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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】加熱装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240909BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G15/20 510
H05B3/00 335
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020132940
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029590
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正志
(72)【発明者】
【氏名】長田 光
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-139908(JP,A)
【文献】特開2015-219498(JP,A)
【文献】特開2004-157442(JP,A)
【文献】特開平04-044075(JP,A)
【文献】特開2018-036490(JP,A)
【文献】特開2015-175959(JP,A)
【文献】特開2019-164996(JP,A)
【文献】特開2002-268414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を有する加熱部材と、
前記加熱部材を保持する保持部材と、
前記加熱部材および前記保持部材が内部空間に配置される第1回転体と、
前記第1回転体の外周面に接触し、前記第1回転体との間にニップ部を形成する第2回転体と、
前記加熱部材、前記保持部材、前記第1回転体、及び前記第2回転体を一体的に支持するフレームと、
を有し、
前記加熱部材は、前記発熱体に電気を供給する電極部を有し、
前記保持部材は、前記加熱部材の長手方向の少なくとも1つの端面の少なくとも一部が前記長手方向に露出し、前記発熱体に対して前記電極部が配置された側の前記長手方向の端面が露出しないように、前記加熱部材を保持し、
前記フレームは、前記保持部材が露出させる前記加熱部材の前記少なくとも一部を前記フレームの外側にも露出するように構成されている、
こと特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記加熱部材が嵌る凹部を有し、
前記凹部を形成する壁部のうち、前記加熱部材の前記少なくとも1つの端面に対向する壁部が、前記加熱部材の長手方向の少なくとも1つの端面の少なくとも一部が前記長手方向に露出するように凹んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記加熱部材の長手方向の前記少なくとも1つの端面の全てが前記長手方向から露出するように、前記加熱部材を保持する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記加熱部材の長手方向の少なくとも1つの端面は、前記保持部材と接触している、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記加熱部材の前記第1回転体と接触する側の面と、前記加熱部材の長手方向の端面とが成す稜線の一部が、前記長手方向に露出するように、前記加熱部材を保持する、
こと特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記加熱部材の長手方向の端面と、前記加熱部材の短手方向の側面のうち記録材の搬送方向の下流側の側面とが成す稜線の一部が、前記長手方向に露出するように、前記加熱部材を保持する、
こと特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第1回転体は、筒状のフィルムであり、
前記第2回転体は、前記フィルムの外周面に接触するローラであり、
前記加熱部材と前記ローラで前記フィルムを挟持しており、
記録材上の画像は、前記フィルムと前記ローラの間に形成された前記ニップ部で前記フィルムを介して加熱される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
発熱体を有する加熱部材と、
前記加熱部材を保持する保持部材と、
前記加熱部材および前記保持部材が内部空間に配置される第1回転体と、
前記第1回転体の外周面に接触し、前記第1回転体との間にニップ部を形成する第2回転体と、
を有し、
前記加熱部材は、前記発熱体に電気を供給する電極部を有し、
前記保持部材は、前記加熱部材の長手方向において前記発熱体に対して前記電極部が配置された側の端面が露出しないように前記加熱部材を保持する、
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項9】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置であって、前記ニップ部を記録材が通過することにより、記録材に形成された画像が加熱される加熱装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記加熱装置の長手方向の両端部に送風することによって、前記加熱装置を冷却する冷却装置をさらに有する、
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式で用いられるトナーの加熱装置として、熱ローラ方式やフィルム加熱方式の加熱装置などが知られている。
【0003】
特許文献1では、フィルム加熱方式の加熱装置が、セラミックス製の基板上に抵抗発熱体を有する加熱ヒータと、加熱ヒータに加熱され回転する定着フィルムと、定着フィルムと接触することによりニップ部を形成する加圧ローラを有している。ここで、未定着のトナー画像を担持する記録材が、ニップ部において搬送されながら加熱される。この加熱により、記録材のトナー画像は、記録材に定着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平04-044075号公報
【文献】特開2018-36490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィルム加熱方式の加熱装置の熱容量が小さいため、小サイズ紙などを加熱装置に通紙した場合には、定着部材(定着フィルムや加圧ローラなど)における通紙される領域(通紙領域)以外の領域(非通紙領域)が通紙領域よりも早く昇温する。このような非通紙領域の昇温が発生して、定着部材の温度が耐熱温度を超えてしまうと、加熱装置の安全性が低下する。このために、通紙の時間間隔を広げることなどによって非通紙領域の昇温を抑える必要があり、小サイズ紙への印刷の生産性の低下が生じていた。
