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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】油圧プレス
(51)【国際特許分類】
   B30B 1/32 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
B30B1/32 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020142210
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022037964
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田渡 正史
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-257794(JP,A)
【文献】特開2003-311487(JP,A)
【文献】特開2011-092945(JP,A)
【文献】特開平11-114645(JP,A)
【文献】特開平10-263888(JP,A)
【文献】特開2018-001202(JP,A)
【文献】特開2020-059038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダ及び第1ラムを有する第1ラムシリンダと、
第2シリンダ及び第2ラムを有する第2ラムシリンダと、
前記第1ラムシリンダと前記第2ラムシリンダとを支持するフレームと、
を備え、
前記第1ラムは、前記第1シリンダに作動油が圧送されることで前記第1シリンダから押し出される押出ロッドと、前記第1シリンダに作動油が圧送されることで前記第1シリンダに引き込まれる引込ロッドとを有し、
前記第2ラムが前記引込ロッドを押すように前記第1ラムシリンダと前記第2ラムシリンダとが直列に配置されており、
前記第2シリンダは、連結部材によって貫通されるとともに、前記フレームと連結されている、
油圧プレス。
【請求項2】
前記フレームは、
ベース部と、
前記第1シリンダを支持する第1フレーム部と、
前記第1フレーム部から前記ベース部に渡って配置され複数の第1伝達部材と、
前記第2シリンダを支持する第2フレーム部と、
前記第2フレーム部から前記第1フレーム部に渡って配置され複数の第2伝達部材と、
を含み、
前記ベース部と前記第1フレーム部との間に前記第1ラムシリンダの押出し力が作用している状態で、前記複数の第1伝達部材は前記第1ラムシリンダの前記押出し力の反力を受け、
前記第1フレーム部と前記第2フレーム部との間に前記第2ラムシリンダの押出し力が作用している状態で、前記複数の第2伝達部材は前記第2ラムシリンダの前記押出し力の反力を受け、
前記複数の第1伝達部材に作用する前記反力の合力と、前記複数の第2伝達部材に作用する前記反力の合力とが1つの直線上に重なり、かつ、前記直線を含む少なくとも1つの仮想平面に対して前記複数の第1伝達部材が面対称に配置され、更に、前記仮想平面に対して前記複数の第2伝達部材とが面対称に配置されている、
請求項1記載の油圧プレス。
【請求項3】
前記引込ロッドと前記第2ラムとが連結され、
前記第2ラムシリンダは、前記第2ラムを押し出すための第1油室及び第2油室を有する、
請求項1又は請求項2記載の油圧プレス。
【請求項4】
前記フレームは、前記第1シリンダを支持する第1フレーム部を有し、
前記第1フレーム部は、
前記引込ロッドが配置される側の前記第1シリンダの端部と嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部に連通し、前記第2ラムが進入可能な貫通孔と、
を含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の油圧プレス。
【請求項5】
前記フレームは、前記第2シリンダを支持する第2フレーム部を有し、
前記第2シリンダは、前記第2ラムが押し出される側にフランジを有し、
前記第2フレーム部は、
