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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240909BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240909BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G03G21/00 520
G03G21/16 120
G03G21/16 133
G03G21/00 530
B41J29/13
G03G21/16 195
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020100037
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021196376
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 真一
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173410(JP,A)
【文献】特開2007-310292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 21/00
B41J 29/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送するシート搬送装置において、
装置本体と、
前記装置本体に対して引き出し方向に引き出し可能な引き出しユニットと、
第1位置に固定されたときは前記引き出しユニットが前記装置本体から引き出されることを規制し、前記第1位置よりも下方の第2位置に固定されたときは前記シート搬送装置が設置される設置面に対向する規制部材と、
前記規制部材を前記第1位置及び前記第2位置のそれぞれに選択的に固定する固定手段と、
前記装置本体に対して開閉可能なドアと、
を備え、
前記ドアは、前記装置本体に装着された前記引き出しユニットを覆う閉位置と、前記引き出しユニットを露出させ、前記引き出しユニットの前記装置本体からの引き出しを許容する開位置と、の間で移動可能であり、
前記規制部材は、前記第2位置において、前記ドアが前記開位置と前記閉位置との間で移動する際の移動軌跡に重なる、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記規制部材は、前記第2位置において、前記設置面に当接する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記第2位置における前記規制部材の前記設置面に対する位置を調整する調整部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記ドアの開閉状態を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づくユーザへの報知を行う報知部と、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記装置本体は、前記設置面に対向する底板を有し、
前記規制部材は、前記第2位置において、前記底板に対して固定される、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記第2位置に位置する前記規制部材と前記設置面との間の距離は、前記底板と前記設置面との間の距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記規制部材は、前記装置本体に対して着脱可能に支持される、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記規制部材は、前記装置本体に対して前記第1位置と前記第2位置との間で回動可能に支持される、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記固定手段は、前記第1位置に前記規制部材を固定する第1ネジと、前記第2位置に前記規制部材を固定する第2ネジと、を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記引き出しユニットは、シートを搬送する搬送ユニットである、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記引き出しユニットは、シートを冷却する冷却ユニットであり、
