値の上にスロット持続時間は切り上げられる)は
によって選択される。ここで、k=(m mod N)・N+(n mod N)はショットm、nに割り当てられる一次元指数であり、σ(k)は数1、...、Nのセットについての置換(permutation)を表す。図12の(A)は、露光エリア290における「クワッドグリッド」オーバーラッピングショットに割り当てられる(クロックサイクルにおける)(任意的)スロット持続時間291の例示的セットを示す。これらの持続時間値は、上記の式に応じたランダム置換から生成される閾値r(図12の(B))で丸められ、図12(C)に示されているような近似スロット持続時間294を与える。丸めショットのオーバーラッピングエリアに生成される有効スロット持続時間295は、64.37の公称値292とは僅か0.01%だけ相違する64.38である。
【0090】
マルチパス露光によるスロット持続時間の適合化
【0091】
他の実施形態では、本発明は米国特許第9,053,906号に記載された「マルチパス」露光技術と組み合わせられる。本発明者は、マルチパス露光技術を用いたシミュレーション中に、パス(複数)のスロット持続時間の値(複数)と上記のオフセット値の規則的配置から生じる閾(値)の偶発的相関が生じ得ること、従って、「マルチパス」描画で使用される部分グリッドの丸め挙動が完全にデカップル(分離)されるよう閾マップを調節することは有利であり得ることを見出した。これを達成するために、すべての部分グリッドは、数1、...、N/pのセットの互いに異なる置換σ、...、σに割り当てられる。ここで、pは部分グリッドの個数であり、閾値は、上記の方法に応じて指数から得られる。
【0092】
「ダブルパス」(p=2)及び「クワッドグリッド」連結(インターロッキング)露光についての一例を図13に示す。マトリックス200は(4×4の隣接ショットのサンプルの)どのショットがパスA及びパスBにおいて描画されるかを示す。1つの置換(permutation)のみが使用されるとすると、ショット(複数)は(この例ではランダムな順序で)201に示されているような1~N=o=16の指数に割り当てられている。これに対し、2つの異なる置換(各パスに1つずつ)を用いると、(夫々マトリックス200中の「A」又は「B」を含むマトリックス要素から構成される)部分マトリックスG1及びG2は、部分図202に示されているような(再びランダムな順序での)1~N/p=8の指数に割り当てられる。図12について上述したのと同じ方法で、閾値203は指数202から生成されかつ丸めのために使用される。
【0093】
露光インターバル内の不均一スロット持続時間
【0094】
本発明の他の視点によれば、所望の平均スロット持続時間をエミュレートするために、(1つの)露光インターバル内において連続的に現れる露光スロット(複数)の持続時間(複数)を変化することができる。確率的丸めの場合、上記の方法が正確に同じ仕方で適用可能であるが、隣接要素(複数)のためのスロット露光のセットの代わりに、1つの要素の後続のスロット露光(複数)中のスロット露光(複数)が使用される。規則的アプローチの場合、(1つの)露光サイクル内の第l(エル)露光スロットに割り当てられる丸め閾値は、例えば、
によって選択されることができる。ここで、σは数1、...、gの置換(permutation)である。
【0095】
なお、このアプローチは、上述したような露光スロット持続時間の空間的変化と、直接的に、組み合わせることも可能である。
【0096】
より一般化した具体化例では、基底値Tは所定値、例えばスロット持続時間の典型値又は標準値とすることが可能であり、個別例の近似スロット持続時間
は、クロックサイクル持続時間Tgのような、増分時間の複数倍で表される基底値からの偏差として、
のように計算される。ここで、
は整数値への通常の端数切り捨て演算(「床関数(floor)」)を表し、そのようにして得られる
値の集合は時間τの所望の平均を再生(再現)する。換言すれば、そのようにして得られる
の値の集合は組み合わせられて、有効ピクセル露光時間
(ここで、記号Σは寄与露光スロットについての合計を表す)を形成するが、これは、寄与露光スロットの個数で除算されることにより、スロット持続時間τの所望の平均値
を再生(再現)するであろう。この説明は、パラメータの適切な選択/具体化によって、上記の各例を包含する(妥当する)。例えば、オフセット値qを単位幅のインターバルから取られるランダム例として具体化すれば、これは、T=m・Tg(mは適切な非負の整数)についての上記の確率例をエミュレートするであろう。
【0097】
上記の実施形態及び実施例の全部又は一部は以下の付記として記載可能であるが、それらに限定されない。
[付記1]荷電粒子の粒子ビームを用いて、荷電粒子リソグラフィ装置においてターゲットに所望のパターンを露光する方法。
該粒子ビームは、ターゲット上の画像エリア内の複数のピクセルを露光することによって該所望のパターンを描画するために該粒子ビームが貫通通過する複数のブランキングアパーチャから構成されるアパーチャアレイを含むパターン規定装置に指向されかつ照明する。
パターン規定装置では、複数のブランキングアパーチャの各々は、該所望のパターンに応じて、夫々の露光インターバル中にターゲット上に対応するアパーチャ画像を露光するよう選択的に調節可能である。
