(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2020131687
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 彬
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-219715(JP,A)
【文献】特開2018-141653(JP,A)
【文献】特開2018-189565(JP,A)
【文献】特開2016-038222(JP,A)
【文献】特開2015-049079(JP,A)
【文献】特開2014-211322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/01
G01N21/17-G01N21/61
G01N21/84-G01N21/958
G01B11/00-G01B11/30
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源を有する照明手段
と撮像手段とを制御する制御装置であって、
前記複数の光源の一部を同時点灯させ、同時点灯により光が照射された物体を撮像するように、前記照明手段
と前記撮像手段とを制御する制御手段と、
同時点灯した光源それぞれから前記物体に入射する光の入射角のうち、前記撮像手段により受光される正反射光に対応する入射角に近い1つの入射角を特定する特定手段と、
前記物体を撮像して得られる画像データに基づいて、
前記特定された1つの入射角を反射モデルのパラメータとして用いて前記物体の反射特性を導出する導出手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記物体を撮像するために、テレセントリック光学系を有する
前記撮像手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記
同時点灯に関する照明条件を設定する設定手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記設定された照明条件に基づいて、前記照明手段を制御することを特徴とする請求項1
又は請求項
2のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記照明条件として、光源の同時点灯数を設定することを特徴とする請求項
3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記同時点灯数に基づいて、前記複数の光源を複数のグループに分けることを特徴とする請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記複数のグループそれぞれにおいて、1つずつ光源を点灯させることを特徴とする請求項
5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記物体の光沢写像性に基づいて、前記照明条件を設定することを特徴とする請求項
3乃至請求項
6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記設定手段は、前記同時点灯数に基づいて、同時点灯させる光源と、光源の点灯順とを決定することを特徴とする請求項
4に記載の制御装置。
【請求項9】
複数の点灯パターンから少なくとも1つの点灯パターンを選択する選択手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記選択された点灯パターンに基づいて、前記照明手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項
8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
コンピュータを請求項1乃至請求項
9のいずれか一項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
複数の光源を有する照明手段
と撮像手段とを制御する制御方法であって、
前記複数の光源の一部を同時点灯させ、同時点灯により光が照射された物体を撮像するように、前記照明手段
と前記撮像手段とを制御する制御ステップと、
同時点灯した光源それぞれから前記物体に入射する光の入射角のうち、前記撮像手段により受光される正反射光に対応する入射角に近い1つの入射角を特定する特定ステップと、
前記物体を撮像して得られる画像データに基づいて、
