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特許7551386画像形成装置、画像形成装置の制御方法、プログラム、及び管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成装置の制御方法、プログラム、及び管理システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20240909BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240909BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H04N1/00 002C
H04N1/00 127Z
G03G21/00 500
B41J29/38 301
B41J29/38 801
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020130873
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027081
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】松村 武士
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084958(JP,A)
【文献】特開2013-097752(JP,A)
【文献】特開2015-100080(JP,A)
【文献】特開2011-215605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00 - 1/64
G03G 21/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサを備える画像形成装置であって、
前記センサによって計測された計測値で構成された第1のデータに基づいて、所定のタイミングごとに前記画像形成装置の異常の予兆の検知に用いられるように前記第1のデータをヒストグラム化した第2のデータを生成するデータ生成手段と、
前記異常の予兆を検知する管理装置へ直接的又は間接的に前記第2のデータを送信する送信手段とを備え、
前記第2のデータは、前記第1のデータよりデータ量が小さいデータであり、
前記送信手段により送信される前記第2のデータは、前回前記送信手段により送信された前記第2のデータを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2のデータの送信タイミングが予め設定され、
前記送信手段は、前記第2のデータの送信タイミングに到達し且つ前記データ生成手段によって生成された第2のデータが直近で送信された第2のデータと同じデータである場合、前記管理装置へ直接的又は間接的に前記データ生成手段によって生成された第2のデータを送信しないことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
センサを備える画像形成装置の制御方法であって、
前記センサによって計測された計測値で構成された第1のデータに基づいて、所定のタイミングごとに前記画像形成装置の異常の予兆の検知に用いられるように前記第1のデータをヒストグラム化した第2のデータを生成するデータ生成ステップと、
前記異常の予兆を検知する管理装置へ直接的又は間接的に前記第2のデータを送信する送信ステップとを有し、
前記第2のデータは、前記第1のデータよりデータ量が小さいデータであり、
前記送信ステップで送信される前記第2のデータは、前回の前記送信ステップで送信された前記第2のデータを含むことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像形成装置の各手段をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項5】
画像形成装置と管理装置とを備える管理システムであって、
前記画像形成装置は、
センサと、
前記センサによって計測された計測値で構成された第1のデータに基づいて、所定のタイミングごとに前記第1のデータをヒストグラム化した第2のデータを生成するデータ生成手段と、
前記第2のデータを送信する送信手段とを備え、
前記送信手段により送信される前記第2のデータは、前回前記送信手段により送信された前記第2のデータを含み、
前記管理装置は、
前記第2のデータを取得する取得手段と、
前記取得した第2のデータに基づいて前記画像形成装置の異常の予兆を検知する異常予兆検知手段とを備え、
前記第2のデータは、前記第1のデータよりデータ量が小さいデータであることを特徴とする管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成装置の制御方法、プログラム、及び管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の状態をモニタリングし、画像形成装置の状態情報に基づいて画像形成装置の異常の予兆を検知する管理システムが知られている。管理システムでは、画像形成装置の異常の予兆を検知した場合、保守担当者にメンテナンスの依頼が行われ、依頼を受けた保守担当者が画像形成装置のメンテナンスを実施する。このように異常の予兆を検知した段階で画像形成装置のメンテナンスを実施することで、画像形成装置が故障して稼働できなくなる前に適切な処置を行って、画像形成装置の故障に起因するダウンタイムの発生を防止することができる。
【0003】
管理システムは、管理装置及び複数の画像形成装置で構成され、管理装置は、複数の画像形成装置とネットワークを介して接続されている。例えば、管理システムでは、画像形成装置は、当該画像形成装置が備える各種センサが計測した複数の計測値を含む状態情報を管理装置へ送信し、管理装置は複数の画像形成装置からそれぞれ受信した状態情報を蓄積する(例えば、特許文献1参照)。この管理システムでは、管理装置が、一の画像形成装置から受信した状態情報に基づいて一の画像形成装置の状態の特徴量を算出し、算出した特徴量の推移の傾向から一の画像形成装置の異常の予兆を検知する。この管理システムでは、複数の画像形成装置の状態情報が管理装置に集約されており、また、状態情報は画像形成装置の各種センサが計測した複数の計測値を含むので、これらの状態情報を異常の予兆の検知以外のデータ分析に活用することができる。一方、状態情報は上述したように複数の計測値を含むため、画像形成装置が管理装置へ状態情報を送信する際のデータ通信量が増え、このようなデータ通信を実現する通信環境の整備や維持に多くの費用がかかる。これに対し、例えば、他の管理システムでは、画像形成装置が、状態情報に基づいて画像形成装置の状態の特徴量を算出し、算出した特徴量の推移の傾向から検知した異常の予兆に関する情報を管理装置へ送信する(例えば、特許文献2参照)。異常の予兆に関する情報は、状態情報よりデータ量が小さいので、画像形成装置が管理装置へ状態情報を送信する構成より、通信環境の整備や維持にかかる費用を抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-166427号公報