【0006】
これに対して、特許文献2には、冷却ファンが加熱装置の端部に風を送ることによって、非通紙領域を冷却する技術が記載されている。しかし、冷却ファンを用いても、小サイズ紙への印刷を繰り返し実行すると、非通紙領域が十分に冷却できずに昇温してしまう場合があった。このため、加熱装置では、非通紙領域の昇温に起因するような小サイズ紙への印刷の生産性の低下が課題であった。
【0007】
本発明は、小サイズ紙の印刷の生産性の低下を抑制することができる加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、
発熱体を有する加熱部材と、
前記加熱部材を保持する保持部材と、
前記加熱部材および前記保持部材が内部空間に配置される第1回転体と、
前記第1回転体の外周面に接触し、前記第1回転体との間にニップ部を形成する第2回転体と、
前記加熱部材、前記保持部材、前記第1回転体、及び前記第2回転体を一体的に支持するフレームと、
を有し、
前記加熱部材は、前記発熱体に電気を供給する電極部を有し、
前記保持部材は、前記加熱部材の長手方向の少なくとも1つの端面の少なくとも一部が前記長手方向に露出し、前記発熱体に対して前記電極部が配置された側の前記長手方向の端面が露出しないように、前記加熱部材を保持し、
前記フレームは、前記保持部材が露出させる前記加熱部材の前記少なくとも一部を前記フレームの外側にも露出するように構成されている、
こと特徴とする加熱装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小サイズ紙の印刷の生産性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係る画像形成装置を示す図である。
図2】実施例1に係る加熱装置を示す図である。
図3】実施例1に係る加熱装置を説明する図である。
図4】実施例1に係る加熱ヒータを説明する図である。
図5】実施例1に係るヒータホルダーと加熱ヒータの接続を説明する図である。
図6】実施例1に係るヒータホルダーの形状を説明する図である。
図7】実施例1に係る加熱装置の側面を示す図である。
図8】比較例に係る加熱装置の側面を示す図である。
図9】実施例2に係るヒータホルダーの形状を説明する図である。
図10】実施例2に係る加熱装置の側面を示す図である。
図11】実施例3に係るヒータホルダーの形状を説明する図である。
図12】実施例3に係る加熱装置の側面を示す図である。
図13】その他の実施例に係る加熱装置を示す図である。
図14】その他の実施例に係る加熱装置を示す図である。
図15】比較例に係る加熱ヒータを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(加熱装置の課題)
まず、フィルム加熱方式の加熱装置を画像形成装置に用いる場合に生じる可能性がある課題について詳細に説明する。ここで、フィルム加熱方式の加熱装置は、熱容量の小さいフィルムを定着部材として用いているため、熱ローラ方式の加熱装置の熱ローラに比べて、定着部材が所定温度に到達する(立ち上がる)までの時間を短縮できる。さらに、フィルム加熱方式の加熱装置では、立ち上がり時間が短いため、スタンバイ時に定着部材を暖めておく必要がなく、消費電力を低く抑えることが可能である。
【0012】
図15Aは、加熱装置に用いられる加熱ヒータであって、下記の各実施例との比較例である加熱ヒータ1013を示す。図15Aは、加熱ヒータ1013の断面を示す図である。加熱ヒータ1013は、定着フィルムと接触することによって、定着フィルムを加熱する抵抗発熱体2001,2002を有する。また、図15Aに示すように、加熱ヒータ1013では、セラミックス製の基板2007上に、抵抗発熱体2001,2002が導電体2003を介して直列に設けられる。抵抗発熱体2001,2002の一方の端部には、それぞれ導電性の電極部2004,2005が設けられる。電極部2004,2005から抵抗発熱体2001,2002に電気が流れる(通電する)ことによって、抵抗発熱体2001,2002が発熱する。
【0013】
ここで、熱容量の小さい定着フィルムの内面に加熱ヒータ1013が接触する(定着フィルムを直接加熱する)ので、定着部材(定着フィルムや加圧ローラ)が長手方向(記録材の搬送方向に直交する方向)一様に素早く温度が立ち上がる。そして、加熱装置に対して、加熱ヒータ1013の長手方向の幅が狭い記録材(小サイズ紙)を連続して通紙させると、定着フィルムにおける通紙される領域(通紙領域)以外の領域(非通紙領域)の温度が通紙領域よりも上昇する。これは、通紙領域では搬送される記録材に熱が奪われるが、非通紙領域では熱を奪う記録材が搬送されないためである。また、比較例に係る加熱ヒータ1013では、加熱ヒータ1013における定着フィルムと接触する面以外の面がヒータホルダーによって覆われているため、熱が外部に逃げにくい。
【0014】
図15Bは、小サイズ紙を通紙した場合の定着フィルムの長手方向の温度分布を示す。このような小サイズ紙(記録材)を連続して通紙させると、図15Bに示すように、定着部材(定着フィルムや加圧ローラ)の非通紙領域の温度が上昇する。以下では、このような非通紙領域の温度の上昇のことを「非通紙部昇温」と呼ぶ。なお、定着部材が「非通紙部昇温」した場合には、非通紙領域の定着部材の耐熱温度を超えないように通紙の時間間隔をあけ、定着部材の温度を均す(平均化する)ような制御をすることができる。しかし、通紙の時間間隔をあけることによれば、小サイズ紙への印刷の生産性が低下してしまうという課題が生じる。
【0015】
<実施例1>
以下にて、実施例1に係る加熱装置について説明する。本実施例に係る加熱装置は、消費電力が低く、立ち上がりが早いフィルム加熱方式の加熱装置である。本実施例に係る加熱装置では、ヒータホルダー(保持部材)が、加熱ヒータ(加熱部材)の長手方向(長手軸方向;記録材の搬送方向に直交する方向)の端面が露出するように、加熱ヒータを覆っている。このため、定着部材の非通紙領域の温度が昇温しにくい。従って、「非通紙部昇温」が生じやすいような小サイズ紙への印刷について、生産性の低下を抑えることができる。
【0016】
[画像形成装置]
まずは、図1に示す概略図を用いて、本実施例に係る加熱装置100を有する画像形成装置50の構成を説明する。画像形成装置50は、感光ドラム上のトナー像を直接、記録材P上に転写する電子写真方式の画像形成装置である。像担持体である感光ドラム1の周面には、回転方向(矢印R1方向)に沿って順に、帯電器2、レーザ光Lを感光ドラム1に照射する露光装置3、現像器5、転写ローラ10、および感光ドラムクリーナー16が配置されている。