前記特定された1つの入射角を反射モデルのパラメータとして用いて前記物体の反射特性を導出する導出ステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の反射特性を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物体の素材の質感を評価するために、照明方向や観察方向に応じて変化する反射特性を表すBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)の測定データが利用されている。さらに、反射特性の二次元分布を表すSVBRDF(Spatially Varying Bidirectional Reflectance Distribution Function)の測定データも利用されている。特許文献1は、複数の方向から物体に照明光を当て、複数の方向からカメラで物体を撮像し、得られた複数の画像に基づいて物体の反射特性データを作成する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、光の入射方向毎に撮像を行うため、撮像に時間がかかってしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、物体の反射特性を取得するために行う撮像にかかる時間を短縮するための処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る制御装置は、複数の光源を有する照明手段と撮像手段とを制御する制御装置であって、前記複数の光源の一部を同時点灯させ、同時点灯により光が照射された物体を撮像するように、前記照明手段と前記撮像手段とを制御する制御手段と、同時点灯した光源それぞれから前記物体に入射する光の入射角のうち、前記撮像手段により受光される正反射光に対応する入射角に近い1つの入射角を特定する特定手段と、前記物体を撮像して得られる画像データに基づいて、前記特定された1つの入射角を反射モデルのパラメータとして用いて前記物体の反射特性を導出する導出手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物体の反射特性を取得するために行う撮像にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】反射特性取得システムの構成を説明するための模式図
【
図2】制御装置のハードウェア構成を示すブロック図
【
図4】測定アプリケーションの処理を示すフローチャート
【
図5】照明条件を算出する処理を示すフローチャート
【
図6】算出される照明条件の一例を説明するための模式図
【
図8】撮像画像データを取得する処理を示すフローチャート
【
図9】対象物体の反射特性を導出する処理を示すフローチャート
【
図10】対象物体におけるある1点の反射特性を説明するための模式図
【
図11】照明条件を算出する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態は本発明を必ずしも限定するものではない。また、本実施形態において説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0010】
[第1実施形態]
<反射特性取得システムの構成>
本実施形態においては、複数の光源を同時に点灯させて物体に光を照射し、物体を撮像して得られる画像に基づいて物体の反射特性を導出する。
図1は、本実施形態における反射特性取得システムの構成を説明するための模式図である。
図1(a)は、反射特性取得システムの全体を示す模式図であり、
図1(b)は、反射特性取得システムに含まれる照明装置106を示す模式図である。
【0011】
物体101は、測定の対象となる物体である。固定治具102は、物体101を固定するための固定治具である。撮像装置103は、物体101を撮像するための撮像装置である。撮像装置103としては、例えば、4096×3000画素のエリアセンサを有し、物体101上の輝度に対して線形な信号値を16ビットの画素値として得ることができるモノクロカメラを用いることができる。尚、撮像装置103は、入力されたトリガー信号に応じて撮像を実行するトリガー撮像機能を有しているものとする。後述する照明装置106と撮像装置103とを同期させて撮像を行うことにより、撮像にかかる時間をより短縮することができる。
【0012】
レンズ104は、撮像装置103に取り付けて用いられるレンズである。レンズ104には、反射特性取得システムにおける撮像装置103側の光学系をテレセントリック光学系にするために、テレセントリックレンズが用いられる。テレセントリック光学系は、光の入射側でレンズの光軸と主光線とが平行となるテレセントリック構造を有する光学系である。撮像装置103側の光学系をテレセントリック光学系にすることにより、物体101からの反射光のうち矢印105で示すような、レンズ104の光軸に平行な光のみを撮像装置103で受光することができる。尚、物体101はレンズ104の光軸に対して傾いているため、レンズ104にはチルト機構のあるテレセントリックレンズを用いてもよい。