前記第2シリンダの一部が通されかつ前記フランジが通らない貫通孔を有する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の油圧プレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧プレスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラムシリンダと、ラムシリンダを駆動する油圧回路とを備えた油圧プレスが示されている。ラムシリンダとは、シリンダと、シリンダに収容されたラムとを有し、シリンダの内径とラム(押出ロッド)の外径とがほぼ等しい単動形シリンダのことを言う。ラムシリンダにより、大きな荷重を発生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-001202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、寸法が中程度のワークの成形に、非常に大きな荷重が要求されることがある。ラムシリンダを用いた油圧プレスでは、シリンダの内径及びラムの外径を大きくすることで、非常に大きな荷重を発生させることができる。しかしなから、このような変更は、成形品に対してラムシリンダの横幅、延いてはダイスペース及び油圧プレスの横幅が過大になるという課題、並びに、製造限界とそれに共なう輸送問題、品質問題を生じさせる。
【0005】
本発明は、横幅の寸法が抑えられかつ大きな荷重を発生できる油圧プレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る油圧プレスは、
第1シリンダ及び第1ラムを有する第1ラムシリンダと、
第2シリンダ及び第2ラムを有する第2ラムシリンダと、
前記第1シリンダと前記第2シリンダとを支持するフレームと、
を備え、
前記第1ラムは、前記第1シリンダに作動油が圧送されることで前記第1シリンダから押し出される押出ロッドと、前記第1シリンダに作動油が圧送されることで前記第1シリンダに引き込まれる引込ロッドとを有し、前記第2ラムが前記引込ロッドを押すように前記第1ラムシリンダと前記第2ラムシリンダとが直列に配置されており、
前記第2シリンダは、連結部材によって貫通されるとともに、前記フレームと連結されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、横幅の拡大が抑えられかつ大きな荷重を発生できる油圧プレスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1の油圧プレスを示す構成図である。
図2】複数の第1タイロッド及び複数の第2タイロッドの平面配置を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態2の油圧プレスを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1の油圧プレスを示す構成図である。以下では、油圧プレス1が荷重を加える方向を下方として説明するが、説明上の方向は油圧プレス1の実際の使用時の方向と一致しなくてもよい。
【0011】
実施形態1の油圧プレス1は、第1ラムシリンダ10と、第1ラムシリンダ10よりも上方に位置する第2ラムシリンダ20と、第1ラムシリンダ10及び第2ラムシリンダ20を支持するフレーム30と、上金型A1が支持されるスライド41と、下金型A2が支持されるボルスタ42と、スライド41を上昇させる戻しピストン44と、第1ラムシリンダ10及び第2ラムシリンダ20を駆動する油圧回路50とを備える。
【0012】
第1ラムシリンダ10は、両ロッド形でかつ単動形のラムシリンダであり、第1シリンダ11と、一部が第1シリンダ11に収容される両ロッド形の第1ラム12と、を有する。第1ラム12は、下部の押出ロッド12Aと、上部の引込ロッド12Bとが結合されて構成される。引込ロッド12Bは押出ロッド12Aより小径(又は幅小)であり、押出ロッド12Aの中心軸と引込ロッド12Bとの中心軸とは重なる。第1シリンダ11の下側開口部には、当該開口部と押出ロッド12Aの外周部との間の隙間を封止するシールが設けられる。同様に、第1シリンダ11の上側開口部にも、当該開口部と引込ロッド12Bの外周部との間の隙間を封止するシールが設けられる。
【0013】
第1シリンダ11は、押出ロッド12Aを押出し可能に収容するシリンダ部11aと、引込ロッド12Bを通す貫通孔11bと、を有する。シリンダ部11aの内径と押出ロッド12Aの外径とはほぼ一致する。貫通孔11bの内径と引込ロッド12Bの外径とはほぼ一致する。ほぼ一致とは、外径と内径との差が、ロッドをシリンダ内壁又は貫通孔内壁に沿って進退可能にするクリアランス分に相当することを意味する。第1シリンダ11は、上端から下端にかけて外周面にフランジのような突出を有さない。第1シリンダ11は、上端から下端にかけて外径が同一であってもよい。
