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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】需給監視装置、需給調整装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240909BHJP
   H02J 3/24 20060101ALI20240909BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240909BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/24
H02J3/46
H02J3/00 170
H02J13/00 311R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020112427
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011353
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】三好 晴樹
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-089175(JP,A)
【文献】特開2020-039222(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/24
H02J 3/46
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の複数の調整電源の出力配分パターンを定める需給監視装置であって、
出力配分指令値に対してより安価な、初期段階から中間段階を経て最終段階に至るまでの出力持替処理における各段階における各調整電源の出力と、コストを含む、複数の出力配分パターンを決定する出力配分パターン決定部と、前記出力配分パターン決定部からの前記各段階における出力配分パターンの夫々を基に電力系統の系統解析を実施する系統解析部と、前記系統解析部における系統解析の結果として前記各段階における前記出力配分パターンの時の電力系統の安定性を判定する安定性判定部とを備え、電力系統の複数の調整電源の前記各段階における出力配分パターンとして、電力系統の安定性の制約を満たした上で最経済の出力配分を得ることを特徴とする需給監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の需給監視装置であって、
前記系統解析部における系統解析により、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算の少なくとも1つ以上を計算することを特徴とする需給監視装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の需給監視装置であって、
前記安定性判定部では、安定性として過負荷、電圧逸脱、同期不安定、電圧不安定、調整力不足の少なくとも1つ以上について、安定性を判定することを特徴とする需給監視装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の需給監視装置であって、
前記出力配分パターン決定部は、複数の調整電源のうちコストの観点から選択した調整電源による出力配分を理想的なメリットオーダーに応じた出力配分とし、理想的なメリットオーダーに応じた出力配分から乖離した場合に、理想的なメリットオーダーに含まれていない調整電源を含めて、コストを考慮しながら出力配分パターンを決定することを特徴とする需給監視装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の需給監視装置であって、
前記出力配分パターン決定部は、安価な調整電源の出力が、高価な調整電源の出力より小さい場合に、コストを考慮しながら出力配分パターンを決定することを特徴とする需給監視装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の需給監視装置であって、
前記出力配分パターン決定部は、メリットオーダー方式で出力配分された出力配分指令値と、任意出力配分指令値のうち、どちらか一つの値または両方の値を基に出力配分パターンを決定することを特徴とする需給監視装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の需給監視装置であって、
複数の出力配分パターンとその安定性結果を基に出力再配分指令値を決定する出力再配分決定部とを更に備えることで、安定性制約を満たした上でより安価な出力配分パターンを適用できることを特徴とする需給監視装置。
【請求項8】
請求項7に記載の需給監視装置であって、
需給アンバランスを入力し、各調整電源への出力配分を決定する出力配分決定部を備え、前記出力配分決定部の結果を前記出力配分パターン決定部に出力し、前記出力配分パターン決定部はより安価な複数の出力配分パターンを決定することを特徴とする需給監視装置。
【請求項9】
請求項7に記載の需給監視装置であって、
出力再配分決定部は、複数の出力配分パターンとその安定性結果を入力とし、安定性制約を満たした上で最経済である出力再配分指令値を選択することで、その結果を出力再配分指令値データベースに出力することを特徴とする需給監視装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の需給監視装置に出力手段を備え、電力系統の複数の調整電源に通信手段を介して出力指令を与えるようにされた需給調整装置であって、