【0013】
照明装置106は、物体101に対して複数の方向から光を照射するための照明装置である。光源107は、照明装置106の表面に配置されている光源である。本実施形態においては、18×18個の光源107が2次元平面上に配置されているものとする。光源107が配置される間隔が小さいほど、より角度分解能の高い反射特性を取得することができる。また、光源107が配置される範囲が大きいほど、より広い角度範囲の反射特性を取得することができる。光源107としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。LEDは、一般的に、矢印108に示されるような、方向によって輝度が異なる指向特性を有する。本実施形態においては、半値角60°の指向特性を有するLEDを用いる。また、各光源107の位置を行方向の位置aと列方向の位置bとにより定義する。位置a及び位置bは1から18までの整数値をとる。例えば、左上の光源107の位置は(a,b)=(1,1)であり、右下の光源107の位置は(a,b)=(18,18)である。
【0014】
続いて、物体101、撮像装置103、照明装置106の位置及び姿勢について説明する。軸109は、物体101に対して垂直で、かつ、物体101の中心を通る軸である。また、光軸110は、撮像装置103の光軸である。軸111は、照明装置106に対して垂直で、かつ、照明装置106の中心を通る軸である。軸109、光軸110、軸111は同一面上にあり、軸109と光軸110とがなす角度112と、軸109と軸111とがなす角度113と、が等しくなるように、撮像装置103及び照明装置106の位置及び姿勢を設定する。本実施形態においては、角度112と角度113とを両方とも45°に設定するが、両方とも同じ角度であれば、30°や60°であってもよい。
【0015】
制御装置114は、撮像装置103と照明装置106とを制御し、物体101の撮像画像を取得するための一連の処理を行う装置である。
図2は、制御装置114のハードウェア構成を示すブロック図である。制御装置114は、CPU201、ROM202、RAM203を備える。また、制御装置114は、VC(ビデオカード)204、汎用I/F(インターフェース)205、SATA(シリアルATA)I/F206、NIC(ネットワークインターフェースカード)207を備える。CPU201は、RAM203をワークメモリとして、ROM202、HDD(ハードディスクドライブ)212などに格納されたOS(オペレーティングシステム)や各種プログラムを実行する。また、CPU201は、システムバス208を介して各構成を制御する。尚、後述するフローチャートによる処理は、ROM202やHDD212などに格納されたプログラムコードがRAM203に展開され、CPU201によって実行される。VC204には、ディスプレイ214が接続される。汎用I/F205には、シリアルバス209を介して、マウスやキーボードなどの入力デバイス210や撮像装置103、照明装置106が接続される。SATAI/F206には、シリアルバス211を介して、HDD212や各種記録メディアの読み書きを行う汎用ドライブ213が接続される。NIC207は、外部装置との間で情報の入力及び出力を行う。CPU201は、HDD212や汎用ドライブ213にマウントされた各種記録メディアを各種データの格納場所として使用する。CPU201は、プログラムによって提供されるGUI(グラフィカルユーザインターフェース)をディスプレイ214に表示し、入力デバイス210を介して受け付けるユーザ指示などの入力を受信する。
【0016】
<制御装置の機能構成>
図3は、制御装置114の機能構成を示すブロック図である。撮像ドライバ301は、撮像装置103を制御するための命令群である。照明ドライバ302は、照明装置106を制御するための命令群であり、複数の光源を個々に点灯又は消灯する命令を含んでいる。入力ドライバ303は入力デバイス210の制御を行う命令群であり、表示ドライバ304はディスプレイ214を制御する命令群である。照明条件算出部305は、画像取得制御部306において用いられる照明条件を算出する命令群である。画像取得制御部306は、撮像ドライバ301及び照明ドライバ302に命令を送り、撮像画像データを取得するための一連の処理を行う命令群である。反射特性導出部307は、画像取得制御部306が取得した撮像画像データに基づいて、対象物体の反射特性情報を導出する命令群である。表示管理部308は、ユーザが入力デバイス210を介して入力した情報の管理や、測定結果をディスプレイ214に表示する等の処理を行う命令群である。測定アプリケーション309は、301~308の命令群を連動させ、1つの測定アプリケーションとして機能させるための命令群である。