【0014】
第1ラムシリンダ10は、シリンダ部11aの内壁と押出ロッド12Aの上端面との間の油室に作動油が圧送されることで、押出ロッド12Aを下方に押し出し、かつ、引込ロッド12Bが下方に引き込む。逆に、押出ロッド12Aに上昇力が加えられ、油室の作動油が排出されることで、押出ロッド12A及び引込ロッド12Bが上方に戻される。
【0015】
第2ラムシリンダ20は、片ロット形で単動形のラムシリンダであり、第2シリンダ21と、一部が第2シリンダ21に収容される第2ラム22と、を有する。第2ラム22は、押出ロッドとして機能する。第2シリンダ21の内径と第2ラム22の外径とは、ほぼ一致する。第2シリンダ21の下側開口部には、当該開口部と第2ラム22の外周部との間の隙間を封止するシールが設けられる。第2シリンダ21は、下端部に径方向外方へ突出するフランジ21Fを有する。
【0016】
第2ラムシリンダ20は、第2シリンダ21の油室に作動油が圧送されることで、第2ラム22を下方に押し出し、逆に、第2ラム22に上昇力が加えられ、油室の作動油が排出されることで、第2ラム22が上方に戻される。
【0017】
第1ラムシリンダ10と第2ラムシリンダ20とは、押出し方向が下方を向き、第2ラム22が第1ラム12の引込ロッド12Bを押すように直列に配置される。第1シリンダ11の内径は、第2シリンダ21の内径よりも大きく、第1ラムシリンダ10の押出し力は第2ラムシリンダ20の押出し力より大きい。第1ラム12の中心軸と第2ラム22の中心軸とは重なる。第2ラム22と第1ラム12とは、第2ラム22の下端が引込ロッド12Bの上端と当接した状態で、ボルト等の連結部材Bにより連結されている。図では連結部材Bを簡略化して示している。第1ラム12の押出ロッド12Aはスライド41に連結されている。
【0018】
フレーム30は、ボルスタ42が固定されるベッド(本発明に係るベース部に相当)31と、第1シリンダ11を支持する第1クラウン(本発明に係る第1フレーム部に相当)32と、ベッド31と第1クラウン32との間に設けられる複数の第1アップライト33と、ベッド31と第1クラウン32とに渡って配置される複数の第1タイロッド34(本発明に係る第1伝達部材
に相当)と、を備える。
【0019】
第1クラウン32は、第1シリンダ11の上部が嵌入される凹状の嵌合部32aと、嵌合部32aに連通する貫通孔32bとを有する。第1シリンダ11は、上端部が嵌合部32aにインロー嵌合される。インロー嵌合とは、第1シリンダ11の上端面の縁部と上端側の外周面とが、嵌合部32aの内面に突き合わされた嵌合を意味する。加えて、第1シリンダ11と第1クラウン32とは、ボルト等の連結部材Bにより連結されている。第1クラウン32の貫通孔32bには、第1ラム12の引込ロッド12Bが通される。第1クラウン32の貫通孔32bの内径Dは、第2ラム22の外径dより大きく、第2ラム22が下降した際、第2ラム22が貫通孔32bに進入可能である。
【0020】
複数の第1アップライト33及び複数の第1タイロッド34は、第1クラウン32とベッド31とを強固に連結する。複数の第1アップライト33は、スライド41を昇降可能にガイドする。戻しピストン44は、複数の第1アップライト33に支持される。複数の第1タイロッド34は、複数の第1アップライト33の内部にそれぞれ通される。第1ラムシリンダ10の押出し力が第1クラウン32とベッド31との間に加えられたとき、複数の第1タイロッド34は上記押出し力の反力(引っ張り力)を受ける。
【0021】
フレーム30は、さらに、第2シリンダ21を支持する第2クラウン(本発明に係る第2フレーム部に相当)36と、第2クラウン36と第1クラウン32との間に設けられる複数の第2アップライト37と、第2クラウン36と第1クラウン32とに渡って配置される複数の第2タイロッド38(本発明に係る第2伝達部材に相当)と、を備える。
【0022】
第2クラウン36は、第2シリンダ21の一部(例えば胴部)が通される貫通孔36aを有する。第2シリンダ21は、一部が貫通孔36aに通され、下部のフランジ21Fが貫通孔36aの下側開口部の周囲に当接される。第2シリンダ21は、ボルト等の連結部材Bにより第2クラウン36に連結される。
【0023】