該所望のパターンの描画プロセス中に一連の露光インターバルが形成され、各露光インターバルにおいてブランキングアパーチャがターゲットに結像されることによって、対応する複数のアパーチャ画像が形成され、但し、アパーチャ画像の位置は露光インターバル中ターゲットに対し相対的に固定された状態に維持されるが、露光インターバルと露光インターバルの間ではアパーチャ画像の位置はターゲットにわたってシフトされることによって、ターゲット上の該画像エリア内において複数のピクセルを露光し、但し、各露光インターバルは所定の持続時間を有する整数個の露光(タイム)スロットを含む。
アパーチャ画像は公称幅を有し、複数のアパーチャ画像はターゲット上で相互にオーバーラップし、そのため、各ピクセルは夫々のピクセルにおいてオーバーラップする複数のアパーチャ画像によって露光され、その結果、ピクセルにおいてオーバーラップするアパーチャ画像の露光(タイム)スロットを寄与露光(タイム)スロットと称すると、複数の寄与露光スロットの持続時間の合計である有効ピクセル露光時間にわたり夫々のピクセルの露光が行われる。
該方法は、同じセットの寄与露光スロット中に露光される画像エリア内の全てのピクセルを含むピクセルグループについて夫々実行される、以下のステップにより露光スロットの持続時間を適合化することを含む:
(i)該ピクセルグループ中のピクセル(複数)についての有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を、該ピクセル(複数)の露光が行われる時間の関数として決定すること、
(ii)該ピクセル(複数)のための寄与露光スロットを決定すること、
(iii)そのようにして決定された寄与露光スロットについての持続時間を、該寄与露光スロットの持続時間の合計が有効ピクセル露光時間の該所望の持続時間に近似する実際の有効露光時間となるよう、計算すること。
上記のステップ(複数)は異なるピクセルグループ毎に繰り返される。
ステップ(iii)において、持続時間は所定のセットの許容持続時間に応じて計算されること、但し、そのようにして計算された持続時間の少なくとも1つは該セットの露光スロットについて選択される他の持続時間とは異なる。
[付記2]上記の方法において、露光スロットの持続時間の適合化は、夫々のグループのすべてのピクセルについてかつ所望のパターンに応じたピクセルの露光に拘わらず一様に実行される。
[付記3]上記の方法において、許容持続時間のセットは離散スケールの持続時間を表し、該離散スケールは基底値を含みかつ該基底値よりも少なくとも一桁だけより小さい時間増分に対応する増分を有し、好ましくは該基底値は画像エリアのすべてのピクセルについて一定である所定の公称露光スロット持続時間に対応する。
[付記4]上記の方法において、許容持続時間のセットは離散スケールの持続時間を実現し、持続時間の連続する値と値の間の増分の大きさはブランキングアパーチャの制御回路のクロックサイクルの持続時間又はその整数倍に対応する。
[付記5]上記の方法において、粒子ビームは荷電粒子リソグラフィ装置の測定装置によってその強度についてモニタされ、夫々の露光スロットの露光の時間における強度の値が生成される。
ステップ(i)では、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を決定することは、該所望の持続時間を強度の値に対し反比例の関係でスケーリングすることを含む。
[付記6]上記の方法において、アパーチャ画像の公称幅は、前記複数のピクセル内の隣接するピクセルとピクセルの位置の間の距離よりも、1より大きいオーバーサンプリング係数だけ、より大きい。
[付記7]上記の方法において、各露光インターバルは複数の連続露光スロットを含み、該複数は2以上であり、好ましくは2の整数倍である。
[付記8]上記の方法において、ステップ(iii)では、
で表される持続時間の各々は、
に応じ、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間τから出発し、基底値Tに加算される所定の時間増分Tの整数倍として計算されること、
ここで、記号
は通常の端数切り捨て演算(「床関数(floor)」)を表し、
は単位インターバルにわたる値のセットを表し、
持続時間
の各々について、値のセット
からの夫々の値が使用される。
[付記9]上記の方法において、
はインターバル(0,1)にわたる疑似ランダムの数のセットである。
[付記10]上記の方法において、
は、好ましくはランダムな(無秩序混合的な:scrambling)態様で再配置された、単位インターバルにおける一定間隔の数のセットである。
[付記11]上記の方法において、ステップ(i)では、有効ピクセル露光時間の所望の持続時間を決定することは、露光の時間の関数として、かつ、ピクセルの位置とは実質的に無関係に実行される。
[付記12]上記の方法において、ステップ(ii)では、露光インターバル内の連続する寄与露光スロットが選択される。
[付記13]上記の方法において、ステップ(ii)では、同じアパーチャ画像ないし同じ数のアパーチャ画像によって全てが露光される異なるピクセル要素に対応する寄与露光スロットが選択される。
【0098】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(「非選択」を含む。)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0099】
更に、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を実施形態及び図示の実施例に限定することは意図していない。
【0100】
更に、上記の各文献の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16