前記冷却ユニットは、シートを挟んで搬送する第1のベルト及び第2のベルトと、前記第1のベルトに接して配置されたヒートシンクと、を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項12】
前記引き出しユニットは、シートのカールを矯正するデカーラユニットである、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項13】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
請求項1乃至1のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置及びこれを備える画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面の四隅に取り付けられたキャスターと、キャスターの支軸を中心に回動可能に設けられた転倒防止部材と、を備えた画像形成装置が提案されている(特許文献1参照)。この転倒防止部材は、略扇形形状を有しており、画像形成装置の床面に隠れる待機位置と、床面から突出して画像形成装置の転倒を防止する機能位置と、に固定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-252475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の転倒防止部材は、使用しないときには床面に隠れる待機位置に収納されているため、必要な時に作業者が転倒防止部材を機能位置にセットすることを忘れてしまう場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、規制部材のセット忘れを低減可能なシート搬送装置及びこれを備えた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置において、装置本体と、前記装置本体に対して引き出し方向に引き出し可能な引き出しユニットと、第1位置に固定されたときは前記引き出しユニットが前記装置本体から引き出されることを規制し、前記第1位置よりも下方の第2位置に固定されたときは前記シート搬送装置が設置される設置面に対向する規制部材と、前記規制部材を前記第1位置及び前記第2位置のそれぞれに選択的に固定する固定手段と、前記装置本体に対して開閉可能なドアと、を備え、前記ドアは、前記装置本体に装着された前記引き出しユニットを覆う閉位置と、前記引き出しユニットを露出させ、前記引き出しユニットの前記装置本体からの引き出しを許容する開位置と、の間で移動可能であり、前記規制部材は、前記第2位置において、前記ドアが前記開位置と前記閉位置との間で移動する際の移動軌跡に重なる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、規制部材のセット忘れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係る画像形成システムを示す全体概略図。
図2】(a)は冷却ユニットを示す斜視図、(b)は上ユニットが開かれた状態の冷却ユニットを示す斜視図。
図3】(a)は冷却装置を示す斜視図、(b)は(a)の破線Aを示す拡大斜視図。
図4】冷却装置を示す斜視図。
図5】(a)は転倒防止位置に位置する固定部材を示す斜視図、(b)は固定部材を示す正面図。
図6】冷却ユニットが引き出された状態の冷却装置を示す斜視図。
図7】固定部材とドアとの関係を示す平面図。
図8】第2の実施の形態に係る画像形成システムを示す全体概略図。
図9】(a)はデカーラ装置を示す斜視図、(b)は上ユニットが開かれた状態のデカーラ装置を示す斜視図。
図10】(a)は固定部材を回動させる様子を示す斜視図、(b)はデカーラユニットが引き出された状態のデカーラ装置を示す斜視図。
図11】転倒防止位置に位置する固定部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態>
〔全体構成〕
第1の実施の形態に係る画像形成システム100は、図1に示すように、中間転写ベルト70を用いた中間転写タンデム方式のフルカラーレーザープリンタであるプリンタ101と、プリンタ101に接続される冷却装置201と、を有している。
【0010】
画像形成装置としてのプリンタ101は、パーソナルコンピュータ等の情報端末やイメージリーダ等の外部装置入力された画像信号に基づきシートSにトナー像を形成する。プリンタ101には、記録媒体として用紙及び封筒等の紙、光沢紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート(OHT)等のプラスチックフィルム、並びに布等の様々なシートを用いることができる。
【0011】
