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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】電力調達量決定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240909BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240909BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240909BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/00 180
G06Q10/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020120704
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017879
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正直 和也
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広考
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207070(JP,A)
【文献】特開2017-182698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
将来の各時間帯の電力調達量を決定する電力調達量決定装置において、
対象とする前記時間帯において相対取引により電力を調達する第1の電力調達方法により調達する前記電力調達量の初期値を設定する調達量初期値設定部と、
対象とする前記時間帯に対する前記電力調達量の調整量を算出し、算出した当該調整量及び前記電力調達量の初期値に基づいて、当該時間帯の前記電力調達量を決定する電力調達量決定部と
を備え、
前記電力調達量決定部は、
対象とする前記時間帯における電力需要の予測値の予測誤差を表す第1の誤差情報と、当該時間帯に前記第1の電力調達方法により電力を調達する場合の予め定められた第1の電力単価と、当該時間帯に電力取引市場から電力を調達する第2の電力調達方法により電力を調達する場合に予測される第2の電力単価と、前記第2の電力単価の予測誤差を表す第2の誤差情報とに基づいて前記電力調達量の前記調整量を算出する
ことを特徴とする電力調達量決定装置。
【請求項2】
前記電力調達量決定部は、
対象とする前記時間帯における前記電力調達量の前記調整量をdWh(d,t)、当該時間帯における前記第1の電力単価及び前記第2の電力単価の差をD(d,t)、前記電力需要の予測値の予測誤差の標準偏差をσ1、当該時間帯における前記第2の電力単価の予測誤差の標準偏差をσ2、C1及びC2をそれぞれ予め定められた定数として、次式
【数8】
ただし、
【数9】
により、対象とする前記時間帯における前記電力調達量の前記調整量を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力調達量決定装置。
【請求項3】
前記電力調達量決定部は、
算出した前記電力調達量の前記調整量が、対象とする前記時間帯について予め定められた当該調整量の許容範囲を逸脱する場合には、当該調整量を前記許容範囲内の値に変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力調達量決定装置。
【請求項4】
前記許容範囲は、
需要家の電力機器を制御することにより調整可能な消費電力の範囲である
ことを特徴とする請求項3に記載の電力調達量決定装置。
【請求項5】
前記調達量初期値設定部は、
前記電力調達量の前記初期値として、対象とする前記時間帯における前記電力需要の予測値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力調達量決定装置。
【請求項6】
前記電力調達量決定部は、
対象とする前記時間帯における前記第1及び第2の電力単価の差を算出する価格差算出部と、
前記第1の誤差情報に基づく第1の調整量を算出する需要予測誤差ベース調整量算出部と、
前記第2の誤差情報に基づく第2の調整量を算出する予測市場単価誤差ベース調整量算出部と、
前記価格差算出部により算出された前記第1及び第2の電力単価の差、前記需要予測誤差ベース調整量算出部により算出された第1の調整量、並びに、前記予測市場単価誤差ベース調整量算出部により算出された第2の調整量に基づいて、対象とする前記時間帯における前記電力調達量の前記調整量を算出する調達量決定部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力調達量決定装置。
【請求項7】
将来の各時間帯の電力調達量を決定する電力調達量決定装置により実行される電力調達量決定方法において、
対象とする前記時間帯において相対取引により電力を調達する第1の電力調達方法により調達する前記電力調達量の初期値を設定する第1のステップと、
対象とする前記時間帯に対する前記電力調達量の調整量を算出し、算出した当該調整量及び前記電力調達量の初期値に基づいて、当該時間帯の前記電力調達量を決定する第2のステップと
を備え、
前記第2のステップでは、
対象とする前記時間帯における電力需要の予測値の予測誤差を表す第1の誤差情報と、当該時間帯に前記第1の電力調達方法により電力を調達する場合の予め定められた第1の電力単価と、当該時間帯に電力取引市場から電力を調達する第2の電力調達方法により電力を調達する場合に予測される第2の電力単価と、前記第2の電力単価の予測誤差を表す第2の誤差情報とに基づいて前記電力調達量の前記調整量を算出する
ことを特徴とする電力調達量決定方法。
【請求項8】
前記第2のステップでは、
対象とする前記時間帯における前記電力調達量の前記調整量をdWh(d,t)、当該時間帯における前記第1の電力単価及び前記第2の電力単価の差をD(d,t)、前記電力需要の予測値の予測誤差の標準偏差をσ1、当該時間帯における前記第2の電力単価の予測誤差の標準偏差をσ2、C1及びC2をそれぞれ予め定められた定数として、次式
【数10】
ただし、
【数11】
により、対象とする前記時間帯における前記電力調達量の前記調整量を算出する
ことを特徴とする請求項に記載の電力調達量決定方法。
【請求項9】
前記第2のステップでは、
算出した前記電力調達量の前記調整量が、対象とする前記時間帯について予め定められた当該調整量の許容範囲を逸脱する場合には、当該調整量を前記許容範囲内の値に変更する
ことを特徴とする請求項に記載の電力調達量決定方法。
【請求項10】
前記許容範囲は、
需要家の電力機器を制御することにより調整可能な消費電力の範囲である
ことを特徴とする請求項に記載の電力調達量決定方法。
【請求項11】
前記第1のステップでは、
前記電力調達量の前記初期値として、対象とする前記時間帯における前記電力需要の予測値を設定する
ことを特徴とする請求項に記載の電力調達量決定方法。
【請求項12】