前記出力手段は、電力系統の安定性制約を満たした上で最経済の出力配分である1つの出力配分パターンを選択し、通信手段を介して複数の調整電源に対して出力指令を与えることを特徴とする需給調整装置。
【請求項11】
計算機を用いて、電力系統の複数の調整電源の出力配分パターンを定める需給監視方法であって、
計算機は、出力配分指令値に対してより安価な、初期段階から中間段階を経て最終段階に至るまでの出力持替処理における各段階における各調整電源の出力と、コストを含む、複数の出力配分パターンを決定し、前記各段階における出力配分パターンの夫々を基に電力系統の系統解析を実施し、前記系統解析の結果として前記各段階における出力配分パターンの時の電力系統の安定性を判定し、電力系統の複数の調整電源の前記各段階における出力配分パターンとして、電力系統の安定性の制約を満たした上で最経済の出力配分を得ることを特徴とする需給監視方法。
【請求項12】
請求項11に記載の需給監視方法で得られた出力配分パターンを、電力系統の複数の調整電源に出力指令として与えるようにされた需給調整方法であって、
電力系統の安定性制約を満たした上で最経済の出力配分である1つの出力配分パターンを選択し、複数の調整電源に対して出力指令として与えることを特徴とする需給調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の需給監視装置、需給調整装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統において負荷変動(再生可能エネルギーの出力変動を含む)などにより需給アンバランスが発生すると、周波数変動が発生する。現在、系統運用者は中央給電指令所で経済負荷配分(ELD:Economic Load Dispatch)と負荷周波数制御(LFC:Load Frequency Control)を組み合わせて、調整電源に出力配分することで、電力供給エリアの需給バランスを調整している。なお、本明細書では、需給調整における出力配分の配分先を調整電源と言う。調整電源は、発電機、蓄電池、デマンドレスポンスの少なくともいずれか1つから選択することができる。
【0003】
経済負荷配分ELDは、十数分程度以上の負荷変動に対して、燃料費などを考慮して、負荷に追従するように各調整電源の出力配分を決める機能である。負荷周波数制御LFCは、数分~十数分程度の負荷に対する変動量を計算し、この変動量に追従する発電量を各調整電源に指令することで、系統周波数を許容範囲に抑制する機能である。
【0004】
また、調整力の取引を行う需給調整市場が創設されると、系統運用者は、この需給調整市場において調整力を調達することになる。その運用においては、メリットオーダーに基づいて調整力を発動する仕組みが設けられる可能性がある。メリットオーダーによる出力配分では、コストに基づく優先順位を基に調整電源に出力を配分する。調整力の上げ方向についてはコストの安い順に出力を配分し、調整力の下げ方向についてはコストの高い順に出力を配分する。
【0005】
図1に、メリットオーダーに応じた出力配分に基づく調整電源ごとの出力配分の一例を示す。但しこのとき、各調整電源G(GAからGE)の調整コストMA~MEは、MA<MB<MC<MD<MEであるものとする。この例は、出力配分可能上限値を30とする各調整電源G(GAからGE)に対して、上げ側の調整力の合計値80を配分するイメージである。この上げ側の調整力の配分例ではまず、調整コストが最も安い調整電源GAに出力配分可能上限値である30を割り当てる。次に、調整コストが2番目に安い調整電源GBに出力配分可能上限値である30を割り当てる。最後に、調整コストが2番目に安い調整電源GCに20を割り当てる。
【0006】
この時、需給のバランスだけでなく、電力系統の安定性についても考慮して出力配分されることが想定される。電力系統を安定的に運用するためには、過負荷、電圧逸脱、電圧安定性、同期安定性、調整力確保などの各種制約を解消する必要がある。このような制約違反とならないように、メリットオーダーによる配分から出力を持替えることで、経済性は犠牲になるが、制約違反が起こらないように運用することが通常である。
【0007】
つまり電力系統を安定性の制約を考慮した結果、図1のようなメリットオーダーに応じた出力配分にならない可能性がある。図2は、メリットオーダー順となっていない調整電源の配分例として、調整電源GAに30、調整電源GBに5、調整電源GCに25、調整電源GDに20が配分された例を示している。
【0008】
安定性の一つ目の制約として、過負荷について説明する。過負荷とは、潮流が送電線の容量を超過することである。図3に過負荷となった送電線の例を示す。この送電系統は調整電源G(GAからGD)が図示のように接続されており、上図は調整電源GBから負荷1への方向の潮流が小さい例を示している。また下図は、調整電源GDの出力が増加することにより負荷1への方向の当該潮流が大きくなった例である。なお、調整電源の出力を変更するなどにより、過負荷が起こらないように運用している。
【0009】
安定性の二つ目の制約として、電圧逸脱について説明する。電圧逸脱とは、各ノードの電圧が上限値または下限値を逸脱することである。図3では、負荷3が接続されたノードが電圧逸脱(電圧の下限値を逸脱)となった例を示している。なお、無効電力のバランスを適正に調整するなどにより、電圧逸脱が起こらないように運用している。