【0017】
<測定アプリケーションの処理>
図4は、測定アプリケーション309の処理を示すフローチャートである。
図4のフローチャートが示す処理は、ユーザによって入力デバイス210を介して指示が入力され、CPU201が入力された指示を受け付けることにより開始する。以下、各ステップ(工程)は符号の前にSをつけて表す。
【0018】
S401において、照明条件算出部305は、対象物体に光を照射する際の照明条件を算出する。照明条件を算出する処理の詳細については後述する。S402において、画像取得制御部306は、算出された照明条件に基づいて、照明装置106による光の照射と撮像装置103による撮像との制御を行い、撮像画像データを取得する。撮像画像データを取得する処理の詳細については後述する。S403において、反射特性導出部307は、S402において取得された撮像画像データを処理することにより、対象物体の反射特性を導出する。対象物体の反射特性を導出する処理の詳細については後述する。S404において、表示管理部308は、ディスプレイ214に対して導出された対象物体の反射特性に対応する表示を行い、処理を終了する。
【0019】
<照明条件を算出する処理>
図5は、照明条件を算出する処理を示すフローチャートである。
図6は、算出される照明条件の一例を説明するための模式図である。
図7は、光源の点灯順の一例を説明するための模式図である。以下、
図5~7を用いて、照明条件を算出する処理の詳細について説明する。尚、照明装置106において、横方向の光源数は18、縦方向の光源数は18であるものとして説明する。
【0020】
S501において、照明条件算出部305は、ユーザからの指示に基づいて、横方向の同時点灯数を設定する。本実施形態における照明条件算出部305は、横方向の同時点灯数を3に設定する。S502において、照明条件算出部305は、ユーザからの指示に基づいて、縦方向の同時点灯数を設定する。本実施形態における照明条件算出部305は、縦方向の同時点灯数を2に設定する。S503において、照明条件算出部305は、設定された横方向の同時点灯数と縦方向の同時点灯数とに基づいて、複数の光源が配置された面を複数の領域に分割することにより、点灯グループを決定する。本実施形態における照明条件算出部305は、面の横方向を3分割、面の縦方向を2分割する。これにより、
図7の領域701で示されるような、横方向の光源数が6で縦方向の光源数が9の点灯グループが、6つ作成される。S504において、照明条件算出部305は、光源の点灯順を決定する。点灯順は、
図7の矢印702に示す順番である。つまり、照明装置106は、点灯グループごとに左上の光源から矢印702の順で順次光源を点灯させる。S505において、照明条件算出部305は、
図6に示すデータ形式で、照明条件を出力する。照明条件には、撮像順、及び点灯グループごとの点灯する光源の位置が含まれる。このように照明条件を算出することにより、同時点灯させる光源の間隔を空けることができる。複数の光源を同時点灯させる場合であっても、同時点灯させる光源間の間隔を空けることにより、1つの光源を点灯させた場合に近い光量の光を入射方向ごとに受光することができる。
【0021】
<撮像画像データを取得する処理>
図8は、撮像画像データを取得する処理を示すフローチャートである。以下、
図8を用いて、撮像画像データを取得する処理の詳細について説明する。尚、対象物体は固定治具102に固定されているものとする。
【0022】
S801において、画像取得制御部306は、撮像の際の条件を設定する。ここで設定される条件は、撮像装置103のシャッター速度、ISO感度等である。また、照明装置106の照明条件として、S401において導出された照明条件が設定される。シャッター速度やISO感度等は、表示管理部308により提供されるUIを介して得られる情報を基に設定される。S802は、S803~S805のループ処理を開始するステップである。S803~S805の処理は光源の同時点灯ごとに行われる。S803において、画像取得制御部306は、照明条件に基づき指定される複数の光源を、照明装置106に同時点灯させる。S804において、画像取得制御部306は、光源の同時点灯に同期させて撮像を行うための同期信号を撮像装置103に送り、撮像装置103は同期信号をトリガーとして撮像条件に応じた撮像を行う。S805において、画像取得制御部306は、照明条件に基づき指定される複数の光源を、照明装置106に消灯させる。次に、画像取得制御部306は、同時点灯する光源位置を変更して、S803に戻り、S803~S805の処理を行う。画像取得制御部306は、S803~S805の処理において全ての光源の点灯及び撮像が行われると、S806に進み、S803~S805のループ処理を終了する。