前記第2のステップは、
対象とする前記時間帯における前記第1及び第2の電力単価の差と、前記第1の誤差情報に基づく第1の調整量と、前記第2の誤差情報に基づく第2の調整量とをそれぞれ算出する第1の算出ステップと、
算出した前記第1及び第2の電力単価の差、並びに、前記第1及び第2の調整量に基づいて、対象とする前記時間帯における前記電力調達量の前記調整量を算出する第2の算出ステップと
を備える
ことを特徴とする請求項に記載の電力調達量決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力調達量決定装置及び方法に関し、例えば、電力小売事業者の電力調達量を決定する電力調達量決定装置及び方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電力小売事業者は、電力需要予測に基づいて30分の時間帯ごとの電力調達量をそれぞれ決定し、決定結果に従って各時間帯の電力を調達している。この場合、電力小売事業者が電力を調達する方法としては、電力卸事業者から相対取引により直接調達する第1の電力調達方法と、電力取引市場から調達する第2の電力調達方法とがある。
【0003】
一般的に、第1の電力調達方法では、電力取引市場での取引よりも先に電力の売買契約(相対取引契約)を締結するため、電力需要予測の誤差や、電力取引市場における電力の取引単価の予測誤差といった不確実性を踏まえて取引する電力量を調整することができる。
【0004】
例えば、ある時間帯の相対取引単価が電力取引市場の電力単価よりも安価で、かつ、実際の需要家の電力消費量が電力需要予測値よりも大きくなる可能性がある場合には、電力需要の予測値以上に相対取引で電力を調達しておくことにより、後に電力取引市場で調達する電力量やインバランス精算額を小さくできるため、電力小売事業者がより多くの収益を上げることができる。
【0005】
なお、電力調達に関する技術として、特許文献1には、電力小売事業者のインバランス清算額を含めたトータルの調達コストの期待値を最小化するように、一日前市場と当日取引市場とからの電力調達量を決定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-46467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1では、一日前市場及び当日取引市場の双方について、入札額の期待値を用いてトータルの調達コストの期待値を算出することとしているが、電力取引市場における入札額の不確実性の要素を考慮していないため、約定単価が思いがけず高騰した場合に電力の調達コストが上昇する問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、電力取引市場における電力単価が思いがけず高騰した場合においても電力小売事業者の収益の期待値を従来よりも向上させ得る電力調達量決定装置及び方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、将来の各時間帯の電力調達量を決定する電力調達量決定装置において、対象とする前記時間帯において相対取引により電力を調達する第1の電力調達方法により調達する前記電力調達量の初期値を設定する調達量初期値設定部と、対象とする前記時間帯に対する前記電力調達量の調整量を算出し、算出した当該調整量及び前記電力調達量の初期値に基づいて、当該時間帯の前記電力調達量を決定する電力調達量決定部とを設け、前記電力調達量決定部が、対象とする前記時間帯における電力需要の予測値の予測誤差を表す第1の誤差情報と、当該時間帯に前記第1の電力調達方法により電力を調達する場合の予め定められた第1の電力単価と、当該時間帯に電力取引市場から電力を調達する第2の電力調達方法により電力を調達する場合に予測される第2の電力単価と、前記第2の電力単価の予測誤差を表す第2の誤差情報とに基づいて前記電力調達量の前記調整量を算出するようにした。
【0010】
また本発明においては、将来の各時間帯の電力調達量を決定する電力調達量決定装置により実行される電力調達量決定方法において、対象とする前記時間帯において相対取引により電力を調達する第1の電力調達方法により調達する前記電力調達量の初期値を設定する第1のステップと、対象とする前記時間帯に対する前記電力調達量の調整量を算出し、算出した当該調整量及び前記電力調達量の初期値に基づいて、当該時間帯の前記電力調達量を決定する第2のステップとを設け、前記第2のステップでは、対象とする前記時間帯における電力需要の予測値の予測誤差を表す第1の誤差情報と、当該時間帯に前記第1の電力調達方法により電力を調達する場合の予め定められた第1の電力単価と、当該時間帯に電力取引市場から電力を調達する第2の電力調達方法により電力を調達する場合に予測される第2の電力単価と、前記第2の電力単価の予測誤差を表す第2の誤差情報とに基づいて前記電力調達量の前記調整量を算出するようにした。
【0011】
本発明の電力調達量決定装置及び方法によれば、第2の電力単価の不確実性の要素を考慮した電力調達量の決定を行えるため、第2の電力調達方法による電力単価が思いがけず高騰した場合においても第1の電力調達方法により安価に電力調達を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力取引市場における電力単価が思いがけず高騰した場合においても電力小売事業者の収益の期待値を従来よりも向上させ得る電力調達量決定装置及び方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態による電力調達量決定装置のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
図2】電力調達量決定装置の機能説明に供する図表である。
図3】電力調達量決定装置の論理構成を示すブロック図である。
図4】電力需要予測値データベースの構成例を示す図表である。
図5】相対取引単価データベースの構成例を示す図表である。
図6】予測市場単価データベースの構成例を示す図表である。
図7】調整許容範囲データベースの構成例を示す図表である。
図8】対象期間等設定画面の構成例を示す図である。
図9】相対調達量表示画面の構成例を示す図である。
図10】相対調達量初期値設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図11】価格差計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
図12】需要予測誤差ベース調整量算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13】需要予測誤差ベース調整量算出処理の説明に供するグラフである。
図14】予測市場単価誤差ベース調整量算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
図15】相対調達量決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0015】