【0010】
安定性の三つ目の制約として、電圧安定性について説明する。電圧安定性とは、負荷の増加、調整電源や変電設備の停止などの擾乱時に、電圧を安定に維持する能力である。電源の遠隔化や偏在化による長距離にわたる大電力送電と無効電力損失の増加および、負荷特性の変化(定電力負荷の増加)などにより、電圧安定性が問題となる。なお、電圧・無効電力を制御する同期調相機や静止型無効電力補償装置を設置し、電圧安定性を維持している。
【0011】
安定性の四つ目の制約として、同期安定性について説明する。同期安定性とは、調整電源の停止などの擾乱時に、調整電源間の同期を安定に維持する能力である。落雷などが原因で電力系統に故障が発生すると、一部の回転機型調整電源において他の調整電源に対して回転が加速する。加速した調整電源の基準調整電源に対する内部相差角が他の調整電源と比較して大きくなり、調整電源間の同期が維持できなくなる。なお、加速した調整電源を系統から切り離し、加速する調整電源が増えないようすることで、同期安定性を維持している。
【0012】
安定性の五つ目の制約として、調整力確保について説明する。調整力とは、上げ方向および下げ方向に供給または需要を変更できる能力である。この調整力を需要予測誤差、時間内変動、電源脱落などに対応できるように確保しておく必要がある。
【0013】
電力系統の需給調整方法として、特許文献1に開示された技術がある。特許文献1によると、経済負荷配分LFCだけではなく負荷周波数制御ELDも踏まえた上でメリットオーダーによる需給調整を可能とし、調整力調達時の公平性および透明性を確保すると共に、優れた需給制御性能を発揮する電力需給制御システム、プログラムおよび方法を提供すると記載されている。
【0014】
また、電力系統の需給調整方法として、特許文献2に開示された技術がある。特許文献2によると、並列バンク群の変圧器タップ比および調相設備投入量のいずれか一方または両方の制約について適切な定式化を図り最適潮流計算に組み入れることにより、計算時間を短縮化しつつ、目的関数がどのようなものであっても最適潮流計算結果として実際の運用に則した妥当な解を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2019-187099号公報
【文献】特許5077316号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1では、メリットオーダーによる出力配分のみを実施する場合に、電力系統の安定性の各種制約を満たせない可能性がある。
【0017】
また、特許文献2では、メリットオーダー方式による出力配分に言及していないが、最適潮流計算によって、電力系統の安定性について制約違反とならないように計算される。過負荷などの電力安定性を満たすことができるが、それが安定性の制約を満たした上で最経済な出力配分であるか、説明できない可能性がある。
【0018】
以上のことから本発明においては、出力配分が安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であるかについての妥当性を評価できるとともに、より安価な出力配分パターンを適用できる電力系統の需給監視装置、需給調整装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上のことから本発明においては「電力系統の複数の調整電源の出力配分パターンを定める需給監視装置であって、出力配分指令値に対してより安価な複数の出力配分パターンを決定する出力配分パターン決定部と、出力配分パターン決定部からの複数の出力配分パターンの夫々を基に電力系統の系統解析を実施する系統解析部と、系統解析部における系統解析の結果として複数の出力配分パターンの時の電力系統の安定性を判定する安定性判定部とを備え、電力系統の複数の調整電源の出力配分パターンが電力系統の安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であることについての妥当性評価を可能とすることを特徴とする需給監視装置」としたものである。
【0020】
また本発明においては「需給監視装置に出力手段を備え、電力系統の複数の調整電源に通信手段を介して出力指令を与えるようにされた需給調整装置であって、出力手段は、電力系統の安定性制約を満たした上で最経済の出力配分である1つの出力配分パターンを選択し、通信手段を介して複数の調整電源に対して出力指令を与えることを特徴とする需給調整装置」としたものである。
【0021】
また本発明においては「電力系統の複数の調整電源の出力配分パターンを定める需給監視方法であって、出力配分指令値に対してより安価な複数の出力配分パターンを決定し、複数の出力配分パターンの夫々を基に電力系統の系統解析を実施し、系統解析の結果として複数の出力配分パターンの時の電力系統の安定性を判定し、電力系統の複数の調整電源の出力配分パターンが電力系統の安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であることについての妥当性評価を可能とすることを特徴とする需給監視方法」としたものである。
【0022】
