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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】蒸留装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/32 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B01D3/32 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020112472
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011369
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390036663
【氏名又は名称】木村化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】重 洋一
(72)【発明者】
【氏名】池田 博史
(72)【発明者】
【氏名】笹辺 慶
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176188(WO,A1)
【文献】特開昭61-050602(JP,A)
【文献】特表2012-507397(JP,A)
【文献】特開昭60-125201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 3/00 - 3/42
C02F 1/04 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低沸点成分が濃縮されて原料液よりも低沸点成分の濃度が高くなる濃縮部と、低沸点成分が分離されて原料液よりも高沸点成分の濃度が高くなる回収部とを備える蒸留塔と、
前記蒸留塔の塔頂から取り出される塔頂ベーパを、塔頂コンデンサ用循環冷却水により冷却して、低沸点成分を主成分とする凝縮液を留出液として回収するための塔頂コンデンサと、
前記蒸留塔の前記濃縮部を通過する濃縮部ベーパを、熱回収コンデンサ用循環冷却水により冷却する熱回収コンデンサと、
前記蒸留塔の前記回収部を通過する液体を再加熱するためのリボイラである中間リボイラと、
前記蒸留塔の塔底液を再加熱するためのリボイラである塔底リボイラと、
前記塔頂コンデンサにおいて前記塔頂ベーパの冷却に用いられ、昇温した前記塔頂コンデンサ用循環冷却水から熱回収を行うとともに、回収した熱を電力により温度レベルを上げて、前記塔底リボイラと前記中間リボイラの両方もしくは一方にリボイラ用高温水として供給するように構成された第1ヒートポンプと、
前記熱回収コンデンサにおいて前記濃縮部ベーパの冷却に用いられ、昇温した前記熱回収コンデンサ用循環冷却水から熱回収を行うとともに、回収した熱を電力により温度レベルを上げて、前記塔底リボイラと前記中間リボイラの両方もしくは一方にリボイラ用高温水として供給するように構成された第2ヒートポンプと
を具備することを特徴とする蒸留装置。
【請求項2】
前記中間リボイラとして、前記回収部の、高さ方向において異なる複数の位置を通過する液体を再加熱するための、前記複数の位置に対応する複数の中間リボイラを備えているとともに、
前記第1ヒートポンプとして、前記複数の中間リボイラに対応する複数台の第1ヒートポンプを備えていること
を特徴とする請求項1記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための前記第1ヒートポンプに加えて、前記塔頂コンデンサにおいて用いられた前記塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、前記塔底リボイラにリボイラ用高温水として供給するための第1ヒートポンプをさらに備えていることを特徴とする請求項2記載の蒸留装置。
【請求項4】
前記中間リボイラとして、前記回収部の、高さ方向において異なる複数の位置を通過する液体を再加熱するための、前記複数の位置に対応する複数の中間リボイラを備えているとともに、
前記第2ヒートポンプとして、前記複数の中間リボイラのうちの所定の中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための所定台数の第2ヒートポンプを備えていること
を特徴とする請求項1記載の蒸留装置。
【請求項5】
前記所定の中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための前記第2ヒートポンプに加えて、前記熱回収コンデンサにおいて用いられた前記熱回収コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、前記塔底リボイラにリボイラ用高温水として供給するための第2ヒートポンプをさらに備えていることを特徴とする請求項4記載の蒸留装置。
【請求項6】
前記第1ヒートポンプによりリボイラ用高温水が供給されるリボイラと、前記第2ヒートポンプによりリボイラ用高温水が供給されるリボイラには、同じリボイラが含まれていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の蒸留装置。
【請求項7】
前記第1ヒートポンプおよび前記第2ヒートポンプから供給される熱量が、蒸留操作を行うのに必要な熱量より少ない場合に、熱量の不足分が外部から供給される蒸気により補われるように構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の蒸留装置。