(1)本実施の形態による電力調達量決定装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による電力調達量決定装置を示す。この電力調達量決定装置1は、例えば電力小売事業者が相対取引で調達すべき30分の時間帯ごとの電力量(以下、これを「時間帯ごとの相対電力調達量」と呼ぶ)を決定する機能を有するコンピュータ装置であり、CPU(Central Processing Unit)2、記憶装置3、入力装置4及び出力装置5などを備えて構成される。
【0016】
CPU2は、電力調達量決定装置1全体の動作制御を司るプロセッサである。また記憶装置3は、半導体メモリ及びハードディスク装置などから構成され、必要な情報を一時的及び長期的に保持するために利用される。記憶装置3に格納されたプログラムをCPU2が実行することにより、後述のような電力調達量決定装置1全体としての各種処理が実行される。
【0017】
入力装置4は、キーボードやマウスなどから構成され、ユーザが必要な情報や命令を入力するために利用される。また出力装置5は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示装置から構成され、各種画面や必要な情報を表示するために利用される。
【0018】
以上の構成を有する電力調達決定装置1では、かかる「時間帯ごとの相対電力調達量」を、相対取引契約で予め定められた時間帯ごとの相対取引での電力単価(以下、これを相対取引単価と呼ぶ)及び同じ時間帯について予測される電力取引市場での電力単価(以下、これを予測市場単価と呼ぶ)の大小関係と、電力需要の予測誤差及び予測市場単価の予測誤差とを考慮して決定する。
【0019】
実際上、電力調達決定装置1は、図2に示すように、対象とする時間帯(以下、これを対象時間帯と呼ぶ)の相対取引単価が予測市場単価よりも安価な場合には、対象時間帯の電力需要予測値に対して、電力需要の予測誤差に基づいて算出したその対象時間帯に増加しそうな消費電力を調整量として加算した電力を対象時間帯の相対電力調達量として決定する(図2の左上欄及び右上欄の「STEP1」)。
【0020】
ただし、電力取引市場における対象時間帯の実際の電力単価が相対取引単価よりも安価になるリスクを踏まえて、予測市場単価の予測精度に基づいて算出した電力を「STEP1」の調整量から減らした値を最終的な調整量とし、この調整量を電力需要予測値に加算した値を最終的な相対電力調達量に決定する。この際、予測市場単価の予測精度が高い場合には、かかる調整量から減らす電力を少なくし(図2の左上欄の「STEP2」)、予測市場単価の予測精度が低い場合には、かかる調整量から減らす電力を多くする(図2の右上欄の「STEP2」)。
【0021】
また対象時間帯の予測市場単価が相対取引単価よりも安価な場合には、電力需要予測値よりも少なくなるように相対電力調達量を決定する(図2の左下欄及び右下欄の「STEP1」)。この際、相対電力調達量をゼロとしてもよい。
【0022】
ただし、この場合には、電力取引市場における対象時間帯の実際の電力単価が相対取引単価よりも高価になるリスクを踏まえて、予測市場単価の予測精度に基づいて算出した電力を「STEP1」の調整量に加算した値を最終的な調整量とし、この調整量を電力需要予測値に加算した値を最終的な相対電力調達量に決定する。この際、予測市場単価の予測精度が高い場合には、かかる調整量を少なくし(図2の左下欄の「STEP2」)、予測市場単価の予測精度が低い場合にはかかる調整量を多くする(図2の右下欄の「STEP2」)。
【0023】
このようにすることによって、予測市場単価の変動リスクを低減しながら、必要量の電力を安価に調達することができる。
【0024】
(2)電力調達量決定装置の論理構成
図3は、かかる電力調達量決定装置1の論理構成を示す。この図3に示すように、本電力調達量決定装置1は、電力需要予測値データベース10、相対取引単価データベース11、予測市場単価データベース12、調整許容範囲データベース13、対象期間等設定部14、相対調達量初期値設定部15、価格差算出部16、需要予測誤差ベース調整量算出部17、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18、相対調達量決定部19及び相対調達量出力部20を備えて構成される。
【0025】
電力需要予測値データベース10は、将来の時間帯ごとの電力需要(kWh)の予測値が格納されたデータベースであり、過去の電力需要や時間帯ごとの気象予測等に基づいて予めユーザにより作成される。この電力需要予測値データベース10は、図4に示すように、日付欄10A、時間帯欄10B、予測電力需要量欄10C及び標準偏差σ1欄10Dを備えたテーブル構造を有する。電力需要予測値データベース10では、1つの行が1つの日付の1つの時間帯に対応する。
【0026】
そして日付欄10Aには、対応する日にちの日付が格納され、時間帯欄10Bには、対応する日にちの対応する時間帯が格納される。また予測電力需要量欄10Cには、対応する日にちの対応する時間帯について予測された電力需要量(以下、これを予測電力需要量と呼ぶ)が格納される。また標準偏差σ1欄10Dには、過去の同じ日にちの同じ時間帯における実際の電力需要量(以下、これを実績電力需要量と呼ぶ)に対する予測電力需要量の予測精度として、予測誤差の標準偏差が格納される。
【0027】
従って、図4の例の場合、「2020/04/01」の「10:00-10:30」という時間帯における予測電力需要量が「3,600」(kWh)であり、実績電力需要量に対する予測電力需要量の標準偏差が「230」であることが示されている。
【0028】
また相対取引単価データベース11は、電力小売事業者が電力卸事業者との間で決定した、日付及び時間帯ごとの相対取引での電力単価(以下、これを相対取引単価と呼ぶ)が格納されたデータベースであり、予めユーザにより作成される。この相対取引単価データベース11は、図5に示すように、日付欄11A、時間帯欄11B及び相対取引単価欄11Cを備えたテーブル構造を有する。相対取引単価データベース11では、1つの行が1つの日付の1つの時間帯における相対取引単価に対応する。
【0029】
そして日付欄11Aには、対応する日にちの日付が格納され、時間帯欄11Bには、対応する日にちの対応する時間帯が格納される。また相対取引単価欄11Cには、対応する日にちの対応する時間帯における相対取引単価が格納される。従って、図5の例の場合、「2020/04/01」の「10:00-10:30」という時間帯における相対取引単価が「12.5」(円/kWh)であることが示されている。
【0030】
また予測市場単価データベース12は、電力取引市場から電力調達する際の電力単価の予測値(以下、これを予測市場単価と呼ぶ)が格納されたデータベースであり、過去の実際の約定単価等に基づいて予めユーザにより作成される。この予測市場単価データベース12は、図6に示すように、日付欄12A、時間帯欄12B、予測市場単価欄12C及び標準偏差σ2欄12Dを備えて構成される。予測市場単価データベースでは、1つの行が1つの日付の1つの時間帯に対応する。
【0031】