【0017】
(印刷方法)
ここで、画像形成装置50がトナー像を用いて記録材Pに印刷する方法を説明する。まず、感光ドラム1(画像形成部)の表面が、帯電器2によってマイナス極性に帯電される。次に、露光装置3のレーザ光Lにより、帯電された感光ドラム1の表面上に、静電潜像が形成される(露光された部分の表面電位が上がる)。本実施例のトナーは、マイナス極性に帯電されており、ブラックトナーが入った現像器5によって、感光ドラム1上の静電潜像部にのみマイナストナーが付着する。これにより、感光ドラム1上にトナー像(画像)が形成される。
【0018】
一方、感光ドラム1上への静電潜像の形成プロセス開始に先立って、給紙ローラ4による記録材Pの給紙が行われる。感光ドラム1上のトナー像の先端が転写ニップNに到達するタイミングに合わせて、記録材Pの先端が転写ニップNに到達するように、給紙制御部330が給紙ローラ4の給紙タイミングを制御する。給紙動作が行われると、搬送ローラ6によって、記録材Pの1枚だけが転写ニップNに搬送される。その後、転写ローラ10に、不図示の電源からトナーの極性とは逆の極性であるプラス極性の転写バイアスが印加される。これにより、感光ドラム1上のトナー像が、転写ニップNにおいて記録材P上に転写される。つまり、感光ドラム1によって、記録材Pに、未定着のトナー像(画像)が形成される。
【0019】
その後、弾性体ブレードを有する感光ドラムクリーナー16によって、転写後の感光ドラム1の表面から転写残トナーが除去される。一方、トナー像を担持した記録材Pは、加熱装置100に搬送されて、トナー像の加熱定着が行われる。つまり、加熱装置100によって、記録材Pに形成されたトナー像(画像)が記録材Pに定着する。トナー像の定着が完了した記録材Pは、排紙ローラ7により排紙トレー45上に排紙される。以上により
、記録材Pに対する画像の印刷が完了する。
【0020】
なお、複数枚の記録材Pに連続的に印刷が行われる場合には、先行する1枚の記録材の後端に感光ドラム1上のトナー像の転写が行われている最中に、次の記録材の給紙が開始される。後続紙の先端が転写ニップNに到達するタイミングに先立って、感光ドラム1の表面への静電潜像形成プロセスも開始され、感光ドラム1上に後続紙のトナー像が形成される。そして、後続紙の先端が転写ニップNに到達すると、後続紙へのトナー像の転写が行われる。このような動作(処理)が繰り返されることによって連続印刷が実現できる。
【0021】
また、本実施例では、感光ドラム1の表面移動速度が約200mm/secであって、連続印刷を行う場合には、画像形成装置50は、LTRサイズの用紙に対して1分間で最大35枚の印刷ができる。なお、画像形成装置50は、LTRサイズよりもサイズが小さい紙を連続通紙する場合にも、LTRサイズと同様に1分間に35枚の速度で印刷を開始する。この場合には、画像形成装置50は、連続印刷の途中から通紙の時間間隔を長くしてスループットを下げることにより、定着部材の非通紙領域の温度が耐熱温度を超えないように制御することができる。
【0022】
[冷却ファン]
画像形成装置50には冷却ファン60(冷却装置)が設けられている。冷却ファン60は、送風することによって、感光ドラムクリーナー16や感光ドラム1の温度を低下させる。
【0023】
例えば、印刷動作を繰り返すと、加熱装置100の熱によって感光ドラムクリーナー16や感光ドラム1の温度が上昇してしまい、トナーの軟化点を超えることがある。このため、感光ドラムクリーナー16内の廃トナーが固まってしまう場合や、現像器5においてトナーが融着してしまう場合がある。これらの場合には、感光ドラム1のクリーニング不良が発生する可能性や現像不良が発生する可能性がある。そこで、印刷動作が繰り返されて画像形成装置50内の温度が上昇した場合には、ファン制御部61により冷却ファン60を動作させる。すると、冷却ファン60による送風によって、画像形成装置50内の温度が低下するため、クリーニング不良や現像不良の発生を抑えることができる。
【0024】
また、冷却ファン60は、小サイズ紙を通紙した場合に昇温する加熱装置100(定着部材)の非通紙領域を冷却することができる。ここで、画像形成装置50には、加熱装置100の長手方向の両端部の周囲に冷却ファン60の風が当たるように風路が設けられている。このため、小サイズ紙を連続印刷するとファン制御部61により冷却ファン60が動作し、定着部材の非通紙領域に冷却ファン60の風が当たり、非通紙領域が冷却される。
【0025】
[加熱装置]
次いで、加熱装置100について説明する。加熱装置100は、立ち上げ時間の短縮や低消費電力化を実現するフィルム加熱方式の加熱装置である。図2Aおよび図2Bは、加熱装置100の簡単な組み立て図を示す。図2Aは、組み立て前の加熱装置100を示す図である。図2B、は組み立て後のユニット状態の加熱装置100を示す図である。
【0026】
図2Aの組み立て前の図を用いて加熱装置100の組み立て手順を説明することによって、加熱装置100の構成を説明する。まず、鉄製の定着フレーム70の両端部に設けられた軸受け132に、加圧ローラ110の芯金117が載せられる。その後、芯金117には駆動ギア131が嵌められる。
【0027】
次に、加熱ヒータ113の抵抗発熱体が加圧ローラ110側を向くように設置され、抵
抗発熱体が設置された面とは反対側の面(背面)が耐熱性樹脂のヒータホルダー130によって保持される。なお、加熱ヒータ113では、比較例と同様に(図15A参照)、セラミック基板上に2つの抵抗発熱体が直列に設けられている。また、加熱ヒータ113の背面には、ヒータの基板温度を検知する温度検知素子115が配置される。ここで、ヒータホルダー130は、強度を持たせるために、加熱ヒータ113とは反対側から鉄製のステー120によって支えられる。
【0028】
加熱ヒータ113と温度検知素子115とヒータホルダー130とステー120が組まれた部材に、定着フィルム112が挿入される。定着フィルム112の両端部には、定着フィルムの長手方向の片寄りを規制する定着フランジ150が組まれる。
【0029】
両端部の定着フランジ150は、加圧バネ114により加圧され、フィルムユニット(定着フィルムの中に加熱ヒータとヒータホルダーとステーを内包し、両端部に定着フランジが組まれたユニット)が加圧ローラ110によって加圧される。加圧バネ114が定着カバー71により押さえられて、定着フレーム70に定着カバー71が閉じられる。すると、定着フレーム70がフィルムユニットや加圧ローラ110を一体的に支持するように構成されて、図2Bに示す加熱装置100のユニットが完成する。