複数の第2アップライト37及び複数の第2タイロッド38は、第2クラウン36と第1クラウン32とを強固に連結する。複数の第2タイロッド38は、複数の第2アップライト37の内部にそれぞれ通される。第2ラムシリンダ20の押出し力が第2クラウン36と第1クラウン32との間に加えられたとき、複数の第2タイロッド38は上記押出し力の反力(引っ張り力)を受ける。
【0024】
油圧回路50は、作動油を蓄積するタンク51と、圧力源59から供給される作動油を第1シリンダ11の油室へ供給又は停止する制御弁52と、圧力源59から供給される作動油を第2シリンダ21の油室へ供給又は停止する制御弁53と、大きな圧力を加えずに第1シリンダ11の油室へ作動油を供給できるプレフィルバルブ55と、大きな圧力を加えずに第2シリンダ21の油室へタンク51から作動油を供給できるプレフィルバルブ56とを有する。図示は省略するが、さらに、油圧回路50は、戻しピストン44に作動油を供給する制御弁を有する。
【0025】
<動作説明>
上金型A1及び下金型A2の間にワークが配置され、プレフィルバルブ55、56を介して第1シリンダ11及び第2シリンダ21の油室に作動油が供給されると、第1ラム12、第2ラム22、スライド41が下降し、ワークが上金型A1及び下金型A2に挟まれる。この状態で、制御弁52、53が加圧された作動油を第1シリンダ11及び第2シリンダ21に油室に供給すると、第1ラムシリンダ10から第1の押出し力が発揮され、第2ラムシリンダ20から第2の押出し力が発揮され、第1の押出し力と第2の押出し力とが加算された大きな荷重でスライド41に下方の力が加わる。そして、この大きな荷重により、ワークが鍛造される。
【0026】
<タイロッドの配置と作用>
図2は、複数の第1タイロッド及び複数の第2タイロッドの平面配置を示す説明図である。図2の平面J1は図1のA-A線における断面を示し、平面J2は図1のB-B線における断面を示す。油圧プレス1を上方から透視したとき、図2の2つの平面J1、J2は、回転せずに中心点O1同士が重なった配置となる。図2中、破線の丸付き十字により下方のベクトルを表わしている。
【0027】
第1ラムシリンダ10及び第2ラムシリンダ20が押出し力を発揮し、上金型A1と下金型A2との間に偏心の無い荷重が加わっているとする。このとき、図2の平面J1に示すように、複数の第1タイロッド34には第1ラムシリンダ10の押出し力の反力F1a~F1dが作用し、第2タイロッド38には第2ラムシリンダ20の押出し力の反力F2a~F2dが作用する。反力F1a~F1d、F2a~F2dは、下向きの力とする。
【0028】
複数の第1タイロッド34と複数の第2タイロッド38とは、第1ラムシリンダ10の押出し力と、第2ラムシリンダ20の押出し力とが、フレーム30に非対称な力が加わらないように、均等に配置されている。均等な配置とは、次の第1条件と第2条件とを満たす配置を意味する。第1条件は、第1ラムシリンダ10の押出し力の反力F1a~F1dを合成した合力F1Xと、第2ラムシリンダ20の押出し力の反力F2a~F2dを合成した合力F2Xとが一直線上に重なるという条件である。第2条件は、合力F1X、F2Xと重なった直線を含有する少なくとも1つの仮想平面S0に対して、複数の第1タイロッド34が面対称に配置され、かつ、複数の第2タイロッド38が面対称に配置されるという条件である。なお、図2の4つの第2タイロッド38及び第2アップライト37が中心点O1を中心に10度程度回転した構成では、第1条件を満たすが、第2条件を満たさない。
【0029】
上記の均等な配置により、複数の第1タイロッド34、複数の第2タイロッド38、並びに、第1クラウン32、第2クラウン36及びベッド31のうち応力を受ける範囲に対して、力が対称的に加わる。したがって、直列に配置された第1ラムシリンダ10と第2ラムシリンダ20との両方から大きな押出し力が発揮されても、フレーム30による支えが安定し、上金型A1と下金型A2に安定した荷重を加えることができる。
【0030】
以上のように、実施形態1の油圧プレス1によれば、第2ラム22から第1ラム12の引込ロッド12Bに押出し力が加えられるように、第1ラムシリンダ10と第2ラムシリンダ20とが直列に配置されている。したがって、第1ラムシリンダ10の押出し力と第2ラムシリンダ20の押出し力とを合算させて、スライド41に大きな荷重を及ぼすことができる。さらに、第1ラムシリンダ10と第2ラムシリンダ20とを直列に配置して大きな荷重を得るので、第1ラムシリンダ10及び第2ラムシリンダ20の横幅の寸法、延いては、ダイスペース及び油圧プレス1の横幅の寸法を抑えることができる。