そして日付欄12Aには、対応する日にちの日付が格納され、時間帯欄12Bには、対応する日にちの対応する時間帯が格納される。また予測市場単価欄12Cには、対応する日にちの対応する時間帯における、予測市場単価が格納される。さらに標準偏差σ2欄12Dには、過去の同じ日にちの同じ時間帯について実際に取引された電力単価(以下、これを実績市場単価と呼ぶ)に対する予測市場単価の予測精度として、予測誤差の標準偏差が格納される。
【0032】
従って、図6の例の場合、「2020/04/01」の「10:00-10:30」という時間帯における予測市場単価が「14.1」(円/kWh)であり、実績市場単価に対する予測市場単価の標準偏差が「2.0」であることが示されている。
【0033】
調整許容範囲データベース13は、需要家の電力機器をデマンドレスポンスなどで制御することにより調整可能な消費電力の調整可能な範囲(以下、これを需要家消費電力調整許容範囲と呼ぶ)が格納されたデータベースであり、予めユーザにより作成される。この調整許容範囲データベース13は、図7に示すように、日付欄13A、時間帯欄13B、+方向調整最大値欄13C及び-方向調整最大値欄13Dを備えて構成される。調整許容範囲データベース13では、1つの行が1つの日付の1つの時間帯における需要家消費電力調整許容範囲に対応する。
【0034】
そして日付欄13Aには、対応する日にちの日付が格納され、時間帯欄13Bには、対応する日にちの対応する時間帯が格納される。また+方向調整最大値欄13Cには、対応する日にちの対応する時間帯における需要家消費電力調整許容範囲の上限値が格納され、+方向調整最大値欄13Cには、対応する日にちの対応する時間帯における需要家消費電力調整許容範囲の下限値が格納される。
【0035】
従って、図7の例の場合、「2020/04/01」の「10:00-10:30」という時間帯における需要家消費電力調整許容範囲の上限値が「500」(kWh)であり、下限値が「-50」(kWh)であることが示されている。
【0036】
なお本調整許容範囲データベース7を設けた趣旨は、需要予測値より多く電力を調達した場合、過剰分の電力を需要家機器が消費できなければ、その過剰分の電力が無駄となり、一方で、需要予測の値よりも少なく電力を調達した場合には、調達量を削減したことに対して需要家機器の電力消費を削減できなければ結果的にインバランスに繋がることから、需要家機器の電力消費のポテンシャルに応じて電力調達量の調整量に制限をかけるためである。詳細については後述する。
【0037】
一方、対象期間等設定部14、相対調達量初期値設定部15、価格差算出部16、需要予測誤差ベース調整量算出部17、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18、相対調達量決定部19及び相対調達量出力部20は、それぞれ電力調達量決定装置1のCPU2(図1)が記憶装置3(図2)に格納された対応するプログラム(図示せず)を実行することにより具現化される機能部である。
【0038】
このうち対象期間等設定部14は、入力装置4(図1)を介した所定の操作入力に応じて図8に示すような対象期間等設定画面30を出力装置5(図1)に表示させる機能を有する。
【0039】
この対象期間等設定画面30は、電力調達量決定装置1が相対取引による電力調達量を決定すべき期間(以下、これを対象期間と呼ぶ)や各種設定値をユーザが設定するための画面であり、対象期間指定領域31、第1のパラメータ指定領域32及び第2のパラメータ指定領域33と、決定ボタン34とを備えて構成される。
【0040】
そして対象期間指定領域31では、対象期間の開始の年月日及び時間帯と、対象期間の終了の年月日及び時間帯とをプルダウン方式によりそれぞれ指定することができる。図8では、かかる対象期間として「2020/04/01」の「00:00-00:30」の時間帯から「2020/04/07」の「23:30-24:00」の時間帯までの時間帯が指定された場合の例を示している。
【0041】
また第1のパラメータ指定領域32では、需要予測誤差に基づく電力調達の調整量を決定する際に用いる第1のパラメータC1の値をテキストボックス32Aに入力することにより指定することができ、第2のパラメータ指定領域33では、予測市場単価の誤差に基づく電力調達の調整量を決定する際に用いる第2のパラメータC2の値をテキストボックス33Aに入力することにより指定することができる。これら第1及び第2のパラメータC1,C2の意味については、後述する。第1及び第2のパラメータC1,C2としては、経験則によりある程度決まった値が設定される。
【0042】
そして対象期間等設定画面30では、上述のようにして対象期間と、第1及び第2のパラメータC1,C2とを指定した後に決定ボタン34をクリックすることにより、これら対象期間と、第1及び第2のパラメータC1,C2とを設定することができる。そして対象期間等設定部14は、このようにして対象期間と、第1及び第2のパラメータC1,C2とが設定されると、これらの情報のうちの必要な情報を相対調達量初期値設定部15、価格差算出部16、需要予測誤差ベース調整量算出部17、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18及び相対調達量決定部19にそれぞれ通知する。
【0043】
相対調達量初期値設定部15は、ユーザにより設定された対象期間の各時間帯における相対取引により調達すべき電力量の初期値(以下、これを相対調達量初期値と呼ぶ)を後述する相対調達量決定部19に設定する機能を有する。実際上、相対調達量初期値設定部15は、対象期間等設定部14から通知された対象期間の各時間帯における電力需要予測値をそれぞれ電力需要予測値データベース10(図4)から取得し、取得した電力需要予測値をその時間帯における相対調達量の初期値として設定する。なお、この「設定」は、かかる電力需要予測値を記憶装置3(図1)内の所定領域に格納することにより行われる。
【0044】
また価格差算出部16は、対象期間等設定部14から通知された対象期間の各時間帯について、相対取引単価及び市場取引単価の差をそれぞれ算出する機能を有する。実際上、価格差算出部16は、対象期間の時間帯ごとに、その時間帯の相対取引単価を相対取引単価データベース11(図5)から取得すると共に、その時間帯の予測市場単価を予測市場単価データベース12(図6)から取得し、これらの差分を算出する。そして価格差算出部16は、このようにして算出した対象期間の各時間帯における相対取引単価及び市場取引単価の差を相対調達量決定部19に設定する。なお、この「設定」は、かかる差を記憶装置3内の所定領域に格納することにより行われる。
【0045】
需要予測誤差ベース調整量算出部17は、対象期間の時間帯ごとに、その時間帯における需要予測誤差の大きさに応じた電力調達量の調整量をそれぞれ算出する機能を有する。具体的に、需要予測誤差ベース調整量算出部17は、対象期間の時間帯ごとに、その時間帯における需要予測誤差の標準偏差σ1を電力需要予測値データベース10から取得し、取得したかかる標準偏差σ1に対して対象期間等設定部14から通知された第1のパラメータC1を乗算するようにして需要予測誤差に基づく電力調達の調整量(以下、これを需要予測誤差ベース調整量と呼ぶ)をそれぞれ算出する。そして需要予測誤差ベース調整量算出部17は、このようにして算出した対象期間の各時間帯における需要予測誤差ベース調整量を相対調達量決定部19に設定する。なお、この「設定」は、かかる需要予測誤差ベース調整量を記憶装置3内の所定領域に格納することにより行われる。