プリンタ101は、後述するシート搬送系と、画像形成部7と、を有している。画像形成部7は、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックのトナー像を形成する4つのプロセスユニット10Y,10M,10C,10Kと、中間転写体である中間転写ベルト70と、を備えている。プロセスユニット10Y~10Kは、それぞれ感光体である感光ドラムを有する電子写真ユニットである。
【0012】
プロセスユニット10Y~10Kは、現像に用いるトナーの色が異なる以外は同様に構成されるため、イエローのプロセスユニット10Yを例にプロセスユニットの構成及びトナー像の形成プロセス(画像形成動作)について説明する。プロセスユニット10Yは、感光ドラム1の他に、帯電器2、レーザ露光装置3、現像器4及びドラムクリーナ5を有する。感光ドラム1は、外周部に感光層を有するドラム状の感光体であり、中間転写ベルト70の回転方向に沿って回転する。感光ドラム1の表面は、帯電器2から電荷を供給されることで帯電する。
【0013】
レーザ露光装置3は、画像情報に応じて変調されたレーザ光Lを発し、ミラー等を適宜経由して感光ドラム1を走査することで、感光ドラム1の表面に静電潜像を描き込む。現像器4は、トナーを含む現像剤を収容し、感光ドラム1にトナーを供給することで静電潜像をトナー像に現像する。感光ドラム1に形成されたトナー像は、一次転写装置である一次転写ローラ6と中間転写ベルト70との間のニップ部である一次転写部において中間転写ベルト70に一次転写される。転写後に感光ドラム1に残留した残トナーは、ドラムクリーナ5によって除去され、不図示のトナータンクへ回収される。
【0014】
中間転写ベルト70は、ローラ71,72及び二次転写内ローラ73等に巻き掛けられ回転駆動される。上述の画像形成動作は各プロセスユニット10Y~10Kにおいて並行して進められ、4色のトナー像が互いに重なるように多重転写されることで、中間転写ベルト70にフルカラーのトナー像が形成される。このトナー像は、中間転写ベルト70に担持されて二次転写部に搬送される。二次転写部は、転写部としての二次転写ローラ8と二次転写内ローラ73の間のニップ部として構成され、二次転写ローラ8にトナーの帯電極性とは逆極性のバイアス電圧が印加されることでトナー像がシートSに二次転写される。転写後に中間転写ベルト70に残留した残トナーは、ベルトクリーナによって除去される。
【0015】
トナー像を転写されたシートSは、定着前搬送部14により定着装置15へと受け渡される。定着装置15は、シートSを挟持して搬送する定着ローラ対15a,15bと、ハロゲンヒータ等の熱源と、を有し、シートSに担持されたトナー像に圧力及び熱を加える。これにより、トナー粒子が溶融・固着して、シートSに定着した定着画像が得られる。
【0016】
次に、シートSを給送し、画像が形成されたシートSを冷却装置201に排出するシート搬送系の構成及び動作について説明する。シート搬送系は、大まかに給送部12a,12bと、レジストレーション搬送部13と、排出ローラ対17と、定着前搬送部14と、両面搬送部18と、を含む。
【0017】
給送部12a,12bは、シートSを収容するカセット11a,11bからそれぞれシートSを給送する。また、給送部12a,12bは、シートを1枚ずつに分離してレジストレーション搬送部13にシートSを搬送する。
【0018】
給送部12a,12bから給送されたシートSは、レジストレーション搬送部13において斜行が補正される。そして、シートSは、二次転写部での転写タイミングに同期するようにレジストレーション搬送部13によって搬送される。二次転写部においてトナー像を転写され、定着装置15によって画像の定着が行われたシートSは、シートSの搬送経路を経路切換部16に搬送される。シートSに対する画像形成が完了している場合には、シートSは、経路切換部16によって排出ローラ対17に向けて搬送され、排出ローラ対17によって冷却装置201へ排出される。
【0019】
シートSの裏面に画像を形成する場合、シートSは両面搬送部18によってシートSをレジストレーション搬送部13に搬送する。そして、シートSは、裏面に画像を形成された後、冷却装置201へと排出される。
【0020】
[冷却装置]
シート搬送装置としての冷却装置201は、装置本体201Aと、装置本体201Aに対して引き出し方向B(図6参照)に引き出し可能な引き出しユニットとしての冷却ユニット21と、有する。引き出し方向Bは、冷却装置201の奥側から手前側に向かう方向である。装置本体201Aは、シートSを搬送する入口ローラ対20と、出口ローラ対30と、を有する。冷却ユニット21は、下搬送ベルト22aを備えた下ユニット22と、上搬送ベルト23a及びヒートシンク24を備えた上ユニット23と、から構成される。ヒートシンク24は、上搬送ベルト23aの内面側に接触する。
