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特許7551365無機充填剤分散剤、無機充填剤マスターバッチ、樹脂組成物、その製造方法及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】無機充填剤分散剤、無機充填剤マスターバッチ、樹脂組成物、その製造方法及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20240909BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20240909BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240909BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20240909BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20240909BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C09K23/52
C08L33/06
C08L53/00
C08K3/00
C08J3/22 CER
C08F293/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020118204
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015394
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】396021575
【氏名又は名称】テクノUMG株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】内藤 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】和田 慎一
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-110157(JP,A)
【文献】特開平01-210450(JP,A)
【文献】特開2004-025831(JP,A)
【文献】特表2005-500909(JP,A)
【文献】特開平06-148927(JP,A)
【文献】国際公開第2003/037945(WO,A1)
【文献】特開2018-141961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/52
C08F 293/00
C08L 53/00
C08L 33/06
C08K 3/00
C08J 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを有するブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単位を有するブロック(B)とからなるブロック共重合体(C)であり、前記ブロック共重合体(C)の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分子量分散度が1.0~2.5である、無機充填剤分散剤。
【請求項2】
前記ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)が20000~150000である、請求項1に記載の無機充填剤分散剤。
【請求項3】
前記ブロック(A)と前記ブロック(B)との質量比(前記ブロック(A):前記ブロック(B))が20:80~80:20である、請求項1又は2に記載の無機充填剤分散剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の無機充填剤分散剤と無機充填剤とを含む、無機充填剤マスターバッチ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の無機充填剤分散剤と無機充填剤とアクリル樹脂とを含む、樹脂組成物。
【請求項6】
請求項記載の無機充填剤マスターバッチとアクリル樹脂とを溶融混錬する、樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項記載の樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機充填剤分散剤、無機充填剤マスターバッチ、樹脂組成物、その製造方法及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を黒色に着色した樹脂組成物の成形品は種々の用途に用いられる。樹脂としては、透明性が高く、着色時の発色性に優れ、耐候性にも優れることから、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂が広く使用されている。
近年、車輌分野、建材分野、OA分野、家電分野等において、漆黒性が高く、高光沢で成形外観に優れる樹脂組成物が求められている。
【0003】
アクリル樹脂は透明性が高いことから染料で着色した場合には良好な漆黒性が得られる。しかし、アクリル樹脂と染料とを含む樹脂組成物は、染料自体の耐候性の悪さから耐候性が悪く、また成形時に金型を汚染しやすい問題がある。
そこで、アクリル樹脂を顔料、特にカーボンブラックで着色することが検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/152449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アクリル樹脂はカーボンブラックとの親和性が低く、カーボンブラックの分散不良により、発色性(漆黒性)が充分に発現しない問題や、カーボンブラックの凝集物による成形外観の悪化の問題が生じやすい。特に漆黒性の向上のために小粒子のカーボンブラックを使用すると、カーボンブラックの表面積が増大し凝集物が発生しやすい。また、アクリル樹脂は透明性が高いため、カーボンブラックで着色すると光沢が発現しにくい問題もある。
カーボンブラック以外の無機顔料を用いる場合にも同様の問題がある。
【0006】
また、ますます多様化する用途に応じた機能を付加するために、無機顔料以外の無機充填剤の添加が求められることがある。例えば剛性向上のために、ガラスフィラー、ガラスビーズ、炭素繊維、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、酸化チタン、ワラストナイト等の添加が求められることがある。しかし、このような無機充填剤を添加する場合も、カーボンブラックを添加する場合と同様に、無機充填剤の分散不良による問題(無機充填剤による機能が充分に発現しない、無機充填剤の凝集物により成形外観が悪化する)や、光沢が発現しにくい問題を抱えている。
【0007】