【文献】特開2020-3656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像形成装置が異常の予兆に関する情報を管理装置へ送信する構成では、管理装置に蓄積される情報は異常の予兆に関する情報のみであるので、この情報を異常の予兆の検知以外のデータ分析に活用することができない。すなわち、従来では、通信環境の整備や維持にかかる費用を抑えつつ、異常の予兆の検知以外のデータ分析に活用可能なデータを管理装置へ提供することができない。
【0006】
本発明の目的は、通信環境の整備や維持にかかる費用を抑えつつ、異常の予兆の検知以外のデータ分析に活用可能なデータを管理装置へ提供することができる画像形成装置、画像形成装置の制御方法、プログラム、及び管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、センサを備える画像形成装置であって、前記センサによって計測された計測値で構成された第1のデータに基づいて、所定のタイミングごとに前記画像形成装置の異常の予兆の検知に用いられるように前記第1のデータをヒストグラム化した第2のデータを生成するデータ生成手段と、前記異常の予兆を検知する管理装置へ直接的又は間接的に前記第2のデータを送信する送信手段とを備え、前記第2のデータは、前記第1のデータよりデータ量が小さいデータであり、前記送信手段により送信される前記第2のデータは、前回前記送信手段により送信された前記第2のデータを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信環境の整備や維持にかかる費用を抑えつつ、異常の予兆の検知以外のデータ分析に活用可能なデータを管理装置へ提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る管理システムとしての異常予測システムの構成を概略的に示す構成図である。
図2図1の画像形成装置の側面図である。
図3図1の画像形成装置のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
図4図1の管理装置のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
図5図2の制御部の機能構成を示すブロック図である。
図6図1の異常予測システムによって生成される特徴抽出データと当該特徴抽出データを用いた処理の内容について説明するための図である。
図7図1の異常予測システムにおいて特徴抽出データを生成してメンテンナンスが必要であることを通知する一連の処理の流れを説明するためのシーケンス図である。
図8図1画像形成装置によって生成される内部データ及び特徴抽出データの一例を示す図である。
図9図1の画像形成装置によって実行される特徴抽出データ送信制御処理の手順を示すフローチャートである。
図10図9のステップS901の特徴抽出データ生成処理の手順を示すフローチャートである。
図11図9のステップS903のデータ送信判定処理の手順を示すフローチャートである。
図12図1の管理装置によって実行される異常予測制御処理の手順を示すフローチャートである。
図13図12のステップS1203の処理の実行結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る管理システムとしての異常予測システム100の構成を概略的に示す構成図である。異常予測システム100は、1台以上の画像形成装置、サーバ103、及び管理装置104を備える。なお、本実施の形態では、一例として、異常予測システム100が2台の画像形成装置101,102を備える構成について説明する。画像形成装置101,102、サーバ103、及び管理装置104は、インターネット105を介して通信可能である。異常予測システム100は、画像形成装置101,102からデータを収集し、収集したデータに基づいて画像形成装置101や画像形成装置102の異常の予兆を検知する。
【0012】
画像形成装置101,102は、スキャン機能、プリント機能、コピー機能、FAX通信機能等の複数の機能を備える装置であり、例えば、MFPである。なお、本実施の形態では、画像形成装置101及び画像形成装置102は同様の機能及び構成であり、以下では、一例として、画像形成装置101を用いてその機能及び構成を説明する。
【0013】
画像形成装置101は、ユーザによる機能選択操作を受け付け、また、ユーザによって指示されたジョブを実行する。画像形成装置101が実行するジョブは、例えば、スキャンジョブ、印刷ジョブ、コピージョブ、FAX送信ジョブである。また、画像形成装置101は、当該画像形成装置101の異常の予兆を検知するために必要となる後述する図3のログデータ310や特徴抽出データ311を定期的にサーバ103へ送信する。
【0014】
サーバ103は、画像形成装置101,102からそれぞれ受信したログデータ310及び特徴抽出データ311を保存する。また、サーバ103は、保存したログデータ310及び特徴抽出データ311を管理装置104へ送信する。
【0015】
管理装置104は、サーバ103から、例えば、画像形成装置101のログデータ310及び特徴抽出データ311を受信すると、受信した特徴抽出データ311を分析して、画像形成装置101の異常の予兆を検知する。具体的に、管理装置104は、画像形成装置101が備える各種部品の故障や寿命等を予測する。予測した結果、画像形成装置101の部品の交換が必要である場合には、管理装置104は、保守点検員106に画像形成装置101のメンテナンス作業を依頼する。このようにして、本実施の形態では、異常予測システム100の管理対象となる画像形成装置に搭載された部品が故障する前に、寿命が近付いた部品を交換する等のメンテナンス作業を行うことができる。
【0016】
図2は、図1の画像形成装置101の側面図である。なお、図2では理解を容易にするために内部の構成が透過して示される。図2において、画像形成装置101は、プリンタ部200及びリーダ部240を備える。
【0017】
リーダ部240は、原稿245に形成された画像を読み取るスキャナである。原稿245は、原稿台246上に、画像が形成された面が原稿台246に接するように置かれる。リーダ部240は、読み取った画像を表す画像データをプリンタ部200へ送信する。リーダ部240は、読取ユニット249、及びリーダ画像処理部247を備える。