【0021】
プリンタ101の排出ローラ対17から冷却装置201に受け渡されたシートSは、入口ローラ対20によって冷却ユニット21へ搬送される。そして、シートSは、下搬送ベルト22a及び上搬送ベルト23aによって形成されたニップ搬送路21aを通過する際に冷却され、出口ローラ対30によって排出される。
【0022】
次に、冷却ユニット21の構成について詳しく説明する。下ユニット22は、図2(a)に示すように、下ユニットフレーム22bを有し、下ユニットフレーム22bには、下搬送ベルト22aの懸架ローラが回転可能に支持される。同様にして、上ユニット23は、上ユニットフレーム23bを有し、上ユニットフレーム23bには、上搬送ベルト23aの懸架ローラが回転可能に支持されると共に、ヒートシンク24が支持される。
【0023】
下ユニットフレーム22b及び上ユニットフレーム23bは、それぞれ下ユニットヒンジ部22c及び上ユニットヒンジ部23cを有し、下ユニットヒンジ部22c及び上ユニットヒンジ部23cは、ヒンジ軸部29を介して互いに回動可能に連結される。
【0024】
また、下ユニット22には、ラッチ軸22dが設けられ、上ユニット23には、ラッチ軸22dに係合可能なフック部材23dと、フック部材23dに連動する解除レバー25と、が設けられている。上ユニット23は、下搬送ベルト22a及び上搬送ベルト23aがニップを形成した状態で、フック部材23dがラッチ軸22dに係合することで、下ユニット22に対して固定される。ニップ搬送路21aを開放する場合には、ユーザは、解除レバー25を操作することでフック部材23dとラッチ軸22dとの係合を解除し、図2(b)に示すように、上ユニット23を上方に回動させる。
【0025】
図3(a)に示すように、冷却装置201は、装置本体201Aに対して開閉可能なドア202を有している。ドア202は、装置本体201Aに装着された冷却ユニット21を覆う閉位置と、冷却ユニット21を冷却装置201の外部に露出させ、冷却ユニット21の装置本体201Aからの引き出しを許容する開位置と、の間で移動可能である。
【0026】
冷却ユニット21の下ユニット22は、装置本体201Aのフレームに設けられたレール204,205に対して引き出し可能に支持されている。冷却ユニット21は、装置本体201Aに装着された状態で、規制部材としての固定部材26によって装置本体201Aに固定される。この時、固定部材26は、図3(b)に示すように、下ユニットフレーム22b及びレール204に、それぞれネジ27a,27bによって固定されている。図3(b)は、図3(a)の破線Aで囲まれた部分を拡大した拡大斜視図である。
【0027】
例えば、ニップ搬送路21aにおいてシートSがジャムしてしまった時には、ユーザは、図4に示すように、冷却ユニット21が装置本体201Aに固定された状態のまま、上ユニット23を下ユニット22に対して上方に回動させる。これにより、ニップ搬送路21aを開放し、ニップ搬送路21aにてジャムしたシートSを除去することができる。
【0028】
[冷却ユニットのメンテナンス]
一方で、冷却ユニット21のメンテナンスを行う時には、ユーザ又はサービスマン(以下、単にユーザという)は、冷却ユニット21を装置本体201Aから引き出してメンテナンス作業を行う。
【0029】
まず、ユーザは、図5(a)(b)に示すように、ドア202を閉位置から開位置に開き、冷却ユニット21を露出させる。次に、ユーザは、冷却ユニット21の下ユニット22を固定している固定部材26を外し、装置本体201Aの底板206に固定部材26を固定する。底板206は、床面Fに対向しており、後述する転倒防止位置に位置する固定部材26と床面Fとの間の距離d1は、底板206と床面Fとの間の距離d2よりも短く設定される。なお、冷却装置201は、底板206に支持される複数のキャスター35によって、床面Fに支持される。
【0030】
固定部材26は、鉛直方向に延びる長孔26aと、冷却装置201の床面Fに対向する接地部26bを有している。そして、固定部材26は、長孔26aを貫通するネジ28が底板206に固定されることで、底板206の前面206aに対して転倒防止位置で固定される。転倒防止位置に位置する固定部材26は、冷却装置201の前方側、すなわち引き出し方向Bにおける下流側に位置する。
【0031】
固定部材26は、長孔26aを貫通するネジ28の位置を調整することで、高さ調整可能であり、好ましくは、接地部26bが、冷却装置201が設置される設置面としての床面Fに接地するように底板206に対して固定される。すなわち、調整部としての長孔26aは、固定部材26の床面Fに対する位置を調整する。このように、固定部材26を高さ調整可能に構成することで、例えば床面Fに凹凸やうねりがあったとしても、固定部材26の接地部26bを床面Fに対して確実に接地することができる。