【請求項8】
蒸留操作が、加圧下、大気圧下、減圧下のいずれかで行われるように構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の蒸留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプを用いてコンデンサから回収した熱をリボイラに熱移動させることにより、熱効率を向上させるようにした蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留装置における省エネルギー化の必要性は近年、益々増大しており、種々の提案が行われている。
【0003】
そのような省エネルギー技術の1つとして、蒸留装置にヒートポンプを組み込んで、熱効率を向上させるようにした蒸留装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の蒸留装置は、蒸留塔と、蒸留コンデンサと、蒸留リボイラと、蒸留コンデンサから流出した第一出力流体を蒸留塔に戻すための還流用の配管とを備える蒸留装置である。
【0005】
この蒸留装置は、作動媒体(水)が蒸留コンデンサで受け取った熱を蒸留リボイラに与えるためのヒートポンプを備えている。ヒートポンプは、蒸留コンデンサと蒸留リボイラを接続するとともに作動媒体が循環する循環流路と、蒸留コンデンサで蒸発した後の作動媒体を圧縮する圧縮機と、蒸留リボイラで熱を与えた後の作動媒体を減圧(膨張)させる減圧弁とを備えた構成とされている。
【0006】
そして、この蒸留装置によれば、蒸留塔の頂部から流出した第一出力流体の有する熱エネルギーが、ヒートポンプによって蒸留リボイラにおいて有効に回収され、第一出力流体の熱エネルギーの有効利用により、蒸留リボイラにおける第二出力流体の加熱に必要な熱エネルギーの削減を図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公平06-009641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、蒸留装置における省エネルギー化を図るための方法として、上述の特許文献1の蒸留装置のようにヒートポンプを利用する方法は、極めて有効な方法の一つであると考えられる。
【0009】
しかしながら、蒸留塔の塔頂ベーパを冷却するためのコンデンサの冷却水から熱を回収し、加熱源としてリボイラに供給しようとすると、ヒートポンプにおける昇温幅が大きくなり、ヒートポンプとして高圧縮のタイプのものを用いることが必要となる。その結果、ヒートポンプの成績効率(COP)は小さくなり、省エネルギー効果も小さくなるという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、蒸留装置にヒートポンプを用いて省エネルギーを図るとともに、ヒートポンプに消費されるエネルギーを抑制して、さらなる省エネルギー効果を得ることが可能な蒸留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の蒸留装置は、
低沸点成分が濃縮されて原料液よりも低沸点成分の濃度が高くなる濃縮部と、低沸点成分が分離されて原料液よりも高沸点成分の濃度が高くなる回収部とを備える蒸留塔と、
前記蒸留塔の塔頂から取り出される塔頂ベーパを、塔頂コンデンサ用循環冷却水により冷却して、低沸点成分を主成分とする凝縮液を留出液として回収するための塔頂コンデンサと、
前記蒸留塔の前記濃縮部を通過する濃縮部ベーパを、熱回収コンデンサ用循環冷却水により冷却する熱回収コンデンサと、
前記蒸留塔の前記回収部を通過する液体を再加熱するためのリボイラである中間リボイラと、
前記蒸留塔の塔底液を再加熱するためのリボイラである塔底リボイラと、
前記塔頂コンデンサにおいて前記塔頂ベーパの冷却に用いられ、昇温した前記塔頂コンデンサ用循環冷却水から熱回収を行うとともに、回収した熱を電力により温度レベルを上げて、前記塔底リボイラと前記中間リボイラの両方もしくは一方にリボイラ用高温水として供給するように構成された第1ヒートポンプと、
前記熱回収コンデンサにおいて前記濃縮部ベーパの冷却に用いられ、昇温した前記熱回収コンデンサ用循環冷却水から熱回収を行うとともに、回収した熱を電力により温度レベルを上げて、前記塔底リボイラと前記中間リボイラの両方もしくは一方にリボイラ用高温水として供給するように構成された第2ヒートポンプと
を具備することを特徴としている。
【0012】
本発明の蒸留装置においては、前記中間リボイラとして、前記回収部の、高さ方向において異なる複数の位置を通過する液体を再加熱するための、前記複数の位置に対応する複数の中間リボイラを備えているとともに、
前記第1ヒートポンプとして、前記複数の中間リボイラに対応する複数台の第1ヒートポンプを備えていること
が好ましい。
【0013】
また、前記中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための前記第1ヒートポンプに加えて、前記塔頂コンデンサにおいて用いられた前記塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、前記塔底リボイラにリボイラ用高温水として供給するための第1ヒートポンプをさらに備えていることが好ましい。
【0014】
また、前記中間リボイラとして、前記回収部の、高さ方向において異なる複数の位置を通過する液体を再加熱するための、前記複数の位置に対応する複数の中間リボイラを備えているとともに、