【0023】
このように、本実施形態における画像取得制御部306は、同時点灯する光源位置の変更を行うごとに撮像を行い、同時点灯する光源位置ごとに対象物体の撮像画像データを取得する。本実施形態における同時点灯数は6であるため、合計54回の撮像が行われる。同時点灯せずに撮像を行う場合は324回の撮像が必要になってしまう。本実施形態においては、複数の光源を同時点灯して撮像を行うことにより、撮像時間を短縮することができる。
【0024】
<対象物体の反射特性を導出する処理>
図9は、対象物体の反射特性を導出する処理を示すフローチャートである。以下、
図9を用いて、対象物体の反射特性を導出する処理の詳細について説明する。
【0025】
S901において、反射特性導出部307は、光源の同時点灯ごとの対象物体の撮像画像における画素値OBJi,u,vと、光源の同時点灯ごとの白色板の撮像画像における画素値REFi,u,vと、を読み込む。反射特性導出部307は、式(1)を用いて、反射率Ri,u,vを算出する。
Ri,u,v=OBJi,u,v/REFi,u,v ・・・(1)
ここで、iは撮像画像を特定するためのラベルである。本実施形態においては、ラベルiは1から54までの整数値をとる。また、uは撮像画像の横方向の画素位置を示すインデックスであり、vは撮像画像の縦方向の画素位置を示すインデックスである。本実施形態においては、インデックスuは1から4096までの整数値をとり、インデックスvは1から3000までの整数値をとる。
【0026】
S902において、反射特性導出部307は、反射角(θR(i,u,v),φR(i,u,v))を算出する。ここで、θR(i,u,v)は反射角の天頂角であり、φR(i,u,v)は反射角の方位角である。テレセントリックレンズを用いて撮像を行うため、反射角の天頂角及び方位角は、撮像画像(i)や画素位置(u,v)によらず一定の値である。本実施形態においては、角度112を45°に設定して撮像を行うため、反射角の天頂角及び方位角は、式(2)及び式(3)により示される値になる。
θR(i,u,v)=45 ・・・(2)
φR(i,u,v)=0 ・・・(3)
S903において、反射特性導出部307は、入射角(θI(i,j,u,v),φI(i,j,u,v))を算出する。ここで、θI(i,j,u,v)は入射角の天頂角であり、φI(i,j,u,v)は入射角の方位角である。本実施形態においては、複数の光源を同時点灯させて撮像を行うため、同時点灯を行った光源ごとに入射角が算出されるが、jは光源を特定するためのラベルである。例えば、同時点灯数が2である場合は、jは1又は2となる。入射角は、画素位置(u,v)に対応した実空間における位置情報(xu,v,yu,v,zu,v)と、各撮像画像に対応する各光源の実空間における位置情報(xL(i,j),yL(i,j),zL(i,j))と、を用いて算出する。入射角は、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)に従って算出される。
Li,j,u,v,1=xL(i,j)-xu,v ・・・(4)
Li,j,u,v,2=yL(i,j)-yu,v ・・・(5)
Li,j,u,v,3=ZL(i,j)-zu,v ・・・(6)
【0027】
【0028】
尚、位置情報(xu,v,yu,v,zu,v)と、位置情報(xL(u,v),yL(u,v),zL(u,v))と、には予め決められた値を用いる。
【0029】
S904において、反射特性導出部307は、S903において算出された入射角のうち、正反射方向に対応する入射角に近い入射角(θ’I(i,u,v),φ’I(i,u,v))を特定する。ここで、正反射方向は、撮像装置103が対象物体において反射した正反射光を受光する方向である。また、θ’I(i,u,v)はS905において用いる入射角の天頂角であり、φ’I(i,u,v)はS905において用いる入射角の方位角である。具体的には、式(9)を用いて、S902において算出した反射角を正反射方向に対応する入射角とみなして、S903において算出した入射角と正反射方向に対応する入射角との差分Δi,j,u,vを算出する。さらに、差分Δi,j,u,vが最小となるjを特定し、特定したjに対応する入射角を、S905において用いる入射角とする。
【0030】
【0031】
ここで、正反射方向に対応する入射角に近い入射角を特定する理由について説明する。
図10は、対象物体におけるある1点の反射特性を説明するための模式図である。