【0032】
次に、ユーザは、図6に示すように、冷却ユニット21を引き出し方向Bにおける所定位置まで引き出し、冷却ユニット21のメンテナンスを行う。ここで、冷却ユニット21の引き出し方向Bにおける移動に伴って、冷却装置201は引き出し方向Bにおける下流側、すなわち装置手前側への転倒を促すモーメントCが増加する。固定部材26は、引き出し方向Bにおいて冷却装置201の装置本体201Aよりも下流で床面Fに当接することでモーメントC、すなわち冷却装置201の荷重を支持し、冷却装置201の転倒を防止する転倒防止部材として機能する。
【0033】
このように、固定部材26は、図3(a)に示す第1位置としての規制位置と、図5(a)(b)に示す第2位置としての転倒防止位置と、に位置決め可能である。言い換えれば、固定部材26は、冷却装置201の装置本体201Aに対して着脱可能に支持される。そして、固定部材26は、規制位置において、冷却ユニット21が装置本体201Aから引き出されることを規制し、転倒防止位置において床面Fに対向する。また、転倒防止位置は、規制位置よりも下方の位置である。
【0034】
固定部材26は、冷却ユニット21のメンテナンス作業の流れにおいて、冷却ユニット21を冷却装置201の装置本体201Aから引き出す前に必ず規制位置から取り外す必要がある部品である。このため、冷却ユニット21をメンテナンスする際に、固定部材26の規制位置からの取り外しを忘れることがない。そして、取り外された固定部材26は、作業の流れにおいて、底板206に対して転倒防止位置に取り付けられ、冷却装置201の転倒を低減することができる。
【0035】
冷却ユニット21のメンテナンス作業が完了すると、ユーザは、冷却ユニット21を装置本体201Aに対して装着位置に挿入し、転倒防止位置に位置する固定部材26を、再び規制位置に付け直す。
【0036】
図7は、固定部材26を転倒防止位置に取り付けた状態を示す平面図である。固定部材26を転倒防止位置に固定したままだと、ドア202は、固定部材26に干渉し、閉位置まで閉じきることができない。すなわち、転倒防止位置に位置する固定部材26がドア202に干渉した状態では、ドア202の先端部202aと底板206の前面206aとの間の距離は、距離Eとなる。距離Eは、閉位置に位置するドア202と前面206aとの間の距離Dよりも大きい。言い換えれば、固定部材26は、転倒防止位置において、ドア202が開位置と閉位置との間で移動する際の移動軌跡に重なる。なお、固定部材26は、規制位置において、ドア202が開位置と閉位置との間で移動する際の移動軌跡に重ならないことはもちろんである。
【0037】
冷却装置201は、ドア202の開閉を検出する不図示の検出部を有しており、ドア202が閉位置以外の位置に位置した状態、すなわちドア202が開いた状態では、不図示の報知部によって報知されると共に、冷却装置201の動作が禁止される。報知部は、例えば各種の設定やメッセージを表示可能な操作部や、光や音によってユーザに警告する警告部を含む。これにより、固定部材26を転倒防止位置から規制位置に戻し忘れることを防止できる。
【0038】
以上のように、固定部材26は、冷却ユニット21を冷却装置201の装置本体201Aから引き出す前に必ず規制位置から取り外す必要があるため、冷却ユニット21をメンテナンスする際に、固定部材26の規制位置からの取り外しを忘れることがない。そして、ユーザは、取り外した固定部材26を確実に認識するため、固定部材26の転倒防止位置へのセット忘れを低減することができ、冷却装置201の転倒を低減できる。
【0039】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態の冷却装置201に代えてデカーラ装置401を適用すると共に、固定部材の移動方法を変更して構成したものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0040】
本実施の形態に係る画像形成システム300は、図8に示すように、プリンタ101と、プリンタ101に接続されるデカーラ装置401と、を有している。プリンタ101において画像が形成されたシートSは、排出ローラ対17によってデカーラ装置401に排出され、デカーラ装置401においてカールが矯正される。
【0041】
[デカーラ装置]