前記第2ヒートポンプとして、前記複数の中間リボイラのうちの所定の中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための所定台数の第2ヒートポンプを備えている構成とすることも可能である。
【0015】
また、前記所定の中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための前記第2ヒートポンプに加えて、前記熱回収コンデンサにおいて用いられた前記熱回収コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、前記塔底リボイラにリボイラ用高温水として供給するための第2ヒートポンプをさらに備えている構成とすることも可能である。
【0016】
また、前記第1ヒートポンプによりリボイラ用高温水が供給されるリボイラと、前記第2ヒートポンプによりリボイラ用高温水が供給されるリボイラには、同じリボイラが含まれていてもよい。
【0017】
また、本発明の蒸留装置は、前記第1ヒートポンプおよび前記第2ヒートポンプから供給される熱量が、蒸留操作を行うのに必要な熱量より少ない場合に、熱量の不足分が外部から供給される蒸気により補われるように構成してもよい。
【0018】
また、本発明の蒸留装置は、蒸留操作が、加圧下、大気圧下、減圧下のいずれかで行われるように構成することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
以下、本発明の効果について説明する。例えば、従来広く用いられている、単一の蒸留塔を備えたヒートポンプ式蒸留装置において、塔頂ベーパを冷却するための塔頂コンデンサの冷却水の熱をヒートポンプにおいて回収し、回収した熱量を塔底リボイラに供給するようにした場合、塔頂ベーパと塔底液の温度差が大きくなり、ヒートポンプにおける温度レベルの上昇幅を大きくすることが必要になる。その結果、ヒートポンプにかかる負荷が大きくなり、ヒートポンプのCOP(成績係数)の値は小さくなり、通常はCOPの値が3~5程度になることが多い。
【0020】
これに対して、本発明の蒸留装置は、上述のように構成されており、塔頂コンデンサにおいて塔頂ベーパの冷却に用いられ、昇温した塔頂コンデンサ用循環冷却水から熱回収を行うとともに、回収した熱を電力により温度レベルを上げて、塔底リボイラと中間リボイラの両方もしくは一方にリボイラ用高温水として供給する第1ヒートポンプと、熱回収コンデンサにおいて濃縮部ベーパの冷却に用いられ、昇温した熱回収コンデンサ用循環冷却水から熱回収を行うとともに、回収した熱を電力により温度レベルを上げて、塔底リボイラと中間リボイラの両方もしくは一方にリボイラ用高温水として供給する第2ヒートポンプとを備えており、第1ヒートポンプと第2ヒートポンプの両方のヒートポンプにより、昇温した塔頂コンデンサ用循環冷却水および熱回収コンデンサ用循環冷却水からの熱回収が行われることになる。
【0021】
したがって、第1ヒートポンプおよび第2ヒートポンプにおける温度レベルの上昇幅が大きくなることを抑制することが可能になるとともに、ヒートポンプにかかる負荷を小さくして、ヒートポンプのCOP(成績係数)を向上させることが可能になる。
【0022】
その結果、上述のような単一の蒸留塔を備えた従来のヒートポンプ式蒸留装置に比べて、省エネルギー性に優れた蒸留装置を実現することが可能になる。
【0023】
すなわち、本発明の蒸留装置では、蒸留塔の濃縮部に熱回収コンデンサを設けるとともに、回収部に中間リボイラを設け、塔頂コンデンサと熱回収コンデンサで使用され、昇温した冷却水の熱を、それぞれ第1ヒートポンプおよび第2ヒートポンプに振り分け、各ヒートポンプで汲み上げた熱を、中間リボイラと塔底リボイラとに供給するようにしているので、上述のように、単一の蒸留塔を備えたヒートポンプ式蒸留装置において、塔頂コンデンサの冷却水の熱をヒートポンプにおいて回収し、回収した熱を塔底リボイラに供給するようにしただけの場合に比べて、ヒートポンプにかかる負荷を抑制して、ヒートポンプのCOPを向上させる(COPの値を3~5より大きくする)ことが可能になり、省エネルギー性に優れた蒸留装置を提供することが可能になる。
【0024】
また、中間リボイラとして、回収部の、高さ方向において異なる複数の位置を通過する液体を再加熱するための、上記複数の位置に対応する複数の中間リボイラを備えているとともに、塔頂コンデンサにおいて用いられた塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、中間リボイラにリボイラ用高温水として供給するための第1ヒートポンプとして、複数の中間リボイラに対応する複数台の第1ヒートポンプを備えた構成とした場合、塔頂コンデンサで使用された冷却水が、複数台の第1ヒートポンプに振り分けられることで、複数台の第1ヒートポンプのそれぞれにかかる負荷が抑制され、ヒートポンプのCOP(成績係数)をさらに向上させることが可能になるとともに、各第1ヒートポンプで汲み上げた熱が、複数の中間リボイラに供給されることにより、エネルギーが効率よく用いられることになり、さらに省エネルギー性に優れた蒸留装置を実現することができる。
【0025】
また、上述のように、複数台の中間リボイラとそれに対応するヒートポンプを備えた構成とすることにより、蒸留塔の高さ方向の所定の位置におけるベーパ量を制御して、蒸留塔の塔径を小さくすることが可能になり、設備コストの低減を図ることができる。