また本発明においては「需給監視方法で得られた出力配分パターンを、電力系統の複数の調整電源に出力指令として与えるようにされた需給調整方法であって、電力系統の安定性制約を満たした上で最経済の出力配分である1つの出力配分パターンを選択し、複数の調整電源に対して出力指令として与えることを特徴とする需給調整方法。」としたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、出力配分が安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であるかについての妥当性を評価できるとともに、より安価な出力配分パターンを適用できることにある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】メリットオーダーに応じた出力配分の一例を示す図。
図2】電力系統を安定性の制約を考慮した結果、メリットオーダーに応じた出力配分とならない一例を示す図。
図3】過負荷と電圧逸脱となった電力系統の例を示す図。
図4】実施例1に係る電力系統の需給監視装置のハードウェア構成を示すブロック図。
図5】実施例1に係る需給監視装置の機能的な構成を示すブロック図。
図6図5の需給監視装置の処理を示すフローチャート。
図7】出力配分パターン自動決定の第1の例を示すフローチャート。
図8】出力配分パターン自動決定の第1の例の処理イメージを示す図。
図9】出力配分パターン自動決定の第2の例を示すフローチャート。
図10】出力配分パターン自動決定の第2の例の処理イメージを示す図。
図11】調整電源の出力配分パターンと安定性解析に関する結果についての出力イメージの一例を示す図。
図12】実施例2に係る電力系統の需給監視装置のハードウェア構成を示すブロック図。
図13図12の需給監視装置の処理を示すフローチャート。
図14】調整電源の出力配分パターンと安定性解析に関する結果についての出力イメージの一例を示す。
図15】実施例3に係る需給監視装置の機能的な構成を示すブロック図。
図16図15の需給調整装置の処理を示すフローチャート。
図17】調整電源の出力配分パターンと安定性解析に関する結果についての出力イメージの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施例では特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施例の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【実施例1】
【0026】
図4は、実施例1に係る電力系統の需給監視装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図4には電力系統20と、電力系統20の各所と通信ネットワーク300を介して接続された電力系統の需給監視装置10が記述されている。
【0027】
図4において、需給監視装置10は、例えば、計算機システムで構成される。需給監視装置10は、ある出力配分に対して、安定性制約を満たした上で最適経済の出力配分であるかについての妥当性を評価する。
【0028】
需給監視装置10は、通信ネットワーク300を介して、電力系統20の計測情報などにアクセスすることができる。ここでの電力系統20は、図3と同じ構成を例示しており、複数の調整電源G(GAからGD)および負荷Ld(Ld1からLd6)が、ノードN(N1からN6)、変圧器Tr(Tr1からTr4)および送電線L(L1からL5)などを介して相互に連系されたシステムである。ノードN(N1からN6)には、電力系統20の保護、制御および監視のための各種の計測器が設置されている。
【0029】
需給監視装置10は、出力部21、入力部22、通信部23、プロセッサ24、メモリ25および記憶装置26を備え、これらは、バス27を介して相互に接続されている。
【0030】
表示部21は、需給監視装置10で扱われるパラメータおよび需給監視装置10での処理結果などを表示する。表示部21は、ディスプレイ装置であってもよいし、ディスプレイ装置とともにプリンタ装置または音声出力装置などを用いてもよい。
【0031】
入力部22は、需給監視装置10を動作させるための各種条件などを入力する。入力部22は、キーボードおよびマウスなどを使用できる他、タッチパネルまたは音声指示装置などの少なくともいずれか一つを備えるようにしてもよい。
【0032】
通信部23は、通信ネットワーク300に接続するための回路および通信プロトコルを備える。通信ネットワーク300は、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)であってもよいし、WiFiまたはイーサネット(登録商標)などのLAN(Local Area Network)であってもよいし、WANとLANが混在していてもよい。
【0033】
プロセッサ24は、コンピュータプログラムを実行し、記憶装置26に記憶されている各種データベース内のデータの検索、処理結果の表示指示、電力系統20の需給監視に関する処理などを行う。プロセッサ24は、CPU(Central Processing Unit)であってもよいし、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。プロセッサ24は、シングルコアロセッサであってもよいし、マルチコアロセッサであってもよい。プロセッサ24は、処理の一部または全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit))を備えていてもよい。プロセッサ24は、ニューラルネットワークを備えていてもよい。プロセッサ24は、1つまたは複数の半導体チップとして構成してもよいし、計算サーバのようなコンピュータ装置として構成してもよい。プログラムの実行は、複数のプロセッサやコンピュータに分担させてもよい。あるいは、プロセッサ24は、通信ネットワーク300を介してクラウドコンピュータなどに需給監視プログラムの全部または一部の実行を指示し、その実行結果を受け取るようにしてもよい。