【0030】
図3Aは、加熱装置100の長手方向における温度検知素子115の位置(図2Bの点線D)の断面を、図2Bの矢印L側から見た概略図を示す。図3Bは、記録材Pの搬送方向の上流側から見た概略図を示す。図3Bは、内部の様子が分かりやすいように、定着フィルム112を点線で透かした状態の加熱装置100を表している。
【0031】
図3Aに示すように、加熱ヒータ113(加熱部材)がヒータホルダー130(保持部材)によって保持される。また、加熱ヒータ113およびヒータホルダー130が内表面に接触する定着フィルム112であって、可撓性を有する円筒状の定着フィルム112(第1回転体)が設けられている。つまり、加熱ヒータ113とヒータホルダー130とは、定着フィルム112の内部空間に配置される。加熱ヒータ113は、定着フィルム112の内表面に接触して内面ニップNiを形成し、定着フィルム112を内側から加熱する。なお、加熱ヒータ113と定着フィルム112内表面との間に伝熱部材等を介在させた構成としてもよい。
【0032】
また、加熱ヒータ113と加圧ローラ110とが、定着フィルム112を挟持する。これにより、定着フィルム112を挟むように、加熱ヒータ113に対向する加圧ローラ110(第2回転体)が定着ニップNoを形成している。図3Aの矢印A1方向から定着ニップNoに、未定着のトナー像Tが転写された記録材Pが搬送されると(定着ニップNoを記録材Pが通過すると)、記録材Pにトナー像Tが定着する。
【0033】
加圧ローラ110は、定着フィルム112の外表面(外周面)を加圧しながら回転する。具体的には、図3Bに示すように、加圧ローラ110は、芯金117の端部に設けられた駆動ギア131に不図示の駆動源から動力をもらい、矢印R1方向に駆動される(回転する)。加圧ローラ110が矢印R1方向に駆動されると、定着フィルム112は、定着ニップNoにおいて加圧ローラ110から動力を取得して、矢印R2方向に回転する。
【0034】
なお、定着フィルム112は、長手方向の左右のいずれかに片寄って配置される場合がある。このため、定着フィルム112の端部には、片寄りを規制する定着フランジ150がステー120に嵌合されて設けられている。また、定着フランジ150によって、通紙領域Xよりも外側で定着フィルム112の内面が支持されている。
【0035】
(定着フィルム)
定着フィルム112は、円筒状の状態(加圧ローラ110によって加圧されていない状態)において外径がφ20mmであり、厚み方向に多層された構成である。定着フィルム112は、フィルムの強度を保つための基層126と、表面への汚れ付着低減のための離型層127を有する。
【0036】
基層126の材料には、SUS(Stainless Used Steel;ステンレス鋼)およびニッケルなどの金属や、ポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いるとよい。これは、基層126には、加熱ヒータ113の熱を受けるので耐熱性が必要であるためと、加熱ヒータ113と接触するので強度も必要であるためである。
【0037】
材料としての金属は、樹脂に比べると強度があるため薄化でき、また熱伝導率も高い。このため、金属を基層126に用いると、加熱ヒータ113の熱を定着フィルム112の表面に伝達しやすい。一方、材料としての樹脂は、金属に比べると比重が小さいため熱容量が小さく、温まりやすい利点がある。また、樹脂は、塗工成型により薄いフィルムが成型できるため、安価に成型できる。
【0038】
本実施例では、基層126の材料としてポリイミド樹脂を用いて、熱伝導率と強度を向上させるためにカーボン系のフィラーを添加している。基層126は、薄いほど、加熱ヒータ113の熱を加圧ローラ110表面に伝達しやすいが強度が低下する。このため、基層126の厚さは、15μm~100μm程度が好ましく、本実施例では50μmである。
【0039】
一方、離型層127の材料には、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン樹脂(FEP)等のフッ素樹脂を用いることができる。本実施例では、離型層127の材料として、フッ素樹脂の中でも離型性と耐熱性に優れるPFAを用いている。なお、チューブで基層126が被覆させることによって離型層127が成型されてもよいし、基層126の表面が塗料でコートされることによって離型層127が成型されてもよい。本実施例では、薄肉成型に優れるコートが基層126にされることによって離型層127が成型されている。離型層127は、薄いほど加熱ヒータ113の熱を定着フィルム112の表面に伝達しやすいが、薄すぎると耐久性が悪化する。このため、離型層127の厚さは、5μm~30μm程度が好ましく、本実施例では10μmである。
【0040】
(加圧ローラ)
加圧ローラ110の外径は、φ20mmである。加圧ローラ110では、図3Aに示すように、φ12mmの鉄製の芯金117にシリコーンゴムを発泡した厚さ4mmの弾性層116(発泡ゴム)が形成されている。加圧ローラ110の熱容量が大きく、かつ、熱伝導率が大きいと、加圧ローラ110の表面の熱が内部に吸収されやすいため、加圧ローラ110の表面温度が上昇しにくい。一方、低熱容量で熱伝導率が低く、断熱効果の高い材料を加圧ローラ110に用いれば、加圧ローラ110の表面温度の立ち上がり時間を短縮できる。ここで、シリコーンゴムを発泡した発泡ゴムの熱伝導率は、0.11~0.16W/m・Kであり、0.25~0.29W/m・K程度のソリッドゴムよりも熱伝導率が低い。また、熱容量に関係する比重は、ソリッドゴムが約1.05~1.30であるのに対して、発泡ゴムが約0.45~0.85である。このため、発砲ゴムは、ソリッドゴムよりも低熱容量でもある。従って、弾性層116に発泡ゴムを用いることによれば、加圧ローラ110の表面温度の立ち上がり時間を短縮できる。
【0041】
なお、加圧ローラ110では、外径が小さい方ほど熱容量を抑えられるが、外径が小さ過ぎると定着ニップNoの幅が狭くなる。このため、本実施例では、加圧ローラ110の外径は、φ20mmである。また、弾性層116の肉厚は、薄すぎれば、弾性層116か
ら金属製の芯金117に熱が逃げるので、適度な厚みが必要である。このため、本実施例では、弾性層116の厚さは4mmである。
【0042】
加圧ローラ110が加熱された際に、芯金117や弾性層116の端面から放熱されることで、弾性層116の端部の温度が低下する。このため、弾性層116の長手方向の幅Wgが、搬送可能な最大通紙幅に対して狭すぎると、記録材Pの端部へのトナー像Tの定着性が悪化しやすい。一方、幅Wgが広すぎると、画像形成装置50の幅が増加する。そこで、本実施例では、弾性層116の長手方向の幅Wgは、搬送可能な最大幅であるレターサイズ216mmよりも左右5mmずつ長い、226mmである。