【0026】
また、前記中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための第1ヒートポンプに加えて、塔頂コンデンサにおいて用いられた塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、塔底リボイラにリボイラ用高温水として供給するための第1ヒートポンプをさらに備えた構成とした場合、第1ヒートポンプで汲み上げた熱を、中間リボイラだけでなく、塔底リボイラにも振り分けることで、設計の自由度が向上し、さらなる省エネルギーを図ることが可能になる。
【0027】
また、中間リボイラとして、回収部の、高さ方向において異なる複数の位置を通過する液体を再加熱するための、複数の位置に対応する複数の中間リボイラを備えているとともに、熱回収コンデンサにおいて用いられた熱回収コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、中間リボイラにリボイラ用高温水として供給するための第2ヒートポンプとして、複数の中間リボイラのうちの所定の中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための所定台数の第2ヒートポンプを備えた構成とした場合、熱回収コンデンサで使用され、昇温した冷却水が、複数台の第2ヒートポンプに振り分けられることで、複数台の第2ヒートポンプのそれぞれにかかる負荷が抑制され、ヒートポンプのCOP(成績係数)をさらに向上させることが可能になるとともに、各第2ヒートポンプで汲み上げた熱が、複数の中間リボイラに供給されることにより、エネルギーが効率よく用いられることになり、さらに省エネルギー性に優れた蒸留装置を実現することができる。
【0028】
また、所定の中間リボイラにリボイラ用高温水を供給するための第2ヒートポンプに加えて、熱回収コンデンサにおいて用いられた熱回収コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、塔底リボイラにリボイラ用高温水として供給するための第2ヒートポンプをさらに備えた構成とした場合、第2ヒートポンプで汲み上げた熱を、中間リボイラだけでなく、塔底リボイラにも振り分けることで、設計の自由度が向上し、さらなる省エネルギーを図ることが可能になる。
【0029】
また、本発明においては、第1ヒートポンプによりリボイラ用高温水が供給されるリボイラと、第2ヒートポンプによりリボイラ用高温水が供給されるリボイラには、同じリボイラが含まれているように構成してもよい。このように構成することにより、設計の自由度が向上し、本発明をより実効有らしめることができる。
【0030】
なお、第1ヒートポンプによりリボイラ用高温水が供給されるリボイラと、第2ヒートポンプによりリボイラ用高温水が供給されるリボイラに同じリボイラが含まれている態様としては、
(1)複数の中間リボイラのうち、同じ中間リボイラに、第1ヒートポンプからのリボイラ用高温水と、第2ヒートポンプからのリボイラ用高温水が、供給されるように構成されている場合、
(2)第1ヒートポンプからのリボイラ用高温水と、第2ヒートポンプからのリボイラ用高温水が、一つの塔底リボイラに供給されるように構成されている場合、
(3)第1ヒートポンプからのリボイラ用高温水と、第2ヒートポンプからのリボイラ用高温水が、同じ中間リボイラと、同じ塔底リボイラの両方に供給されるように構成されている場合
などが挙げられる。
【0031】
また、本発明の蒸留装置は、第1ヒートポンプおよび第2ヒートポンプから供給される熱量が、蒸留操作を行うのに必要な熱量より少ない場合に、熱量の不足分が外部から供給される蒸気により補われるように構成することで、円滑な蒸留操作を安定的に継続することが可能な蒸留装置を提供することができる。
【0032】
また、本発明の蒸留装置は、蒸留操作が、加圧下、大気圧下、減圧下のいずれかで行われるように構成することが可能であり、このように構成することで、蒸気圧の低い成分や高い成分を含む種々の原料液から、目的物質を効率よく分離することが可能で、省エネルギー性の高い蒸留装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態にかかる蒸留装置の構成を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる蒸留装置の熱回収図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0035】
本実施形態では、低沸点成分であるベンゼンと、高沸点成分であるトルエンとを含有する液(原料液)の蒸留を行い、ベンゼン(低沸点成分)を主成分とする塔頂ベーパと、ベンゼンよりもトルエン(高沸点成分)を高い割合で含有する塔底液に分離するための蒸留装置を例にとって説明する。
【0036】
より具体的には、本実施形態にかかる蒸留装置は、低沸点成分であるベンゼンを50wt%の割合で含み、残部(50wt%)がトルエン(高沸点成分)である液温60℃の原料液(被処理液)を10000kg/hの割合で蒸留して、ベンゼンを99.5wt%の割合で含む留出液を5000kg/h、トルエンを99.5wt%の割合で含む缶出液を5000kg/hの割合で回収することができるように構成された蒸留装置である。
【0037】