【0031】
ここで、比較例の構成として、横幅の大きいラムシリンダを適用することで、あるいは、複数のラムシリンダを並列に配置することで、発生可能な荷重を大きくした油圧プレス(以下、「比較例の油圧プレス」と呼ぶ)を想定する。比較例の油圧プレスでは、クラウンの横幅が大きくなり、スライドの横幅も大きくなる。横幅の大きなスライドに荷重が加わると、スライドに大きな曲げモーメントが作用する場合がある。したがって、曲げモーメントによるスライドの変形を避けるため、比較例の油圧プレスでは、課題として、スライドの厚みを増してスライドの剛性を高める必要が生じる。一方、実施形態1の油圧プレス1によれば、スライド41の横幅を抑えることができるので、上記の課題を解決できる。
【0032】
加えて、比較例の油圧プレスにおいては、例えば10000tonクラスの荷重を発生可能に構成した場合、油圧プレスの横幅が、陸送可能なサイズを越えてしまう。この場合、比較例の油圧プレスは、陸送可能な複数の部品に分割可能とし、搬入先で組み立てる構成を採用しなければならない。一方、分割可能に構成された油圧プレスは、搬入先で締結される部分の締結品質が一体品と比べて低下してしまう。一方、実施形態1の油圧プレス1によれば、大きなプレス能力とした場合でも、陸送可能な横幅に抑えることができ、分割を前提としない構造を採用できることから、油圧プレス1の製品品質を向上できるという利点がある。
【0033】
また、実施形態1の油圧プレス1によれば、複数の第1タイロッド34と、複数の第2タイロッド38とが、均等に配置されている。すなわち、複数の第1タイロッド34に作用する反力F1a~F1dの合力F1Xと、複数の第2タイロッド38に作用する反力F2a~F2dの合力F2Xとが一直線上に重なる。さらに、当該一直線を含む少なくとも1つの仮想平面S0に対して、複数の第1タイロッド34が面対称に配置され、かつ、複数の第2タイロッド38が面対称に配置されている。このような第1タイロッド34と第2タイロッド38との配置により、プレス工程の際、複数の第1タイロッド34、複数の第2タイロッド38、第1クラウン32、第2クラウン36及びベッド31に対して、力が対称的に加わる。したがって、直列に配置された第1ラムシリンダ10及び第2ラムシリンダ20の両方から大きな押出し力が発揮されても、フレーム30による支えが安定し、上金型A1と下金型A2に大きな荷重を安定的に加えることができる。
【0034】
さらに、実施形態1の油圧プレス1によれば、第1クラウン32が嵌合部32aを有し、第1シリンダ11の上端部が嵌合部32aに嵌合(インロー嵌合)されている。したがって、第1シリンダ11と第1クラウン32とを高い位置精度で結合でき、かつ、インロー嵌合により第1シリンダ11と第1クラウン32との剛性が向上する。したがって、スライド41の偏心負荷に対しても油圧プレス1の耐久性が向上する。さらに、第1シリンダ11はインロー嵌合により第1クラウン32に嵌合するため、フランジなどの径方向外方へ突出する構成が不要となる。したがって、第1シリンダ11の横幅が小さくなり、延いては第1クラウン32及び油圧プレス1の横幅を小さくできる。
【0035】
さらに、実施形態1の油圧プレス1によれば、第1クラウン32は、嵌合部32aに連通する貫通孔32bを有し、第2ラム22が貫通孔32bに進入可能である。したがって、第2アップライト37を短くして第2ラムシリンダ20を第1クラウン32に近接させても、第2ラム22が第1クラウン32と緩衝しない。したがって、第2アップライト37を短くして油圧プレス1の丈寸を抑えることができる。
【0036】
なお、実施形態1では、第1ラム12と第2ラム22とが直接に連結される構成を示した。しかし、第1ラム12と第2ラム22とは、図示されない連結用のブロック部材を介して連結されてもよい。すなわち、第1ラム12の引込ロッド12Bの上部とブロック部材の一部が連結され、第2ラム22の下部とブロック部材の別の一部とが連結される構成である。この構成では、ブロック部材の外径(或いは最大横幅)が、第1クラウン32の貫通孔32bの内径Dよりも小さく、ブロック部材が貫通孔32bに進入可能に構成されてもよい。さらに、この構成では、第2ラム22の外径dが、貫通孔32bの内径Dよりも大きく、第2ラム22が貫通孔32bに進入不可であってもよい。上記の構成において、第2ラム22及びブロック部材を、1つの第2ラムと見なすこともできる。