【0018】
読取ユニット249は、発光部242、光学系243、及び受光部244が一体に構成される。読取ユニット249は、例えば、図中奥方向に伸びるラインセンサであり、矢印R248方向に移動しながら原稿245の画像を読み取る。発光部242は、原稿245を照射する。受光部244は、原稿245から反射した光を、光学系243を介して受光する。受光結果は、リーダ画像処理部247へ送信される。リーダ画像処理部247は、受信した受光結果に基づいて、原稿245に形成された画像を表す画像データを生成する。また、リーダ画像処理部247は、受信した受光結果に基づいて、原稿245に形成された画像の画像濃度を測定するセンサとしても機能する。リーダ画像処理部247は、画像データ及び測定した画像濃度をプリンタ部200に送信する。
【0019】
画像形成装置101は、電子写真方式によりカラー画像を形成する。画像形成装置102は、中間転写タンデム方式の画像形成装置であり、プリンタ部200には、4つの画像形成部Pa~Pdが中間転写ベルト206上に並べて配置されている。画像形成部Paは、イエローのトナー像を形成する。画像形成部Pbは、マゼンタのトナー像を形成する。画像形成部Pcは、シアンのトナー像を形成する。画像形成部Pdは、ブラックのトナー像を形成する。なお、本実施の形態では、形成されるトナー像の色の数は、4色に限定されるものではない。
【0020】
画像が形成されるシート等の記録材Sは、プリンタ部200の記録材収納庫230a,230b内に積載されている。記録材Sは、画像形成部Pa~Pdによる画像形成が行われる際に、記録材収納庫230a(又は、記録材収納庫230b)から、摩擦分離方式を採用した給紙ローラ231a(又は、給紙ローラ231b)によって給紙される。給紙ローラ231a,231bは、搬送パスを介して、記録材Sをレジストローラ232へ搬送する。レジストローラ232は、記録材Sの斜行を補正し、タイミングを調整して二次転写部T2に記録材Sを搬送する。
【0021】
プリンタ部200では、画像形成部Pa~Pdによって画像形成が行われる。なお、本実施の形態では、画像形成部Pa~Pdは同様の構成であり、以下では、一例として、画像形成部Paを用いてその構成を説明する。画像形成部Paは、感光体201a、帯電器202a、露光器203a、現像器204a、一次転写部T1a、及び感光体クリーナ205aを備える。帯電器202aは、回転駆動する感光体201aの表面を一様に帯電させる。露光器203aは、リーダ部240から受信した画像データに基づいて光を変調し、変調した光を感光体201aに照射する。これにより、感光体201aには、上記画像データに対応する静電潜像が形成される。
【0022】
現像器204aは、感光体201aに形成された静電潜像を現像剤により現像する。本実施の形態では、現像剤にトナーが用いられる。なお、本実施の形態の現像器204aは、非磁性トナーと磁性キャリアとを混合した二成分現像剤を収容するが、磁性トナー又は非磁性トナーのみの一成分現像剤であってもよい。静電潜像が形成された感光体201aにトナーを付着させることにより、感光体201aにトナー像が形成される。一次転写部T1aは、所定量の圧力及び所定量の静電的負荷バイアスが加えられると、感光体201aに形成されたトナー像を中間転写ベルト206に転写する。同様にして、感光体201b~201dに形成されたトナー像が中間転写ベルト206に転写される。ここで、感光体201a~201dの各々に形成されたトナー像は、中間転写ベルト206に重畳するように転写される。このように、中間転写ベルト206には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が重畳して転写され、フルカラーのトナー像が形成される。転写後に感光体201a~201dに残留するトナーは、感光体クリーナ205a~205dにより回収される。プリンタ部200では、例えば、現像器204aに収容されるトナーの量が所定量以下になると、現像剤の補給容器であるトナーボトルTaから現像器204aにトナーが補給される。
【0023】
中間転写ベルト206は、中間転写ベルトフレーム(不図示)に設けられ、二次転写内ローラ208、テンションローラ212、及び二次転写上流ローラ213によって張架される無端ベルトである。中間転写ベルト206は、二次転写内ローラ208、テンションローラ212、及び二次転写上流ローラ213により矢印R207方向に回転駆動される。フルカラーのトナー像が形成された中間転写ベルト206は、回転することで二次転写部T2にトナー像を搬送する。
【0024】
記録材S及び中間転写ベルト206に形成されたトナー像は、それぞれ二次転写部T2で合流するタイミングで搬送される。二次転写部T2は、対向して配置される二次転写内ローラ208及び二次転写外ローラ209により形成される転写ニップ部である。二次転写部T2は、所定量の圧力及び所定量の静電的負荷バイアスを加えることで、記録材S上にトナー像を吸着させる。このようにして、二次転写部T2は、中間転写ベルト206上のトナー像を記録材Sに転写する。転写後に中間転写ベルト206に残留するトナーは、転写クリーナ210により回収される。
【0025】
トナー像が転写された記録材Sは、二次転写外ローラ209により、二次転写部T2から定着器211に搬送される。定着器211は、対向するローラにより形成される定着ニップ内で記録材Sに所定量の圧力及び所定の温度の熱を加えて、記録材S上にトナー像を溶融固着させる。定着器211は、熱源となるヒータ(不図示)を備え、常に最適な温度が維持されるように制御される。トナー像が定着された記録材Sは、排紙トレイ233に排出される。記録材Sの両面に画像を形成する場合、記録材Sは、反転搬送機構により反転されてレジストローラ232に搬送され、上記トナー像が定着されていない面に別のトナー像が形成される。
【0026】
中間転写ベルト206の近傍にはトナー濃度を検知するための濃度検知センサ220が設けられている。濃度検知センサ220は、中間転写ベルト206上に形成された各色のトナーパターンを検出可能な位置、具体的に、感光体201dと二次転写外ローラ209の間に配置される。
【0027】
図3は、図1の画像形成装置101のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。図3において、画像形成装置101は、上述したプリンタ部200及びリーダ部240の他に、制御部301、操作パネル304、記憶装置307、及びネットワークI/F312を備える。プリンタ部200、リーダ部240、制御部301、操作パネル304、記憶装置307、及びネットワークI/F312は、データバス315を介して互いに接続されている。
【0028】