以下、図1を参照しつつ、本実施形態にかかる蒸留装置の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態にかかる蒸留装置100は、低沸点成分が濃縮され、原料液よりも低沸点成分の濃度が高くなる濃縮部Aと、低沸点成分が分離されて原料液よりも高沸点成分の濃度が高くなる回収部Bとを有する蒸留塔1を備えている。
【0038】
蒸留塔1としては、例えば、棚段塔、充填塔など、公知の種々の構造のものを用いることが可能である。
【0039】
なお、蒸留塔の塔頂への還流は、塔頂コンデンサにおける凝縮液の一部を、塔頂送液ポンプ26を介して還流ライン33から蒸留塔1の塔頂に戻すことにより行われる。
【0040】
また、蒸留装置100は、蒸留塔1の塔頂から取り出される、低沸点成分を主成分とする塔頂ベーパを冷却するための塔頂コンデンサ10を備えている。
【0041】
詳しくは、塔頂コンデンサ10は、蒸留塔1の塔頂から取り出されるベンゼンを主成分とする塔頂ベーパを、塔頂コンデンサ用循環冷却水により冷却して、低沸点成分であるベンゼンを主成分とする凝縮液(ベンゼン:99.5wt%、トルエン:0.5wt%)を留出液として回収するためのコンデンサである。
なお、本実施形態では、塔頂コンデンサ10として、円筒多管式熱交換器が用いられている。ただし、塔頂コンデンサ10としては、他の構造の熱交換器を用いることも可能である。
【0042】
また、蒸留装置100は、蒸留塔1の濃縮部Aを通過する濃縮部ベーパを、熱回収コンデンサ用循環冷却水により冷却(熱交換)して熱回収を行うための熱回収コンデンサ20を備えている。
なお、本実施形態では、熱回収コンデンサ20として、円筒多管式熱交換器が用いられている。ただし、熱回収コンデンサ20としては、他の構造の熱交換器を用いることも可能である。
【0043】
また、本実施形態の蒸留装置100は、減圧下で蒸留操作が行われるように構成されている。具体的には、真空吸引手段(本実施形態では真空ポンプ)21により、塔頂コンデンサ10を経て真空吸引することで系内を大気圧以下の所定の圧力に調整することができるように構成されている。なお、真空ポンプ21としては、水封式の真空ポンプが用いられている。ただし、真空ポンプの型式に制約はなく、他の型式のものを用いることも可能である。
【0044】
なお、本発明の蒸留装置においては、原料液を構成する成分によって、加圧下、あるいは大気圧下で、蒸留操作が行われるように構成することも可能である。
【0045】
また、蒸留装置100は、蒸留塔1の塔底液を再加熱する塔底リボイラRBと、蒸留塔1の回収部Bを通過する液体を再加熱する中間リボイラRAとを備えている。
【0046】
塔底リボイラRBは、蒸留塔1の塔底液を再加熱して蒸発させるリボイラであり、塔底リボイラRBで再加熱され、発生したベーパは蒸留塔1の塔底に戻されることになる。
【0047】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100では、中間リボイラRAとして、蒸留塔1の回収部Bの、高さ方向において異なる複数の位置を通過する液体を再加熱するための、上記複数の位置に対応する複数の中間リボイラ(すなわち、中間リボイラRA1、中間リボイラRA2、中間リボイラRA3、中間リボイラRA4の合計4台の中間リボイラ)を備えている。
【0048】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100では、塔内液循環ポンプ41、42、43、44により、蒸留塔1の回収部Bの、高さ方向において異なる複数の位置(4つの位置)を通過する液体のぞれぞれが、中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)に供給されて再加熱された後、蒸留塔1の回収部Bの高さ方向において異なる所定の位置に戻されるように構成されている。
【0049】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100は、塔頂コンデンサ10において、塔頂ベーパの冷却に用いられ、昇温した塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、塔底リボイラRBにリボイラ用高温水として供給するように構成された第1ヒートポンプ1HP(1HP5)を備えている。
【0050】
さらに、蒸留装置100は、塔頂コンデンサ10において、塔頂ベーパの冷却に用いられ、昇温した塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)のそれぞれにリボイラ用高温水として供給するように構成された4台の第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4)を備えている。
【0051】
すなわち、本実施形態にかかる蒸留装置100は、合計で5台の第1ヒートポンプ(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)を備えており、1台の第1ヒートポンプ1HP5は、塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を塔底リボイラRBに供給するように構成され、他の4台の第1ヒートポンプ1HP1、1HP2、1HP3、1HP4はそれぞれ、塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収した熱をリボイラ用高温水として、4台の中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)に供給するように構成されている。
【0052】