図10におけるグラフにおいて、横軸は入射角、縦軸は反射率を示す。入射角1001は、正反射方向に対応する入射角である。測定値1002は、測定値1003よりも正反射方向に対応する入射角に近い入射角において得られた値である。反射モデル1004は、測定値に対して近似された反射モデルである。
図10に示されるように、一般的な物体の反射特性においては、正反射方向に対応する入射角において反射率がピークとなり、その入射角近傍で反射率が大きく変化する。正反射方向に対応する入射角により近い入射角において得られた測定値902の方が測定値903より反射率が大きい。
【0032】
例えば、同時点灯した2つの光源それぞれに対応する反射率が測定値902と測定値903とであるとすると、ある画素において測定される反射率は測定値902と測定値903とを合計した値となってしまう。つまり、1つの画素で複数の光源による光の影響を受けた測定値が得られることになる。そこで、本実施形態においては、反射率が小さい測定値903の影響を無視することにより、複数の光源を同時に点灯して撮像を行う場合であっても、1つの光源を点灯した場合に近い情報を基に反射特性を導出することができる。
【0033】
S905において、反射特性導出部307は、反射率情報Ri,u,vと、反射角(θR(i,u,v),φR(i,u,v))と、S904において特定した入射角と、位置情報(xu,v,yu,v,zu,v)と、を読み込む。また、反射特性導出部307は、読み込んだ情報と反射モデルとを用いて、反射モデルのパラメータの2次元分布を対象物体の反射特性として導出する。ここで、反射モデルとしては、トーランススパローモデルなどの公知の反射モデルを用いることができる。
【0034】
<第1実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態における制御装置は、複数の光源を有する照明装置と撮像装置とを制御する制御装置である。制御装置は、複数の光源の一部を同時点灯させ、同時点灯により光が照射された物体を撮像するように、照明装置と撮像装置とを制御する。また、制御装置は、同時点灯した光源それぞれから物体に入射する光の入射角のうち、1つの入射角を特定し、物体を撮像して得られる画像データと特定された1つの入射角とに基づいて、物体の反射特性を導出する。これにより、物体の反射特性を取得するために行う撮像にかかる時間を短縮することができる。また、光の入射方向ごとに1つの光源を点灯した場合に近い情報を取得し、取得した情報を基に反射特性を導出することができる。
【0035】
<変形例>
S401において、照明条件算出部305が照明条件を算出するのではなく、画像取得制御部306がHDD212などに予め保持されていた照明条件に関する情報を取得して、光の照射及び撮像の制御を行ってもよい。
【0036】
S404において、表示管理部308が対象物体の反射特性に対応する表示を行うのではなく、反射特性導出部307がHDD212などに導出したパラメータを直接記録するようにしてもよい。
【0037】
S402において、画像取得制御部306は、対象物体における照度ムラを低減するために、白色の拡散反射板を対象物体と同様に撮像し、照度ムラ補正を行ってもよい。
【0038】
S905において、反射特性導出部307は、複数の光源による影響を考慮した反射モデルを用いて、対象物体の反射特性を導出してもよい。例えば、反射特性導出部307は、以下の式(10)及び式(11)を用いて、対象物体の反射特性Rを導出することができる。ここで、Rsurfはクックトーランスモデルなどの公知の表面反射モデルであり、Rdiffuseはランバートモデルなどの公知の拡散反射モデルである。また、Nは光源の同時点灯数である。
R=Rsurf+Rdiffuse+Rother ・・・(10)
Rother=(N-1)*Rdiffuse ・・・(11)
[第2実施形態]
第1実施形態においては、同時に光源を点灯させて撮像して得られる撮像画像を基に、対象物体の反射特性を導出した。しかし、光沢写像性の低い物体を対象とした場合、光源の同時点灯数が増えると、正反射方向から遠い反射角に対応する反射率の影響を無視できなくなる。つまり、対象物体の光沢写像性に応じて、設定できる光源の同時点灯数が異なる。そこで、本実施形態においては、対象物体に対するプレ撮像を行い、プレ撮像により得られる画像を基に対象物体の光沢写像性を推定する。また、推定した対象物体の光沢写像性に応じて最適な照明条件を算出する。尚、本実施形態における制御装置のハードウェア構成及び機能構成は第1実施形態のものと同等であるため、説明を省略する。以下において、本実施形態と第1実施形態とで異なる部分を主に説明する。尚、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0039】