制御部301は、CPU302及びメモリ303を備える。制御部301は、画像形成装置102の動作を統括的に制御する。CPU302は、記憶装置307に格納された各種プログラムを実行するハードウェアプロセッサである。例えば、CPU302は、画像形成装置102に電源が投入されると、記憶装置307に記憶されているプログラム308を読み出して当該プログラム308を実行する。これにより、制御部301は、後述する図5のジョブ制御部501及びデータ管理部503として機能する。また、CPU302がプログラム308を実行することにより、後述する図9の特徴抽出データ送信制御処理が実行される。メモリ303は、CPU302の作業領域として、また、各データの一時記憶領域として用いられる。
【0029】
操作パネル304は、表示部305及び操作部306を備える。表示部305は、例えば、カラー液晶ディスプレイで構成され、ユーザや保守点検員106が操作可能な各種操作画面やメンテナンスに必要な情報を表示する。操作部306は、例えば、表示部305に表示されるタッチパネルキーによって構成され、ユーザや保守点検員106による操作を受け付ける。
【0030】
記憶装置307は、不揮発性の記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)である。記憶装置307は、プログラム308、内部データ309、ログデータ310、及び特徴抽出データ311を格納する。内部データ309は、リーダ部240やプリンタ部200が備える各種センサによって測定されたセンサ計測値の時系列データである。ログデータ310は、画像形成装置102におけるジョブの実行履歴等を記録したデータであり、実行したジョブの詳細情報やジョブの実行日時情報等を含む。特徴抽出データ311は、内部データ309に基づいて生成される。特徴抽出データ311は、画像形成装置102の特性を示すデータであって内部データ309よりデータ量が小さいデータである。ネットワークI/F312は、インターネット105を介するデータ通信を実現する。画像形成装置102は、ネットワークI/F312を介してサーバ103と通信を行う。
【0031】
リーダ部240は、センサ群313を備える。センサ群313は、リーダ部240が原稿を読み取る際に動作する可動部品の動作状態を監視する複数のセンサを含む。センサ群313に含まれる各センサは、制御部301から受けた要求に基づいて可動部品の動作状態を計測したセンサ計測値を内部データ309の1つとして制御部301へ出力する。プリンタ部200は、センサ群314を備える。センサ群314は、濃度検知センサ220等といった、プリンタ部200が画像形成を行う際に動作する可動部品の動作状態を監視する複数のセンサを含む。センサ群314に含まれる各センサは、制御部301から受けた要求に基づいて可動部品の動作状態を計測したセンサ特性値を内部データ309の1つとして制御部301へ出力する。
【0032】
次に、サーバ103及び管理装置104のハードウェア構成について説明する。なお、本実施の形態では、サーバ103及び管理装置104は同様の構成であり、以下では、一例として、管理装置104を用いてその構成を説明する。
【0033】
図4は、図1の管理装置104のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。図4において、管理装置104は、CPU401、メモリ402、記憶装置403、及びネットワークI/F404を備える。CPU401、メモリ402、記憶装置403、及びネットワークI/F404は、システムバス405を介して互いに接続されている。
【0034】
CPU401は、管理装置104全体の動作を制御する中央演算装置である。メモリ402は、CPU401の起動用プログラムや当該起動用プログラムの実行に必要となるデータを格納する。記憶装置403は、メモリ402より大容量の記憶装置であり、例えば、HDDである。なお、記憶装置403は、HDDに限られず、HDDと同等の機能を有する他の記憶装置、例えば、ソリッドステートドライブ(SSD)であっても良い。記憶装置403は、CPU401が実行する制御用プログラム等を格納する。
【0035】
CPU401は、管理装置104の起動時、メモリ402に格納されている起動用プログラムを実行する。この起動用プログラムは、記憶装置403に格納された制御用プログラムをメモリ402に展開するためのプログラムである。次いで、CPU401は、メモリ402に展開された制御用プログラムを実行し、各種制御を行う。また、CPU401は、ネットワークI/F404により、インターネット105を介してサーバ103等の他の機器とデータ通信を行う。例えば、管理装置104は、ネットワークI/F404により画像形成装置101から受信したデータに基づいて、画像形成装置101の操作パネル304に表示された画面を共有し、管理装置104の表示部に当該画面を表示することができる。
【0036】
図5は、図2の制御部301の機能構成を示すブロック図である。画像形成装置101において、CPU302がプログラム308を実行することにより、制御部301は、ジョブ制御部501及びデータ管理部503として機能する。
【0037】
ジョブ制御部501は、画像形成装置101におけるジョブの実行を制御する。ジョブ制御部501は、リーダ部240、プリンタ部200の動作を制御することにより、ユーザによって指示されたジョブの実行を制御する。ジョブ制御部501は、ログ記録部502を含む。ログ記録部502は、ユーザによって指示されたジョブが実行された際にログデータ310にジョブの実行履歴を記録する。
【0038】
データ管理部503は、内部データ309や特徴抽出データ311を管理する。データ管理部503は、タイミング判別部504、データ取得部505、特徴抽出部506、データ送信判定部507、及びデータ送信部508を含む。
【0039】
タイミング判別部504は、サーバ103に対して特徴抽出データ311を送信するタイミング(以下、「データ送信タイミング」という。)であるか否かを判別する。例えば、タイミング判別部504は、特徴抽出データ311をサーバ103へ前回送信(以下、「特徴抽出データ311の前回送信時」という。)してから予め設定された所定の時間が経過した場合、データ送信タイミングであると判別する。
【0040】
データ取得部505は、サーバ103に送信する特徴抽出データ311の生成に用いられる内部データ309を記憶装置307から取得する。具体的に、データ取得部505は、上述したセンサ群313,314に含まれる各センサに対し、センサ毎に定義された所定のタイミングでデータ取得要求を出力し、各センサからセンサ計測値を取得する。なお、所定のタイミングは、数msec~数sec間隔等といった一定の時間毎であっても良く、また、ユーザによって指示されたジョブを実行する前後のタイミングであっても良い。また、データ取得部505は、記憶装置307に保存されているログデータ310を取得する。