また、本実施形態の蒸留装置100は、熱回収コンデンサ20において用いられ、昇温した熱回収コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を電力により温度レベルを上げて、塔底リボイラRBにリボイラ用高温水として供給するための第2ヒートポンプ2HPを備えている。
【0053】
すなわち、本実施形態の蒸留装置100においては、塔底リボイラRBに対して、第1ヒートポンプ1HP(1HP5)と、第2ヒートポンプ2HPの両方から、リボイラ用高温水が供給されるように構成されている。
【0054】
言い換えると、本実施形態の蒸留装置100では、第1ヒートポンプ1HP(本実施形態では1HP5)からリボイラ用高温水が供給されるリボイラと、第2ヒートポンプ2HPからリボイラ用高温水が供給されるリボイラとが、同じリボイラ(塔底リボイラRB)となるように構成されている。
【0055】
なお、本発明の蒸留装置においては、熱回収コンデンサ20で用いられた熱回収コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を塔底リボイラRBに供給するための第2ヒートポンプ2HPに加えて、熱回収コンデンサ20で用いられた熱回収コンデンサ用循環冷却水から回収した熱を、複数の中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)のうちの所定の中間リボイラに供給するための第2ヒートポンプを備えた構成とすることも可能である。
【0056】
また、本実施形態の蒸留装置100では、第1ヒートポンプ1HPおよび第2ヒートポンプ2HPから供給される熱量が、蒸留操作を行うのに必要な熱量より少ない場合に、熱量の不足分が外部から供給される蒸気により補われることで、円滑な蒸留操作が確実に継続されるように構成されている。
【0057】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100は、塔頂コンデンサ10において用いられ、昇温した塔頂コンデンサ用循環冷却水のうち、熱回収のために各第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)に送られる部分を除いた部分(残部)を冷却するための冷却手段(冷却塔)30を備えている。
【0058】
冷却塔30で冷却された塔頂コンデンサ用循環冷却水は、冷却水循環ポンプ25により、塔頂コンデンサ用循環冷却水供給ライン31に戻され、各第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)において熱回収され、各冷水循環ポンプ61、62、63、64、65により塔頂コンデンサ用循環冷却水供給ライン31を経て塔頂コンデンサ10に戻される塔頂コンデンサ用循環冷却水とともに塔頂コンデンサ10に戻されるように構成されている。
【0059】
また、熱回収コンデンサ20において用いられ、昇温した熱回収コンデンサ用循環冷却水は、第2ヒートポンプ2HPに送られて熱回収された後、冷水循環ポンプ66により、熱回収コンデンサ用循環冷却水供給ライン32を経て、熱回収コンデンサ20に戻されるように構成されている。
【0060】
一方、それぞれの第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4)で昇温された温水は各中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)に供給され、各中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)で使用されて温度の低下した温水は、各温水循環ポンプ51、52、53、54を介して各第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4)に戻されるように構成されている。
【0061】
また、第1ヒートポンプ1HP(1HP5)で昇温された温水は塔底リボイラRBに供給され、また、第2ヒートポンプ2HPで昇温された温水も塔底リボイラRBに供給されるように構成されている。
【0062】
そして、塔底リボイラRBで使用されて温度の低下した温水の一部は温水循環ポンプ55を介して第1ヒートポンプ1HP(1HP5)に戻され、塔底リボイラRBで使用されて温度の低下した温水の他の一部(残部)は、温水循環ポンプ56を介して第2ヒートポンプ2HPに戻されるように構成されている。
【0063】
また、塔頂コンデンサ10で冷却され、凝縮した、低沸点成分であるベンゼンを99.5wt%、高沸点成分であるトルエンを0.5wt%の割合で含む凝縮液の一部は、塔頂送液ポンプ26を介して、還流ライン33を経て蒸留塔1の塔頂に還流液として戻され、その他の部分は留出液として回収される。
【0064】
さらに、蒸留塔1の塔底から抜き出された、低沸点成分であるベンゼンを0.5wt%、高沸点成分であるトルエンを99.5wt%の割合で含む塔底液は、塔底送液ポンプ27を介して、塔底送液ライン34を経て一部が塔底リボイラRBに送られて加熱された後、蒸留塔1の下部に戻され、塔底リボイラRBに送られなかった残りの塔底液は、低沸点成分であるベンゼンを0.5wt%、高沸点成分であるトルエンを99.5wt%の割合で含む缶出液として回収されるように構成されている。
【0065】
次に、本実施形態にかかる蒸留装置100の熱回収について、図2を参照しつつ詳しく説明する。
【0066】