本発明の一態様は、無機充填剤をアクリル樹脂に良好に分散させることができ、無機充填剤の凝集物の発生が抑制され、無機充填剤による機能(例えば無機顔料による発色性)が充分に発現し、高光沢な成形品が得られる樹脂組成物を製造できる無機充填剤分散剤及び無機充填剤マスターバッチ、無機充填剤の凝集物の発生が抑制され、無機充填剤による機能が充分に発現し、高光沢な成形品が得られる樹脂組成物及びその製造方法、並びに無機充填剤の凝集物の発生が抑制され、無機充填剤による機能が充分に発現し、高光沢な成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを有するブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単位を有するブロック(B)とからなるブロック共重合体(C)である、無機充填剤分散剤。
〔2〕前記〔1〕の無機充填剤分散剤と無機充填剤とを含む、無機充填剤マスターバッチ。
〔3〕前記〔1〕の無機充填剤分散剤と無機充填剤とアクリル樹脂とを含む、樹脂組成物。
〔4〕前記〔2〕の無機充填剤マスターバッチとアクリル樹脂とを溶融混錬する、樹脂組成物の製造方法。
〔5〕前記〔3〕の樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の無機充填剤分散剤又は無機充填剤マスターバッチによれば、アクリル樹脂に無機充填剤を良好に分散させることができ、無機充填剤の凝集物の発生が抑制され、無機充填剤による機能が充分に発現し、高光沢な成形品が得られる樹脂組成物を製造できる。
本発明の樹脂組成物によれば、無機充填剤の凝集物の発生が抑制され、無機充填剤による機能が充分に発現し、高光沢な成形品が得られる。
本発明の成形品は、無機充填剤の凝集物の発生が抑制され、無機充填剤による機能が充分に発現し、高光沢なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例2の樹脂組成物の成形品のレーザー顕微鏡像(倍率50倍)。
図2】比較例1の樹脂組成物の成形品のレーザー顕微鏡像(倍率50倍)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、数平均分子量を「Mn」とも記し、重量平均分子量を「Mw」とも記す。
Mw及びMnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0012】
〔無機充填剤分散剤〕
本発明の一態様に係る無機充填剤分散剤(以下、「本分散剤」とも記す。)は、ブロック共重合体(C)である。
ブロック共重合体(C)は、芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを有するブロック(A)と、(メタ)アクリル酸エステル単位を有するブロック(B)とからなる。
本分散剤は、無機充填剤をアクリル樹脂に分散させるために用いられる。
【0013】
[ブロック(A)]
ブロック(A)は、芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを有する共重合体である。ブロック(A)は、求める物性に応じて、ブロック(A)の特性を損なわない範囲で、他のモノマー単位をさらに有していてもよい。
【0014】
芳香族ビニルとしては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-,m-又はp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。これら芳香族ビニルは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
シアン化ビニルとしては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらシアン化ビニルは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
ブロック(A)における他のモノマーとしては、芳香族ビニル及びシアン化ビニルと共重合可能であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、N置換マレイミド、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、後述するブロック(B)における(メタ)アクリル酸エステルと同様のものが挙げられる。これら他のモノマーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
芳香族ビニル単位の含有量は、ブロック(A)を構成する全モノマー単位100質量%に対して、50~95質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲内であれば、無機充填剤の分散性がより良好となる。
【0017】
シアン化ビニル単位の含有量は、ブロック(A)を構成する全モノマー単位100質量%に対して、5~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。シアン化ビニル単位の含有量が上記範囲内であれば、成形品の光沢がより良好となる。
【0018】
芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位との合計の含有量は、ブロック(A)を構成する全モノマー単位100質量%に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0019】
ブロック(A)のMwは、5000~300000が好ましく、20000~150000がより好ましく、35000~80000がさらに好ましい。ブロック(A)のMwが上記範囲内であれば、ブロック(A)が無機充填剤に吸着しやすく分散性が良好となり、またアクリル樹脂の物性(耐衝撃性等)への悪影響も少なくなる。
【0020】
[ブロック(B)]
ブロック(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単位を有する重合体である。ブロック(B)は、求める物性に応じて、ブロック(B)の特性を損なわない範囲で、他のモノマー単位をさらに有していてもよい。
【0021】
「(メタ)アクリル酸エステル」は、メタクル酸エステル及びアクリル酸エステルの総称である。
メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
【0022】
ブロック(B)における他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能であればよく、例えば、芳香族ビニル、シアン化ビニル、無水マレイン酸、N置換マレイミド、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。芳香族ビニル及びシアン化ビニルとしてはそれぞれ、ブロック(A)における芳香族ビニル及びシアン化ビニルと同様のものが挙げられる。これら他のモノマーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は、ブロック(B)を構成する全モノマー単位100質量%に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0024】