【0041】
特徴抽出部506は、上記データ取得部505によって取得した内部データ309を特徴抽出データ311に変換する特徴抽出処理を実行する。データ送信判定部507は、後述する図11のデータ送信判定処理を実行し、生成した特徴抽出データ311をサーバ103へ送信するか否かを判定する。データ送信部508は、データ送信判定部507によって特徴抽出データ311をサーバ103へ送信すると判定された場合に、特徴抽出データ311をサーバ103へ送信する。このように、本実施の形態では、データ送信タイミングであり且つデータ送信判定部507によって特徴抽出データ311をサーバ103へ送信すると判定された場合にのみ、特徴抽出データ311がサーバ103へ送信される。これにより、サーバ103に特徴抽出データ311を送信する必要がない場合に、画像形成装置101がサーバ103へ不要なデータを送信するのを防止することができ、もって、画像形成装置101及びサーバ103の間の通信負荷を軽減することができる。
【0042】
図6は、図1の異常予測システム100によって生成される特徴抽出データと当該特徴抽出データに関する処理について説明するための図である。図6(a)は、内部データ309と画像形成装置101が実行する特徴抽出処理と管理装置104が実行する異常予測処理との関係を表す。
【0043】
図6(a)において、データ項目601は、内部データ309のデータ項目、具体的に、データ取得部505がリーダ部240やプリンタ部200から取得したセンサ計測値やカウント値等の項目名を表している。本実施の形態では、内部データ309のデータ項目には、それぞれデータ項目を識別するためのIDが割り当てられている。
【0044】
データ取得元602は、データ項目601のデータが画像形成装置102の何れの構成要素から取得されたデータであるかを表している。データ種別603は、データ項目601のデータの属性を表している。特徴抽出処理604は、データ項目601のデータを用いて特徴抽出データ311を生成する特徴抽出処理の種別を表している。なお、図6(a)では、例えば、スキャンカウンタ、プリントカウンタ、ログデータのように、特徴抽出データ311が生成されないデータのデータ項目は、特徴抽出処理を実行しない旨を示す「-」で表されている。
【0045】
判別処理605は、データ項目601のデータを用いて生成された特徴抽出データ311に基づいて管理装置104が実行する異常予測処理の種別を表している。異常予測システム100では、異常予測処理の種別が、当該異常予測処理に使用される特徴抽出データ311の生成に用いられるデータのデータ項目と対応付けられて管理されている。予測要求ID606は、判別処理605の異常予測処理に対応付けて割り当てられた固有の番号である。なお、管理装置104と画像形成装置101,102とで予測要求ID606の番号を共有する構成であれば、予測要求ID606の番号は、判別処理605の異常予測処理の各々に予め設定されていても良く、また、管理装置104が定期的に設定しても良い。管理装置104は、予測要求ID606の番号に基づいて、実行する異常予測処理を決定する。例えば、保守点検員106が、画像形成装置101の転写ローラの状態を確認するために予測要求ID「3」の異常予測処理の実行を管理装置104に指示した場合、管理装置104は、予測要求ID「3」に対応する分散率を求める異常予測処理の実行を決定する。管理装置104は、当該異常予測処理の実行に用いる転写ローラの走行距離に対応する特徴抽出データ311をサーバ103から取得し、取得した特徴抽出データ311に基づいて分散率を求める異常予測処理を実行する。
【0046】
図6(b)は、図1の画像形成装置101がサーバ103へ送信する送信用データ607の一例を示す図である。送信用データ607は、複数の特徴抽出データ311で構成される。図6(b)において、送信用データ607は、データ項目608及び具体値609で構成される。データ項目608には、特徴抽出データのデータ項目が設定される。具体値609には、データ項目608の特徴抽出データの具体値が、元となる内部データ309の生成時刻毎に設定される。このような構成により、何れの生成時刻の内部データ309に基づいて生成された特徴抽出データであるかが確認可能となる。図6(b)の送信用データ607には、例えば、計測時刻t(2020/01/01/00:00:00)から所定の計測時刻までの定着器211の温度を示すセンサ計測値の最大値を算出する最大値算出処理が施された結果の値y(80)が設定されている。また、図6(b)の送信用データ607には、計測時刻t(2020/01/01/00:00:00)の転写ローラの走行距離を示すセンサ計測値に対し、所定のルールでヒストグラム化するヒストグラム化処理を施した結果、例えば、ヒストグラム処理の分類グループが(80)であることが設定されている。画像形成装置102は、送信用データ607をテキスト形式に変換し、また、テキスト形式に変換済みのデータを必要に応じて圧縮して、サーバ103へ送信する。
【0047】
図7は、図1の異常予測システム100において特徴抽出データを生成してメンテンナンスが必要であることを通知する一連の処理の流れを説明するためのシーケンス図である。
【0048】
図7において、画像形成装置101は、内部データ取得判別を行い(ステップS701)、リーダ部240やプリンタ部200からセンサ計測値やカウント値を取得するタイミング(以下、「内部データ取得タイミング」という。)であるか否かを判別する。内部データ取得タイミングであると判別した場合、画像形成装置101は、リーダ部240やプリンタ部200からセンサ計測値やカウント値等のデータを取得し(ステップS702)、取得したデータを含む内部データ309を生成する。内部データ309では、複数のセンサ計測値及びカウント値の時系列データが項目毎に管理されている。内部データ309に含まれるセンサ計測値の時系列データの一例として、図8(a)は、時刻Tにおける定着ベルトモータの回転加速度について、横軸を時刻(T)とし、縦軸を回転加速度として表したものである。
【0049】
次いで、画像形成装置101は、取得したセンサ計測値やカウント値で構成される内部データ309に基づいて特徴抽出データ311を生成する(ステップS703)。例えば、画像形成装置101は、内部データ309に含まれるセンサ計測値である図8(a)の定着ベルトモータの回転加速度の時系列データに対し、ヒストグラム化処理を施して図8(b)の特徴抽出データ311を生成する。このように、定着ベルトモータの回転加速度に対してヒストグラム化処理を行うことで、定着ベルトモータの回転加速度を示すセンサ計測値の出現頻度に関する特性を示し且つ内部データ309よりデータ量が小さいデータを得ることができる。
【0050】