上述のように構成された本実施形態にかかる蒸留装置100においては、図2に示すように、熱回収コンデンサ20で濃縮部Aを通過する濃縮部ベーパの冷却に用いられ、昇温した40.1℃の熱回収コンデンサ用循環冷却水は、第2ヒートポンプ2HPに送られて熱回収される。そして熱回収が行われて温度が35.1℃に低下した熱回収コンデンサ用循環冷却水は、冷水循環ポンプにより熱回収コンデンサ20に循環供給されるように構成されている。
【0067】
また、図2に示すように、塔頂コンデンサ10で塔頂ベーパの冷却に用いられ、昇温した36℃の塔頂コンデンサ用循環冷却水の一部は、複数の第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)に送られて熱回収される。そして、熱回収が行われて温度が31℃に低下した塔頂コンデンサ用循環冷却水は、冷水循環ポンプにより塔頂コンデンサ10に循環供給されるように構成されている。
【0068】
なお、図2に示すように、第1ヒートポンプ1HP5において、温度36℃の塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収された熱は、電力により温度レベルが74.3℃に高められ、高温水側循環水として、温水循環ポンプにより塔底リボイラRBに供給され、塔底リボイラRBの熱源として用いられるように構成されている。
【0069】
また、図2に示すように、4台のヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4)において、温度36℃の塔頂コンデンサ用循環冷却水から回収された熱は、電力により温度レベルがそれぞれ60.7℃(1HP1)、62.5℃(1HP2)、65.9℃(1HP3)、69.6℃(1HP4)に高められ、高温水側循環水として、温水循環ポンプにより、対応する中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)に供給され、各中間リボイラRAの熱源として用いられるように構成されている。
【0070】
中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)において熱源として用いられることで温度がそれぞれ55.7℃(RA1)、57.5℃(RA2)、60.9℃(RA3)、64.6℃(RA4)に低下した高温水側循環水は、温水循環ポンプにより、対応する第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4)に戻され、温度レベルが上げられた後、再び、対応する中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)に供給されるように構成されている。
【0071】
なお、本実施形態においては、
(1)塔底リボイラRBに供給されるエネルギーは、第2ヒートポンプ2HPの350kWと、第1ヒートポンプ1HP5の100kWの合計の450kW、
(2)中間リボイラRA1に供給されるエネルギーは、第1ヒートポンプ1HP1の250kW、
(3)中間リボイラRA2に供給されるエネルギーは、第1ヒートポンプ1HP2の100kW、
(4)中間リボイラRA3に供給されるエネルギーは、第1ヒートポンプ1HP3の250kW、
(5)中間リボイラRA4に供給されるエネルギーは、第1ヒートポンプ1HP4の300kWとなる。
したがって、塔底リボイラRB、中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)から蒸留塔1に供給されるエネルギーの合計値は450kW+250kW+100kW+250kW+300kW=1350kWとなる。
【0072】
また、本実施形態では、各第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)および、第2ヒートポンプ2HPのCOP(成績効率)の値は図2に示すように、
第1ヒートポンプ1HP1のCOP:7.2
第1ヒートポンプ1HP2のCOP:6.9
第1ヒートポンプ1HP3のCOP:6.0
第1ヒートポンプ1HP4のCOP:5.6
第1ヒートポンプ1HP5のCOP:4.9
第2ヒートポンプ2HPのCOP:5.5
となる。
【0073】
本実施形態では、第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)、および、第2ヒートポンプ2HPの合計6台のヒートポンプのトータルCOPの平均値は、6.0(7.2+6.9+6.0+5.6+4.9+5.5/6=6.0)となる。したがって、本実施形態の蒸留装置100においては、従来技術の場合のCOP3~5に対して約1.2~2倍の成績効率が得られることがわかる。
【0074】
なお、本実施形態では特に図示していないが、複数の第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)、および、第2ヒートポンプ2HPは、いずれも1台の予備機を含む台数制御およびインバータ制御によって能力調整が行われるように構成されている。
【0075】
上述のように、第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)、および、第2ヒートポンプ2HPは、いずれも1台の予備のヒートポンプが備えられているため、不測の故障に対する操業の安定性が確保され、また、運転中のメンテナンスが可能になる。
【0076】