ブロック(B)のMwは、20000~300000が好ましく、20000~150000がより好ましく、35000~90000がさらに好ましい。ブロック(B)のMwが上記範囲内であれば、ブロック(A)で吸着した無機充填剤がアクリル樹脂に分散しやすく、またアクリル樹脂の物性(耐衝撃性等)への悪影響も少なくなる。
【0025】
[ブロック共重合体(C)]
ブロック共重合体(C)は、ブロック(A)とブロック(B)とからなる。
ブロック共重合体(C)を構成するブロック(A)は1つでも2つ以上でもよい。ブロック共重合体(C)を構成するブロック(B)は1つでも2つ以上でもよい。
【0026】
ブロック共重合体(C)としては、例えば、A-Bで表されるジブロック体、A-B-A又はB-A-Bで表されるトリブロック体、AとBとが交互に連なるテトラブロック体以上のポリブロック体が挙げられる。ここで、Aはブロック(A)を示し、Bはブロック(B)を示す。ブロック共重合体(C)の構造としては、無機充填剤の分散性、無機充填剤への吸着性、アクリル樹脂への分散性、製造しやすさの点から、A-Bで表されるジブロック体が好ましい。
【0027】
ブロック共重合体(C)中、ブロック(A)とブロック(B)との質量比(ブロック(A):ブロック(B))は、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、35:65~65:35がさらに好ましい。この質量比が上記範囲内にあると無機充填剤の分散性、無機充填剤への吸着性、アクリル樹脂への分散性が良好となる。
【0028】
ブロック共重合体(C)のMwは、25000~350000が好ましく、30000~250000がより好ましく、50000~200000がさらに好ましい。ブロック共重合体(C)のMwが上記範囲内であれば、無機充填剤のアクリル樹脂への分散性がより良好となり、またアクリル樹脂の物性(耐衝撃性等)への悪影響も少なくなる。
ブロック共重合体(C)の分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~2.5がより好ましい。分子量分散度が上記上限値以下であれば、無機充填剤への吸着性、アクリル樹脂への分散性がより良好となる。
【0029】
[ブロック共重合体(C)の製造方法]
ブロック共重合体(C)の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)あらかじめ合成した、反応性官能基を末端に有するブロック(A)(芳香族ビニルとシアン化ビニルの共重合体)と、反応性官能基を末端に有するブロック(B)((メタ)アクリル酸エステルの重合体)とを反応させる方法。
(2)メルカプト基を有するブロック(A)(又はメルカプト基を有するブロック(B))の存在下に、(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分(又は芳香族ビニル及びシアン化ビニルを含むモノマー成分)を重合する方法。
(3)リビングラジカル重合法により、ブロック共重合体(C)の各ブロックを構成するモノマーを順次重合する方法。
上記(1)の方法における反応性官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0030】
上記の方法の中でも、ブロック共重合体(C)の構造を制御しやすいことから、(3)の方法が好ましい。
リビングラジカル重合法としては、NMP法(ニトロキシドを介するラジカル重合法)、ATRP法(原子移動ラジカル重合法)、TERP法(有機テルル化合物を用いるラジカル重合法)、RAFT重合法(可逆的付加開裂連鎖移動重合法)等が挙げられる。
これらの中でも、温和な条件で重合ができ、種々のモノマーに対応できることから、RAFT重合法が好ましい。
【0031】
RAFT重合法では、RAFT剤(可逆的付加開裂連鎖移動剤)の存在下でモノマーを重合する。
RAFT重合法における重合方法としては、特に限定されないが、例えば、溶液重合、懸濁重合、ミニエマルション重合等が挙げられる。これらの中でも、有機溶剤を使用しないことからVOCが低く作業環境の安全性に優れる、生産性に優れる等の観点から、ミニエマルション重合が好ましい。
【0032】
RAFT重合法によるミニエマルション重合でブロック共重合体(C)を製造する方法としては、例えば、ブロック(A)を構成するモノマー(以下、「モノマー成分(a)」とも記す。)、RAFT剤、疎水性物質、乳化剤、水、必要に応じて開始剤を含む混合液をミニエマルション化する工程と、得られたミニエマルションを重合開始温度まで加熱しモノマー成分(a)を重合することで、ブロック(A)の水分散体を得る工程と、得られたブロック(A)の水分散体にブロック(B)を構成するモノマー(以下、「モノマー成分(b)」とも記す。)を滴下し重合する工程と、を有する方法が挙げられる。
なお、ここではモノマー成分(a)を重合した後にモノマー成分(b)を重合する例を示したが、モノマー成分(b)を重合した後にモノマー成分(a)を重合してもよい。また、ブロック共重合体(C)の製造方法は上記方法に限定されるものではない。
【0033】
モノマー成分(a)は、芳香族ビニルとシアン化ビニルとを含み、他のモノマーをさらに含んでいてもよい。モノマー成分(a)100質量%に対する芳香族ビニル、シアン化ビニルそれぞれの含有量(質量%)は、ブロック(A)を構成する全モノマー単位100質量%に対する芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位それぞれの含有量と同様である。
【0034】
モノマー成分(b)は、(メタ)アクリル酸エステルを含み、他のモノマーをさらに含んでいてもよい。モノマー成分(b)100質量%に対する(メタ)アクリル酸エステルの含有量(質量%)は、ブロック(B)を構成する全モノマー単位100質量%に対する(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量と同様である。
【0035】
RAFT重合法で用いられるRAFT剤は、RAFT重合を生じる化合物であり、一般的には、下記式1で示される構造を有する化合物(ジチオベンゾエート、トリチオカーボネート、ジチオカルバメート、キサンタート等のチオカルボニルチオ化合物)である。
【0036】
【化1】
ZはC=S結合の反応性を制御し、ラジカルの付加・開裂速度に影響する官能基であり、Rは重合反応を再開し、成長ラジカルに対して良好なホモリシス型脱離基である。
【0037】
置換基ZおよびRは使用するモノマーによって応じて適切に選択される必要があり、その指針については多くの文献があり、例えば下記の文献に示されている。
Keddie, D. J., Moad, G., Rizzardo, E., Thang, S. H. : Macromolecules, 45, 5321 (2012).