【0043】
また、弾性層116の外周には、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)を用いた離型層118が形成されている。離型層118は、定着フィルム112の離型層127と同様に、弾性層116にチューブを被覆させた層であっても、弾性層116の表面を塗料でコートした層であってもよい。本実施例では、離型層118は、弾性層116の表面に対して、耐久性に優れるチューブを被覆させた層である。なお、離型層118の材料として、PTFE、FEP等のフッ素樹脂や、離型性のよいフッ素ゴムやシリコーンゴム等を用いてもよい。
【0044】
加圧ローラ110の表面硬度が低いほど、加圧ローラ110による圧力が低くても(軽圧でも)定着ニップNoの幅を広くすることができる。しかし、加圧ローラ110の表面硬度が低すぎると、加圧ローラ110の耐久性が悪化する。このため、本実施例では、加圧ローラ110の表面硬度は、Asker-C硬度(4.9N荷重)で40°である。
【0045】
なお、加圧ローラ110は、不図示の回転部により、図3Aに示す矢印R1方向に、表面移動速度200mm/secで回転する。
【0046】
(加熱ヒータ)
加熱ヒータ113には、セラミックス製の基板上に抵抗発熱体を直列に設けたヒータ(加熱部材)を用いている。加熱ヒータ113では、記録材Pの搬送方向の幅Wh=6mm、厚さH=1mmのアルミナの基板表面に、Ag/Pd(銀パラジウム)の抵抗発熱体をスクリーン印刷により10μm塗工している。また、抵抗発熱体を塗装した基板の上に、発熱体保護層としてガラスが50μmの厚さで覆っている。
【0047】
図4は、図3Aにおける矢印A3方向から見た加熱ヒータ113の模式図を示す。抵抗発熱体201,202の長手方向の幅Wは、搬送可能な最大通紙幅に対して狭すぎると、加圧ローラ110の端部の放熱によって端部の定着性が悪化しやすい。一方、搬送可能な最大通紙幅に対して、幅Wが広すぎると、加熱ヒータ113に接触する定着部材の非通紙領域の温度が上昇しやすい。これらを考慮して、本実施例では、抵抗発熱体201,202の長手方向の幅Wは、画像形成装置50の搬送可能な最大幅であるレターサイズ216mmよりも左右1mmずつ長い、218mmである。
【0048】
基板207において、抵抗発熱体201,202が導電体203を介して直列に設けられ、発熱体保護層209で覆われている。抵抗発熱体201,202の端部にはそれぞれ、導電性の電極部204,205が設けられる。電極部204,205から電気が供給されることにより、抵抗発熱体201,202が発熱する。本実施例では、抵抗発熱体201,202、導電体203、電極部204,205、および発熱体保護層209が、基板207に収まるように、基板207の長手方向の幅Wbは、幅Wよりも十分に長い270mmである。
【0049】
また、図2Aおよび図3Aに示すように、加熱ヒータ113の背面には、抵抗発熱体2
01,202の発熱に応じて昇温したセラミック基板の温度を検知する温度検知素子115が配置されている。温度検知素子115の信号に応じて、電極部204,205が抵抗発熱体201,202に流す電流が制御されることによって、加熱ヒータ113の温度が調整される。
【0050】
(ヒータホルダー)
ヒータホルダー130(保持部材)には、加熱ヒータ113の立ち上がりの観点で、ヒータホルダー130から熱を奪いにくいように低熱容量の材料が用いられることが好ましい。本実施例では、ヒータホルダー130には、耐熱性樹脂である液晶ポリマー(LCP)を用いる。
【0051】
図5に示すように、ヒータホルダー130には、加熱ヒータ113よりも少し大きい凹部Oが形成されている。そして、凹部Oに加熱ヒータ113が嵌ることによって、加熱ヒータ113が保持(接続)される。また、ヒータホルダー130は、加熱ヒータ113の長手方向と記録材Pの搬送方向の位置を固定する(決める)。なお、本実施例では、ヒータホルダー130の凹部Oを形成する壁部のうち、加熱ヒータ113の長手方向の端面に対応(対向)する壁部が凹型に設けられているが、図5では省略している。
【0052】
図6Aおよび図6Bは、図3Aの矢印A3方向から見たヒータホルダー130を示す。図6Aはヒータホルダー130のみを示す図である。図6Bは、ヒータホルダー130に加熱ヒータ113が保持された状態を示す図である。また、図6Cは、図6Bの矢印Lと矢印R側から見た、ヒータホルダー130の側面の図である。
【0053】
ヒータホルダー130の凹部Oは、加熱ヒータ113が加熱されると基板207が熱膨張するため、加熱ヒータ113よりも大きい。本実施例では、ヒータホルダー130の凹部Oの長手方向の幅Wnは、基板幅Wbの270mmよりも1mm広い、271mmである。凹部Oの短手方向(記録材Pの搬送方向)の幅Wmは、基板幅Whの6mmよりも0.5mm広い、6.5mmである。また、凹部Oの深さ方向の厚さは、加熱ヒータ113の基板厚みHと同じ1mmである。
【0054】
また、図6A図6Bに示すように、加熱ヒータ113では、ヒータホルダー130と突き当て部Tnによって突き当たり長手方向の位置が決まり、左右の突き当て部TklとTkrによって突き当たり短手方向の位置が決まる。
【0055】
ヒータホルダー130は、加熱ヒータ113の長手方向の1つの端面の一部が露出するように、加熱ヒータ113を保持している(覆っている)。このために、ヒータホルダー130には、1つの壁部が凹型に凹んでいることによって、空間部a1(隙間)が設けられている。このように、空間部a1を設けるために壁部を凹型に形成することによれば、型成形によって凹部Oの他の壁部と同時に、空間部a1を有する壁部を形成することができる。つまり、空間部a1の設けられていないヒータホルダー130を形成した後に、削り出しなどを行うことによって空間部a1(空間部)を形成するような工程が不要である。このため。空間部a1を有するヒータホルダー130を、簡易かつ安定的に、低コストで形成することが可能である。
【0056】
図6Cに示す側面から見た図のように、ヒータホルダー130を矢印R側から見ると、加熱ヒータ113の一部が露出する。ここで、加熱ヒータ113は、抵抗発熱体201,202よりも図6Bの矢印L側に電極部204,205が配置されている。このため、基板207のうち抵抗発熱体201,202が配置されてない領域(非発熱領域)は、R側(右側)よりもL側(左側)が長い。一般的な加熱装置では、図15Bに示すように、小サイズ紙を通紙すると左右の非通紙領域が昇温するが、本実施例の加熱ヒータのように基板の非発熱領域に左右差があると、非発熱領域の短い側の非通紙領域の温度が高くなる。このため、本実施例では、非発熱領域の短い、R側の非通紙領域の温度がL側に比べて上昇しやすい。そこで、ヒータホルダー130には、加熱ヒータ113のR側を冷却するための空間部a1が設けられている。