【0046】
また予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、対象期間の時間帯ごとに、その時間帯における市場予測単価の誤差に応じた電力調達量の調整量をそれぞれ算出する機能を有する。具体的に、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、対象期間の時間帯ごとに、その時間帯における予測市場単価の誤差の標準偏差σ2を予測市場単価データベース12から取得し、取得したかかる標準偏差σ2に対して対象期間等設定部14から通知された第2のパラメータC2を乗算するようにして予測市場単価の誤差に基づく電力調達の調整量(以下、これを予測市場単価誤差ベース調整量と呼ぶ)をそれぞれ算出する。そして予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、このようにして算出した対象期間の各時間帯における予測市場単価誤差ベース調整量を相対調達量決定部に設定する。なお、この「設定」は、かかる予測市場単価誤差ベース調整量を記憶装置3内の所定領域に格納することにより行われる。
【0047】
相対調達量決定部19は、対象期間の時間帯ごとの相対調達量を決定する機能を有する。実際上、相対調達量決定部19は、対象期間の時間帯ごとに、需要予測誤差ベース調整量算出部17により設定された需要予測誤差ベース調整量と、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18により設定された予測市場単価誤差ベース調整量との差分を算出し、その差分を相対調達量初期値設定部15により設定された相対調達量初期値に加算した値をその時間帯の相対調達量としてそれぞれ算出する。
【0048】
ただし、相対調達量決定部19は、需要予測誤差ベース調整量及び予測市場単価誤差ベース調整量の差分が調整許容範囲データベース13に格納されているその時間帯の+方向調整最大量よりも大きい場合には、当該+方向調整最大量を相対調達量初期値に加算した値をその時間帯の相対調達量として算出する。
【0049】
また相対調達量決定部19は、需要予測誤差ベース調整量及び予測市場単価誤差ベース調整量の差分が調整許容範囲データベース13に格納されているその時間帯の-方向調整最大量よりも大きい場合には、当該-方向調整最大量を相対調達量初期値に加算した値をその時間帯の相対調達量として算出する。
【0050】
そして相対調達量決定部19は、このようにして算出した対象期間の各時間帯の相対調達量を相対調達量出力部20に出力する。
【0051】
相対調達量出力部20は、相対調達量決定部19から与えられた対象期間の各時間帯の相対調達量に基づいて図9に示すような相対調達量表示画面40を出力装置5(図1)に表示させる機能を有する。この相対調達量表示画面40は、相対調達量決定部19により決定された対象期間内の各時間帯の相対調達量を表示するための画面であり、縦軸に電力量、横軸に時間をとった平面座標41が座標表示領域42内に表示される。
【0052】
そして、かかる平面座標41には、各時間帯における相対調達量がそれぞれ棒グラフG1として表示され、各時間帯における需要予測値が折れ線グラフG2として表示される。なお図9の例の場合、スライダ43を左右方向にスライドさせることによって、対象期間内のすべての時間帯における相対調達量の棒グラフG1と、需要予測値を表す折れ線グラフG2とを表示させることができる。かくしてユーザは、この相対調達量表示画面40を参照して、対象期間の各時間帯における相対調達量を決定する。
【0053】
なお図9では、「2020/04/01」の「06:00-20:30」の時間帯については、需要予測値よりも多く相対取引により電力を調達する計画であり、当日の他の時間帯については、需要予測値よりも少なく相対取引により電力を調達する計画であることが示されている。
【0054】
(3)各機能部の具体的な処理内容
次に、かかる電力調達量決定装置1の各機能部のうち、主要な機能部によりそれぞれ実行される各処理の具体的な処理内容について説明する。なお、以下の説明においては、各処理の処理主体を機能部(「……部」)として説明するが、実際上は、その機能部に対応するプログラムに基づいてCPU2(図1)がその処理を実行することは言うまでもない。
【0055】
(3-1)相対調達量初期値設定部の処理
図10は、相対調達量初期値設定部15により実行される相対調達量初期値設定処理の処理手順を示す。相対調達量初期値設定部15は、この図10に示す処理手順に従って、電力需要予測値データベース10(図4)に格納されている対象期間の各時間帯の予測電力需要値をその時間帯の相対調達量初期値として相対調達量決定部19に設定する。
【0056】
実際上、相対調達量初期値設定部15は、ユーザにより設定された対象期間が対象期間等設定部14から通知されると、この図10に示す相対調達量初期値設定処理を開始し、まず、対象期間等設定部14から通知された対象期間の設定値を認識する(S1)。
【0057】
続いて、相対調達量初期値設定部15は、対象期間に含まれる日付の中からステップS3以降が未処理の日付を1つ選択すると共に(S2)、その対象期間に含まれるその日付(以下、図10の説明においてこれを選択日付と呼ぶ)内の時間帯の中からステップS4以降が未処理の時間帯を1つ選択する(S3)。
【0058】
次いで、相対調達量初期値設定部15は、選択日付におけるステップS3で選択した時間帯(以下、図10の説明においてこの時間帯を選択時間帯と呼ぶ)の需要予測値を電力需要予測値データベース10から取得し(S4)、取得した需要予測値を選択日付における選択時間帯の相対調達量初期値として記憶装置3(図1)内の所定領域に格納する(S5)。
【0059】
さらに相対調達量初期値設定部15は、選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯についてステップS4以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S6)。そして相対調達量初期値設定部15は、この判断で否定結果を得るとステップS3に戻り、この後、ステップS3で選択する時間帯をステップS4以降が未処理の他の時間帯に順次切り替えながら、ステップS3~ステップS6の処理を繰り返す。
【0060】
そして相対調達量初期値設定部15は、やがて選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯について相対調達量初期値を相対調達量決定部19に設定し終えることによりステップS6で肯定結果を得ると、対象期間に含まれるすべての日付についてステップS3以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S7)。
【0061】