【0038】
RAFT剤としては、より具体的には、これらに限定されるものではないが、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸、2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、2’-シアノブタン-2’-イル4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオエート、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸、3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸2’-シアノブタン-2’-イル、3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸シアノメチル、N-メチル-N-フェニルジチオカルバミン酸シアノメチル、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル、トリチオ炭酸=ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス[4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス{4-[エチル-(2-アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸=ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]等が挙げられる。
【0039】
RAFT剤の使用量は、モノマー成分(a)及びモノマー成分(b)の合計100質量部に対し、例えば0.05~3質量部である。RAFT剤の使用量が上記範囲内であれば、ブロック共重合体(C)の構造を制御しやすい。
【0040】
RAFT重合法によるミニエマルション重合でブロック共重合体(C)を製造する場合に、疎水性物質を用いることができる。疎水性物質の存在下でミニエマルション化すると、ミニエマルション重合の製造安定性がより向上する。
疎水性物質の不在下でミニエマルション化すると、オストワルド熟成に起因するミセル間のモノマー移行やモノマー油滴同士の合一によりブロック共重合体(C)の生産性が低下するおそれがある。また、モノマー移行によりRAFT剤の存在しない新たな小粒径の粒子が生成しやすくなり、リビングラジカル重合ではなく通常のラジカル重合でポリマーが生成し、ブロック共重合体ではないポリマーが多く生成するおそれがある。
【0041】
疎水性物質としては、例えば炭素数10以上の炭化水素類、炭素数10以上のアルコール、Mn10000以下の疎水性ポリマー、疎水性モノマー(例えば、炭素数10~30のアルコールのビニルエステル、炭素数12~30のアルコールのビニルエーテル、炭素数12~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数10~30(好ましくは炭素数10~22)のアルキル基を有するカルボン酸ビニルエステル、p-アルキルスチレン)、疎水性の連鎖移動剤、疎水性の過酸化物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
疎水性物質としては、より具体的には、ヘキサデカン、オクタデカン、イコサン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、オリーブ油、セチルアルコール、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、Mn500~10000のポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0043】
疎水性物質の使用量は、モノマー成分(a)及びモノマー成分(b)の合計100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。疎水性物質の使用量が上記範囲内であれば、安定してブロック共重合体(C)が得られる。また、ブロック共重合体(C)を無機充填剤マスターバッチとしたときに、ガスの発生やブリードアウト等の悪影響を及ぼしにくい。
【0044】
乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
乳化剤としては、より具体的には、高級アルコール(例えば炭素数6~30のアルコール)の硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸塩系(例えば、モノグリセリドリン酸アンモニウム)、脂肪酸塩(例えば、アルケニルコハク酸ジカリウム)、アミノ酸誘導体塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等のノニオン性界面活性剤;アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有する両性界面活性剤等が挙げられる。
これらの乳化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
乳化剤の使用量は、モノマー成分(a)及びモノマー成分(b)の合計100質量部に対し、0.01~10質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。乳化剤の使用量が上記範囲内であれば、ブロック共重合体(C)を安定して製造できる。
【0046】
開始剤としては、ラジカル重合するためのラジカル重合開始剤であればよく、その種類に特に制限はないが、例えば、アゾ重合開始剤、光重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、加熱により重合を開始できる点で、アゾ重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、レドックス系開始剤が好ましく、アゾ重合開始剤、有機過酸化物がより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]フォルムアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0048】
無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が挙げられる。
【0049】
有機過酸化物としては、例えばペルオキシエステル化合物が挙げられ、その具体例としては、α,α’-ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ2-ヘキシルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ2-ヘキシルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマレイックアシッド、t-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルペルオキシ)イソフタレート、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシド)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジメチルビス(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(t-ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレラート、2-エチルヘキサンペルオキシ酸t-ブチル、ジベンゾイルパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシド及びt-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0050】