【0034】
メモリ25は、例えば、RAM(Random Access Memory)として構成され、コンピュータプログラムおよび計算結果データを記憶したり、各処理に必要なワークエリアをプロセッサ24に提供したりする。
【0035】
記憶装置26は、大容量の記憶容量を有する記憶デバイスであり、例えば、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)である。記憶装置26は、各種プログラムの実行ファイルやプログラムの実行に用いられるデータを保持することができる。記憶装置26は、出力配分指令値モデルデータベースDB1、系統情報データベースDB2、安定性結果データベースDB3を保持することができる。また、記憶装置26は、需給監視プログラムを保持することができる。需給監視プログラムは、需給監視装置10にインストール可能なソフトウェアであってもよいし、需給監視装置10にファームウェアとして組み込まれていてもよい。
【0036】
出力配分指令値データベースDB1は、メリットオーダー方式などで出力配分された出力配分指令値D1を格納する。系統情報データベースDB2は、電力系統の安定性を解析するための系統情報D2を格納する。安定性結果データベースDB3は、過負荷、電圧逸脱、電圧安定性、同期安定性などの各種制約に関する安定性結果D3を格納する。
【0037】
図4では、需給監視装置10が、出力配分指令値データベースDB1、系統情報データベースDB2、安定性結果データベースDB3を保持する例を示したが、これらデータベースの少なくともいずれか1つのデータベースをクラウドサーバに保持させるようにしてもよい。
【0038】
図5は、実施例1に係る需給監視装置の機能的な構成例を示すブロック図である。なお、以下の説明では、“○○部は”と動作主体を記した場合、図4のプロセッサ24がプログラムである○○部を読み出し、DRAM(Dynamic Random Access Memory)にロードした上で○○部の機能を実現するものとする。
【0039】
図5において、需給監視装置10は、出力配分指令値データベースDB1、系統情報データベースDB2、安定性結果データベースDB3、出力配分パターン決定部11、系統解析部12、安定性判定部13を備える。
【0040】
出力配分パターン決定部11では、出力配分指令値データベースDB1から出力配分指令値D1を入力し、より安価な複数の出力配分パターンを決定することで、その結果を系統解析部12に出力する。
【0041】
系統解析部12では、任意の時間と、任意の出力配分指令値D1を入力し、また系統情報データベースDB2から系統情報D2を入力し、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などを実施することで、その結果を安定性判定部13に出力する。
【0042】
安定性判定部13では、系統解析部12で計算された結果を入力し、過負荷、電圧逸脱、同期不安定、電圧不安定、調整力不足などの安定性を判定することで、その結果を安定性結果データベースDB3に出力する。
【0043】
図6は、図5の需給監視装置の処理を示すフローチャートである。図6ではまず、処理ステップS1の出力配分パターン決定において、出力配分指令値D1を基により安価な複数の出力配分パターンを決定する。出力配分パターンは手動で決定しても良いし、自動で決定しても良く、特定の決定手段に限定されないものとする。出力配分パターンを自動で決定する例を以下で二つ説明する。
【0044】
処理ステップS1の出力配分パターン自動決定の第1の例を、図7のフローと図8の処理イメージを用いて説明する。また、処理ステップS1の出力配分パターン自動決定の第2の例を、図9のフローと図10の処理イメージを用いて説明する。
【0045】
出力配分パターン自動決定の第1の例として、図1における理想的なメリットオーダーに応じた出力配分から乖離した場合に、コストを考慮しながら出力配分パターンを決定する例を示す。図7に出力配分パターン決定部11の処理の例を示すフローチャートを示す。また、フローチャートの各処理ステップについて、図8の出力配分パターン決定部11の処理の例のイメージを用いて説明する。
【0046】
図7の処理ステップS11の出力配分持替対象決定では、理想的なメリットオーダーに応じた出力配分から乖離した調整電源が選択される。この場合に、理想的なメリットオーダーに応じた出力配分は、コストの観点から図1の3台(GA、GB、GC)による30、30、20の出力であることから、図8上段においてこの関係から乖離した調整電源の持替対象として、調整電源のGA~GEのうち、GB、GC、GDが選択される。
【0047】
処理ステップS12の上げ調整幅算出では、上げ調整幅を算出する。図8上段の例では、理想的なメリットオーダーに応じた出力配分である図1の関係と比較すると、下げ側に出力が乖離しているのは、調整電源GBであり、上げ調整幅は+25である。
【0048】
同様に処理ステップS13の下げ調整幅算出では、下げ調整幅を算出する。図8上段の例では、理想的なメリットオーダーに応じた出力配分から上げ側に出力が乖離しているのは図1の関係と比較すると、調整電源GC、調整電源GDであり、上げ調整幅はそれぞれ-5、-20である。