次に、デカーラ装置401について詳述する。シート搬送装置としてのデカーラ装置401は、装置本体401Aと、装置本体401Aに対して引き出し方向B(図9(a)参照)に引き出し可能な引き出しユニットとしてのデカーラユニット40と、を有する。引き出し方向Bは、デカーラ装置401の奥側から手前側に向かう方向である。デカーラユニット40は、シートSを搬送する入口ローラ対41及び出口ローラ対44と、シートSのカールを矯正するデカールローラ対42,43と、を有している。
【0042】
デカールローラ対42は、スポンジローラ42a及びハードローラ42bを有し、デカールローラ対43は、スポンジローラ43a及びハードローラ43bを有している。スポンジローラ42a,43aの外径は、例えば金属材料により構成されるハードローラ43b,43bの外径よりも大きい。
【0043】
スポンジローラ42a,43aは、搬送路51を挟んで互いに反対側に配置され、同様にハードローラ43b,43bも搬送路51を挟んで互いに反対側に配置されている。このため、デカールローラ対42が矯正するカールの方向と、デカールローラ対43が矯正するカールの方向と、は逆方向である。そして、デカーラユニット40は、デカールローラ対42,43のニップ圧を変更する不図示のニップ圧変更部を有し、シートSのカールの大きさや向きに応じてデカールローラ対42,43のニップ圧を変更する。
【0044】
デカーラユニット40の各ローラ対及び周辺の搬送ガイドは、搬送路51を境に、下ユニット40aと上ユニット40bに分割されている。下ユニット40a及び上ユニット40bは不図示のヒンジ部を介して互いに回動自在に連結されている。下ユニット40aは、装置本体401Aのフレーム402に対して、スライドレール45a,45bを介して、スライド可能(引き出し可能)に支持される。
【0045】
装置本体401Aは、図9(a)に示すように、フレーム402に設けられた支持部402aと、支持部402aに設けられた支点軸403と、支点軸403を中心に支持部402aに対して回動可能に支持される固定部材46と、を有している。
【0046】
規制部材としての固定部材46は、図9(a)に示す第1位置としての規制位置と、図10(b)に示す第2位置としての転倒防止位置と、に位置決め可能である。そして、固定部材46は、規制位置において、デカーラユニット40が装置本体401Aから引き出されることを規制し、転倒防止位置において床面Fに対向する。また、転倒防止位置は、規制位置よりも下方の位置である。
【0047】
固定部材46は、規制位置において、フレーム402に設けられた固定部402bに対して、ネジ47によって固定される。これにより、デカーラユニット40は、装置本体401Aに装着された状態で、装置本体401Aからの引き出しが規制される。
【0048】
例えば、搬送路51においてシートSがジャムしてしまった時には、ユーザは、図9(b)に示すように、デカーラユニット40が装置本体401Aに位置決めされた状態のまま、上ユニット40bを下ユニット4oaに対して上方に回動させる。これにより、搬送路51を開放し、搬送路51にてジャムしたシートSを除去することができる。
【0049】
[デカーラユニットのメンテナンス]
一方で、デカーラユニット40のメンテナンスを行う時には、ユーザは、デカーラユニット40を装置本体401Aから引き出してメンテナンス作業を行う。まず、ユーザは、図10(a)に示すように、ドア202を閉位置から開位置に開き、デカーラユニット40を露出させる。次に、ユーザは、固定部材46を規制位置で固定するネジ47を取り外し、固定部材46を規制位置から転倒防止位置に矢印G方向に回動させる。
【0050】
固定部材46は、図11に示すように、支点軸403が貫通する長孔46aと、ネジ48が貫通可能な長孔46bと、床面Fに対向する接地部46cと、を有している。長孔46a,46bは、固定部材46が転倒防止位置に位置する状態において、鉛直方向に延びている。そして、固定部材46は、長孔46bを貫通するネジ48がデカーラ装置401の底板404に固定されることで、底板404の前面404aに対して転倒防止位置で固定される。転倒防止位置に位置する固定部材46は、デカーラ装置401の前方側、すなわち引き出し方向Bにおける下流側に位置する。底板404は、床面Fに対向しており、転倒防止位置に位置する固定部材46と床面Fとの間の距離は、底板404と床面Fとの間の距離よりも短く設定される。
【0051】
固定部材46は、支点軸403に対する固定部材46の位置を調整することで、高さ調整可能であり、好ましくは、接地部46cが床面Fに接地するように底板404に対して固定される。すなわち、支点軸403が貫通する調整部としての長孔46aは、固定部材46の床面Fに対する位置を調整する。このように、固定部材46を高さ調整可能に構成することで、例えば床面Fに凹凸やうねりがあったとしても、固定部材46の接地部46cを床面Fに対して確実に接地することができる。
【0052】