【0037】
さらに、実施形態1の油圧プレス1によれば、第2シリンダ21はフランジ21Fを有し、第2クラウン36は第2シリンダ21の胴部を通しかつフランジ21Fを通さない貫通孔36aを有する。したがって、プレス荷重が生じたときに、フランジ21Fにより第2シリンダ21と第2クラウン36との強固な連結が得られ、また、フランジ21Fを第2シリンダ21の下部に設けて、第2シリンダ21の大部分を貫通孔36aに通すことで、第2クラウン36を低く配置できる。したがって、油圧プレス1の丈寸を抑えることができる。
【0038】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係る油圧プレスを示す構成図である。実施形態2の油圧プレス1Aは、第2ラムシリンダ20Aが、第2ラム22Aを押し出すための第1油室W1及び第2油室W2を有し、油圧回路50Aが第1油室W1と第2油室W2とに作動油を送ることが可能になっている点が、実施形態1と主に異なる。その他の構成要素は、実施形態1と同様である。
【0039】
第2ラムシリンダ20Aは、第2ラム22Aを押出し可能に収容する第2シリンダ21Aと、第2ラム22Aに設けられた子シリンダ22Aaと、子シリンダ22Aaに相対的に進退移動可能に収容された子ロッド23Aとを備える。子ロッド23Aは第2シリンダ21Aに固定されている。第2シリンダ21の内面と第2ラム22Aの上端面との間に第1油室W1が設けられ、子シリンダ22Aaの内面と子ロッド23Aの下端面との間に第2油室W2が設けられる。
【0040】
油圧回路50Aは、実施形態1の構成に加えて、圧力源59から供給される作動油を第2ラムシリンダ20の第2油室W2へ供給又は停止する制御弁54と、大きな圧力を加えずにタンク51から第2油室W2へ作動油を供給できるプレフィルバルブ57とを備える。
【0041】
実施形態2の油圧プレス1Aによれば、第2ラムシリンダ20Aの第2油室W2に圧力源59から作動油を供給することで、第1ラム12及び第2ラム22Aを任意の下降速度で正確に下降させることができる。
【0042】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限らない。例えば、上記実施形態では、第1アップライト33、第1タイロッド34、第2アップライト37及び第2タイロッド38が、4本ずつである構成を示した。しかし、第1アップライト33及び第1タイロッド34は2本ずつであってもよいし、第2アップライト37及び第2タイロッド38は2本ずつであってもよい。また、第2アップライト37は省略されてもよい。また、上記実施形態では、第1ラム12と第2ラム22とが連結された構成を示したが、連結されていない構成が適用されてもよい。連結されない場合、第1ラム12を引き戻す駆動構成と、第2ラム22を引き戻す駆動構成とを別々に設けられればよい。また、上記実施形態では、2つのラムシリンダが直列にされた構成を示したが、例えば2つの第2ラムシリンダ20が並列にされ、これら2つの第2ラムシリンダ20に第1ラムシリンダ10が直列に配列された構成が採用されてもよい。この場合、2つの第2ラムシリンダ20の押出し力の合力が、第1ラムシリンダ10の第1ラム12に加わるように接続されればよい。また、上記実施形態では、下側に配置される第1ラムシリンダ10が、上側に配置される第2ラムシリンダ20よりも、シリンダ内径が大きく、発生可能な荷重が大きい構成を示したが、第2ラムシリンダ20の方がシリンダ内径が大きく、発生可能な荷重が大きい構成が採用されてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1、1A 油圧プレス
10 第1ラムシリンダ
11 第1シリンダ
12 第1ラム
12A 押出ロッド
12B 引込ロッド
22Aa 子シリンダ
23A 子ロッド
W1 第1油室
W2 第2油室
20 第2ラムシリンダ
21 第2シリンダ
21F フランジ
22 第2ラム
30 フレーム
31 ベッド(ベース部)
32 第1クラウン(第1フレーム部)
32a 嵌合部
32b 貫通孔
33 第1アップライト
34 第1タイロッド(第1伝達部材)
36 第2クラウン(第2フレーム部)
36a 貫通孔
37 第2アップライト
38 第2タイロッド(第2伝達部材)
50 油圧回路
図1
図2
図3