【0049】
処理ステップS14の出力持替では、上げ調整幅、下げ調整幅の範囲で出力を持替えることで、より安価な出力配分パターンの候補を求める。図8中段の例では、出力配分パターンの候補の1つ目として、上げ調整幅、下げ調整幅を5刻みでコストを考慮しながら出力を持替えた結果、調整電源GBの出力を5から10に、調整電源GDの出力を20から15に変更された。そのため、出力配分パターンの一つ目は、調整電源GA~GEの出力がそれぞれ30、10、25、15、0となる。処理ステップS14の出力持替処理は、上げ調整幅、下げ調整幅を5刻みでコストを考慮しながら出力を持替える処理が継続実行され、その都度新たな出力配分パターンが生成される。
【0050】
処理ステップS15では、全調整幅について出力持替えが完了したか判定する。完了した場合、当フローを終了する。完了しない場合、処理ステップS14に戻り、次の刻みにおける出力配分パターンを決定する。完了後の出力配分パターンは図8下段に記述されており、図1に例示した理想的なメリットオーダーに応じた出力配分とされている。
【0051】
出力配分パターン自動決定の第2の例として、安価な調整電源の出力が、高価な調整電源の出力より小さい場合に、コストを考慮しながら出力配分パターンを決定する例を、図9のフローと図10の処理イメージを用いて説明する。
【0052】
図9の出力配分パターン決定部の処理の例を示すフローチャートでは、最初に処理ステップS21の出力配分持替対象決定処理において、安価な調整電源の出力が高価な調整電源の出力より小さい場合にそれぞれの調整電源が選択される。図10上段の事例では、安価な調整電源GBの出力が5であり、高価な調整電源GDの出力である20よりさらに小さい状態を図示しており、当初の出力配分持替対象としては調整電源GBと調整電源GDが選択されることになる。なお、以下の処理から明らかなように、図10の例では、持替対象として、最終的に調整電源のGA~GEのうち、GB、GC、GDが選択される。
【0053】
処理ステップS22の安価な調整電源選択では、持替対象の中から最も安価な調整電源を選択する。図10上段の例では、調整電源GBが選択される。処理ステップS23の高価な調整電源選択では、図10上段の例では、持替対象の中から最も高価な調整電源GDを選択する。
【0054】
処理ステップS24の出力持替では、両調整電源GB、GDの出力が同じになるまで出力を持替えることで、より安価な出力配分パターンの候補を求める。図10上段の例では、出力配分パターンの候補の1つ目として、両調整電源GB、GDにおいてコストを考慮しながら出力を持替えた結果、調整電源GBの出力を5から12.5に、調整電源GDの出力を20から12.5に変更されることを表している。この時、一定の刻みを考慮しながら出力を持替えてもよい。
【0055】
処理ステップS25では、全調整電源について出力持替えが完了したか判定する。完了した場合、当フローを終了する。完了しない場合、処理ステップS22に戻り、次の刻みにおける出力配分パターンを決定する。
【0056】
図10中段は、両調整電源GB、GDにおける第1回持替処理後に、再度安価な調整電源の出力が高価な調整電源の出力より小さい場合を検討した結果、第2回持替処理では調整電源GB、GCの間で6.25を調整幅として行うことを表している。この場合にも、持替処理の都度新たな出力配分パターンが生成される。
【0057】
この結果、図10下段に示すように、両調整電源GB、GDの出力が等しくなり、次回実行条件である「安価な調整電源の出力が高価な調整電源の出力より小さい場合」が不存在となり、処理終了となったことを表している。
【0058】
図6に戻り、処理ステップS2の系統解析部12では、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などの系統解析を実施する。系統解析については、複数の安定性計算を実施しても、一つの安定性計算を実施しても良い。
【0059】
処理ステップS3の安定性判定部13では、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などの系統解析結果に関して、出力配分パターンと安定性結果に関するデータを出力する。安定性とは、背景技術で説明した過負荷、電圧逸脱、同期安定性、電圧安定性、調整力不足などが挙げられる。
【0060】
処理ステップS2、処理ステップS3の処理は、処理ステップS1における初期段階(図8上段、図10上段)が最終段階(図8下段、図10下段)に至るまでの中間段階(図8中段、図10中段)における出力配分パターン毎に実施され、複数の出力配分パターンについての各種安定性評価が実行される。
【0061】
図11に調整電源の出力配分パターンと安定性解析に関する結果についての出力イメージの一例を示す。ここでは、出力配分パターンとして初期段階1から中間段階を経て最終段階Xに至るまでの各調整電源の出力と、各段階の出力配分パターンでのコスト、ならびに各種安定性の判断結果が一覧に整理されている。この一覧によれば、初期段階1から中間段階を経て最終段階Xまで、時系列的に電力系統の調整電源の運用を変更していった場合に、どのタイミング、どの状況で不安定になるかが判明する。このことから、任意の時間における過去の出力配分が各安定性において全て安定となり、任意の出力配分指令値が各安定性において一つ以上不安定となる場合に、出力配分指令値は出力配分が安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であると言える。