なお、本実施形態にかかる蒸留装置においては、中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)および塔底リボイラRBの加熱源として、第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP5)、および、第2ヒートポンプ2HPで温度レベルを上昇させた高温水を用いるようにしていることから、この高温水で中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)および塔底リボイラRBを稼働させることができるように、真空操作を行うことにより、塔底液の沸点の調整を行っている。
【0077】
また、本実施形態にかかる蒸留装置100においては、従来の単一の蒸留塔を備えたヒートポンプ式蒸留装置において通常考えられる、塔頂コンデンサの冷却水の熱をヒートポンプにより回収し、回収した熱を塔底リボイラに供給するようにした構成の場合と比べて、さらに熱回収コンデンサ20を備えているとともに、複数の中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)を備えており、複数の第1ヒートポンプ1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP4)で回収した熱を、所定の中間リボイラRA(RA1、RA2、RA3、RA4)に供給して、蒸留塔1の回収部Bの、高さ方向において異なる複数の位置を通過する液体を再加熱する(熱交換を行う)ようにしているので、蒸留塔1の、高さ方向に異なる位置における、ベーパの通過量を制御することが可能になり、蒸留塔1の回収部Bの高さ方向の所定の位置の塔径を小さくして、設備コストの低減を図ることができる。
【0078】
上記実施形態にかかる蒸留装置100では、蒸留塔1が、濃縮部Aと、回収部Bとを有する単一の蒸留塔1である場合について説明したが、例えば、蒸留塔を、第1蒸留塔と、第2蒸留塔の2つの蒸留塔に分割することも可能である。
【0079】
蒸留塔が、第1蒸留塔と、第2蒸留塔の2つの蒸留塔に分割され、第1蒸留塔の中央部に原料液が供給され、第1蒸留塔の塔頂ベーパが第2蒸留塔の塔底に供給され、第1蒸留塔の塔底から高沸点成分リッチな缶出液が回収され、第2蒸留塔の塔頂から低沸点成分リッチな留出液が回収されるように構成されている場合、上述の第1蒸留塔の原料液が供給される領域よりも下側の領域が回収部となり、第1蒸留塔の原料液が供給される領域よりも上側の領域と、第2蒸留塔の全体とが本発明における濃縮部となる。
【0080】
濃縮部と回収部とは、蒸留塔(上の例では第1蒸留塔)への原料液の供給位置によって分けられることになるが、濃縮部と回収部の区別は、必ずしも厳密ではなく、例えば、原料液の供給用配管が上記第1蒸留塔に接続される位置(濃縮部と回収部を区別する基準となる位置)と実質的な差のない程度に、上記原料液の供給用配管の接続位置よりも上側の位置(すなわち、濃縮部としての機能を果たすだけの高さが確保されない程度に上記原料液の供給用配管よりも上側の位置)から、上記第1蒸留塔内を流下する液体を導出して、中間リボイラおよび第1ヒートポンプで熱回収を行うように構成した場合も、本発明の蒸留装置の範囲から除外されるものではない。
【0081】
なお、上記実施形態で説明し、あるいは、図に示した、原料液、蒸留塔の塔底液、塔頂ベーパなどに関する各種の量や、温度、成分濃度、消費エネルギー、圧力などの値は、あくまでも例示であって、本発明は、それらの値が上記実施形態の値とは異なる値となる場合を排除するものではない。
【0082】
また、上記実施形態では、ベンゼンとトルエンを含む原料を蒸留する場合を例にとって説明したが、原料液の種類に特別の制約はなく、種々の成分を含む原料を蒸留する場合に本発明を広く適用することが可能である。
【0083】
例えば、低沸点成分は、クロロフォルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、二硫化炭素、アセトン、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテル、酢酸イソアミル、酢酸ノルマルアミル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、トリクロロエタン、ノルマルヘキサン、メチルイソブチルケトン、ヘキサンやヘプタンを主成分とする石油ベンジン類や石油エーテル類であってもよい。
【0084】
また、高沸点成分は、酢酸、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、キシレン、ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、クロルベンゼン、酢酸ノルマルブチル、1,4-ジオキサン、ジメチルホルムアミド、パークロルエチレン、メチルイソブチルケトン、メチルノルマルブチルケトンなどであってもよい。
【0085】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 蒸留塔
10 塔頂コンデンサ
20 熱回収コンデンサ
30 冷却塔
21 真空吸引手段(真空ポンプ)
31 塔頂コンデンサ用循環冷却水供給ライン
32 熱回収コンデンサ用循環冷却水供給ライン
41~44 塔内液循環ポンプ
51~56 温水循環ポンプ
61~66 冷水循環ポンプ
100 蒸留装置
A 蒸留塔の濃縮部
B 蒸留塔の回収部
1HP(1HP1、1HP2、1HP3、1HP4、1HP4、1HP5)
第1ヒートポンプ
2HP 第2ヒートポンプ
RA(RA1、RA2、RA3、RA4) 中間リボイラ
RB 塔底リボイラ
図1
図2