次に、ユーザは、図10(b)に示すように、デカーラユニット40を引き出し方向Bにおける所定位置まで引き出し、デカーラユニット40のメンテナンスを行う。ここで、デカーラユニット40の引き出し方向Bにおける移動に伴って、デカーラ装置401は引き出し方向Bにおける下流側、すなわち装置手前側への転倒を促すモーメントCが増加する。固定部材46は、引き出し方向Bにおいてデカーラ装置401の装置本体401Aよりも下流で床面Fに当接する。そして、固定部材46は、床面Fに当接することでモーメントC、すなわちデカーラ装置401の荷重を支持し、デカーラ装置401の転倒を防止する転倒防止部材として機能する。
【0053】
デカーラユニット40のメンテナンス作業が完了すると、ユーザは、デカーラユニット40を装置本体401Aに対して装着位置に挿入し、転倒防止位置に位置する固定部材46を、再び規制位置に位置決めする。
【0054】
固定部材46は、第1の実施の形態と同様に、規制位置において、ドア202が開位置と閉位置との間で移動する際の移動軌跡に重ならず、転倒防止位置において、ドア202の上記移動軌跡に重なる。このため、固定部材46を転倒防止位置から規制位置に戻し忘れることを防止できる。
【0055】
以上のように、固定部材46は、デカーラユニット40を装置本体401Aから引き出す前に必ず規制位置から転倒防止位置へ回動させる必要があるため、デカーラユニット40をメンテナンスする際に、固定部材46を回動し忘れることがない。そして、ユーザは、回動させた固定部材46を確実に認識するため、固定部材46の転倒防止位置へのセット忘れを低減することができ、デカーラ装置401の転倒を低減できる。
【0056】
また、固定部材46は、支点軸403を中心に回動可能に支持されているので、規制位置と転倒防止位置との間の移動が容易であり、メンテナンス性を向上できる。また、固定部材46を規制位置と転倒防止位置との間で移動させても、固定部材46を紛失することがない。
【0057】
<その他の実施形態>
なお、既述のいずれの形態においても、固定部材26,46は、転倒防止位置において床面Fに接地することが好ましいが、これに限定されない。例えば、冷却装置201又はデカーラ装置401の転倒を防止できるのであれば、固定部材26、46と床面Fとの間に隙間があってもよい。
【0058】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、装置本体からユニットを引き出す装置として冷却装置201及びデカーラ装置401を例に説明したが、これに限定されない。例えば、装置本体から引き出し可能に構成されシートを収容するスタッカーやカセットを備えた装置に本発明を適用してもよい。また、いずれの装置に対して固定部材26,46のどちらを適用するかは任意であり、例えば第1の実施の形態に固定部材46を適用し、第2の実施の形態に固定部材26を適用してもよい。
【0059】
また、第2の実施の形態では、固定部材46は規制位置と転倒防止位置との間で回動可能に構成されていたが、これに限定されない。例えば、固定部材46は、規制位置と転倒防止位置との間でスライド可能に設けられていてもよい。
【0060】
また、既述のいずれの形態においても、固定部材26,46はネジによって固定されているが、これに限定されない。例えば、固定部材26,46は、スナップフィットや磁石等によって位置決めされてもよい。
【0061】
また、既述のいずれの形態においても、冷却装置201及びデカーラ装置401はプリンタ101に直接接続されているが、これら冷却装置201及びデカーラ装置401と、プリンタ101と、の間に他の装置が介在していてもよい。
【0062】
また、既述のいずれの形態においても、電子写真方式のプリンタ101を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ノズルからインク液を吐出させることでシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置を有する画像形成システムにも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
21,40:引き出しユニット(冷却ユニット、デカーラユニット)/26,46:規制部材(固定部材)/26a,46a:調整部(長孔)/100:画像形成システム/101:画像形成装置(プリンタ)/201,401:シート搬送装置(冷却装置、デカーラ装置)/201A,401A:装置本体/202:ドア/206,404:底板/B:引き出し方向/d1,d2:距離/F:設置面(床面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11