【0062】
以上説明したように、上述した実施例1によれば、出力配分が安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であるかについての妥当性を評価できる。
【実施例2】
【0063】
図12は、実施例2に係る需給監視装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【0064】
図12の需給監視装置10は、出力配分指令値データベースDB1、系統情報データベースDB2、安定性結果データベースDB3、任意出力配分指令値データベースDB4、出力配分パターン決定部11、系統解析部12、安定性判定部13、出力配分決定部14、出力再配分決定部15を備える実施例1、図5の需給監視装置10に加えて、さらに任意出力配分指令値データベースDB4を備えたものである。
【0065】
任意出力配分指令値データベースDB4は、任意の出力配分指令値を1パターンまたは複数パターン格納している。
【0066】
出力配分パターン決定部11では、出力配分指令値と任意出力配分指令値を入力し、より安価な複数の出力配分パターンを決定することで、その結果を系統解析部12に出力する。
【0067】
系統解析部12では、出力配分パターン決定部11で計算された出力配分パターンと系統情報DB2に格納された系統情報を入力し、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などを実施することで、その結果を安定性判定部13に出力する。
【0068】
安定性判定部13では、系統解析部12で計算された結果を入力し、過負荷、電圧逸脱、同期不安定、電圧不安定、調整力不足などの安定性を判定することで、その結果を安定性結果データベースDB3に出力する。
【0069】
図13は、図12の需給監視装置の処理を示すフローチャートである。
【0070】
処理ステップS1の出力配分パターン決定では、メリットオーダー方式などで出力配分された出力配分指令値と、任意出力配分指令値のうち、どちらか一つの値または両方の値を基に出力配分パターンを決定する。系統解析部12に入力する出力配分パターンの例を以下で二つ説明する。
【0071】
一つ目の例では、任意出力配分指令値データベースDB4からの任意出力配分指令値とする。系統運用者や発電事業者が希望する任意の出力配分指令値(メリットオーダー方式などで出力配分された出力配分指令値より安価な出力配分指令値など)を入力値とすることで、所望の出力配分指令値の安定性を判別できる。
【0072】
二つ目の例では、メリットオーダー方式などで出力配分された出力配分指令値と、任意出力配分指令値データベースDB4からの任意出力配分指令値を出力配分パターンとする。系統運用者や発電事業者が希望する任意の出力配分指令値(メリットオーダー方式などで出力配分された出力配分指令値より安価な出力配分指令値など)に加えて、メリットオーダー方式などで出力配分された出力配分指令値を入力値とすることで、所望の出力配分指令値の安定性だけでなく、メリットオーダー方式などで出力配分された出力配分指令値の安定性も判別できる。これにより、両者の安定性の結果の違いを確認できるようになる。
【0073】
処理ステップS2の系統解析部12では、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などの系統解析を実施する。系統解析については、複数の安定性計算を実施しても、一つの安定性計算を実施しても良い。
【0074】
処理ステップS3の安定性判定部13では、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などの系統解析結果に関して、出力配分パターンと安定性結果に関するデータを出力する。安定性とは、背景技術で説明した過負荷、電圧逸脱、同期安定性、電圧安定性、調整力不足などが挙げられる。
【0075】
図14に調整電源の出力配分パターンと安定性解析に関する結果についての出力イメージの一例を示す。任意の時間における過去の出力配分が各安定性において全て安定となり、任意の出力配分指令値が各安定性において一つ以上不安定となる場合に、出力配分指令値が出力配分が安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であると言える。
【0076】
以上説明したように、実施例2によれば、出力配分が安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であるかについての妥当性を評価できる。
【実施例3】
【0077】
図15は、実施例3に係る需給監視装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【0078】
図15において、需給調整装置10は、出力配分指令値データベースDB1、系統情報データベースDB2、安定性結果データベースDB3、出力再配分指令値データベースDB5、出力配分パターン決定部11、系統解析部12、安定性判定部13、出力配分決定部14、出力再配分決定部15を備える、実施例1、図5の需給監視装置10に加えて、さらに出力再配分指令値DB4、出力配分決定部14、出力再配分決定部15を備える。
【0079】
出力再配分指令値データベースDB5は、メリットオーダー方式などで出力配分された出力配分指令値を基に、さらに安定性を満たした上でコストを低減する出力再配分指令値を格納する。
【0080】