レドックス系開始剤としては、有機過酸化物と硫酸第一鉄とキレート剤と還元剤とを組み合わせたものが好ましい。例えば、クメンヒドロペルオキシドと硫酸第一鉄とピロリン酸ナトリウムとデキストロースとを組み合わせたものや、t-ブチルヒドロパーオキシドとナトリウムホルムアルデヒトスルホキシレート(ロンガリット)と硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムとを組み合わせたもの等が挙げられる。
【0051】
開始剤の使用量は、モノマー成分(a)及びモノマー成分(b)の合計100質量部に対し、0.03~2質量部が好ましい。開始剤の使用量が上記範囲内であれば、ブロック共重合体(C)が安定して得られる。
【0052】
混合液は、モノマー成分(a)、RAFT剤、疎水性物質、乳化剤、水、必要に応じて開始剤を混合することにより調製できる。
混合方法は特に限定されないが、例えば、モノマー成分(a)、RAFT剤、疎水性物質、必要に応じて開始剤を混合して油相を調製し、油相に乳化剤、水を添加して混合する方法が挙げられる。乳化剤と水は、別々に添加してもよく、それらを予め混合し乳化剤水溶液として添加してもよい。
水の使用量は、例えば、モノマー成分(a)100質量部に対して80~1000質量部である。
【0053】
混合液をミニエマルション化する工程では、例えば、混合液に対しせん断処理を施す。せん断処理により、モノマー成分(a)を含む油滴が引きちぎられ、乳化剤に覆われた微小油滴が形成される。これにより、ミニエマルションが得られる。
せん断処理方法としては、公知の任意の方法を用いることができ、例えば高せん断装置を用いる方法が挙げられる。ミニエマルションを形成できる高せん断装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、高圧ポンプ及び相互作用チャンバーからなる乳化装置、超音波エネルギーや高周波によりミニエマルションを形成させる装置等が挙げられる。
高圧ポンプ及び相互作用チャンバーからなる乳化装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、SPX Corporation APV社製「圧力式ホモジナイザー」、三丸機械工業製「圧力式ホモジナイザー」、(株)パウレック製「マイクロフルイダイザー」等が挙げられる。
超音波エネルギーや高周波によりミニエマルションを形成させる装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、Fisher Scient製「ソニックディスメンブレーター」や(株)日本精機製作所製「ULTRASONIC HOMOGENIZER」等が挙げられる。
【0054】
ミニエマルション中の微小油滴の50%粒子径は10~300nmが好ましく、30~150nmがより好ましい。微小油滴の50%粒子径が上記範囲内であれば、反応性が良好で、ブロック(A)を生産性良く製造できる。
50%粒子径は、動的光散乱法により測定される体積基準の粒子径分布において累積値が50%となる粒子径である。
50%粒子径の調整方法としては、例えば、乳化剤の使用量、水の使用量、圧力ホモジナイザーの圧力等を変更し、高せん断装置のせん断力を調整する方法が挙げられる。
【0055】
ミニエマルションを重合開始温度まで加熱することにより、微小油滴中のモノマー成分(a)が重合し、ブロック(A)の微粒子が生成する。これにより、ブロック(A)の水分散体が得られる。
重合開始温度は、開始剤の種類によっても異なるが、例えば50~120℃である。
重合は、モノマー転化率が70~100%、好ましくは80~98%まで行う。
【0056】
続いて、ブロック(A)の水分散体にモノマー成分(b)を滴下し重合する。これにより、ブロック(A)とブロック(B)とからなるブロック共重合体(C)の水分散体が得られる。
重合開始温度は、開始剤の種類によっても異なるが、例えば50~120℃である。
重合は、モノマー転化率が70~100%、好ましくは80~98%まで行う。
【0057】
その後、必要に応じて、ブロック共重合体(C)の水分散体からブロック共重合体(C)を回収する。
回収方法としては、例えば、(i)凝固剤を溶解させた熱水中に水分散体を投入して、ブロック共重合体(C)をスラリー状態に凝析することによって回収する方法(湿式法)、(ii)加熱雰囲気中にブロック共重合体(C)の水分散体を噴霧することにより、半直接的にブロック共重合体(C)を回収する方法(スプレードライ法)等が挙げられる。
【0058】
凝固剤としては、これらに限定されないが、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。
【0059】
スラリー状態のブロック共重合体(C)から乾燥状態のブロック共重合体(C)を得る方法としては、(i)洗浄によって、スラリーに残存する乳化剤残渣、凝固剤残渣を水中に溶出させた後に、このスラリーを遠心脱水機又はプレス脱水機で脱水し、さらに気流乾燥機等で乾燥する方法、(ii)スラリーに対し、圧搾脱水機、押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法等が挙げられる。
【0060】
〔無機充填剤マスターバッチ〕
本発明の一態様に係る無機充填剤マスターバッチ(以下、「本マスターバッチ」とも記す。)は、本分散剤と無機充填剤とを含む。
本分散剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0061】
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミナ、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、クレー、雲母、ガラス微小球、ウォラストナイト、二酸化チタン、酸化鉄、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、シリカ、硫化カドミウム、黄鉛、カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、二酸化チタン、酸化鉄、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、シリカ、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、カーボンブラック等は無機顔料としても機能する。これらの無機充填剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物に漆黒性を付与する場合、無機充填剤の少なくとも一部はカーボンブラックであることが好ましい。
【0062】
カーボンブラックとしては、例えば、チャネルブラック系、ファーネスブラック系、ランプブラック系、サーマルブラック系、ケッチェンブラック系、ナフタレンブラック系等が挙げられる。