相対調達量初期値設定部15は、この判断で否定結果を得るとステップS2に戻り、この後、ステップS2で選択する日付をステップS3以降が未処理の該当する他の日付に順次切り替えながらステップS2~ステップS7の処理を繰り返す。
【0062】
そして相対調達量初期値設定部15は、やがて対象期間に含まれるすべての日付のすべての時間帯について相対調達量初期値を相対調達量決定部に設定し終えることによりステップS7で肯定結果を得ると、この相対調達量初期値設定処理を終了する。
【0063】
(3-2)価格差計算処理
図11は、価格差算出部16により実行される価格差計算処理の処理手順を示す。価格差算出部16は、この図11に示す処理手順に従って、対象期間の時間帯ごとに相対取引単価及び市場取引単価の差を順次算出する。
【0064】
実際上、価格差算出部16は、ユーザにより設定された対象期間が対象期間等設定部14から通知されると、この図11に示す価格差計算処理を開始する。そして価格差算出部16は、まず、対象期間等設定部14から通知された対象期間に含まれる日付の中からステップS11以降が未処理の日付を1つ選択すると共に(S10)、その対象期間に含まれるその日付(以下、図11の説明においてこれを選択日付と呼ぶ)内の時間帯の中からステップS12以降が未処理の時間帯を1つ選択する(S11)。
【0065】
続いて、価格差算出部16は、選択日付におけるステップS11で選択した時間帯(以下、図11の説明においてこの時間帯を選択時間帯と呼ぶ)の相対取引単価を相対取引単価データベース11(図5)から取得すると共に(S12)、選択日付における選択時間帯の予測市場単価を予測市場単価データベース12(図6)から取得する(S13)。
【0066】
次いで、価格差算出部16は、ステップS12で取得した相対取引単価と、ステップS13で取得した予測市場単価との価格差D(d,t)を計算し、算出した価格差D(d,t)を記憶装置3内の所定領域に格納する(S14)。
【0067】
さらに価格差算出部16は、選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯についてステップS12以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S15)。そして価格差算出部16は、この判断で否定結果を得るとステップS11に戻り、この後、ステップS11で選択する時間帯をステップS12以降が未処理の他の時間帯に順次切り替えながら、ステップS11~ステップS15の処理を繰り返す。
【0068】
そして価格差算出部16は、やがて選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯について相対取引単価及び予測市場単価間の価格差D(d,t)を算出し終えることによりステップS15で肯定結果を得ると、対象期間に含まれるすべての日付についてステップS11以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S16)。
【0069】
価格差算出部16は、この判断で否定結果を得るとステップS10に戻り、この後、ステップS10で選択する日付をステップS11以降が未処理の該当する他の日付に順次切り替えながらステップS10~ステップS16の処理を繰り返す。
【0070】
そして価格差算出部16は、やがて対象期間に含まれるすべての日付のすべての時間帯について相対取引単価及び予測市場単価間の価格差D(d,t)を算出し終えることによりステップS16で肯定結果を得ると、この価格差計算処理を終了する。
【0071】
(3-3)需要予測誤差ベース調整量算出処理
一方、図12は、需要予測誤差ベース調整量算出部17により実行される需要予測誤差ベース調整量算出処理の処理手順を示す。需要予測誤差ベース調整量算出部17は、この図12に示す処理手順に従って、電力需要予測の誤差の大きさに応じた相対取引による電力調達量の調整量を算出する。
【0072】
実際上、需要予測誤差ベース調整量算出部17は、ユーザにより設定された対象期間や、第1及び第2のパラメータC1,C2の設定値が対象期間等設定部14から通知されると、この図12に示す需要予測誤差ベース調整量算出処理を開始し、まず、そのとき対象期間等設定部14から与えられた第1のパラメータC1の設定値を取得する(S20)。
【0073】
続いて、需要予測誤差ベース調整量算出部17は、対象期間等設定部14から通知された対象期間に含まれる日付の中からステップS22以降が未処理の日付を1つ選択すると共に(S21)、その対象期間に含まれるその日付(以下、図12の説明においてこの日付を選択日付と呼ぶ)内の時間帯の中からステップS23以降が未処理の時間帯を1つ選択する(S22)。
【0074】
次いで、需要予測誤差ベース調整量算出部17は、ステップS22で選択した時間帯(以下、図12の説明においてこの時間帯を選択時間帯と呼ぶ)の標準偏差σ1を電力需要予測値データベース10(図4)から取得する(S23)。このステップS23により、図4の例の場合、例えば選択日付が「2020/04/01」で選択時間帯が「10:00-10:30」であるときには、需要予測誤差ベース調整量算出部17は、標準偏差σ1として「230」(kWh)を取得することになる。
【0075】
この後、需要予測誤差ベース調整量算出部17は、次式
【数1】
により、選択日付の選択時間帯における相対取引による電力調達量の調整量dWh1(d,t)を算出し(S24)、算出した調整量dWh1(d,t)を記憶装置3内の所定領域に格納する(S25)。
【0076】
図13は、このようにして記憶装置3の所定領域に格納される調整量dWh1(d,t)と、電力需要予測の予測誤差の標準偏差σ1との関係を示す。(1)式からも明らかなように、相対取引による電力調達量の調整量dWh1(d,t)は、電力需要予測の誤差の標準偏差σ1に比例した値に決定される。なお図13では、横軸が需要予測の標準偏差σ1であり、原点に近づくほど誤差が小さく、原点から離れるほど誤差が大きい。縦軸は、調整量dWh1(d,t)であり、原点に近づくほど値が0に近づき、原点から離れるほど誤差が大きな値となる。
【0077】
さらに需要予測誤差ベース調整量算出部17は、選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯についてステップS23以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S26)。そして需要予測誤差ベース調整量算出部17は、この判断で否定結果を得るとステップS22に戻り、この後、ステップS22で選択する時間帯をステップS23以降が未処理の他の時間帯に順次切り替えながら、ステップS22~ステップS26の処理を繰り返す。
【0078】
そして需要予測誤差ベース調整量算出部17は、やがて選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯について調整量dWh1(d,t)を算出し終えることによりステップS26で肯定結果を得ると、対象期間に含まれるすべての日付についてステップS22以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S27)。
【0079】