出力配分決定部14では、需給アンバランスを入力し、各調整電源への出力配分を決定することで、その結果を出力配分指令値データベースDB1に出力する。
【0081】
出力配分パターン決定部11では、出力配分決定部14で計算された出力配分指令値を入力し、より安価な複数の出力配分パターンを決定することで、その結果を系統解析部12に出力する。
【0082】
系統解析部12では、出力配分パターン決定部11で計算された出力配分パターンと系統情報DB2に格納された系統情報を入力し、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などを実施することで、その結果を安定性判定部13に出力する。
【0083】
安定性判定部13では、系統解析部12で計算された結果を入力し、過負荷、電圧逸脱、同期不安定、電圧不安定、調整力不足などの安定性を判定することで、その結果を安定性結果データベースDB3、出力再配分決定部15に出力する。
【0084】
出力再配分決定部15では、複数の出力配分パターンとその安定性結果を入力とし、安定性制約を満たした上で最経済である出力再配分指令値を選択することで、その結果を出力再配分指令値データベースDB5に出力する。
【0085】
図16は、図15の需給調整装置の処理を示すフローチャートである。
【0086】
最初の処理ステップS34の出力配分決定では、需給アンバランスの量を基に、各調整電源への出力配分を決定する。例えば、メリットオーダーに応じた出力配分を決定する。メリットオーダーに応じて各調整電源の出力配分を決定する場合、調整力の上げ方向については、各調整電源に割り当て可能な制約の範囲内において、コストの安い各調整電源から順に調整力を割り当てることができる。調整力の下げ方向については、各調整電源に割り当て可能な制約の範囲内において、コストの高い各調整電源から順に調整力を割り当てることができる。ここで言うコストは、調整電源の燃料コストの他、調達コストを含んでも良い。
【0087】
この時、電力系統を安定的に運用するために、需給のバランスだけでなく、過負荷、電圧逸脱、電圧安定性、同期安定性などの電力系統の安定性についても満足させるように、出力配分を決定する必要がある。そのために、各種制約条件を設定した上で最適化計算によって出力配分を決定する方法が一般的である。
【0088】
処理ステップS31の出力配分パターン決定では、処理ステップS34で決定した出力配分を基により安価な複数の出力配分パターンを決定する。出力配分パターンを決定する例を以下で二つ説明する。
【0089】
処理ステップS32の系統解析部12では、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などの系統解析を実施する。系統解析については、複数の安定性計算を実施しても、一つの安定性計算を実施しても良い。
【0090】
処理ステップS33の安定性判定部13では、潮流計算、同期安定性計算、電圧安定性計算、調整力確保量計算などの系統解析結果に関して、出力配分パターンと安定性結果に関するデータを出力する。安定性とは、背景技術で説明した過負荷、電圧逸脱、同期安定性、電圧安定性、調整力不足などが挙げられる。図17に調整電源の出力配分パターンと安定性解析に関する結果に出力イメージの一例を示す。
【0091】
処理ステップS35の出力配分再決定では、複数の出力配分パターンでの安定性解析により制約違反の有無を判定する。全出力配分パターンに対して、各安定性において一つ以上不安定となる場合に、出力配分決定部14で決定した出力配分指令値が出力配分が安定性制約を満たした上で最経済の出力配分であると言える。また、各安定性において全て安定となる出力配分パターンが存在する場合に、該当の出力配分パターンの中で最もコストが安価な出力配分パターンを出力再配分指令値として選択する。図17の例では、パターン1~Xにおいて全ての安定性が安定なものがパターン1とパターン2のみと仮定すると、このうち、より安価なパターンであるパターン2が選択される。
【0092】
なお上記の説明は、主として電力系統の需給監視装置を構成することについて説明を行ってきたが、ここで定めた出力配分パターンを調整電源に配分する機能をさらに備えることで、需給調整装置を構成できることは言うまでもない。
【0093】
以上説明したように、上述した実施例3によれば、さらに良い出力配分も探索でき、それをもとに出力配分できることで、安定性を満たした上でコストを低減することができる。
【0094】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除または置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能および処理部などは、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0095】
DB1:出力配分指令値データベース
DB2:系統情報データベース
DB3:安定性結果データベース
DB4:任意出力配分指令値データベース
DB5:出力再配分指令値データベース
20:電力系統
10:需給監視装置
11:出力配分パターン決定部
12:系統解析部
13:安定性判定部
14:出力配分決定部
15:出力再配分決定部
21:表示部
22:入力部
23:通信部
24:プロセッサ
25:メモリ
26:記憶装置
27:バス
300:通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17