次いで、画像形成装置101は、後述する図11のデータ送信判定処理を実行して(ステップS704)、特徴抽出データ311の送信を許可するか否かを判定する。特徴抽出データ311の送信を許可すると判定した場合、画像形成装置101は、特徴抽出データ311及びログデータ310をサーバ103へ送信する(ステップS705)。ステップS705では、画像形成装置101は、複数の特徴抽出データ311で構成される送信用データ607をサーバ103へ送信しても良く、また、複数の特徴抽出データ311のうち、前回送信時から更新された特徴抽出データ311をサーバ103へ送信しても良い。その後、画像形成装置101は、ステップS701の処理を行う。このようにして、画像形成装置101は、ステップS701~S705の処理を繰り返し実行する。
【0051】
画像形成装置101から特徴抽出データ311及びログデータ310を受信すると、サーバ103は、管理していた画像形成装置101の特徴抽出データ311及びログデータ310を、上記受信した特徴抽出データ311及びログデータ310に更新する(ステップS706)。次いで、更新済みの特徴抽出データ311及びログデータ310を保存する(ステップS707)。その後、サーバ103は、ステップS706の処理を行う。このようにして、サーバ103は、ステップS706~S707の処理を繰り返し実行する。
【0052】
管理装置104は、後述する図12のステップS1201の処理を行い、異常予測処理の実施タイミングであるか否かを判別する(ステップS708)。異常予測処理の実施タイミングであると判別した場合、管理装置104は、サーバ103から、上記異常予測処理の実行に必要となる予測用データを取得する(ステップS709)。予測用データは、画像形成装置101の特徴抽出データ311及びログデータ310である。次いで、管理装置104は、取得した予測用データに対応付けられた異常予測処理を実行する(ステップS710)。例えば、管理装置104は、定着ベルトモータの回転加速度に対してヒストグラム化処理が施された図8(b)の特徴抽出データ311を予測用データとして取得した際に、この特徴抽出データ311に基づいて、異常予測処理としてヒストグラムの分散率を用いた判別処理を実行する。管理装置104は、例えば、図8(c)に示すように、算出された分散率が所定の分散率の値以上である場合、定着ベルトモータは正常であると判別する。一方、図8(d)に示すように、算出された分散率が所定の分散率の値未満である場合、管理装置104は、定着ベルトモータにおいて異常の予兆があると判別する。なお、本実施の形態では、ヒストグラム化処理済みの特徴抽出データ311に対して、管理装置104が、分散率を求めて判別処理を行う例について説明したが、分散率以外の方法、例えば、平均、歪度、尖度等の方法で判別処理を行っても良い。
【0053】
図7に戻り、管理装置104は、異常予測処理を実行した結果、保守点検員106への通知が必要であると判別した場合には、保守点検員106へ通知を行い(ステップS711)。その後、管理装置104は、ステップS708の処理を行う。このようにして、管理装置104は、ステップS708~S711の処理を繰り返し実行する。
【0054】
図9は、図1の画像形成装置101によって実行される特徴抽出データ送信制御処理の手順を示すフローチャートである。図9の処理は、制御部301のCPU302がプログラム308を実行することによって実現される。図9の処理は、予め設定された所定の期間毎に、又は予め設定された所定の時刻に定期的に実行される。なお、図9の処理では、上述したステップS701~S702の処理が実行され、内部データ309が既に生成されていることとする。
【0055】
図9において、まず、制御部301は、後述する図10の特徴抽出データ生成処理を実行し(ステップS901)、特徴抽出データ311を生成する(例えば、ステップS703を参照。)。次いで、制御部301は、データ送信タイミングであるか否かを判別する(ステップS902)。ステップS902では、例えば、特徴抽出データ311の前回送信時から予め設定された所定の時間が経過した場合、制御部301は、データ送信タイミングであると判別する。一方、特徴抽出データ311の前回送信時から上記所定の時間が経過しない場合、CPU302は、データ送信タイミングでないと判別する。
【0056】
ステップS902の判別の結果、データ送信タイミングでない場合、特徴抽出データ送信制御処理は、後述するステップS905に進む。ステップS902の判別の結果、データ送信タイミングである場合、制御部301は、後述する図11のデータ送信判定処理を実行し(ステップS903)、特徴抽出データ311をサーバ103へ送信することを許可するか否かを決定する(例えば、ステップS704を参照。)。
【0057】
ステップS903において、特徴抽出データ311をサーバ103へ送信することが許可された場合、制御部301は、ステップS901にて生成した特徴抽出データ311をサーバ103へ送信する(ステップS904)(例えば、ステップS705を参照。)。ステップS904では、上述したように、制御部301は、複数の特徴抽出データ311で構成される送信用データ607をサーバ103へ送信しても良く、また、複数の特徴抽出データ311のうち、前回送信時から更新された特徴抽出データ311をサーバ103へ送信しても良い。特徴抽出データ311の送信を完了すると、特徴抽出データ送信制御処理は、ステップS905に進む。一方、ステップS903において、特徴抽出データ311をサーバ103へ送信することが許可されない場合、特徴抽出データ311がサーバ103へ送信されずに、特徴抽出データ送信制御処理は、ステップS905に進む。ステップS905では、制御部301は、ユーザによるジョブの実行指示を受け付けたか否かを判別する。
【0058】
ステップS905の判別の結果、ユーザによるジョブの実行指示を受け付けた場合、制御部301は、ユーザに指示されたジョブを実行する(ステップS906)。当該ジョブの実行を完了すると、制御部301は、ログデータ310を更新する(ステップS907)。具体的に、制御部301は、上記ジョブの実行記録をログデータ310に設定する。次いで、制御部301は、更新済みのログデータ310をサーバ103へ送信する(例えば、ステップS705を参照。)。その後、特徴抽出データ送信制御処理は終了する。
【0059】
図10は、図9のステップS901の特徴抽出データ生成処理の手順を示すフローチャートである。
【0060】
図10において、制御部301は、記憶装置307から内部データ309を読み出し、内部データ309が特徴抽出データ311の前回送信時から更新されているか否かを判別する(ステップS1001)。
【0061】