<照明条件を算出する処理>
図11は、照明条件を算出する処理を示すフローチャートである。以下、
図11を用いて、照明条件を算出する処理の詳細について説明する。S1101において、画像取得制御部306は、照明装置106の光源を1つ点灯させて、撮像装置103を用いて対象物体及び白色の拡散反射板を撮像する。尚、点灯させる光源は、予め決められた位置の光源であってもよいし、ユーザ指示に基づいて決めた位置の光源であってもよい。
【0040】
S1102において、照明条件算出部305は、対象物体の光沢写像性が位置によらず均一であると仮定して、対象物体及び白色板の撮像画像に基づいて、対象物体の光沢写像性を推定する。具体的には、まず、照明条件算出部305は、対象物体の撮像画像における画素値OBJu,vと、白色板の撮像画像における画素値REFu,vと、を読み込み、式(12)を用いて反射率Ru,vを算出する。
Ru,v=OBJu,v/REFu,v ・・・(12)
ここで、uは撮像画像の横方向の画素位置を示すインデックスであり、vは画像の縦方向の画素位置を示すインデックスである。
【0041】
次に、照明条件算出部305は、反射角(θR(u,v),φR(u,v))を算出する。ここで、θR(u,v)は反射角の天頂角であり、φR(u,v)は反射角の方位角である。テレセントリックレンズを用いて、角度112を45°に設定して撮像を行うため、反射角の天頂角及び方位角は、式(13)及び式(14)により示される値になる。
θR(u,v)=45 ・・・(13)
φR(u,v)=0 ・・・(14)
次に、照明条件算出部305は、入射角(θI(u,v),φI(u,v))を算出する。ここで、θI(u,v)は入射角の天頂角であり、φI(u,v)は入射角の方位角である。入射角は、画素位置(u,v)に対応した実空間における位置情報(xu,v,yu,v,zu,v)と、各撮像画像に対応する各光源の実空間における位置情報(xL,yL,zL)と、を用いて算出する。入射角は、式(15)、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)に従って算出される。
Lu,v,1=xL-xu,v ・・・(15)
Lu,v,2=yL-yu,v ・・・(16)
Lu,v,3=ZL-zu,v ・・・(17)
【0042】
【0043】
次に、照明条件算出部305は、反射率Ru,vと、反射角(θR(u,v),φR(u,v))と、入射角(θI(u,v),φI(u,v))と、位置情報(xu,v,yu,v,zu,v)と、を読み込む。また、照明条件算出部305は、読み込んだ情報と反射モデルとを用いて、対象物体の光沢写像性を推定し、光沢写像性を表すパラメータを出力する。ここで、反射モデルとしては、ガウス関数モデルなどの公知の反射モデルを用いることができる。この場合、例えば、反射率の値が最大になる入射角と、反射率の値が最大値の半分になる入射角と、の差分を光沢写像性を表す値として算出する。
【0044】
S1103において、照明条件算出部305は、推定した対象物体の光沢写像性に応じて最適な照明条件を算出する。まず、照明条件算出部305は、対象物体の光沢写像性に基づいて、横方向の同時点灯数を算出する。具体的には、照明条件算出部305は、撮像画像の中央に対応する実空間における位置情報と、各撮像画像に対応する各光源の実空間における位置情報と、光沢写像性を表す値と、に基づいて、横方向の同時点灯数を算出する。ここで、照明条件算出部305は、正反射方向に対応する入射角と、反射率が十分減衰するほど差がある入射角から光が入射するように横方向の同時点灯数を算出する。例えば、照明条件算出部305は、光沢写像性を表す値の3倍程度で反射率が十分に減衰するとして横方向の同時点灯数を算出する。次に、照明条件算出部305は、横方向と同様に、光沢写像性を表す値に基づいて、縦方向の同時点灯数を算出する。次に、照明条件算出部305は、算出した横方向の同時点灯数と縦方向の同時点灯数とに基づいて、点灯グループ及び点灯順を決定し、算出した照明条件を出力する。
【0045】
<第2実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態における制御装置は、プレ撮像により得られる画像を基に対象物体の光沢写像性を推定し、推定した光沢写像性を基に照明条件を算出する。これにより、対象物体に適した間隔で光源を同時点灯することができ、対象物体の反射特性を高精度に導出することができる。
【0046】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0047】
114 制御装置
306 画像取得制御部
307 反射特性導出部