カーボンブラックは、粒子表面が二次処理されたものであってもよい。二次処理としては、例えば、酸化処理による表面官能基の付与、不活性雰囲気下での加熱処理による結晶構造による黒鉛化、水蒸気又は炭酸ガスでの賊活処理等が挙げられる。前記酸化処理としては、オゾン、硝酸、亜硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素のいずれかによる処理が挙げられる。酸化処理によってカーボンブラック表面にカルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性官能基が生成し、カーボンブラック表面の濡れ性や分散性が向上する。
【0063】
カーボンブラックの平均一次粒子径は特に制限はないが、10~20nmが好ましい。平均一次粒子径10nm以上であれば、樹脂組成物中でのカーボンブラックの凝集がより抑制され、20nm以下であれば、漆黒性が発現しやすい。カーボンブラックの平均一次粒子径は透過型電子顕微鏡での観測により測定される。
カーボンブラックのpHは、特に制限されないが、分散性から、6以下が好ましい。カーボンブラックのpHはカーボンブラックと蒸留水の混合液についてpHメーターで測定される。
カーボンブラックのフタル酸ジブチル(DBP)吸収量は、特に制限されないが、発色性から、40~60cm/100gが好ましい。DBP吸収量はカーボンブラック100gが吸収するジブチルフタレート量(JIS K6221)である。
【0064】
カーボンブラックとしては、市販品を用いることができる。市販のカーボンブラックとしては、例えば、三菱カーボンブラック(登録商標)♯2600、♯2300、♯1000、♯980、♯970、♯960、♯950、♯44(三菱ケミカル株式会社製)、トーカブラック(登録商標)♯8500、♯8300(東海カーボン株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本マスターバッチは、本分散剤及び無機充填剤のほかに、他の添加剤及び他の熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤等の各種安定剤、滑剤、加工剤、有機顔料、染料、有機充填剤、シリコーンオイル、パラフィンオイル、可塑剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、金属粉末等が挙げられる。
【0066】
他の熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えばアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-α-メチルスチレン共重合体(αSAN樹脂)、スチレン-無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル-スチレン-N-置換マレイミド三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸-N-置換マレイミド三元共重合体、ゴム質重合体(ポリブタジエン、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)又はこれらの複合ゴム等)の存在下、芳香族ビニル、シアン化ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーをグラフト重合した樹脂(ABS樹脂、ASA樹脂、SAS樹脂、AES樹脂等)、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種のオレフィン系エラストマー、各種のポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メチルメタクリレート-スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)、ポリエーテルサルフォン(PES樹脂)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK樹脂)、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(例えばナイロン)等が挙げられる。
【0067】
本マスターバッチにおいて、本分散剤と無機充填剤との質量比は、特に制限されないが、本分散剤と無機充填剤との合計100質量部に対し、本分散剤が20~95質量部、無機充填剤が5~80質量部であることが好ましく、本分散剤が30~80質量部、無機充填剤が20~70質量部であることがより好ましい。本分散剤の割合が前記下限値以上であれば、本マスターバッチを用いて樹脂組成物を製造する際に、無機充填剤をアクリル樹脂に分散させやすく、前記上限値以下であれば、樹脂組成物の製造に用いるマスターバッチの量を低減できる。
【0068】
無機充填剤がカーボンブラックを含む場合、カーボンブラックの含有量は、無機充填剤100質量%に対し、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。カーボンブラックの含有量が前記下限値以上であれば、本マスターバッチを用いて得られる樹脂組成物の漆黒性がより優れる。
【0069】
他の添加剤及び他の熱可塑性樹脂の合計の含有量は、特に限定されないが、例えば、本分散剤と無機充填剤との合計100質量部に対し、0~30質量部である。
【0070】
本マスターバッチの製造方法としては、特に限定されるわけではないが、本分散剤と無機充填剤とを溶融混錬する方法が好ましい。例えば、本分散剤と無機充填剤と必要に応じて添加剤及びその他の熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、V型ブレンダやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、これにより得られた混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機等を用いて溶融混練することにより、本マスターバッチを製造できる。溶融混練後、必要に応じて、ペレタイザー等を用いて溶融混練物をペレット化してもよいし、溶融混練物又はそのペレットを粉砕し粉末にしてもよい。
【0071】
〔樹脂組成物〕
本発明の一態様に係る樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」とも記す。)は、本分散剤と無機充填剤とアクリル樹脂とを含む。
【0072】
無機充填剤としては、本マスターバッチにおける無機充填剤と同様ものが挙げられる。
本樹脂組成物が本マスターバッチを用いて得られたものである場合、本樹脂組成物中の無機充填剤は、本マスターバッチに由来するもののみでもよく、本マスターバッチに由来しないものをさらに含んでいてもよい。
【0073】
本発明におけるアクリル樹脂は、メタクリル酸エステル単位を有する重合体である。アクリル樹脂は、必要に応じて、その他のモノマー単位をさらに有していてもよい。
【0074】
メタクリル酸エステルとしては、ブロック(B)におけるメタクリル酸エステルと同様のものが挙げられる。
【0075】
その他のモノマーとしては、メタクリル酸エステルと共重合可能なものであればよく、これらに限定されるものではないが、芳香族ビニル、シアン化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、アクリルアミド、マレイン酸、無水マレイン酸、N-置換マレイミド等が挙げられる。芳香族ビニル、シアン化ビニルはそれぞれ、ブロック(A)における芳香族ビニル、シアン化ビニルと同様のものが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、ブロック(B)におけるアクリル酸エステルと同様のものが挙げられる。
【0076】