ステップS1001の判別の結果、内部データ309が特徴抽出データ311の前回送信時から更新されている場合、制御部301は、内部データ309において特徴抽出データ311の前回送信時から更新されているデータ項目を特定する(ステップS1002)。次いで、制御部301は、実行する特徴抽出処理を決定する(ステップS1003)。例えば、ステップS1002にて特定したデータ項目が図6(a)に示す「定着部温度」である場合、制御部301は、実行する特徴抽出処理を、特定したデータ項目の特徴抽出データを生成するための「最大値算出処理」に決定する。また、ステップS1002にて複数のデータ項目が特定された場合、制御部301は、特定した複数のデータ項目に対し、実行する特徴抽出処理をそれぞれ決定する。
【0062】
次いで、制御部301は、決定した特徴抽出処理の実行に必要となるデータが内部データ309に含まれているか否かを判別する(ステップS1004)。ここで、例えば、最大値算出処理や移動平均処理では、特定したデータ項目の最新のデータだけでなく、それ以前の所定の期間又は所定数の過去データが必要となる。このように、本実施の形態では、実行に必要となるデータ数が特徴抽出処理毎に異なるため、特徴抽出処理において実行に必要となるデータ数が管理テーブル(不図示)で管理されている。ステップS1004では、上記過去データを含め、決定した特徴抽出処理の実行に必要となるデータが内部データ309に含まれているか否かが判別される。
【0063】
ステップS1004の判別の結果、決定した特徴抽出処理の実行に必要となるデータが内部データ309に含まれている場合、制御部301は、内部データ309から、決定した特徴抽出処理の実行に必要となるデータを取得する(ステップS1005)。次いで、制御部301は、ステップS1003にて決定した特徴抽出処理を実行して、特徴抽出データ311を生成し(ステップS1006)、特徴抽出データ生成処理は終了する。
【0064】
ステップS1001の判別の結果、内部データ309が特徴抽出データ311の前回送信時から更新されていない場合、又はステップS1004の判別の結果、決定した特徴抽出処理の実行に必要となるデータが内部データ309に含まれていない場合、特徴抽出データ311が生成されず、特徴抽出データ生成処理は終了する。
【0065】
図11は、図9のステップS903のデータ送信判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0066】
図11において、制御部301は、記憶装置307からログデータ310を読み出し(ステップS1101)、ログデータ310に特徴抽出データ311の前回送信時以降のジョブの実行記録が含まれているか否かを判別する(ステップS1102)。
【0067】
ステップS1102の判別の結果、ログデータ310に特徴抽出データ311の前回送信時以降のジョブの実行記録が含まれている場合、制御部301は、特徴抽出データ311の送信を許可し(ステップS1103)、データ送信判定処理は終了する。
【0068】
ステップS1102の判別の結果、ログデータ310に特徴抽出データ311の前回送信時以降のジョブの実行記録が含まれていない場合、制御部301は、特徴抽出データ311に含まれる更新日時情報に基づいて、特徴抽出データ311が前回送信時から更新されているか否かを判別する(ステップS1104)。
【0069】
ステップS1104の判別の結果、特徴抽出データ311が前回送信時から更新されている場合、データ送信判定処理はステップS1103に進む。ステップS1104の判別の結果、特徴抽出データ311が前回送信時から更新されていない場合、制御部301は、特徴抽出データ311の送信を禁止する(ステップS1105)。すなわち、本実施の形態では、特徴抽出データ311の送信タイミングに到達し且つステップS901にて生成された特徴抽出データ311が直近で送信された特徴抽出データと同じデータである場合、ステップS901にて生成された特徴抽出データ311がサーバ103へ送信されない。その後、データ送信判定処理は終了する。
【0070】
図12は、図1の管理装置104によって実行される異常予測制御処理の手順を示すフローチャートである。図12の処理は、管理装置104のCPU401がメモリ402や記憶装置403に格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0071】
図12において、CPU401は、異常予測処理の実施タイミングであるか否かを判別する(ステップS1201)。本実施の形態では、管理装置104が実行可能な異常予測処理の予測要求IDに対し、所定の期間や所定の時刻といった実施タイミングが予め設定されている。また、管理装置104は、保守点検員106等が操作する画像形成装置から異常予測処理の実行要求を受け付けることも可能である。ステップS1201では、予め設定された異常予測処理の実施タイミングに到達した場合、又は画像形成装置101等から保守点検員106が指定した異常予測処理の予測要求IDを含む実行要求を受け付けた場合、CPU401は、異常予測処理の実施タイミングであると判別する。一方、予め設定された異常予測処理の実施タイミングに到達しない場合、又は画像形成装置101等の装置から異常予測処理の実行要求を受け付けない場合、CPU401は、異常予測処理の実施タイミングでないと判別する。
【0072】
ステップS1201の判別の結果、異常予測処理の実施タイミングでない場合、異常予測制御処理は終了する。ステップS1201の判別の結果、異常予測処理の実施タイミングである場合、CPU401は、実行する異常予測処理を識別するための予測要求IDを取得する。例えば、保守点検員106が定着ベルトの状況を把握するために画像形成装置101から送信された予測要求ID「2」を含む実行要求を受け付けた場合、CPU401は、この予測要求ID「2」を取得する。
【0073】
次いで、CPU401は、取得した予測要求IDに対応する異常予測処理の実行に必要となる特徴抽出データ311及びログデータ310をサーバ103から取得する(ステップS1202)。次いで、CPU401は、取得した特徴抽出データ311及びログデータ310に基づいて、取得した予測要求IDに対応する異常予測処理を実行する(ステップS1203)(異常予兆検知手段)。
【0074】
例えば、予測要求ID「2」に対応する異常予測処理として、CPU401は、定着ベルトモータの回転加速度を示すセンサ計測値の時系列データに対してスペクトル化処理を施して生成された特徴抽出データ311を用いて周期解析を行う処理を実行し、異常の発生や異常の兆候があるか否かを判別する。例えば、図13(a)の点線1301のように、波形の周期が所定の値以内である場合、CPU401は、定着ベルトモータが正常であると判別する。一方、図13(a)の実線1302のように、波形の周期が所定の値より大きい場合、CPU401は、定着ベルトモータにおいて異常の予兆があると判別する。このように、本実施の形態では、センサ計測値の周波数成分の特性を示すデータであって内部データ309よりデータ量が小さい特徴抽出データ311に基づいて画像形成装置の異常の予兆の有無を判別することが可能となる。