【0057】
ここで、空間部a1は、大きいほど非通紙領域の温度の冷却効果は高いが、大きすぎると組み立て時に加熱ヒータ113が脱落することや、大きいサイズの紙(大サイズ紙)を通紙した場合に加熱ヒータ113の端部の温度が低下することがある。このため、空間部a1の大きさは,構成に合わせて調整するとよい。本実施例では、空間部a1の大きさは、短手幅Wa1が4mmであり、加熱ヒータ113の厚み方向の長さHa1が0.7mmである。また、本実施例では、加熱ヒータ113の長手方向の突き当て部TnがL側にあることと、小サイズ紙を通紙した場合の非通紙領域の昇温度合いが比較的低いことから、加熱ヒータ113の電極部204,205が配置されたL側の壁部には空間部は存在しない。
【0058】
このように、加熱装置100では、ユニット状態で長手方向の端部より、加熱ヒータ113が露出する(見える)ように、ヒータホルダー130の壁部に空間部a1が形成されている。このため、空間部a1から、加熱ヒータ113の非通紙領域における熱が放出できる。従って、「非通紙部昇温」が生じやすいような小サイズ紙への印刷について、生産性が低下しない。
【0059】
図7は、図2Bに示す加熱装置100を矢印L側および矢印R側の左右から見た図を示す。加熱装置100のヒータホルダー130のR側には、加熱ヒータ113の端面が見えるように、ヒータホルダー130と定着フィルム112との間に空間部(隙間)が存在する。ここでは、ヒータホルダーのR側において、定着フランジ150などヒータホルダー130以外の部品が加熱ヒータ113を覆っていないため、加熱ヒータ113がユニット状態で露出している(見える)。一方、図7のL側からは、加熱ヒータ113が露出していない(見えない)。つまり、定着フレーム70が加熱ヒータ113やヒータホルダー130を一体的に保持しているユニット状態において、加熱ヒータ113の長手方向のR側の端面の一部が長手方向に露出するように構成されている。このため、定着フレーム70は、ヒータホルダー130が露出させる加熱ヒータ113の少なくとも一部を定着フレーム70の外側にも露出するように構成されている。
【0060】
また、本実施例の画像形成装置50には、昇温した非通紙領域を冷却するため冷却ファン60が設けられており、小サイズ紙を通紙すると加熱装置100の両端部に風が当たる。ここで、本実施例のように加熱ヒータ113が露出していると、昇温した加熱ヒータ113の端面に直接風が当たるため、冷却効果が高まる。このため、非通紙領域が昇温しやすい小サイズ紙への印刷の生産性の低下をより抑えることができる。
【0061】
[比較例との比較]
図8は、加熱ヒータ113の長手方向の両端面の全てがヒータホルダー130に覆われており、外部から加熱ヒータ113が見えない比較例の加熱装置を左右(R側およびL側)から見た図を示す。比較例の加熱装置では、ヒータホルダー130の長手方向の端面(壁部)に空間部が設けられていないだけでなく、定着フランジ150がヒータホルダーを覆っており、加熱ヒータが露出していない。なお、比較例の加熱装置におけるヒータホルダーと定着フランジ以外の構成は、本実施例に係る加熱装置100と同じ構成である。
【0062】
また、図8に示す比較例の加熱装置と、図7に示す本実施例に係る加熱装置とを、小サイズ紙の通紙試験を行って比較した。ここでは、2つの加熱装置に対して、B5サイズの坪量70g/mの紙を1分間に35枚のスピードで連続通紙して、加圧ローラ110の
表面温度をサーモグラフィーで測定した。なお、加圧ローラ110に使用しているシリコーンゴムの耐熱温度の上限値が一般的に230℃であるため、非通紙領域の加圧ローラ110の表面温度が230℃に至るまでに、連続通紙できるB5サイズ紙の枚数を比較した。
【表1】
【0063】
比較例の構成では、加熱ヒータ113の右側(R側)の昇温が早く、35枚通紙した時点で加圧ローラ110の非通紙領域の表面温度が230℃に到達した。また、加熱ヒータ113での左側(L側)では、40枚通紙した時点で加圧ローラ110の非通紙領域の表面温度が230℃に到達した。一方、図7に示す本実施例の構成では、加熱ヒータ113が露出していない左側(L側)の昇温が早く、比較例と同様に、40枚通紙した時点で加圧ローラ110の非通紙領域の表面温度が230℃に到達した。また、加熱ヒータ113が露出している右側(R側)では、42枚通紙した時点で加圧ローラ110の非通紙領域の表面温度が230℃に到達した。
【0064】
本実施例のように、加熱装置のユニット状態において、ヒータホルダーの壁部に空間部が設けられていることによって、加熱ヒータの長手方向の端面が長手方向に露出することで、定着部材の非通紙領域の昇温速度を抑えることができる。このため、「非通紙部昇温」しやすい小サイズ紙への印刷の生産性の低下を抑えることができる。
【0065】
<実施例2>
本実施例では、ユニット状態で加熱装置の両端部より、加熱ヒータが露出する(見える)ような加熱装置を説明する。また、本実施例では、加熱ヒータの基板の抵抗発熱体側のエッジと下流側のエッジが露出している。このため、非通紙領域における加熱ヒータの温度がより下がりやすく、「非通紙部昇温」しやすい小サイズ紙への印刷の生産性の低下を抑えることができる。
【0066】
なお、本実施例に係る加熱装置を有する画像形成装置は、実施例1とは異なり冷却ファンを有しない。このため、実施例1のように小サイズ紙を通紙した場合に、定着部材の非通紙領域を冷却ファンによって冷却することができない。そこで、本実施例では、画像形成装置は、加熱装置に向かって上昇する気流(自然対流)を利用して、定着部材の非通紙領域を冷却する。
【0067】
なお、本実施例に係る画像形成装置は、冷却ファン60およびファン制御部61が搭載されていないこと以外、実施例1と同じ構成を有する。このため、本実施例に係る画像形成装置の構成についての詳細な説明は省略する。また、加熱装置についても、ヒータホルダー130以外の構成は実施例1と同じフィルム加熱方式の加熱装置であるため、同じ部材については、同一の符号で示して詳細な説明を省略する。
【0068】
(ヒータホルダーの形状)
本実施例に係るヒータホルダー130の形状について説明する。図9Aおよび図9B
図3Aの矢印A3方向から見たヒータホルダー130を示す。図9Aは、ヒータホルダー130のみを示す図である。図9Bは、加熱ヒータ113を保持したヒータホルダー130および加熱ヒータ113を示す図である。また、図9Cは、図9Bの矢印Lと矢印R側から見た側面のヒータホルダー130を示す図である。