アクリル樹脂中のメタクリル酸エステル単位の含有量は、アクリル樹脂を構成する全モノマー単位(メタクリル酸エステル単位とその他のモノマー単位の合計)100質量%に対し、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。メタクリル酸エステル単位の含有量が前記下限値以上であれば、樹脂組成物の発色性、漆黒性が良好となる。
【0077】
アクリル樹脂は、メタクリル酸エステル及び必要に応じてその他のモノマーを重合することにより製造できる。市販のアクリル樹脂を用いてもよい。
【0078】
本樹脂組成物は、必要に応じて、本分散剤及び無機充填剤のほかに、他の添加剤及び他の熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
他の添加剤、他の熱可塑性樹脂はそれぞれ、本マスターバッチにおける他の添加剤、他の熱可塑性樹脂と同様ものが挙げられる。
【0079】
他の熱可塑性樹脂としては、上記の中でも、良好な物性が発現したり無機充填剤の分散性が良好になったりする点で、ゴム質重合体の存在下、芳香族ビニル、シアン化ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーをグラフト重合した樹脂が好ましい。
【0080】
本樹脂組成物が本マスターバッチを用いて得られたものであり、本マスターバッチが他の添加剤を含む場合、本樹脂組成物中の他の添加剤は、本マスターバッチに由来するもののみでもよく、本マスターバッチに由来しないものをさらに含んでいてもよい。他の熱可塑性樹脂も同様である。
【0081】
本分散剤の含有量は、アクリル樹脂と他の熱可塑性樹脂との合計100質量部に対し、1~50質量部が好ましく、1~25質量部がより好ましい。本分散剤の含有量が前記範囲の上記範囲内であれば、アクリル樹脂及び他の熱可塑性樹脂からなる樹脂成分の本来の物性を損なわずに無機充填剤の分散性を充分に高めることができる。
【0082】
無機充填剤の含有量は、アクリル樹脂と他の熱可塑性樹脂との合計100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。無機充填剤の含有量が前記範囲の上記範囲内であれば、アクリル樹脂及び他の熱可塑性樹脂からなる樹脂成分の本来の物性を損なわずに無機充填剤による機能を充分に付与できる。例えば無機充填剤がカーボンブラックを含む場合、樹脂組成物の発色性と漆黒性が良好となる。
【0083】
アクリル樹脂の含有量は、アクリル樹脂と他の熱可塑性樹脂との合計100質量部に対し、40~100質量部が好ましく、50~100質量部がより好ましい。アクリル樹脂の含有量が上記範囲内であれば、発色性、漆黒性が良好となる。
【0084】
他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂と他の熱可塑性樹脂との合計100質量部に対し、0~10質量部である。
【0085】
<樹脂組成物の製造方法>
本樹脂組成物の製造方法としては、例えば、本マスターバッチとアクリル樹脂とを溶融混錬する方法が挙げられる。この際、必要に応じて、本マスターバッチ及びアクリル樹脂とともに、さらなる無機充填剤、他の添加剤、他の熱可塑性樹脂等を溶融混錬してもよい。
例えば、本マスターバッチとアクリル樹脂と必要に応じて無機充填剤、他の添加剤及び他の熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、V型ブレンダやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、これにより得られた混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機等を用いて溶融混練することにより、本樹脂組成物を製造できる。溶融混錬後、必要に応じて、ペレタイザー等を用いて溶融混練物をペレット化してもよい。
なお、本マスターバッチを用いずに、本分散剤と無機充填剤とアクリル樹脂と必要に応じて他の添加剤及び他の熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とを溶融混錬して本樹脂組成物を製造してもよい。無機充填剤をより均一に分散できる点では、本マスターバッチを用いる方法が好ましい。
【0086】
〔成形品〕
本発明の一態様に係る成形品(以下、「本成形品」とも記す。)は、本樹脂組成物を含む。
本成形品は、例えば、本樹脂組成物を公知の成形方法によって成形して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
本成形品は、例えば、車輌分野、建材分野、OA分野、家電分野等の用途に利用できる。
【実施例
【0087】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例中の「%」及び「部」は、明記しない限りは質量基準である。
以下の例における各種測定及び評価方法は以下の通りである。
【0088】
<50%粒子径、90%粒子径>
マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒としてイオン交換水を用いて測定した。
【0089】
<モノマー転化率>
1gのブロック(A)のラテックス又はブロック共重合体(C)のラテックスを130℃で15分間加熱することで水分および未反応モノマーを揮発させ、残存した固形分からモノマー転化率を求めた。
【0090】
<Mn、Mw>
ブロック(A)のラテックス又はブロック共重合体(C)のラテックスを凝固剤として塩化カルシウムを用いて60~95℃で凝析させ、脱水、洗浄、乾燥することでブロック(A)又はブロック共重合体(C)を回収した。
得られたブロック(A)又はブロック共重合体(C)をテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより標準ポリスチレン換算のMw及びMnを求めた。
なお、ブロック共重合体(C)のMnからブロック(A)のMnを減じた値をブロック(B)のMnとみなすことができる。Mwも同様である。
【0091】
<発色性(漆黒性)の測定>
樹脂組成物のペレットを射出成形機(株式会社日本製鋼所製)によって成形して100mm×100mm(厚み3mm)の試験片(以下、「成形品1」と記す。)を作製した。
測色計(コニカミノルタ製CM-3500D)により成形品1の色調(L)をSCE方式で測定した。Lの値が小さいほど、漆黒性が高く発色性に優れる。
【0092】
<光沢度の測定>
デジタル変角光沢計(スガ試験機(株)製「UGV-5D」)を使用して、JIS Z8741で定義される、入射角60°における成形品1の表面の光沢度(Gs)を測定した。
【0093】
<成形外観の観測>
成形品1の外観を、目視で観測し、さらにレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製VK-X1000)を使用し倍率50倍にて観測し、以下の基準で評価した。
◎:目視でもレーザー顕微鏡でもカーボンブラック凝集物がほとんど見られない。
〇:カーボンブラック凝集物が目視では見えず、レーザー顕微鏡ではわずかに見える。
△:目視でもレーザー顕微鏡でもカーボン凝集物が見える。
×:目視でもレーザー顕微鏡でも多数のカーボンブラック凝集物がみられる。
また、同レーザー顕微鏡を使用し、界面の展開面積比(Sdr)を測定した。界面の展開面積比(Sdr)が小さいほど表面が平滑で凝集物が少ない。
【0094】
<ブロック共重合体(C-1)の製造>