【0075】
また、CPU401は、中間転写ベルトの速度を示すセンサ計測値に対して移動平均処理を施した特徴抽出データ311を用いて傾き分析処理を行うことで、異常の兆候があるか否かを判別する。例えば、図13(b)に示すように、波形の傾きが所定の値以内である場合、CPU401は、中間転写ベルトが正常であると判別する。一方、図13(c)に示すように、波形の傾きが所定の値より大きい場合、CPU401は、中間転写ベルトにおいて異常の予兆があると判別する。このように、本実施の形態では、センサ計測値に対して移動平均処理を施して生成された特徴抽出データ311を用いることで、少ないデータ量でセンサ計測値の傾向を把握可能となり、また、センサ計測値の計測誤差を削減可能となる。
【0076】
次いで、CPU401は、異常予測処理の実行結果に基づいて、保守点検員106へ通知を行うか否かを判別する(ステップS1204)。ステップS1204では、例えば、異常予測処理の実行結果において異常の発生や異常の兆候が検知された場合、CPU401は、保守点検員106へ通知を行うと判別する。一方、異常予測処理の実行結果において異常の発生や異常の兆候が検知されない場合、CPU401は、保守点検員106へ通知を行わないと判別する。
【0077】
ステップS1204において、保守点検員106へ通知を行わないと判別した場合、異常予測制御処理は終了する。ステップS1204において、保守点検員106へ通知を行うと判別した場合、CPU401は、異常が検知された部品に関する情報等を含む異常状態通知を生成する(ステップS1205)。次いで、CPU401は、異常状態通知を保守点検員106へ出力し(ステップS1206)、異常予測制御処理は終了する。
【0078】
上述した実施の形態によれば、画像形成装置101(又は画像形成装置102)が、サーバ103を介して(間接的に)管理装置104へ特徴抽出データ311を送信する。特徴抽出データ311は、内部データ309よりデータ量が小さいデータである。これにより、画像形成装置101(又は画像形成装置102)がサーバ103を介して管理装置104へデータを送信する際のデータ通信量を抑えることができ、もって、通信環境の整備や維持にかかる費用を抑えることができる。また、特徴抽出データ311は、画像形成装置101(又は画像形成装置102)の特性を示すデータである。これにより、画像形成装置101(又は画像形成装置102)に関して、異常の予兆の検知以外のデータ分析に活用可能なデータを提供することができる。すなわち、本実施の形態では、通信環境の整備や維持にかかる費用を抑えつつ、異常の予兆の検知以外のデータ分析に活用可能なデータを管理装置104へ提供することができる。
【0079】
また、上述した実施の形態では、異常予測システム100は、複数の画像形成装置101,102を備える。これにより、サーバ103が各地に設置された複数の画像形成装置から特徴抽出データ311をそれぞれ収集する場合において、特徴抽出データ311を送信するための処理の負荷を軽減することが可能となる。その結果、異常予測システム100において、サーバ103が世界各地からビッグデータとして特徴抽出データ311を収集する場合に、効率的に処理を行うことが可能となる。
【0080】
さらに、上述した実施の形態では、管理装置104が異常予測処理の実行機能を備える。ここで、異常予測システム100において、管理装置104ではなく、画像形成装置が異常予測処理の実行機能を備える構成である場合、画像形成装置101,102の各々に、異常予測処理の実行機能を実現するための大容量の記憶装置や演算装置を組み込む必要がある。このため、異常予測システム100の構築において、管理装置104が異常予測処理の実行機能を備える構成より、費用がかかる。これに対し、本実施の形態では、管理装置104が異常予測処理の実行機能を備える。これにより、画像形成装置が異常予測処理の実行機能を備える構成より、異常予測システム100の構築に要する費用を削減することができる。
【0081】
上述した実施の形態では、特徴抽出データ311の送信タイミングに到達し且つステップS901にて生成された特徴抽出データ311が直近で送信された特徴抽出データと同じデータである場合、ステップS901にて生成された特徴抽出データ311がサーバ103へ送信されない。これにより、異常予測システム100において、サーバ103が既に保持しているデータが、画像形成装置101(又は画像形成装置102)からサーバ103へ送信されるといった不要なデータ送信が行われるのを防止することができる。
【0082】
また、上述した実施の形態では、特徴抽出データ311は、内部データ309をヒストグラム化したデータである。これにより、内部データ309よりデータ量が小さく且つセンサ計測値の出現頻度に関する特性を示すデータを管理装置104へ提供することができる。
【0083】
また、上述した実施の形態では、特徴抽出データ311は、内部データ309をスペクトル化したデータである。これにより、内部データ309よりデータ量が小さく且つセンサ計測値の周波数成分に関する特性を示すデータを管理装置104へ提供することができる。
【0084】
以上、本発明について、上述した実施の形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、異常予測システム100が、サーバ103を備えず、画像形成装置101,102が管理装置104へ直接的に特徴抽出データ311を送信する構成であっても良い。
【0085】
また、上述した実施の形態では、生成された複数の特徴抽出データ311を集約した送信用データ607をサーバ103へ送信する構成について説明したが、本発明はこの構成に限られない。例えば、生成された複数の特徴抽出データ311をそれぞれサーバ103へ送信する構成であっても良い。
【0086】
本発明は、上述の実施の形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、該システム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能である。また、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0087】
100 異常予測システム
101 画像形成装置
102 画像形成装置
104 管理装置
301 制御部
309 内部データ
311 特徴抽出データ
312 ネットワークI/F
313 センサ群
314 センサ群
401 CPU
404 ネットワークI/F
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13