【0069】
ここで、本実施例の画像形成装置には、非通紙領域を冷却する冷却ファンが設けられていない。そこで、本実施例のヒータホルダー130は、図9Bの矢印R側だけでなく、矢印L側の壁部も凹型に形成される。このため、凹型の壁部によって生じる空間部から熱が逃げるため、加熱ヒータ113の両端部が冷却しやすい。また、自然対流でも冷却できるように、凹型の壁部によって生じる空間部の大きさが実施例1よりも大きい。図9Cに示す図のように、矢印R側および矢印L側から見ると、ヒータホルダー130の壁部の空間部から加熱ヒータ113の側面から見える。
【0070】
また、加熱ヒータ113は電極部204,205から通電することで抵抗発熱体201,202が発熱するため、厚み方向で抵抗発熱体側の方の基板207の温度が高くなる。このため、本実施例では、図9Cに示すように、加熱ヒータ113の両端部共に抵抗発熱体側の基板エッジHhe(定着フィルムに接触する側の加熱ヒータの面と、加熱ヒータの長手方向の端面とが成す稜線)が長手方向に全域露出する。このため、高い冷却効果が生じている。なお、基板エッジHheが長手方向に全域露出している必要はなく、一部が露出しているのみでも冷却効果はある。
【0071】
また、抵抗発熱体201,202は、加熱ヒータ113の短手方向の中央を基準に、記録材Pの搬送方向の上流と下流とで均等に配置されている。このため、印刷の停止中に抵抗発熱体201,202が発熱すると、上下流方向に均等な発熱分布になる。
【0072】
しかし、図3Aの断面図に示すように、加圧ローラ110がR1方向に回転すると、定着フィルム112がR2方向に回転するため、回転中の加熱ヒータ113の温度分布は中央よりも搬送方向の下流側の温度が高くなる。このため、本実施例では、図9Cに示すように加熱ヒータ113の両端部を回転中に温度が高くなる下流側の基板エッジHke(加熱ヒータの長手方向の端面と、加熱ヒータの短手方向の下流側の側面とが成す稜線)が長手方向に露出する。
【0073】
なお、本実施例の両端部の空間部a2Lの短手方向の幅と空間部a2Rの短手方向の幅とは、凹部Oの幅Wmと同じ幅の6.5mmである。このような幅の空間部a2Lと空間部a2Rにより、加熱ヒータ113の基板エッジHheが全域露出し、下流側のエッジHkeも両端部において露出する。また、空間部a2Lと空間部a2Rの厚みHa2は、実施例1と同じ0.7mmである。なお、ヒータホルダー130のL側の端部には、加熱ヒータを固定するための突き当て部Tnが凸型形状で形成されている。
【0074】
図10は、図2Bに示す加熱装置のユニット状態で矢印Lおよび矢印R側の左右から見た本実施例に係る加熱装置の図を示す。本実施例に係る加熱装置は、上述のようにR側に加えて、L側にもヒータホルダー130と定着フィルム112の間に空間部(隙間)が設けられている。このため、加熱ヒータ113の長手方向の両端面が外部に露出している(見える)。また、図10に示すようにL側とR側との共に、定着フランジ150などヒータホルダー130以外の部品も加熱ヒータ113を覆わない。つまり、ユニット状態において、定着フレーム70およびヒータホルダー130は、加熱ヒータ113の長手方向の両側の端面の一部を長手方向に露出するように構成されている。
【0075】
このように、本実施例の画像形成装置には、昇温した非通紙領域を冷却するための冷却ファン60が設けられていない。しかし、ユニット状態で加熱ヒータ113が広い範囲で
露出しているため、自然対流による気流の流れによって定着部材の非通紙領域が冷却される。このため、「非通紙部昇温」しやすい小サイズ紙への印刷についても、生産性の低下を抑えることができる。
【0076】
[比較例との比較]
図8に示す比較例の加熱装置と、図10に示す加熱装置のユニット状態で加熱ヒータが露出している本実施例の加熱装置とにおいて、小サイズ紙の通紙試験を行い比較した。比較例も本実施例と同様に、画像形成装置には冷却ファンが設けられていないものとする。
【0077】
実施例1と同様にB5サイズの坪量70g/mの紙を1分間に35枚のスピードで連続通紙し、非通紙領域の加圧ローラ110の表面温度が230℃に至るまでに、連続通紙できるB5サイズ紙の枚数で比較した。
【表2】
【0078】
比較例では、加熱ヒータ113の非発熱領域が短い右側(R側)の昇温が早く、15枚通紙した時点で加圧ローラの非通紙領域の表面温度が230℃に到達した。一方、非発熱領域が長い左側(L側)では、20枚通紙した時点で非通紙領域の表面温度が230℃に到達した。一方、図10に示す本実施例の構成では、右側(R側)の昇温が早く、28枚通紙した時点で非通紙領域の表面温度が230℃に到達し、左側(L側)では30枚通紙した時点で非通紙領域の表面温度が230℃に到達した。
【0079】
本実施例のように、冷却ファンがない画像形成装置であっても、加熱ヒータの長手方向の端面が長手方向にヒータホルダーから露出していれば、定着部材の非通紙領域における昇温速度を抑えることができる。このため、「非通紙部昇温」しやすい小サイズ紙への印刷について生産性の低下を抑えることができる。
【0080】
<実施例3>
実施例3に係る加熱装置を以下に説明する。本実施例では、加熱装置において、加熱ヒータの長手方向の両端面の全面が見える。このため、非通紙領域で昇温した加熱ヒータの温度がより下がりやすく、小サイズ紙への印刷の生産性の低下を抑えることができる。
【0081】
本実施例に係る加熱装置を有する画像形成装置では、実施例2と同様に冷却ファンが設けられていない。画像形成装置の構成は、実施例1および実施例2と同じ構成であるため、説明を省略する。また、加熱装置について、ヒータホルダー130以外の構成は、実施例1と同じフィルム加熱方式の加熱装置であるため、実施例1と同じ部材については、同一の符号で表して詳細な説明を省略する。
【0082】
(ヒータホルダーの形状)
本実施例に係るヒータホルダー130の形状について説明する。図11Aおよび図11Bは、図3Aの矢印A3方向から見た本実施例のヒータホルダー130を示す。図11Aはヒータホルダー130のみの図であり、図11Bはヒータホルダー130が加熱ヒータ
113を保持している状態を示す図である。また、図11Cは、図11Bの矢印Lと矢印Rから見た側面のヒータホルダー130を示す図である。
【0083】
本実施例のヒータホルダー130では、加熱ヒータ113の長手方向の両端面に対応(対向)する2つの壁部が凹型に形成されていることによって、当該両端面が露出している。また、加熱ヒータ113の長手方向の突き当て部が存在せず、加熱ヒータ113の両端面が左右から全面露出する。本実施例では、加熱ヒータ113をヒータホルダー130の凹部Oに接着することで加熱ヒータのズレや脱落を防止している。加熱ヒータ113の長手方向の端面が全面露出しているため、実施例2よりも昇温した非通紙領域を冷却する効果が高い。