スチレン37.5質量部、アクリロニトリル12.5質量部、流動パラフィン2.5質量部、過酸化ラウロイル0.1質量部、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸0.15質量部を混合し溶解させた。得られた溶液を、脱イオン水200質量部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2質量部を溶解させた水溶液に添加し、ホモミキサー装置(SMT製HIGH-FLEX DISPERSER HG92)で5分間撹拌することで分離しない程度に乳化させた。得られた乳化液を、小型圧力ホモジナイザー(三丸機械工業(株)製エコナイザー02)を用い、50MPaで4回処理することでミニエマルション(モノマー微粒子の水分散体)を得た。得られたミニエマルションにおけるモノマー微粒子の50%粒子径は70nm、90%粒子径は90nmであった。
【0095】
得られたミニエマルションを冷却管、ジャケット加熱機及び攪拌装置を備えた反応器に入れて窒素置換した後、80℃で360分反応させることでブロック(A-1)のラテックスを得た。モノマー転化率は93%、Mwは116000、Mnは87000、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
【0096】
得られたブロック(A-1)のラテックスに80℃でメタクリル酸メチル50質量部を60分かけて滴下したのち、さらに80℃で300分反応させることでブロック(A-1)にブロック(B-1)が共重合したブロック共重合体(C-1)のラテックスを得た。モノマー転化率は96%、ブロック共重合体(C-1)のMwは255000、Mnは181000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
【0097】
<ブロック共重合体(C-2)の製造>
2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸を0.3質量部、過酸化ラウロイルを0.2質量部とした以外はブロック共重合体(C-1)の製造と同様の操作を行い、ブロック共重合体(C-2)を得た。
ブロック(A-2)のラテックスを得る際のモノマー転化率は92%、ブロック(A-2)のMwは61000、Mnは48000、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。ブロック共重合体(C-2)のラテックスを得る際のモノマー転化率は94%であり、ブロック共重合体(C-2)のMwは128000、Mnは98000、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
【0098】
<ブロック共重合体(C-3)の製造>
スチレンを24.75質量部、アクリロニトリルを8.25質量部、メタクリル酸メチルを67質量部、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸を0.3質量部、過酸化ラウロイルを0.2質量部とした以外はブロック共重合体(C-1)の製造と同様の操作を行い、ブロック共重合体(C-3)を得た。
ブロック(A-3)のラテックスを得る際のモノマー転化率は91%、ブロック共重合体(C-3)のラテックスを得る際のモノマー転化率は92%であった。ブロック(A-3)のMwは43000、Mnは34000、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であり、ブロック共重合体(C-3)のMwは124000、Mnは95000、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
【0099】
<ブロック共重合体(C-4)の製造>
スチレンを50.25質量部、アクリロニトリルを16.75質量部、メタクリル酸メチルを33質量部、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸を0.3質量部、過酸化ラウロイルを0.2質量部とした以外はブロック共重合体(C-1)の製造と同様の操作を行い、ブロック共重合体(C-4)を得た。
ブロック(A-4)のラテックスを得る際のモノマー転化率は95%、ブロック共重合体(C-4)のラテックスを得る際のモノマー転化率は93%であった。ブロック(A-3)のMwは93000、Mnは67000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4、ブロック共重合体(C-4)のMwは141000、Mnは99000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
【0100】
<実施例1~4、比較例1~3>
[無機充填剤マスターバッチの製造]
カーボンブラック分散剤(としてブロック共重合体(C-1)~(C-4)、SAN(テクノUMG(株)製S100N)及びPMMA(三菱ケミカル(株)製VH5)のいずれか1つを100質量部と、カーボンブラック(三菱ケミカル(株)製#1000)10質量部とを二軸押出機(株)日本製鋼所製TEX-28V)で溶融混錬することでカーボンブラックマスターバッチ(無機充填剤マスターバッチ)を得た。
【0101】
[樹脂組成物の製造]
グラフト重合体(テクノUMG(株)製MUX-60)と、アクリル樹脂(三菱ケミカル(株)製VH5)と、上記で得たカーボンブラックマスターバッチ又はカーボンブラック(三菱ケミカル(株)製#1000)とを二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX-28V)で溶融混錬することで、表1に示す組成の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、発色性(漆黒性)、光沢、成形外観を評価した。結果を表1に示す。また、実施例2、比較例1それぞれの樹脂組成物を用いた成形品1のレーザー顕微鏡像を図1図2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1中に略号で示した材料は以下とおりである。
MUX-60:テクノUMG(株)製MUX-60、ポリブタジエン・ポリアクリル酸ブチル複合ゴムの存在下でメタクリル酸メチルおよびアクリル酸アルキルを重合して得られたグラフト重合体。
PMMA:三菱ケミカル(株)製VH5、ポリメタクリル酸メチル。
C-1~C-4:各々、ブロック共重合体(C-1)~(C-4)。
SAN:テクノUMG(株)製S100N、アクリロニトリル-スチレン共重合体。
#1000:三菱ケミカル(株)製#1000、平均一次粒子径18nm、pH=3.5、DBP吸収量56cm/100g。
表1中の空欄はその材料が配合されていないことを示す。
【0104】
表1に示す通り、グラフト共重合体(C)をカーボンブラック分散剤として使用した実施例1~4では、発色性、成形外観が良好で高光沢な成形品が得られた。
一方、グラフト共重合体(C)の代わりにSANを使用した比較例1では、成形品の発色性、成形外観に劣っていた。
グラフト共重合体(C)の代わりにPMMAを用いた比較例1、カーボンブラック分散剤を使用しなかった比較例3では、成形品の発色性、成形外観、光沢に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の無機充填剤分散剤によれば、無機充填剤をアクリル樹脂に良好に分散させることができる。そのため、本発明の無機充填剤分散剤と無機充填剤とアクリル樹脂とを含む樹脂組成物によれば、無機充填剤の凝集物の発生が抑制され、無機充填剤による機能が充分に発現し、高光沢な成形品が得られる。
本発明の無機充填剤分散剤は、特にカーボンブラックでアクリル樹脂を着色する際に有益である。
図1
図2