需要予測誤差ベース調整量算出部17は、この判断で否定結果を得るとステップS21に戻り、この後、ステップS12で選択する2日付をステップS22以降が未処理の該当する他の日付に順次切り替えながらステップS21~ステップS27の処理を繰り返す。
【0080】
そして需要予測誤差ベース調整量算出部17は、やがて対象期間に含まれるすべての日付のすべての時間帯について調整量dWh1(d,t)を算出し終えることによりステップS27で肯定結果を得ると、この需要予測誤差ベース調整量算出処理を終了する。
【0081】
(3-4)予測市場単価誤差ベース調整量算出処理
他方、図14は、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18により実行される予測市場単価誤差ベース調整量算出処理の処理手順を示す。予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、この図14に示す処理手順に従って、予測市場単価の誤差の大きさに応じた相対取引による電力調達量の調整量を算出する。
【0082】
実際上、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、ユーザにより設定された対象期間や、第1及び第2のパラメータC1,C2の設定値が対象期間等設定部14から通知されると、この図14に示す予測市場単価誤差ベース調整量算出処理を開始し、まず、そのとき対象期間等設定部14から与えられた第2のパラメータC2の設定値を取得する(S30)。
【0083】
続いて、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、対象期間等設定部14から通知された対象期間に含まれる日付の中からステップS32以降が未処理の日付を1つ選択すると共に(S31)、その対象期間に含まれるその日付(以下、図14の説明においてこの日付を選択日付と呼ぶ)内の時間帯の中からステップS33以降が未処理の時間帯を1つ選択する(S32)。
【0084】
次いで、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、ステップS32で選択した時間帯(以下、図14の説明においてこの時間帯を選択時間帯と呼ぶ)の標準偏差σ2を予測市場単価データベース12(図6)から取得する(S33)。図6の例の場合、例えば、選択日付が「2020/04/01」で選択時間帯が「10:00-10:30」であるときには、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、標準偏差σ2として「2.0」を取得することになる。
【0085】
さらに予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、次式
【数2】
により、選択日付の選択時間帯における相対取引による電力調達量の調整量dWh2(d,t)を算出し(S34)、算出した調整量dWh2(d,t)を記憶装置3内の所定領域に格納する(S35)。
【0086】
このようにして記憶装置3の所定領域に格納される調整量dWh2(d,t)と、予測市場単価の誤差の標準偏差σ2との関係は、図13について上述した調整量dWh1(d,t)と、電力需要予測値との関係と同じであり、(2)式からも明らかなように、相対取引による電力調達量の調整量dWh1(d,t)は、予測市場単価の誤差の標準偏差σ2に比例した値に決定される。
【0087】
この後、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯についてステップS33以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S36)。そして予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、この判断で否定結果を得るとステップS32に戻り、この後、ステップS32で選択する時間帯をステップS33以降が未処理の他の時間帯に順次切り替えながら、ステップS32~ステップS36の処理を繰り返す。
【0088】
そして予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、やがて選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯について調整量dWh2(d,t)を算出し終えることによりステップS36で肯定結果を得ると、対象期間に含まれるすべての日付についてステップS32以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S37)。
【0089】
予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、この判断で否定結果を得るとステップS31に戻り、この後、ステップS31で選択する日付をステップS32以降が未処理の該当する他の日付に順次切り替えながらステップS31~ステップS37の処理を繰り返す。
【0090】
そして予測市場単価誤差ベース調整量算出部18は、やがて対象期間に含まれるすべての日付のすべての時間帯について調整量dWh2(d,t)を算出し終えることによりステップS37で肯定結果を得ると、この予測市場単価誤差ベース調整量算出処理を終了する。
【0091】
(3-5)相対調達量決定処理
図15は、相対調達量決定部19により実行される相対調達量決定処理の処理手順を示す。相対調達量決定部19は、この図15に示す処理手順に従って、対象期間に含まれる各日付の各時間帯に対する相対取引での電力調達量をそれぞれ決定する。
【0092】
実際上、相対調達量決定部19は、相対調達量初期値設定部15、価格差算出部16、需要予測誤差ベース調整量設定部17、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18が図10図14について上述した各処理のうちの対応する処理をそれぞれ終了すると、この図15に示す相対調達量決定処理を開始する。
【0093】
そして相対調達量決定部19は、まず、対象期間等設定部14から通知された対象期間に含まれる日付の中からステップS41以降が未処理の日付を1つ選択すると共に(S40)、その対象期間に含まれるその日付(以下、図15の説明においてこの日付を選択日付と呼ぶ)内の時間帯の中からステップS42以降が未処理の時間帯を1つ選択する(S41)。
【0094】
次いで、相対調達量決定部19は、選択日付におけるステップS41で選択した時間帯(以下、図15の説明においてこの時間帯を選択時間帯と呼ぶ)の電力需要予測値Wh0(d,t)を、記憶装置3の対応する所定領域から読み出すことにより取得する(S42)。例えば、選択日時が「2020/04/01」、選択時間帯が「10:00-10:30」である場合、図4の例では、相対調達量決定部19は、電力需要予測値Wh0(d,t)として「3600」(kWh)を取得することになる。
【0095】
また相対調達量決定部19は、選択日付の選択時間帯における相対取引単価及び予測市場単価の価格差D(d,t)と、当該選択時間帯における相対取引による電力調達量の調整量dWh1(d,t)及びdWh2(d,t)とをそれぞれ記憶装置3の対応する所定領域から読み出すことにより取得する(S43~S45)。