【0084】
(加熱装置ユニット状態)
図12は、図2Bに示す、矢印L側および矢印R側の左右から見た加熱装置を示す。本実施例に係る加熱装置では、ヒータホルダー130と定着フィルム112との間に空間部(隙間)が設けられていることによって、ヒータホルダー130の左右から加熱ヒータ113の端面が全面露出する。図12に示すように、L側とR側のいずれにおいても、定着フランジ150などヒータホルダー130以外の部品も加熱ヒータ113を覆うことなく、加熱ヒータ113の端面がユニット状態で露出する。このため、本実施例に係る画像形成装置では、ユニット状態で加熱ヒータ113が全面露出していることで、自然対流による気流の流れによって定着部材の非通紙領域がより冷却できる。
【0085】
[比較例との比較]
本実施例においても、図12に示す本実施例に係る加熱装置と、図8に示す比較例に係る加熱装置において、小サイズ紙の通紙試験を行って互いに比較した。実施例2と同様に、B5サイズの坪量70g/mの紙を1分間に35枚のスピードで連続通紙し、非通紙領域の加圧ローラ110の表面温度が230℃に至るまでに、連続通紙できるB5サイズ紙の枚数で比較した。
【表3】
【0086】
本実施例に係る加熱装置では、実施例2の構成よりも加圧ローラの非通紙領域の昇温速度が遅く、非通紙領域の加圧ローラ110の表面温度が230℃に至るまでに、右側(R側)では30枚、左側(L側)では32枚通紙することができた。
【0087】
このように、加熱ヒータ113の端面の全面を露出させることによって、非通紙領域における加熱ヒータの昇温速度を抑えることができる。このため、「非通紙部昇温」しやすい小サイズ紙への印刷の生産性の低下を抑えることができる。
【0088】
<その他の実施例>
実施例1~3では、ヒータホルダー130の長手方向の端面(壁部)を凹型に設けるこ
とによって、加熱ヒータ113の長手方向の端面を露出させたが、これには限らない。具体的には、ヒータホルダー130の長手方向の端面(壁部)の一部をくり貫いて孔を形成することによって、加熱ヒータ113の長手方向の端面を露出するようにしてもよい。さらに、実施例1~3では、形成の簡易性の観点から、ヒータホルダー130における空間部の形状は、矩形であったが、その他の多角形であっても、半円状であってもよい。
【0089】
また、実施例1~3では、基板207としてセラミックス製のアルミナ基板を用いる例を説明したが、これに限るものではない。フィルム加熱方式の加熱装置では、立ち上げ時間をさらに短縮するために、窒化アルミ(AlN)などの高熱伝導セラミックを用いることや、SUSなどの金属基板を用いることができる。
【0090】
このように基板の材料に高熱伝導材料を用いると、加熱ヒータの発熱体保護層として用いられるガラス材よりも基板の熱伝導性が高い場合がある。このような場合には、定着フィルムと接触(摺動)する面に熱伝導性の高い基板を用いて、背面側(ヒータホルダー側)に抵抗発熱体を設けることがある。従って、ヒータホルダーの壁部に空間部を形成して、加熱ヒータの長手方向の端面を露出させることによって、上述の実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0091】
また、画像形成装置は、モノクロ画像を形成する装置であるとして説明してきたが、イエロー、マゼンダ、シアンの4色を重ねて印字するカラー画像形成装置であってもよい。さらに、フィルム加熱方式の加熱装置について説明してきたが、これに限ったものではない。例えば、カラーの加熱装置には、加圧ローラの弾性層にソリッドゴムを用いる装置や、画質を良好にするために定着フィルムに弾性層を設けるフィルム加熱方式の装置がある。このようなカラーの加熱装置に対しても、ヒータホルダーの壁部に空間部を形成して、加熱ヒータの長手方向の端面を露出させることによって、上述の実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0092】
また、上述のフィルム加熱方式の加熱装置だけでなく、図13に示すような外部加熱方式の加熱装置を用いてもよい。図13に示す加熱装置は、加熱ヒータ113を定着フィルム112に内包しており、定着ローラ300が定着フィルム112の外表面(外周面)と圧接して、加熱ニップN2を形成する。これによって、加熱ヒータ113は、定着フィルム112を介して、定着ローラ300の表面を加熱する。そして、定着ローラ300に加圧ローラ301が圧接して形成された定着ニップN1において、記録材Pへのトナー像T(記録材上の画像)の定着が行われる。
【0093】
このような外部加熱方式の加熱装置においても、ヒータホルダーの壁部に空間部が設けられて、加熱ヒータの長手方向の端面が長手方向に露出すれば、小サイズ紙を通紙した際の非通紙領域における加熱ヒータの昇温速度を抑えることができる。このため、装置構成を複雑化することなく、小サイズ紙の非通紙領域の昇温を抑えることができ、小サイズ紙への印刷の生産性の低下を抑えることができる。
【0094】
また、上述の各実施例では、図7に示すように、加熱装置ユニットをR側では、駆動ギア131の径が小さく、駆動ギア131が加熱ヒータ113を隠さずに、加熱ヒータ113の側面が露出する加熱装置について説明してきた。しかし、図14A示すように駆動ギア131の径が大きいために、図14Bに示すように加熱装置のユニットを側面から見ると、駆動ギア131が加熱ヒータ113を隠してしまっている場合がある。このような場合でも、図14Aに示すように、ヒータホルダー130の壁部が凹型に設けられていれば、ヒータホルダー130から加熱ヒータ113が露出しており、加熱ヒータ113と駆動ギア131の間に気流が流れ込める空間Gが存在する。このため、加熱ヒータ113の端面が空間Gに露出していれば、ヒータホルダー130の空間部を介して風が加熱ヒータ1
13の端面に当たる。
【0095】
以上、加熱装置では、ヒータホルダーの壁部に空間部が設けられていることによって、加熱ヒータの長手方向の端面が長手方向に露出して、加熱装置における「非通紙部昇温」を抑えることができる。このため、装置の構成を複雑化することなく、小サイズ紙への印刷の生産性の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0096】
100:加熱装置、113:加熱ヒータ(加熱部材)、
130:ヒータホルダー(保持部材)、112:定着フィルム(第1回転体)、
110:加圧ローラ(第2回転体)
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