【0096】
例えば、選択日時が「2020/04/01」、選択時間帯が「10:00-10:30」である場合、図4図6の例では、相対調達量決定部19は、価格差D(d,t)として「-2.1」(円/kWh)、電力需要予測の誤差に応じた調整量dWh1(d,t)として「690」(kWh)、予測市場単価の誤差に応じた調整量dWh2(d,t)として「300」(kWh)をそれぞれ取得することになる。
【0097】
さらに相対調達量決定部19は、調整許容範囲データベース13(図7)から、選択日付の選択時間帯における調整許容範囲の上限である+方向調整量最大値dWh_pm(d,t)と、調整許容範囲の下限である-方向調整量最大値dWh_mm(d,t)とを読み出すことにより取得する(S46)。例えば、選択日時が「2020/04/01」、選択時間帯が「10:00-10:30」である場合、図7の例では、相対調達量決定部19は、+方向調整量最大値dWh_pm(d,t)として「500」(kWh)、-方向調整量最大値dWh_mm(d,t)として「-50」(kWh)を取得することになる。
【0098】
そして相対調達量決定部19は、この後、上述のようにしてステップS42~ステップS46で取得した価格差D(d,t)、調整量dWh1(d,t)及びdWh2(d,t)、+方向調整量最大値dWh_pm(d,t)及び-方向調整量最大値dWh_mm(d,t)に基づいて、次式
【数3】
ただし、
【数4】
により調整量dWh(d,t)を算出する(S47)。
【0099】
従って、上述の例の場合「2020/04/01」の「10:00-10:31」の時間帯における調整量dWh(d,t)は、次式
【数5】
のように390(kWh)として算出される。
【0100】
この後、相対調達量決定部19は、ステップS42で取得した選択日付の選択時間帯における電力需要予測値Wh0(d,t)と、ステップS44、S45で算出した調整量dWh(d,t)とに基づいて、次式
【数6】
により相対調達量Wh(d,t)を算出し、算出結果を選択日付の選択時間帯における相対取引による電力調達量(つまり相対調達量)に決定する(S48)。
【0101】
従って、上述の例の場合「2020/04/01」の「10:00-10:31」の時間帯における相対調達量Wh(d,t)は、次式
【数7】
のように3990(kWh)として算出される。
【0102】
この後、相対調達量決定部19は、選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯についてステップS42以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S49)。そして相対調達量決定部19は、この判断で否定結果を得るとステップS41に戻り、この後、ステップS41で選択する時間帯をステップS42以降が未処理の他の時間帯に順次切り替えながら、ステップS41~ステップS49の処理を繰り返す。
【0103】
そして相対調達量決定部19は、やがて選択日付内の時間帯のうちで対象期間に含まれるすべての時間帯について相対調達量Wh(d,t)を決定し終えることによりステップS49で肯定結果を得ると、対象期間に含まれるすべての日付についてステップS41以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S50)。
【0104】
相対調達量決定部19は、この判断で否定結果を得るとステップS40に戻り、この後、ステップS40で選択する日付をステップS41以降が未処理の該当する他の日付に順次切り替えながらステップS40~ステップS50の処理を繰り返す。
【0105】
そして相対調達量決定部19は、やがて対象期間に含まれるすべての日付のすべての時間帯について相対調達量Wh(d,t)を決定し終えることによりステップS50で肯定結果を得ると、この相対調達量決定処理を終了する。
【0106】
(4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の電力調達量決定装置1では、時間帯ごとの相対電力調達量を、相対取引契約で予め定められた相対取引単価及び同じ時間帯について予測される予測市場単価の大小関係と、電力需要の予測誤差と、予測市場単価の予測誤差とに基づいて決定する。
【0107】
従って、本電力調達量決定装置1によれば、予測市場単価の不確実性の要素を考慮した電力調達量の決定を行えるため、電力取引市場における電力単価が高騰した場合においても相対取引により安価に電力調達を行うことができる。かくするにつき、電力小売事業者の収益の期待値を従来よりも向上させることができる。
【0108】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、電力需要予測値や相対取引単価及び予測市場単価などの情報を事前に電力調達量決定装置が保持する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電力調達量決定装置1が電力需要予測値データベース10や相対取引単価データベース11及び予測市場単価データベース12を保持せず、必要な情報をリアルタイムで外部から取得するようにしてもよい。
【0109】
また上述の実施の形態においては、第1及び第2のパラメータC1,C2を対象期間等設定画面30上でユーザが指定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら第1及び第2のパラメータC1,C2の値が固定的にデフォルトで設定されていてもよい。
【0110】
さらに上述の実施の形態においては、対象時間帯に対する電力調達量の調整量を算出し、算出した当該調整量及び電力調達量の初期値に基づいて、当該対象時間帯の電力調達量を決定する電力調達量決定部を、価格差算出部16、需要予測誤差ベース調整量算出部17、予測市場単価誤差ベース調整量算出部18及び相対調達量決定部19により構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかる電力調達量決定部を1つの機能部により構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、将来の各時間帯の電力調達量を決定する種々の構成の電力調達量決定装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1……電力調達決定装置、2……CPU、3……記憶装置、10……電力需要予測値データベース、11……相対取引単価データベース、12……予測市場単価データベース、13……調整許容範囲データベース、14……対象期間等設定部、15……相対調整量初期値設定部、16……価格差算出部、17……需要予測誤差ベース調整量算出部、18……予測市場単価誤差ベース調整量算出部、19……相対調達量決定部、20……相対調達量出力部、30……対象期間等設定画面、40……相対調達量表示画面。
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